(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-06
(45)【発行日】2023-01-17
(54)【発明の名称】磁気マーカ及び磁気マーカシステム
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20230110BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20230110BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20230110BHJP
E01F 11/00 20060101ALI20230110BHJP
G05D 1/02 20200101ALN20230110BHJP
【FI】
G06K19/077 248
G06K19/077 296
G06K19/077 264
G06K7/10 152
G08G1/09 F
E01F11/00
G06K7/10 160
G06K7/10 248
G05D1/02 A
(21)【出願番号】P 2019561010
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2018045770
(87)【国際公開番号】W WO2019124196
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2017244294
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129654
【氏名又は名称】大池 達也
(72)【発明者】
【氏名】山本 道治
(72)【発明者】
【氏名】長尾 知彦
(72)【発明者】
【氏名】青山 均
(72)【発明者】
【氏名】玄番 弘栄
【審査官】松平 英
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/187879(WO,A1)
【文献】特開2011-245230(JP,A)
【文献】特開2017-048420(JP,A)
【文献】特開2010-016886(JP,A)
【文献】特開2008-301390(JP,A)
【文献】特表2015-509231(JP,A)
【文献】特開2013-034140(JP,A)
【文献】特開2015-080226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/00-11/00
G05D 1/00-1/12
G06K 7/00-7/14
17/00-19/18
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に敷設される磁気マーカであって、
無線通信により送受する情報を処理する回路と、該回路から電気的に延設された第1のアンテナと、を備える無線タグを保持していると共に、
磁気発生源をなす本体の外周面の少なくとも一部に、該本体と電気的に導通しない導電層が設けられ
、
前記無線タグは、前記第1のアンテナが送受する電波を仲介する第2のアンテナを備え、該第2のアンテナが前記導電層と電気的に接触しており、
前記第2のアンテナは断面U字状をなし、前記第1のアンテナは、該断面U字状をなす第2のアンテナの内周に位置するように設けられている磁気マーカ。
【請求項2】
請求項
1において、前記導電層は、前記本体の外周面において、環状形状を呈するように形成されている磁気マーカ。
【請求項3】
請求項
2において、前記導電層がなす環状形状の内周側に前記無線タグが配置されている磁気マーカ。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項において、前記本体は、基材をなす非導電性材料の中に磁性材料よりなる粉末である磁粉を分散させた磁石である磁気マーカ。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項において、前記本体は柱状をなし、前記導電層は、該柱状の本体の端面の少なくとも一部に形成されている磁気マーカ。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項において、前記本体は柱状をなし、前記導電層は、該柱状の本体の外周側面の少なくとも一部に形成されている磁気マーカ。
