(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】搬送装置、および、処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20230111BHJP
C23C 14/56 20060101ALI20230111BHJP
C23C 16/54 20060101ALI20230111BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20230111BHJP
C23C 14/50 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
H01L21/68 A
C23C14/56 G
C23C16/54
C23C16/44 F
C23C14/50 K
(21)【出願番号】P 2018196780
(22)【出願日】2018-10-18
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】林 利典
(72)【発明者】
【氏名】岩井 治憲
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良直
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-154866(JP,A)
【文献】特開2001-127133(JP,A)
【文献】特表2017-513221(JP,A)
【文献】国際公開第2018/135792(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
C23C 14/56
C23C 16/54
C23C 16/44
C23C 14/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理装置に適用されて、搬送対象を搬送する搬送装置であって、
前記処理装置は、搬送室と、前記搬送室に接続された複数の処理室を備え、
前記搬送装置は、
前記搬送室内に配置され、回転軸を中心として第1回転方向と前記第1回転方向とは反対の回転方向である第2回転方向とに搬送レールを回転させる回転部と、
前記搬送室内に配置され、前記回転部によって回転させられている間は、前記搬送対象を保持することが可能であり、かつ、
前記搬送レールの延在方向に前記処理室が位置して停止している間は、前記搬送レールの延在方向に沿った前記搬送対象のスライドを許容して、前記搬送室と前記搬送レールの延在方向に位置する処理室との間において前記搬送対象を搬送する前記搬送レールと、
前記搬送室に対する位置が固定された駆動部であって、前記搬送レールの一部が前記駆動部上で停止している間は、前記搬送レールと前記駆動部とが接続されて、前記搬送レールを駆動するための動力を前記搬送レールに与え、かつ、前記搬送レールが回転している間は、前記搬送レールに接続されない前記駆動部と、を備え
、
前記搬送レールは、第1搬送レールであり、
前記第1搬送レールに沿って延びる第2搬送レールをさらに備え、
前記第1搬送レールと前記第2搬送レールとは、前記搬送レールの延在方向と直交する方向に沿って並び、
前記回転部は、前記第1搬送レールと前記第2搬送レールとの対を一体に回転させ、
前記第1搬送レールと前記第2搬送レールとのいずれか一方を、前記搬送対象を搬送する搬送レールに選択する選択部をさらに備え、
前記回転部は、前記対の中心が前記回転軸に対して偏心した状態で前記対を回転させる状態を含む
搬送装置。
【請求項2】
前記搬送レールは、前記駆動部に接続して前記駆動部からの動力が入力される入力部を、前記回転軸を挟んで両方の端部に1ずつ備える
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記搬送室は、鳥瞰視において、2×n(nは2以上の整数)角形状を有し、
前記搬送装置は、前記搬送室において前記回転軸を中心に等配されたn個の前記駆動部を備え、
前記処理装置は、2×n個の処理室を備え、
各処理室は、前記回転軸を中心に等配され、前記回転軸を挟んで対向する一対の処理室に対し1つずつ前記駆動部が対応付けられ、
各駆動部は、当該駆動部に対応付けられた各処理室と前記搬送室との間において前記搬送対象を搬送するための前記動力を前記搬送レールに与える
請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記複数の処理室は、第1の処理室と第2の処理室とを含み、
前記第1搬送レールと前記第2搬送レールとのうち、前記搬送対象を搬送する搬送レールに選択されたレールが被選択レールであり、
前記選択部は、前記第1搬送レールおよび前記第2搬送レールのいずれかの延在方向に前記第1の処理室が位置可能であるように前記搬送レールの延在方向と直交する方向に前記対をスライドさせることによって、前記被選択レールを選択し、かつ、前記対の中心を前記回転軸に対して偏心させ、
前記回転部は、前記中心が前記回転軸に対して偏心した状態で前記対を回転させ、これによって、前記対の回転前において、前記被選択レールの延在方向に前記第1の処理室が位置し、かつ、前記対の回転後において、前記被選択レールの延在方向に前記第2の処理室が位置することが可能に構成される
請求項1から3のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項5】
搬送室と、
前記搬送室に接続された複数の処理室と、
請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送装置と、を備える
処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置、および、搬送装置を備える処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クラスター型の処理装置は、搬送室と、搬送室に接続された複数の処理室とを備えている。複数の処理室は、搬送室の周方向において、所定の間隔を空けて配置されている。複数の処理室は、例えば、処理対象を加熱する加熱室、スパッタ法を用いて処理対象に薄膜を形成するスパッタ室などを含む。複数の処理室は、第1処理室と、搬送室の径方向において、第1処理室とは対向しない第2処理室とを含む。処理装置は、搬送室と各処理室との間において処理対象を搬送するための搬送装置を備えている。
