(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】光導波路素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/035 20060101AFI20230111BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20230111BHJP
G02B 6/122 20060101ALI20230111BHJP
G02B 6/30 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
G02F1/035
G02B6/12 371
G02B6/122
G02B6/12 363
G02B6/30
(21)【出願番号】P 2019064448
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 優
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徳一
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-075917(JP,A)
【文献】特開2000-214341(JP,A)
【文献】特開平06-289341(JP,A)
【文献】特開平04-015604(JP,A)
【文献】特開平06-313817(JP,A)
【文献】特開2002-350659(JP,A)
【文献】特開2005-140822(JP,A)
【文献】米国特許第09547129(US,B1)
【文献】特開平09-015435(JP,A)
【文献】特開2007-093743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/065
G02B 6/12,6/122,6/30
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、前記支持基板上に積層された電気光学効果を有する材料からなる導波層とを備える光導波路素子であって、
光導波路を形成するためのリブ部が前記導波層の上面に突出して設けられており、
前記リブ部の一部の直下において、前記支持基板の上面に溝部が形成されており、
前記溝部には、前記導波層の材料と同程度の実効屈折率を有する材料が充填されて
おり、
前記リブ部の高さ方向の寸法は、前記溝部の高さ方向の寸法の半分より大きく2倍より小さいことを特徴とする光導波路素子。
【請求項2】
支持基板と、前記支持基板上に積層された電気光学効果を有する材料からなる導波層とを備える光導波路素子であって、
光導波路を形成するためのリブ部が前記導波層の上面に突出して設けられており、
前記リブ部の一部の直下において、前記支持基板の上面に溝部が形成されており、
前記溝部には、前記導波層の材料と同程度の実効屈折率を有する材料が充填されて
おり、
前記リブ部の幅方向の寸法は、前記リブ部の上面から前記溝部の底面までの高さ方向の寸法の半分より大きく2倍より小さいことを特徴とする光導波路素子。
【請求項3】
前記リブ部の高さ方向の寸法は、前記溝部の高さ方向の寸法の半分より大きく2倍より小さいことを特徴とする請求項2に記載の光導波路素子。
【請求項4】
前記リブ部の延在方向に沿って、前記溝部の断面積が連続的に変化することを特徴とする請求項1
から3のいずれか1つに記載の光導波路素子。
【請求項5】
前記光導波路を伝搬する光波の伝搬方向に対して、前記溝部の断面積が連続的に小さくなるよう変化することを特徴とする請求項
4に記載の光導波路素子。
【請求項6】
前記光導波路を伝搬する光波の伝搬方向に対して、前記溝部の断面積が連続的に大きくなるよう変化することを特徴とする請求項
4に記載の光導波路素子。
【請求項7】
前記光導波路を伝搬する光波の伝搬方向に対して、前記溝部の幅方向の寸法が連続的に変化することを特徴とする請求項
5または
6に記載の光導波路素子。
【請求項8】
前記光導波路を伝搬する光波の伝搬方向に対して、前記溝部の高さ方向の寸法が連続的に変化することを特徴とする請求項
5または
6に記載の光導波路素子。
【請求項9】
前記光導波路に前記光波を導入する入力側光ファイバとの結合部、および前記光導波路から前記光波を導出する出力側光ファイバとの結合部において、前記溝部の幅方向の寸法が前記リブ部の幅方向の寸法と略同一であり、前記リブ部の上面から前記溝部の底面までの高さ方向の寸法が前記リブ部の幅方向の寸法と略同一であることを特徴とする請求項1から
8のいずれか1つに記載の光導波路素子。
【請求項10】
前記光導波路を伝搬する前記光波を変調する変調部を有し、
前記入力側光ファイバとの結合部から前記変調部までの光導波路の一部において、前記溝部の断面積が連続的に小さくなるよう変化し、
前記変調部から前記出力側光ファイバとの結合部までの光導波路において、前記溝部の断面積が連続的に大きくなるよう変化することを特徴とする請求項
9に記載の光導波路素子。
【請求項11】
前記導波層の材料がニオブ酸リチウムであり、
前記溝部を占める材料が、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸リチウムと同程度の実効屈折率を有する窒化シリコン、ニオブ酸リチウムと同程度の実効屈折率に調整された樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項1から10のいずれか1つに記載の光導波路素子。
【請求項12】
前記支持基板上に前記導波層が貼り合わされていることを特徴とする請求項1から11のいずれか1つに記載の光導波路素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持基板上に積層された電気光学効果を有する材料からなる導波層を備えた光導波路素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光通信分野や光測定分野において、電気光学効果を有する基板上に光導波路を形成した光導波路素子が用いられている。例えば下記の特許文献1には、光導波路部分を突出させ、それ以外の基板領域を薄く形成したリブ型導波路を有する光学素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光導波路素子は、光波入力側において光導波路素子へ光波を導入する光ファイバと結合され、光波出力側において光導波路素子から光波を導出する光ファイバと結合される。光ファイバ内を伝搬する光波は、例えばシングルモードの場合には伝搬方向に垂直な断面における光強度分布が略真円となり、歪みの少ないビーム形状を有している。一方、光導波路素子に形成されたリブ型導波路を伝搬する光波は、導波層上面に突出したリブ部の断面形状に合わせて、伝搬方向に垂直な断面における光強度分布が歪んだビーム形状となる。
【0005】
このように、光ファイバと光導波路素子とは、伝搬する光波の光強度分布が異なるビーム形状を有している。このようなビーム形状の不整合により、光ファイバと光導波路素子との結合部には大きな結合損失が生じる可能性があるという問題がある。
【0006】
また、上記のように、リブ型導波路を伝搬する光波は、リブ部の断面形状に合わせたビーム形状となる。このとき、導波層およびリブ部と外気との境界部が十分に加工されていない場合(いわゆる加工荒れが生じている場合)には、リブ型導波路を伝搬する光波は該境界部にオーバラップして散乱する可能性がある。その結果、光導波路素子のリブ型導波路には大きな伝搬損失が生じる可能性があるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するため、光ファイバとの結合部における結合損失を低減させることが可能であり、光導波路における伝搬損失を低減させることが可能である光導波路素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題を解決するため、本発明に係る光導波路素子は以下のような技術的特徴を有する。
【0009】
(1) 本発明に係る光導波路素子は、上記の目的を達成するため、支持基板と、前記支持基板上に積層された電気光学効果を有する材料からなる導波層とを備える光導波路素子であって、
