(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】超音波シール用多層フィルム、及び積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20230111BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
B32B27/32 102
B32B27/32 103
B32B27/32 Z
B32B27/32 E
C08L23/00
(21)【出願番号】P 2022553641
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(86)【国際出願番号】 JP2022019236
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2021085934
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】アウリア アウェルロース
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 康史
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-141302(JP,A)
【文献】国際公開第2020/255643(WO,A1)
【文献】特開2019-098546(JP,A)
【文献】特開2002-036469(JP,A)
【文献】特開2000-005453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08L 23/00
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂層と、
ランダムポリプロピレン及びαオレフィン樹脂を含有するシール層と、を少なくとも有し、
前記αオレフィン樹脂が、ブテン系αオレフィン樹脂を含有し、
前記ブテン系αオレフィン樹脂は、プロピレン-1-ブテン共重合体であり、その含有量が前記シール層に含まれる樹脂成分の総量に対して、10質量%以上50質量%以下であり、
前記ランダムポリプロピレンは、プロピレン90質量%~98質量%とエチレン及び/又は炭素数4以上のα-オレフィン10質量%~2質量%とのランダム共重合体であり、
前記プロピレン-1-ブテン共重合体は、ブテン-1単量体を主成分としたプロピレンとブテン-1の共重合体であり、
超音波によりシール可能であることを特徴とする超音波シール用多層フィルム。
【請求項2】
前記シール層における前記ランダムポリプロピレンの含有量が、50質量%以上95質量%以下である請求項1に記載の超音波シール用多層フィルム。
【請求項3】
前記
プロピレン-1-ブテン共重合体のブテン-1単量体の含有量が、50モル%
以上100モル%
未満である、請求項1に記載の超音波シール用多層フィルム。
【請求項4】
前記シール層における前記
ブテン系αオレフィン樹脂の含有
量が、20質量%以上50質量%以下である請求項1から3のいずれかに記載の超音波シール用多層フィルム。
【請求項5】
前記シール層の厚みが、20%以上である請求項1から4のいずれかに記載の超音波シール用多層フィルム。
【請求項6】
総厚みが40μm以上である請求項1から5のいずれかに記載の超音波シール用多層フィルム。
【請求項7】
示差走査熱量測によって測定される融解熱量が65mJ/mg以下である請求項1から6のいずれかに記載の超音波シール用多層フィルム。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレン、及びポリプロピレンの少なくともいずれかを含有する請求項1から7のいずれかに記載の超音波シール用多層フィルム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の超音波シール用多層フィルムと、熱可塑性樹脂フィルムとを超音波によりシールした積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波シール用多層フィルム、及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
洋菓子、スナック等の食品用包装フィルムにおいて、リサイクルを促進して環境負荷を低減するため、モノマテリアル(単一素材)化が進んでいる。従来の異素材の多層ラミネート構成(例えば、延伸ポリエチレンテレフタレートOPET/無延伸ポリプロピレンCPPの多層フィルム)に対し、モノマテリアル化に対応するためには、延伸ポリプロピレンOPP/無延伸ポリプロピレンCPPのような多層フィルムが求められている。
【0003】
しかしながら、従来のモノマテリアル化に対応したOPP/CPPからなる多層フィルムでは、素材間の耐熱性が異なるため、多層フィルムの表面が耐熱低下し、包装適性の低下が懸念されるという問題点がある。
【0004】
一方、シール面のみ加熱可能な超音波を用い、超音波シール可能な多層フィルムが検討されている。これまでに、超音波溶接によっても強固に溶接することができる積層フィルムとして、エチレン-アルキル(メタ)アクリレート共重合体などのエチレン-極性単量体共重合体を中心層とし、その両面にランダムポリプロピレンとαオレフィン系エラストマーの混合樹脂からなる表面層を形成させ、中心層と表面層の間に非晶質ポリオレフィン層を介在させた積層フィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ポリプロピレンを用いてモノマテリアル化に対応した多層フィルムでは、素材間の耐熱性が異なるため、超音波シールした場合に均一かつ安定なシール強度を得ることが困難であった。また、超音波シールに適した前記提案の積層フィルムでは、エチレン-極性単量体共重合体を含み、モノマテリアル化に対応できていない。したがって、モノマテリアル化に対応でき、かつ超音波シールに適した多層フィルムの樹脂構成が求められている。
