(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】油脂組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 7/00 20060101AFI20230111BHJP
A23D 7/005 20060101ALI20230111BHJP
A23L 15/00 20160101ALN20230111BHJP
A23L 19/00 20160101ALN20230111BHJP
A23L 23/00 20160101ALN20230111BHJP
【FI】
A23D7/00 500
A23D7/005
A23L15/00 Z
A23L19/00 101
A23L23/00
(21)【出願番号】P 2019056237
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 みゆき
(72)【発明者】
【氏名】相楽 浩二
(72)【発明者】
【氏名】志村 聡志
(72)【発明者】
【氏名】石川 千弘
(72)【発明者】
【氏名】池之上 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 耕士
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-017171(JP,A)
【文献】特開2017-184638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
A23L
A21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用油脂と粉乳とを含む油脂組成物であって、
前記食用油脂が、
乳由来の油脂(成分(a))を、前記食用油脂中に3質量%以上70質量%以下と、
畜産動物脂(乳由来の油脂を除く)(成分(b))を、前記食用油脂中に0.5質量%以上8質量%以下とを含み、
前記食用油脂の含有量が、前記油脂組成物全量に対して50質量%以上99.9質量%以下であり、
前記粉乳の含有量が、前記油脂組成物全量に対して0.1質量%以上2質量%以下であ
り、
前記粉乳が脱脂粉乳、全粉乳およびバターミルクパウダーからなる群より選ばれる1種または2種以上であり、
前記油脂組成物中の油相の30℃における固体脂含量が、2%以上18%以下である、前記油脂組成物。
【請求項2】
前記成分(b)が豚脂および牛脂からなる群より選ばれる1種または2種である、請求項1に記載の油脂組成物。
【請求項3】
前記食用油脂の含有量が、前記油脂組成物全量に対して50質量%以上90質量%以下である、請求項1
または2に記載の油脂組成物。
【請求項4】
水を前記油脂組成物全量に対して3質量%以上30質量%以下含む、油中水型油脂組成物である、請求項1から
3のいずれか一項に記載の油脂組成物。
【請求項5】
加熱調理食品用である、請求項1から
4のいずれか一項に記載の油脂組成物。
【請求項6】
加熱調理用である、請求項1から
4のいずれか一項に記載の油脂組成物。
【請求項7】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の油脂組成物を含む食品。
【請求項8】
請求項
6に記載の油脂組成物で加熱調理することを含む食品の製造方法。
【請求項9】
食品に請求項1から
5のいずれか一項に記載の油脂組成物を添加することを含む、食品にバター様の風味を付与する方法。
【請求項10】
食品を請求項
6に記載の油脂組成物で加熱調理することを含む、食品にバター様の風味を付与する方法。
【請求項11】
食品に請求項1から
5のいずれか一項に記載の油脂組成物を添加することを含む、食品にバター様のコクを付与する方法。
【請求項12】
食品を請求項
6に記載の油脂組成物で加熱調理することを含む、食品にバター様のコクを付与する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油脂組成物に関し、食品に用いた場合、特にバター様の風味およびコクを付与しうる油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
バターは独特の風味やコクを有しているため食材として好まれており、食品の原料および加熱調理用の熱媒体などとして広く用いられている。近年、消費者は、バターに由来する優れた風味やコクを求める傾向がますます高まっており、乳製品の消費量が増えているため、バターが品薄になっている。バターの代替品として、マーガリンなどが従来用いられており、また、これらのバター代替品にバターを少量添加することでバター風味を付与した商品も販売されているが、バター本来の自然な風味やコクに欠けるといった問題がある。
また、染み出しを起こりにくくするなどの目的のために、バターや乳脂肪と、豚脂(ラード)とを使用することも提案されているが(特許文献1ないし3参照)、豚脂特有の風味や香りが強く感じられるため、バター風味等の風味を大切にする焼き菓子やパン類、さらには加熱調理食品などにおいては適さないものであった(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-43732号公報