光導波路を形成するためのリブ部が前記導波層の上面に突出して設けられており、
前記リブ部の一部の直下において、前記支持基板の上面に溝部が形成されており、
前記溝部には、前記導波層の材料と同程度の実効屈折率を有する材料が充填されており、
前記リブ部の高さ方向の寸法は、前記溝部の高さ方向の寸法の半分より大きく2倍より小さいことを特徴とする。
(2) 本発明に係る光導波路素子は、上記の目的を達成するため、支持基板と、前記支持基板上に積層された電気光学効果を有する材料からなる導波層とを備える光導波路素子であって、
光導波路を形成するためのリブ部が前記導波層の上面に突出して設けられており、
前記リブ部の一部の直下において、前記支持基板の上面に溝部が形成されており、
前記溝部には、前記導波層の材料と同程度の実効屈折率を有する材料が充填されており、
前記リブ部の幅方向の寸法は、前記リブ部の上面から前記溝部の底面までの高さ方向の寸法の半分より大きく2倍より小さいことを特徴とする。
(3) 上記(2)に記載の光導波路素子において、前記リブ部の幅方向の寸法は、前記リブ部の上面から前記溝部の底面までの高さ方向の寸法の半分より大きく2倍より小さいことを特徴とする。
【0010】
この構成により、光導波路を伝搬する光波が下方の溝部方向へ広がり、光導波路素子の光導波路を伝搬する光波のビーム形状を歪みの少ない形状にすることが可能となる。その結果、光導波路素子の光導波路を伝搬する光波のビーム形状を、例えば光ファイバ内を伝搬するシングルモードの光波のビーム形状に近い形状とすることが可能となり、ビーム形状の不整合を抑えて、光ファイバと光導波路素子との結合部における結合損失を低減させることが可能となる。
【0011】
また、この構成により、光導波路素子の光導波路を伝搬する光波の高さ位置を下方の溝部に近い位置に配置させることが可能となる。その結果、光導波路素子の光導波路を伝搬する光波が、導波層およびリブ部と外気との境界部にオーバラップする領域を低減させることが可能となり、該境界部による散乱を抑えて、光導波路素子の光導波路における伝搬損失を低減させることが可能となる。
また、この構成により、リブ部および溝部の寸法を適切に定めて、光導波路素子の光導波路にシングルモードの光波を適切に閉じ込めることが可能となる。
【0012】
(4) 上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の光導波路素子において、前記リブ部の延在方向に沿って、前記溝部の断面積が連続的に変化することを特徴とする。
【0013】
この構成により、光導波路素子の光導波路を伝搬する光波のビーム形状が不連続に変化した場合に生じる散乱を防ぐことが可能となる。その結果、光波のビーム形状の不連続な変化による散乱を抑えて、光導波路素子の光導波路における伝搬損失を低減させることが可能となる。
【0014】
(5) 上記(4)に記載の光導波路素子において、前記光導波路を伝搬する光波の伝搬方向に対して、前記溝部の断面積が連続的に小さくなるよう変化することを特徴とする。
【0015】
この構成により、溝部が形成された部分における光導波路を伝搬する光波のビーム形状を、溝部が形成されていない通常のリブ型導波路を伝搬する光波のビーム形状に徐々に近づくように変化させることが可能となる。その結果、光波のビーム形状の不連続な変化による散乱を抑えて、光導波路素子の光導波路における伝搬損失を低減させることが可能となり、さらに、溝部が形成された部分の光導波路から溝部が形成されていない通常のリブ型導波路へ低損失かつスムーズに変換させることが可能となる。
【0016】
(6) 上記(4)に記載の光導波路素子において、前記光導波路を伝搬する光波の伝搬方向に対して、前記溝部の断面積が連続的に大きくなるよう変化することを特徴とする。
【0017】
この構成により、溝部が形成されていない通常のリブ光導波路を伝搬する光波のビーム形状を、溝部が形成されている部分における光導波路を伝搬する光波のビーム形状に徐々に近づくように変化させることが可能となる。その結果、光波のビーム形状の不連続な変化による散乱を抑えて、光導波路素子の光導波路における伝搬損失を低減させることが可能となり、さらに、溝部が形成されていない通常のリブ型導波路から溝部が形成された部分の光導波路へ低損失かつスムーズに変換させることが可能となる。
【0018】
(7) 上記(5)または(6)に記載の光導波路素子において、前記光導波路を伝搬する光波の伝搬方向に対して、前記溝部の幅方向の寸法が連続的に変化することを特徴とする。
【0019】
この構成により、溝部の幅方向の寸法を適切に設計することで溝部の断面積を連続的に変化させることが可能となる。その結果、光波のビーム形状の不連続な変化による散乱を抑えて、光導波路素子の光導波路における伝搬損失を低減させることが可能となる。
【0020】
(8) 上記(5)または(6)に記載の光導波路素子において、前記光導波路を伝搬する光波の伝搬方向に対して、前記溝部の高さ方向の寸法が連続的に変化することを特徴とする。
【0021】
この構成により、溝部の高さ方向の寸法を適切に設計することで溝部の断面積を連続的に変化させることが可能となる。その結果、光波のビーム形状の不連続な変化による散乱を抑えて、光導波路素子の光導波路における伝搬損失を低減させることが可能となる。
【0022】
(9) 上記(1)から(8)のいずれか1つに記載の光導波路素子において、前記光導波路に前記光波を導入する入力側光ファイバとの結合部、および前記光導波路から前記光波を導出する出力側光ファイバとの結合部において、前記溝部の幅方向の寸法が前記リブ部の幅方向の寸法と略同一であり、前記リブ部の上面から前記溝部の底面までの高さ方向の寸法が前記リブ部の幅方向の寸法と略同一であることを特徴とする。
【0023】
この構成により、入力側光ファイバとの結合部および出力側光ファイバとの結合部において、光導波路素子の光導波路を伝搬する光波のビーム形状を略真円に近い形状にすることが可能となる。その結果、光ファイバと光導波路素子との結合部における光波のビーム形状の不整合を抑えて、光ファイバと光導波路素子との結合部における結合損失を低減させることが可能となる。
【0024】
(10) 上記(9)に記載の光導波路素子において、前記光導波路を伝搬する前記光波を変調する変調部を有し、
前記入力側光ファイバとの結合部から前記変調部までの光導波路の一部において、前記溝部の断面積が連続的に小さくなるよう変化し、
前記変調部から前記出力側光ファイバとの結合部までの光導波路において、前記溝部の断面積が連続的に大きくなるよう変化することを特徴とする。
【0025】
この構成により、入力側光ファイバおよび出力側光ファイバの各々と光導波路素子との結合部における結合損失を低減させることが可能となり、入力側光ファイバとの結合部から変調部までの光導波路、および変調部から出力側光ファイバとの結合部までの光導波路における伝搬損失を低減させることが可能となる。さらに、変調部において、より光波の変調効率の高い構造を選択することが可能であり、これにより、変調部における光波の変調を効率良く行うことが可能となる。
【0030】
(11) 上記(1)から(10)のいずれか1つに記載の光導波路素子において、前記導波層の材料がニオブ酸リチウムであり、
前記溝部を占める材料が、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸リチウムと同程度の実効屈折率を有する窒化シリコン、ニオブ酸リチウムと同程度の実効屈折率に調整された樹脂のいずれかであることを特徴とする。
【0031】
この構成により、導波層の材料および溝部を占める材料を適切に定めて、光ファイバと光導波路素子との結合部における結合損失を低減させることが可能となるとともに、光導波路素子の光導波路における伝搬損失を低減させることが可能となる。
【0032】
(12) 上記(1)から(11)のいずれか1つに記載の光導波路素子において、前記支持基板上に前記導波層が貼り合わされていることを特徴とする。
【0033】