【請求項7】
道路に敷設された磁気マーカを含む磁気マーカシステムであって、
前記磁気マーカは、無線通信により送受する情報を処理する回路と、該回路から電気的に延設された第1のアンテナと、を備える無線タグを保持している
と共に、磁気発生源をなす本体の外周面の少なくとも一部に、該本体と電気的に導通しない導電層を有し、
道路の路面から奥まった位置に埋設されて敷設された磁気マーカと、路面に配置されて敷設された磁気マーカとで、前記無線タグが送信する電波の周波数の仕様が異なっている磁気マーカシステム。
【請求項8】
請求項7において、前記無線タグは、前記第1のアンテナが送受する電波を仲介する第2のアンテナを備え、該第2のアンテナが前記導電層と電気的に接触している磁気マーカシステム。
【請求項9】
道路に敷設された磁気マーカを含む磁気マーカシステムであって、
前記磁気マーカは、無線通信により送受する情報を処理する回路と、該回路から電気的に延設された第1のアンテナと、を備える無線タグを保持している請求項1~
4のいずれか1項に記載されたものであり、
道路の路面から奥まった位置に埋設されて敷設された磁気マーカと、路面に配置されて敷設された磁気マーカとで、前記無線タグが送信する電波の周波数の仕様が異なっている磁気マーカシステム。
【請求項10】
請求項
7~9のいずれか1項において、前記無線タグに対して無線通信により電力を供給し、該無線タグが無線通信により送信する情報を読み取るために車両に搭載されるリーダ装置を含み、
埋設されて敷設された磁気マーカであるか、路面に配置されて敷設された磁気マーカであるか、に応じて、前記リーダ装置が電力を供給する際の電波の周波数の仕様を切り替える磁気マーカシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に敷設される磁気マーカに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両側の磁気センサにより検出可能に道路に敷設される磁気マーカが知られている(例えば、特許文献1参照。)。磁気マーカを利用すれば、例えば車線に沿って敷設された磁気マーカを利用する自動操舵制御や車線逸脱警報などの各種の運転支援のほか、自動運転を実現できる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、磁気マーカの検出により取得できる情報は、磁気マーカの有無や、磁気マーカに対する車両の幅方向のずれ量や、磁極性がN極であるかS極であるか等の情報であり、磁気マーカ側から取得できる情報の量や種類が十分とは言えないという問題がある。
【0005】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、より多くの情報を確実性高く提供可能な磁気マーカを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、道路に敷設される磁気マーカであって、
無線通信により送受する情報を処理する回路と、該回路から電気的に延設された第1のアンテナと、を備える無線タグを保持していると共に、
磁気発生源をなす本体の外周面の少なくとも一部に、該本体と電気的に導通しない導電層が設けられ、
前記無線タグは、前記第1のアンテナが送受する電波を仲介する第2のアンテナを備え、該第2のアンテナが前記導電層と電気的に接触しており、
前記第2のアンテナは断面U字状をなし、前記第1のアンテナは、該断面U字状をなす第2のアンテナの内周に位置するように設けられている磁気マーカにある。
【0007】
本発明の一態様は、道路に敷設された磁気マーカを含む磁気マーカシステムであって、
前記磁気マーカは、無線通信により送受する情報を処理する回路と、該回路から電気的に延設された第1のアンテナと、を備える無線タグを保持している上記の一態様をなす磁気マーカであり、
道路の路面から奥まった位置に埋設されて敷設された磁気マーカと、路面に配置されて敷設された磁気マーカとで、前記無線タグが送信する電波の周波数の仕様が異なっている磁気マーカシステムにある。
