(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】ポリアセタール樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 59/00 20060101AFI20230106BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20230106BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20230106BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20230106BHJP
C08K 5/3435 20060101ALI20230106BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20230106BHJP
【FI】
C08L59/00
C08K3/22
C08K5/13
C08K5/17
C08K5/3435
C08L71/02
(21)【出願番号】P 2020214497
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2022-03-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】細井 悠平
(72)【発明者】
【氏名】玉岡 章宏
(72)【発明者】
【氏名】荒井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】門間 智宏
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-209474(JP,A)
【文献】特開2019-218442(JP,A)
【文献】特開2018-172456(JP,A)
【文献】特開2006-306944(JP,A)
【文献】特開2006-321880(JP,A)
【文献】特開2007-070574(JP,A)
【文献】特開2007-070575(JP,A)
【文献】特開2011-231207(JP,A)
【文献】特開2001-354832(JP,A)
【文献】特開2021-004337(JP,A)
【文献】特開2022-062964(JP,A)
【文献】特開2009-155418(JP,A)
【文献】特表2020-518708(JP,A)
【文献】特表2003-509521(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180078(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/244477(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/058875(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/058884(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104371267(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104419112(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103102640(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103571153(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
(A)末端特性を有するポリアセタール重合体100質量部に対し、
(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤を、0.1~2.0質量部、
(C)マグネシウムまたは亜鉛の酸化物から選択される少なくとも1種を、2.0質量部を超えて20質量部以下、
(D)ポリアルキレングリコールを、0.5~3.0質量部、
(E)ヒンダードアミン化合物を、0.2~1.5質量部、
(F)紫外線吸収剤を、0.2~1.5質量部、
含有し、
前記ポリアセタール重合体のヘミホルマール末端基量は1.0mmol/kg以下である、ポリアセタール樹脂組成物。
【請求項2】
前記マグネシウムまたは亜鉛の酸化物から選択される少なくとも1種が酸化マグネシウムである請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
前記酸化マグネシウムのBET比表面積が100m
2/g以上である請求
項2記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項4】
前記(F)紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系化合物又はシュウ酸ジアミド系化合物から選択される少なくとも1種である、
請求項1~3いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項5】
前記(F)紫外線吸収剤が、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール及びN-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシフェニル)シュウ酸ジアミドから選択される少なくとも1種である、請求項1~4いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物の成形品からなる自動車部品。
【請求項7】
前記自動車部品が酸性洗浄剤に接触した自動車部品である、請求項6に記載の自動車部品。
【請求項8】
