(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】重合性液晶組成物、液晶重合体および位相差膜
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20230111BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20230111BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B5/20 101
C08F290/06
(21)【出願番号】P 2019072101
(22)【出願日】2019-04-04
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大槻 大輔
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-506813(JP,A)
【文献】特表2016-531989(JP,A)
【文献】国際公開第2019/009255(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02B 5/20
C08F 290/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性液晶化合物(A)、および1つ以上のアミノ基および1つ以上の水酸基を有する重合性化合物である接着促進剤(B)を含
む重合性液晶組成物であって、
上記重合性液晶化合物(A)が2つ以上の重合性基を有する化合物であり、
上記接着促進剤(B)がアミン変性エポキシアクリレートであり、
上記接着促進剤(B)の含有量が、重合性液晶組成物の全量に対して、0.01~5重量%である、
重合性液晶組成物。
【請求項2】
界面活性剤、重合開始剤および重合防止剤をさらに含有する、請求項
1に記載の重合性液晶組成物。
【請求項3】
請求項
1または2に記載の重合性液晶組成物を重合して得られる光学異方性を有する液晶重合体。
【請求項4】
液晶分子がホモジニアス配向で固定された、請求項
3に記載の液晶重合体。
【請求項5】
液晶分子がツイスト配向で固定された、請求項
3に記載の液晶重合体。
【請求項6】
請求項
3~5のいずれか1項に記載の液晶重合体の層が配向処理を施された基板上に直接積層してなる、位相差膜。
【請求項7】
光配向処理を施された基板上に直接積層してなる、請求項
6に記載の位相差膜。
【請求項8】
波長550nmの面内レターデーションRe(550)が100nm以上300nm以下である、請求項
6または7に記載の位相差膜。
【請求項9】
請求項
6~8のいずれか1項に記載の位相差膜をカラーフィルタ層に直接、または平坦化層を介して積層した、カラーフィルタ。
【請求項10】
請求項
6~8のいずれか1項に記載の位相差膜を含む表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性液晶組成物を重合して得られる液晶重合体に関する。特に光配向処理を施された基板上でホモジニアス配向した重合性液晶組成物を重合して得られる液晶重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、視野角の拡大、画像色調の調整などのために、液晶表示装置に位相差膜を配置することが行われている。このような位相差膜として、延伸ポリマーフィルムが用いられている。重合性液晶組成物の重合物(硬化物)である液晶重合体も、位相差膜として使用可能である。液晶重合体を用いることで、位相差膜の薄膜化や耐久性向上が期待でき、液晶表示装置の薄型化や表示品位向上が可能となる。
【0003】
液晶重合体を用いた位相差膜は、配向処理を施した基板上に重合性液晶組成物溶液を塗布し、重合性液晶組成物を配向させた後、該重合性液晶組成物を重合させることで形成される(特許文献1)。
ホモジニアス配向を有する液晶重合体は、1/2波長板や1/4波長板などのA-プレートとして機能する。
【0004】
基板上に液晶重合体を形成する場合、位相差膜の加工工程や液晶表示装置の製造工程において、剥離が生じないことが求められる。基板と液晶重合体の接着性を向上させることを目的とし、水酸基を有するアクリレート、環状エーテル構造を有するアクリレートなどを接着促進剤として含有する、重合性液晶組成物が提案されている(特許文献2、3)。
また、液晶重合体の重合率を制御することで接着性を向上させる手法が提案されている(特許文献4)。
【0005】
液晶表示装置の表示品位向上を目的とし、正面コントラストの高い位相差膜が提案されている(特許文献5)。
【0006】
液晶表示装置の薄型化、軽量化、貼り付け工程削減などによる生産性向上の観点から、液晶セルの内側に位相差膜を配置した、インセル位相差膜が提案されている。インセル位相差膜は、液晶セルの製造工程で必要とされる230℃前後の熱処理においても、位相差機能が大きく変化することの無い、高い耐熱性が要求される(特許文献6)。
【0007】
インセル位相差膜においても、基板との高い接着性が求められる。重合性液晶組成物の成分である、単官能重合性液晶化合物と2官能重合性液晶化合物の質量比を制御することで、接着性の良好なインセル位相差膜が提案されている(特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-148098号公報
【文献】特表2007-506813号公報
【文献】特開2014-219659号公報
【文献】特開2007-93864号公報
【文献】特開2018-039990号公報
【文献】特開2015-105986号公報
【文献】国際公開2014/073578号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
重合性液晶化合物としては、合成の容易さ、重合反応性(硬化性)の高さなどの理由から、メタクリロイル基またはアクリロイル基(以下、これら基をまとめて(メタ)アクリロイル基とも称する。)を重合性基として有する化合物が主に用いられる。
重合反応では、ファンデルワールス距離から共有結合距離への転換が生じるため、硬化収縮が発生する。特に、(メタ)アクリロイル基を有する化合物の重合反応は付加重合であるため、硬化収縮が大きい。該化合物からなる液晶重合体は硬化収縮による内部応力の影響で、基板との接着性が低下しやすい問題を有する。
【0010】
液晶重合体の正面コントラストを向上させるためには、一様で秩序の高い配向が必要である。(メタ)アクリロイル基を有する重合性液晶組成物からなる液晶重合体は、重合反応に伴う硬化収縮が大きいため、配向秩序が低下し、正面コントラストが低下しやすい問題を有する。
【0011】
接着促進剤を含有した重合性液晶組成物を用いることで、基板と液晶重合体の接着性を向上させる手法がある。しかし、従来の接着促進剤の場合、十分な接着性を発揮可能な量を重合性液晶組成物に含有させると、得られる液晶重合体の正面コントラストが大幅に悪化する問題を有する。
【0012】
重合性液晶組成物に単官能成分を含ませる手法、液晶重合体の重合率を抑制する手法は、硬化収縮を抑制することで基板と液晶重合体との接着性を向上させることを目的としている。しかし、これら手法では、高温環境下において、位相差機能が大幅に悪化する問題を有する。
【0013】
本発明は、基板との接着性に優れるとともに正面コントラストに優れる液晶重合体を提供することである。加えて、高温環境下においても位相差機能の変化が抑制された液晶重合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の態様1は、重合性液晶化合物(A)、および1つ以上のアミノ基および1つ以上の水酸基を有する重合性化合物である接着促進剤(B)を含む重合性液晶組成物である。
【0015】
本発明の態様2は、重合性液晶化合物(A)が2つ以上の重合性基を有する化合物である態様1の重合性液晶組成物である。
【0016】
本発明の態様3は、接着促進剤(B)がアミン変性エポキシアクリレートである、態様1または2に記載の重合性液晶組成物である。
【0017】
本発明の態様4は、接着促進剤(B)の含有量が、重合性液晶組成物の全量に対して、0.01~5重量%である、態様1~3のいずれかに記載の重合性液晶組成物である。
【0018】
