IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構の特許一覧

特許7207702成分抽出方法、蛍光指紋測定装置、及びコンピュータが実行可能なプログラム
<>
  • 特許-成分抽出方法、蛍光指紋測定装置、及びコンピュータが実行可能なプログラム 図1
  • 特許-成分抽出方法、蛍光指紋測定装置、及びコンピュータが実行可能なプログラム 図2
  • 特許-成分抽出方法、蛍光指紋測定装置、及びコンピュータが実行可能なプログラム 図3
  • 特許-成分抽出方法、蛍光指紋測定装置、及びコンピュータが実行可能なプログラム 図4
  • 特許-成分抽出方法、蛍光指紋測定装置、及びコンピュータが実行可能なプログラム 図5
  • 特許-成分抽出方法、蛍光指紋測定装置、及びコンピュータが実行可能なプログラム 図6
  • 特許-成分抽出方法、蛍光指紋測定装置、及びコンピュータが実行可能なプログラム 図7
  • 特許-成分抽出方法、蛍光指紋測定装置、及びコンピュータが実行可能なプログラム 図8
  • 特許-成分抽出方法、蛍光指紋測定装置、及びコンピュータが実行可能なプログラム 図9
  • 特許-成分抽出方法、蛍光指紋測定装置、及びコンピュータが実行可能なプログラム 図10
  • 特許-成分抽出方法、蛍光指紋測定装置、及びコンピュータが実行可能なプログラム 図11
  • 特許-成分抽出方法、蛍光指紋測定装置、及びコンピュータが実行可能なプログラム 図12
  • 特許-成分抽出方法、蛍光指紋測定装置、及びコンピュータが実行可能なプログラム 図13
  • 特許-成分抽出方法、蛍光指紋測定装置、及びコンピュータが実行可能なプログラム 図14
  • 特許-成分抽出方法、蛍光指紋測定装置、及びコンピュータが実行可能なプログラム 図15
  • 特許-成分抽出方法、蛍光指紋測定装置、及びコンピュータが実行可能なプログラム 図16
  • 特許-成分抽出方法、蛍光指紋測定装置、及びコンピュータが実行可能なプログラム 図17
  • 特許-成分抽出方法、蛍光指紋測定装置、及びコンピュータが実行可能なプログラム 図18
  • 特許-成分抽出方法、蛍光指紋測定装置、及びコンピュータが実行可能なプログラム 図19
  • 特許-成分抽出方法、蛍光指紋測定装置、及びコンピュータが実行可能なプログラム 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】成分抽出方法、蛍光指紋測定装置、及びコンピュータが実行可能なプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20230111BHJP
   G01N 33/02 20060101ALI20230111BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20230111BHJP
   G01N 33/18 20060101ALI20230111BHJP
   G01N 33/46 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
G01N33/02
G01N33/15 Z
G01N33/18 Z
G01N33/46
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2018209190
(22)【出願日】2018-11-06
(65)【公開番号】P2020076612
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 真生
(72)【発明者】
【氏名】蔦 瑞樹
(72)【発明者】
【氏名】石川 祐子
(72)【発明者】
【氏名】ナンシー ユリアナ デヴィ
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-092654(JP,A)
【文献】特表2013-534630(JP,A)
【文献】米国特許第05491344(US,A)
【文献】特開2011-153945(JP,A)
【文献】国際公開第2017/191803(WO,A1)
【文献】蛍光指紋とクロマトグラフィーのハイブリッド解析法,第78回分析化学討論会講演要旨集,2018年05月12日,51
【文献】蛍光指紋情報のデータマイニングによる食品品質評価,日本食品工学会誌,2017年06月,18(2),87-92
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/74
G01N 30/00 - G01N 30/96
G01N 33/00 - G01N 33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの試料に対して、含有成分を独立した単一ピークとして分離するのではなく、試料成分が連続的に分配される条件下で一続きの複数の画分として取得するために、抽出条件を連続的に遷移させて成分の異なる複数の測定用のサンプルを抽出するサンプル抽出工程と、
前記抽出した複数のサンプルに対して、それぞれ、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら蛍光強度を測定して、複数の蛍光指紋情報を蛍光指紋連続体情報として取得する蛍光指紋連続体情報取得工程と、
を含むことを特徴とする成分抽出方法。
【請求項2】
さらに、
前記抽出した複数のサンプルに対して、生理活性評価又は化学分析による測定を行って、実測値を取得する実測値取得工程と、
前記蛍光指紋連続体情報を説明変数、前記実測値を目的変数として多変量解析を行い、多変量解析の結果に基づいて、マーカーシグナルを検出するマーカーシグナル検出工程と、
を含む請求項1に記載の成分抽出方法。
【請求項3】
前記1つの試料は、薬用植物、機能性食品、機能性を有する青果物、通常の食品、木材、及び水質評価対象の水を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の成分抽出方法。
【請求項4】
前記サンプル抽出工程では、極性、温度、又は分子量に基づいた抽出法で前記複数のサンプルを抽出することを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の成分抽出方法。
【請求項5】
前記測定は、各種の生理活性評価及び化学分析を含むことを特徴とする請求項2に記載の成分抽出方法。
【請求項6】
前記多変量解析は、主成分回帰、クラスター分析、判別分析、SIMCA、重回帰分析、PLS回帰分析、PLS判別、SVM回帰、SVM判別、RF回帰、及びRF判別の1又は複数であることを特徴とする請求項2に記載の成分抽出方法。
【請求項7】
前記マーカーシグナル検出工程では、多変量解析で得られる回帰係数、因子負荷量、ローディング、selectivity ratio、variable importance in projection、変数重要度、out of bag errorの1または複数の回帰・判別への寄与率を示す指標に基づき、マーカーシグナルの検出を行うことを特徴とする請求項6に記載の成分抽出方法。
【請求項8】
前記蛍光指紋連続体情報に対して、中心化、標準化、規格化、微分、ベースライン補正、および/または、平滑化の処理を行うデータ前処理工程を更に含むことを特徴とする請求項2に記載の成分抽出方法。
【請求項9】
1つの試料に対して、含有成分を独立した単一ピークとして分離するのではなく、試料成分が連続的に分配される条件下で一続きの複数の画分として取得するために、抽出条件を連続的に遷移させて抽出した成分の異なる複数の測定用のサンプルに対して、それぞれ、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら蛍光強度を測定して、複数の蛍光指紋情報を蛍光指紋連続体情報として取得する蛍光指紋連続体情報取得手段を備えたことを特徴とする蛍光指紋測定装置。