請求項1~5のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物の成形品を用いて、酸成分に対する酸耐性を向上させる方法。
【請求項9】
前記酸成分が、酸性洗浄剤由来である、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸成分に対して高い耐性を有するポリアセタール樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は耐薬品性に優れることから、ポリアセタール樹脂を原料とする成形体は自動車部品として広く使用されている。例えば、燃料油と直接接触する燃料ポンプモジュール等燃料接触体に代表される燃料搬送ユニット等の大型部品として用いられる。
【0003】
近年、各国の環境規制に対応するため、燃料の低硫黄化が進められている。しかしながら、脱硫設備には多大な費用がかかることから、一部の国では未だ高硫黄燃料が流通している。これらの高硫黄燃料は、低硫黄燃料に比べてポリアセタール樹脂を劣化させやすい傾向がある。
【0004】
さらに燃料搬送ユニット等の自動車部品は、ボンネット等の筐体によって覆われているものの、洗車時に洗浄剤の飛沫が付着することがある。特に、ホイールに付着したブレーキダスト等を除去する際には、高硫黄燃料を上回る強酸性の洗浄剤を用いることがあり、この洗浄剤によるポリアセタール樹脂からなる自動車部品の劣化も大きな課題としてある。
【0005】
これらの課題に対して、本願出願人は、ポリアセタール樹脂にヒンダードフェノール系酸化防止剤、アルカリ土類金属酸化物、ポリアルキレングリコールを含有させることにより、大幅に改善できることを報告している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
燃料搬送ユニット等の自動車部品は、ボンネット等の筐体によって覆われている事が多いが、組み立て時又は使用時に太陽光が当たる場合がある。また、車種によっては燃料タンクが筐体に覆われておらず、燃料搬送ユニットにも太陽光が当たる状態で使用するものもある。さらにこれらの部品は洗車時に洗浄剤の飛沫が付着することがある。特に、ホイールには、高硫黄燃料を上回る強酸性の洗浄剤を用いることがあり、この洗浄剤により、太陽光により光劣化が進んだポリアセタール樹脂からなる自動車部品のさらなる急激な劣化も大きな課題としてある。
【0008】
本発明は、成形品にした際、太陽光が照射された部位へ酸性洗浄剤に接触したときの劣化を抑えることの可能なポリアセタール樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ポリアセタール樹脂組成物の組成を特定の組成にすることで、成形品にした際、太陽光照射部分に酸性洗浄剤が接触したときの劣化を最小限に抑えられることを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、
1. 少なくとも、
(A)ポリアセタール重合体100質量部に対し、
(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.1~2.0質量部、
(C)マグネシウムまたは亜鉛の酸化物から選択される少なくとも1種を、2.0質量部を超えて20質量部以下、
(D)ポリアルキレングリコール0.5~3.0質量部、
(E)ヒンダードアミン化合物0.2~1.5質量部、
(F)紫外線吸収剤0.2~1.5質量部、
とを含有するポリアセタール樹脂組成物。
2. 前記マグネシウムまたは亜鉛の酸化物から選択される少なくとも1種が酸化マグネシウムである前記1記載のポリアセタール樹脂組成物。
3. 前記酸化マグネシウムのBET比表面積が100m2/g以上である前記1または2記載のポリアセタール樹脂組成物。
4. 前記(F)紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系化合物又はシュウ酸ジアミド系化合物から選ばれた少なくとも1種である、
前記1~3いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
5. 前記(F)紫外線吸収剤が、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール及びN-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシフェニル)シュウ酸ジアミドから選ばれた少なくとも1種である、前記1~4いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
6. 前記1~5のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物の成形品からなる自動車部品。
7. 前記自動車部品が酸性洗浄剤接触自動車部品である前記6記載の自動車部品。
8. 前記1~5のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物の成形品を用いて、酸成分に対する酸耐性を向上させる方法。
9. 前記酸成分が、酸性洗浄剤由来である、前記8に記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、成形品にした際、太陽光照射後に酸性洗浄剤と接触した部位の劣化を最小限に抑えることの可能なポリアセタール樹脂組成物を提供することができる。
なお、本発明において、「酸性洗浄剤」とは、pHが6以下、場合によりpHが2以下の洗浄剤を言い、例えば、ホイールクリーナー等が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0013】
<ポリアセタール樹脂組成物>