【0003】
搬送装置が第1処理室から第2処理室に向けて処理対象を搬送するときには、まず、搬送装置は、第1処理室に配置された成膜対象を搬送室に搬送する。次いで、搬送装置は、搬送室のなかで成膜対象を1つの回転方向に沿って回転させることによって、成膜対象を、搬送室の径方向のなかで、第2処理室が延びる方向と平行な方向に沿う位置に配置する。最後に、搬送装置は、搬送室から第2処理室に向けて処理対象を搬送する(例えば、特許文献1,2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-28999号公報
【文献】特開2014-148736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、処理装置では、処理対象に対する処理効率を高める上で、処理対象、言い換えれば、搬送装置による搬送対象の搬送効率を高めることが求められている。
本発明は、搬送対象の搬送効率を高めることを可能とした搬送装置、および、処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための搬送装置は、処理装置に適用されて、搬送対象を搬送する搬送装置である。前記処理装置は、搬送室と、前記搬送室に接続された複数の処理室を備える。前記搬送装置は、前記搬送室内に配置され、回転軸を中心として第1回転方向と前記第1回転方向とは反対の回転方向である第2回転方向とに搬送レールを回転させる回転部と、前記搬送室内に配置され、前記回転部によって回転させられている間は、前記搬送対象を保持することが可能であり、かつ、搬送レールの延在方向に前記処理室が位置して停止している間は、前記搬送レールの延在方向に沿った前記搬送対象のスライドを許容して、前記搬送室と前記搬送レールの延在方向に位置する処理室との間において前記搬送対象を搬送する前記搬送レールと、前記搬送室に対する位置が固定された駆動部であって、前記搬送レールの一部が前記駆動部上で停止している間は、前記搬送レールと前記駆動部とが接続されて、前記搬送レールを駆動するための動力を前記搬送レールに与え、かつ、前記搬送レールが回転している間は、前記搬送レールに接続されない前記駆動部と、を備える。
【0007】
上記課題を解決するための処理装置は、搬送室と、前記搬送室に接続された複数の処理室と、上記搬送装置と、を備える。
上各記構成によれば、搬送対象を第1回転方向に回転させることによって、搬送室を介して第1処理室から第2処理室に搬送対象を搬送することも可能であるし、搬送室を介して第2処理室から第1処理室に搬送対象を搬送することも可能である。さらには、搬送対象を第2回転方向に回転させることによって、搬送室を介して第1処理室から第2処理室に搬送対象を搬送することも可能であるし、搬送室を介して第2処理室から第1処理室に搬送対象を搬送することも可能である。このように、上記構成によれば、搬送対象の回転方向が限定されないことによって、搬送方向の自由度が高まることにより、搬送対象の搬送効率を高めることが可能である。
【0008】
上記搬送装置において、前記搬送レールは、前記駆動部に接続して前記駆動部からの動力が入力される入力部を、前記回転軸を挟んで両方の端部に1ずつ備えてもよい。上記構成によれば、搬送レールにおける入力部の位置が、搬送レールの回転方向に依存しないため、入力部に接続する駆動部の位置について自由度を高めることができる。
【0009】
上記搬送装置において、前記搬送室は、鳥瞰視において、2×n(nは2以上の整数)角形状を有し、前記搬送装置は、前記搬送室において前記回転軸を中心に等配されたn個の前記駆動部を備え、前記処理装置は、2×n個の処理室を備え、各処理室は、前記回転軸を中心に等配され、前記回転軸を挟んで対向する一対の処理室に対し1つずつ前記駆動部が対応付けられ、各駆動部は、当該駆動部に対応付けられた各処理室と前記搬送室との間において前記搬送対象を搬送するための前記動力を前記搬送レールに与えてもよい。
【0010】
上記構成によれば、搬送レールの回転方向によらず、搬送室から一対の処理室への搬送を1つの駆動部によって行うことが可能であるため、搬送装置が備える駆動部の数が増えることが抑えられる。
【0011】
上記搬送装置において、前記搬送レールは、第1搬送レールであり、前記第1搬送レールに沿って延びる第2搬送レールをさらに備え、前記第1搬送レールと前記第2搬送レールとは、前記第1搬送レールが延びる方向と直交する方向に沿って並び、前記回転部は、前記第1搬送レールと前記第2搬送レールとを一体に回転させ、前記第1搬送レールと前記搬送レールとのいずれか一方を、前記搬送対象を搬送する搬送レールに選択する選択部をさらに備えてもよい。
【0012】
上記構成によれば、第1搬送レールを用いた搬送対象の搬送と、第2搬送レールを用いた搬送対象の搬送とを同時に行うことが可能である。これにより、搬送装置が搬送レールを1つのみ備える場合に比べて、搬送対象の搬送効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態の搬送装置を備える真空処理装置の構成を示すブロック図。
【
図2】回転部およびスライド部の構成を示すブロック図。
【
図5】搬送レールを上面視した場合の搬送レールの構造を示す平面図。
【
図6】搬送レールを側面視した場合の搬送レールの構造を示す平面図。
【
図7】搬送レールの端部と対向する方向から見た搬送レールの構造を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1から
図16を参照して、搬送装置、および、処理装置の一実施形態を説明する。以下では、処理装置を真空雰囲気において各種の処理を行う真空処理装置として具体化した場合の一実施形態を説明する。また、以下では、真空処理装置の構成、搬送装置の構成、および、搬送装置の作用を順に説明する。
【0015】
[真空処理装置の構成]
図1を参照して、真空処理装置の構成を説明する。
真空処理装置10は、搬送室11、複数の処理室、および、搬送装置20を備えている。複数の処理室は、搬送室11に接続されている。