本発明の態様5は、界面活性剤、重合開始剤および重合防止剤をさらに含有する、態様1~4のいずれかに記載の重合性液晶組成物である。
【0019】
本発明の態様6は、態様1~5のいずれかに記載の重合性液晶組成物を重合して得られる光学異方性を有する液晶重合体である。
【0020】
本発明の態様7は、液晶分子がホモジニアス配向で固定された、態様6に記載の液晶重合体である。
【0021】
本発明の態様8は、液晶分子がツイスト配向で固定された、態様6に記載の液晶重合体である。
【0022】
本発明の態様9は、態様6~8のいずれかに記載の液晶重合体の層が配向処理を施された基板上に直接積層してなる、位相差膜である。
【0023】
本発明の態様10は、光配向処理を施された基板上に直接積層してなる、態様9に記載の位相差膜である。
【0024】
本発明の態様11は、波長550nmの面内レターデーションRe(550)が100nm以上300nm以下である、態様9または10に記載の位相差膜である。
【0025】
本発明の態様12は、態様9~11のいずれかに記載の位相差膜をカラーフィルタ層に直接、または平坦化層を介して積層した、カラーフィルタである。
【0026】
本発明の態様13は、態様9~11のいずれかに記載の位相差膜を含む表示素子である。
【発明の効果】
【0027】
本発明で得られる液晶重合体は、基板との接着性に優れるとともに正面コントラストに優れる。また、その液晶重合体は、高温環境下においても位相差機能の変化が抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明において、「接着性」とは、液晶重合体と該液晶重合体が直接接している基板間の接着の程度を示す。接着性が低い場合は、液晶重合体が基板から剥がれやすく、接着性が高い場合は、液晶重合体が基板から剥がれにくいことを示す。
【0029】
本発明において、「正面コントラスト」とは、2枚の偏光板の間に物体を配置した際の、(パラレルニコル状態での輝度)/(クロスニコル状態での輝度)の値である。
本発明において、「クロスニコル状態」とは、対向配置した偏光板の偏光軸が直交した状態である。
本発明において、「パラレルニコル状態」とは、対向配置した偏光板の偏光軸が一致した状態である。
【0030】
本発明において、「Re」とは、レターデーションであり、常光に対する異常光の位相の遅れのことである。位相差機能とはレターデーションを意味する。液晶重合体の層の厚みをdとし、Δnは複屈折率とすると、Re=Δn・dで表される。
【0031】
本発明において、「Re(λ)」とは、波長λnmの光をフィルム面に対して垂直に入射した時のレターデーションである。
【0032】
本発明において、「π電子の数」とは、価電子が局在化しているとみなして示した、有機化合物の価標による構造式において、{価標による構造式中の2重結合の個数}×2で算出した数である。また、化合物中に酸素、窒素が含まれる場合には、その酸素、窒素に含まれる非共有電子対の数と、前述した{価標による構造式中の2重結合の個数}×2で算出した数を合算した値である。
【0033】
本発明において「化合物(X)」とは、式(X)で表わされる化合物を意味する。ここで「化合物(X)」中のXは文字列、数字、記号等である。
【0034】
本発明において「液晶組成物」とは、液晶相を有する混合物である。
本発明において「液晶化合物」とは、(A)純物質として液晶相を有する化合物および(B)液晶組成物の成分となる化合物の総称である。
【0035】
本発明において、「重合性基」とは、化合物中に有すると、光、熱、触媒などの手段により重合しより大きな分子量を有する高分子へと変化させる官能基である。
本発明において、「単官能化合物」とは、重合性基を1つ有する化合物である。
本発明において、「多官能化合物」とは、重合性基を複数有する化合物である。
本発明において、「X官能化合物」とは、重合性基をX個有する化合物である。ここで、「X官能化合物」中のXは整数である。
本発明において、「重合性化合物」とは、重合性基を少なくとも1つ有する化合物である。
本発明において「重合性液晶化合物」とは、液晶化合物である重合性化合物である。
本発明において、「非液晶性重合性化合物」とは、純物質では液晶相を有さない化合物である重合性化合物である。
【0036】
本発明において、「重合性液晶組成物」とは、重合性液晶化合物を含み、液晶相を有する組成物を意味する。
本発明において、「重合性液晶組成物溶液」とは、重合性液晶組成物と溶媒を含む混合物を意味する。
本発明において、「液晶重合体」とは、重合性液晶組成物を重合して得られた部分を意味する。
【0037】
本発明において、「位相差膜」とは、液晶重合体の層と配向処理を施した基板の積層体であり、光学異方性を有する素子である。
本発明において「インセル」とは、2枚の基板間に液晶層を封入したセルであって、該基板間の内部である液晶層側を指す。
本発明において「インセル位相差膜」とは、液晶セルの内部に設置された位相差膜を意味する。
【0038】
本発明において、「ホモジニアス配向」とは、液晶分子のプレチルト角が0度から5度である配向状態を指す。
本発明において、「プレチルト角」とは、液晶分子の基板からの立ち上がりの角度を指す。
本発明において、「ツイスト配向」とは、液晶分子の長軸方向の配向方向が基板に対して平行であり、かつ、基板から離れるにしたがって、基板表面の垂線を軸として、階段状にねじれている状態をいう。
【0039】
本発明において、「タック性」とは、液晶重合体のべたつきのことを指す。液晶重合体の表面を指で触れた際に、液晶重合体が指に引っ付く状態のものを、タック性を有するという。
【0040】
本発明において「室温」とは、15℃から35℃を指す。
【0041】
化学式中に下記の化学構造の記載があった場合には、波線部が原子または該官能基の結合位置である。ここで下記のCは任意の原子または官能基である。
【0042】
【0043】
化学式中に、同一の符号があり、複数存在する場合は、符号が示す構造は同一であっても異なるものであってもよい。
【0044】
液晶の配向は、ホモジニアス配向、ホメオトロピック配向、ツイスト配向、スプレイ配向、ハイブリッド配向などがある。
【0045】
≪重合性液晶組成物≫
本発明の重合性液晶組成物は少なくとも1つの重合性液晶化合物(A)および少なくとも1つの接着促進剤(B)を含有する。
【0046】
<接着促進剤(B)>
上記接着促進剤(B)は、その分子内に、1つ以上のアミノ基および1つ以上の水酸基を有する重合性化合物である。接着促進剤(B)が本発明の重合性組成物に含まれることにより、基板との接着性が向上した液晶重合体を形成できる。また、アミノ基を有することで、重合反応が促進され、耐熱性の優れた液晶重合体の形成も可能となる。また、本発明の接着促進剤は、重合性液晶組成物への少ない含有量で、十分な接着性を得ることが可能である。そのため、本発明の重合性液晶組成物からなる液晶重合体は、正面コントラストに優れる。また、高温環境下での位相差機能の変化が抑制される。
【0047】
上記接着性促進剤(B)となる重合性化合物には、重合性基が2つ以上有する多官能化合物であることが好ましい。重合性基を2つ以上有することで、液晶重合体の耐熱性、耐水性、および耐薬品性などの低下を抑制することが出来る。
【0048】
接着促進剤(B)としては、アミン変性エポキシアクリレートであることが好ましい。アミン変性エポキシアクリレートは、少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物(b1)と、少なくとも1つのアミノ基およびアクリロイル基を有する化合物(b2)とを反応させることで得られる化合物である。上記アミン変性エポキシアクリレートに含まれるアミノ基としては、2級アミノ基および3級アミノ基が好ましい。したがって、上記化合物(b2)に含まれるアミノ基としては、1級アミノ基および2級アミノ基が好ましい。また、アミン変性エポキシアクリレートにはビフェニル骨格および/またはビスフェノール骨格が含まれていることが好ましい。アミン変性エポキシアクリレートにはビフェニル骨格またはビスフェノール骨格が含まれていることにより、得られる液晶重合体の高温環境下での位相差機能の変化をより抑制することができる。したがって、上記化合物(b1)としては、ビフェニル骨格および/またはビスフェノール骨格が含まれているエポキシ基を有する化合物であることが好ましい。