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、(A)ポリアセタール重合体100質量部に対し、(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.1~2.0質量部、(C)マグネシウムまたは亜鉛の酸化物から選択される少なくとも1種を、2.0質量部を超えて20質量部以下、(D)ポリアルキレングリコール0.5~3.0質量部、(E)ヒンダードアミン化合物0.2~1.5質量部、(F)紫外線吸収剤0.2~1.5質量部、とを含有するポリアセタール樹脂組成物、であることを特徴とする。
【0014】
<(A)ポリアセタ-ル重合体>
本発明に使用する(A)ポリアセタール重合体は、オキシメチレン基(-OCH2-)を構成単位とするホモポリマーでもよいし、オキシメチレン単位以外に他のコモノマー単位を有する共重合体であってもよく、共重合体であることが好ましい。
【0015】
一般的にはホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドの環状化合物を主モノマーとし、環状エーテルや環状ホルマールから選ばれた化合物をコモノマーとして共重合させることによって製造され、通常、熱分解、(アルカリ)加水分解等によって末端の不安定部分を除去して安定化される。
【0016】
特に、主モノマーとしてはホルムアルデヒドの環状三量体であるトリオキサンを用いるのが一般的である。トリオキサンは、一般的には酸性触媒の存在下でホルムアルデヒド水溶液を反応させることにより得られ、これを蒸留などの方法で精製して使用される。重合に用いるトリオキサンは、水、メタノール、蟻酸などの不純物の含有量が極力少ないものが好ましい。
【0017】
コモノマーとしては、一般的な環状エーテル及び環状ホルマール、また分岐構造や架橋構造を形成可能なグリシジルエーテル化合物などを単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0018】
上記の如きポリアセタール重合体は、一般には適量の分子量調整剤を添加し、カチオン重合触媒を用いてカチオン重合することにより得ることができる。使用される分子量調整剤、カチオン重合触媒、重合方法、重合装置、重合後の触媒の失活化処理、重合によって得られた粗ポリアセタール重合体の末端安定化処理法などは多くの文献によって公知であり、基本的にはそれらが何れも利用できる。
【0019】
ポリアセタ-ル重合体の特に好ましい製造方法として、以下のものが挙げられる。即ち、トリオキサンを主モノマー(a)とし、少なくとも一つの炭素-炭素結合を有する環状エーテルおよび環状ホルマールから選択される1種以上をコモノマー(b)とし、重合触媒(c)にヘテロポリ酸を使用して共重合し、その後アルカリ金属元素若しくはアルカリ土類金属元素の炭酸塩、炭酸水素塩、カルボン酸塩若しくはその水和物(d)を添加して溶融混錬し、該重合触媒(c)を失活させるものである。本方法によるポリアセタール重合体を使用することで、成形品からのホルムアルデヒド発生量、成型時のモールドデポジット発生はより低減される。
【0020】
前記重合触媒(c)として使用するヘテロポリ酸とは、異種の酸素酸が脱水縮合して生成するポリ酸の総称をいい、中心に特定の異種元素が存在し、酸素原子を共有して縮合酸基が縮合してできる単核又は複核の錯イオンを有している。
【0021】
上記へテロポリ酸の具体例として、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、リンタングストバナジン酸、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸、ケイモリブドタングステン酸、ケイモリブドタングステントバナジン酸等が挙げられる。中でも、重合の安定性、ヘテロポリ酸自体の安定性から考慮して、へテロポリ酸は、ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸、リンモリブデン酸又はリンタングステン酸のいずれか1種以上であることが好ましい。
【0022】
上記へテロポリ酸の使用量は、その種類によっても異なり、また、適当に変えて重合反応を調節することができるが、一般には重合されるべきモノマーの総量に対し0.05~100ppm(以下、質量/質量ppmを示す。)の範囲であり、好ましくは0.1~50ppmである。
【0023】
重合装置としては、バッチ式では一般に用いられる撹拌機付きの反応槽が使用でき、また、連続式としては、コニーダー、2軸スクリュー式連続押出混合機、2軸パドルタイプの連続混合機、その他、これまでに提案されているトリオキサン等の連続重合装置が使用可能であり、また2種以上のタイプの重合機を組み合わせて使用することもできる。
【0024】
重合方法は特に限定されるものではないが、先に提案されているように、トリオキサン、コモノマー及び重合触媒としてのヘテロポリ酸を、あらかじめ液相状態を保ちつつ十分に混合し、得られた反応原料混合液を重合装置に供給して共重合反応を行えば、必要触媒量の低減が可能となり、結果としてホルムアルデヒド放出量のより少ないポリアセタール共重合体を得るのに有利であり、より好適な重合方法である。重合温度は、60~120℃の温度範囲で行なわれる。
【0025】
本発明において、上記の主モノマー(a)とコモノマー(b)とを重合してポリアセタール共重合体を調製するにあたり、重合度を調節するため公知の連鎖移動剤、例えばメチラールの如き低分子量の線状アセタール等を添加することも可能である。
【0026】
また、重合反応は活性水素を有する不純物、例えば水、メタノール、ギ酸等が実質的に存在しない状態、例えばこれらがそれぞれ10ppm以下の状態で行うのが望ましく、このためには、これらの不純物成分を極力含まないように調製されたトリオキサン、環状エーテル及び/又は環状ホルマールを、主モノマーやコモノマーとして使用するのが望ましい。
【0027】