【0016】
本実施形態では、真空処理装置10は、第1処理室12A、第2処理室12B、第3処理室12C、第4処理室12D、および、第5処理室12Eを備えている。第1処理室12Aから第5処理室12Eは、搬送室11の周方向において、間隔を空けて並んでいる。なお、真空処理装置10が備える処理室の数は、2以上の任意の数であってよい。
【0017】
搬送装置20は、上述したように真空処理装置10に適用される。搬送装置20は、搬送対象Tを搬送する。本実施形態では、搬送対象Tは、キャリアと、キャリアに取り付けられた処理対象とから構成される。処理対象は、例えば、ガラス基板および樹脂基板のいずれかである。搬送装置20は、搬送対象Tを起立させた状態で、言い換えれば、搬送装置20は、鉛直方向に沿って延びる平面と、搬送対象Tが広がる平面とが形成する角度が10°以下である状態で、搬送対象Tを搬送する。
【0018】
搬送装置20は、回転部21、搬送レール22、および、駆動部23を備えている。回転部21は、搬送室11内に配置されている。回転部21は、回転軸Aを中心として第1回転方向と、第2回転方向とに搬送レール22を回転させる。第2回転方向は、第1回転方向とは反対の回転方向である。
【0019】
搬送レール22は、搬送室11内に配置されている。搬送レール22は、回転部21によって回転させられている間は、搬送対象Tを保持することが可能である。これに対して、搬送レール22は、搬送レール22の延在方向に処理室が位置して停止している間は、搬送レール22の延在方向に沿った搬送対象Tのスライドを許容する。延在方向は、搬送レール22が延びる方向である。これによって、搬送レール22は、搬送室11と搬送レール22の延在方向に位置する処理室との間において搬送対象Tを搬送する。
【0020】
真空処理装置10は、上述したように、第1処理室12Aから第5処理室12Eまでの5つの処理室を備えている。搬送装置20は、搬送室11と、第1処理室12A、第2処理室12B、第3処理室12C、第4処理室12D、および、第5処理室12Eのいずれかとの間において搬送対象Tを搬送することができる。搬送レール22は、搬送室11から各処理室に向けて搬送対象Tし、かつ、各処理室から搬送室11に向けて搬送対象Tを搬送する。
【0021】
駆動部23において、搬送室11に対する位置が固定されている。駆動部23は、搬送レール22の一部が駆動部23上で停止している間は、搬送レール22と駆動部23とが接続されて、搬送レール22を駆動するための動力を搬送レールに与える。駆動部23は、搬送レール22が回転している間は、搬送レール22に接続されない。駆動部23は、搬送レール22に延在方向に沿って搬送対象Tをスライドさせるための動力を与える。
【0022】
これにより、例えば、搬送対象Tを第1回転方向に回転させることによって、搬送室11を介して第1処理室12Aから第2処理室12Bに搬送対象Tを搬送することも可能であるし、搬送室11を介して第2処理室12Bから第1処理室12Aに搬送対象Tを搬送することも可能である。さらには、搬送対象Tを第2回転方向に回転させることによって、搬送室11を介して第1処理室12Aから第2処理室12Bに搬送対象Tを搬送することも可能であるし、搬送室11を介して第2処理室12Bから第1処理室12Aに搬送対象Tを搬送することも可能である。このように、上記構成によれば、搬送対象Tの回転方向が限定されないことによって、搬送方向の自由度が高まることにより、搬送対象Tの搬送効率を高めることが可能である。
【0023】
本実施形態において、真空処理装置10は、搬出入室13、大気加熱室14、真空加熱室15、複数のゲートバルブ16、および、複数の排気部17をさらに備えている。搬出入室13、大気加熱室14、および、真空加熱室15は、1つの方向に沿って並んでいる。真空加熱室15は、搬送室11に接続される処理室の一例である。各処理室の間には、複数のゲートバルブ16のうちの1つが配置されている。各ゲートバルブ16が開くことによって、そのゲートバルブ16を介して隣り合う2つの処理室の間において、流体が流通する。各ゲートバルブ16が閉じることによって、そのゲートバルブ16を介して隣り合う2つの処理室の間において、流体の流通が遮断される。
【0024】
排気部17は、真空加熱室15、搬送室11、第1処理室12A、第2処理室12B、第3処理室12C、第4処理室12D、および、第5処理室12Eに1つずつ搭載されている。排気部17は、例えばバルブと真空ポンプを含んでいる。排気部17は、その排気部17が搭載された処理室中の流体を排気することによって、処理室内の圧力を減圧する。
【0025】
大気加熱室14、真空加熱室15、および、第4処理室12Dは、それぞれ加熱部31を備えている。大気加熱室14、および、真空加熱室15は、処理前の処理対象を加熱することによって、処理対象に処理対象が吸着したガスを放出させる。なお、大気加熱室14は大気雰囲気において処理対象を加熱する一方で、真空加熱室15は真空雰囲気において処理対象を加熱する。これにより、各処理室におけるガスの蒸気圧が異なるため、一方の加熱室を備える場合よりも、処理対象に吸着したガスが、処理対象から放出されやすい。第4処理室12Dは、他の処理での処理後の処理対象を加熱する。これによって、第4処理室12Dは、処理対象の状態を加熱前の状態とは異なる状態に変化させる。
【0026】
第1処理室12A、第3処理室12C、および、第5処理室12Eは、それぞれカソード32を備えている。カソード32は、ターゲットを含んでいる。各カソード32が備えるターゲットは、互いに同じ材料から形成されてもよいし、互いに異なる材料から形成されてもよい。各ターゲットを形成する材料は、金属、金属化合物、非金属、および、非金属化合物であってよい。各ターゲットを形成する材料が互いに同じである場合には、真空処理装置10において、処理対象の処理効率を高めることができる。各ターゲットを形成する材料が互いに異なる場合には、真空処理装置10において、処理対象に複数種の薄膜を形成することができる。
【0027】
第2処理室12Bは、照射部33を備えている。照射部33は、処理対象にイオンビームを照射する。照射部33は、処理対象にイオンビームを照射することによって、処理対象、または、処理対象に形成された薄膜を改質することができる。
