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特許7205413レーザマーク付きシリコンウェーハの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】レーザマーク付きシリコンウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20230110BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230110BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20230110BHJP
【FI】
H01L21/02 A
H01L21/304 621A
B23K26/00 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019145410
(22)【出願日】2019-08-07
(65)【公開番号】P2021027243
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】平川 瑶一朗
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-504964(JP,A)
【文献】特開2000-263840(JP,A)
【文献】特開2013-093493(JP,A)
【文献】特開2011-029355(JP,A)
【文献】特開2003-188059(JP,A)
【文献】特開2000-286173(JP,A)
【文献】特開2014-036134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/304
B23K 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方法で育成した単結晶シリコンインゴットをスライスし、面取り処理を施したシリコンウェーハに、複数のドットを有するレーザマークを印字するレーザマーク印字工程と、
前記シリコンウェーハの少なくともレーザマークが印字された領域に対してエッチング処理を施すエッチング工程と、
前記エッチング工程後の前記シリコンウェーハの表面に対して研磨処理を施す研磨工程と、
を含み、
前記複数のドットの各々は、紫外領域の波長のレーザ光を用いて形成し、
前記複数のドットの各々の形成は、レーザ光を複数回照射することにより行い、
前記複数回のレーザ光の照射のパルス数は、1秒当たり15000以上であり、
前記エッチング工程における取り代は、片面当たり1.5μm以上12.5μm以下であり、
全てのドットについて加工歪みが除去されていることを特徴とするレーザマーク付きシリコンウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記エッチング工程において用いる薬液は、酸またはアルカリ薬液である、請求項に記載のレーザマーク付きシリコンウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザマークの印字方法およびレーザマーク付きシリコンウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスの基板として、シリコンウェーハが広く使用されている。このシリコンウェーハは、以下のように得られる。すなわちまず、チョクラルスキー(Czochralski、CZ)法等により育成した単結晶シリコンインゴットをブロックに切断し、ブロックの外周部を研削した後、スライスする。
【0003】
次いで、スライスにより得られたシリコンウェーハに対して、面取り処理、およびラップ処理、平面研削処理、両頭研削処理などの処理の1つまたは複数の処理を適宜施す。これらの処理が施されたシリコンウェーハのおもて面または裏面の外周部には、レーザ光の照射によりウェーハ管理や識別のための識別符号(マーク)を印字する場合がある。レーザ光により印字されたマーク(以下、「レーザマーク」と言う。)は、複数の凹部(ドット)の集合からなる文字や記号で構成され、目視またはカメラ等により識別可能な大きさを有している。従来、上記レーザ光としては、赤外領域の波長のものが使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記レーザ光の照射により、ドットの周縁には環状の隆起部が形成される。そのため、上記レーザマークが印字されたシリコンウェーハの少なくともレーザマークが印字された領域(以下、「レーザマーク領域」とも言う。)に対して、エッチング処理を施して上記隆起部を除去した後、シリコンウェーハの表面に対して研磨処理を施す(例えば、特許文献2参照)。そして、研磨処理が施されたシリコンウェーハに対して最終洗浄を施し、各種検査を行って所定の品質基準を満たすものが製品として出荷される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-772号公報