【請求項10】
さらに、
前記抽出した複数のサンプルに対して、生理活性評価又は化学分析による測定を行って、実測値を取得する実測値取得手段と、
前記蛍光指紋連続体情報を説明変数、前記実測値を目的変数として多変量解析を行い、多変量解析の結果に基づいて、マーカーシグナルを検出するマーカーシグナル検出手段と、
を備えたことを特徴とする請求項9に記載の蛍光指紋測定装置。
【請求項11】
前記1つの試料は、薬用植物、機能性食品、機能性を有する青果物、通常の食品、木材、及び水質評価対象の水を含むことを特徴とする請求項9又は10に記載の蛍光指紋測定装置。
【請求項12】
前記測定は、各種の生理活性評価及び化学分析を含むことを特徴とする請求項10に記載の蛍光指紋測定装置。
【請求項13】
前記多変量解析は、主成分回帰、クラスター分析、判別分析、SIMCA、重回帰分析、PLS回帰分析、PLS判別、SVM回帰、SVM判別、RF回帰、及びRF判別の1又は複数であることを特徴とする請求項10に記載の蛍光指紋測定装置。
【請求項14】
前記マーカーシグナル検出手段は、多変量解析で得られる回帰係数、因子負荷量、ローディング、selectivity ratio、variable importance in projection、変数重要度、out of bag errorの1または複数の回帰・判別への寄与率を示す指標に基づき、マーカーシグナルの検出を行うことを特徴とする請求項13に記載の蛍光指紋測定装置。
【請求項15】
前記蛍光指紋連続体情報に対して、中心化、標準化、規格化、微分、ベースライン補正、および/または、平滑化の処理を行うデータ前処理工程を更に含むことを特徴とする請求項10に記載の蛍光指紋測定装置。
【請求項16】
1つの試料に対して、含有成分を独立した単一ピークとして分離するのではなく、試料成分が連続的に分配される条件下で一続きの複数の画分として取得するために、抽出条件を連続的に遷移させて抽出した成分の異なる複数の測定用のサンプルに対して、それぞれ、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら蛍光強度を測定して、複数の蛍光指紋情報を蛍光指紋連続体情報として取得する蛍光指紋連続体情報取得工程をコンピュータに実行させるためのコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項17】
さらに、
前記抽出した複数のサンプルに対して、生理活性評価又は化学分析による測定を行って、実測値を取得する実測値取得工程と、
前記蛍光指紋連続体情報を説明変数、前記実測値を目的変数として多変量解析を行い、多変量解析の結果に基づいて、マーカーシグナルを検出するマーカーシグナル検出工程と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項16に記載のコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項18】
前記1つの試料は、薬用植物、機能性食品、機能性を有する青果物、通常の食品、木材、及び水質評価対象の水を含むことを特徴とする請求項16又は17に記載のコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項19】
前記測定は、各種の生理活性評価及び化学分析を含むことを特徴とする請求項17に記載のコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項20】
前記多変量解析は、主成分回帰、クラスター分析、判別分析、SIMCA、重回帰分析、PLS回帰分析、PLS判別、SVM回帰、SVM判別、RF回帰、及びRF判別の1又は複数であることを特徴とする請求項17に記載のコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項21】
前記マーカーシグナル検出工程では、多変量解析で得られる回帰係数、因子負荷量、ローディング、selectivity ratio、variable importance in projection、変数重要度、out of bag errorの1または複数の回帰・判別への寄与率を示す指標に基づき、マーカーシグナルの検出を行うことを特徴とする請求項20に記載のコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項22】
前記蛍光指紋連続体情報に対して、中心化、標準化、規格化、微分、ベースライン補正、および/または、平滑化の処理を行うデータ前処理工程を更に含むことを特徴とする請求項17に記載のコンピュータが実行可能なプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成分抽出方法、蛍光指紋測定装置、及びコンピュータが実行可能なプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
我が国の農業振興、農家の所得向上のため、農林水産物のさらなる付加価値向上が求められるなか、機能性に代表される、多数の成分が関与しうる農林水産物の品質についても迅速かつ低コストで探索、評価する手法のニーズが高まっている。
【0003】
機能性をはじめとする、多数の成分が関与する品質の評価には、従来、精製・分析・バイオアッセイなどにより主要な寄与成分を同定した後、定量するというターゲット分析の活用が一般的であった。しかし、近年では目標成分を絞らずに含有成分を網羅的に解析するノンターゲット分析の手法を用い、多成分が関与する品質を精密に定量評価する取り組みがなされつつある。
【0004】
果実の糖度などの迅速簡便評価法として実用化されている近赤外分光法も、標本が含む成分の分光学的性質を利用したノンターゲット分析の一種である。分光学的評価法の中でも蛍光指紋法(例えば、特許文献1,特許文献2,非特許文献1参照)は標本に含まれる各成分から発せられる多様な蛍光シグナルを解析することで、従来の分光学的手法よりも多くの成分情報を得られることから、多成分の関与する品質を精密に評価できる手法として期待され、蛍光指紋の直接取得が難しい性状の試料についても、粉砕および錠剤化(例えば、特許文献3参照)や溶媒抽出(例えば、非特許文献2参照)などの前処理を組み合わせる手法が開発されるなど応用範囲が広がりつつある。
【0005】
農林水産物のような多様な成分を含む試料の品質を評価する際、従来のターゲット分析法では、主要寄与成分の同定に大きなコストを必要とする上、評価対象が主要成分に限られるため、複数の成分が関わる品質を正確に定量評価することは難しい。
【0006】
ノンターゲット分析法においても、一般に煩雑な操作や高価な解析装置の運用など大き
なコストを必要とする。ノンターゲット分析法の中には、比較的コストの低い、蛍光指紋法がある。しかしながら、従来の蛍光指紋法では、共存する成分同士による蛍光の吸収や、成分固有の最適濃度を超えると発光効率が低下する濃度消光現象などによるシグナルの減弱や、近い波長のシグナルの分離が難しい等により、解析に資するシグナル数が減少する問題がある。特定のシグナルについて検出力を高める試料の前処理法も開発されているが、試料毎に前処理条件の最適化が必要である上、近い波長のシグナルを分離する効果はない。
【0007】
すなわち、従来の蛍光指紋法では、試料そのまま、あるいは単一の溶媒による抽出物から蛍光指紋を取得するため、前述の問題が発生しやすかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第3706914号公報
【文献】特許第5856741号公報