【文献】特開2015-142568号公報
【文献】特開2016-82970号公報
【文献】特開2008-278833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況の下、バターの独特の風味やコクにより近い風味やコクを有するバター代替品の提供が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下に示す油脂組成物、食品、食品の製造方法、畜産動物脂に由来する獣臭を低減する方法、食品にバター様の風味を付与する方法および食品にバター様のコクを付与する方法に関するものである。
[1]食用油脂と粉乳とを含む油脂組成物であって、
前記食用油脂が、
乳由来の油脂(成分(a))を、前記食用油脂中に3質量%以上70質量%以下と、
畜産動物脂(乳由来の油脂を除く)(成分(b))を、前記食用油脂中に0.5質量%以上8質量%以下とを含み、
前記食用油脂の含有量が、前記油脂組成物全量に対して50質量%以上99.9質量%以下であり、
前記粉乳の含有量が、前記油脂組成物全量に対して0.1質量%以上2質量%以下である、前記油脂組成物。
[2]前記成分(b)が豚脂および牛脂からなる群より選ばれる1種または2種である、[1]に記載の油脂組成物。
[3]前記粉乳が脱脂粉乳、全粉乳およびバターミルクパウダーからなる群より選ばれる1種または2種以上である、[1]または[2]に記載の油脂組成物。
[4]前記油脂組成物中の油相の30℃における固体脂含量が、2%以上18%以下である、[1]から[3]のいずれか一項に記載の油脂組成物。
[5]前記食用油脂の含有量が、前記油脂組成物全量に対して50質量%以上90質量%以下である、[1]から[4]のいずれか一項に記載の油脂組成物。
[6]水を前記油脂組成物全量に対して3質量%以上30質量%以下含む、油中水型油脂組成物である、[1]から[5]のいずれか一項に記載の油脂組成物。
[7]加熱調理食品用である、[1]から[6]のいずれか一項に記載の油脂組成物。
[8]加熱調理用である、[1]から[6]のいずれか一項に記載の油脂組成物。
[9][1]から[7]のいずれか一項に記載の油脂組成物を含む食品。
[10][8]に記載の油脂組成物で加熱調理することを含む食品の製造方法。
[11]畜産動物脂(乳由来の油脂を除く)(成分(b))100質量部に対して、粉乳を5質量部以上200質量部以下添加することを含む、前記成分(b)に由来する獣臭を低減する方法。
[12]乳由来の油脂(成分(a))をさらに添加することを含む、[11]に記載の獣臭を低減する方法。
[13]食品に[1]から[7]のいずれか一項に記載の油脂組成物を添加することを含む、食品にバター様の風味を付与する方法。
[14]食品を[8]に記載の油脂組成物で加熱調理することを含む、食品にバター様の風味を付与する方法。
[15]食品に[1]から[7]のいずれか一項に記載の油脂組成物を添加することを含む、食品にバター様のコクを付与する方法。
[16]食品を[8]に記載の油脂組成物で加熱調理することを含む、食品にバター様のコクを付与する方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の油脂組成物を用いることにより、食品にバターが本来有する独特の風味やコクを付与することができる。また、本発明の好ましい態様によれば、本発明の油脂組成物を用いることにより、本発明の油脂組成物に含まれる乳由来の油脂と等量の乳由来の油脂を食品に添加した場合と比べて、食品のバター様の風味やコクを増強することができる。本発明の油脂組成物を用いることにより、食品に所望のバター様の風味やコクを付与するために必要とされる乳由来の油脂の使用量を低減することができるので経済的観点からも有益である。このような本発明の油脂組成物は、バターの代替品として、加熱調理食品に配合する油脂組成物または加熱調理用の油脂組成物などとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の油脂組成物、食品、食品の製造方法、畜産動物脂に由来する獣臭を低減する方法、食品にバター様の風味を付与する方法および食品にバター様のコクを付与する方法について具体的に説明する。
【0008】
1.油脂組成物
本発明の油脂組成物は、食用油脂と粉乳とを含む油脂組成物であって、
前記食用油脂が、
乳由来の油脂(成分(a))を、前記食用油脂中に3質量%以上70質量%以下と、
畜産動物脂(乳由来の油脂を除く)(成分(b))を、前記食用油脂中に0.5質量%以上8質量%以下とを含み、
前記食用油脂の含有量が、前記油脂組成物全量に対して50質量%以上99.9質量%以下であり、
前記粉乳の含有量が、前記油脂組成物全量に対して0.1質量%以上2質量%以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明の油脂組成物は、乳由来の油脂の使用量を低減しながら、乳由来の油脂の代わりに畜産動物脂(乳由来の油脂を除く)と粉乳を所定の量比で用いることにより、食品に用いたときに食品にバター本来の自然な風味およびコクを付与しうる油脂組成物を提供しようとするものである。以下、本発明の油脂組成物の成分および配合比等について説明する。