【文献】特開2011-29355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで近年、半導体デバイスの微細化・高集積化が益々進行し、シリコンウェーハには極めて高い平坦性が要求されている。また、デバイス形成領域についてもウェーハ径方向外側に年々拡大しており、ウェーハ外周部に対しても高い平坦性が要求されている。
【0007】
上述のように、ドット周縁に形成された隆起部はエッチング処理により除去されている。しかしながら、本発明者の検討の結果、上述のように隆起部を除去しても、レーザ光照射の熱影響に起因するドット周縁の加工歪みが完全に除去されず、残留することが判明した。そして、こうした加工歪みが残留した状態でシリコンウェーハに対して研磨処理を施すと、ウェーハ表面が均一に研磨されず、ウェーハ外周部の平坦度が低下するおそれがある。
【0008】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、レーザマークを構成するドットの周縁に残留する加工歪みを低減することができるレーザマークの印字方法およびレーザマーク付きシリコンウェーハの製造方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の要旨構成は以下の通りである。
[1]シリコンウェーハに複数のドットを有するレーザマークを印字する方法において、
前記複数のドットの各々は、紫外領域の波長のレーザ光を用いて形成することを特徴とするレーザマークの印字方法。
【0010】
[2]前記複数のドットの各々の形成は、レーザ光を複数回照射することにより行う、前記[1]に記載のレーザマークの印字方法。
【0011】
[3]前記複数回のレーザ光の照射のパルス数は、1秒当たり15000以上である、前記[2]に記載のレーザマークの印字方法。
【0012】
[4]所定の方法で育成した単結晶シリコンインゴットをスライスして得られたシリコンウェーハに、前記[1]~[3]のいずれかに記載のレーザマークの印字方法によりレーザマークを印字するレーザマーク印字工程と、
前記シリコンウェーハの少なくともレーザマークが印字された領域に対してエッチング処理を施すエッチング工程と、
前記エッチング工程後の前記シリコンウェーハの表面に対して研磨処理を施す研磨工程と、
を含むことを特徴とするレーザマーク付きシリコンウェーハの製造方法。
【0013】
[5]前記エッチング工程における取り代は、片面当たり1.5μm以上である、前記[4]に記載のレーザマーク付きシリコンウェーハの製造方法。
【0014】
[6]前記エッチング工程において用いる薬液は、酸またはアルカリ薬液である、前記[4]または[5]に記載のレーザマーク付きシリコンウェーハの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、レーザマークを構成するドットの周縁に残留する加工歪みを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明によるレーザマーク付きシリコンウェーハの製造方法のフローチャートである。
図2】レーザ光の波長およびエッチングの取り代と、ドット周縁に残留する加工歪みとの関係を示す図である。
図3】レーザ光照射の1秒当たりのパルス数と、ドット周縁に残留する加工歪みとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(レーザマークの印字方法)
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明によるレーザマークの印字方法は、シリコンウェーハに複数のドットを有するレーザマークを印字する方法である。ここで、上記複数のドットの各々は、紫外領域の波長のレーザ光を用いて形成することを特徴とする。
【0018】
上述のように、本発明者の検討の結果、エッチング処理によりレーザ光照射により形成された隆起部を除去しても、ドット周縁の加工歪みが完全に除去されずに残留し、その後の研磨処理によってウェーハ外周部の平坦度が低下することが分かった。
【0019】
本発明者は、上記加工歪みを低減する方途について鋭意検討した。後述する実施例に示すように、エッチング処理における取り代を極めて大きくすれば(例えば、50μm)、ドット周縁の加工歪みを完全に除去することはできる。しかし、現在のウェーハ製造プロセスにおいて、エッチング処理における取り代は数μm程度であるため、生産コストの点で好ましくない。
【0020】
そこで本発明者は、上述のようにエッチング処理の取り代を極めて大きくしなくとも、ドット周縁の加工歪みを低減する方途について鋭意検討した。その結果、レーザマークを構成する複数のドットの各々を、紫外領域の波長のレーザ光を用いて形成することに想到したのである。
【0021】
すなわち、特許文献1をはじめとする従来法においては、レーザマークを構成するドットの形成には、赤外領域の波長のレーザ光が一般的に使用されている。本発明者は、ドット周縁の加工歪みとレーザ光の波長との関係を検討した。その結果、後述する実施例に示すように、レーザ光の波長を短くすることによって加工歪みが低減され、とりわけ紫外領域の波長のレーザ光を用いることによって、ドット周縁の加工歪みが大きく低減されることが判明し、本発明を完成させたのである。以下、本発明の各構成について説明する。
