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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】光変調器
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/035 20060101AFI20230110BHJP
   G02B 6/125 20060101ALI20230110BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
G02F1/035
G02B6/125 301
G02B6/12 363
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018142792
(22)【出願日】2018-07-30
(65)【公開番号】P2020020890
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徳一
(72)【発明者】
【氏名】片岡 優
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-191140(JP,A)
【文献】特開2016-191820(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0122161(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104133306(CN,A)
【文献】特開2010-217427(JP,A)
【文献】特開2004-302151(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0234199(US,A1)
【文献】特開平07-174929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-1/39
G02B 6/12-6/14
H04B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成した光導波路を備え、該光導波路を伝播する光波を変調する光変調器において、
該光導波路は、複数の分岐部を多段に接続した構成を備え、
前記複数の分岐部のうち第1の分岐部については、分岐点から分岐する2つの第1及び第2の分岐導波路を備え、
該第1分岐導波路は、曲率0から第1最大曲率k1に、その後該第1最大曲率k1から曲率0に曲率が連続的に変化する前半の緩和曲線と、前記前半の緩和曲線とは反対方向に曲げられ、曲率0から第2最大曲率k1’に、その後該第2最大曲率k1’から曲率0に曲率が連続的に変化する後半の緩和曲線とを備え、
該第2分岐導波路は、曲率0から第3最大曲率k2に、その後該第3最大曲率k2から曲率0に曲率が連続的に変化する前半の緩和曲線と、前記前半の緩和曲線とは反対方向に曲げられ、曲率0から第4最大曲率k2’に、その後該第4最大曲率k2’から曲率0に曲率が連続的に変化する後半の緩和曲線とを備え、
前記第1最大曲率から第4最大曲率のいずれかを有する部分の少なくとも一部には、該最大曲率と同じ一定曲率を持つ円弧が配置され、
該第1分岐導波路の前記後半の緩和曲線の終端と、該第2分岐導波路の前記後半の緩和曲線の終端とは、光導波路の伝搬軸に沿った方向において、異なる位置に配置されており、
該分岐導波路の該分岐点から所定の区間では、該第1分岐導波路と該第2分岐導波路との間で、該伝搬軸と同じ方向である分岐開始点の中心軸に対し、光導波路の曲率の変化及び幅の変化が、対称となるように設定され、
さらに、前記所定の区間の終点は、該第1分岐導波路と該第2分岐導波路との間の距離が、分岐導波路を伝播する光波のモード径以上となる位置に設定され、
各分岐導波路に形成される第2の分岐部は、該伝搬軸に沿った方向において、該第1分岐導波路と該第2分岐導波路との間で異なる位置に配置されていることを特徴とする光変調器。
【請求項2】
請求項1に記載の光変調器において、該第1の分岐部は、該分岐点から該第2の分岐部までの長さが長い方が、該分岐導波路の曲率の最大値はより小さくなることを特徴とする光変調器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光変調器において、該第1分岐導波路又は該第2分岐導波路には、前記前半の緩和曲線と前記後半の緩和曲線との間に直線を有することを特徴とする光変調器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の光変調器において、該基板は、該伝搬軸と該伝搬軸に垂直で該基板の表面に平行な軸とでは屈折率に異方性を備えることを特徴とする光変調器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器に関し、特に、基板に形成された光導波路が、複数の分岐部を多段に接続した構成を備えた光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信分野や光計測分野において、光変調器などの光導波路素子が多用されている。特に、複数のマッハツェンダー型光導波路の構造を備えたネスト型光変調器や偏波合成型の光変調器においては、素子サイズの小型化や、光学特性や高周波特性の優れた光変調器が求められている。