【0049】
上記接着促進剤(B)の含有量は、本発明の効果が損なわれない限り特に制限はないが、得られる液晶重合体の正面コントラスト性、接着性などを考慮すると、本発明の重合性液晶組成物の全量に対して0.01~5重量%が好ましく、0.05~2重量%がより好ましく、0.1~1重量%がさらに好ましい。
【0050】
<重合性液晶化合物(A)>
本発明の重合性液晶組成物は少なくとも1つの重合性液晶化合物(A)を含有する。
重合性液晶化合物(A)は、その分子内に、2つ以上の重合性基を有する化合物(重合性基を2つ以上有する多官能化合物)であることが好ましい。重合性液晶化合物(A)が重合性基を2つ以上有することで、得られる液晶重合体の耐熱性、耐水性、および耐薬品性などの低下を抑制することが出来る。
重合性液晶化合物(A)は棒状液晶化合物または円盤状液晶化合物のいずれであってもよいが、合成の容易さおよび生産性の観点から、棒状液晶化合物であることが好ましい。
【0051】
上記重合性液晶化合物(A)としては、下記式(1)または式(2)で表される重合性液晶化合物が好ましい。
【0052】
【化2】
上記式(1)中、mは1、2、3、または4であり、
A
1は独立して1,4-フェニレン、1,4-シクロへキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、フルオレン-2,7-ジイル、またはインダノン-4,7-ジイルで表される二価の環であり、該二価の環おいて、少なくとも1つの水素はフッ素、塩素、トリフルオロメチル、炭素数1~10のアルキル、炭素数2~10のアルケニル、炭素数1~10のアルコキシ、炭素数1~10のアルコキシカルボニル、炭素数1~10のアルカノイル、炭素数1~10のアルカノイルオキシ、または重合性基を有する一価基で置き換えられてもよく、
Z
1は独立して単結合、-OCH
2-、-CH
2O-、-COO-、-OCO-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH
2CH
2-、-CF
2CF
2-、-OCH
2CH
2O-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH
2CH
2COO-、-OCOCH
2CH
2-、-CH
2CH
2OCO-、-COOCH
2CH
2-、-CH=CH-、-N=CH-、-CH=N-、-N=C(CH
3)-、-C(CH
3)=N-、-N=N-、-C≡C-、-CH=N-N=CH-、-C(CH
3)=N-N=C(CH
3)-、または炭素数4~20のアルキレンであり、該アルキレンにおいて少なくとも1つの-CH
2-は-O-で置き換えられてもよく、
P
1は独立して重合性基を有する一価基である。
【0053】
高い硬化性(重合反応性)、溶媒への溶解性、および取扱いのしやすさなどの観点から、式(1)中に示される、重合性基を有する一価基は以下の式(P1-1)で表される構造が好ましい。
【0054】
【化3】
上記式(P
1-1)中、Y
1は単結合、-O-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-であり、
Q
1は単結合または炭素数1~20のアルキレンであり、該アルキレンにおいて少なくとも1つの-CH
2-は-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、PG
1はアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基である。
【0055】
【化4】
上記式(2)中、nは独立して1または2であり、
A
2は独立して1,4-フェニレン、または1,4-シクロへキシレンで表される二価の環であり、該二価の環おいて、少なくとも1つの水素はフッ素、塩素、トリフルオロメチル、炭素数1~10のアルキル、炭素数2~10のアルケニル、炭素数1~10のアルコキシ、炭素数1~10のアルコキシカルボニル、炭素数1~10のアルカノイル、炭素数1~10のアルカノイルオキシ、または重合性基を有する一価基で置き換えられてもよく、
Z
2は独立して単結合、-OCH
2-、-CH
2O-、-COO-、-OCO-、-CH
2CH
2-、-OCH
2CH
2O-、-CH
2CH
2COO-、-OCOCH
2CH
2-、-CH
2CH
2OCO-、または-COOCH
2CH
2-であり、
P
2は独立して重合性基を有する一価基であり、
Gは、下記式(G-1)、(G-2)、(G-3)、または(G-4)で表される基である。
【0056】
【化5】
上記式(G-1)~(G-4)中、
X
1は独立して-CH
2-、-NH-、-O-、-S-、または-CO-であり、-CH
2-または-NH-において、少なくとも1つの水素は炭素数1~5のアルキルで置き換えられてもよく、
-X
2=は独立して-CH=または-N=であり、
Z
3は独立して単結合、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=N-、-N=CH-、-CH=N-NR
1-、-C(CH
3)=N-NR
1-または-CH=N-N=CH-であり、ここで、R
1は独立して水素、炭素数1~10のアルキルまたは重合性基を有する一価基であり、
T
1、T
4およびT
5はそれぞれπ電子の数が6~14である1価基であり、
T
2、T
3およびT
6はそれぞれ独立して、水素、トリフルオロメチル、シアノ、炭素数1~5のアルキル、炭素数2~5のアルケニル、炭素数1~5のアルコキシ、炭素数1~5のアルコキシカルボニル、炭素数1~5のアルカノイル、炭素数1~5のアルカノイルオキシ、炭素数1~5のアルキルスルフィド、または重合性基を有する一価基であり、
T
2およびT
3は、上記一価基に代えて、これらが一体となって、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を含む、5~7員環の、複素環または環状ケトンであってもよい。
【0057】
高い硬化性(重合反応性)、溶媒への溶解性、および取扱いのしやすさなどの観点から、式(2)中に示される、重合性基を有する一価基は以下の式(P2-1)で表される構造が好ましい。
【0058】
【化6】
上記式(P
2-1)において、Y
2は単結合、-O-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-であり、
Q
2は単結合または炭素数1~20のアルキレンであり、該アルキレンにおいて少なくとも1つの-CH
2-は-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、PG
2はアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基である。
【0059】
上記式(1)で表される重合性液晶化合物(A)としては、例えば、下記式(1-1)~(1-20)で表される化合物が挙げられる。
【0060】
【0061】
【0062】
上記式(1-1)~(1-20)において、Y1は独立して単結合、-O-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-であり、
Q1は独立して単結合または炭素数1~20のアルキレンであり、該アルキレンにおいて少なくとも1つの-CH2-は-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、
PG1は独立してアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基である。
【0063】
上記式(2)で表される重合性液晶化合物(A)としては、例えば、下記式(2-1-1)~(2-1-5)、式(2-2-1)~(2-2-6)、式(2-3-1)~(2-3-6)、および式(2-4-1)~(2-4-5)で表される化合物が挙げられる。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
上記式(2-1-1)~(2-1-5)、式(2-2-1)~(2-2-6)、式(2-3-1)~(2-3-6)、および式(2-4-1)~(2-4-5)において、Y2は独立して単結合、-O-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-であり、