本発明の一態様は、道路に敷設された磁気マーカを含む磁気マーカシステムであって、
前記磁気マーカは、無線通信により送受する情報を処理する回路と、該回路から電気的に延設された第1のアンテナと、を備える無線タグを保持していると共に、磁気発生源をなす本体の外周面の少なくとも一部に、該本体と電気的に導通しない導電層を有し、
道路の路面から奥まった位置に埋設されて敷設された磁気マーカと、路面に配置されて敷設された磁気マーカとで、前記無線タグが送信する電波の周波数の仕様が異なっている磁気マーカシステムにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る磁気マーカは、無線タグを備えている。無線タグを備える磁気マーカであれば、無線通信を利用してより多くの情報を車両側に提供できる。この磁気マーカでは、本体の外周面の少なくとも一部に導電性を備える導電層が形成されている。導電層は、無線タグの外部アンテナのように機能し、無線通信の確実性を向上するために有効に作用する。
本発明に係る磁気マーカシステムでは、埋設された磁気マーカと、路面に配置された磁気マーカと、がある。埋設された磁気マーカと、路面に配置された磁気マーカとでは、無線タグが送信する電波の経路中に、例えば樹脂やアスファルト等の埋設材料が含まれるか否かが相違する。電波の経路中に埋設材料が存在すれば、埋設材料の誘電率と、空気の誘電率と、の違い等に起因し、通過する電波の周波数がずれるシフト現象が起こり得る。このシフト現象の発生を見越して無線タグが送信する電波の周波数を設定すれば、無線タグと相手方との送信の確実性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、RFIDタグ(Radio Frequency IDentification、無線タグ)2を備える磁気マーカ1に関する例である。この内容について、
図1~
図10を用いて説明する。
【0011】
磁気マーカ1は、例えば車線の中央に沿って配置される道路用のマーカである。磁気マーカ1は、例えば、車線逸脱警報やレーンキープアシストや自動運転などの各種の車両制御に利用される。例示する
図1の磁気マーカ1は、直径(D)20mm、高さ(H)28mmの円柱状を呈している。この磁気マーカ1では、本体をなす円柱状の磁石10の一方の端面に、シート状のRFIDタグ2が積層配置されている。
【0012】
まず、RFIDタグ2は、
図2のごとく、シート状部材であるタグシート20の表面にIC(Integrated Circuit)チップ27を実装した電子部品である。RFIDタグ2は、外部から無線伝送により供給された電力により動作し、ICチップ27が記憶する情報を無線で送信するように構成されている。
【0013】
タグシート20は、PET(PolyEthylene Terephthalate)フィルムから切り出したシート状部材である。タグシート20の表面には、銀ペーストよりなる導電性インクの印刷パターンであるアンテナパターン231が形成されている。アンテナパターン231は、切り欠きを有する環状を呈し、ICチップ27を配設するためのチップ配設領域(図示略)が切り欠き部分に形成されている。タグシート20にICチップ27を接合すると、アンテナパターン231がICチップ27と電気的に接続される。これにより、アンテナパターン231がなすアンテナ23が、無線通信により送受する情報を処理するための回路をなすICチップ27から電気的に延設された状態となる。
【0014】
アンテナパターン231がなすアンテナ(第1のアンテナ)23は、外部からの電磁誘導によって励磁電流が発生する給電用のアンテナとしての役割と、情報を無線送信する通信用のアンテナとしての役割と、を併せ持っている。なお、アンテナパターン231を印刷するための導電性インクとしては、銀ペーストのほか、黒鉛ペースト、塩化銀ペースト、銅ペースト、ニッケルペースト等を利用することができる。さらに、銅エッチング等によりアンテナパターン231を形成することも可能である。
【0015】