【0007】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、モノマテリアル化に対応でき、超音波溶接が可能であり、シール幅が狭く均一かつ安定な超音波シール強度を有することができる超音波シール用多層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂層と、
ランダムポリプロピレン及びαオレフィン樹脂を含有するシール層と、を少なくとも有し、
前記αオレフィン樹脂が、ブテン系αオレフィン樹脂を含有し、
超音波によりシール可能であることを特徴とする超音波シール用多層フィルムである。
<2> 前記シール層における前記ランダムポリプロピレンの含有量が、50質量%以上95質量%以下である前記<1>に記載の超音波シール用多層フィルムである。
<3> 前記シール層における前記ブテン系αオレフィン樹脂の含有が、20質量%以上50質量%以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載の超音波シール用多層フィルムである。
<4> 前記シール層の厚みが、20%以上である前記<1>から<3>のいずれかに記載の超音波シール用多層フィルムである。
<5> 総厚みが40μm以上である前記<1>から<4>のいずれかに記載の超音波シール用多層フィルムである。
<6> 示差走査熱量測定によって測定される融解熱量が65mJ/mg以下である前記<1>から<5>のいずれかに記載の超音波シール用多層フィルムである。
<7> 前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレン、及びポリプロピレンの少なくともいずれかを含有する前記<1>から<6>のいずれかに記載の超音波シール用多層フィルムである。
<8> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の超音波シール用多層フィルムと、熱可塑性樹脂フィルムとを超音波によりシールした積層体である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、モノマテリアル化に対応でき、超音波溶接が可能であり、シール幅が狭く均一かつ安定な超音波シール強度を有することができる超音波シール用多層フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の超音波シール用多層フィルムの一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の超音波シール用多層フィルムの他の一例を示す概略断面図である。
【
図3A】
図3Aは、本発明の超音波シール用多層フィルムの超音波溶接に用いる超音波シール装置の一例を示す概略断面図(その1)である。
【
図3B】
図3Bは、本発明の超音波シール用多層フィルムの超音波溶接に用いる超音波シール装置の一例を示す概略断面図(その2)である。
【
図3C】
図3Cは、本発明の超音波シール用多層フィルムの超音波溶接に用いる超音波シール装置の一例を示す概略断面図(その3)である。
【
図4】
図4は、実施例における超音波シール用多層フィルムのシール強度を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(超音波シール用多層フィルム)
本発明の超音波シール用多層フィルムは、熱可塑性樹脂層と、シール層とを少なくとも有し、超音波によりシール可能である超音波シール用多層フィルムである。
【0012】
<熱可塑性樹脂層>
前記熱可塑性樹脂層は、熱可塑性樹脂を主たる樹脂成分として含有する。
前記熱可塑性樹脂層は、単層であってもよく、複数の層であってもよい。
前記熱可塑性樹脂層は、包装用フィルムの印刷を設けることができる表面層であってもよい。
【0013】
-熱可塑性樹脂-
前記熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく目的に応じて公知の熱可塑性樹脂を適宜選択することができ、例えば、αオレフィン樹脂、スチレン樹脂、エステル樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。これらの中でも、モノマテリアル化できる点から、αオレフィン樹脂が好ましい。
前記αオレフィン樹脂としては、例えば、αオレフィン単量体の単重合体(ポリエチレン単重合体、ポリプロピレン単重合体等);αオレフィン単量体を主成分とした共重合体(プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体等)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエチレン、及びポリプロピレンの少なくともいずれかを含有する、エチレン単重合体、プロピレン単重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体が好ましい。