【文献】特開2017-36991号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】Dheni Mita Mala,Masatoshi Yoshimura,Susumu Kawasaki,Mizuki Tsuta,Mito Kokawa,Vipavee Trivittayasil,Junichi Sugiyama,Yutaka Ktamura:Fiber optics fluorescence fingerprint measurement for aerobic plate count prediction on sliced beef surface,Food Science and Technology,DOI10.1016/j.lwt.2015.11.065(2015)
【文献】蔦瑞樹,相山怜子,恩田浩幸,鈴木久美子,佐川岳人,蛍光指紋と多変量解析による黒胡椒抽出液の産地判別,2017年度日本食品科学工学会大会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、蛍光指紋のマーカーシグナルを迅速かつ高精度に検出することが可能な成分抽出方法、蛍光指紋測定装置、及びコンピュータが実行可能なプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、1つのサンプルに対して、抽出条件を連続的に遷移させて成分の異なる複数のサンプルを抽出するサンプル抽出工程と、前記抽出した複数のサンプルに対して、それぞれ、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら蛍光強度を測定して、複数の蛍光指紋情報を蛍光指紋連続体情報として取得する蛍光指紋連続体情報取得工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の好ましい態様によれば、さらに、前記抽出した複数のサンプルに対して測定による実測値を取得する実測値取得工程と、前記蛍光指紋連続体情報を説明変数、前記実測値を目的変数として多変量解析を行い、多変量解析の結果に基づいて、蛍光指紋に基づく指標値を推定し、推定に重要な波長領域であるマーカーシグナルを検出するマーカーシグナル検出工程と、を含むことにしてもよい。
【0013】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記1つのサンプルは、薬用植物、機能性食品、機能性を有する青果物、通常の食品、木材、及び水質評価対象の水を含むことにしてもよい。
【0014】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記サンプル抽出工程では、極性、温度、又は分子量に基づいた抽出法で前記複数のサンプルを抽出することにしてもよい。
【0015】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記測定は、各種の生理活性評価及び化学分析を含むことにしてもよい。
【0016】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記多変量解析は、主成分回帰、クラスター分析、判別分析、SIMCA、重回帰分析、PLS回帰分析、PLS判別、SVM回帰、SVM判別、RF回帰、及びRF判別の1又は複数であることにしてもよい。
【0017】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記マーカーシグナル検出工程では、多変量解析で得られる回帰係数、因子負荷量、ローディング、selectivity ratio、variable importance in projection、変数重要度、out of bag errorの1または複数の回帰・判別への寄与率を示す指標に基づき、マーカーシグナルの検出を行うことにしてもよい。
【0018】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記蛍光指紋連続体情報に対して、中心化、標準化、規格化、微分、ベースライン補正、および/または、平滑化の処理を行うデータ前処理工程を更に含むことにしてもよい。
【0019】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、1つのサンプルに対して、抽出条件を連続的に遷移させて取得した成分の異なる複数のサンプルに対して、それぞれ、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら蛍光強度を測定して、複数の蛍光指紋情報を蛍光指紋連続体情報として取得する蛍光指紋連続体情報取得手段を備えたことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の好ましい態様によれば、さらに、前記蛍光指紋連続体情報を説明変数、前記複数のサンプルに対する測定による実測値を目的変数として多変量解析を行い、多変量解析の結果に基づいて、蛍光指紋に基づく指標値を推定し、推定に重要な波長領域であるマーカーシグナルを検出するマーカーシグナル検出手段を備えることにしてもよい。
【0021】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記1つのサンプルは、薬用植物、機能性食品、機能性を有する青果物、通常の食品、木材、及び水質評価対象の水を含むことにしてもよい。
【0022】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記測定は、各種の生理活性評価及び化学分析を含むことにしてもよい。
【0023】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記多変量解析は、主成分回帰、クラスター分析、判別分析、SIMCA、重回帰分析、PLS回帰分析、PLS判別、SVM回帰、SVM判別、RF回帰、及びRF判別の1又は複数であることにしてもよい。
【0024】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記マーカーシグナル検出手段は、多変量解析で得られる回帰係数、因子負荷量、ローディング、selectivity ratio、variable importance in projection、変数重要度、out of bag errorの1または複数の回帰・判別への寄与率を示す指標に基づき、マーカーシグナルの検出を行うことにしてもよい。
【0025】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記蛍光指紋連続体情報に対して、中心化、標準化、規格化、微分、ベースライン補正、および/または、平滑化の処理を行うデータ前処理工程を更に含むことにしてもよい。
【0026】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、1つのサンプルに対して、抽出条件を連続的に遷移させて取得した成分の異なる複数のサンプルに対して、それぞれ、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら蛍光強度を測定して、複数の蛍光指紋情報を蛍光指紋連続体情報として取得する蛍光指紋連続体情報取得工程をコンピュータに実行させるためのコンピュータが実行可能なプログラムであることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の好ましい態様によれば、さらに、前記抽出した複数のサンプルに対して測定による実測値を取得する実測値取得工程と、前記蛍光指紋連続体情報を説明変数、前記実測値を目的変数として多変量解析を行い、多変量解析の結果に基づいて、蛍光指紋に基づく指標値を推定し、推定に重要な波長領域であるマーカーシグナルを検出するマーカーシグナル検出工程と、をコンピュータに実行させることにしてもよい。