【0022】
レーザマークを印字するシリコンウェーハは、CZ法や浮遊帯域溶融法(Floating Zone、FZ)法により育成された単結晶シリコンインゴットに対して、公知の外周研削処理、スライス処理、面取り処理、およびラップ処理、平面研削処理、両頭研削処理などの処理の1つまたは複数の処理を適宜施して得られたものを用いることができる。
【0023】
上記単結晶シリコンインゴットの育成は、育成したシリコンインゴットから採取されたシリコンウェーハが所望の特性を有するように、酸素濃度や炭素濃度、窒素濃度等を適切に調整することができる。また、導電型についても、適切なドーパントを添加してn型またはp型とすることができる。
【0024】
シリコンウェーハの直径は、例えば200mmとすることができるし、300mm以上(例えば、300mmや450mm)とすることもできる。また、シリコンウェーハの厚みは、仕様に応じて適切な厚み(例えば、700μm~1mm)とすることができる。
【0025】
上述のように、本発明においては、レーザマークを構成する複数のドットの各々を、紫外領域の波長のレーザ光を用いて形成することが肝要である。これにより、レーザ光照射による熱影響を低減して、ドット周縁の加工歪みを低減することができる。なお、本発明において、「紫外領域の波長」とは、355nm以下の波長を意味している。
【0026】
レーザ光源としては、例えばアルゴンレーザやエキシマレーザ、YAGレーザを用いることができる。このうち、レーザマーク用の光源として一般的なYAGレーザを用いることが好ましい。
【0027】
1回のレーザ光の照射により形成されるドットの深さは、レーザ光の出力に依存せず、装置にもよるが、例えば2μm~10μm程度である。そのため、1回のレーザ光の照射により所望とする深さのドットを形成することができない場合には、レーザ光を複数回照射して形成してもよい。
【0028】
その際、上記複数回のレーザ光の照射のパルス数は、1秒当たり10000以上とすることが好ましく、1秒当たり15000以上とすることがより好ましい。複数回のレーザ光の照射のパルス数を1秒当たり10000以上とすることにより、1回のパルスレーザ照射当たりのエネルギーを低減して、ドット周縁の加工歪みをより低減することができる。また、レーザ光照射のパルス数を1秒当たり15000以上とすることにより、ドット周縁の加工歪みをほぼ全て除去することができる。
【0029】
上述のようにレーザマークが印字されたシリコンウェーハは、その後エッチング工程および研磨工程に供される。エッチング工程により、レーザマークの周縁に形成された隆起部が除去されるが、従来法に比べてドット周縁に残留する加工歪みが低減されるため、研磨工程後のシリコンウェーハ外周部の平坦性を向上させることができる。
【0030】
(レーザマーク付きシリコンウェーハの製造方法)
次に、本発明によるレーザマーク付きシリコンウェーハの製造方法について説明する。図1は、本発明によるレーザマーク付きシリコンウェーハの製造方法のフローチャートを示している。この図に示すように、本発明は、CZ法やFZ法などの所定の方法で育成した単結晶シリコンインゴットをスライスし、面取り処理を施したシリコンウェーハに、上述した本発明によるレーザマークの印字方法によりレーザマークを印字するレーザマーク印字工程(ステップS1)と、上記シリコンウェーハの少なくともレーザマークが印字された領域に対してエッチング処理を施すエッチング工程(ステップS2)と、該エッチング工程後の上記シリコンウェーハの表面に対して研磨処理を施す研磨工程(ステップS3)とを含むことを特徴とする。
【0031】
まず、ステップS1のレーザマーク印字工程は、上述の本発明によるレーザマークの印字方法で行う工程と同一であるため、説明は割愛するが、複数のドットの各々を紫外領域の波長のレーザ光を用いて形成することにより、ドット周縁に残留する加工歪みを低減することができる。
【0032】
上記レーザマーク印字工程の後、ステップS2において、シリコンウェーハの少なくともレーザマークが印字された領域に対してエッチング処理を施す(エッチング工程)。このエッチング工程は、ステップS1におけるレーザ光の照射により、ドットの周縁に形成された隆起部を除去するとともに、ラップ処理によりシリコンウェーハに生じた歪みを除去することもできる。
【0033】
上記エッチング工程の一例として、レーザマーク印字後のシリコンウェーハを、エッチング槽に充填されたエッチング液に浸して保持し、ウェーハを回転させながらエッチングする方法を挙げることができる。
【0034】
エッチング液としては、酸性またはアルカリ性のエッチング液を用いることができ、アルカリ性のエッチング液を用いることが好ましい。酸性のエッチング液としては、硝酸やフッ酸からなるエッチング液を用いることができる。また、アルカリ性のエッチング液としては、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム水溶液からなるエッチング液を用いることが好ましい。このエッチング工程により、レーザマークを構成するドット部周縁の隆起部を除去するとともに、ラップ処理によりシリコンウェーハに生じた歪みを除去することもできる。