前記αオレフィン樹脂中のαオレフィン単量体の含有量としては、50モル%~100モル%が好ましく、70モル%~100モル%がより好ましい。
【0014】
前記熱可塑性樹脂のメルトフローレート(MFR)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、温度190℃、及び荷重2.16kgの測定条件において、1.0g/10分間~50.0g/10分間が好ましく、3.0g/10分間~45.0g/10分間がより好ましく、3.0g/10分間~12.0g/10分間が更に好ましい。
ここで、前記メルトフローレート(MFR)は、JISK7210に準拠して、190℃、荷重2.16kg(21.18N)で測定した値である。
【0015】
前記熱可塑性樹脂の密度としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.89g/cm3~0.96g/cm3が好ましく、0.89g/cm3~0.93g/cm3がより好ましい。
【0016】
前記熱可塑性樹脂の融点としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、110℃~170℃が好ましく、120℃~160℃がより好ましい。前記融点は、示差走査熱量計(DSC)(例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス製、DSC7020)を用いて測定することができる。
【0017】
<シール層>
前記シール層は、ランダムポリプロピレン及びαオレフィン樹脂を主たる樹脂成分として含有する。
【0018】
-ランダムポリプロピレン-
前記ランダムポリプロピレンとは、プロピレン90質量%~98質量%とエチレン及び/又は炭素数4以上のα-オレフィン10質量%~2質量%とのランダム共重合体である。前記炭素数4以上のα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテンなどが挙げられる。前記ランダムポリプロピレンは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0019】
前記ランダムポリプロピレンの含有量としては、前記シール層に含まれる樹脂成分の総量に対して、50質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上70質量%以下がより好ましい。
【0020】
前記ランダムポリプロピレンのメルトフローレート(MFR)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、温度190℃、及び荷重2.16kgの測定条件において、1.0g/10分間~50.0g/10分間が好ましく、3.0g/10分間~45.0g/10分間がより好ましく、3.0g/10分間~12.0g/10分間が更に好ましい。
【0021】
前記ランダムポリプロピレンの密度としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.89g/cm3~0.93g/cm3が好ましく、0.90g/cm3~0.92g/cm3がより好ましい。
【0022】
前記ランダムポリプロピレンの融点としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、110℃~160℃が好ましく、120℃~140℃がより好ましい。
【0023】
-αオレフィン樹脂-
前記αオレフィン樹脂は、少なくともブテン系αオレフィン樹脂を含有し、更に必要に応じて、ブテン系αオレフィン樹脂以外のαオレフィン樹脂を含有する。
前記αオレフィン樹脂としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレン、プロピレン等のαオレフィン単量体の単重合体、αオレフィン単量体を主成分としたエチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体又はプロピレン-ブテン-1共重合体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
前記αオレフィン樹脂中のαオレフィン単量体の含有量としては、50モル%~100モル%が好ましく、70モル%~100モル%がより好ましい。
【0024】
前記ブテン系αオレフィン樹脂以外のαオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、温度190℃、及び荷重2.16kgの測定条件において、1.0g/10分間~50.0g/10分間が好ましく、2.0g/10分間~45.0g/10分間がより好ましく、2.0g/10分間~10.0g/10分間が更に好ましい。
【0025】
前記ブテン系αオレフィン樹脂以外のαオレフィン樹脂の密度としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.85g/cm3~0.96g/cm3が好ましく、0.87g/cm3~0.90g/cm3がより好ましい。
【0026】
前記ブテン系αオレフィン樹脂以外のαオレフィン樹脂の融点としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、40℃~120℃が好ましく、50℃~100℃がより好ましい。
【0027】
--ブテン系αオレフィン樹脂--