【0010】
(1)食用油脂
本発明の油脂組成物に用いる食用油脂は、乳由来の油脂(成分(a))を、前記食用油脂中に3質量%以上70質量%以下と、畜産動物脂(乳由来の油脂を除く)(成分(b))を、前記食用油脂中に0.5質量%以上8質量%以下とを含む。以下、各成分について説明する。
【0011】
乳由来の油脂(成分(a))
本発明の油脂組成物の主成分である成分(a)としては、乳由来のものであれば特に制限されなく、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳または加工乳に含まれる油脂などが挙げられる。本発明の油脂組成物において、成分(a)は、1種で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、成分(a)としては、バター中に含まれる油脂、無水乳脂(以下「バターオイル」ともいう)、またはこれらの分別油脂などの加工油脂、あるいはそれらの組み合わせが好ましく用いられ、バター中に含まれる油脂がより好ましく用いられる。
本発明において、食用油脂中に含まれる成分(a)の含有量は、3質量%以上70質量%以下であり、好ましくは4質量%以上60質量%以下、より好ましくは5質量%以上50質量%以下である。上記範囲で成分(a)を用いることで、本発明の油脂組成物を食品に用いたときに、成分(a)の使用量を抑えながら、食品に所望のバター本来の自然な風味およびコクを付与することができる。成分(a)の含有量は、油脂組成物の目的や用途等に応じて適宜決定することができる。
【0012】
畜産動物脂(乳由来の油脂を除く)(成分(b))
本発明の油脂組成物において、前記成分(a)と組み合わせて用いる成分(b)としては、畜産動物の体内に含まれる油脂(脂肪)であって、前記成分(a)以外のものであれば特に制限されない。本発明に用いる成分(b)としては、例えば、豚脂(ラード)、牛脂、鶏脂、兎脂、羊脂、馬脂およびこれらの油脂に、エステル交換、水素添加および分別からなる群から選ばれる1または2以上の加工がなされた加工油脂が挙げられ、これらの中から1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、入手しやすく、油脂組成物を食品に用いたときに、食品にバター様のコクを付与しやすいことから、豚脂、牛脂およびこれらの分別油脂からなる群より選ばれる1種または2種以上が好ましく、豚脂および牛脂がより好ましく、豚脂がさらに好ましい。
本発明において、食用油脂中に含まれる成分(b)の含有量は、0.5質量%以上8質量%以下であり、好ましくは0.6質量%以上8質量%以下、より好ましくは0.7質量%以上7質量%以下である。上記範囲で成分(b)を用いることで、油脂組成物に配合した際に成分(b)に由来する特有の香り(獣臭)を感じさせることなく、成分(a)の使用量を低減した分を補い、前記油脂組成物を用いた食品にバター本来の自然な風味およびコクに近いバター様の風味およびコクを付与することができる。本発明の好ましい態様によれば、本発明の油脂組成物に粉乳とともに上記範囲で成分(b)を配合することで、本発明の油脂組成物に含まれる乳由来の油脂と等量の乳由来の油脂を食品に添加した場合と比べて、食品のバター様の風味やコクを増強することができる。成分(b)の含有量は、油脂組成物の目的や用途等に応じて適宜決定することができる。
【0013】
その他の油脂(成分(c))
本発明の油脂組成物は、成分(a)および(b)以外の油脂(成分(c)ともいう)を含んでもよい。
成分(c)の油脂としては、成分(a)および(b)以外の食用の油脂であれば特に制限されない。例えば、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油等の植物油脂;魚油、鯨油等の動物油脂;中鎖脂肪酸トリグリセリド;およびこれらの油脂に、エステル交換、水素添加および分別からなる群から選ばれる1または2以上の加工がなされた加工油脂が好ましく挙げられる。これらの油脂は、1種で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、油脂組成物の目的や用途等に応じて適宜決定することができる。
【0014】
本発明において、食用油脂中に含まれる成分(c)の含有量は、食用油脂中に含まれる成分(a)および(b)の残部である。
食用油脂中に含まれる成分(a)および(b)の合計量は、求められるバター様の風味やコクなど、油脂組成物の目的や用途等に応じて適宜決定することができる。食用油脂中に含まれる成分(a)および(b)の合計量は、通常、3.5質量%以上78質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上72質量%以下、さらに好ましくは8質量%以上60質量%以下である。
【0015】
本発明において、食用油脂の含有量は、油脂組成物全量に対して50質量%以上であり、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。また、99.9質量%以下である。