【0028】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記1つのサンプルは、薬用植物、機能性食品、機能性を有する青果物、通常の食品、木材、及び水質評価対象の水を含むことにしてもよい。
【0029】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記測定は、各種の生理活性評価及び化学分析を含むことにしてもよい。
【0030】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記多変量解析は、主成分回帰、クラスター分析、判別分析、SIMCA、重回帰分析、PLS回帰分析、PLS判別、SVM回帰、SVM判別、RF回帰、及びRF判別の1又は複数であることにしてもよい。
【0031】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記マーカーシグナル検出工程では、多変量解析で得られる回帰係数、因子負荷量、ローディング、selectivity ratio、variable importance in projection、変数重要度、out of bag errorの1または複数の回帰・判別への寄与率を示す指標に基づき、マーカーシグナルの検出を行うことにしてもよい。
【0032】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記蛍光指紋連続体情報に対して、中心化、標準化、規格化、微分、ベースライン補正、および/または、平滑化の処理を行うデータ前処理工程をさらにコンピュータに実行させることにしてもよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、蛍光指紋のマーカーシグナルを迅速かつ高精度に検出することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、本発明の概略を説明するための説明図である。
図2図2は、測定対象物に励起光を照射した場合に、測定対象物から発せられる蛍光を説明するための図である。
図3図3は、蛍光指紋の一例を3次元データの等高線状のグラフにて示す図である。
図4図4は、図3の蛍光指紋の一例を平面的に表した俯瞰図である。
図5図5は、本実施の形態に係る蛍光指紋測定方法を説明するためのフローチャートである。
図6図6は、蛍光指紋情報に対して行われるデータ前処理の第1段階を説明するための図である。
図7図7は、蛍光指紋情報に対して行われるデータ前処理の第2段階(中心化)を説明するための図である。
図8図8は、蛍光指紋情報に対して行われるデータ前処理の第2段階(規格化)を説明するための図である。
図9図9は、蛍光指紋情報に対して行われるデータ前処理の第2段階(標準化)を説明するための図である。
図10図10は、本実施の形態に係る蛍光指紋測定装置の構成の一例を示すブロック図である。
図11図11は、蛍光指紋取得装置の一例を示すブロック図である。
図12図12は、本発明の蛍光指紋測定方法の一実施例を説明するための図である。
図13図13は、本発明の蛍光指紋測定方法の一実施例を説明するための図である。
図14図14は、本発明の蛍光指紋測定方法の一実施例を説明するための図である。
図15図15は、本発明の蛍光指紋測定方法の一実施例を説明するための図である。
図16図16は、本発明の蛍光指紋測定方法の一実施例を説明するための図である。
図17図17は、本発明の蛍光指紋測定方法の一実施例を説明するための図である。
図18図18は、本発明の蛍光指紋測定方法の一実施例を説明するための図である。
図19図19は、本発明の蛍光指紋測定方法の一実施例を説明するための図である。
図20図20は、本発明の蛍光指紋測定方法の一実施例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明に係る成分抽出方法、蛍光指紋測定装置、及びコンピュータが実行可能なプログラムの実施の形態を、図1図20を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0036】
[1.本発明の概要]
本発明は、試料抽出時に、含有成分を独立した単一ピークとして分離するのではなく、試料成分が連続的に分配される条件下で一続きの複数の画分として取得し(「網羅抽出法」ともいう)、それぞれの画分の蛍光指紋情報を取得順に統合して再構成した「蛍光指紋連続体」を取得し、この蛍光指紋連続体に対し多変量解析を施して、蛍光指紋のマーカーシグナルを検出するものである。
【0037】
すなわち、本発明は、従来、励起波長・蛍光波長・蛍光強度の3次元データから成る蛍光指紋を、画分取得順序という次元に沿って展開した「蛍光指紋連続体」として取得・解析する新しい方法を提案するものである。
【0038】
また、本発明は、含有成分のそれぞれが異なる濃度で複数の画分に分配されるような抽出条件を用いることで、上記問題を大幅に緩和し、従来の蛍光指紋法よりも大量の蛍光シグナルを得られることができ、品質を特徴付けるマーカーシグナルの探索が容易となる。
【0039】
また、従来の蛍光指紋法では、マーカーシグナルの探索・推定モデルの確立に数十の標本を必要としたが、本発明では、得られた画分同士で品質と蛍光指紋を比較することで、一標本からキーシグナルを得ることが可能である。
【0040】
また、本発明は、成分抽出条件を連続的に遷移させる前提であるため、従来の蛍光指紋法における前処理条件の最適化を考慮する必要がない。抽出条件としては、主に極性の大きく異なる溶媒の組み合わせによる固液連続抽出等が用いられるが、逆相・順相、サイズ排除カラム等でも利用可能である。
【0041】
本発明は、例えば、多数成分の関与する品質評価が求められる機能性食品、薬用植物、及び機能性を有する青果物などの迅速簡便な一次的品質管理に適している。一次スクリーニングに用いる本発明と、確定管理検査に用いる従来法・公定法を組み合わせることにより、低コストで品質を保証することが可能になる。
【0042】
後述するように、一実施例として、インドネシアで母乳分泌促進剤などとして使われてきた伝統薬であるPlectranthus ambonicus Lour(PA)の葉から複数の画分(フラクション)を取得し、各々の画分について、蛍光指紋とマウス初代免疫細胞からの抗原特異的なIFN-γ産生抑制活性を測定し、OPLS解析を行い、IFN-γ産生抑制活性と強い相関がある蛍光指紋上のマーカーシグナルを検出し、本発明の有用性を立証した。
【0043】
図1を参照して、本発明の概略を説明する。図1は、本発明の概略を説明するための説明図である。
【0044】
本発明は、まず、1つのサンプルに対して、抽出条件を連続的に遷移させて成分の異なる複数のサンプルを抽出する(S1)。抽出した複数のサンプルに対して、蛍光指紋計測を行い、それぞれ、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら蛍光強度を測定して、複数の蛍光指紋情報を蛍光指紋連続体情報として取得する(S2)。他方、複数のサンプルに対して測定(生理活性評価、化学分析等)を行って実測値を取得する(S3)。蛍光指紋連続体情報を説明変数、実測値を目的変数として多変量解析を行い(S4)、多変量解析の結果に基づいて、蛍光指紋に基づく指標値を推定し、推定に重要な波長領域であるマーカーシグナルを検出する(S5)。検出したマーカーシグナルの成分を、データベース(文献情報)等を使用して推定(同定)する(S6)。
【0045】
[蛍光指紋]