【0028】
なお、第1処理室12Aから第5処理室12Eの各々において行われる処理は、各処理室12A~12Eにて行うことが可能な処理の一例である。各処理室12A~12Eにおいて行われる処理は、真空処理装置10を用いて製造する製造物に応じて任意に選択可能である。
【0029】
搬送室11は、鳥瞰視において、すなわち、搬送室11の底面と対向する平面視において、(2×n)(nは2以上の整数)角形状を有する。搬送装置20は、搬送室11において回転軸Aを中心に等配されたn個の駆動部23を備えている。真空処理装置10は、2×n個の処理室を備えている。各処理室は、回転軸Aを中心に等配され、回転軸Aを挟んで対向する一対の処理室に対し1つずつ駆動部23が対応付けられている。各駆動部23は、当該駆動部23に対応付けられた各処理室と搬送室11との間において搬送対象Tを搬送するための動力を搬送レール22に与える。
【0030】
本実施形態において、搬送室11は、鳥瞰視において六角形状を有している。すなわち、本実施形態において、上述したnは3であり、搬送室11は、3組の対角線を含んでいる。真空処理装置10は、3つの駆動部23を備えている。6つの処理室12A~12E,15のなかで、真空加熱室15と第4処理室12Dとが、回転軸Aを挟んで対向する一対の処理室であり、第1の処理室対である。第1処理室12Aと第3処理室12Cとが、回転軸Aを挟んで対向する一対の処理室であり、第2の処理室対である。第2処理室12Bと第5処理室12Eとが、回転軸Aを挟んで対向する一対の処理室であり、第3の処理室対である。各処理室対に、1つの駆動部23が対向付けられている。
【0031】
本実施形態において、第1の処理室対に対応付けられた駆動部23は、真空加熱室15と第4処理室12Dとが回転軸Aを挟んで対向する方向において、回転軸Aよりも真空加熱室寄りに位置している。第2の処理室対に対応付けられた駆動部23は、第1処理室12Aと第3処理室12Cとが回転軸Aを挟んで対向する方向において、回転軸Aよりも第1処理室12A寄りに位置している。第3の処理室対に対応付けられた駆動部は、第2処理室12Bと第5処理室12Eとが回転軸Aを挟んで対向する方向において、回転軸Aよりも第5処理室12E寄りに位置している。
【0032】
搬送装置20は、複数の搬送レール24をさらに備えている。真空処理装置10のなかで、大気加熱室14、真空加熱室15、第1処理室12A、第2処理室12B、第3処理室12C、第4処理室12D、および、第5処理室12Eの各々に、搬送レール24が1つずつ配置されている。真空加熱室15、第1処理室12A、第2処理室12B、第3処理室12C、第4処理室12D、および、第5処理室12Eの各々に配置された搬送レール24は、搬送室11と各処理室との間における搬送対象Tの搬送を行う。大気加熱室14に配置された搬送レール24は、大気加熱室14と真空加熱室15との間における搬送対象Tの搬送を行う。
【0033】
真空処理装置10は、制御部10Cをさらに備えている。制御部10Cは、真空処理装置10が備える各部に電気的に接続することによって、真空処理装置10の駆動を制御する。制御部10Cは、搬送装置20に電気的に接続している。
【0034】
[搬送装置の構成]
図2から
図7を参照して、搬送装置20の構成をより詳しく説明する。以下では、搬送装置20が備える回転部21、スライド部、および、搬送レール22のそれぞれの構成を順に説明する。
【0035】
[回転部およびスライド部]
図2から
図4を参照して、回転部21およびスライド部の構成を説明する。
図2は、搬送レール22の端部と対向する方向から見た回転部21およびスライド部の構造を模式的に示している。言い換えれば、
図2は、搬送レール22の延在方向に沿って回転部21およびスライド部を視認した場合の回転部21およびスライド部の構造を示している。
図3は、回転部21の作用を説明するための図であり、また、
図4は、スライド部の作用を説明するための図である。なお、
図3では、図示の便宜上、真空処理装置10の構成における一部が省略されている。
【0036】
図2が示すように、搬送装置20は、回転部21とスライド部25とを備えている。回転部21は、モーター21Aとスライド支持部21Bとを備えている。モーター21Aは、回転軸Aを中心として第1回転方向R1と第2回転方向R2とに回転する。第2回転方向R2は、第1回転方向R1とは反対の回転方向である。本実施形態において、回転軸Aは、搬送室11の底面の法線方向に沿って延びる直線であり、かつ、鳥瞰視において、搬送室11の中心を通る直線である。
【0037】
スライド支持部21Bは、モーター21Aとスライド部25とに接続されている。これにより、スライド支持部21Bは、スライド部25を支持し、かつ、スライド部25が、モーター21Aの回転に応じて、第1回転方向R1または第2回転方向R2に回転する。
【0038】
スライド部25は、エアシリンダー25A、スライダー25B、および、レール支持部25Cを備えている。エアシリンダー25Aは、大気ボックス25A1とロッド25A2とを備えている。大気ボックス25A1は、ロッド25A2に接続されるシリンダーを含んでいる。エアシリンダー25Aにおいて、シリンダーに供給される圧縮空気に応じて、大気ボックス25A1に対するロッド25A2の突出量が変わる。ロッド25A2の突出量は、ロッド25A2の先端と大気ボックス25A1との間の距離である。
【0039】
スライダー25Bは、大気ボックス25A1のなかで、スライド支持部21Bが接続される部位とは反対側の部位に固定されている。スライダー25Bは、レール25B1とキャリア25B2とを含んでいる。レール25B1は、ロッド25A2が延びる方向と平行な方向に沿って延びている。キャリア25B2は、レール25B1に沿った移動が可能な状態で、レール25B1に接続されている。
【0040】
レール支持部25Cは、ロッド25A2の先端と、キャリア25B2とに接続されている。そのため、ロッド25A2の突出量が変わることによって、キャリア25B2がレール25B1に沿って移動する。このように、レール支持部25Cが、ロッド25A2の先端と、キャリア25B2に接続されることによって、ロッド25A2の延びる方向に沿うロッド25A2の動きと、キャリア25B2の動きとが連動する。