ICチップ27は、メモリ手段であるROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を含む半導体素子271を、シート状の基材273の表面に実装した電子部品である。RFIDタグ2は、このICチップ27を上記のタグシート20の表面に貼り付けて作製される。図示しない電極を設けたインターポーザ型のICチップ27の貼り付けには、導電性の接着材のほか、超音波接合やカシメ接合など様々な接合方法を採用できる。
【0016】
上記のタグシート20や基材273としては、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂フィルムや、紙などを採用できる。上記ICチップ27としては、半導体素子271そのものであっても良く、半導体素子271をプラスチック樹脂等によりパッケージングしたチップであっても良い。
【0017】
磁気マーカ1の本体(磁気発生源)をなす磁石10(
図1)は、磁性材料である酸化鉄の磁粉を基材である高分子材料(非導電性材料)中に分散させた等方性フェライトプラスチックマグネットである。非導電性の高分子材料中に磁粉を分散させた磁石10は、電気伝導率が低いという電気的特性を備えていると共に、最大エネルギー積(BHmax)=6.4kJ/m
3という磁気的特性を備えている。
【0018】
この磁石10を含む磁気マーカ1の表面の磁束密度Gsは45mT(ミリテスラ)となっている。45mTの磁束密度は、例えばオフィス等のホワイトボードや家庭の冷蔵庫の扉等に貼り付けて使用されるマグネットシート等の表面の磁束密度と同等あるいはそれ以下である。
【0019】
磁石10の外周面の一部は、導電性を備える導電層の一例をなす金属箔16により覆われている。この金属箔16は、アルミニウムよりなり、厚さが0.03mmである。上記の通り磁石10は電気伝導率が低いため、金属箔16は磁石10本体と電気的に導通しない状態になっている。
【0020】
金属箔16による導電層を形成した範囲が明確となるよう、金属箔16を平面に展開した形状を
図3に示す。同図では、磁気マーカ1の外周側面に対応する円筒部分について、周方向の1箇所を破線により破断して示している。同図のごとく、磁気マーカ1では、円柱状をなす磁石10の一方の端面、及び外周側面の全面に亘って金属箔16による導電層が形成されている。上記のRFIDタグ2は、金属箔16を設けた磁石10の端面に積層配置されている。
【0021】
磁気マーカ1におけるRFIDタグ2は、
図4のごとく、樹脂製のシート状のスペーサ29が介設された状態で、本体をなす磁石10の端面に配設されている。磁石10の外周面を覆う金属箔16とRFIDタグ2とは、板状の中間部材の一例をなす樹脂製のスペーサ29により電気的に絶縁された状態となっている。
【0022】
以上の磁気マーカ1は、
図5のごとく、例えば路面30Sに穿設された収容穴31に収容された状態で敷設される。このように敷設された磁気マーカ1は、車両3側の磁気センサ35の取付位置として想定される高さ100mm~250mmの範囲において8μTを超える磁気を作用する。8μTを超える磁気であれば、例えば、磁束密度の測定レンジが±0.6mTであって、測定レンジ内の磁束分解能として0.02μT程度の高感度を実現するMI(Magneto Impedance)センサ等により確実性高く計測できる。
【0023】
この磁気マーカ1では、磁石10の外周面を覆う金属箔16がRFIDタグ2のアンテナ23(
図2)と静電結合あるいは電磁結合等により電気的に非接触の状態で結合し、アンテナ23の電波を増幅するように作用する。つまり、磁気マーカ1では、磁石10の外周面を覆う金属箔16がRFIDタグ2の外部アンテナのように作用できる。金属箔16は、RFIDタグ2から情報を取得する車両3側のタグリーダ(リーダ装置の一例)36とRFIDタグ2との無線通信の確実性を向上するのに役立つ。なお、
図5では、磁気センサ35とタグリーダ36とを別体で図示しているが、磁気センサ35とタグリーダ36とが一体化されたユニットであっても良い。
【0024】
ここで、本例の磁気マーカ1の有利な通信特性を示すため、金属箔16を持たない磁気マーカとの比較結果を表1に示す。
【表1】
【0025】
表1では、磁気マーカの鉛直方向上方に位置するタグリーダ36がエラー率1%未満で通信できる距離B(
図6)を通信距離として示している。そして、路面30Sから上端面までの距離A(