図2から図4を参照し、蛍光指紋について説明する。図2は、測定対象物に励起光を照射した場合に、測定対象物から発せられる蛍光を説明するための図である。図3は、蛍光指紋の一例を3次元データの等高線状のグラフにて示す図である。図4は、図3の蛍光指紋の一例を平面的に表した俯瞰図である。
【0046】
図2に示すように、測定対象物に励起光(様々な波長の光)を照射し、測定対象物から発せられた蛍光を検出する。「蛍光指紋」とは、図3に示すように、測定対象物に照射する励起波長、測定対象物から発する蛍光波長、測定対象物の蛍光強度の3軸からなる3次元データの等高線状のグラフである。
【0047】
また、図4に示すように、「蛍光指紋」は、横軸を蛍光波長、縦軸を励起波長として各ポイントの蛍光強度を等高線プロットすることにより平面的に表すことができる。
【0048】
蛍光指紋は、測定対象物に対し蛍光染色等の前処理をせずにキャラクタリゼーションが可能であること、操作が容易で短時間で測定できること、さらに吸光法に比べ感度が高いこと、非破壊で測定が可能であることなどの長所を有することから、食品等の内部構造の分析や、大気中の浮遊物の測定や、染料の原料特定などに利用されている手法である。
【0049】
このように、「蛍光指紋」は、3次元の膨大な情報を有する成分固有の蛍光情報であるため、測定者は、蛍光指紋を利用することで、成分の識別が可能であり、かつ、非破壊での計測が可能である。
【0050】
本実施の形態では、励起波長・蛍光波長・蛍光強度の3次元データから成る蛍光指紋について、抽出した複数のサンプルに対して、画分取得順序という次元に沿って展開した「蛍光指紋連続体情報」として取得・解析する。
【0051】
[多変量解析]
多変量解析には、(1)教師なし(パターン認識)と、(2)教師ありと、がある。(1)教師なしには、主成分分析、クラスター分析等がある。(2)教師ありには、(2-1)判別分析、(2-2)回帰分析等がある。
【0052】
(2-1)判別分析は、いくつかのグループにデータを分けるものであり、PLS(Partial least squares)判別分析、SIMCA(Soft Independent Modeling of Class Analogy)、および、SVM(Support Vector Machine)判別分析等がある。
【0053】
(2-2)回帰分析は、特定の数値を推定する回帰式(検量線)を作成するものであり、回帰分析には、重回帰分析、PLS回帰分析、主成分回帰分析、RF回帰、および、SVM回帰がある。
【0054】
より望ましくはRF回帰、PLS回帰であり、さらに望ましくはPLS回帰である。望ましいとされる分析手法を採用することで、より正確にマーカーシグナルを検出することが可能となる。
【0055】
また、多変量解析で得られる回帰係数、因子負荷量、ローディング、selectivity ratio、variable importance in projection、変数重要度、out of bag errorの1または複数の回帰・判別への寄与率を示す指標に基づき、マーカーシグナルの検出を行うことにしてもよい。
【0056】
[蛍光指紋測定方法(成分抽出方法)]
図5図9を参照し、本実施の形態に係る蛍光指紋測定方法(成分抽出方法)について説明する。図5は、本実施の形態に係る蛍光指紋測定方法を説明するためのフローチャートである。
【0057】
図5において、まず、サンプル抽出工程を実行する(ステップS11)。サンプル抽出工程では、測定対象の1つのサンプルを準備し、この1つのサンプルに対して、抽出条件を連続的に遷移させて成分の異なる複数のサンプルを抽出(網羅抽出法)する。
【0058】
サンプルは、例えば、薬用植物、機能性食品、及び機能性を有する青果物の他、普通の食品、木材、水質評価の対象となる水等の各種のものを対象としてもよい。
【0059】
例えば、カラムと抽出装置で構成されるサンプル抽出装置を使用して、極性、温度、又は分子量に基づいた抽出法で1つのサンプルに対して、成分の異なる複数のサンプルを抽出することができる。具体的には、例えば、乾燥粉末のサンプルを、海砂(Wako Pure Chemical Industry Ltd., Osaka, Japan)と共に、ステンレススチールカラムに充填し、抽出装置により、極性の異なる溶媒を段階的に混合した溶媒で、所定の流量で、所定時間間隔で画分を複数取得する。遠心エバポレータ(例:Eyela Centrifugal Vaporizer CVE-200D, Tokyo Rikakikai Co., Ltd., Japan) などで抽出溶媒を揮発させて、乾固物の画分を得る。乾固物は、後述するように、所定の溶媒(例えば、DMSO)で再溶解し、蛍光指紋測定と実測値の測定に供する。
【0060】
抽出装置としては、例えば、(1)グラジエントポンプ(例えば、Jasco PU-980 Gulliver HPLC pump)、(2)高速溶媒抽出装置(例えば、サーモサイエンティフィックASE-350/ASE-50)、(3)遠心管、遠心分離機、超音波洗浄機の組み合わせによるバッチ処理等を使用することができる。
【0061】
極性の異なる溶媒を使用する替わりに、抽出溶媒の温度を段階的に上昇(下降)させ、複数の画分を取得することにしてよい。また、サイズ排除カラムを用いた連続的に異なる分子量成分、溶媒の塩濃度等を連続的に変化させた時に溶出される成分などを複数の画分として取得することにしてもよい。
【0062】
つぎに、蛍光指紋連続体情報取得工程を実行する(S12)。蛍光指紋連続体情報取得工程では、例えば、所定の溶媒で再溶解させた複数のサンプルに対して、それぞれ、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら蛍光強度を測定して、複数の蛍光指紋情報を蛍光指紋連続体として取得する。
【0063】
具体的には、再溶解させた複数のサンプルをそれぞれ、セル(例えば、1mLのセル(FM20-SQ-3,GL Sciences Inc.,Tokyo,Japan))に入れて計測装置にセットする。
【0064】
計測装置としては、分光蛍光光度計を使用することができ、励起波長(例えば、スリット幅=10nm、200~900nmの計測波長範囲内で10nmのデータ取得間隔ごとのm個の波長)と、蛍光波長(例えば、スリット幅=10nm、200~900nmの計測波長範囲で10nmのデータ取得間隔ごとのn個の波長)と、の組み合わせを変えながら、合計m×n通りの波長条件で、測定対象物の蛍光強度を取得してもよい。また、波長のスキャンスピードとフォトマル電圧はそれぞれ、500nm/s、400Vに設定としてもよい。
【0065】
ここで、測定者は、計測回数(例えば、各試料につき3回)を調整してもよい。図6(A)は、測定対象物の蛍光指紋の一例を示す図である。
【0066】
蛍光分光光度計としては、例えば、(1)日立ハイテクノロジーズ F-7000型蛍光分光高度計、(2)日本分光 FP-8500蛍光分光光度計、(3)独自開発の装置(例えば、光源(キセノンorLEDランプ)+分光機構(回折格子・光学フィルタ)+検出器からなる装置)、(4)HPLC等の検出器として、オンラインで使用できるような光源と分光機構、検出器を有した装置等を使用することができる。
【0067】
図6(A)に示すように、測定対象物について、照射する励起波長および観測する蛍光波長の組み合わせが異なるm×n波長条件で蛍光強度を取得し、測定対象物の蛍光指紋情報を取得する。
【0068】
図5に戻り、取得した蛍光指紋情報に対して、必要によりデータ前処理工程を実行する(ステップS14)。
【0069】
以下、図6から図9を参照して、多変量解析前に蛍光指紋情報に対して行われるデータ前処理について説明する。
【0070】
図6は、蛍光指紋情報に対して行われるデータ前処理の第1段階を説明するための図である。図7から図9は、蛍光指紋情報に対して行われるデータ前処理の第2段階を説明するための図である。