また、本発明の油脂組成物が、水分を実質的に含まない油性組成物の形態である場合、食用油脂の含有量は、油脂組成物全量に対して通常、85質量%以上99.9質量%以下が好ましく、より好ましくは90質量%以上99.5質量%以下、さらに好ましくは95質量%以上99質量%以下である。
本発明の油脂組成物はエマルションの形態であってもよく、例えば、本発明の油脂組成物が油中水型油脂組成物の形態である場合、食用油脂の含有量は、油脂組成物全量に対して50質量%以上95質量%以下が好ましく、より好ましくは60質量%以上93質量%以下、さらに好ましくは70質量%以上90質量%以下、さらにより好ましくは80質量%以上90質量%以下である。
【0016】
(2)粉乳
本発明の油脂組成物に用いる粉乳は、乳から殆どすべての水分を除去して粉末状にしたものであれば特に制限されない。本発明の油脂組成物に用いる粉乳としては、例えば、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、たんぱく質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳および調製粉乳などが好ましく挙げられる。これらの用語は、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和二十六年厚生省令第五十二号)第二条において定義されているとおりである。すなわち、
「全粉乳」とは、生乳、牛乳又は特別牛乳からほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたものをいう。
「脱脂粉乳」とは、生乳、牛乳又は特別牛乳の乳脂肪分を除去したものからほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたものをいう。
「クリームパウダー」とは、生乳、牛乳又は特別牛乳の乳脂肪分以外の成分を除去したものからほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたものをいう。
「ホエイパウダー」とは、乳を乳酸菌で発酵させ、又は乳に酵素若しくは酸を加えてできた乳清からほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたものをいう。
「たんぱく質濃縮ホエイパウダー」とは、乳を乳酸菌で発酵させ、又は乳に酵素若しくは酸を加えてできた乳清の乳糖を除去したものからほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたものをいう。
「バターミルクパウダー」とは、バターミルクからほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたものをいう。
「加糖粉乳」とは、生乳、牛乳又は特別牛乳にしょ糖を加えてほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたもの又は全粉乳にしょ糖を加えたものをいう。
「調製粉乳」とは、生乳、牛乳若しくは特別牛乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料とし、これに乳幼児に必要な栄養素を加え粉末状にしたものをいう。
これらの粉乳は、1種で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、これらの粉乳の中でも、成分(b)に由来する獣臭をより低減する観点から、脱脂粉乳、全粉乳およびバターミルクパウダーからなる群より選ばれる1種または2種以上が好ましく、脱脂粉乳がより好ましい。
【0017】
本発明において、粉乳の含有量は、油脂組成物全量に対して0.1質量%以上2質量%以下であり、好ましくは0.2質量%以上1.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以上1.3質量%以下、さらに好ましくは0.4質量%以上1.2質量%以下である。上記範囲で粉乳を用いることで、油脂組成物において成分(b)が有する特有の香り(獣臭)が感じられ難くなり、成分(a)の使用量を抑えながら、油脂組成物を用いた食品にバター本来の自然な風味およびコクに近いバター様の風味およびコクを付与することができる。本発明の好ましい態様によれば、本発明の油脂組成物は、本発明の油脂組成物に成分(b)とともに上記範囲で粉乳を配合することで、本発明の油脂組成物に含まれる乳由来の油脂と等量の乳由来の油脂を食品に添加した場合と比べて、食品のバター様の風味やコクを増強することができる。
【0018】
(3)油脂組成物の形態
前述したとおり、本発明の油脂組成物は、水分を実質的に含有しない油性組成物の形態であってもよく、水分を含有するエマルションの形態であってもよいが、エマルションの形態であることが好ましい。
【0019】
本発明の油脂組成物が油性組成物の形態である場合、本発明の油脂組成物中の水分は1質量%以下であることが好ましい。
【0020】
本発明の油脂組成物がエマルションの形態である場合、連続相である油相中に水相が分散してなる油中水型油脂組成物であることが好ましい。