この構成により、溝部5に充填させる材料を適宜選択することが可能となるとともに、簡易な工程で光導波路素子を製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、光導波路素子において、光ファイバとの結合部における結合損失を低減させることが可能となり、光導波路における伝搬損失を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の第1の実施の形態における光導波路素子の光導波路近傍の構造を模式的に示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態における光導波路素子の各部の寸法を説明するための模式的な断面図である。
【
図3】
図1に示す光導波路素子の光導波路近傍の構造の三面図であって、
図3(a)は
図1に示す光導波路素子の光導波路近傍の構造の平面図であり、
図3(b)は
図1に示す光導波路素子の光導波路近傍の構造の正面図であり、
図3(c)は
図1に示す光導波路素子の光導波路近傍の構造の側面図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態における光導波路素子の光導波路近傍の断面構造を示す図であって、
図4(a)は
図3(c)のA-A断面図であり、
図4(b)は
図3(c)のB-B断面図であり、
図4(c)は
図3(c)のC-C断面図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態における光導波路素子の電界強度シミュレーションの結果を示す図であって、
図5(a)は
図4(a)の断面構造における光強度分布を示す図であり、
図5(b)は
図4(b)の断面構造における光強度分布を示す図であり、
図5(c)は
図4(c)の断面構造における光強度分布を示す図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態における光導波路素子を含む光変調器の第1の構成例を示す平面図である。
【
図7】本発明の第1の実施の形態における光導波路素子を含む光変調器の第2の構成例を示す平面図である。
【
図8】本発明の第1の実施の形態における光導波路素子の製造工程の第1の例を示す図であって、
図8(a)は第1ステップ後の状態を示す図であり、
図8(b)は第2ステップ後の状態を示す図であり、
図8(c)は第3ステップ後の状態を示す図である。
【
図9】本発明の第1の実施の形態における光導波路素子の製造工程の第2の例を示す図であって、
図9(a)は第1ステップ後の状態を示す図であり、
図9(b)は第2ステップ後の状態を示す図であり、
図9(c)は第3ステップ後の状態を示す図であり、
図9(d)は第4ステップ後の状態を示す図である。
【
図10】本発明の第2の実施の形態における光導波路素子の光導波路近傍を模式的に示す斜視図である。
【
図11】
図10に示す光導波路素子の光導波路近傍の構造の三面図であって、
図11(a)は
図10に示す光導波路素子の光導波路近傍の構造の平面図であり、
図11(b)は
図10に示す光導波路素子の光導波路近傍の構造の正面図であり、
図11(c)は
図10に示す光導波路素子の光導波路近傍の構造の側面図である。
【
図12】本発明の第2の実施の形態における光導波路素子の光導波路近傍の断面構造を示す図であって、
図12(a)は
図11(c)のD-D断面図であり、
図12(b)は
図11(c)のE-E断面図であり、
図12(c)は
図11(c)のF-F断面図である。
【
図13】本発明の第2の実施の形態における光導波路素子の電界強度シミュレーションの結果を示す図であって、
図13(a)は
図12(a)の断面構造における光強度分布を示す図であり、
図13(b)は
図12(b)の断面構造における光強度分布を示す図であり、
図13(c)は
図12(c)の断面構造における光強度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0037】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態における光導波路素子について説明する。
【0038】
図1は、本発明の第1の実施の形態における光導波路素子1の光導波路近傍を模式的に示す斜視図である。なお、図面では、光導波路素子1の幅方向をX軸、光導波路素子1の長手方向をY軸、光導波路素子1の高さ方向をZ軸と定義する。
【0039】
図1に示す光導波路素子1は、支持基板2と、支持基板2の上に積層された導波層3とを備えている。
【0040】
支持基板2は、導波層3の強度を補い、導波層3を安定して支持可能とする基板である。支持基板2の高さ方向の寸法は特に限定されるものではないが、例えば数百μmである。支持基板2の材料は特に限定されるものではないが、例えば石英ガラス等のセラミックスである。
【0041】
導波層3は、電気光学効果を有する材料により形成されており、支持基板2の上に積層された薄板である。導波層3には、電気光学効果を有する材料として、例えばニオブ酸リチウム(LiNbO3:以下LNと記載)を用いることが可能であるが、タンタル酸リチウムやジルコン酸チタン酸鉛ランタン(PLZT)、半導体等が用いられてもよい。また、導波層3に充填される材料は、伝搬損失が生じない程度の透過率を有することが好ましく、特に、光導波路を伝搬する光波の波長において高い透過率を有する材料が選択されることが好ましい。
【0042】
導波層3の上面には、導波層3と同一の材料からなるリブ部4が設けられている。リブ部4は、導波層3の上面に突出して設けられており、断面凸形状となるように形成されている。リブ部4は、光波を閉じ込める作用を有することから光導波路として利用される。光導波路の延在方向は、リブ部4の延在方向(
図1のY軸方向)と一致する。
【0043】
なお、光導波路を伝搬する光波の伝搬方向は、Y軸の正方向であってもよく負方向であってもよい。例えば
図1の斜視図において、光波は、図面の手前側から奥側に向かってリブ部4により形成される光導波路を伝搬してもよく、逆に、図面の奥側から手前側に向かってリブ部4により形成される光導波路を伝搬してもよい。また後述するように、例えば
図6に示す光変調器10Aに組み込まれた光導波路素子1では、区間S1において光波は
図1に示すY軸の正方向に伝搬し、区間S2において光波は
図1に示すY軸の負方向に伝搬する。
【0044】
本明細書では、導波層3の上面に対して垂直に突出しており、断面形状が矩形となるリブ部4を一例として示している。ただし、リブ部4はこの構造に限定されるものではなく、例えば断面形状が台形となるリブ部4が設けられてもよい。
【0045】
リブ部4の直下に位置する支持基板2の上面には、溝部5が設けられている。溝部5は、支持基板2の上面が掘削されて形成された掘削面によって溝を画定しており、断面凹形状となるように形成されている。
図1では、溝部5の形状を図面上に表するため、支持基板2、導波層3およびリブ部4を輪郭のみ表して透明にするとともに、溝部5に充填されている材料が網掛けで示されている。
【0046】
溝部5により画定される溝の断面積は、光導波路の延在方向であるリブ部4の延在方向に沿って連続的に変化するように設定されている。なお、連続的に変化するとは、不連続に変化する位置がなく滑らかにつながって変化することを意味し、例えば一定の変化率で徐々に変化することを意味する。
【0047】
本発明の第1の実施の形態では、リブ部4の延在方向に沿って、溝部5の高さ方向の寸法は一定としたまま、溝部5の幅方向の寸法が連続的に変化することによって溝の断面積が連続的に変化するように設定されている。
図1の斜視図の手前側では、溝部5の幅方向の寸法は大きく設定されており、図面の奥側に行くにつれて溝部5の幅方向の寸法は徐々に小さくなり、図面の最も奥側では、溝部5の幅方向の寸法はゼロとなるように設定されている。溝部5の幅方向の寸法がゼロであるとは、溝部5が形成されていない、あるいは、溝部5が消失していることを意味する。
【0048】
本明細書では、支持基板2の上面に対して垂直に掘削されて断面形状が矩形となる溝部5を一例として示している。ただし、溝部5はこの構造に限定されるものではなく、例えば断面形状が台形となる溝部5が設けられてもよい。また、溝部5は、リブ部4の形状を上下反転した形状にする等、リブ部4の形状に合わせて形成されてもよい。
【0049】