前記ブテン系αオレフィン樹脂としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブテン-1単量体の単重合体、ブテン-1単量体を主成分としたエチレン-1-ブテン共重合体又はプロピレン-1-ブテン共重合体などが挙げられる。これらの中でも、プロピレン-1-ブテン共重合体が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
前記ブテン系αオレフィン樹脂中のブテン-1単量体の含有量としては、50モル%~100モル%が好ましく、70モル%~100モル%がより好ましい。
【0028】
前記ブテン系αオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、温度190℃、及び荷重2.16kgの測定条件において、1.0g/10分間~50.0g/10分間が好ましく、3.0g/10分間~45.0g/10分間がより好ましく、3.0g/10分間~12.0g/10分間が更に好ましい。
【0029】
前記ブテン系αオレフィン樹脂の密度としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.89g/cm3~0.96g/cm3が好ましく、0.89g/cm3~0.92g/cm3がより好ましい。
【0030】
前記ブテン系αオレフィン樹脂の融点としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、50℃~120℃が好ましく、50℃~110℃がより好ましく、50℃~80℃が更に好ましい。
【0031】
前記ブテン系αオレフィン樹脂の含有量としては、前記シール層に含まれる樹脂成分の総量に対して、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上50質量%以下がより好ましく、15質量%以上50質量%以下が更に好ましく、20質量%以上50質量%以下が特に好ましい。
前記含有量が5質量%以上50質量%以下であると、超音波シール性が発現する点で有利である。また、前記含有量が20質量%以上50質量%以下であると、シール長の全長で均一かつ安定な超音波シール性が担保される点で特に有利である。
【0032】
前記シール層における前記ランダムポリプロピレン(b1)に対する前記ブテン系αオレフィン樹脂(b2)の質量比(b2/b1)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、5/95~50/50が好ましく、10/90~50/50がより好ましく、20/80~50/50が更に好ましく、30/70~50/50が特に好ましい。
【0033】
<その他の成分>
前記熱可塑性樹脂層、及び前記シール層の樹脂には、その他の成分として、ポリオレフィンに汎用される酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤(ブロッキング防止剤、スリップ剤)などの配合剤を適宜配合してもよい。
【0034】
[超音波シール用多層フィルムの層構成]
前記超音波シール用多層フィルムにおける前記熱可塑性樹脂層は、単層であってもよく、複数の層であってもよい。複数の前記熱可塑性樹脂層は、互いに同じ組成であってもよく、異なる組成であってもよい。
前記熱可塑性樹脂層が単層である場合、前記超音波シール用多層フィルムは、熱可塑性樹脂層/シール層の順で積層される多層フィルムである。
前記熱可塑性樹脂層が複数の層である場合、前記熱可塑性樹脂層は、前記超音波シール用多層フィルムの表面層となる基材層と、(1層~複数層の)中間層とを有し、前記超音波シール用多層フィルムは、基材層(熱可塑性樹脂層)/中間層(熱可塑性樹脂層)/シール層の順で積層される多層フィルムである。
前記超音波シール用多層フィルムは、各層が共に押し出されて積層される共押出多層フィルムであってもよく、一部の層を接着して積層されるラミネートフィルムであってもよい。
前記追加基材層をラミネートする際の接着方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ドライラミネーション、ウエットラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押出ラミネーションなどが挙げられる。
【0035】
前記超音波シール用多層フィルムは、基本的には透明で、表面平滑である。前記超音波シール用多層フィルムの両面又は片面の混合樹脂層にコロナ放電処理して印刷特性を持たせてもよい。また、前記超音波シール用多層フィルムの両面又は片面にエンボス処理して梨地などの絞模様を付与してもよい。
【0036】
前記超音波シール用多層フィルムの総厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、均一かつ安定な超音波シール強度が担保される点で、40μm以上が好ましく、40μm以上90μm以下がより好ましい。
【0037】
前記熱可塑性樹脂層の単層又は各層の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、5μm~30μmが好ましく、10μm~20μmがより好ましい。
前記熱可塑性樹脂層が複数の層である場合の各層の平均厚みの合計としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、15μm~60μmが好ましく、30μm~50μmがより好ましい。
前記熱可塑性樹脂層の層みは、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、前記熱可塑性樹脂層、及び前記シール層の合計厚みに対する前記熱可塑性樹脂層の平均厚みの比率(%)として、90%以下が好ましく、20%~90%がより好ましく、50%~80%が更に好ましい。