【0071】
データ前処理は、例えば、1.蛍光指紋の散乱光の除去と2次元データへの展開との第1段階、2.2次元の蛍光指紋情報に対する信号処理演算(例えば、中心化、標準化、規格化、2次微分、ベースライン補正、および、平滑化等)の第2段階の処理がある。
【0072】
<1.蛍光指紋の散乱光の除去と2次元データへの展開(第1段階の処理)>
図6(A)に示すように、取得された蛍光指紋情報は、合計m×nの波長条件(=励起波長と蛍光波長の組み合わせ)のパラメータからなる高次元の蛍光強度データを含んでおり、更に、蛍光の定義から外れる光学的データ(例えば、励起光の散乱光、その2次光、3次光等:本発明では便宜的にノイズ情報と表記する)を含んでいる。
【0073】
ここで、散乱光は、蛍光波長と励起波長が一致する波長条件で、または、散乱光の二次光、三次光はそれぞれ蛍光波長が励起波長の2倍、3倍となる波長条件で現れる。
【0074】
そのため、ノイズ情報を除去するとともに、取得した高次元の蛍光強度データから、目的とする蛍光指紋以外の情報を除去した低次元の蛍光強度データにすることが望ましい。
【0075】
そこで、図6(B)に示すように、ノイズ情報となる励起光の散乱光、ならびに、その2次光および3次光のデータ(例えば、図6(B)の(i)が示すデータ)を削除する。
【0076】
ここで、散乱光・2次光・3次光ともにある程度の幅をもって現れるため、例えば、前後30から40nmの範囲のデータを除くことにしてもよい。
【0077】
更に、蛍光波長が励起波長よりも短い範囲のデータ(例えば、図6(B)の(ii)が示すデータ)を除去する。
【0078】
これは、測定対象物が発する蛍光波長は励起波長より長波長であるので、励起波長より長波長の蛍光波長の蛍光強度データのみを解析するための処理である。
【0079】
このように、散乱光および蛍光波長が励起波長よりも短い範囲のデータを除去して、図6(C)に示すように、測定対象物の特徴を表す蛍光指紋情報を抽出する。
【0080】
蛍光指紋情報は、上述したように、励起波長、蛍光波長、および、蛍光強度からなる3次元データである。多くの解析手法は2次元データを対象に開発されているため、それらを用いるためには3次元データを2次元に展開する必要がある。
【0081】
たとえば、図6(C)に示すように、励起波長200から700nm、および、蛍光波長200から700nm、励起波長、蛍光波長ともに5nm間隔で取得した蛍光指紋の場合、励起波長200nmの蛍光スペクトルの後に励起波長205nmの蛍光スペクトル、その後に励起波長210nmの蛍光スペクトル・・・というように蛍光スペクトルを一列につなげていく。
【0082】
このようにして展開した2次元データの一例を図6(D)に示す。図6(D)は、3つの蛍光スペクトルを示しており、横軸は波長条件(励起波長と蛍光波長の組み合わせ)、縦軸は蛍光強度となる。
【0083】
なお、本実施形態においては、第一段階の処理を行わず、3次元データのまま多変量解析を行ってもよい。
【0084】
<2.2次元の蛍光指紋情報に対する信号処理演算(第2段階の処理)>
2次元に展開した蛍光指紋情報に対して、中心化(mean centering)、規格化(normalization)、標準化(autoscale)、2次微分(2nd derivative)、ベースライン補正(baseline correction)、および、平滑化(smoothing)のうちの1つまたは組み合わせて信号処理演算を行う。
【0085】
第2段階のデータ前処理を行うことにより、蛍光スペクトルに含まれている情報の強調、異なるサンプルの蛍光スペクトルの尺度を合わせることができる等の効果がある。
【0086】
図7は、図6(D)の蛍光指紋情報を中心化した例を示す図である。「中心化」では、波長条件毎に、全サンプルの蛍光強度の平均を求め、平均が「0」となるように蛍光強度から差し引く処理を行う。
【0087】
図8は、図6(D)の蛍光指紋情報を規格化した例を示す図である。「規格化」ではサンプルごとに蛍光強度の積分(スペクトルの下の面積)を求め、全てのサンプルで積分が「1」となるようにサンプルごとに係数をかける処理を行う。
【0088】
図9は、図6(D)の蛍光指紋情報を標準化した例を示す図である。「標準化」では波長条件毎に、平均が「0」、および、標準偏差が「1」となるよう、平均を差し引いた後に標準偏差で割る処理を行う。
【0089】
なお、本実施形態においては、第2段階のデータ前処理を行わずに多変量解析を行ってもよい。
【0090】
つぎに、図5に戻り、実測値測定工程を実行して(ステップS13)、複数のサンプルについて測定により実測値を取得する。上記S11で作成した複数のサンプルを測定してサンプルの実測値を取得する。測定としては、各種の生理活性評価及び化学分析を含むことにしてもよい。実測値の測定系例としては、例えば、(1)人を含む動植物、微生物等及びその組織のサンプルへの応答性、(2)初代培養細胞、株化培養細胞のサンプルへの応答性、(3)抗体、レセプタータンパク質(細胞表面上、基板に固定化したもののいずれでも可)等とのサンプルの結合性、(4)食品のにおい・味・鮮度・抗酸化性などの品質評価、(5)木材の品質、(6)水質評価にかかる残存有機物の量等の各種のものに適用可能である。
【0091】
マーカーシグナル検出工程を実行して(ステップS15)、蛍光指紋連続体情報を説明変数、実測値を目的変数として上述の多変量解析を行い、多変量解析の結果に基づいて、蛍光指紋に基づく指標値を推定し、推定に重要な波長領域であるマーカーシグナルを検出する。
【0092】
ここで、多変量解析を行う場合には、MATLAB(Mathworks Inc,USA)、Unscrambler(CAMO Software AS,Norway)、JMP(SAS Institute Inc,USA)、または、Excel(Microsoft Corporation,USA)等の汎用のソフトウェアや独自開発のソフトウェアを使用してもよい。
【0093】
そして、成分推定工程を実行して(ステップS16)、検出したマーカーシグナルの成分を、データベース等を使用して推定(同定)する。
【0094】
[蛍光指紋測定装置]
次に、本発明の蛍光指紋測定装置の構成について図10および図11を参照し実施形態を例に挙げて説明する。
【0095】
なお、本実施の形態に係る蛍光指紋測定装置は、前述の蛍光指紋測定方法に好適に使用できるものであるが、本実施の形態に係る蛍光指紋測定方法に用いる装置はこれに限定されるものではない。
【0096】
ここで、図10は、本実施の形態に係る蛍光指紋測定装置の構成の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。
【0097】
図10に示すように、蛍光指紋測定装置20は、少なくとも蛍光指紋取得装置10を備えている。蛍光指紋取得装置10は、蛍光指紋情報を取得する装置であり、分光照明装置11および分光検出装置12を備えている。
【0098】
また、蛍光指紋測定装置20は、蛍光指紋取得装置10で取得した蛍光指紋連続体情報から、測定対象物13のマーカーシグナルを検知する装置であり、メモリ21、制御部23、および、計算処理部24を備えており、測定者はキーボード・マウス22により、蛍光指紋取得装置10に測定条件等を入力する。
【0099】
ここで、図11は、蛍光指紋取得装置10の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。
【0100】
図11に示すように、蛍光指紋取得装置10は、光源110と分光装置112とを備えた分光照明装置11、および、分光装置122と蛍光指紋検出装置124とを備えた分光検出装置12を備えている。
【0101】