【0041】
レール支持部25Cにおいて、キャリア25B2が接続される部位とは反対側の部位には、2つの搬送レール22が固定されている。そのため、レール支持部25Cがレール25B1に沿って移動することによって、搬送レール22もレール25B1に沿って移動する。搬送レール22は、スライド部25およびスライド支持部21Bを介してモーター21Aに接続されている。そのため、搬送レール22は、モーター21Aの回転に応じて第1回転方向R1または第2回転方向R2に回転する。
【0042】
このように、搬送レール22は、搬送レール22の延在方向とは直交する方向に沿ってスライドする。すなわち、ロッド25A2が延びる方向、および、レール25B1が延びる方向は、搬送レール22の延在方向とは直交する方向である。
【0043】
図3が示すように、モーター21Aが回転することによって、搬送レール22が、回転軸Aを中心に第1回転方向R1または第2回転方向R2に回転する。なお、
図3は、2つの搬送レール22における中心と回転軸Aとが一致する状態で搬送レール22が回転する例を示しているが、2つの搬送レール22は、2つの搬送レール22における中心が回転軸Aに対して偏心した状態で回転することもできる。
【0044】
図4が示すように、スライド部25は、搬送レール22の延在方向と直交する方向に沿って、搬送レール22をスライドさせることができる。なお、
図4(a)が示すように、スライド部25は第1の方向に沿って搬送レール22をスライドさせることが可能であり、かつ、
図4(b)が示すように、第2の方向に沿って搬送レール22をスライドさせることが可能である。第2の方向は、第1の方向とは反対の方向である。
【0045】
また、スライド部25は、搬送レール22をスライドさせることによって、2つの搬送レール22のなかで、ゲートバルブ16と対向する搬送レール22を選択することができる。言い換えれば、搬送レール22の延在方向にいずれかの処理室を位置させる搬送レール22を選択することができる。
図4(a)が示すように、スライド部25は、2つの搬送レール22における一方の搬送レール22をゲートバルブ16と対向する搬送レール22に選択し、
図4(b)が示すように、スライド部25は、2つの搬送レール22における他方の搬送レール22をゲートバルブ16と対向する搬送レール22に選択する。これにより、2つの搬送レール22のなかで、搬送室11から処理室に搬送対象Tを搬送する搬送レール22を選択する。つまり、本実施形態において、スライド部25は、2つの搬送レール22のいずれか一方を、搬送対象Tを搬送室11から処理室に搬送する搬送レール22に選択する選択部の一例である。
【0046】
[搬送レール]
図5から
図7を参照して、搬送レール22の構成を説明する。
図5は、搬送室11を鳥瞰視した場合の、言い換えれば、搬送室11を上面視した場合の搬送レール22の構造を示している。
図6は、搬送レール22を側面視した場合の、言い換えれば、
図5に示す搬送レール22を紙面の下方から上方に向かう方向から見た場合の搬送レール22の構造を示している。
図7は、搬送レール22の端部と対向する方向から見た場合の、言い換えれば、
図5に示す搬送レール22を紙面の左から右に向かう方向から見た場合の搬送レール22の構造を示している。
【0047】
図5が示すように、真空処理装置10は、第1搬送レール22Aと、第2搬送レール22Bとを備えている。第2搬送レール22Bは、第1搬送レール22Aに沿って延びる。第1搬送レール22Aと第2搬送レール22Bとは、第1搬送レール22Aが延びる方向と直交する方向に沿って並ぶ。回転部21は、第1搬送レール22Aと第2搬送レール22Bとを一体に回転させる。そのため、第1搬送レール22Aを用いた搬送対象Tの搬送と、第2搬送レール22Bを用いた搬送対象Tの搬送とを同時に行うことが可能である。これにより、搬送装置20が搬送レールを1つのみ備える場合に比べて、搬送対象Tの搬送効率を高めることができる。
【0048】
なお、第1搬送レール22Aと第2搬送レール22Bとは、搬送室11において配置される位置が違いに異なる一方で、搬送対象Tの搬送に関する構成は共通している。そのため以下では、第1搬送レール22Aの構成を詳しく説明する一方で、第2搬送レール22Bの構成の詳しい説明を省略する。
【0049】
搬送レール22は、一対の枠体41を備えている。各枠体41は、1つの方向に沿って延びる板状を有している。枠体41が延びる方向が、搬送レール22の延在方向である。回転軸Aは、搬送レール22の延在方向において、搬送レール22の中央に位置している。搬送レール22は、伝達軸42をさらに備えている。伝達軸42は、枠体41が延びる方向と平行な方向に沿って延びている。
【0050】
搬送レール22は、一対の第1ギヤ対43を備えている。一対の第1ギヤ対43は、一対の枠体41の間に配置されている。第1ギヤ対43は、枠体41の両方の端部に1つずつ位置している。第1ギヤ対43は、第1ギヤ43Aと第2ギヤ43Bとから構成されている。第1ギヤ43Aおよび第2ギヤ43Bは、それぞれベベルギヤである。第1ギヤ43Aは、鉛直方向に沿って延びる軸とともに回転する一方で、第2ギヤ43Bは、水平方向に沿って延びる軸とともに回転する。第2ギヤ43Bが第1ギヤ43Aに噛み合うことによって、第1ギヤ43Aの回転が、第2ギヤ43Bに伝達される、または、第2ギヤ43Bの回転が、第1ギヤ43Aに伝達される。
【0051】
搬送レール22は、一対の第2ギヤ対44を備えている。第2ギヤ対44は、伝達軸42の両方の端部に1つずつ配置されている。第2ギヤ対44は、第1ギヤ44Aと第2ギヤ44Bとから構成されている。第1ギヤ44Aおよび第2ギヤ44Bは、それぞれベベルギヤである。第1ギヤ44Aは、第1ギヤ対43の第2ギヤ43Bが固定された軸の端部に固定されている。第2ギヤ44Bは、伝達軸42の端部、または、端部の近傍に固定されている。第2ギヤ44Bが第1ギヤ44Aに噛み合うことによって、第1ギヤ44Aの回転が、第2ギヤ44Bに伝達される、または、第2ギヤ44Bの回転が第1ギヤ44Aに伝達される。
【0052】