【0038】
前記シール層の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、3μm~30μmが好ましく、5μm~25μmがより好ましく、10μm~20μmが更に好ましい。
前記シール層の層みは、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、前記熱可塑性樹脂層及び前記シール層の合計厚みに対する前記シール層の平均厚みの比率(%)として、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上が更に好ましい。また、10%以上50%以下が好ましく、20%以上50%以下がより好ましく、30%以上50%以下が更に好ましい。
前記厚みが10%以上であると、超音波シール性が発現する点で有利である。また、前記厚みが20%以上であると、シール長の50%から全長で均一かつ安定な超音波シール性が担保される点で特に有利である。
【0039】
[融解熱量]
前記超音波シール用多層フィルムにおける示差走査熱量測定(DSC)によって測定される融解熱量としては、超音波シールによる均一な溶着性の点で、65mJ/mg以下が好ましい。
示差走査熱量測定(DSC)によって測定される融解熱量は、昇温1回目の融解熱量であり、例えば、示差走査熱量計(株式会社日立ハイテクサイエンス製、DSC7020)を用いて以下の手順で測定することができる。
まず、対象試料である超音波シール用多層フィルムの約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットする。次いで、窒素雰囲気下、30℃から昇温速度10℃/minにて200℃まで加熱(昇温1回目)し、示差走査熱量計を用いてDSC曲線を計測する。
得られたDSC曲線から、示差走査熱量計の解析プログラムを用いて、1回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温1回目における融解熱量[mJ/mg]を求めることができる。
【0040】
[超音波シール]
前記超音波によりシールする方法としては、特に制限はなく目的に応じて、公知の超音波シール方法や、公知の超音波シール装置を用いた方法などを適宜選択することができる。
ここで、「超音波シール」とは、電気エネルギーを機械的エネルギーに変換した超音波振動振幅を利用して、超音波によって振動エネルギーを送り出す「超音波ホーン」と固定治具「アンビル」との間に接合対象となるフィルムを挟み、フィルム材料の界面に均一に摩擦エネルギーを発生させ、瞬時に溶融溶着する技術である。用語「超音波シール」、「超音波溶接」、「超音波溶融溶着」、及び「超音波融着接合」は、互いに同義であり得る。
【0041】
超音波ホーンは、接合対象及びアンビルの上方に垂直に配置されてもよく、接合対象及びアンビルに対して水平方向に配置されてもよい。超音波ホーンは、通常20kHz~40kHzの超音波で振動して、圧力下、通常摩擦熱の形態でエネルギーを、接合対象の接合部に伝達する。摩擦熱及び圧力のために、接合対象のうちの少なくとも1つの一部が軟化するか又は融解し、それにより接合対象が互いに接合される。
【0042】
ここで、前記「接合対象」としては、本発明においては、本発明の超音波シール用多層フィルムを少なくとも含む限り、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、前記超音波シール用多層フィルム2枚を各々の前記シール層が互いに接するように配置したものであってもよく、一続き(1枚)の前記超音波シール用多層フィルムを前記シール層が互いに接するように折畳んで配置したものであってもよく、或いは、前記超音波シール用多層フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとを、前記超音波シール用多層フィルムの前記シール層が前記熱可塑性樹脂フィルムに接するように配置したものであってもよい。
シール層が互いに接した部分やシール層が熱可塑性樹脂フィルムに接した部分を超音波シールして接合部を形成することにより、後述する積層体が得られる。
【0043】
前記超音波シールにおける超音波としては、特に制限はなく目的に応じて、人間の耳には聞こえない高い振動数をもつ弾性振動波(音波)を適宜選択することができる。前記超音波の周波数としては、16kHz以上が好ましく、20kHz以上がより好ましく、20kHz以上40kHz以下が特に好ましい。
【0044】
前記超音波シールにおける圧力、振幅、溶着時間、ホールド時間などの条件としては、用いる接合対象の種類、及び周波数や条件の組合せに応じて変化し、一義的に規定できるものではないが、特に制限はなく目的に応じて、適宜選択することができる。
前記圧力は、超音波シール装置において、接合対象に対する超音波ホーンによる押しつけ圧力を意味し、単位[Pa](パスカル)、[MPa](メガパスカル)などで表される。前記圧力としては、0.15[MPa]~0.3[MPa]が好ましく、0.25[MPa]~0.3[MPa]がより好ましい。
前記振幅は、超音波振動の大きさを意味する。前記振幅としては、20μm以上50μm以下が好ましく、均一かつ安定なシール強度を有することにより、35μm以上50μm以下がより好ましい。
前記溶着時間は、超音波の発振時間を示し、超音波ホーンが接合対象に接触して溶着する時間を意味する。前記溶着時間としては、0.2秒間以上1秒間以下が好ましく、0.5秒間以上1秒間以下がより好ましい。