溝部5には、導波層3の材料と同程度の実効屈折率を有する材料が充填されることが好ましい。すなわち、導波層3の材料の屈折率をn1とし、溝部5に充填される材料の屈折率n2とした場合、n1≒n2であることが好ましい。導波層3の材料と同程度の実効屈折率を有する材料は、例えばLN等の導波層3を構成する材料と同一の材料であってもよく、窒化シリコン(SiN)や樹脂等であってもよい。また、リブ部4の上方に存在する外気の屈折率をn0とし、支持基板2の材料の屈折率をn3とした場合、n0<n1およびn3<n1であることが好ましい。
【0050】
図2は、本発明の第1の実施の形態における光導波路素子1の各部の寸法を説明するための模式的な断面図である。リブ部4の高さ方向の寸法(高さh
1)は、例えば2μm以下に設定される。溝部5の高さ方向の寸法(深さh
2)は、例えばリブ部4の高さ方向の寸法(高さh
1)と略同一となるように設定される。リブ部4の幅方向の寸法(幅w
1)は、例えば4μm以下に設定される。リブ部4の上面から溝部5の底面までの高さ方向の寸法(高さh
3)は、例えばリブ部4の幅方向の寸法(幅w
1)と略同一となるように設定される。
【0051】
溝部5の幅方向の寸法(幅w2)は、リブ部4の延在方向に応じて異なる値に設定される。溝部5の幅方向の寸法(幅w2)がゼロの場合、溝部5は形成されない。また、後述するように光ファイバとの結合部においては、溝部5の幅方向の寸法(幅w2)は、例えばリブ部4の幅方向の寸法(幅w1)と略同一となるように設定される。
【0052】
リブ部4の高さ方向の寸法(高さh1)は、溝部5の高さ方向の寸法(深さh2)の半分より大きく2倍より小さくなるよう設定されることが好ましい。すなわち、h2/2<h1<2×h2であることが好ましい。また、リブ部4の幅方向の寸法(幅w1)は、リブ部4の上面から溝部5の底面までの高さ方向の寸法(高さh3)の半分より大きく2倍より小さくなるよう設定されることが好ましい。すなわち、h3/2<w1<2×h3であることが好ましい。このようにリブ部4および溝部5の寸法を適切に定めることにより、光導波路素子1の光導波路にシングルモードの光波を適切に閉じ込めることが可能となる。
【0053】
図3(a)~
図3(c)は、
図1に示す光導波路素子1の光導波路近傍の構造の三面図である。
図3(a)は、
図1に示す光導波路素子1の光導波路近傍の構造の平面図であり、
図3(b)は、
図1に示す光導波路素子1の光導波路近傍の構造の正面図であり、
図3(c)は、
図1に示す光導波路素子1の光導波路近傍の構造の側面図である。なお、
図3(a)~
図3(c)では、
図1と同様に、溝部5の形状を図面上に表現するために、支持基板2、導波層3およびリブ部4を輪郭のみ表して透明にするとともに、溝部5に充填されている材料が網掛けで示されている。
【0054】
溝部5の幅方向の寸法がリブ部4の延在方向に沿って連続的に変化している状態は、特に
図3(a)の平面図に明確に示されている。溝部5の幅方向の寸法は、
図3(a)のY軸方向に沿って徐々に小さくなるように設定されており、溝部5は、
図3(a)の平面図において、Y軸方向に沿って先細りするテーパ形状を有している。なお、溝部5のY軸方向の寸法(テーパ形状の長手方向の寸法)は、ビーム形状の急激な変化に伴う伝搬損失が生じない程度の長さであることが好ましく、例えば500μm以上に設定される。
【0055】
さらに、
図4(a)~
図4(c)に示す断面図を参照しながら、溝部5がリブ部4の延在方向に沿ってテーパ形状を有することについて説明する。
【0056】
図4(a)は、
図3(c)の側面図におけるA-A断面図であり、
図1の斜視図において手前側の断面構造を示している。
図4(a)のA-A断面図において、リブ部4の上面から溝部5の底面までの高さ方向の寸法(
図2の高さh
3)は、リブ部4の幅方向の寸法(
図2の幅w
1)と略同一である。また、溝部5の高さ方向の寸法(
図2の深さh
2)は、リブ部4の高さ方向の寸法(
図2の高さh
1)と略同一であり、溝部5の幅方向の寸法(
図2の幅w
2)は,リブ部4の幅方向の寸法(
図2の幅w
1)と略同一である。すなわち、導波層3から突出するリブ部4の断面形状と、支持基板2に掘削された溝部5の断面形状とは、導波層3に対して対称になっている。
【0057】
図4(b)は、
図3(c)の側面図におけるB-B断面図であり、
図1の斜視図において略中央部の断面構造を示している。
図1の斜視図において、手前側から奥側へY軸方向に沿って進むにつれて、溝部5の幅方向の寸法は連続的に小さくなる。そして、
図4(b)のB-B断面図に示す略中央部の断面構造では、溝部5の幅方向の寸法(
図2の幅w
2)は、リブ部4の幅方向の寸法(
図2の幅w
1)の約半分となる。
【0058】
図4(c)は、
図3(c)の側面図におけるC-C断面図であり、
図1の斜視図において最も奥側の断面構造を示している。Y軸方向に沿って進むにつれて溝部5の幅方向の寸法は更に小さくなり、
図4(c)のC-C断面図に示す最も奥側の断面構造では、溝部5の幅方向の寸法(
図2の幅w
2)はゼロであり、溝部5は消失している。
図4(c)のC-C断面図に示す断面構造は、通常のリブ型導波路の断面構造と同一である。
【0059】
図5(a)~
図5(c)は、本発明の第1の実施の形態における光導波路素子1の電界強度シミュレーションの結果を示す図である。
図5(a)は、
図4(a)の断面構造における光強度分布を示す図である。
図5(b)は、
図4(b)の断面構造における光強度分布を示す図である。
図5(c)は、
図4(c)の断面構造における光強度分布を示す図である。
図5(a)~
図5(c)では、光強度分布が濃淡で表されており、濃度が濃いほど光強度が高く、濃度が薄いほど光強度が弱いことを示している。
【0060】
なお、本明細書では、伝送媒体内を光波全体が進行する方向を伝搬方向と記載し、光波の伝搬方向に垂直な断面における光強度分布が表す形状を、ビーム形状と記載する。ビーム形状は、幾何学的な形状に加えてその形状のサイズも含む。例えば、2つの光波のビーム形状が整合しているとは、一方の光波の光強度分布の幾何学的形状およびサイズと、他方の光波の光強度分布の幾何学的形状およびサイズとが一致していることを意味する。
【0061】
図4(a)に示す断面構造では、リブ部4の上面から溝部5の底面までの高さ方向の寸法とリブ部4の幅方向の寸法とが略同一であり、さらに、リブ部4の幅方向の寸法と溝部5の幅方向の寸法とが略同一である。すなわち、リブ部4の側面および溝部5の側面で囲まれた領域がアスペクト比1:1の略正方形になっている。これにより、光導波路を伝搬する光波のビーム形状は、
図5(a)に示すように光ファイバ内を伝搬する光波と同じような略真円に近い形状となる。
【0062】
図4(b)に示す断面構造は、
図4(a)と比較すると、溝部5の幅方向の寸法が小さくなっている。これにより、光導波路を伝搬する光波は、溝部5に広がる領域が少なくなるとともにリブ部4に広がる領域が多くなる。光波のビーム形状は、
図5(b)に示すように少し歪んだ形状となる。
【0063】
図4(c)に示す断面構造は、溝部5が消失しており通常のリブ型導波路と同じ形状になっている。したがって、光波のビーム形状は、
図5(c)に示すように、リブ部4に入り込むように歪んだ形状となる。
【0064】
図1のY軸の正方向に光波が伝搬する場合には、光波のビーム形状は、略真円に近い形状(
図5(a)に示す状態)から、徐々に歪んでいき(
図5(b)に示す状態)、リブ型導波路と同じビーム形状(
図5(c)に示す状態)に連続的に変化する。溝部5の幅方向の寸法は連続的に変化するため、
図5(a)~
図5(c)に示すビーム形状も連続的に変化する。
【0065】
本発明の第1の実施の形態では、光波の伝搬方向に対して溝部5の幅方向の寸法が連続的に小さくなるように溝部5を設けることで、光ファイバ内を伝搬する光波のビーム形状(略真円に近い形状)から、通常のリブ型導波路を伝搬する光波のビーム形状へ連続的に変化させることが可能となる。光波のビーム形状は連続的に変化するため、不連続かつ急激な変化に伴う損失発生を防ぐことが可能となる。
【0066】
さらに、光波のビーム形状が略真円に近い形状(