Q2は独立して単結合または炭素数1~20のアルキレンであり、該アルキレンにおいて少なくとも1つの-CH2-は-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、
PG2は独立してアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基である。
【0069】
<その他の成分>
本発明の重合性液晶組成物は重合性液晶化合物(A)および接着促進剤(B)以外の成分を、得られる重合性液晶組成物の液晶相の発現を損なわない限り、含有してもよい。
【0070】
〔硬化促進剤〕
本発明の重合性液晶組成物は硬化促進剤を含有してもよい。本発明でいう硬化促進剤とは、その分子内に、3つ以上の重合性基を有し、かつアミノ基を有さない重合性化合物である。重合性液晶組成物に硬化促進剤を含有させることにより、表面の機械的強度および耐薬品性の高い液晶重合体が得られる。
【0071】
上記硬化促進剤としては、例えば、ペンタエリストールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールEO付加トリアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリストールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールEO付加トリメタクリレート、トリスメタクリロイルオキシエチルフォスフェート、トリスメタクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタメタクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタメタクリレートなどが挙げられる。
【0072】
重合性液晶組成物中の上記硬化促進剤の含有量は、重合性液晶組成物全量に対して、0.1~10重量%が好ましく、0.1~5重量%がより好ましく、0.5~5重量%がさらに好ましい。硬化促進剤の含有量が前記下限値未満であると、機械的強度の高い液晶重合体を形成することが困難となる場合がある。硬化促進剤の含有量が前記上限値を超える場合、基板との接着性の低下および光学特性の低下などが生じる場合がある。
【0073】
〔界面活性剤〕
本発明の重合性液晶組成物は界面活性剤を含有してもよい。重合性液晶組成物に界面活性剤を含有させることにより、平滑性が向上した液晶重合体(例えば液晶重合体の層)が得られる。界面活性剤は、イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤に分類される。
平滑性のより向上した液晶重合体(例えば液晶重合体の層)が得られることから、また、液晶重合膜の空気界面側のチルト配向を抑制する効果があることから、非イオン性界面活性剤が好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、シリコーン系非イオン性界面活性剤、フッ素系非イオン性界面活性剤、ビニル系非イオン性界面活性剤、炭化水素系非イオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0074】
シリコーン系非イオン性界面活性剤としては、例えば、シロキサン結合からなる直鎖状ポリマーであって、側鎖および/または末端にポリエーテルや長鎖アルキルなどの有機基を導入した化合物などが挙げられる。
【0075】
フッ素系非イオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数2~7のパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基を有する化合物などが挙げられる。
【0076】
ビニル系非イオン性界面活性剤としては、例えば、重量平均分子量が1000~1000000の(メタ)アクリル系高分子などが挙げられる。
【0077】
得られる液晶重合体(例えば液晶重合体の層)表面の機械的強度および耐薬品性を向上させるため、界面活性剤として、重合性基を有する界面活性剤を用いてもよい。重合性基を有する界面活性剤としては紫外線で重合開始する界面活性剤が好ましい。
【0078】
得られる液晶重合体(例えば液晶重合体の層)が均一な配向になりやすく、また、重合性液晶組成物の塗布性が向上することから、上記界面活性剤の含有量は、重合性液晶組成物全量に対して、0.01~5重量%が好ましく、0.05~1重量%がより好ましい。
【0079】
〔重合開始剤〕
本発明の重合性液晶組成物は重合開始剤を含有してもよい。重合性液晶組成物に重合開始剤を含有させることにより、重合性液晶組成物の重合速度(硬化速度)が最適化できる。硬化プロセスの容易さから、重合開始剤は光重合開始剤が好ましく、光ラジカル重合開始剤がより好ましい。
【0080】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、p-メトキシフェニル-2,4-ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2-(p-ブトキシスチリル)-5-トリクロロメチル-1,3,4-オキサジアゾール、9-フェニルアクリジン、9,10-ベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン混合物、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール混合物、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2,4-ジエチルキサントン/p-ジメチルアミノ安息香酸メチル混合物、ベンゾフェノン/メチルトリエタノールアミン混合物、アデカオプトマーN-1919、アデカクルーズNCI-831、アデカクルーズNCI-930、オムニラッド127、オムニラッド184、オムニラッド369、オムニラッド379、オムニラッド500、オムニラッド651、オムニラッド754、オムニラッド819、オムニラッド907、オムニラッド1173、オムニラッド2022、オムニラッド2100、オムニラッド2959、オムニラッド4265、イルガキュアーOXE01、イルガキュアーOXE02、オムニラッドMBF、オムニラッドTPOなどが挙げられる。ここでアデカオプトマー、アデカクルーズ、オムニラッドおよびイルガキュアーは登録商標である。
【0081】
得られる液晶重合体の正面コントラストを向上し、タック性を防止し、光学特性の経時変化を防止する観点から、重合性液晶組成物中の上記重合開始剤(典型的には光重合開始剤)の含有量は、重合性液晶組成物全量に対して、1~30重量%が好ましく、1~15重量%がより好ましく、3~10重量%が更に好ましい。
【0082】
光重合開始剤を重合性液晶組成物に含有させる場合には、上記光重合開始剤とともに増感剤を重合性液晶組成物に含有させてもよい。上記増感剤としては、例えば、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、エチル-4ジメチルアミノベンゾエート、および2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエートなどが挙げられる。
【0083】
本発明の重合性液晶組成物は連鎖移動剤を含有してもよい。重合性液晶組成物に連鎖移動剤を含有させることにより、重合性液晶化合物の反応率および液晶重合体(例えば液晶重合体の層)の重合体鎖の長さが調整できる。連鎖移動剤の含有量が増加すると、重合性液晶化合物の反応率は低下する傾向にある。連鎖移動剤の含有量が増加すると、重合体鎖の長さが減少する傾向にある。
【0084】
上記連鎖移動剤としては、例えば、単官能または多官能チオール誘導体、スチレンダイマー誘導体などが挙げられる。
【0085】
上記単官能チオール誘導体としては、例えば、ドデカンチオール、2-エチルへキシル-(3-メルカプト)プロピオネートなどが挙げられる。
上記多官能チオール誘導体としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンなどが挙げられる。
上記スチレンダイマー系連鎖移動剤としては、例えば、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、2,4-ジフェニル-1-ブテンなどが挙げられる。