図6)が10mmとなるように磁気マーカが埋設された状態(埋設状態)、及び単体の状態について、上記の通信距離を比較して示している。
【0026】
表1から明らかなように、路面30Sをなすアスファルトに埋設されていない単体状態の磁気マーカについては、金属箔16の有無に依らず、車両における100~250mmの磁気センサの取付高さに対して十分な通信距離が得られている。一方、路面30Sに埋設された状態では、金属箔16のない磁気マーカの通信距離が著しく短くなっている。これに対して、金属箔16を備える本例の磁気マーカ1であれば、埋設状態であっても通信距離を維持できる。
【0027】
このように外周面が金属箔16により覆われた本例の磁気マーカ1では、路面30Sに埋設された状態においてもRFIDタグ2の通信特性が損なわれる度合いが少ない。RFIDタグ2が取り付けられた本例の磁気マーカ1は、車両3側との通信を確実性高く実行でき、より多くの情報を車両側に提供できる。
【0028】
なお、磁気マーカ1では、磁石10の端面とRFIDタグ2との間に樹脂製のスペーサ29が配置されており(
図4参照。)、金属箔16とRFIDタグ2とが電気的に接触しない状態になっている。この構成に代えて、RFIDタグ2のアンテナ23と金属箔16とが電気的に接触する構成を採用することも良い。ここで、電気的に接触する状態とは、例えばアンテナ23が金属箔16に直接、あるいは導電体を介在して間接的に接触しており、両者間の直流抵抗がゼロに近くなる状態を意味している。一方、電気的に接触しない状態とは、例えばアンテナ23が金属箔16に接触しておらず、両者間の直流抵抗が十分に大きい状態を意味している。
【0029】
なお、RFIDタグ2としては、
図7及び
図8のごとく、断面U字状のアンテナ282(第2のアンテナ)が樹脂中に保持されたタグであっても良い。断面U字状のアンテナ282は、例えば、金属製の短冊状の平板をU字状に折り曲げて加工される。同図のRFIDタグ2は、例えばアンテナ282の周囲に樹脂材料を注入して固めるインサート成形等により作成される。このRFIDタグ2では、表裏の両面にアンテナ282の金属面が露出する状態となっている。さらに、このRFIDタグ2では、アンテナ282がなすU字状の内側の底面(内周面)に対面するようにシート状のタグ281が樹脂中で保持されている。タグ281は、タグシートの表面にICチップを実装すると共にアンテナパターンが設けられたものであり、
図2に例示したRFIDタグと構成が似通っている。
【0030】
図7及び
図8のRFIDタグ2では、タグ281とアンテナ282との間に隙間が設けられ、樹脂を介して両者が電気的に接触せず電気的に絶縁された状態にある。このRFIDタグ2では、タグ281が内蔵するアンテナ(回路をなすICチップから電気的に延設されたアンテナ)が、断面U字状のアンテナ282と静電結合あるいは電磁結合等により電気的に非接触の状態で結合する。アンテナ282は、タグ281のアンテナが送受する電波を仲介し、電波を増幅して電波強度を高めるアンテナとして機能する。
【0031】
図7及び
図8のごとく、このRFIDタグ2は、断面U字状のアンテナ282の金属面が露出する表面を介して本体をなす磁石10の端面に取り付けられている。RFIDタグ2の取付面をなす磁石10の端面には金属箔16が形成されており、断面U字状のアンテナ282が金属箔16と電気的に接触する状態となっている。したがって、
図8の磁気マーカ1では、金属箔16がアンテナ282と共に、タグ281が内蔵するアンテナの外部アンテナのように機能する。なお、RFIDタグ2におけるタグ281の配置位置としては、断面U字状のアンテナ282の内周に位置していれば良い。アンテナ282がなすU字状の底面ではなく、互いに対面する内周面のうちのいずれか一方と対面するようにシート状のタグ281が保持されていても良い。さらに、U字状の底面と直交すると共に、互いに対面する内周面にも直交するよう、シート状のタグ281が保持されていても良い。
【0032】
さらに、タグ281とアンテナ282との間に隙間が設けられ、樹脂を介して両者が電気的に絶縁された状態にある
図7及び