本発明の油脂組成物が、油中水型油脂組成物である場合、油脂組成物全量に対して、水を3質量%以上30質量%以下含むことが好ましく、より好ましくは5質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは7質量%以上18質量%以下含むように調製する。
【0021】
また、本発明の油脂組成物は、乳化剤を含んでいてもよい。
乳化剤としては、食用の乳化剤であれば特に制限されなく、例えば、レシチン、モノグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート等が挙げられる。これらの乳化剤は、1種で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
(4)任意成分
本発明の油脂組成物は、本発明の目的および効果を阻害しない範囲であれば、他の成分を含有してもよい。
例えば、カロテン等の着色料;香料;トコフェロール、アスコルビン酸エステル等の酸化防止剤等の油溶性成分を含有してもよい。
また、本発明の油脂組成物がエマルションの形態である場合はさらに、食塩、糖類、各種エキス類等の非油溶性成分を含有してもよい。
これらの任意成分は、1種で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
(5)固体脂含量
本発明の油脂組成物中の油相の30℃における固体脂含量は、2%以上18%以下であることが好ましく、より好ましくは4%以上17%以下、さらに好ましくは6%以上16%以下、さらにより好ましくは8%以上15%以下である。油相の30℃における固体脂含量が上記の範囲であることで、油脂組成物が適度な保形性と融解性を保持するため、調理に使用しやすい。本明細書において、固体脂含量は、実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0024】
(6)油脂組成物の調製
本発明の油脂組成物は、従来公知の方法で調製することができる。
例えば、本発明の油脂組成物が油性組成物である場合は、食用油脂、粉乳および必要に応じて任意の油溶性成分を、必要に応じて加熱しながら混合し、急冷混捏装置を用いて混捏して調製することができる。
本発明の油脂組成物が、油中水型油脂組成物などのエマルションである場合は、食用油脂および任意の油溶性成分(乳化剤を含む)を含む油相、および水、粉乳および必要に応じて任意の非油溶性成分を含む水相をそれぞれ調製した後、油相と水相を必要に応じて加熱しながら混合し、得られる乳化物を、急冷混捏装置を用いて混捏して調製することができる。
急冷混捏装置としては、例えば、パーフェクター、コンビネーター、ボテーター、ネクサス等が挙げられる。
【0025】
(7)油脂組成物の用途
本発明の油脂組成物は、バターの代替品として、バター様の風味やコクが求められる食品に好適に用いられる。
【0026】
例えば、本発明の油脂組成物は、食材に熱を加えて調理する方法、例えば、焼く、煮る、炒める、揚げる、蒸すなどの調理方法により調理される加熱調理食品に配合する油脂組成物として好適に用いることができ、特に「煮る」加熱調理食品に配合する油脂組成物として好適に用いることができる。本発明の油脂組成物を加熱調理食品に配合することで、加熱によりバター様の風味やコクがより強く感じられ、本発明の油脂組成物の特徴をより発揮することができる。このような加熱調理食品としては、バター様の風味やコクが求められるものであれば特に制限されない。例えば、焼き菓子、ケーキ、パン類、ソース類(バターソース、ホワイトソース、ブラウンソースなど)、スープ、シチュー、ハンバーグ、グラタンなどが挙げられ、ソース類、スープおよびシチューから選ばれる1種が好ましく挙げられる。加熱調理食品に配合する油脂組成物の配合量は、加熱調理食品にバター様の風味やコクを付与できる範囲であれば、特に制限されない。目安としては、例えば、加熱調理食品全体に対して、1質量%以上50質量%以下である。
【0027】
また、本発明の油脂組成物は、加熱調理用の熱媒体として好適に用いることができる。例えば、食材を、焼く、炒める、揚げるなどの調理方法により加熱調理する際に食材に対して用いられる加熱調理用の油脂組成物として好適に用いることができ、特に「炒め」調理に好適に用いることができる。例えば、卵料理、肉料理、魚料理、野菜料理などの料理において、食材の加熱調理用の油脂組成物として使用することができる。本発明の油脂組成物を用いて加熱調理することにより、加熱調理して得られる食品にバター様の風味やコクを付与することができる。本発明の油脂組成物を加熱調理用の熱媒体として用いる場合の使用量は、加熱調理して得られる食品にバター様の風味やコクを付与することができる範囲であれば、特に制限されない。目安としては、例えば、食材100質量部に対して、2質量部以上600質量部以下である。
なお、本発明は、前記加熱調理用の油脂組成物で加熱調理することを含む食品の製造方法をも包含するものである。本方法において、加熱調理温度は、加熱調理して得られる食品の風味やコクを損なわない温度であることが好ましく、食材や料理によって適宜選択すればよいが、通常120℃以上200℃以下が好ましく、より好ましくは140℃以上190℃以下、さらに好ましくは150℃以上180℃以下である。加熱調理時間は、食材や料理によって適宜選択すればよい。
