(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】制御システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/05 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
G05B19/05 N
(21)【出願番号】P 2021121570
(22)【出願日】2021-07-26
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】会田 将光
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-79183(JP,A)
【文献】特開2009-37377(JP,A)
【文献】特開昭51-27672(JP,A)
【文献】特開平4-109303(JP,A)
【文献】特開昭56-166501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/04 -19/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサから測定値を取得し、該測定値と目標値とを比較し、比較結果に基づいて制御対象機器へ第1制御値を送信する指示調節計と、
前記指示調節計から前記第1制御値を取得し、前記センサから前記測定値を取得し、該測定値と前記目標値とを比較し、比較結果に基づいて第2制御値を生成するPLC(プログラマブルロジックコントローラ)と、
を備え、
前記PLCは、前記制御対象機器の制御主体が前記指示調節計の場合は、前記指示調節計が出力した前記第1制御値が前記制御対象機器に与えられるようにし、前記制御主体が前記指示調節計から前記PLCへ切り替わると、該第1制御値と同じ値の制御値を出力して前記制御対象機器に与え
、前記指示調節計から前記PLCへの前記制御主体の切り替わりに伴い前記第1制御値と同じ値の制御値を出力した後、前記制御対象機器に与える制御値を前記第2制御値との差分が小さくなるように調整することを特徴とする制御システム。
【請求項2】
センサから測定値を取得し、該測定値と目標値とを比較し、比較結果に基づいて制御対象機器へ第1制御値を送信する指示調節計と、
前記指示調節計から前記第1制御値を取得し、前記センサから前記測定値を取得し、該測定値と前記目標値とを比較し、比較結果に基づいて第2制御値を生成するPLC(プログラマブルロジックコントローラ)と、
を備え、
前記PLCは、前記制御対象機器の制御主体が前記指示調節計の場合は、前記指示調節計が出力した前記第1制御値が前記制御対象機器に与えられるようにし、前記制御主体が前記指示調節計から前記PLCへ切り替わると、該第1制御値と同じ値の制御値を出力して前記制御対象機器に与え
、前記制御対象機器の制御主体が該PLCの場合は、前記第2制御値を前記制御対象機器に与えると共に、該第2制御値を前記指示調節計へ出力し、
前記指示調節計は、前記制御主体が前記PLCから該指示調節計へ切り替わると、前記第2制御値と同じ値の制御値を出力して前記制御対象機器に与え、前記PLCから前記指示調節計への前記制御主体の切り替わりに伴い前記第2制御値と同じ値の制御値を出力した後、前記制御対象機器に与える制御値を前記第1制御値との差分が小さくなるように調整することを特徴とする制御システム。
【請求項3】
センサから測定値を取得し、該測定値と目標値とを比較し、比較結果に基づいて制御対象機器へ第1制御値を送信する指示調節計と、
前記指示調節計から前記第1制御値を取得し、前記センサから前記測定値を取得し、該測定値と前記目標値とを比較し、比較結果に基づいて第2制御値を生成するPLC(プログラマブルロジックコントローラ)と、
を備え、
前記PLCは、前記制御対象機器の制御主体が前記指示調節計の場合は、前記指示調節計が出力した前記第1制御値が前記制御対象機器に与えられるようにし、前記制御主体が前記指示調節計から前記PLCへ切り替わると、該第1制御値と同じ値の制御値を出力して前記制御対象機器に与え
、
前記指示調節計及び前記PLCは、それぞれ、第1センサ及び第2センサから測定値を取得し、該第1センサからの測定値を用いて前記第1制御値及び前記第2制御値を生成し、該第1センサの測定値が所定範囲外となった場合、該第2センサからの測定値を用いて該第1制御値及び該第2制御値を生成することを特徴とする制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指示調節計を用いた制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