図5(a)に示す状態)となるように形成された溝部5を、光導波路素子1に光波を導入する光ファイバとの結合部に設けることで、光ファイバから導入される光波と、光ファイバから導入されて光導波路素子1の光導波路を伝搬する光波との間におけるビーム形状の不整合を抑えることが可能となる。その結果、光ファイバと光導波路素子1との結合部における結合損失を低減させることが可能となる。
【0067】
また逆に、
図1のY軸の負方向に光波が伝搬する場合には、光波のビーム形状は、リブ型導波路と同じビーム形状(
図5(c)に示す状態)から、徐々に歪みの少ない形状(
図5(b)に示す状態)となり、略真円に近い形状(
図5(a)に示す状態)に連続的に変化する。溝部5の幅方向の寸法は連続的に変化することから、
図5(a)~
図5(c)に示すビーム形状も連続的に変化する。
【0068】
本発明の第1の実施の形態では、光波の伝搬方向に対して溝部5の幅方向の寸法が連続的に大きくなるように溝部5を設けることで、通常のリブ型導波路を伝搬する光波のビーム形状から、光ファイバ内を伝搬する光波のビーム形状(略真円に近い形状)へ連続的に変化させることが可能となる。光波のビーム形状は連続的に変化するため、不連続かつ急激な変化に伴う損失発生を防ぐことが可能となる。
【0069】
さらに、光波のビーム形状が略真円に近い形状(
図5(a)に示す状態)となるように形成された溝部5を、光導波路素子1から光波を導出する光ファイバとの結合部に設けることで、光ファイバから導入されて光導波路素子1の光導波路を伝搬する光波と、光ファイバから導出される光波との間におけるビーム形状の不整合を抑えることが可能となる。その結果、光ファイバと光導波路素子1との結合部における結合損失を低減させることが可能となる。
【0070】
また、溝部5を設けた場合には、光波が溝部5に入り込むように広がるため、光波の位置(例えば光強度が極大となる位置)は、リブ部4から離れて溝部5に近い位置となる。本発明の第1の実施の形態によれば、溝部5を設けることで光波の位置を溝部5側へずらすことが可能となる。その結果、光波が導波層3およびリブ部4と外気との境界部にオーバラップする領域を低減させることが可能となり、該境界部による散乱を抑えて、光導波路素子1の光導波路における伝搬損失を低減させることが可能となる。
【0071】
次に、本発明の第1の実施の形態における光導波路素子1を含む光変調器の構成例について説明する。
【0072】
図6は、本発明の第1の実施の形態における光導波路素子1を含む光変調器の第1の構成例を示す平面図である。なお、
図6では、溝部5の形状を図面上に表現するために、導波層3およびリブ部4を透明とし、リブ部4の直下に形成される光導波路を線で表し、溝部5に充填されている材料を網掛けで示している。
【0073】
図6に示す光変調器10Aは、マッハツェンダー型光導波路を有する光変調器であり、光導波路素子1と、該光導波路素子1に接続された入力側光ファイバ20および出力側光ファイバ30を含んで構成されている。
【0074】
入力側光ファイバ20は、光導波路素子1の光導波路に光波を導入するための光ファイバである。出力側光ファイバ30は、光導波路素子1の光導波路から光波を導出するための光ファイバである。
図6には、入力側光ファイバ20および出力側光ファイバ30における光波の伝搬方向が矢印で示されている。
【0075】
光導波路素子1は、リブ部4(
図6には不図示)によりマッハツェンダー型光導波路が形成されている。光導波路素子1に形成されている光導波路は、入力導波路11、2本の第1分岐導波路13、2本の並行導波路15、2本の第2分岐導波路17、出力導波路19により構成されている。
【0076】
入力導波路11は、入力側端部において入力側光ファイバ20と接続され、該入力側光ファイバ20から光波が導入されるようになっている。入力導波路11は、光カプラ等により構成される分岐部12において2本の第1分岐導波路13に分岐される。2本の第1分岐導波路13はそれぞれ第1曲げ部14で曲げられて、互いに並行する2本の並行導波路15となる。2本の並行導波路15はそれぞれ第2曲げ部16で曲げられて、2本の第2分岐導波路17となる。2本の第2分岐導波路17は、光カプラ等により構成される合成部18で再び合成されて1本の出力導波路19となる。出力導波路19は、出力側端部において出力側光ファイバ30と接続され、合成部18で合成された光波を出力側光ファイバ30へ導出するようになっている。
【0077】
マッハツェンダー型光導波路では、通常、2本の並行導波路15のそれぞれに変調部15aが設けられる。変調部15aは、2本の並行導波路15のそれぞれを伝搬する光波を適宜変調することで光波の位相を調整する。なお、光波を変調するために、導波層3上には、信号電極や接地電極を含む変調電極や該変調電極に電気信号を伝送する伝送線路等が配置されているが、
図6では、これらの構成要素はいずれも図示省略されている。
【0078】
図6に示す光導波路素子1には、入力導波路11の一部(
図6の区間S1)に溝部5が形成されている。溝部5が形成される区間S1は、例えば、入力側光ファイバ20が接続される入力導波路11の入力側端部から入力導波路11の途中までの区間である。区間S1の寸法は、ビーム形状の急激な変化に伴う伝搬損失が生じない程度の長さであることが好ましく、導波層3やリブ部4等の寸法に依存するが、例えば約500μm以上に設定される。
【0079】
また、
図6に示す光導波路素子1には、出力導波路19の一部(
図6の区間S2)に溝部5が形成されている。溝部5が形成される区間S2は、例えば、出力導波路19の途中から出力側光ファイバ30が接続される出力導波路19の出力側端部までの区間である。区間S2の寸法は、ビーム形状の急激な変化に伴う伝搬損失が生じない程度の長さであることが好ましく、導波層3やリブ部4等の寸法に依存するが、例えば約500μm以上に設定される。
【0080】
一方、区間S1および区間S2以外の光導波路素子1の光導波路は、例えば、溝部5が形成されない通常のリブ型導波路の構造等の任意の構造を採用することが可能である。特に、変調部15aにおいては、より光波の変調効率の高い構造を選択することが可能であり、これにより、変調部15aにおける光波の変調を効率良く行うことが可能となる。
【0081】
区間S1において、入力導波路11の入力側端部に形成される溝部5は、
図4(a)に示す断面構造のように、リブ部4の上面から溝部5の底面までの高さ方向の寸法とリブ部4の幅方向の寸法とが略同一となるように、さらに、リブ部4の幅方向の寸法と溝部5の幅方向の寸法とが略同一となるように形成されている。このように溝部5を形成することにより、入力側光ファイバ20から導入された光波は、略真円に近いビーム形状が保たれたまま光導波路素子1の入力導波路11へ導入される。これにより、入力側光ファイバ20と光導波路素子1との結合部における結合損失を低減させることが可能となる。
【0082】
また、区間S1において、溝部5は、光波の伝搬方向に沿って幅方向の寸法が連続的に小さくなるように形成されており、入力導波路11の途中で幅方向の寸法がゼロになり、溝部5が消失するように形成されている。このように溝部5を形成することにより、入力導波路11において、伝搬損失の発生を防ぎながら、略真円に近いビーム形状をリブ型導波路に適合したビーム形状へ変化させることが可能となり、通常のリブ型導波路へスムーズに光波を誘導することが可能となる。
【0083】
区間S2において、溝部5は、出力導波路19の途中を溝部形成の開始位置として、この開始位置から、光波の伝搬方向に沿って幅方向の寸法が連続的に大きくなるように形成されている。このように溝部5を形成することにより、出力導波路19において、伝搬損失の発生を防ぎながら、リブ型導波路に適合したビーム形状を略真円に近いビーム形状へ変化させることが可能となり、通常のリブ型導波路から光ファイバへスムーズに光波を誘導することが可能となる。
【0084】
また、区間S2において、出力導波路19の出力側端部に形成される溝部5は、
図4(a)に示す断面構造のように、リブ部4の上面から溝部5の底面までの高さ方向の寸法とリブ部4の幅方向の寸法とが略同一となるように、さらに、リブ部4の幅方向の寸法と溝部5の幅方向の寸法とが略同一となるように形成されている。このように溝部5を形成することにより、光波は、略真円に近いビーム形状となった状態で、出力導波路19から出力側光ファイバ30へ導出される。これにより、出力側光ファイバ30と光導波路素子1との結合部における結合損失を低減させることが可能となる。