本発明の好ましい態様によれば、本発明の油脂組成物を用いることにより、本発明の油脂組成物に含まれる乳由来の油脂と等量の乳由来の油脂を食品に添加した場合と比べて、食品のバター様の風味やコクを増強することができる。また、本発明の好ましい態様によれば、食品に所望のバター様の風味やコクを付与するために必要とされる乳由来の油脂の使用量を低減することができるので経済的な観点からも有益である。
【0028】
2.食品
本発明は、本発明の油脂組成物を含む食品をも包含する。本発明の食品としては本発明の油脂組成物を含むものであれば特に制限されなく、前述した本発明の油脂組成物が配合された加熱調理食品および本発明の油脂組成物で加熱調理された食品を含む。食品に含まれる本発明の油脂組成物の配合量は、特に制限されなく、目的や用途に応じて適宜決定すればよい。
【0029】
3.畜産動物脂に由来する獣臭の低減方法
本発明は、畜産動物脂(乳由来の油脂を除く)(成分(b))に、粉乳を添加することを含む、前記成分(b)に由来する獣臭を低減する方法をも包含する。
成分(b)は、濃厚な風味をもつ一方で、特有の香り(獣臭)があり、バター風味とは異なるため、バター風味を大切にする食品には適さなかった。今般、本願発明者らによって、この成分(b)に由来する獣臭が、粉乳を添加することで低減することが見出され、食品において畜産動物脂をより活用できることがわかった。
本発明に使用できる成分(b)および粉乳については、前記「1.油脂組成物」において述べたとおりである。
成分(b)および粉乳の混合割合は、成分(b)100質量部に対して、粉乳の使用量が5質量部以上200質量部以下であることが好ましく、より好ましくは8質量部以上100質量部以下、さらに好ましくは12質量部以上60質量部以下、さらにより好ましくは15質量部以上30質量部以下である。成分(b)と粉乳を上記の範囲で混合することで、成分(b)に由来する獣臭が感じられ難くなり、また、粉乳が有する牛乳様の風味が強く感じられることもない。
また、獣臭を抑制する前記方法は、乳由来の油脂(成分(a))をさらに添加することが好ましい。粉乳に加えて、成分(a)をさらに添加することにより、成分(b)に由来する獣臭をより感じられ難くすることができる。成分(b)および成分(a)の混合割合は、成分(b)100質量部に対して、成分(a)の使用量が50質量部以上10000質量部以下であることが好ましく、より好ましくは100質量部以上2000質量部以下がより好ましい。
成分(b)に、粉乳に加えて、成分(a)をさらに添加する場合、粉乳および成分(a)の添加順序は特に制限されない。成分(b)に粉乳を添加してから、得られた組成物に成分(a)を添加してもよいし、成分(b)に成分(a)を添加してから、得られた組成物に粉乳を添加してもよい。
このように、本発明の上記方法によれば、成分(b)に由来する獣臭を低減することができ、成分(b)を使用できる食品の幅が広がる。
【0030】
4.食品にバター様の風味を付与する方法
(1)第1の態様
本発明の第1の態様にかかる食品にバター様の風味を付与する方法は、食品に、前記「1.油脂組成物」で述べた本発明の油脂組成物を添加することを特徴とする。
本発明の上記方法によれば、食品に本発明の油脂組成物を添加することで、成分(a)の含有量を抑えながら、食品に所望のバター様の風味を付与することができる。ここで、「バター様の風味」とは、食品を食べて直ぐに感じられる、自然なバターらしい香りと味をバランスよく感じられることを意味する。本発明の好ましい態様によれば、本発明の油脂組成物を用いることにより、本発明の油脂組成物に含まれる乳由来の油脂と等量の乳由来の油脂を食品に添加した場合と比べて、食品のバター様の風味を増強することができる。また、本発明の好ましい態様によれば、食品に所望のバター様の風味を付与するために必要とされる乳由来の油脂の使用量を低減することができるので経済的な観点からも有益である。
【0031】
本発明において、バター様の風味を付与する食品としては、特に制限されないが、加熱によりバター様の風味がより強く感じられ、本発明の油脂組成物の特徴をより発揮できることから、加熱調理食品であることが好ましい。加熱調理食品およびその具体例については、前記「1.油脂組成物」における「(7)油脂組成物の用途」の欄で説明したとおりである。
【0032】
(2)第2の態様
本発明の第2の態様にかかる食品にバター様の風味を付与する方法は、食品を、前記「1.油脂組成物」で述べた本発明の油脂組成物で加熱調理することを特徴とする。
本発明の上記方法によれば、食品を本発明の油脂組成物で加熱調理することにより、成分(a)の含有量を抑えながら、食品にバター様の風味を付与することができる。ここで、「バター様の風味」とは、食品を食べて直ぐに感じられる、自然なバターらしい香りと味をバランスよく感じられることを意味する。本発明の好ましい態様によれば、本発明の油脂組成物を用いることにより、本発明の油脂組成物に含まれる乳由来の油脂と等量の乳由来の油脂を食品に添加した場合と比べて、食品のバター様の風味を増強することができる。また、本発明の好ましい態様によれば、食品に所望のバター様の風味を付与するために必要とされる乳由来の油脂の使用量を低減することができるので経済的な観点からも有益である。