温度・湿度・圧力・流量等のプロセス量を目標値に一致させるように演算、制御を行うデジタル指示調節計が広く使用されている。特許文献1に記載されているようなデジタル指示調節計は、入力処理部、制御演算部、出力処理部、通信処理部、操作・表示部、データベース等の機能要素が1個の筐体に格納され、コンパクトな構成をとるが、シーケンス処理機能は備えていない。シーケンス制御を実現するために、指示調節計と、PLC(Programmable Logic Controller)等のシーケンサとが組み合わせて用いられている。従来、指示調節計とPLCとを組み合わせた制御システムにおいても、指示調節計が故障すると特定機器の制御が行えなくなっていた。
【0003】
一方で、工場やプラントにおいては、顧客(特に超純水設備における顧客)に対してユーティリティー(超純水)を安定に供給する義務があり、設備を365日稼働させ、常時安定した質(水質)で提供する必要がある。従来の制御システムでは、指示調節計が故障して制御不能となると、質や量がぶれたり、工場の運転を一旦停止する必要が生じたりして、ユーティリティの安定供給に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
制御機器の故障への対策として、制御機器の二重化を実施することもあったが、各制御機器が独自の制御を行っているため、制御出力状態が一致せず、一方の機器が故障し、制御を行う機器が切り替わった際に、制御対象に全く異なる制御出力が与えられ、制御状態が不安定となっていた。
【0006】
本発明は、上記従来の問題を鑑みてなされたものであり、指示調節計やPLCの故障、メンテナンスの場合でも、安定した制御状態を維持できる制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の制御システムは、センサから測定値を取得し、該測定値と目標値とを比較し、比較結果に基づいて制御対象機器へ第1制御値を送信する指示調節計と、前記指示調節計から前記第1制御値を取得し、前記センサから前記測定値を取得し、該測定値と前記目標値とを比較し、比較結果に基づいて第2制御値を生成するPLC(プログラマブルロジックコントローラ)と、を備え、前記PLCは、前記制御対象機器の制御主体が前記指示調節計の場合は、前記指示調節計が出力した前記第1制御値が前記制御対象機器に与えられるようにし、該指示調節計に異常が発生すると、該第1制御値と同じ値の制御値を出力して前記制御対象機器に与えるものである。
【0008】
本発明の一態様による制御システムにおいて、前記PLCは、前記指示調節計に異常が発生して、前記第1制御値と同じ値の制御値を出力した後、前記第2制御値との差分が小さくなるように出力制御値を調整する。
【0009】
本発明の一態様による制御システムにおいて、前記PLCは、前記制御対象機器の制御主体が該PLCの場合は、前記第2制御値を前記制御対象機器に与えると共に、該第2制御値を前記指示調節計へ出力し、前記指示調節計は、前記PLCに異常が発生すると、前記第2制御値と同じ値の制御値を出力して前記制御対象機器に与える。
【0010】
本発明の一態様による制御システムにおいて、前記指示調節計は、前記PLCに異常が発生して、前記第2制御値と同じ値の制御値を出力した後、前記第1制御値との差分が小さくなるように出力制御値を調整する。
【0011】
本発明の一態様による制御システムにおいて、前記指示調節計及び前記PLCは、それぞれ、第1センサ及び第2センサから測定値を取得し、該第1センサからの測定値を用いて前記第1制御値及び前記第2制御値を生成し、該第1センサの測定値が所定範囲外となった場合、該第2センサからの測定値を用いて該第1制御値及び該第2制御値を生成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、指示調節計やPLCの故障、メンテナンスの場合でも、安定した制御状態を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る制御システムの概略構成図である。
【