搬送レール22は、一対の第3ギヤ対45を備えている。第3ギヤ対45は、伝達軸42に対して、一対の第2ギヤ対44よりも内側に配置されている。第3ギヤ対45は、第1ギヤ45Aと第2ギヤ45Bとから構成されている。第1ギヤ45Aおよび第2ギヤ45Bは、それぞれベベルギヤである。第1ギヤ45Aは、伝達軸42に固定され、伝達軸42とともに回転する。第2ギヤ45Bは、一対の枠体41の間に配置されたローラー46が有する軸の端部に固定されている。ローラー46は、第2ギヤ45Bを介して伝達軸42の回転が伝達されることによって回転する。
【0053】
搬送レール22は、複数のローラー47をさらに備えている。各ローラー47は、一対の枠体41に固定されている。搬送レール22は、例えば4つのローラー47を備えている。各ローラー47は、そのローラー47上を搬送対象Tがスライドすることによって回転する。
【0054】
図6が示すように、一対の枠体41には、筒状を有した保護部48が、両方の端部に1つずつ接続されている。保護部48は、枠体41が延びる方向と直交する方向に沿って延びている。言い換えれば、保護部48は、鉛直方向に沿って延びている。保護部48の内部には、入力軸49が位置している。入力軸49は駆動部23に接続されることによって、駆動部23からの動力を入力する。すなわち、本実施形態において、入力軸49は入力部の一例である。
【0055】
このように、搬送レール22は、駆動部23に接続して駆動部23からの動力が入力される入力軸49を、回転軸Aを挟んで両方の端部に1ずつ備えている。これにより、搬送レール22における入力軸49の位置が、搬送レール22の回転方向に依存しないため、入力軸49に接続する駆動部23の位置について自由度を高めることができる。
【0056】
図7は、搬送レール22が停止している場合の一例を示している。
図7では、搬送レール22の一部である入力軸49が駆動部23上に位置する状態で、搬送レール22が停止している状態を示している。
【0057】
図7が示すように、駆動部23は、モーター23Aと、モーター23Aに接続された伝達軸23Bとを備えている。モーター23Aは、搬送室11のチャンバー11Aよりも外側に位置している。これに対して、伝達軸23Bにおいて、モーター23Aに接続される端部はチャンバー11Aよりも外側に位置する一方で、入力軸49に接続される端部はチャンバー11Aの内部に位置している。伝達軸23Bは、チャンバー11Aの貫通孔11A1を通って、チャンバー11Aよりも外側からチャンバー11A内まで延びている。入力軸49のなかで、伝達軸23Bに接続される端部とは反対側の端部には、上述した第1ギヤ対43の第1ギヤ43Aが固定されている。
【0058】
第1搬送レール22Aが搬送対象Tを搬送するときには、第1搬送レール22Aが、入力軸49を駆動部23の上方に位置させた状態で停止している。そして、伝達軸23Bと入力軸49とが接続される。次いで、モーター23Aが回転し、これによって、モーター23Aの回転が、伝達軸23Bを介して入力軸49に伝達される。そして、第1ギヤ対43の第1ギヤ43Aが回転し、第1ギヤ43Aの回転が第2ギヤ43Bに伝達される。これにより、第2ギヤ対44の第1ギヤ44Aが回転し、第2ギヤ対44の第2ギヤ44Bが回転することによって、伝達軸42が回転する。伝達軸42の回転は、第3ギヤ対45の第1ギヤ45Aおよび第2ギヤ45Bを通じて、ローラー46の回転に変換される。
【0059】
なお、搬送室11のチャンバー11Aが有する貫通孔11A1と伝達軸23Bとの間は、図示されない封止部によって封止されている。これにより、搬送室11内の圧力を減圧することが可能である。
【0060】
[搬送装置の作用]
図8から
図16を参照して、搬送装置20の作用を説明する。以下では、まず、
図8から
図13を参照して、搬送対象Tを、真空加熱室15、第1処理室12A、および、第2処理室12Bの順に搬送する場合の搬送装置20の作用を説明する。次いで、
図14から
図16を参照して、第1の搬送対象Tを、第1処理室12Aから搬送室11に搬送した後に、第2の搬送対象Tを、真空加熱室15から搬送室11に搬送する場合の搬送装置20の作用を説明する。なお、
図8から
図16では、図示の便宜上、真空処理装置10の構成における一部が省略されている。また、
図8から
図16では、搬送レール22に動力を与えている駆動部23にドットが付されている。
【0061】
なお、以下に説明する各部の動作は、制御部10Cが各部に対して出力する制御信号に基づいて行われる。
図8が示すように、真空加熱室15から搬送室11に搬送対象Tを搬送する場合には、真空加熱室15と搬送室11との間に配置されたゲートバルブ16が開く。次いで、真空加熱室15と第4処理室12Dとに対応付けられた駆動部23が、第2搬送レール22Bが備える一方の入力軸49に接続することによって、搬送対象Tを搬送するための動力を第2搬送レール22Bに与える。このとき、真空加熱室15の搬送レール24にも、搬送対象Tを搬送するための動力が与えられる。これにより、搬送対象Tが、真空加熱室15から搬送室11に向けて搬送される。
【0062】
図9が示すように、回転部21が、第2搬送レール22Bを第2回転方向R2に回転させる。第2搬送レール22Bは、第1搬送レール22Aと一体に回転する。回転部21は、第2搬送レール22Bを、搬送室11と第1処理室12Aとの間のゲートバルブ16と対向する位置まで回転させる。言い換えれば、回転部21は、第2搬送レール22Bの延在方向に第1処理室12Aが位置する状態で、第1搬送レール22Aおよび第2搬送レール22Bの回転を停止する。このとき、真空加熱室15から搬送室11に搬送対象Tが搬送されたときから継続して、第2搬送レール22Bが、搬送室11から第1処理室12Aに搬送対象Tを搬送する搬送レールに選択されている。そのため、搬送対象Tが搬送室11から第1処理室12Aに搬送される間において、スライド部25は駆動されない。
【0063】
図10が示すように、搬送室11から第1処理室12Aに搬送対象Tを搬送する場合には、搬送室11と第1処理室12Aとの間に配置されたゲートバルブ16が開く。次いで、第1処理室12Aと第3処理室12Cとに対応付けられた駆動部23が、真空加熱室15から搬送室11に搬送対象Tを搬送したときと同一の入力軸49に接続する。これにより、駆動部23が、搬送対象Tを搬送するための動力を第2搬送レール22Bに与える。このとき、第1処理室12Aの搬送レール24にも、搬送対象Tを搬送するための動力が与えられる。これにより、搬送対象Tが、搬送室11から第1処理室12Aに向けて搬送される。