加熱調理方法およびその具体例については、前記「1.油脂組成物」における「(7)油脂組成物の用途」の欄で説明したとおりである。
【0033】
5.食品にバター様のコクを付与する方法
(1)第1の態様
本発明の第1の態様にかかる食品にバター様のコクを付与する方法は、食品に、前記「1.油脂組成物」で述べた本発明の油脂組成物を添加することを特徴とする。
本発明の上記方法によれば、食品に本発明の油脂組成物を添加することで、成分(a)の含有量を抑えながら、食品にバター様のコクを付与することができる。ここで、「バター様のコク」とは、食品を咀嚼後、飲み込む直前から飲み込んだときに感じられる、バターらしい濃厚なうまみを意味する。本発明の好ましい態様によれば、本発明の油脂組成物を用いることにより、本発明の油脂組成物に含まれる乳由来の油脂と等量の乳由来の油脂を食品に添加した場合と比べて、食品のバター様のコクを増強することができる。また、本発明の好ましい態様によれば、食品に所望のバター様のコクを付与するために必要とされる乳由来の油脂の使用量を低減することができるので経済的な観点からも有益である。
【0034】
本発明において、バター様のコクを付与する食品としては、特に制限されないが、加熱によりバター様のコクがより強く感じられ、本発明の油脂組成物の特徴をより発揮できることから、加熱調理食品であることが好ましい。加熱調理食品およびその具体例については、前記「1.油脂組成物」における「(7)油脂組成物の用途」の欄で説明したとおりである。
【0035】
(2)第2の態様
本発明の第2の態様にかかる食品にバター様のコクを付与する方法は、食品を、前記「1.油脂組成物」で述べた本発明の油脂組成物で加熱調理することを特徴とする。
本発明の上記方法によれば、食品を本発明の油脂組成物で加熱調理することにより、成分(a)の含有量を抑えながら、食品にバター様のコクを付与することができる。ここで、「バター様のコク」とは、食品を咀嚼後、飲み込む直前から飲み込んだときに感じられる、バターらしい濃厚なうまみを意味する。本発明の好ましい態様によれば、本発明の油脂組成物を用いることにより、本発明の油脂組成物に含まれる乳由来の油脂と等量の乳由来の油脂を食品に添加した場合と比べて、食品のバター様のコクを増強することができる。また、本発明の好ましい態様によれば、食品に所望のバター様のコクを付与するために必要とされる乳由来の油脂の使用量を低減することができるので経済的な観点からも有益である。
加熱調理方法およびその具体例については、前記「1.油脂組成物」における「(7)油脂組成物の用途」の欄で説明したとおりである。
【実施例】
【0036】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
【0037】
1.油脂組成物の調製
表1から3に記載の配合で下記の手順により油脂組成物を調製した。
まず、油相の各成分をミキシングタンクに入れて、ミキシングタンク内の温度を65℃に加熱しながら撹拌し混合した。
次に、水相の各成分をミキシングタンクに加え、ミキシングタンク内の温度を65℃に保ったまま撹拌を続けることで乳化液を得た。
得られた乳化液をパーフェクターに通して充填時温度が15℃になるように急冷混捏し、可塑性の油脂組成物を得た。
【0038】
<固体脂含量(%)>
得られた油脂組成物の油相の30℃における固体脂含量(%)は以下の方法で測定した。
油脂組成物を70℃に設定した恒温槽に入れ溶解させた。
上層を、ろ紙(定性濾紙No.2、アドバンテック東洋株式会社製)を使って恒温槽内でろ過し、ろ液を油相として回収し、得られた油相についてAOCS Official Method Cd 16b-93に記載のMETHOD Iに従って、30℃における固体脂含量(%)を測定した。
【0039】
<水分(質量%)>
得られた油脂組成物の水分(質量%)は、基準油脂分析試験法4.1.1.2-1996水分(加熱乾燥法)に則って測定した。
【0040】
<無脂乳固形分(質量%)>
原材料に含まれる無脂乳固形分と配合率から計算して油脂組成物中の無脂乳固形分(質量%)を算出した。
【0041】
2.食品の調製と評価
(1)スクランブルエッグ
表1に記載の配合で調製された各油脂組成物を加熱調理用熱媒体として用いてスクランブルエッグを調製し、評価した。
フライパンを中火で熱し、フライパンが160℃になってから油脂組成物14gを投入した。引き続き中火で加熱しながら油脂組成物を投入した15秒後に卵液95gを流し込み、15秒後に5秒間かき混ぜ、スクランブルエッグを得た。
得られたスクランブルエッグについて、専門パネラー5名で食し、下記の評価基準で評価し、平均値を評価値とした。結果を表1に示す。
【0042】
(2)きのこ炒め
表2に記載の配合で調製された各油脂組成物を加熱調理用熱媒体として用いてきのこ炒めを調製し、評価した。
フライパンを中火で熱し、フライパンが160℃になってから油脂組成物30gを投入した。引き続き中火で加熱しながら油脂組成物を投入した30秒後に予めカットしたエリンギ100gをフライパンに投入し、2分間炒めた。
火を消し、醤油3.5gを加えて混ぜ合わせ、きのこ炒めを得た。