前記ホールド時間は、超音波発振機の保持時間かつ溶着部の硬化時間を意味する。前記ホールド時間としては、0.2秒間以上1.0秒間以下が好ましく、0.5秒間以上1.0秒間以下がより好ましい。
【0045】
前記超音波シール装置としては、例えば、連続超音波シールタイプの装置、回転式超音波ホーンを有する装置などが好適に挙げられる。
前記連続超音波シールタイプの装置は、一般に「連続超音波融着接合」として知られている。連続超音波融着接合は、通常、略連続的に超音波シール装置内に供給することができ、略連続的に接合対象を封止するために使用される。連続超音波融着接合では、超音波ホーンは通常固定されており、接合対象がその真下を移動する。一種の連続超音波融着接合は、固定されたホーンと回転アンビル面とを使用する。連続超音波融着接合中、接合対象は、超音波ホーンと回転アンビルとの間に引っ張られる。超音波ホーンは、通常、接合対象に向かって長手方向に延在し、振動は超音波ホーンに沿って軸方向に材料まで伝達する。
【0046】
前記回転式超音波ホーンを有する装置では、超音波ホーンは回転タイプであり、円柱状であって長手方向軸を中心に回転する。入力振動は、超音波ホーンの軸方向にあり、出力振動は超音波ホーンの放射方向にある。超音波ホーンはアンビルに近接して配置され、通常アンビルもまた、接合対象が円柱状面の間を、円柱状面の接線速度に実質的に等しい線速度で通過するように回転することができる。
【0047】
超音波シールとしては、例えば、特開2008-526552号公報、特開2010-195044号公報、特開2013-231249号公報、特開2015-16294号公報、米国特許第5976316号明細書などに記載されており、その開示内容は参照により本明細書に援用される。
【0048】
(積層体)
本発明の積層体は、本発明の超音波シール用多層フィルムを少なくとも含み、前記超音波シール用多層フィルム2枚を各々の前記シール層が互いに接するように配置して超音波によりシールした積層体であってもよく、一続き(1枚)の前記超音波シール用多層フィルムを前記シール層が互いに接するように折畳んで配置して超音波によりシールした積層体であってもよく、或いは、前記超音波シール用多層フィルムと、熱可塑性樹脂フィルムとを、前記超音波シール用多層フィルムの前記シール層が前記熱可塑性樹脂フィルムに接するように配置して超音波によりシールした積層体であってもよい。
前記積層体は、包装体として好適に利用できる。前記包装体としては、例えば、洋菓子、スナック、パン、和菓子、調味料等の食品用包装体などが挙げられる。
前記積層体は、モノマテリアル化に対応でき、シール面のみ加熱可能な超音波シールによりシールできるためシール幅を狭くでき、材料の省量化を図ることができる。
【0049】
<熱可塑性樹脂フィルム>
前記熱可塑性樹脂フィルムの材料としては、特に制限はなく目的に応じて、公知の熱可塑性樹脂を適宜選択することができるが、モノマテリアル化の観点から、αオレフィン樹脂が好ましい。
前記αオレフィン樹脂としては、前記熱可塑性樹脂層において説明したαオレフィン樹脂を適宜採用することができる。
【0050】
本発明の超音波シール用多層フィルム10は、例えば、
図1に示すように、熱可塑性樹脂層1、及びシール層2からなり、2層が積層された多層フィルムである。
また、
図2に示すように、本発明の超音波シール用多層フィルム10は、複数の熱可塑性樹脂層を有してもよく、熱可塑性樹脂層(基材層)1a、熱可塑性樹脂層(中間層)1b、及びシール層2からなり、基材層/中間層/シール層の順で積層される多層フィルムであってもよい。
【0051】
図3A~Cは、本発明の超音波シール用多層フィルムの超音波溶接に用いる超音波シール装置の一例を示す概略断面図である。超音波シール装置100は、アンビル110と、このアンビル110の外周面と対向する超音波ホーン120とを有する。アンビル110の外周面に所定のシールパターンでシール突起が形成されており、超音波ホーン120は、
図3A中の矢印方向に可動して、超音波ホーン120とアンビル110のシール突起との間に接合対象をホールドすることができる。
アンビル110と超音波ホーン120との間に通される接合対象は、例えば、2枚重ねの超音波シール用多層フィルム10であってもよく(
図3A)、超音波シール用多層フィルム10と熱可塑性樹脂フィルムとを2枚重ねにしたものであってもよく(不図示)、金属棒130に引っ掛けて2枚重ねになるように折り畳んだ1枚の超音波シール用多層フィルム10であってもよい(
図3B)。接合対象のうち、アンビル110の外周面のシール突起と超音波ホーン120との間に挟まれる部分を、超音波ホーン120から伝達される超音波振動による摩擦熱で溶融シールして、超音波シール用多層フィルム10を少なくとも含む積層体50を製造する(
図3C参照)。超音波シール装置は、接合対象に接する超音波ホーンの先端から接合対象に振動エネルギーを伝えて、接合対象を摩擦熱で溶着するものであり、溶着形状は、アンビル110の外周面のシール突起と超音波ホーン先端との接触面の形状とほぼ同じとなる。
図3Aの超音波シール装置では、アンビル110の外周面のシール突起は、200mm×2mmの形状を有し、これにより、シール長200mm×シール幅2mmで溶着した積層体50を製造することができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。なお、特に明記しない限り、「部」は「質量部」を指し、「%」は「質量%」を指す。
【0053】