【0085】
図7は、本発明の第1の実施の形態における光導波路素子1を含む光変調器の第2の構成例を示す平面図である。なお、
図7においても
図6と同様に、溝部5の形状を図面上に表現するために、導波層3およびリブ部4を透明とし、リブ部4の直下に形成される光導波路を線で表し、溝部5に充填されている材料を網掛けで示している。
【0086】
図6に示す光変調器10Aと比較した場合、
図7に示す光変調器10Bでは、光導波路素子1に溝部5が形成されている区間が異なっている。以下、
図7に示す光導波路素子1に形成されている溝部5について説明する。
【0087】
図7に示す光導波路素子1には、入力導波路11(
図7の区間S3)、第1分岐導波路13(
図7の区間S4)、並行導波路15の一部(
図7の区間S5)に溝部5が形成されている。区間S3は入力導波路11全体を含む区間である。区間S4は第1分岐導波路13全体を含む区間である。区間S5は、第1曲げ部14から並行導波路15の途中までの区間である。ただし、区間S5は変調部15aとオーバラップせず、区間S5の終端は第1曲げ部14と変調部15aとの間に位置する。区間S5の寸法は、ビーム形状の急激な変化に伴う伝搬損失が生じない程度の長さであることが好ましく、導波層3やリブ部4等の寸法に依存するが、例えば約500μm以上に設定される。溝部5を設けた区間では光波の位置を溝部5側へずらすことが可能となる。その結果、光波が導波層3およびリブ部4と外気との境界部にオーバラップする領域を低減させることが可能となり、該境界部による散乱を抑えて、光導波路素子1の光導波路における伝搬損失を低減させることが可能となる。
【0088】
また、
図7に示す光導波路素子1には、並行導波路15の一部(
図7の区間S6)、第2分岐導波路17(
図7の区間S7)、出力導波路19(
図7の区間S8)に溝部5が形成されている。区間S6は、変調部15aの途中から第2曲げ部16までの区間である。ただし、区間S6は変調部15aとオーバラップせず、区間S6の始端は変調部15aと第2曲げ部16との間に位置する。区間S6の寸法は、ビーム形状の急激な変化に伴う伝搬損失が生じない程度の長さであることが好ましく、導波層3やリブ部4等の寸法に依存するが、例えば約500μm以上に設定される。区間S7は第2分岐導波路17全体を含む区間である。区間S8は出力導波路19全体を含む区間である。溝部5を設けた区間では光波の位置を溝部5側へずらすことが可能となる。その結果、光波が導波層3およびリブ部4と外気との境界部にオーバラップする領域を低減させることが可能となり、該境界部による散乱を抑えて、光導波路素子1の光導波路における伝搬損失を低減させることが可能となる。
【0089】
一方、区間S3~S8以外の光導波路素子1の光導波路は、例えば、溝部5が形成されない通常のリブ型導波路の構造等の任意の構造を採用することが可能である。特に、変調部15aにおいては、より光波の変調効率の高い構造を選択することが可能であり、これにより、変調部15aにおける光波の変調を効率良く行うことが可能となる。
【0090】
区間S3において、入力導波路11の入力側端部に形成される溝部5は、
図4(a)に示す断面構造のように、リブ部4の上面から溝部5の底面までの高さ方向の寸法とリブ部4の幅方向の寸法とが略同一となるように、さらに、リブ部4の幅方向の寸法と溝部5の幅方向の寸法とが略同一となるように形成されている。このように溝部5を形成することにより、入力側光ファイバ20から導入された光波は、略真円に近いビーム形状が保たれたまま光導波路素子1の入力導波路11へ導入される。これにより、入力側光ファイバ20と光導波路素子1との結合部における結合損失を低減させることが可能となる。
【0091】
また、区間S3において、溝部5は、光波の伝搬方向に沿って、入力側端部に形成される幅方向の寸法と同一の寸法を有するように形成されている。すなわち、区間S3では、溝部5の幅方向の寸法は変化せず、一定の寸法に保たれる。このように溝部5を形成することにより、入力導波路11において、略真円に近いビーム形状を維持した状態で光波を伝搬させることが可能となり、伝搬損失の発生を防ぐことが可能となる。
【0092】
また、区間S4においても同様に、溝部5は、光波の伝搬方向に沿って幅方向の寸法が変化せず、区間S3と同一の幅方向の寸法を有するように形成されている。このように溝部5を形成することにより、第1分岐導波路13において、略真円に近いビーム形状を維持した状態で光波を伝搬させることが可能となり、伝搬損失の発生を防ぐことが可能となる。
【0093】
区間S5において、区間S5の始端となる第1曲げ部14に形成される溝部5は、
図4(a)に示す断面構造のように、リブ部4の上面から溝部5の底面までの高さ方向の寸法とリブ部4の幅方向の寸法とが略同一となるように、さらに、リブ部4の幅方向の寸法と溝部5の幅方向の寸法とが略同一となるように形成されている。このように溝部5を形成することにより、第1分岐導波路13を伝搬した光波は、略真円に近いビーム形状が保たれたまま並行導波路15へ導入される。これにより、第1分岐導波路13(区間S4)から並行導波路15(区間S5)へ光波が導入される際の損失を低減させることが可能となる。
【0094】
また、区間S5において、溝部5は、光波の伝搬方向に沿って幅方向の寸法が連続的に小さくなるように形成されており、並行導波路15の途中(変調部15aの前段)で幅方向の寸法がゼロになり、溝部5が消失するように形成されている。このように溝部5を形成することにより、並行導波路15において、伝搬損失の発生を防ぎながら、略真円に近いビーム形状をリブ型導波路に適合したビーム形状へ変化させることが可能となり、通常のリブ型導波路へスムーズに光波を誘導することが可能となる。
【0095】
区間S6において、溝部5は、並行導波路15の途中(変調部15aの後段)を溝部形成の開始位置として、この開始位置から、光波の伝搬方向に沿って幅方向の寸法が連続的に大きくなるように形成されている。このように溝部5を形成することにより、並行導波路15において、伝搬損失の発生を防ぎながら、リブ型導波路に適合したビーム形状を略真円に近いビーム形状へ変化させることが可能となり、通常のリブ型導波路から光ファイバへスムーズに光波を誘導することが可能となる。
【0096】
また、区間S6において、区間S6の終端となる第2曲げ部16に形成される溝部5は、
図4(a)に示す断面構造のように、リブ部4の上面から溝部5の底面までの高さ方向の寸法とリブ部4の幅方向の寸法とが略同一となるように、さらに、リブ部4の幅方向の寸法と溝部5の幅方向の寸法とが略同一となるように形成されている。このように溝部5を形成することにより、並行導波路15を伝搬した光波は、略真円に近いビーム形状が保たれたまま第2分岐導波路17へ導入される。これにより、並行導波路15(区間S6)から第2分岐導波路17(区間S7)へ光波が導入される際の損失を低減させることが可能となる。
【0097】
また、区間S7において、溝部5は、光波の伝搬方向に沿って、区間S6の終端に形成される幅方向の寸法と同一の寸法を有するように形成されている。すなわち、区間S7では、溝部5の幅方向の寸法は変化せず、一定の寸法に保たれる。このように溝部5を形成することにより、第2分岐導波路17において、略真円に近いビーム形状を維持した状態で光波を伝搬させることが可能となり、伝搬損失の発生を防ぐことが可能となる。
【0098】
また、区間S8においても同様に、溝部5は、光波の伝搬方向に沿って幅方向の寸法が変化せず、区間S7と同一の幅方向の寸法を有するように形成されている。このように溝部5を形成することにより、出力導波路19において、略真円に近いビーム形状を維持した状態で光波を伝搬させることが可能となり、伝搬損失の発生を防ぐことが可能となる。さらに、光波は、略真円に近いビーム形状となった状態で出力導波路19から出力側光ファイバ30へ導出される。これにより、出力側光ファイバ30と光導波路素子1との結合部における結合損失を低減させることが可能となる。
【0099】
なお、