【0086】
〔重合防止剤〕
本発明の重合性液晶組成物は重合防止剤を含有してもよい。重合性液晶組成物に重合防止剤を含有させることにより、重合性液晶組成物および重合性液晶組成物溶液の保存時の重合開始を抑制できるため、重合性液晶組成物の保存安定性を向上できる。また、得られる液晶重合体の酸化を抑制できる。さらに得られる液晶重合体の耐候性を向上できる。
【0087】
上記重合防止剤としては、酸化防止剤が好ましい。重合防止剤として使用できる酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤などが挙げられる。これらの中でも、重合性液晶組成物との相溶性、得られる液晶重合体(例えば液晶重合体の層)の透明性の観点から、フェノール系酸化防止剤が好ましい。フェノール系酸化防止剤の中でも、相溶性の観点から、ベンゼン環に結合する水酸基のオルト位にt-ブチル基を有するフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0088】
重合性液晶組成物中の重合防止剤の含有量は、保存安定性を向上し、べたつきを防止し、光学特性の経時変化を防止する観点から、重合性液晶組成物全量に対して、0.01~5重量%が好ましく、0.01~0.5重量%がより好ましい。なお、重合性液晶組成物中に2以上の重合防止剤が含有される場合には、これら重合防止剤の総量が上記範囲にあることが望ましい。
【0089】
本発明の重合性液晶組成物は、上記その他の成分以外にも、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤などを含有してもよい。
重合性液晶組成物に紫外線吸収剤を含有させることにより、重合性液晶組成物の耐候性が向上できる。
重合性液晶組成物に光安定剤を含有させることにより、重合性液晶組成物の耐候性が向上できる。
重合性液晶組成物にシランカップリング剤を含有させることにより、得られる液晶重合体(液晶重合体の層)と基板との密着性が改善できる。
【0090】
≪重合性液晶組成物溶液≫
基板(典型的には配向処理を施された基板)などへの塗布を容易にするため、重合性液晶組成物に、溶媒を添加することが好ましい。
重合性液晶化合物と溶媒との相溶性の観点から、重合性液晶組成物溶液中の重合性液晶組成物の含有量は、5~50重量%が好ましく、15~40重量%がより好ましい。
上記溶媒としては、例えば、エステル系溶媒、アミド系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、環状エーテル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、ハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒、脂環式炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、アセテート系溶媒などが挙げられる。
【0091】
エステル系溶媒とは、エステル結合を有する化合物からなる溶媒をいう。エステル系溶媒としては、例えば、酢酸アルキル、トリフルオロ酢酸エチル、プロピオン酸アルキル、酪酸アルキル、マロン酸ジアルキル、グリコール酸アルキル、乳酸アルキル、モノアセチン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンなどが挙げられる。
【0092】
上記酢酸アルキルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチルなどが挙げられる。
上記プロピオン酸アルキルとしては、例えば、プロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチルなどが挙げられる。
上記酪酸アルキルとしては、例えば、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、酪酸プロピルなどが挙げられる。
上記マロン酸アルキルとしては、例えば、マロン酸ジエチルなどが挙げられる。
上記グリコール酸アルキルとしては、例えば、グリコール酸メチル、グリコール酸エチルなどが挙げられる。
上記乳酸アルキルとしては、例えば、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸イソプロピル、乳酸n-プロピル、乳酸ブチル、乳酸エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0093】
アミド系溶媒とは、アミド結合を有する化合物からなる溶媒をいう。
アミド系溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミドジメチルアセタール、N-メチルカプロラクタム、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどが挙げられる。
【0094】
アルコール系溶媒とは、水酸基を有する化合物からなる溶媒をいう。
上記アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、t-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、ブタノール、3-メトキシブタノール、2-エチルブタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、1-ドデカノール、エチルヘキサノール、3、5、5-トリメチルヘキサノール、n-アミルアルコール、ヘキサフルオロ-2-プロパノール、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3-メチル-3-メトキシブタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、テルピネオール、ジヒドロテルピネオールなどが挙げられる。
【0095】
エーテル系溶媒とは、エーテル結合を有する化合物からなる溶媒をいう。
上記エーテル系溶媒としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ビス(2-プロピル)エーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、アニソール、シクロペンチルメチルエーテル、メチルt-ブチルエーテルなどが挙げられる。
【0096】
環状エーテル系溶媒とは、エーテル結合を有する環状化合物からなる溶媒をいう。
上記環状エーテル系溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサン、1.3-ジオキソラン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0097】
芳香族炭化水素系溶媒とは、芳香族炭化水素を有する化合物からなる溶媒をいう。
上記芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、i-プロピルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、s-ブチルベンゼン、n-ブチルベンゼン、テトラリンなどが挙げられる。
【0098】
ハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼンなどが挙げられる。
【0099】
脂肪族炭化水素系溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ミルセンなどが挙げられる。
ハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなどが挙げられる。
【0100】
脂環式炭化水素系溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、デカリン、α-ピネン、β-ピネン、D-リモネンなどが挙げられる。
【0101】
ケトン系溶媒とは、ケトン構造を有する化合物からなる溶媒をいう。
上記ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルプロピルケトンなどが挙げられる。