(実施例1-1)
<超音波シール用多層フィルムの作製>
基材層(A)、中間層(C)及びシール層(B)の各層を形成する樹脂成分として、各々下記の樹脂を使用して、各層を形成する樹脂混合物を調整した。
基材層(A):プロピレン-エチレンブロック共重合体(密度0.91g/cm3、MFR7.0g/10min)(以下、COPP(1)と称する。)70部と、プロピレン-エチレンブロック共重合体(密度0.91g/cm3、MFR4.0g/10min)(以下、COPP(2)と称する。)30部との混合物。
中間層(C):プロピレン-エチレンランダム共重合体(密度0.90g/cm3、MFR6.0g/10min)(以下、COPP(3)と称する。)50部と、COPP(1)50部との混合物。
シール層(B):COPP(3)76部と、プロピレン-1-ブテン共重合体(密度0.90g/cm3、MFR4.0g/10min、融点100℃)(以下、BP(1)と称する。)24部との混合物。
【0054】
各層を形成する樹脂混合物を3台の押出機に各々供給し、基材層(A)/中間層(C)/シール層(B)にて形成される積層フィルムの各層の平均厚みの比率が、26%:50%:24%となるように、押出温度250℃でTダイから共押出して、40℃の水冷金属冷却ロールで冷却し、総厚みが40μmの積層フィルムである実施例1-1の超音波シール用多層フィルムを成形した。
【0055】
<評価1>
<<超音波シール性>>
得られた超音波シール用多層フィルムを210mm×600mmにカットし、シール層を金属棒に引っ掛けて2枚重ねになるように折り畳んで2枚重ねにし、
図3に示す超音波シール装置のアンビル上に張るよう設置した。超音波シール装置として、超音波プラスチックウェルダーW3080(日本アビオニックス製、周波数:20kHz)を用いた。パラメータ(圧力=0.3MPa、振幅=50μm、溶着時間=1sec、ホールド時間=1sec)を設定し、スイッチを入れ、超音波シール用多層フィルムの210mm長の一辺をシール長200mm×シール幅2mmで超音波シールした。
シール長210mmを目視で観察した後、剥離を行い、下記の評価基準で超音波シール性を評価した。
[評価基準]
〇:シール全長に対し、80%以上が溶着した。
△〇:シール全長に対し、50%以上80%未満が溶着した(実用可能レベルである)。
△:シール全長に対し、一部(50%未満)が溶着した。
×:シール全長で溶着しないか0.5N/210mm以下で軽く剥離できた。
【0056】
<積層体の作製>
得られた超音波シール用多層フィルムを210mm×600mmにカットし、同じサイズにカットした熱可塑性樹脂フィルム(P2161、東洋紡株式会社製)に対しシール層が接するように2枚重ねにし、「超音波シール性」の評価と同様の装置及び条件により、長辺2辺と短辺1辺の計3辺を超音波シールして、実施例1-1の積層体を作製した。
【0057】
(実施例1-2~1-4)
実施例1-1において、総厚み40μmのまま、シール層(B)の厚みの比率を表1に示す通り変更したこと以外は、実施例1-1と同様にして実施例1-2~1-4の超音波シール用多層フィルムを作製し、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0058】
(実施例1-5)
実施例1-1において、表1に示す通り、シール層(B)の樹脂組成をCOPP(3)68部とBP(1)32部との混合物に変更したこと以外は、実施例1-1と同様にして実施例1-5の超音波シール用多層フィルムを作製し、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0059】
(実施例1-6)
実施例1-1において、表1に示す通り、シール層(B)の樹脂組成をCOPP(3)60部とBP(1)40部との混合物に変更したこと以外は、実施例1-1と同様にして実施例1-6の超音波シール用多層フィルムを作製し、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0060】
(実施例1-7)
実施例1-1において、シール層(B)のBP(1)をプロピレン-1-ブテン共重合体(密度0.9g/cm3、MFR4.0g/10min、融点58℃)(以下、BP(2)と称する。)に変更したこと以外は、実施例1-1と同様にして実施例1-7の超音波シール用多層フィルムを作製し、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0061】
(比較例1)
実施例1-1において、シール層(B)の樹脂組成をCOPP(3)100部(BP(1)を含まない)に変更したこと以外は、実施例1-1と同様にして比較例1の超音波シール用多層フィルムを作製し、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0062】
(実施例2-1)
実施例1-1において、総厚み40μmを30μmに変更したこと以外は、実施例1-1と同様にして実施例2-1の超音波シール用多層フィルムを作製し、評価を実施した。結果を表2に示す。
【0063】
(実施例2-2~2-7)
実施例1-2~1-7において、総厚み40μmを30μmに変更したこと以外は、実施例1-2~1-7と同様にして実施例2-2~2-7の超音波シール用多層フィルムを作製し、評価を実施した。結果を表2に示す。
【0064】
(比較例2)
実施例2-1において、シール層(B)の樹脂組成をCOPP(3)100部(BP(1)を含まない)に変更したこと以外は、実施例2-1と同様にして比較例2の超音波シール用多層フィルムを作製し、評価を実施した。結果を表2に示す。