分光照明装置11は、測定対象物13に、所定の波長の励起光を照射して測定対象物13の成分から蛍光を生じさせる装置である。測定対象物13は、例えば、上述した1つのサンプルから抽出した成分の異なる複数のサンプルである。分光照明装置11は、照射する励起波長を任意に変える励起波長可変手段を有する。
【0102】
分光検出装置12は、所定の蛍光波長において、測定対象物13の蛍光強度を取得する。分光検出装置12は、測定対象物13が発した蛍光のうち、特定の蛍光波長を選択的に捕えて、蛍光強度を計測する。分光検出装置12は、観測する蛍光波長を任意に変える蛍光波長可変手段を有する。
【0103】
ここで、図10に戻り、蛍光指紋測定装置20について説明する。
【0104】
蛍光指紋測定装置20は、上述の蛍光指紋測定方法を実行するための装置である。図10に示すように、蛍光指紋測定装置20は、メモリ21、制御部23、および、計算処理部24を備えており、キーボード・マウス22、I/Oポート(例えば、USBポート等)26、および、ディスプレイ30等が接続されている。
【0105】
メモリ21は、蛍光指紋取得装置10の蛍光指紋検出装置124から蛍光指紋測定装置20へ転送され、計算処理部24の蛍光指紋連続体情報取得部24-1により取得された蛍光指紋連続体情報、ならびに、測定による実測値等を格納する。
【0106】
測定による実測値は、キーボード・マウス22またはI/Oポート26から入力することができる。
【0107】
制御部23は、測定者が入力した励起波長範囲、蛍光波長範囲、波長ピッチで測定対象物13の蛍光指紋を取得するように、分光照明装置11が照射する励起波長、および、分光検出装置12が観測する蛍光波長を調整する指示を行い、また、計算処理部24に処理を行うよう命令する。
【0108】
ここで、蛍光指紋取得装置10から転送された蛍光指紋連続体情報は、蛍光指紋測定装置20のメモリ21に格納される。
【0109】
計算処理部24は、蛍光指紋連続体情報取得部24-1、データ前処理部24-2、マーカーシグナル検出部24-3、および、成分推定部24-4を備える。
【0110】
ここで、蛍光指紋連続体情報取得部24-1は、1つのサンプルから抽出した成分の異なる複数のサンプル(測定対象物13)に対して、それぞれ、所定の励起波長範囲および所定の蛍光波長範囲で、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、複数のサンプルの蛍光強度を測定して、複数のサンプルの蛍光指紋情報を蛍光指紋連続体情報として取得する。
【0111】
データ前処理部24-2は、蛍光指紋連続体情報に対して、それぞれ、中心化、標準化、規格化、微分、ベースライン補正、および/または、平滑化の処理を行う。
【0112】
マーカーシグナル検出部24-3は、蛍光指紋連続体情報を説明変数、実測値を目的変数として多変量解析を行い、多変量解析の結果に基づいて、蛍光指紋に基づく指標値を推定し、推定に重要な波長領域であるマーカーシグナルを検出する。ここで、マーカーシグナル検出部24-3は、多変量解析として主成分回帰、クラスター分析、判別分析、SIMCA、重回帰分析、PLS回帰分析、PLS判別、SVM回帰、SVM判別、RF回帰、および/または、RF判別を行うことで、サンプルのマークシグナルを検出してもよい。また、多変量解析で得られる回帰係数、因子負荷量、ローディング、selectivity ratio、variable importance in projection、変数重要度、out of bag errorの1または複数の回帰・判別への寄与率を示す指標に基づき、マーカーシグナルの検出を行うことにしてもよい。
【0113】
成分推定部24-4は、測定者のキーボード・マウス22の操作に応じて、データベースや文献情報を参照して、マーカーシグナル検出部24-3で検出されたマークシグナルの成分を推定する。
【0114】
例えば、測定者がキーボード・マウス22を通じて、計算処理部24に対して処理を行うよう命令すると、まず、計算処理部24の蛍光指紋連続体情報取得部24-1が、メモリ21に格納された蛍光指紋連続体情報を抽出する。
【0115】
計算処理部24のマーカーシグナル検出部24-3は、抽出された蛍光指紋情報及び実測値に対して、(データ前処理部24-2による前処理の後)、多変量解析を行い、マーカーシグナルを検出する。本実施形態において、計算処理部24のマーカーシグナル検出部24-3は、例えば、多変量解析としてOPLS回帰分析を使用して、マーカーシグナルを検出してもよい。
【0116】
計算処理部24のマーカーシグナル検出部24-3は、多変量解析の結果を、メモリ21に格納してもよく、ディスプレイ30上に出力してもよく、プリンタ(図示せず)を介して印刷してもよい。
【0117】
計算処理部24の成分推定部24-4は、蛍光指紋のマーカーシグナルの成分を推定する。
【0118】
[実施例]
以下、図12から図20を参照して実施例について説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0119】
本実施例では、本発明の蛍光指紋測定方法を使用して、インドネシアで母乳分泌促進剤などとして使われてきた伝統薬であるPlectranthus ambonicus Lour(PA)の葉の活性成分を推定した事例について説明する。
【0120】
図12は、サンプル抽出工程(S11)の実施例を説明するためのサンプル抽出装置の一例を示す図、図13は、使用する溶媒の段階的な混合のタイムスケジュールを示す図である。
【0121】
図12に示すように、サンプル抽出工程では、上述のインドネシアの伝統薬の乾燥粉末1gを、メタノール洗浄済20-35 meshの海砂(Wako Pure Chemical Industry Ltd.,Osaka,Japan)5gと共に、ステンレススチールカラム(5cm長、2cm径)に充填し、グラジエントポンプ(例:Jasco PU-980 Gulliver HPLC pump(Jasco,Tokyo,Japan))により、ヘキサン、アセトン、水を段階的に混合した溶媒で、3ml/minの流量で、5分置きに画分を取得し、計75分抽出して、15種類の画分を取得した。より具体的には、図13に示すように、0-15分は、ヘキサン100%を、15-30分は、ヘキサン100%とアセトン100%の混合液を、30-45分は、アセトン100%を、45-60分は、アセトン100%と水100%の混合液を、60-75分は、水100%を使用した。
【0122】
これを3回繰り返して、45種類の画分を得た。45種類の画分に対して、遠心エバポレータ(例:Eyela Centrifugal Vaporizer CVE-200D, Tokyo Rikakikai Co.,Ltd.,Japan)で抽出溶媒を揮発させて、45種類の画分の乾固物を得た。これらの乾固物は、ジメチルスルホキシド(DMSO, Wako Pure Chemical Industry Ltd.,Osaka,Japan)500mLに再溶解して、45種類のサンプルを得た。サンプルは、1回目を「A」、2回目を「B」、3回目を「C」として、取得順に「1」~「15」とする。例えば、2回目の3番目に取得したサンプルは「B3」なる。
【0123】
図14は、蛍光指紋連続体取得工程(S12)の実施例を示す図である。図14に示すように、蛍光指紋連続体取得工程では、45種類のサンプルのそれぞれについて、1mLのサンプルを1mLのセル(FM20-SQ-3,GL Sciences Inc.,Tokyo,Japan)に入れ、F-7000型蛍光分光高度計により、励起光・蛍光共に、スリット幅は10nmとし、200-900nmの範囲及び波長10nm間隔で、それぞれ蛍光指紋情報を取得して、これにより、蛍光指紋連続体情報を取得した。波長のスキャンスピードとフォトマル電圧はそれぞれ、500nm/s、400Vに設定した。