上記のように重合して得られた、重合触媒を含有すると共に、その末端に不安定な部分を有するポリアセタール重合体(粗ポリアセタール重合体)に、アルカリ金属元素若しくはアルカリ土類金属元素の炭酸塩、炭酸水素塩、カルボン酸塩若しくはその水和物(d)を溶融混練して、重合触媒の失活を行うと共にポリアセタール重合体(粗ポリアセタール重合体)が有する不安定末端基を低減して安定化する。
【0028】
本発明で使用する(A)ポリアセタ-ル重合体の分子量は特に限定されないが、サイズ排除クロマトグラフィー法にて決定したPMMA(ポリメタクリル酸メチル)相当の重量平均分子量が10、000~400、000程度のものが好ましい。また、樹脂の流動性の指標となるメルトインデックス(ASTM-D1238に準じ190℃、荷重2.16kgで測定)が0.1~100g/10分であるものが好ましく、さらに好ましくは0.5~80g/10分である。
【0029】
本発明において使用する(A)ポリアセタール重合体は、特定の末端特性を有していることが特に好ましい。具体的には、ヘミホルマール末端基量が1.0mmol/kg以下、ホルミル末端基量が0.5mmol/kg以下、不安定末端量が0.5質量%以下である。ここでヘミホルマール末端基は-OCH2OHで示されるものであり、ヒドロキシメトキシ基あるいはヘミアセタール末端基とも称される。また、ホルミル末端基は-OCHOで示される。このようなヘミホルマール末端基およびホルミル末端基の量は1H-NMR測定により求めることができ、その具体的な測定方法は、特開2001-11143号公報に記載された方法を参照できる。
【0030】
また、不安定末端量とは、ポリアセタール重合体の末端部分に存在し、熱や塩基に対して不安定で分解し易い部分の量を示す。かかる不安定末端量は、ポリアセタール重合体1gを、0.5%(体積%)の水酸化アンモニウムを含む50%(体積%)メタノール水溶液100mlとともに耐圧密閉容器に入れ180℃で45分間加熱処理した後、冷却し、開封して得られる溶液中に分解溶出したホルムアルデヒド量を定量し、ポリアセタ-ル重合体に対する質量%で表したものである。
【0031】
本発明において用いる(A)ポリアセタール重合体は、ヘミホルマール末端基量が1.0mmol/kg以下のものが好ましく、さらに好ましくは0.6mmol/kg以下である。またホルミル末端基量は0.5mmol/kg以下のものが好ましく、さらに好ましくは0.1mmol/kg以下である。また不安定末端量は0.5質量%以下のものが好ましく、さらに好ましくは0.3質量%以下である。ヘミホルマール末端基量、ホルミル末端基量、不安定末端量の下限は特に限定されるものではない。
【0032】
前記の如く特定の末端特性を有する(A)ポリアセタール重合体は、モノマー及びコモノマーに含まれる不純物の低減、製造プロセスの選択およびその製造条件の最適化などを行うことにより製造できる。
【0033】
以下に本件の発明の要件を満たす特定の末端特性を有する(A)ポリアセタール重合体を製造する方法は、例えば特開2009-286874号公報記載の方法を使用することができる。ただし、この方法に限定されるものではない。
【0034】
本発明において、(A)ポリアセタール重合体に分岐又は架橋構造を有するポリアセタール重合体を添加して使用してもよく、その場合配合量は、(A)ポリアセタール重合体100質量部に対し0.01~20質量部であり、特に好ましくは0.03~5質量部である。
【0035】
<(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤>
本発明において使用する(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸](エチレンビス(オキシ)ビスエチレン)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス(6-t-ブチル-3-メチル-フェノール)、ジ-ステアリル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、3,9-ビス{2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等が例示される。
【0036】
本発明においては、これらの酸化防止剤から選ばれた少なくとも1種又は二種以上を使用することができる。
【0037】
本発明における(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、0.1~1.0質量部であり、0.2~0.5質量部であることがより好ましい。(B)酸化防止剤の配合量が少ないと、本来の目的である酸化防止特性が不十分になるだけでなく、本発明の目的である耐洗浄剤性も劣るものとなる。(B)酸化防止剤の配合量が過剰の場合は、樹脂組成物の機械特性や成形性等の好ましくない影響が生じる。
【0038】
<(C)マグネシウム、または亜鉛の酸化物から選択される少なくとも1種>
本発明において使用する(C)マグネシウムまたは亜鉛の酸化物から選択される少なくとも1種(以下(C)化合物と略す)としては、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの化合物の中では酸化マグネシウムが最も耐洗浄剤性の改善と機械物性や成形性等の性能のバランスが優れており好ましい。酸化マグネシウムに関して、BET比表面積が100m2/g以上である酸化マグネシウムがより好ましい。
【0039】
本発明における(C)化合物の含有量は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、2.0質量部を超えて、30質量部以下であり、2.0質量部を超えて10質量部以下であることがより好ましい。
【0040】
2.0質量部を超えることで耐酸性洗浄剤性において特に優れ、また30質量部以内で安定的な生産が可能となり、10質量部以内で機械特性のバランスにおいて特に優れる。