図6に示す光変調器10Aでは、入力分岐路15に溝部5がテーパ形状となる区間S1、出力分岐路19に溝部5が逆テーパ形状(フレア形状)となる区間S2を設けている。
図7に示す光変調器10Bでは、並行分岐路15に溝部5がテーパ形状となる区間S5と、溝部5が逆テーパ形状(フレア形状)となる区間S6を設けている。しかしながら、溝部5がテーパ形状または逆テーパ形状となる区間は、変調部15とオーバラップしない任意の位置に設けることが可能であり、例えば、第1分岐導波路13や第2分岐導波路17に設けてもよい。
【0100】
以下、本発明の第1の実施の形態における光導波路素子1の製造工程について説明する。
【0101】
図8(a)~
図8(c)を参照しながら、光導波路素子1の製造工程の第1の例について説明する。なお、
図8(a)~
図8(c)には、溝部5の幅方向の寸法がリブ部4の幅方向の寸法と略同一である場合が一例として図示されているが、溝部5の幅方向の寸法は、光導波路において意図するビーム形状に合わせて適宜設定される。
【0102】
第1ステップにおいて、例えばドライエッチング等により支持基板2の一部を除去して溝部5を形成する。
図8(a)に第1ステップ後の状態を示す。
【0103】
第2のステップにおいて、例えばエピタキシャル成長等により、溝部5が形成された支持基板2上に、LN等の電気光学効果を有する材料からなる導波層3を結晶成長させる。
図8(b)に第2ステップ後の状態を示す。
【0104】
第3のステップにおいて、例えばドライエッチング等によりリブ部4以外の部分を除去して、導波層3にリブ部4を形成する。
図8(c)に第3ステップ後の状態を示す。
【0105】
図8(a)~
図8(c)を参照して説明した光導波路素子1の製造工程は、溝部5に充填させる材料と導波層3の材料(例えばLN等)とを同一にする場合に好適である。第2ステップにおいて溝部5への材料の充填と導波層3の成長とを同時に行うことができ、少ない工程数で、本発明の第1の実施の形態における光導波路素子1を製造することが可能となる。
【0106】
図9(a)~
図9(d)を参照しながら、光導波路素子1の製造工程の第2の例について説明する。なお、
図9(a)~
図9(d)には、溝部5の幅方向の寸法がリブ部4の幅方向の寸法と略同一である場合が一例として図示されているが、溝部5の幅方向の寸法は、光導波路において意図するビーム形状に合わせて適宜設定される。
【0107】
第1のステップにおいて、例えばドライエッチング等により支持基板2の一部を除去して溝部5を形成する。
図9(a)に第1ステップ後の状態を示す。
【0108】
第2のステップにおいて、溝部5に所望の材料を充填する。なお、溝部5に所望の材料を充填した後に支持基板2の表面を研磨して平滑にすることで、後続の第3のステップにおいて、支持基板2に導波層3の基になる基板を貼り合わせ易くしてもよい。
図9(b)に第2ステップ後の状態を示す。
【0109】
第3のステップにおいて、溝部5に所望の材料が埋め込まれた支持基板2に、導波層3の基になる基板を貼り合わせる。
図9(c)に第3ステップ後の状態を示す。
【0110】
第4のステップにおいて、例えばドライエッチング等によりリブ部4以外の部分を除去して、導波層3にリブ部4を形成する。
図9(d)に第4ステップ後の状態を示す。
【0111】
図9(a)~
図9(d)を参照して説明した光導波路素子1の製造工程は、溝部5に充填させる材料を適宜選択する場合に好適である。第2ステップにおいて溝部5に充填させる材料としては、例えば、導波層3と同一の材料(例えばLN等)が選択されてもよく、SiNや樹脂等が選択されてもよい。また、第3ステップにおいて基板の貼り合わせによって支持基板2上に導波層3を積層させることができ、簡易な工程で、本発明の第1の実施の形態における光導波路素子1を製造することが可能となる。
【0112】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態における光導波路素子について説明する。
【0113】
上述した本発明の第1の実施の形態における光導波路素子1では、リブ部4の延在方向に沿って、溝部5の高さ方向の寸法は一定としたまま、溝部5の幅方向の寸法を連続的に変化させることによって、溝の断面積が連続的に変化するように設定される。一方、
図10に示すように、本発明の第2の実施の形態における光導波路素子41では、リブ部4の延在方向に沿って、溝部5の幅方向の寸法は一定としたまま、溝部5の高さ方向の寸法を連続的に変化させることによって、溝の断面積が連続的に変化するように設定される。
【0114】
なお、本発明の第2の実施の形態における光導波路素子41は、溝部5の幅方向の寸法が一定のまま溝部5の高さ方向の寸法が連続的に変化する点を除いて、本発明の第1の実施の形態における光導波路素子1と共通する構成を有している。ここでは、当該共通する構成については説明を省略する。
【0115】
図10は、本発明の第2の実施の形態における光導波路素子41の光導波路近傍を模式的に示す斜視図である。なお、図面では、光導波路素子41の幅方向をX軸、光導波路素子41の長手方向をY軸、光導波路素子41の高さ方向をZ軸と定義する。また、
図1と同様に、
図10においても、溝部5の形状を図面上に表現するために、支持基板2、導波層3およびリブ部4を輪郭のみ表して透明にするとともに、溝部5に充填されている材料が網掛けで示されている。
【0116】
図10の斜視図の手前側では、溝部5の高さ方向の寸法は大きく設定されており、図面の奥側に行くにつれて溝部5の高さ方向の寸法は徐々に小さくなり、図面の最も奥側では、溝部5の高さ方向の寸法はゼロとなるように設定されている。溝部5の高さ方向の寸法がゼロであるとは、溝部5が形成されていない、あるいは、溝部5が消失していることを意味する。
【0117】
図11(a)~
図11(c)は、
図10に示す光導波路素子41の光導波路近傍の構造の三面図である。
図11(a)は、
図10に示す光導波路素子41の光導波路近傍の構造の平面図であり、
図11(b)は、
図10に示す光導波路素子41の光導波路近傍の構造の正面図であり、
図11(c)は、
図10に示す光導波路素子41の光導波路近傍の構造の側面図である。なお、
図11(a)~
図11(c)では、
図10と同様に、溝部5の形状を図面上に表現するために、支持基板2、導波層3およびリブ部4を輪郭のみ表して透明にするとともに、溝部5に充填されている材料が網掛けで示されている。
【0118】
溝部5の高さ方向の寸法がリブ部4の延在方向に沿って連続的に変化している状態は、特に
図11(c)の側面図に明確に示されている。溝部5の高さ方向の寸法は、
図10(a)のY軸方向に沿って徐々に小さくなるように設定されており、溝部5は、
図11(c)の平面図において、Y軸方向に沿って先細りするテーパ形状を有している。なお、溝部5のY軸方向の寸法(テーパ形状の長手方向の寸法)は、ビーム形状の急激な変化に伴う伝搬損失が生じない程度の長さであることが好ましく、例えば500μm以上に設定される。
【0119】
さらに、
図12(a)~
図12(c)に示す断面図を参照しながら、溝部5がリブ部4の延在方向に沿ってテーパ形状を有することについて説明する。
【0120】
図12(a)は、
図11(c)の側面図におけるD-D断面図であり、
図10の斜視図において手前側の断面構造を示している。
図12(a)のD-D断面図において、リブ部4の上面から溝部5の底面までの高さ方向の寸法(
図2の高さh
3)は、リブ部4の幅方向の寸法(
図2の幅w
1)と略同一である。また、溝部5の高さ方向の寸法(
図2の深さh
2)は、リブ部4の高さ方向の寸法(
図2の高さh
1)と略同一であり、溝部5の幅方向の寸法(
図2の幅w
2)は、リブ部4の幅方向の寸法(
図2の幅w
1)と略同一である。すなわち、導波層3から突出するリブ部4の断面形状と、支持基板2に掘削された溝部5の断面形状とは、導波層3に対して対称になっている。
【0121】
図12(b)は、
図11(c)の側面図におけるE-E断面図であり、
図10の斜視図において略中央部の断面構造を示している。
図10の斜視図において、手前側から奥側へY軸方向に沿って進むにつれて、溝部5の高さ方向の寸法は連続的に小さくなる。そして、