【0064】
図11が示すように、搬送対象Tが搬送室11から第1処理室12Aに搬送された後、搬送室11と第1処理室12Aとの間のゲートバルブ16が閉じる。次いで、第1処理室12Aにおいて、搬送対象Tに対して所定の処理が行われる。本実施形態では、第1処理室12Aでの処理が終了するまでの間において、第1搬送レール22Aおよび第2搬送レール22Bは、搬送対象Tを搬送室11から第1処理室12Aに搬送したときと同じ位置に配置される。なお、第1処理室12Aでの処理が終了するまでの間において、第1搬送レール22Aおよび第2搬送レール22Bは、搬送対象Tを搬送室11から第1処理室12Aに搬送したときとは異なる位置に配置されてもよい。また、第1処理室12Aでの処理が終了するまでの間において、第1搬送レール22Aおよび第2搬送レール22Bは、第1処理室12Aに配置された搬送対象Tとは異なる搬送対象Tを、搬送室11と処理室との間において搬送してもよい。
【0065】
第1処理室12Aでの処理が終了した後に、搬送対象Tが、第1処理室12Aから搬送室11に搬送される。このとき、搬送対象Tを搬送室11から第1処理室12Aに搬送したときと同一の駆動部23が、第2搬送レール22Bに、搬送対象Tを搬送するための動力を与える。
【0066】
図12が示すように、搬送対象Tが第1処理室12Aから搬送室11に搬送された後、回転部21が、第2搬送レール22Bを第1回転方向R1に回転させる。回転部21は、第2搬送レール22Bを、搬送室11と第2処理室12Bとの間のゲートバルブ16と対向する位置まで回転させる。言い換えれば、回転部21は、第2搬送レール22Bの延在方向に第2処理室12Bが位置する状態で、第1搬送レール22Aおよび第2搬送レール22Bの回転を停止する。このとき、第1処理室12Aから搬送室11に搬送対象Tが搬送されたときから継続して、第2搬送レール22Bが、搬送室11から第2処理室12Bに搬送対象Tを搬送する搬送レールに選択されている。そのため、搬送対象Tが搬送室11から第2処理室12Bに搬送される間において、スライド部25は駆動されない。
【0067】
図13が示すように、搬送室11から第2処理室12Bに搬送対象Tを搬送する場合には、搬送室11と第2処理室12Bとの間に配置されたゲートバルブ16が開く。次いで、第2処理室12Bと第5処理室12Eとに対応付けられた駆動部23が、搬送室11から第1処理室12Aに搬送対象Tを搬送したときとは異なる入力軸49に接続する。これにより、駆動部23が、搬送対象Tを搬送するための動力を第2搬送レール22Bに与える。このとき、第2処理室12Bの搬送レール24にも、搬送対象Tを搬送するための動力が与えられる。これにより、搬送対象Tが、搬送室11から第2処理室12Bに向けて搬送される。
【0068】
このように、搬送装置20によれば、搬送レール22の回転方向によらず、搬送室11から一対の処理室への搬送を1つの駆動部23によって行うことが可能であるため、搬送装置20が備える駆動部23の数が増えることが抑えられる。上述したように、本実施形態では、真空処理装置10が6つの処理室12A~12Eを備えている。そのため、搬送レール22が一方の端部にのみ入力軸49を有し、かつ、回転方向によらず全ての処理室12A~12Eに向けて搬送対象Tの搬送を可能とするためには、6つの駆動部23が必要である。この点で、上述した搬送装置20によれば、駆動部23の数を搬送先となる処理室12A~12E,15の数よりも少なくすることができる。
【0069】
例えば、搬送装置20は、搬送対象Tを、搬送室11を介して第1処理室12Aから第2処理室12Bに搬送する途中で、真空加熱室15から搬送室11に新たな搬送対象Tを搬送してもよい。なお、以下では、搬送装置20による搬送が先に開始された搬送対象Tが第1の搬送対象Tであり、搬送装置20による搬送が後に開始された搬送対象Tが第2の搬送対象Tである。
【0070】
図14が示すように、第1の搬送対象Tが第1処理室12Aから搬送室11に搬送された後、回転部21が、第1搬送レール22Aおよび第2搬送レール22Bを第1回転方向R1に回転させる。回転部21は、第2搬送レール22Bを、搬送室11と真空加熱室15との間に配置されたゲートバルブ16と対向する位置まで回転させる。言い換えれば、回転部21は、第2搬送レール22Bの延在方向に真空加熱室15が位置する状態で、第1搬送レール22Aおよび第2搬送レール22Bの回転を停止する。
【0071】
図15が示すように、回転部21が第1搬送レール22Aおよび第2搬送レール22Bを回転させた後、スライド部25が、第1搬送レール22Aとゲートバルブ16とが対向するように、第1搬送レール22Aおよび第2搬送レール22Bをスライドさせる。言い換えれば、スライド部25は、第1搬送レール22Aの延在方向に真空加熱室15を位置させるように第1搬送レール22Aをスライドさせる。これにより、第1搬送レール22Aが、真空加熱室15から搬送室11に第2の搬送対象Tを搬送する搬送レールとして選択される。
【0072】
図16が示すように、真空加熱室15から搬送室11に第2の搬送対象Tを搬送する場合には、真空加熱室15と搬送室11との間に配置されたゲートバルブ16が開く。次いで、真空加熱室15と第4処理室12Dとに対応付けられた駆動部23が、第1搬送レール22Aが備える一方の入力軸49に接続する。これにより、駆動部23が、第2の搬送対象Tを搬送するための動力を第1搬送レール22Aに与える。このとき、真空加熱室15の搬送レール24にも、第2の搬送対象Tを搬送するための動力が与えられる。これにより、第2の搬送対象Tが、真空加熱室15から搬送室11に向けて搬送される。
【0073】