これまでは(C)化合物が多くなるとポリアセタール樹脂中の不安定末端の分解を促進することがあったが、本発明の(A)ポリアセタール共重合体であれば、その分解を抑制することができることから、(C)化合物を増量することによる酸耐性向上の特性を見出すことができた。
【0041】
<(D)ポリアルキレングリコール>
本発明において使用する(D)ポリアルキレングリコールを含有させることも好ましい。これらの種類は特に限定されないが、ポリアセタール樹脂との親和性の観点から、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールを含有するものが好ましく、ポリエチレングリコールを含有するものがより好ましい。
【0042】
ポリアルキレングリコールの数平均分子量(Mn)は特に限定されないが、ポリアセタール樹脂中での分散性の観点から、1,000以上50,000以下であることが好ましく、5,000以上30,000以下であることがより好ましい。なお、本明細書において、数平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするサイズ排除クロマトグラフィー法によって求めたポリスチレン換算の分子量であるものとする。
【0043】
本発明における(D)ポリアルキレングリコールの含有量は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、0.5~3.0質量部であり、1.0~2.0質量部であることがより好ましい。添加量の上限は、成形体の機械物性とのバランスで選択される。これらは2種以上を混合して使用しても良い。
【0044】
<(E)ヒンダードアミン化合物>
本発明において使用するヒンダードアミン化合物(以下HALSともいう)に特に制限がなく、隣接する炭素にメチル基等の立体障害性基を有するピペリジン誘導体の窒素が2級または3級であるヒンダードアミン化合物が好ましく用いられる。
【0045】
本発明において使用する立体障害性基を有するピペリジン誘導体の窒素が2級であるヒンダードアミン安定剤としては、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)-ジエタノールとの縮合物、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物などが挙げられる。
【0046】
本発明において使用する立体障害性基を有するピペリジン誘導体の窒素が3級であるヒンダ-ドアミン化合物としては、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アジペート、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルセバケートなどの脂肪族ジ又はトリカルボン酸-ビス又はトリスピペリジルエステル(炭素数2~20の脂肪族ジカルボン酸-ビスピペリジルエステルなど)、N,N’,N’’,N’’’-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールの重合物、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、メチル-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケ-ト、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)-ジエタノールとの縮合物、過酸化処理した4-ブチルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン、及びシクロヘキサン、N,N'-エタン-1,2-ジイルビス(1,3-プロパンジアミン)との反応生成物、1-[2-{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]-4-{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒロドキシフェニル)プロピオニルオキシ}-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。
【0047】
特に好ましいものとしては、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)-ジエタノールとの縮合物、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールの重合物が挙げられる。
【0048】
本発明において、(E)ヒンダードアミン化合物の添加量は、(A)ポリアセタール重合体100質量部に対して0.2~1.5質量部、であり、好ましくは0.4~0.8質量部である。
【0049】
(E)ヒンダードアミン化合物の配合量が過少の場合は、耐候性に優れたポリアセタール樹脂組成物を得ることができず、逆に配合量が過多の場合は、機械的特性の低下、染み出しによる外観不良などの問題が生じる。
【0050】
<(F)紫外線吸収剤>
本発明の紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、シュウ酸アニリド系化合物が挙げられ、これらの光安定剤は1種又は2種以上組合せて使用できる。