【0124】
図15及び図16は、実測値測定工程(S13)の実施例を説明するための図である。
図15に示すように、DO11.10マウスから採取した脾臓免疫細胞を抗原である卵白アルブミンで刺激し、サンプルA1~C15(45個)をそれぞれ添加して72時間培養し、培養上清中の炎症性サイトカインであるIFN-γをELISA法で測定した。
【0125】
図16は、DMSOのみを添加した細胞培養上清のIFN-γ量を100%として、各サンプル添加群のIFN-γ産生量を相対値として示したものである。図16に示すように、ヘキサン抽出フラクション(1A,1B,1C)が最も強い抑制活性を示したが、5A,6A,6B,7B,11Aも抑制活性を示したことから活性成分は極性の高いものから低いものまで広範囲にわたることが示された。
【0126】
図17図18は、マーカーシグナル検出工程(S15)の実施例を説明するための図である。図17は、蛍光指紋連続体情報とIFN-γ産生抑制データのOPLS S-plotのグラフを示す図である。図18は、本実施例の蛍光指紋のマーカーシグナルを示す図である。図17に示すように、OPLS解析の結果、IFN-γ抑制活性のあるサンプルとないサンプルをスコアプロット上で分けることが出来た。なお本解析は、means of cross validation and permutation test.で妥当性が確認できた。図17のグラフからλex=265-275nm and λem=295-310nmのシグナルが活性の最も強いグループのマーカーであることが示された。図18において、横軸は、励起波長λex、縦軸は、蛍光波長λemを示しており、丸で囲った部分(λex=265-275nm and λem=295-310nm)がマーカーシグナルを示している。
【0127】
図19は、同じサンプルをヘキサンで抽出した場合の従来の蛍光指紋を示す図である。ヘキサン抽出物は、強いIFN-γを示すが、その蛍光指紋において、微弱ながらマーカーシグナルを検出することができた。すなわち、蛍光指紋連続体でマーカーシグナルを一度検出することで、これに基づいて通常の蛍光指紋でも微弱ながら確認することができる。逆に言うと、通常の蛍光指紋だけではこのマーカーシグナルを検出することは困難である。
【0128】
図20は、成分推定工程(S16)の実施例を示す図である。図20に示すように、文献情報や、NMRの解析情報から活性成分の候補として、アズリン酸、ウルソール酸、オレアノール酸、及びトルメンティック酸が推定された。これらの蛍光指紋を測定したところ、これらのシグナルは当該成分のエリア内に収まっていた。
【0129】
以上説明したように、本実施の形態によれば、1つのサンプルに対して、抽出条件を連続的に遷移させて成分の異なる複数のサンプルを抽出するサンプル抽出工程と、抽出した複数のサンプルに対して、それぞれ、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら蛍光強度を測定して、複数の蛍光指紋情報を蛍光指紋連続体情報として取得する蛍光指紋連続体情報取得工程と、を含んでいるので、蛍光指紋のマーカーシグナルを迅速、安価、及び高精度に検出することが可能となる。
【0130】
[他の実施の形態]
さて、これまで本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施の形態にて実施されてよいものである。
【0131】
また、実施の形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、或いは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0132】
このほか、上記文献中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0133】
また、蛍光指紋測定装置20に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0134】
例えば、蛍光指紋測定装置20の各装置が備える処理機能、特に計算処理部24にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、後述する記録媒体に記録されており、必要に応じて蛍光指紋測定装置20に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDなどのメモリ21などは、OS(Operating System)として協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0135】
また、このコンピュータプログラムは、蛍光指紋測定装置20に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0136】
また、本発明に係るプログラムを、コンピュータにて読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USBメモリ、SDカード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM、EEPROM、CD-ROM、MO、DVD、および、Blu-ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0137】
また、「プログラム」とは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードやバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OS(Operating System)に代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものも含む。なお、実施の形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成、読み取り手順、あるいは、読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0138】
メモリ21に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラムやテーブルやデータベースやウェブページ用ファイル等を格納する。
【0139】
また、蛍光指紋測定装置20は、既知のパーソナルコンピュータ、ワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、該情報処理装置に任意の周辺装置を接続して構成してもよい。また、蛍光指紋測定装置20は、該情報処理装置に本発明の方法を実現させるソフトウェア(プログラム、データ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0140】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じて、または、機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【符号の説明】
【0141】
10 蛍光指紋取得装置
11 分光照明装置
110 光源
112 分光装置
12 分光検出装置
122 分光装置
124 蛍光指紋検出装置
13 測定対象物
20 蛍光指紋測定装置
21 メモリ
22 キーボード・マウス
23 制御部
24 計算処理部
24-1 蛍光指紋連続体情報取得部
24-2 データ前処理部
24-3 マーカーシグナル検出部
24-4 成分推定部
26 I/Oポート
30 ディスプレイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20