なお、搬送装置20は、上述した搬送方法に限らず、搬送室11と、搬送室11に接続する複数の処理室12A~12E,15との間において、任意の順番で搬送を行うことが可能である。これにより、真空処理装置10によれば、搬送対象Tが備える処理対象に対する処理の順番を任意に変更することが可能である。また、真空処理装置10が、同一の処理を行う処理室を複数備える場合には、処理対象に対して所定の処理を行う処理室を、各処理室での処理の進行状況などに応じて、複数のなかから任意に選択することが可能である。しかも、これらの場合に、搬送レール22の回転方向が制限されないことによって搬送対象Tを最短の距離で搬送することが可能であるため、搬送装置20によれば、搬送対象Tの搬送効率を高めることが可能である。
【0074】
上述したように、
図14および
図15を参照して説明した例では、回転部21が第1搬送レール22Aおよび第2搬送レール22Bを回転させた後に、スライド部25が、第1搬送レール22Aおよび第2搬送レール22Bをスライドさせる。これに限らず、スライド部25が、第1搬送レール22Aおよび第2搬送レール22Bをスライドさせた後に、回転部21が第1搬送レール22Aおよび第2搬送レール22Bを回転させてもよい。
【0075】
以上説明したように、搬送装置および処理装置の一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)搬送対象Tの回転方向が限定されないことによって、搬送対象Tの搬送効率を高めることが可能である。
【0076】
(2)搬送レール22における入力軸49の位置が、搬送レール22の回転方向に依存しないため、入力軸49に接続する駆動部23の位置について自由度を高めることができる。
【0077】
(3)搬送レール22の回転方向によらず、搬送室11から各処理室への搬送を1つの駆動部23によって行うことが可能であるため、搬送装置20が備える駆動部23の数が増えることが抑えられる。
【0078】
(4)第1搬送レール22Aを用いた搬送対象の搬送と、第2搬送レール22Bを用いた搬送対象Tの搬送とを同時に行うことが可能である。これにより、搬送装置20が搬送レールを1つのみ備える場合に比べて、搬送対象Tの搬送効率を高めることができる。
【0079】
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[搬送レール]
・搬送装置20は、搬送レール22を1つのみ備えてもよいし、3つ以上の搬送レール22を備えてもよい。真空処理装置10が複数の搬送レール22を備える場合には、搬送レール22の数が2である場合に限らず、上述した(4)に準じた効果を得ることはできる。
【0080】
・搬送レール22は、搬送レール22の延在方向における一方の端部にのみ入力軸49を有してもよい。この場合であっても、搬送レール22の回転方向が1つの方向に限定されない以上は、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0081】
[スライド部]
・スライド部25は、エアシリンダー25Aに代えて、圧縮空気以外の動力、例えば油圧によってロッドを駆動するシリンダーを備えてもよい。
【0082】
[回転軸]
・回転軸Aは、鳥瞰視における搬送室11の中央に限らず、中央からずれた位置に設定されてもよい。
【0083】
[駆動部]
・第1の処理室対に対応付けられた駆動部23は、一対の処理室が対向する方向において、回転軸Aよりも第4処理室12D寄りに位置してもよい。第2の処理室対に対応付けられた駆動部23は、一対の処理室が対向する方向において、回転軸Aよりも第3処理室12C寄りに位置してもよい。第3の処理室対に対応付けられた駆動部23は、一対の処理室が対向する方向において、回転軸Aよりも第2処理室12B寄りに位置してもよい。これらのいずれの場合であっても、駆動部23が配置される位置に限らず、上述した(3)に準じた効果を得ることはできる。
【0084】
・搬送装置20は、各処理室のみに対応付けられた駆動部23を備えてもよい。すなわち、上述した実施形態では、搬送装置20は、6つの駆動部23を備えてもよい。なお、上述した実施形態では、搬送装置20は、3つ以上6つ以下の駆動部23を備えてよい。
【0085】
[搬送室]
・搬送室11は、鳥瞰視において、六角形状以下の形状を有してもよい。搬送室11は、鳥瞰視において、例えば、四角形状を有してもよいし、八角形状を有してもよい。また、搬送室11は、三角形状を有してもよいし、五角形状を有してもよい。これらの場合であっても、搬送レール22の回転方向が1つの方向に限定されない以上は、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0086】
[処理室]
・真空処理装置10が備える処理室の数は、2つ以上5つ以下であってもよい。言い換えれば、複数の処理室は、回転軸を中心に等配されていなくてもよい。また、複数の処理室には、回転軸を挟んで対向する処理室を有する処理室と、回転軸を挟んで対向する処理室を有しない処理室とが含まれてもよい。また、複数の処理室の全てが、回転軸を挟んで対向する処理室を有しなくてもよい。これらの場合であっても、搬送レール22の回転方向が1つの方向に限定されない以上は、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0087】
[処理装置]
・処理装置は、大気雰囲気において各種の処理を行う処理室のみを備えた装置でもよい。
【符号の説明】
【0088】
10…真空処理装置、10C…制御部、11…搬送室、11A…チャンバー、11A1…貫通孔、12A…第1処理室、12B…第2処理室、12C…第3処理室、12D…第4処理室、12E…第5処理室、13…搬出入室、14…大気加熱室、15…真空加熱室、16…ゲートバルブ、17…排気部、20…搬送装置、21…回転部、21A,23A…モーター、21B…スライド支持部、22,24…搬送レール、22A…第1搬送レール、22B…第2搬送レール、23…駆動部、23B,42…伝達軸、25…スライド部、25A…エアシリンダー、25A1…大気ボックス、25A2…ロッド、25B…スライダー、25B1…レール、25B2…キャリア、25C…レール支持部、31…加熱部、32…カソード、33…照射部、41…枠体、43…第1ギヤ対、43A,44A,45A…第1ギヤ、43B,44B,45B…第2ギヤ、44…第2ギヤ対、45…第3ギヤ対、46,47…ローラー、48…保護部、49…入力軸、A…回転軸、T…搬送対象。