【0065】
(実施例3-1)
実施例1-1において、総厚み40μmを50μmに変更したこと以外は、実施例1-1と同様にして実施例3-1の超音波シール用多層フィルムを作製した。結果を表3に示す。
【0066】
<評価2>
<<超音波シール性>>
実施例3-1では、実施例1-1において行った超音波シール性の評価に加えて、超音波シール装置のパラメータの条件を変更して追加の評価を行った。
具体的には、圧力を0.30[MPa]から0.25[MPa]、0.20[MPa]、及び0.15[MPa]にそれぞれ低減させた条件、及び振幅を50[μm]から35[μm]、及び20[μm]にそれぞれ低減させた条件に変更した。実施例1-1における超音波シール性の評価基準に従って評価した。結果を表4に示す。
【0067】
<<シール強度の測定>>
得られた実施例3-1の超音波シール用多層フィルムを幅210mmにカットし、シール層が互いに接するように2枚重ねにし、超音波プラスチックウェルダーW3080(日本アビオニックス製、周波数:20kHz)を用いて、圧力=0.3MPa、振幅=50μm、溶着時間=0.5sec、ホールド時間=1secの条件で超音波シールした。超音波シールした積層体を幅15mmにカットし、23℃、50%RHの恒温室において引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)を用いて、300mm/分間の速度で90度剥離することによりシール強度を測定した。実施例1-1~1-7の超音波シール用多層フィルムについても同様の測定を行った。結果を
図4に示す。
【0068】
<<融解熱量の測定>>
得られた実施例3-1の超音波シール用多層フィルムについて、示差走査熱量測定(DSC)によって測定される昇温1回目の融解熱量を、以下の手順で測定した。結果を表3に示す。
示差走査熱量測定(DSC)の昇温1回目の融解熱量は、示差走査熱量計(株式会社日立ハイテクサイエンス製、DSC7020)を用いて測定した。
まず、対象試料である超音波シール用多層フィルムの約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットする。次いで、窒素雰囲気下、30℃から昇温速度10℃/minにて200℃まで加熱(昇温1回目)し、示差走査熱量計を用いてDSC曲線を計測する。
得られたDSC曲線から、示差走査熱量計の解析プログラムを用いて、1回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温1回目における融解熱量[mJ/mg]を求めた。
【0069】
(実施例3-2~3-7)
実施例1-2~1-7において、総厚み40μmを50μmに変更したこと以外は、実施例1-2~1-7と同様にして実施例3-2~3-7の超音波シール用多層フィルムを作製し、実施例3-1と同様に評価を実施した。結果を表3~4及び
図4に示す。
【0070】
(比較例3)
実施例3-1において、シール層(B)の樹脂組成をCOPP(3)100部(BP(1)を含まない)に変更したこと以外は、実施例3-1と同様にして比較例3の超音波シール用多層フィルムを作製し、評価を実施した。結果を表3~4に示す。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
表1~3の結果から、シール層がブテン系αオレフィン樹脂を含有することにより、超音波シール性が担保されることがわかった。また、表1の結果から、シール層におけるブテン系αオレフィン樹脂の含有量が、24質量%以上で実用可能レベルの超音波シール性を示し、32質量%以上でシール長の全長で超音波シール性が担保されることがわかった。表1の結果から、超音波シール用多層フィルムの総厚み40μmでは、総厚みに対するシール層の厚み36%以上でシール長の全長で超音波シール性が担保され、BP(2)を用いた実施例2-7では、総厚みに対するシール層の厚み24%以上でシール長の全長で超音波シール性が担保されることがわかった。
表1~3の結果から、超音波シール用多層フィルムの総厚み40μm以上で超音波シール強度が増加し、シール長の50%以上から全長で超音波シール性が担保されることがわかった。また、表1、表3及び
図4の結果から、超音波シール用多層フィルムの総厚み50μmでは、総厚み40μmと比較して全体的に超音波シール強度が増加し、パラメータ間の影響が見られなくなることがわかった。
【0076】
以下に、実施例において用いた各樹脂のMFR、密度、及び融点を示す。
【表5】
【符号の説明】
【0077】
1 熱可塑性樹脂層
1a 熱可塑性樹脂層(基材層)
1b 熱可塑性樹脂層(中間層)
2 シール層
10 超音波シール用多層フィルム
50 積層体
100 超音波シール装置
110 アンビル
120 超音波ホーン
130 金属棒
【要約】
モノマテリアル化に対応でき、超音波溶接が可能であり、シール幅が狭く均一かつ安定な超音波シール強度を有することができる超音波シール用多層フィルムである、
熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂層と、
ランダムポリプロピレン及びαオレフィン樹脂を含有するシール層と、を少なくとも有し、
前記αオレフィン樹脂が、ブテン系αオレフィン樹脂を含有し、
超音波によりシール可能であることを特徴とする超音波シール用多層フィルムを提供する。
また、超音波シール用多層フィルムと、熱可塑性樹脂フィルムとを超音波によりシールした積層体を提供する。