【0035】
上記エッチング処理の取り代は、片面当たり0.5μm以上とすることが好ましく、1.5μm以上とすることがより好ましい。後述する実施例に示すように、エッチング処理の取り代を片面当たり1.5μmとすることにより、加工歪みをほぼ完全に除去することができる。
【0036】
一方、エッチングの取り代の上限は、上述したドット周縁の加工歪みの除去やラップ処理による歪みの除去の点では特に限定されないが、製造コストの点からは15μm以下とすることが好ましい。
【0037】
上記エッチング工程の後、ステップS3において、エッチング工程後のシリコンウェーハの表面に対して研磨処理を施す(研磨工程)。本研磨工程においては、砥粒を有する研磨スラリーを用いてエッチング後のウェーハの両面を研磨する。
【0038】
本研磨工程は、キャリアにシリコンウェーハを嵌め込み、ウェーハを、研磨布を貼りつけた上定盤および下定盤で挟み、上下定盤とウェーハとの間に、例えばコロイダルシリカ等のスラリーを流し込み、上下定盤をキャリアに対して相対的に回転させて、シリコンウェーハの両面に対して鏡面研磨処理を施す。これにより、ウェーハ表面の凹凸を低減して平坦度の高いウェーハを得ることができる。
【0039】
具体的には、研磨スラリーとしては、研磨砥粒としてコロイダルシリカを含むアルカリ性のスラリーを用いることができる。
【0040】
上記研磨工程の後、シリコンウェーハの少なくとも片面を片面ずつ仕上げ研磨する片面仕上げ研磨する。この仕上げ研磨においては、片面のみの研磨および両面の研磨の両者を含む。両面を研磨する場合には、一方の表面の研磨を行った後他方の表面の研磨を行う。
【0041】
その後、仕上げ研磨処理の後、研磨処理が施されたシリコンウェーハに対して洗浄する。具体的には、例えばアンモニア水、過酸化水素水および水の混合物であるSC-1洗浄液や、塩酸、過酸化水素水および水の混合物であるSC-2洗浄液を用いて、ウェーハ表面のパーティクルや有機物、金属等を除去する。
【0042】
最後に、洗浄されたシリコンウェーハの平坦度、ウェーハ表面のLPDの数、ダメージ、ウェーハ表面の汚染等を検査する。この検査において所定の品質を満足するシリコンウェーハのみが製品として出荷される。
【0043】
こうして、レーザマークを構成するドット周縁の加工歪みを低減することができ、外周部の平坦度が高いレーザマーク付きシリコンウェーハを製造することができる。
【実施例
【0044】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0045】
<ドット周縁の加工歪みとレーザ光の波長との関係>
(発明例1~3)
図1に示したフローチャートに従って、本発明によるレーザマーク付きシリコンウェーハを作製した。まず、シリコンウェーハ外周部にレーザマークを印字した(レーザマーク印字工程)。具体的には、CZ法により育成された直径300mmの単結晶シリコンインゴットをブロックに切断し、外周研削した後、スライスした。得られたシリコンウェーハに対して面取り処理、ラップ処理を施した後、シリコンウェーハの裏面外周部に、深さ55μmの複数のドットで構成されたレーザマークを印字した。その際、レーザ光としては紫外領域の波長(355nm)のものを用いた。また、各ドットはレーザ光を18回照射することによって形成し、レーザ光照射のパルス数は、1秒当たり15000とした。
【0046】
上述のようにシリコンウェーハ裏面外周部にレーザマークが印字されたシリコンウェーハに対してエッチング処理を施した(エッチング工程)。具体的には、エッチング液としては水酸化カリウム水溶液を用い、取り代は、片面当たり1.5μm(発明例1)、12.5μm(発明例2)および50μm(発明例3)とした。
【0047】
その後、エッチング処理が施されたシリコンウェーハに対して、両面研磨処理を施した(研磨工程)。具体的には、キャリアにエッチング処理が施されたシリコンウェーハを嵌め込み、ウェーハを、研磨布を貼りつけた上定盤および下定盤で挟み、上下定盤とウェーハとの間に、コロイダルシリカを含むアルカリ性の研磨スラリーを流し込み、上下定盤およびキャリアを互いに反対方向に回転させて、シリコンウェーハの両面に対して鏡面研磨処理を施した。この両面研磨処理での取り代は、片面で約5.0μmとした。
【0048】
続いて、上記研磨処理が施されたシリコンウェーハに対して仕上げ研磨した後、洗浄して、本発明によるレーザマーク付きシリコンウェーハを得た。得られたレーザマーク付きシリコンウェーハのレーザマーク部分に対して、株式会社リガク製XRT装置を用いて、ドット周縁の加工歪みを測定した。得られたXRT画像を図2に示す。
【0049】
(比較例1)
発明例1と同様に、レーザマーク付きシリコンウェーハを作製した。ただし、レーザマークを印字する際に用いたレーザ光は、赤外領域(波長1064nm)の波長のものを用いた。その他の条件は、発明例1と全て同じである。得られたXRT画像を図2に示す。