得られたきのこ炒めについて、専門パネラー5名で食し、下記の評価基準で評価し、平均値を評価値とした。結果を表2に示す。
【0043】
(3)ブラウンソース
表3に記載の配合で調製された各油脂組成物を用いてブラウンソースを調製し、評価した。
鍋に水を600g入れ、中火で95℃まで加熱した後火を止め、ハヤシライスソース「S&B GOLDEN ハヤシライスソース」(エスビー食品株式会社製)96.5gを投入した。
よく混合した後、油脂組成物100gをさらに投入し混合して、中火で5分間煮込むことでブラウンソースを得た。
得られたブラウンソースについて、専門パネラー5名で食し、下記の評価基準で評価し、平均値を評価値とした。結果を表3に示す。
【0044】
a)バター様の風味
バター様の風味、すなわち、食品を食べて直ぐに感じられる、自然なバターらしい香りと味をバランスよく感じられるかを下記基準で評価した。
4 対照よりもバター様の風味がとても強い
3 対照よりもバター様の風味が強い
2 対照と同じ強さのバター様の風味を感じる
1 対照よりもバター様の風味が弱い
【0045】
b)バター様のコク
バター様のコク、すなわち、食品を咀嚼後、飲み込む直前から飲み込んだときに感じられる、バターらしい濃厚なうまみを下記基準で評価した。
4 対照よりもバター様のコクがとても強い
3 対照よりもバター様のコクが強い
2 対照と同じ強さのバター様のコクを感じる
1 対照よりもバター様のコクが弱い
【0046】
c)獣臭
食品を食べたときに感じる、獣臭の強さを下記基準で評価した。
4 獣臭が全く感じられない
3 獣臭がほとんど感じられない
2 獣臭をわずかに感じる
1 獣臭を感じる
【0047】
d)牛乳様の風味
食品を食べたときに感じる、牛乳様の風味を下記基準で評価した。
3 牛乳様の風味が全く感じられない
2 牛乳様の風味がわずかに感じられるが、気にならない
1 牛乳様の風味を感じる
【0048】
本評価において、牛乳様の風味については2以上が合格であり、それ以外については2.6以上が合格である。獣臭は、成分(b)を油脂組成物中に0.8質量%以上配合したものを用いた食品について評価した。
なお、各表に記載の対照は、成分(a)の配合量を実施例および比較例と同等量とし、成分(b)および粉乳を配合しなかった例である。バター様の風味およびコクの評価は、各表に記載の対照との対比により評価した。
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
表1から3に記載の油脂組成物の原材料は下記のとおりである。
(成分(a)の原料)
・バター:無塩バター(油脂含有量83質量%、無脂乳固形分1.2質量%)、Fonterra LTD.製
・無水乳脂:バターオイル、Fonterra LTD.製
(成分(b))
・ラード:ブラックアンドホワイト、株式会社J-オイルミルズ製
・牛脂:食用牛脂、植田製油株式会社製
(その他の油脂)
・大豆油:大豆白絞油、株式会社J-オイルミルズ製
・パーム核油:精製パーム核油、株式会社J-オイルミルズ製
・エステル交換油1:パームステアリン(ヨウ素価32、株式会社J-オイルミルズ製)を75質量部、パーム油(株式会社J-オイルミルズ製)を10質量部及び大豆油を15質量部混合した混合油に対して、ナトリウムメトキシドを触媒として0.3質量部添加し、80℃、真空度2.7kPaの条件で60分間攪拌しながらランダムエステル交換反応をおこなった。ランダムエステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、更に脱臭処理をおこなってエステル交換油1を得た。
(乳化剤)
・レシチン:レシチンFA、株式会社J-オイルミルズ製
(粉乳)
・バターミルクパウダー:よつ葉バターミルクパウダー(無脂乳固形分88.7質量%)、よつ葉乳業株式会社製
・脱脂粉乳:森永脱脂粉乳(無脂乳固形分95.2質量%)、森永乳業株式会社製
・全粉乳:よつ葉全粉乳(無脂乳固形分71.9質量%)、よつ葉乳業株式会社製
【0053】
表1から3の結果に示されるとおり、成分(b)と粉乳を所定の範囲で用いることにより、対照と比べてバター様の風味およびコクをより強く付与することができた。これらの結果から、本発明によれば、成分(a)の使用量を低く抑えても、バター様の風味およびコクをバターに近づけることができる(実施例1~12)。
一方、成分(a)を実施例と同等量使用した場合でも、成分(b)のみを使用し、粉乳を使用しなかった場合や、成分(b)と粉乳を併用しても成分(b)の配合量が大きすぎる場合は、バター様の風味が十分に感じられず(比較例2、3、4、7、10)、成分(b)に由来する獣臭が感じられる例もあった(比較例2、3、4、7)。また、成分(a)を実施例と同等量使用した場合でも、成分(b)を使用しなかった場合や、成分(b)と粉乳を併用しても成分(b)の配合量が小さすぎる場合は、バター様の風味およびコクが十分に感じられず(比較例1、5、6、8、9)、粉乳に由来する牛乳様の風味が感じられる例もあった(比較例1、6)。
また、成分(b)と粉乳を所定の範囲で用いることにより、成分(b)に由来する獣臭が抑制された(実施例1~12、参考例1、2)。特に成分(a)を含む場合、獣臭が効果的に抑制された(実施例1~12)。