【0102】
アセテート系溶媒とは、アセトキシ基を有する化合物からなる溶媒をいう。
上記アセテート系溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、アセト酢酸メチル、1-メトキシ-2-プロピルアセテートなどが挙げられる。
【0103】
本発明の液晶重合体は、上述した本発明の重合性液晶組成物を重合することにより得られる。本発明の液晶重合体は、光学異方性を有する。本発明の液晶重合体は、液晶分子がホモジニアス配向の状態で固定化していることが好ましい一態様である。また、本発明の液晶重合体は、液晶分子ツイスト配向の状態で固定化していることが、他の好ましい一態様である。
【0104】
≪液晶重合体≫
本発明の液晶重合体は、例えば、以下の工程(I)~(III)を含む方法により作製される。
(I)重合性液晶組成物溶液を、基板(例えば配向処理を施された基板)上に塗布する。
(II)加温そのほかの方法で、基板上の重合性液晶組成物溶液から溶媒を除き、基板上に重合性液晶組成物の塗膜を作製する。
(III)基板上の重合性液晶組成物からなる塗膜を重合させて、基板上に液晶重合体を作製する。
【0105】
上記工程(I)での重合性液晶組成物溶液の塗布には、種々の塗布方法が用いられる。基板上の重合性液晶組成物の膜厚の均一性の観点から、塗布方法の中でも、スピンコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スリットコート法、ダイコート法およびインクジェットコート法が好ましい。
【0106】
上記工程(II)で重合性液晶組成物溶液から溶媒を除去する方法としては、熱処理による方法が好ましい。例えば、配向処理を施された基板上に液晶重合体からなる膜を形成する場合には、乾燥中にこの熱処理を行うことが望ましい。熱処理は、例えば、ホットプレート上での加熱、乾燥炉内での加熱、温風又は熱風の吹き付け、などにより行うことができる。熱処理の温度範囲は40℃~150℃であることが好ましく、50℃~120℃であることがより好ましい。
重合性液晶組成物溶液から溶媒を除去するその他の方法例としては、減圧処理などである。
【0107】
上記工程(III)において、本発明の重合性液晶組成物から本発明の液晶重合体を作製する際には、重合する前に配向させた状態とすることが望ましい。
【0108】
上記工程(III)の重合性液晶組成物の重合は、例えば、電子線、紫外線、可視光線、赤外線などの放射線の照射によって行うことができる。これら放射線の中でも、可視光線、紫外線が好ましく、紫外線がより好ましい。重合を可視光線照射、紫外線照射で行なう場合には、用いる光源の波長の範囲は150~500nmであることが好ましく、250~450nmであることがより好ましく、300~400nmであることがさらに好ましい。
【0109】
上記光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧放電ランプ、ショートアーク放電ランプなどが挙げられる。低圧水銀ランプとしては、例えば、殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、およびブラックライトなどが挙げられる。高圧放電ランプとしては、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどが挙げられる。ショートアーク放電ランプとしては、例えば、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、および水銀キセノンランプなどが挙げられる。
【0110】
本発明の液晶重合体の製造工程として、上記工程(III)の後に、さらに加熱工程を有しても良い。該加熱工程を有することで、液晶重合体の耐熱性、耐水性、耐薬品性および機械的強度を向上することが可能である。該加熱工程の温度範囲は120℃~250℃であることが好ましく、150℃~230℃であることがより好ましい。
【0111】
本発明の液晶重合体を液晶表示素子の部材(例えば後述する位相差膜)として用いる場合、本発明の液晶重合体は、液晶表示素子の液晶セルの内外いずれにも配置できる。熱履歴による液晶重合体の光学特性の変動が少なく、かつ液晶重合体から液晶への不純物の溶出が少ないため、本発明の液晶重合体は、液晶セルの内部に配置することも可能である。
【0112】
≪位相差膜≫
本発明の位相差膜は、液晶重合体の層と配向処理が施された基板の積層体である。本発明の位相差膜としては、配向処理が施された基板上に液晶重合体の層が直接積層されていることが好ましい。
【0113】
<配向処理が施された基板>
上記配向処理が施された基板とは、表面処理を行い、液晶重合体の膜の配向を誘導する構造が形成された基板である。表面処理としては、例えば、ラビング処理、光配向処理などが挙げられる。光配向処理とは、高分子膜が被覆した基板に偏光された紫外線を照射する処理である。
【0114】
例えば、以下(1a)~(5a)を含む手順により、ラビング処理により配向処理が施された基板が得られる。
(1a)配向剤の溶液を基板に塗布して塗膜を基板上に形成する。
(2a)得られた塗膜を有する基板に対して、熱処理をする。
(3a)レーヨン、綿、ポリアミドなどの素材からなるラビング布が巻きつけられた金属ロールを準備する。
(4a)ラビング布が巻きつけられた金属ロールを基板の塗膜を有する面と接触させる。
(5a)ラビング布が巻きつけられた金属ロールと塗膜とを接触させた状態で、該ロールを回転させながら基板表面と平行に該ロールを移動させる、あるいは該ロールを固定したまま基板を移動させる。
上記配向剤としては、例えば、ポリイミド、ポリアミック酸またはポリビニルアルコールを含む溶液が挙げられる。
【0115】
例えば、以下(1b)~(3b)を含む手順により、光配向処理を施された基板が得られる。
(1b)溶剤を含む光配向剤を基板に塗布する。
(2b)加熱そのほかの方法で、基板上の光配向剤の塗布物から溶剤を除き、基板上に光配向剤の塗膜を設ける。
(3b)基板上の塗膜に波長250~400nmの直線偏光を照射する。
【0116】
(1b)~(3b)の手順を経た後、さらに必要に応じて、(4b)加熱処理を施してもよい。
【0117】
上記光配向剤は、感光性基を含む重合体を少なくとも1つ含有する。感光性基を含む重合体の重合体骨格としては、例えばポリイミド、ポリアミック酸、シクロオレフィン重合体、ポリアクリレートなどが挙げられる。また、その重合体に含まれる感光性基としては、例えば、カルコン、シンナモイル、シンナミリデン、スチルベン、シクロブタン、アゾベンゼンなどが挙げられる。
【0118】
光配向処理は非接触の配向処理であるため、基板の表面に傷が付かない、発塵や静電気が発生しにくい、配向の均一性が高いなどの優れた特徴を有する。本発明の位相差膜に用いられる配向処理を施された基板としては、高いコントラストの観点から、光配向処理を施された基板が好ましい。また、本発明の位相差膜としては、配向均一性の点から、本発明の液晶重合体の層が上記光配向処理を施された基板上の直接積層された位相差膜が好ましい。
【0119】
本発明の位相差膜は、液晶分子がホモジニアス配向で固定化した液晶重合体であることが好ましい。また、液晶分子がツイスト配向で固定化した液晶重合体であることが好ましい。
【0120】
本発明の位相差膜は、表示装置の視野角の拡大やコントラストの向上のため、適切な位相差に設定する必要がある。位相差膜の面内レターデーションRe(550)は100nm≦Re(550)≦300nmであることが好ましい。
【0121】
本発明の位相差膜は、液晶セルの製造工程で必要とされる230℃前後での熱処理においても、光学特性が大きく変化することの無い高い耐熱性を有するために、インセル位相差膜として好適である。
【0122】
本発明の位相差膜はカラーフィルタ層に直接、または平坦化層を介して積層してカラーフィルタとして用いることができる。カラーフィルタは、ブラックマトリクスおよび少なくともRGB3色画素部から構成される。平坦化層はオーバーコートである。
【0123】
本発明の位相差膜は表示素子に用いることができる。表示素子としては、例えば液晶表示素子や有機EL表示素子などである。
【実施例】
【0124】
本発明を以下実施例に即してより詳細に説明するが、公開したこれら実施例のみに制限されない。
【0125】