【0003】
複数の変調部を並列に集積させたネスト型や偏波合成型の光変調器では、変調器の基板内の接続端子(パッド部)から変調開始点までの取り回し配線の配置が問題となる。具体的には、回線の取り回しスペースの確保のため、基板のサイズが大きくなったり、取り回し線路長が長くなり、高周波信号の減衰が発生し、高周波特性の劣化が発生し易い。
【0004】
また、光損失などの光学特性の劣化を抑制するためには、光導波路の曲率を小さくする必要があり、それに伴い基板のサイズが大きくなり、光変調器の小型化が困難となる。
【0005】
特許文献1乃至3には、複数の変調部を並列に集積する際に、各変調部の変調開始点を光波の伝搬方向に対してずらして配置することが開示されている。これにより、取り回し配線を少なくし、基板サイズの大型化を抑制することが可能となる。しかしながら、分岐部から分岐した分岐導波路に対して、各分岐導波路に設けられる後段の分岐部の位置が異なるため、自ずと分岐導波路の曲率や曲げ方が、分岐導波路毎に異なることとなる。その結果、分岐部での光波を1対1の分岐比で分けることや、各分岐導波路を伝搬する光波の損失を同じに設定することが、難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6233480号公報
【文献】特許第5233765号公報
【文献】特許第6220836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、取り回し配線を少なくしながら、分岐部での分岐比を1対1に保持することが可能であり、しかも、各分岐導波路を伝搬する光波の損失を同じ程度に維持することが可能な光変調器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の光変調器は、以下の技術的特徴を有する。
(1) 基板に形成した光導波路を備え、該光導波路を伝播する光波を変調する光変調器において、
該光導波路は、複数の分岐部を多段に接続した構成を備え、前記複数の分岐部のうち第1の分岐部については、分岐点から分岐する2つの第1及び第2の分岐導波路を備え、
該第1分岐導波路は、曲率0から第1最大曲率k1に、その後該第1最大曲率k1から曲率0に曲率が連続的に変化する前半の緩和曲線と、前記前半の緩和曲線とは反対方向に曲げられ、曲率0から第2最大曲率k1’に、その後該第2最大曲率k1’から曲率0に曲率が連続的に変化する後半の緩和曲線とを備え、
該第2分岐導波路は、曲率0から第3最大曲率k2に、その後該第3最大曲率k2から曲率0に曲率が連続的に変化する前半の緩和曲線と、前記前半の緩和曲線とは反対方向に曲げられ、曲率0から第4最大曲率k2’に、その後該第4最大曲率k2’から曲率0に曲率が連続的に変化する後半の緩和曲線とを備え、
前記第1最大曲率から第4最大曲率のいずれかを有する部分の少なくとも一部には、該最大曲率と同じ一定曲率を持つ円弧が配置され、
該第1分岐導波路の前記後半の緩和曲線の終端と、該第2分岐導波路の前記後半の緩和曲線の終端とは、光導波路の伝搬軸に沿った方向において、異なる位置に配置されており、
該分岐導波路の該分岐点から所定の区間では、該第1分岐導波路と該第2分岐導波路との間で、該伝搬軸と同じ方向である分岐開始点の中心軸に対し、光導波路の曲率の変化及び幅の変化が、対称となるように設定され、
さらに、前記所定の区間の終点は、該第1分岐導波路と該第2分岐導波路との間の距離が、分岐導波路を伝播する光波のモード径以上となる位置に設定され、
各分岐導波路に形成される第2の分岐部は、該伝搬軸に沿った方向において、該第1分岐導波路と該第2分岐導波路との間で異なる位置に配置されていることを特徴とする。
【0010】
) 上記(1)に記載の光変調器において、該第1の分岐部は、該分岐点から該第2の分岐部までの長さが長い方が、該分岐導波路の曲率の最大値はより小さくなることを特徴とする。
【0011】
(3) 上記(1)又は(2)に記載の光変調器において、該第1分岐導波路又は該第2分岐導波路には、前記前半の緩和曲線と前記後半の緩和曲線との間に直線を有することを特徴とする。
(4) 上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の光変調器において、該基板は、該伝搬軸と該伝搬軸に垂直で該基板の表面に平行な軸とでは屈折率に異方性を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、基板に形成した光導波路を備え、該光導波路を伝播する光波を変調する光変調器において、該光導波路は、複数の分岐部を多段に接続した構成を備え、前記複数の分岐部のうち第1の分岐部については、分岐点から分岐する分岐導波路は、曲率の変化する緩和曲線と一定曲率を持つ円弧又は直線から構成され、該分岐導波路の該分岐点から所定の区間では、曲率が0から始まる緩和曲線で形成されると共に、光導波路の曲率の変化及び幅の変化が、該分岐導波路間で対称となるように設定され、各分岐導波路に形成される第2の分岐部は、光導波路の伝搬軸に沿った方向において、該分岐導波路間で異なる位置に配置されているため、取り回し配線を少なくしながら、分岐部での分岐比を1対1に保持することが可能であり、しかも、各分岐導波路を伝搬する光波の損失を同じ程度に維持することが可能な光変調器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の光変調器に係る第1実施例を示す図である。