図8のRFIDタグ2について、タグ281が内蔵するアンテナとアンテナ282とを電気的に接触させても良い。この場合には、タグ281が内蔵するアンテナが、アンテナ282を介在して金属箔16と電気的に接触することになる。
【0033】
本例では、金属箔16で覆われた磁気マーカ1の端面にRFIDタグ2を配設しているが、RFIDタグ2を磁気マーカ1の外周側面に配設することも良い。この場合、磁気マーカ1の外周側面のうち金属箔で覆われた箇所にRFIDタグ2を配設すると良い。さらに、インサート成形等により磁石10の内部にRFIDタグ2を埋込むことも良い。この場合にも、磁石10の外周に設けた金属箔16がRFIDタグ2の外部アンテナのように作用できる。
【0034】
本例では、一方の端面及び外周側面が金属箔16で覆われた磁気マーカ1を例示したが、環状形状を呈する
図9の金属箔16を、
図10のように本体をなす磁石10の外周側面に巻き付けることも良い。
図9の金属箔16が外周側面に巻き付けられた磁気マーカ1において、アンテナを内蔵するRFIDタグ2を環状形状の金属箔16の内周側に配置すると良い。この場合には、RFIDタグ2が内蔵するアンテナに対して金属箔16が静電結合あるいは電磁結合等により結合し、金属箔16がRFIDタグ2の外部アンテナのように機能する。
【0035】
なお、環状形状の金属箔16の内周側にRFIDタグ2を配置するに当たっては、金属箔16に対してRFIDタグ2を近接させると良い。近接させることで導電層をなす金属箔16とRFIDタグ2が内蔵するアンテナとの結合の度合いを強くでき、RFIDタグ2の無線による通信感度を向上できる。さらに、環状形状の金属箔16の内周縁部の一部を外周側に窪ませて凹み部160を形成し、この凹み部160にRFIDタグ2を配置することも良い。このように凹み部160にRFIDタグ2を配置すれば、このRFIDタグ2が内蔵するアンテナを金属箔16により取り囲むことができる。この場合には、RFIDタグ2が内蔵するアンテナの外周のうち、導電層をなす金属箔16に近接する部分の割合を拡大できる。この割合を拡大できれば、金属箔16とRFIDタグ2が内蔵するアンテナとの結合の度合いを強くできる。
【0036】
本例では、RFIDタグ2と磁気マーカ1を覆う金属箔16との間にスペーサ29を介設した構造としたが、スペーサ29を省略しても良い。この場合、ICチップ27が実装された表面ではなく、裏面のタグシート20側が金属箔16に接するようにRFIDタグ2を配設すれば良い。RFIDタグ2のタグシート20は電気伝導率が低いPETフィルム等からなっている。上記のようにICチップ27の実装面を外側にすれば、金属箔16とRFIDタグ2との電気的な絶縁状態を保つことができる。
【0037】
例示した磁気マーカ1は、柱状を呈するが、シート状の薄い磁気マーカであっても良い。シート状の磁気マーカについては、表面の少なくとも一部に金属箔16を形成すると共に、その金属箔16の表面側にRFIDタグ2を配設すると良い。
例えば柱状の磁気マーカ1などは、道路の表面をなす路面から奥まった位置に埋設する敷設態様を採用し易い一方、シート状の磁気マーカについては、路面に貼り付けたり載置する等により路面に配置する敷設態様を採用し易い。ところで、磁気マーカが埋設された場合、RFIDタグ2からタグリーダ36に至る電波の経路中に、磁気マーカを埋設するための樹脂やアスファルト(舗装材料)等の媒質が存在することになる。この場合、樹脂やアスファルト等の媒質の誘電率と空気の誘電率との違い等に起因し、通過する電波の周波数がずれるシフト現象が起こる可能性がある。一方、磁気マーカが路面に貼り付け等された場合であれば、樹脂やアスファルト等の媒質が電波の経路中にほとんど存在しないため、上記のような周波数のシフト現象のおそれが少ない。それ故、路面に埋設されているため上記の周波数のシフト現象が起こり易い磁気マーカであるか、路面に配置されておりシフト現象のおそれが少ない磁気マーカであるか、に関わらずRFIDタグ2及びタグリーダ36の周波数的な仕様(搬送波などの電波の周波数の仕様)が同一であると、タグリーダ36が受信する電波の周波数に違いが生じたり、RFIDタグ2が受信する電波の周波数に違いが生じるおそれがある。
【0038】