本発明の実施例において、「Omn-907」は、IGMジャパン合同会社製のオムニラッド(商標)907である。Omn-907は光ラジカル重合開始剤(2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン)である。
本発明の実施例において、「IRGANOX 1076」は、BASFジャパン(株)製のIRGANOX(商標)1076である。IRGANOX 1076はベンゼン環に結合する水酸基のオルト位にt-ブチル基を有するフェノール系酸化防止剤(オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート)である。
本発明の実施例において、「NCI-930」は、(株)ADEKA製のアデカクルーズ(商標)NCI-930である。NCI-930は光ラジカル重合開始剤である。
本発明の実施例において、「FTX-218」は、(株)ネオス製のフタージェント(商標)FTX-218である。FTX-218は非イオン性界面活性剤である。
本発明の実施例において、「TF370」は、エボニック・ジャパン(株)のTEGOFlow(商標)370である。TF370はビニル系非イオン性界面活性剤である。
本発明の実施例において、「F556」は、DIC(株)のメガファック(商標)F556である。F556はフッ素系非イオン性界面活性剤である。
本発明の実施例において、「EB3703」は、ダイセル・オルネクス(株)のEBECRYL(商標)3703である。EB3703は、アミノ基および1つ以上の水酸基を有する重合性化合物(アミン変性エポキシアクリレート)である。
本発明の実施例において、「HEA」は、大阪有機化学(株)のヒドロキシエチルアクリレートである。HEAは、1つ以上の水酸基を有するが、アミノ基を有さない重合性化合物である。
本発明の実施例において、「EE3000A」は、共栄社化学(株)のエポキシエステル(商標)3000Aである。EE3000Aは、1つ以上の水酸基を有するが、アミノ基を有さない重合性化合物(ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物)である。
本発明の実施例において、「NK-380」は、(株)日本触媒のポリメント(商標)NK-380である。NK-380は、1つ上のアミノ基を有するが、水酸基を有さない重合物(アミノエチル化アクリルポリマー)である。
【0126】
本発明の実施例において、「PGMEA」はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである。
本発明の実施例において、「NMP」はN-メチル-2-ピロリドンである。
本発明の実施例において、「BC」はエチレングリコールモノブチルエーテルである。
本発明の実施例において、「IPA」は2-プロパノールである。
【0127】
本発明の実施例において、「ワイヤーグリッド偏光板」は、ポラテクノ社製のUVT300Aである。
本発明の実施例において、「超高圧水銀灯」は、ウシオ電機社製のマルチライトUSH-250BYである。
【0128】
本発明の実施例において、「分子量既知のポリスチレン」は、東ソー株式会社製のTSKgel標準ポリスチレンである。
本発明の実施例において、「ゲル浸透クロマトグラフ」は、Waters製の2695セパレーションモジュールおよびWaters製の2414示差屈折計からなるシステムである。
本発明の実施例において、「ゲル浸透クロマトグラフのカラム」は、Shodex(商標)GF-7M HQである。
本発明の実施例において、「偏光解析装置」は、シンテック(株)製のOPIPRO偏光解析装置である。
本発明の実施例において、「365受光器」は、ウシオ電機社製のUVD-S365にウシオ電機社製のUIT-150-Aをつないだものである。
【0129】
本発明の実施例において、偏光顕微鏡は(株)ニコン社製のECLIPSE E600 POLである。
本発明の実施例において、「輝度計」は、YOKOGAWA 3298Fである。
【0130】
<重量平均分子量の計測>
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフを用い、分子量既知のポリスチレンを標準物質として用いることで決定した。該展開時のカラムの温度は、50℃に設定した。ゲル浸透クロマトグラフの展開溶媒としては、リン酸-NMP混合溶液を使用した。リン酸-NMP混合溶液の重量比は0.6/100であった。
【0131】
光学特性等の計測
<偏光解析装置による測定>
位相差膜のレターデーションを、偏光解析装置で、光の入射角を0°にして計測した。
<ホモジニアス配向の判定>
偏光解析装置を用いて、液晶重合膜の表面に対する光の入射角を-50°から50まで5°刻みで変えて、レターデーションを計測した。ここで光の入射角の傾き方向は液晶重合膜の遅相軸と同じである。以下の両方の条件を満たすときは、液晶重合膜がホモジニアス配向であるとみなした。
(a)液晶重合膜の入射角に対するレターデーションが上に凸である場合、かつ
(b)それぞれの、入射角の絶対値(absolute value)が同じときのReの計測値の差が、5%以内である場合。
【0132】
<クロスニコル状態での輝度の計測>
クロスニコル状態での輝度を以下の手順で測定した。
(1)位相差膜を2枚の偏光板の間に挟持し、かつ、該両偏光板がクロスニコルになるように、偏光顕微鏡下に配置した。
(2)該位相差膜および2枚の偏光板を通過する光を、輝度計を用いて評価した。
(3)該位相差膜を水平に回転させた時に最小となった輝度を、「クロスニコル状態での輝度」とした。
【0133】
<パラレルニコル状態での輝度の計測>
パラレルニコル状態での輝度を以下の手順で測定した。
(1)位相差膜を2枚の偏光板の間に挟持し、かつ、該両偏光板がパラレルニコルになるように、偏光顕微鏡下に配置した。
(2)該位相差膜および2枚の偏光板を通過する光を、輝度計を用いて評価した。
(3)該位相差膜を水平に回転させた時に最大となった輝度を、「パラレルニコル状態での輝度」とした。
【0134】
<位相差膜の正面コントラストの測定>
位相差膜の正面コントラストは、「パラレルニコル状態での輝度」/「クロスニコル状態での輝度」で算出した。
【0135】
<接着性の測定>
JIS規格「JIS K 5600-5-6 付着性(クロスカット法)」の方法に準じて測定した。すなわち、カッターを用いて、1mm角の25マスの碁盤目状の切れ込みを入れ、セロハン粘着テープを、空気を含まないように貼り付け、セロハン粘着テープを一気に引き剥がすことにより、25マスの碁盤目中の剥がれが発生したマスの数を確認した。各マス内10%以上が剥がれているマスを剥がれの発生したマスとした。ここで、セロハン粘着テープはニチバン(株)製のセロテープ(商標)No.405を使用した。
【0136】
<鉛筆硬度の測定>
JIS規格「JIS K 5600-5-4 引っかき硬度(鉛筆法)」の方法に準じて測定した。すなわち、鉛筆硬度計(吉光精機製C-221)を用い、45°の角度で固定した鉛筆(三菱鉛筆(株)Uni)の芯による引掻きで、キズが生じる時の鉛筆の芯の硬さを測定した。
【0137】
<液晶重合体の層の作製方法>
液晶重合体の層は、以下の手順で作製した。
(1)重合性液晶組成物溶液を、配向処理を施された基板上にスピンコートし、塗膜を作製した。
(2)60~80℃で1~5分間、ホットプレートにより加熱し、該塗膜から溶媒を除去した。
(3)配向処理を施された面上の手順(2)を経た塗膜に対し、90°の方向から、室温で、一定出力の、紫外線を照射し、液晶重合体の層を作製した。ここで、紫外線照射は、365受光器を用いて、配向処理を施された面上の塗膜の表面に対する、直線紫外線の露光量が500mJ/cm2になるように、照射時間を5秒から40秒の間で調整した。
【0138】
<ラビング処理により配向処理が施された基板の作製>
ラビング処理により配向処理が施された基板(RAF-1)は以下の手順で作製した。
(1)PIA-5370をガラス基板にスピンコートし、塗膜つきガラス基板を作製した。
(2)手順(1)を経た塗膜つきガラス基板を、塗膜が形成されていない面を、80℃のホットプレートと接するように置き、その状態で1分間静置し、該塗膜から溶媒を除去した。
(3)220℃のオーブンで、手順(2)を経た塗膜つきガラス基板を30分間焼成した。