図2】本発明の光変調器に係る分岐部の構成を説明する図である。
図3】分岐部における分岐導波路の曲率変化を示す図である。
図4】分岐部における対称領域を説明する図である。
図5】本発明の光変調器に係る第2実施例を示す図である。
図6】本発明の光変調器に係る第3実施例を示す図である。
図7】本発明の光変調器に係る第4実施例を示す図である。
図8】本発明の光変調器に係る第5実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の光変調器について、好適例を用いて詳細に説明する。
本発明の光変調器は、図1乃至4に示すように、基板1に形成した光導波路2を備え、該光導波路を伝播する光波を変調する光変調器において、該光導波路は、複数の分岐部(20~22)を多段に接続した構成を備え、前記複数の分岐部のうち第1の分岐部20については、分岐点から分岐する分岐導波路(20a,20b)は、曲率の変化する緩和曲線を備え、該分岐導波路の該分岐点から所定の区間では、曲率が0から始まる緩和曲線で形成されると共に、光導波路の曲率の変化及び幅の変化が、該分岐導波路間で対称となるように設定され、各分岐導波路に形成される第2の分岐部(21,22)は、光導波路の伝搬軸に沿った方向(図2の矢印Xの方向)において、該分岐導波路間で異なる位置に配置されていることを特徴とする。
【0015】
図1は、本発明の光変調器に係る第1実施例を示す平面図であり、基板1に光導波路2及び変調電極(31,32)を形成している。Lは光導波路2に入射する光波を示している。図1では、接地電極やバイアス電極が省略されている。また、図1では、基板1がXカット型の場合の電極配置を例示しているが、Zカット型の基板を用いても良いことは言うまでもない。
【0016】
基板1は、ニオブ酸リチウム(LN)やInPやSiなどの電気光学効果を有する基板が利用できる。また、平面光回路(PLC)のように、変調電極やバイアス電極で電界を印加する部分以外の基板の一部を、石英やSi基板など、光導波路と基板との屈折率差を大きくできる基板を用いて、分岐部等を構成することも可能である。
導波路の構造にはLNで用いられる拡散導波路以外にもリブ型導波路や埋め込み型導波路構造など種々の構造を用いることができる。
【0017】
本発明の光変調器の特徴は、図1の分岐部20により分岐した分岐導波路(20a,20b)の後段に他の分岐部(21,22)を配置する際に、分岐部21と分岐部22の位置が、光Lの伝搬方向(図1の横方向)に対して、ずれて配置されていることである。
【0018】
このような後段の分岐部(21,22)の配置を確保するためには、分岐部20において、分岐導波路20aと分岐導波路20bの長さを変えるだけでなく、分岐部の光導波路の形状を工夫し、分岐部での分岐比を1対1に保持すると共に、各分岐導波路を伝搬する光波の損失を同じ程度に維持することが不可欠となる。
【0019】
分岐部の具体的な構成としては、図2に示すように、分岐導波路に曲率の変化する緩和曲線を用いている。
緩和曲線の例としては、一定に曲率が変化するクロソイド曲線や3次関数が適している。それ以外にも、正弦波曲線や曲率の変化量を滑らかに変化させた曲線であっても、問題は無い。ただし、後述するように、分岐部近傍の曲率変化が等しく、曲率が異なる曲線に接続する緩和曲線を得るには、3次関数やクロソイド曲線を利用するのが簡便である。
【0020】
図2の一本の分岐導波路に着目して、曲率の変化を示したものが図3である。
図3の直線の左端が分岐部の分岐点に相当する。曲率0から徐々に曲率を増加させ、曲率が最大値(曲率kmax)を経て、曲率は徐々に減少し、曲率0となる。その後、分岐導波路は反対方向に曲げられる。その際の曲率変化は、曲率が徐々に増加し、曲率が最大値(曲率k’max)を経て、曲率は徐々に減少し、曲率0となる。曲率が変化する部分は、緩和曲線が用いられる。
【0021】
図2(又は図3)では、曲率が増加し、その後、曲率が減少する変化点において、曲率k1max又はk1’max、あるいは曲率k2max又はk2’max(図3では、曲率がkmax又はk’max)となる、一定曲率の円弧部分を設けている。
【0022】
このような一定曲率の円弧部分を設ける意図は、光損失を抑制しながら、光導波路の曲げ部分をコンパクトに構成でき、光変調器の小型化にも寄与するためである。
光導波路の光損失を抑制するには、使用できる曲率だけでなく、使用できる曲率の変化率についても制限(上限)がある。このため、分岐導波路の曲げには、緩和曲線と一定曲率の円弧を組み合わせた構造とするのが、曲げ部分のコンパクト化にも有効である。
【0023】
図2に示すように、下側の分岐導波路は、分岐点から後段の分岐部までの長さが、上側の分岐導波路よりも長い。このため、分岐導波路を伝搬する光波の光損失が増加する傾向となる。しかしながら、下側の分岐導波路の最大曲率(k2max又はk2’max)を、上側の分岐導波路の最大曲率(k1max又はk1’max)よりも小さい値としている。これにより、距離が長い側の分岐導波路の曲げが緩くなるため、曲げによる過剰損失を低減することができる。その結果、各分岐導波路から後段の分岐部に入る光波の強度を、分岐導波路間でほぼ一定に保持することも可能となる。