図2】同実施形態に係るPLC及び指示調節計の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る制御システムは、PLC(Programmable
Logic Controller、プログラマブルロジックコントローラ)1及び指示調節計2を備え、センサ4からの測定値を取得し、測定値が目標値になるように制御対象機器5を制御するものである。センサ4及び制御対象機器5は特に限定されず、例えばセンサ4は流量、送水圧力、薬液濃度、温度等を測定するものであり、制御対象機器5は、弁、ポンプ、ヒータ等である。
【0016】
PLC1及び指示調節計2は、それぞれ、センサ4からの測定値(センサ測定値)を取得し、PID制御等の演算を行い、測定値と目標値とが一致するように、制御対象機器5へ制御値(操作値)を出力する。PLC1は切替器3を制御し、制御対象機器5に対して、PLC1及び指示調節計2のどちらから出力された制御値を与えるかを切り替える。PLC1及び指示調節計2に設定される目標値は例えば同じ値である。
【0017】
図2に示すように、指示調節計2は、演算部20、第1入力部21、第2入力部22、制御値出力部23、24及び異常検知部25を備える。
【0018】
演算部20は、第1入力部21を介して入力されたセンサ測定値を用いてPID制御演算を行い、制御値(第1制御値)を生成する。
【0019】
制御値出力部23は、制御対象機器5の制御をPLC1が行う場合は、第2入力部22を介して入力されたPLC1からの制御値を制御対象機器5へ出力する。
【0020】
また、制御値出力部23は、制御対象機器5の制御を指示調節計2が行う場合は、演算部20が生成した制御値を制御対象機器5へ出力する。
【0021】
制御値出力部24は、制御対象機器5の制御をPLC1が行う場合は、第2入力部22を介して入力されたPLC1からの制御値を、PLC1へ出力する。
【0022】
また、制御値出力部24は、制御対象機器5の制御を指示調節計2が行う場合は、演算部20が生成した制御値をPLC1へ出力する。
【0023】
異常検知部25は、指示調節計2に発生する故障等の異常を検知する。異常検知部25は、異常の発生を検知すると、異常検知信号をPLC1へ出力する。
【0024】
PLC1は、演算部10、第1入力部11、第2入力部12、制御値出力部13、14、監視部15及び切替部16を備える。
【0025】
演算部10は、第1入力部11を介して入力されたセンサ測定値を用いてPID制御演算を行い、制御値(第2制御値)を生成する。
【0026】
制御値出力部13は、制御対象機器5の制御を指示調節計2が行う場合は、第2入力部12を介して入力された指示調節計2からの制御値を制御対象機器5へ出力する。
【0027】
また、制御値出力部13は、制御対象機器5の制御をPLC1が行う場合は、演算部10が生成した制御値を制御対象機器5へ出力する。
【0028】
制御値出力部14は、制御対象機器5の制御を指示調節計2が行う場合は、第2入力部12を介して入力された指示調節計2からの制御値を、指示調節計2へ出力する。
【0029】
また、制御値出力部14は、制御対象機器5の制御をPLC1が行う場合は、演算部10が生成した制御値を指示調節計2へ出力する。
【0030】
監視部15は、指示調節計2の異常検知部25から異常検知信号を受信し、指示調節計2の状態を監視する。
【0031】
切替部16は、切替器3を制御して、制御対象機器5に与えられる制御値を切り替える。すなわち、切替部16は、制御対象機器5の制御を指示調節計2が行う場合、制御値出力部23から出力された制御値が制御対象機器5に与えられるようにする。一方、切替部16は、制御対象機器5の制御をPLC1が行う場合、制御値出力部13から出力された制御値が制御対象機器5に与えられるようにする。
【0032】
切替部16は、指示調節計2が制御対象機器5の制御を行っている時に指示調節計2に異常が発生した場合、PLC1の制御値出力部13から出力された制御値が制御対象機器5に与えられるように切り替える。
【0033】
上述したように、指示調節計2が制御対象機器5の制御を行っている間、制御値出力部13は、第2入力部12を介して入力された指示調節計2からの制御値を制御対象機器5へ出力している。そのため、指示調節計2に異常が発生し、制御主体を指示調節計2からPLC1へ切り替えた際、制御値出力部13の出力制御値は、指示調節計2の出力制御値と同じになっており、制御対象機器5に与えられる制御値の変動が抑えられる。その後、指示調節計2の出力制御値を引き継いで演算部10が制御値を演算・生成することで、PLC1からの出力制御値が安定した制御状態を維持できる。