【0050】
(比較例2)
発明例2と同様に、レーザマーク付きシリコンウェーハを作製した。ただし、レーザマークを印字する際に用いたレーザ光は、赤外領域(波長1064nm)の波長のものを用いた。その他の条件は、発明例2と全て同じである。得られたXRT画像を図2に示す。
【0051】
(比較例3)
発明例3と同様に、レーザマーク付きシリコンウェーハを作製した。ただし、レーザマークを印字する際に用いたレーザ光は、赤外領域(波長1064nm)の波長のものを用いた。その他の条件は、発明例3と全て同じである。得られたXRT画像を図2に示す。
【0052】
(比較例4)
発明例1と同様に、レーザマーク付きシリコンウェーハを作製した。ただし、レーザマークを印字する際に用いたレーザ光は、可視領域(波長532nm)の波長のものを用いた。その他の条件は、発明例1と全て同じである。得られたXRT画像を図2に示す。
【0053】
(比較例5)
発明例2と同様に、レーザマーク付きシリコンウェーハを作製した。ただし、レーザマークを印字する際に用いたレーザ光は、可視領域(波長532nm)の波長のものを用いた。その他の条件は、発明例2と全て同じである。得られたXRT画像を図2に示す。
【0054】
(比較例6)
発明例3と同様に、レーザマーク付きシリコンウェーハを作製した。ただし、レーザマークを印字する際に用いたレーザ光は、可視領域(波長532nm)の波長のものを用いた。その他の条件は、発明例3と全て同じである。得られたXRT画像を図2に示す。
【0055】
図2は、レーザ光の波長およびエッチングの取り代と、ドット周縁に残留する加工歪みとの関係を示しており、周縁に加工歪みが残留しているドットが示されている一方、周縁に加工歪みが残留していないドットは示されていない。また、各画像の下方には、全体のドット数に対する加工歪みが残留しているドット数の割合が記載されている。
【0056】
図2から、エッチング処理における取り代が片面当たり1.5μmおよび12.5μmであり、レーザ光の波長が1064nmおよび532nmの場合(比較例1、2、5および6)、多くのドットの周縁に加工歪みが残留していることが分かる。一方、レーザ光の波長が355nmの場合には、全てのドットについて、周縁の加工歪みが除去されていることが分かる。なお、エッチング処理における取り代が片面当たり50μmの場合には、全てのレーザ光波長についてドット周縁の加工歪みが除去されているが、現在のウェーハ製造プロセスにおける取り代は数μm程度であるため、50μmの取り代は製造コストの点で好ましくない。
【0057】
<レーザ光の照射パルス数とドット周縁に残留する加工歪みとの関係>
(発明例4)
発明例1と同様に、レーザマーク付きシリコンウェーハを作製した。ただし、複数のドットを形成する際のレーザ光照射のパルス数を10000とした。その他の条件は、発明例1と全て同じである。得られたXRT画像を図3に示す。
【0058】
(発明例5)
発明例2と同様に、レーザマーク付きシリコンウェーハを作製した。ただし、複数のドットを形成する際のレーザ光照射のパルス数を10000とした。その他の条件は、発明例2と全て同じである。得られたXRT画像を図3に示す。
【0059】
(発明例6)
発明例1と同様に、レーザマーク付きシリコンウェーハを作製した。ただし、複数のドットを形成する際のレーザ光照射のパルス数を20000とした。その他の条件は、発明例1と全て同じである。得られたXRT画像を図3に示す。
【0060】
(発明例7)
発明例2と同様に、レーザマーク付きシリコンウェーハを作製した。ただし、複数のドットを形成する際のレーザ光照射のパルス数を20000とした。その他の条件は、発明例2と全て同じである。得られたXRT画像を図3に示す。
【0061】
(発明例8)
発明例1と同様に、レーザマーク付きシリコンウェーハを作製した。ただし、複数のドットを形成する際のレーザ光照射のパルス数を25000とした。その他の条件は、発明例1と全て同じである。得られたXRT画像を図3に示す。
【0062】
(発明例9)
発明例2と同様に、レーザマーク付きシリコンウェーハを作製した。ただし、複数のドットを形成する際のレーザ光照射のパルス数を25000とした。その他の条件は、発明例2と全て同じである。得られたXRT画像を図3に示す。
【0063】
図3は、レーザ光照射の1秒当たりのパルス数と、ドット周縁に残留する加工歪みとの関係を示している。図3は、図2に示した発明例1および発明例2のXRT画像も示している。図3から、1秒当たりのパルス数が10000の場合には、多くのドットについて加工歪みが除去されているものの、一部のドットについては加工歪みが残留していることが分かる。一方、レーザ光照射の1秒当たりのパルス数が15000、20000および25000の場合には、全てのドットについて加工歪みが除去されていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、レーザマークを構成するドット周縁に残留する加工歪みを低減することができるため、半導体ウェーハ製造業において有用である。
図1
図2
図3