【0024】
前半の分岐導波路の最大曲率k1max(k2max)と後半の分岐導波路の最大曲率k1’max(k2’max)とは同じであっても、異なっても良い。同じである方がより曲げ部分をコンパクトに構成することができる。
【0025】
また、図2には明示されていないが、図3に示すように、曲率が0となった部分に直線(曲率0)を挿入することが可能である。直線部分は、緩和曲線の間に配置することが可能であるが、図3の直線の右端の曲率0の後に配置し、後段の分岐部(又は変調電極の作用開始点)の位置を調整する(後方にずらす)よう構成することも可能である。
【0026】
さらに、本発明の光変調器の特徴として、図4に示すように、分岐部の分岐点から所定の区間では、曲率が0から始まる緩和曲線で形成されると共に、光導波路の曲率の変化及び幅の変化が、該分岐導波路(20a,20b)間で対称となるように設定されている。これにより、分岐部における光波を1対1の分岐比で分岐することができる。
【0027】
対称領域は、図3に示すように、緩和曲線(曲率が増加している部分)の範囲内に設定(対称領域1)することも可能であるが、緩和曲線の後、一定曲率(曲率kmax)の円弧部分までの範囲内に設定(対称領域2)することも可能である。
【0028】
対称領域の所定区間の終端は、図4に示すように、分岐導波路(20a,20b)が所定距離d以上に離れた部分とすべきである。これは一方の分岐導波路を伝搬する光波が、他方の分岐導波路に乗り移る可能性のある不安定な領域は対称領域とし、乗り移ることが無い、安定な部分では対称領域から除外することで、1対1の分岐比を確保することができる。距離dは、分岐導波路を伝搬する光波のモード径の1倍以上に設定することが望ましい。
【0029】
図5は、本発明の光変調器に係る第2実施例を示す図である。具体的には、緩和曲線を使った分岐部を、ネスト型光導波路2の分岐側(点線A)に設けるだけでなく、合波側(点線B)にも設けている。そして、分岐側と合波側の分岐導波路の長さを互い違いに入れ替えることにより、ネスト型光導波路の親マッハツェンダー構造の各アーム間の光路長を一致させることができる。
【0030】
図6は、本発明の光変調器に係る第3実施例を示す図であり、偏波合成型光変調器において、分岐部(点線A)において、緩和曲線を使用した分岐部を用いている。変調後、基板1から放射される2つの光波は、一方の光波は波長板で偏光面を回転し、偏波合成器(PBC)として偏光ビームスプリッターを用いて、互いに偏光面を直交させる状態で合波させている。
【0031】
図7は、図6の応用例であり、本発明の光変調器に係る第4実施例を示す図である。主な特徴は、第1の分岐部20のみでなく、第2の分岐部(21,22)においても、緩和曲線を使用した分岐部を用いたものである。この構成により、光導波路の構成を小型化できるだけでなく、分岐比を1対1に保ちつつ、光伝搬損失を抑制する構成が可能となる。
【0032】
さらに、図8に本発明の光変調器に係る第5実施例を示すように、分岐部(20~22)の前段に光導波路の3分岐構造を採用し、光導波路を伝搬する光波の揺動部分(高次モード光)を除去する構成を組み込むことも可能である。これにより、分岐部での分岐比を1対1に安定的に維持することが可能となる。分岐部20の前段の3分岐構造は、外部から入力される光波が、基板1の光導波路2に結合する際に発生する光波の揺動部分を除去するものである。一方、分岐部(21,22)の前段の3分岐構造は、分岐部(分岐点や分岐導波路の曲げ部分)で発生した光波の揺動部分を除去するための構成である。
【0033】
基板1に形成する光導波路は、LN基板にTi拡散で形成するものだけでなく、光導波路に沿った溝を形成したリッジ型光導波路であっても良い。また、基板の厚みを20μm以下に設定した薄板構造を採用し、光波とマイクロ波(変調信号)との速度整合を図る構成など、当業者にとって公知の技術を本発明の光変調器に組み込むことも可能であることは言うまでもない。
【0034】
基板1が、光導波路を伝搬する光波の伝搬方向(図2のX軸)とその垂直方向(図2のY軸)において、屈折率に異方性を有している場合は、1対1の分岐比を得るためには、分岐開始点の中心軸を伝搬方向(X軸)に一致させた対称構造とする必要がある。そして、同じ曲率変化で曲げ方向の異なる緩和曲線、円弧を組み合わせたS字曲線を用いることで曲線の終点の方向を、伝搬方向(X軸方向)に設定できる。これにより、接続される後段分岐部の方向についてもX軸方向に一致させることが可能となり、多段分岐でも分岐比が1対1となる構造を容易に構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上説明したように、本発明によれば、取り回し配線を少なくしながら、分岐部での分岐比を1対1に保持することが可能であり、しかも、各分岐導波路を伝搬する光波の損失を同じ程度に維持することが可能な光変調器を提供することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 基板
2 光導波路
20~22 分岐部
20a,20b 分岐導波路
31,32 変調電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8