【0034】
切替部16は、PLC1が制御対象機器5の制御を行っている時にPLC1に異常が発生した場合、指示調節計2の制御値出力部23から出力された制御値が制御対象機器5に与えられるように切り替える。PLC1の異常は、電源オフに伴うPLC1の停止や、AOユニットのエラー等である。
【0035】
上述したように、PLC1が制御対象機器5の制御を行っている間、PLC1の制御値出力部14は、演算部10が生成した制御値を指示調節計2へ出力する。そのため、PLC1に異常が発生し、制御主体をPLC1から指示調節計2へ切り替えた際、制御値出力部23がPCL1の出力制御値と同じ値を出力することで、制御対象機器5に与えられる制御値の変動が抑えられる。その後、PLC1の出力制御値を引き継いで演算部20が制御値を演算・生成することで、指示調節計2からの出力制御値が安定した制御状態を維持できる。
【0036】
このように、本実施形態によれば、制御対象機器5の制御を行う機器を、PLC1及び指示調節計2の二重化回路とし、PLC1及び指示調節計2の一方の機器が制御対象機器5の制御を行っている間、PID制御演算により生成した制御値を他方の機器へも出力し、機器間で同期をとっている。そのため、例えば、制御主体である指示調節計2に異常が生じて、制御主体をPLC1へ切り替える際、PLC1は指示調節計2が出力していた制御値と同じ値を継続して出力できるため、シームレスな切り替えが可能となり、制御対象機器5に与えられる制御値の変動を抑制し、安定した制御状態を維持できる。
【0037】
制御対象機器5の制御を行っている一方の機器に異常が発生し、制御主体を他方の機器に切り替えた後、この一方の機器の異常が解消して復旧した場合、制御主体は他方の機器のままとしてもよいし、復旧した機器に戻してもよい。運転初期時にPLC1と指示調節計2のどちらを制御主体とするかは、操作盤に取り付けられた選択スイッチで選択してもよいし、中央監視PCの遠隔操作で選択してもよい。
【0038】
上記実施形態では、制御主体の機器に異常が発生した際に、制御主体を他方の機器に切り替える例について説明したが、切り替えのタイミングは異常発生に限定されず、メンテナンスの実施等でもよい。
【0039】
PLC1及び指示調節計2は、ハードワイヤ接続してもよいし、通信(RS-485)を用いた信号の送受信を行うものであってもよい。
【0040】
上記実施形態では、制御対象機器5の制御を行う機器を、PLC1及び指示調節計2の二重化回路としていたが、2台の指示調節計を用いたものとしてもよい。2台の指示調節計は、それぞれ制御演算を行い、算出した制御値を互いに送受信して同期をとる。制御対象機器5の制御を行う指示調節計の切り替えは、操作盤を用いてユーザが行ってもよいし、中央監視PCを用いて自動で行ってもよい。
【0041】
センサを二重化してもよい。PLC1及び指示調節計2は、それぞれ、第1センサ及び第2センサから測定値を取得し、第1センサからの測定値を用いて制御演算を行い、制御値を生成する。第1センサに異常が生じ、測定値が所定範囲外となった場合、PLC1及び指示調節計2は、第2センサからの測定値を用いて制御演算を行い、制御値を生成する。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 PLC
2 指示調節計
3 切替器
4 センサ
5 制御対象機器
【要約】
【課題】指示調節計やPLCの故障、メンテナンスの場合でも、安定した制御状態を維持できる制御システムを提供する。
【解決手段】制御システムは、センサから測定値を取得し、該測定値と目標値とを比較し、比較結果に基づいて制御対象機器へ第1制御値を送信する指示調節計と、前記指示調節計から前記第1制御値を取得し、前記センサから前記測定値を取得し、該測定値と前記目標値とを比較し、比較結果に基づいて第2制御値を生成するPLC(プログラマブルロジックコントローラ)と、を備える。前記PLCは、前記制御対象機器の制御主体が前記指示調節計の場合は、前記指示調節計が出力した前記第1制御値が前記制御対象機器に与えられるようにし、該指示調節計に異常が発生すると、該第1制御値と同じ値の制御値を出力して前記制御対象機器に与える。
【選択図】
図1