(4)手順(3)を経たガラス基板の塗膜部分を、一方向にレーヨン布で擦って、ラビング処理により配向処理が施された基板(RAF-1)を作製した。
ここで、「PIA-5370」は、JNC社製の配向膜リクソンアライナー(登録商標)PIA-5370である。PIA-5370は、ラビング処理用配向剤である。
【0139】
<ポリアミック酸溶液の調製>
[実施例1]
ポリアミック酸溶液は特開2012-193167号公報に記載の方法と同様にして合成した。
使用したジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物の構造を以下に示す。
【0140】
【化13】
化合物(DA-1)、化合物(DA-2)、化合物(DA-3)および化合物(DA-4)は市販品を使用した。
【0141】
【化14】
化合物(AA-2)および化合物(AA-3)は市販品を使用した。化合物(AA-1)は国際公開2015/108170号の実施例に従い合成した。化合物(AA-4)は、国際公開2010/150693号の実施例1 <化合物(VII-4-1)の合成>の記載に従い合成した。
【0142】
0.90gのジアミン(DA-1)、0.06gのジアミン(DA-3)および17mlのNMPを入れ、窒素気流下で撹拌し溶解させた。次いで1.8gのテトラカルボン酸二無水物(AA-4)および10mlのNMPを入れ、室温で24時間撹拌した。得られた溶液に、20.8mlのBCを加え、75℃で4時間撹拌し、ポリアミック酸溶液(PA-1)を得た。ポリアミック酸溶液(PA-1)の、ポリマー固形分の濃度は、6重量%であった。ポリアミック酸溶液(PA-1)の重量平均分子量は、23,000であった。
【0143】
[実施例2]
実施例1に記載のポリアミック酸溶液(PA-1)の合成において、ジアミン(DA-1)および(DA-3)とテトラカルボン酸二無水物(AA-4)とを、それぞれ表1に記載のジアミンまたはジアミン混合物とテトラカルボン酸二無水物とに置き換え、ポリマー固形分濃度が6重量%のポリアミック酸溶液(PA-2)および(PA-3)を調製した。
【0144】
【0145】
<光配向処理を施された基板の作製>
[実施例3]
光配向処理を施された基板(PAF-1)を次の手順で作製した。
(1)ポリアミック酸溶液(PA-1)および(PA-3)を重量比3:7の割合で混合し、その混合液にNMPを加えて、ポリマー固形分濃度が4重量%の光配向剤を作製した。
(2)(1)で作製した光配向剤を、ガラス基板に、2000rpmでスピンコートした。
(3)(2)で得たガラス基板を、光配向剤がスピンコートされていないガラス基板の面がホットプレートに接するように、60℃のホットプレート上に1分間置き、光配向剤に含まれる溶媒を除去することで、ガラス基板上に塗膜を作製した。
(4)(3)で得た塗膜に、室温で、塗膜表面に対して90度の方向から、波長365nmの直線偏光を2J/cm2のエネルギーで照射した。
(5)その後、220℃に設定したオーブン中で30分間焼成し、光配向処理を施された基板(PAF-1)を得た。
【0146】
また光配向処理を施された基板(PAF-2)は、以下の手順で作製した。
(1)ポリアミック酸溶液(PA-2)にNMPを加え、ポリマー固形分濃度が4重量%の光配向剤を作製した。
(2)(1)で作製した光配向剤を、ガラス基板に、2000rpmでスピンコートした。
(3)(2)で得たガラス基板を、光配向剤がスピンコートされていないガラス基板の面がホットプレートに接するように、80℃のホットプレート上に1分間置き、光配向剤に含まれる溶媒を除去することで、塗膜を作製した。
(4)(3)で得た塗膜を、さらに220℃のオーブン中で、10分間焼成した。
(5)(4)で得た塗膜に、室温で、塗布面に対して90度の方向から、254nmの波長の直線偏光を2J/cm2のエネルギーで照射した。
(6)その後、乳酸エチル溶液に室温で3分間浸漬させたのち、IPAで1分間リンスし、80℃のオーブンで10分間乾燥させ、光配向処理を施された基板(PAF-2)を得た。
【0147】
<重合性液晶組成物の作製>
使用した重合性液晶化合物の構造を以下に示す。
【0148】
【化15】
化合物(1-1-1)はMakromolekclare Chemie (1991), 192(1), 59-74に従い合成した。化合物(1-1-2)は市販品であり、BASFジャパン(株)製の重合性液晶化合物LC-242である。化合物(1-2-1)は特開2003-238491号公報に従い合成した。化合物(1-13-1)は国際公開2018/030190号の実施例3に従い合成した。化合物(2-1-1-1)および化合物(2-3-3-1)は、それぞれ特開2016-128403号公報の実施例2および実施例8に従い合成した。化合物(2-4-3-1)は、特開2017-125009号公報の実施例2に従い合成した。
【0149】
[実施例4]
表2に記載した量を混合し、重合性液晶組成物(S-1)~(S-5)を作製した。重合性液晶組成物(S-1)~(S-5)は接着促進剤として、1つ以上のアミノ基および1つ以上の水酸基を有する重合性化合物であるEB3703(アミン変性エポキシアクリレート)を含有する本発明の重合性液晶組成物である。
【表2】
【0150】
[比較例1]
表3に記載した割合で混合し、重合性液晶組成物(SC-1)~(SC-6)を作製した。重合性液晶組成物(SC-1)~(SC-6)は接着促進剤を含有するが、その接着促進剤は、1つ以上のアミノ基および1つ以上の水酸基を有する重合性化合物ではない。また、重合性液晶組成物(SC-7)は接着促進剤を含有していない。
【0151】
【0152】
<重合性液晶組成物溶液の作製>
[実施例9]
表4に記載の重合性液晶組成物と溶媒を混合し、重合性液晶組成物溶液を調製し、表4に記載の名称を名づけた。
【0153】
【0154】
[比較例3]
表5に記載の重合性液晶組成物と溶媒を混合し、重合性液晶組成物溶液を調製し、表5に記載の名称を名づけた。
【0155】
【0156】
<位相差膜の作製>
[実施例10]
位相差膜を以下の手順で作製した。
(1)重合性液晶組成物溶液を、実施例3および比較例1で作製した配向処理を施された面上へ、スピンコートした。
(2)(1)で得たガラス基板を、重合性液晶組成物溶液がスピンコートされていないガラス基板の面がホットプレートに接するように置き、60℃で3分間、ホットプレートにより加熱した。
(3)続けて、(2)で得た基板を、室温で3分間、冷却し、ガラス基板の配向処理を施された面上に塗膜を作製した。
(4)窒素雰囲気下の室温で、(3)で得た重合性液晶組成物からなる塗膜に対し、垂直の方向から、一定出力の超高圧水銀灯の光を照射し、重合性液晶組成物からなる塗膜を重合(硬化)させた。
なお、照射時間は、365受光器を用いて、手順(4)の重合性液晶組成物の表面に対する超高圧水銀灯の光の露光量が500mJ/cm2になるように、5秒から40秒の間で調整した。
【0157】
重合性液晶組成物溶液を原料とする位相差膜の物性を表6に記載した。位相差膜(RF-1)~(RF-6)、(RFC-1)~(RFC-5)および(RFC-7)は全てホモジニアス配向であった。(RFC-6)は白濁しており、ホモジニアス配向の位相差膜が得られなかった。
【0158】
【0159】
以上から、位相差膜(RF-1)から(RF-6)の正面コントラストは、高いことがわかった。
【0160】
実施例10で得られた位相差膜を、200℃、30分間オーブンで加熱処理を施した。得られた位相差膜の接着性を評価し、結果を表7に記載した。表7中の剥がれたマスの数は、位相差膜をクロスカット法にて評価した剥がれたマスの数である。
また、実施例10で得られた位相差膜を、200℃、30分間オーブンで加熱処理を施した後、さらに230℃、60分間オーブンで加熱処理を施した。得られた位相差膜の耐熱性を評価し、結果を表7に記載した。耐熱率(%)=加熱処理後の位相差膜のRe(550)/加熱処理前の位相差膜のRe(550)×100の値を記す。該値が大きいほど耐熱性が高いことを示す。
【0161】
【0162】
以上から、位相差膜(RF-1)から(RF-6)の耐熱性は、高いことがわかった。また、位相差膜(RF-1)から(RF-6)の接着性が高いことがわかった。
これらのことから、位相差膜(RF-1)から(RF-6)は、正面コントラストに優れ、接着性が高く、かつ耐熱性も高いことがわかった。