図12(b)のE-E断面図に示す略中央部の断面構造では、溝部5の高さ方向の寸法(
図2の深さh
2)は、リブ部4の高さ方向の寸法(
図2の高さh
1)の約半分となる。
【0122】
図12(c)は、
図11(c)の側面図におけるF-F断面図であり、
図10の斜視図において最も奥側の断面構造を示している。Y軸方向に沿って進むにつれて溝部5の高さ方向の寸法は更に小さくなり、
図12(c)のF-F断面図に示す最も奥側の断面構造では、溝部5の高さ方向の寸法(
図2の深さh
2)はゼロであり、溝部5は消失している。
図12(c)のF-F断面図に示す断面構造は、通常のリブ型導波路の断面構造と同一である。
【0123】
図13(a)~
図13(c)は、本発明の第2の実施の形態における光導波路素子41の電界強度シミュレーションの結果を示す図である。
図13(a)は、
図12(a)の断面構造における光強度分布を示す図である。
図13(b)は、
図12(b)の断面構造における光強度分布を示す図である。
図13(c)は、
図12(c)の断面構造における光強度分布を示す図である。
図13(a)~
図13(c)では、光強度分布が濃淡で表されており、濃度が濃いほど光強度が高く、濃度が薄いほど光強度が弱いことを示している。
【0124】
図13(a)に示す断面構造では、リブ部4の上面から溝部5の底面までの高さ方向の寸法とリブ部4の幅方向の寸法とが略同一であり、さらに、リブ部4の幅方向の寸法と溝部5の幅方向の寸法とが略同一である。すなわち、リブ部4の側面および溝部5の側面で囲まれた領域がアスペクト比1:1の略正方形になっている。これにより、光導波路を伝搬する光波のビーム形状は、
図13(a)に示すように光ファイバ内を伝搬する光波と同じような略真円に近い形状となる。
【0125】
図13(b)に示す断面構造は、
図13(a)と比較すると、溝部5の高さ方向の寸法が小さくなっている。これにより、光導波路を伝搬する光波は、溝部5に広がる領域が少なくなるとともにリブ部4に広がる領域が多くなる。光波のビーム形状は、
図13(b)に示すように少し歪んだ形状となる。
【0126】
図13(c)に示す断面構造は、溝部5が消失しており通常のリブ型導波路と同じ形状になっている。したがって、光波のビーム形状は、
図13(c)に示すように、リブ部4に入り込むように歪んだ形状となる。
【0127】
図10のY軸の正方向に光波が伝搬する場合には、光波のビーム形状は、略真円に近い形状(
図13(a)に示す状態)から、徐々に歪んでいき(
図13(b)に示す状態)、リブ型導波路と同じビーム形状(
図13(c)に示す状態)に連続的に変化する。溝部5の高さ方向の寸法は連続的に変化するため、
図13(a)~
図13(c)に示すビーム形状も連続的に変化する。
【0128】
本発明の第2の実施の形態では、光波の伝搬方向に対して溝部5の高さ方向の寸法が連続的に小さくなるように溝部5を設けることで、光ファイバ内を伝搬する光波のビーム形状(略真円に近い形状)から、通常のリブ型導波路を伝搬する光波のビーム形状へ連続的に変化させることが可能となる。光波のビーム形状は連続的に変化するため、不連続かつ急激な変化に伴う損失発生を防ぐことが可能となる。
【0129】
さらに、光波のビーム形状が略真円に近い形状(
図13(a)に示す状態)となるように形成された溝部5を、光導波路素子41に光波を導入する光ファイバとの結合部に設けることで、光ファイバから導入される光波と、光ファイバから導入されて光導波路素子41の光導波路を伝搬する光波との間におけるビーム形状の不整合を抑えることが可能となる。その結果、光ファイバと光導波路素子41との結合部における結合損失を低減させることが可能となる。
【0130】
また逆に、
図10のY軸の負方向に光波が伝搬する場合には、光波のビーム形状は、リブ型導波路と同じビーム形状(
図13(c)に示す状態)から、徐々に歪みの少ない形状(
図13(b)に示す状態)となり、略真円に近い形状(
図13(a)に示す状態)に連続的に変化する。溝部5の高さ方向の寸法は連続的に変化することから、
図13(a)~
図13(c)に示すビーム形状も連続的に変化する。
【0131】
本発明の第2の実施の形態では、光波の伝搬方向に対して溝部5の高さ方向の寸法が連続的に大きくなるように溝部5を設けることで、通常のリブ型導波路を伝搬する光波のビーム形状から、光ファイバ内を伝搬する光波のビーム形状(略真円に近い形状)へ連続的に変化させることが可能となる。光波のビーム形状は連続的に変化するため、不連続かつ急激な変化に伴う損失発生を防ぐことが可能となる。
【0132】
さらに、光波のビーム形状が略真円に近い形状(
図13(a)に示す状態)となるように形成された溝部5を、光導波路素子41から光波を導出する光ファイバとの結合部に設けることで、光ファイバから導入されて光導波路素子41の光導波路を伝搬する光波と、光ファイバから導出される光波との間におけるビーム形状の不整合を抑えることが可能となる。その結果、光ファイバと光導波路素子41との結合部における結合損失を低減させることが可能となる。
【0133】
また、溝部5を設けた場合には、光波が溝部5に入り込むように広がるため、光波の位置(例えば光強度が極大となる位置)は、リブ部4から離れて溝部5に近い位置となる。本発明の第2の実施の形態によれば、本発明の第1の実施の形態と同様に、溝部5を設けることで光波の位置を溝部5側へずらすことが可能となる。その結果、光波が導波層3およびリブ部4と外気との境界部にオーバラップする領域を低減させることが可能となり、該境界部による散乱を抑えて、光導波路素子41の光導波路における伝搬損失を低減させることが可能となる。
【0134】
本発明の第2の実施の形態における光導波路素子41を用いて、本発明の第1の実施の形態に係る光変調器10A(
図6参照)や光変調器10B(
図7参照)と同様の光変調器を実現することが可能である。ただし、本発明の第2の実施の形態では、高さ方向の寸法が連続的に変化するように溝部5が形成される。
【0135】
本発明の第2の実施の形態に係る光変調器では、
図6に示す光変調器10Aに含まれる光導波路の区間S1において、光波の伝搬方向に対して高さ方向の寸法が連続的に小さくなるように溝部5が形成され、区間S2において、光波の伝搬方向に対して高さ方向の寸法が連続的に大きくなるように溝部5が形成される。
【0136】
また、本発明の第2の実施の形態に係る光変調器では、
図7に示す光変調器10Bに含まれる光導波路の区間S5において、光波の伝搬方向に対して高さ方向の寸法が連続的に小さくなるように溝部5が形成され、区間S6において、光波の伝搬方向に対して高さ方向の寸法が連続的に大きくなるように溝部5が形成される。
【0137】
また、本発明の第2の実施の形態における光導波路素子41は、本発明の第1の実施の形態で説明した製造工程(
図8および
図9参照)と同様の工程で製造することが可能である。ただし、本発明の第2の実施の形態では、溝部5の高さ方向の寸法が、光導波路において意図するビーム形状に合わせて適宜設定される。
【0138】
なお、本明細書では、本発明の第1および第2の実施の形態を個別に説明しているが、第1および第2の実施の形態を組み合わせてもよい。例えば、リブ部4の延在方向に沿って高さ方向の寸法および幅方向の寸法の両方が連続的に変化するように、溝部5が形成されてもよい。
【0139】
本発明は、上記の実施の形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々の変形例および設計変更等をその技術的範囲に包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明は、光ファイバとの結合部における結合損失を低減させることが可能となり、光導波路における伝搬損失を低減させることが可能となる光導波路素子を提供し、光通信分野や光計測分野等に適用可能である。
【符号の説明】
【0141】
1、41 光導波路素子
2 支持基板
3 導波層
4 リブ部
5 溝部
10A、10B 光変調器
11 入力導波路
12 分岐部
13 第1分岐導波路
14 第1曲げ部
15 並行導波路
16 第2曲げ部
17 第2分岐導波路
18 合成部
19 出力導波路
20 入力側光ファイバ
30 出力側光ファイバ