【0051】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾ-ル-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-(t-ブチル)フェノール、2,4-ジ-t-ブチル-6-(5-クロロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-t-ペンチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-イソアミルフェニル)ベンゾトリアゾール等のヒドロキシル基及びアルキル(炭素数1~6のアルキル)基置換アリール基を有するベンゾトリアゾール類2-[2'-ヒドロキシ-3',5'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾールなどのヒドロキシル基及びアラルキル(又はアリール)基置換アリール基を有するベンゾトリアゾール類2-(2'-ヒドロキシ-4'-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどのヒドロキシル基及びアルコキシ(C1~12のアルコキシ)基置換アリール基を有するベンゾトリアゾール類等が挙げられる。
【0052】
これらのベンゾトリアゾール化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0053】
これらのベンゾトリアゾール系化合物のうち、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-t-ペンチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノールなどが好ましい。
【0054】
シュウ酸アニリド系化合物としては、N-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシ-5-t-ブチルフェニル)シュウ酸ジアミド、N-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシフェニル)シュウ酸ジアミド、窒素原子上に置換されていてもよいアリール基などを有するシュウ酸ジアミド類が挙げられる。シュウ酸アニリド化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0055】
本発明において、(F)紫外線吸収剤の添加量は、(A)ポリアセタール重合体100質量部に対して、0.2~1.5質量部である。好ましくは、0.4~0.8質量部である。(F)紫外線吸収剤の配合量が過少の場合は、耐候性に優れたポリアセール樹脂組成物を得ることができず、逆に配合量が過多の場合は、機械的特性の低下、染み出しによる外観不良などの問題が生じる。
【0056】
<その他の成分>
本発明におけるポリアセタール樹脂組成物は、必要に応じて他の成分を含有するものであってもよい。本発明の目的・効果を阻害しない限り、ポリアセタール樹脂組成物に対する公知の安定剤を1種又は2種以上添加することができる。
【0057】
<ポリアセタール樹脂組成物の成形品からなる自動車部品>
本発明のポリアセタール樹脂組成物からなる成形品は、自動車のホイール等車体洗浄の際に洗浄剤に触れる可能性のある自動車部品の全てに使用することができる。
【0058】
この成形品は、上記ポリアセタール樹脂組成物を用いて、慣用の成形方法、例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、真空成形、発泡成形、回転成形等の方法で成形することにより得ることができる。
本発明の成形品は、例えばpH2以下の強酸性洗浄剤に接触したとしても、接触部の酸による劣化および光劣化が抑制され、良好な成形品表面外観を保持できる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
表1、2における各種成分は次のとおりである。表中の単位は質量部である。
(A)ポリアセタール重合体
(A-1)ポリアセタール重合体[ヘミホルマール末端基量=1.0mmol/kg、メルトインデックス(ASTM-D1238に準じ190℃、荷重2.16kgで測定)=9g/10分]
ポリアセタール重合体A-1は、次のようにして調製した。
【0061】
A-1:二軸パドルタイプの連続式重合機にトリオキサン96.7質量%と1,3-ジオキソラン3.3質量%の混合物を連続的に供給し、触媒として三フッ化ホウ素15ppmを添加し重合を行った。また、重合に供するトリオキサンと1,3-ジオキソランの混合物は、不純物として水10ppm、メタノール3.5ppm、ギ酸5ppmを含有するものであった。
【0062】
重合機吐出口より排出された重合体は、直ちにトリエチルアミン1000ppm含有水溶液を加えて粉砕、攪拌処理を行うことにより触媒の失活を行い、次いで、遠心分離、乾燥を行うことにより粗ポリアセタール共重合体を得た。
【0063】
次いで、この粗ポリアセタール共重合体を、ベント口を有する二軸押出機に供給し、樹脂温度約220℃で溶融混練することにより不安定末端部を分解すると共に、分解生成物を含む揮発分をベント口から減圧脱揮した。押出機のダイから取り出した重合体を冷却、細断することにより、不安定末端部の除去されたペレット状のポリアセタール共重合体A-1を得た。
【0064】
(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
(B-1)ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](製品名:Irganox1010:BASF社製)
(B-2)ビス[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸](エチレンビスオキシ)ビスエチレン)(製品名:Irganox245:BASF社製)
【0065】
(C)金属化合物
(C-1)酸化マグネシウム、BET比表面積135m2/g、平均粒径0.9μm(製品名:キョーワマグMF150、 協和化学工業(株)製)
(C-2)酸化マグネシウム、BET比表面積30m2/g、平均粒径0.6μm(製品名:キョーワマグMF30、協和化学工業(株)製)
(C-3)酸化マグネシウム、BET比表面積155m2/g、平均粒径7μm(製品名:キョーワマグ150、 協和化学工業(株)製)