そこで、埋設された磁気マーカと、路面に配置された磁気マーカとで、RFIDタグ2が情報を無線送信する際の搬送波の周波数(搬送周波数)の仕様や、RFIDタグ2に電力を送電する際の搬送周波数の仕様などの電波の仕様が異なる磁気マーカシステムであると良い。埋設された磁気マーカについては、上記の周波数のシフト現象を考慮して、周波数のシフト分だけ、RFIDタグ2が送信する電波(搬送波など)の周波数をずらして設定すると良い。また、タグリーダ36側では、動作電力を送電(無線通信による電力供給)する際の搬送周波数を、周波数のシフト分だけずらして設定すると良い。このようにシフト現象の分だけ搬送波周波数をずらせば、情報を送信する際の誤り率の低減や、送電効率の向上を図ることが可能である。
【0039】
例えば、埋設された磁気マーカであるか、路面に配置された磁気マーカであるか、を表すコード情報を、RFIDタグ2が送信する情報に含めることも良い。例えば、磁気マーカが埋設されている埋設区間、あるいは磁気マーカが路面に配置されている路面配置区間の先頭の磁気マーカ(車両の進行方向において最も上流側に位置するもの)に対して、埋設区間あるいは路面配置区間の先頭である旨を示すコード情報を送信するRFIDタグを組み合わせることも良い。さらに例えば、磁気マーカが埋設されている埋設区間であるか、磁気マーカが路面に配置されている路面配置区間であるか、を特定するための情報を、車両側が備える地図データベースなどに含めることも良い。
【0040】
タグリーダ36には、例えば、複数種類の搬送周波数のうちのいずれかを選択的に設定する周波数切替部を設けると良い。埋設された磁気マーカであるか、路面に配置された磁気マーカであるか、あるいは上記の埋設区間であるか路面配置区間であるか、を特定できたとき、タグリーダ36が電力送信時の搬送周波数を切り替えると良い。
【0041】
このように磁気マーカの敷設態様に応じて周波数の設定(周波数の仕様)を変更する場合には、上記のシフト現象による悪影響を未然に回避できる。この場合には、埋設された磁気マーカであるか、路面に配置された磁気マーカであるか、の敷設態様の違いに起因する電波の受信周波数の違いをゼロに近づけることができる。上記のごとく、この受信周波数の違いは、タグリーダ36側が受信する電波(搬送波)の周波数の違いや、RFIDタグ2側が受信する電波(搬送波)の周波数の違いなどである。
なお、磁気マーカの敷設態様は上記に限定されるものではない。柱状の磁気マーカを路面に載置等により配置しても良く、シート状の磁気マーカを路面に埋設しても良い。
さらに、磁気マーカの埋設深さや、埋設する材料の種類に応じて、上記のシフト現象の度合いが異なってくる。そこで、埋設型の磁気マーカとしては、埋設深さや埋設材料に応じて、送信電波の周波数の設定が異なる複数種類を準備することも良い。
【0042】
本例では、本体をなす磁石10の外周面に直接、金属箔16による導電層を設けているが、樹脂材料よりなる樹脂層を磁石10の外周に形成し、さらに樹脂層の外側に導電層を設けることも良い。あるいは、導電層をなす金属箔16を設けた磁石10の外周を樹脂材料によりコーティングし、コーティング層の表面にRFIDタグ2を配設することも良い。
金属箔16よりなる導電層に代えて、金属メッキ加工処理により導電層を形成することも良い。すなわち、導電層は、金属メッキ加工処理で形成されるメッキ層であっても良い。
【0043】
磁石を金属容器に収容した磁気マーカであっても良い。この場合、金属容器の外周に樹脂材料によるコーティング層を設けると良い。このコーティング層の外周に導電層(金属箔等)を形成すれば、磁気マーカの本体をなす金属容器と導電層との電気的な接触を回避し、両者が電気的に導通しない状態を実現できる。
【0044】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形、変更あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。
【符号の説明】
【0045】
1 磁気マーカ
10 磁石(本体)
16 金属箔(導電層)
2 RFIDタグ(無線タグ)
20 タグシート
23 アンテナ
231 アンテナパターン
27 ICチップ(回路)
29 スペーサ(中間部材)
3 車両
31 収容穴
35 磁気センサ
36 タグリーダ
30S 路面