(C-4)酸化亜鉛、BET比表面積60~90m2/g(製品名:活性亜鉛華AZO, 正同化学工業(株)製)
【0066】
(D)ポリアルキレングリコール
(D-1)製品名:PEG6000S(三洋化成工業(株)製)
【0067】
(E)ヒンダードアミン化合物
(E-1)ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(TINUVIN770DF:BASF社製)
(E-2)1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物(アデカスタブLA-63P:(株)ADEKA社製)
(E-3)テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート(アデカスタブLA-52:(株)ADEKA社製)
(E-4)1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物(アデカスタブLA-62:(株)ADEKA社製)
【0068】
(F)紫外線吸収剤
(F-1)2-(2H-ベンゾトリアゾ-ル-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(TINUVIN234:BASF社製)
(F-2)N-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシ-フェニル)シュウ酸ジアミド(SanduvorVSU:クラリアント(株)製)
【0069】
<実施例及び比較例>
表1、2に示す各種成分を表1、2に示す割合で添加混合し、二軸の押出機で溶融混練してペレット状のポリアセタール樹脂組成物を調製した。表内の数値は、質量部である。
【0070】
<評価>
上記の通り調製したポリアセタール樹脂組成物を用い、下記条件で射出成形により厚さ4mmのISOtype1-A多目的試験片を作製し、以下の評価を行った。結果を表1、2に示す。
・成形機: EC-40(東芝機械(株))
・成形条件:シリンダー温度(℃) ノズル-C1-C2-C3
205 215 205 185℃
射出圧力 40(MPa)
射出速度 1.5(m/min)
金型温度 90(℃)
【0071】
(1)耐候性評価
SAE J2527に従い、以下の装置、条件にて耐候性評価を行った。
(評価方法)
試験装置:Ci4000 Xenon Weather-Ometer(ATLAS社製)
光源:キセノンアークランプ
照射照度:0.55W/m2 波長 340nm
ブラックパネル温度:70℃
湿度:50%RH
フィルタ:(内側)石英、(外側)ボロシリケート“S”タイプ
以下の条件を1サイクルとし、152サイクル(照射強度600kJ相当)試験を行った。
1.ダーク(0J/m2)、両面水噴射-60分
2.ライト(1320J/m2)-40分
3.ライト(660J/m2)、前面水噴射-20分
4.ライト(1980J/m2)-60分
処理後の試験片の表面を目視、顕微鏡で観察し、クラックの入り方で以下の様に区分した。
○:外観異常なし
△:実体顕微鏡観察(拡大倍率50倍)でクラックが確認できる
×:目視でクラックが確認できる
【0072】
(2)耐酸性評価
ポリアセタール樹脂組成物の酸性洗浄剤への耐性を評価するため、作製した多目的試験片(以下、「試験片」ともいう)を用いて耐酸性評価を行った。
(評価方法)
上記多目的試験片の両端を固定し、負荷歪み:2.0%の割合で湾曲させた。そして、(i)試験片の表面に酸性洗浄剤(硫酸:1.5%、フッ化水素酸:1.5%、リン酸:10%)をスプレーし、スプレー後の試験片を60℃の条件下で4時間放置した。(ii)その後、試験片を23℃55%RHの条件下で4時間放置した。(iii)その後、上記酸性洗浄剤を再度スプレーし、23℃55%RHの条件下で16時間放置した。
【0073】
上記(i)~(iii)の工程を、1サイクルとし、この1サイクルが終了する毎に、試験片表面のクラック発生状況を目視で観察し、クラックが確認されたサイクル数で以下の通り×~〇に区分した。
×:6未満
△:6以上16未満
○:16以上
【0074】
(3)耐候性試験後の耐酸性評価
(評価方法)
前記(1)の耐候性評価における38サイクル終了後の試験片を取り出し、前記(2)の耐酸性評価と同様の条件で耐候性試験後の耐酸性評価を行った。クラックが確認されたサイクル数の評価結果の区分も前記(2)と同様である。
【0075】
(4)引張破壊予備歪
ISO527-1、2に準拠した引張破壊予備歪の測定を実施し、以下の通りに×から〇に判断した。測定室の温度湿度条件は25℃、50%RHで測定を行った。
×:5%未満
△:5%以上8%未満
〇:8%以上
(5)染み出し
多目的試験片を60℃、95%RHの条件で96時間保存処理した。
≪評価法≫
保存処理した試験片の外観を、目視によって下記の通りに区分した。
○:試験片表面に染み出し物は観察されない。
△:試験片表面にわずかな染み出し物が観察される。
×:試験片表面に多量の染み出し物が観察される。
【0076】
【0077】
【0078】
上述の(2)の条件で、耐酸性評価、および耐候性試験後の耐酸性評価を6サイクル以上行っても、実施例1~17のポリアセタール樹脂組成物からなる試験片では、クラックが生じることはなかった。
【0079】
これに対し、耐酸性評価において、比較例1、4、5、11のポリアセタール樹脂組成物からなる試験片では、6サイクルが終了するまでの間に、試験片にクラックが生じた。また耐候性試験後の耐酸性評価では、比較例1~5、7、9、11において要求性能に不足していた。
【0080】
比較例6では、耐酸性、耐候性は改善されたが、ポリアセタール樹脂の特性が劣化し、さらに引張破壊予備歪にも劣るものとなった。
実施例、比較例より、本発明品は、耐酸性洗浄剤性および光耐性においてともに優れていることが確認された。