(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】基板収納容器
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20230111BHJP
B65D 25/42 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
H01L21/68 T
H01L21/68 V
B65D25/42 C
(21)【出願番号】P 2019059791
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】橋本 篤明
(72)【発明者】
【氏名】隣 嘉津彦
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-142873(JP,A)
【文献】特開2003-168731(JP,A)
【文献】特開2013-145768(JP,A)
【文献】特開2009-43862(JP,A)
【文献】特開2008-4617(JP,A)
【文献】特開2007-234992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
B65D 25/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収納する収納空間を区画する本体であって、前記基板の数量に合わせた前記収納空間の容積に変更が可能に構成されて、かつ、前記収納空間を区画する面が金属製である前記本体と、
前記本体に接続され、前記収納空間内の排気または前記収納空間内への不活性ガスの導入に用いられるポートと、を備える
基板収納容器。
【請求項2】
前記本体は、前記基板の厚さ方向に積み重なる金属製の支持板を三段以上備え、
最上段の前記支持板は、前記本体の蓋体であり、
最下段の前記支持板は、前記本体の底体であり、
前記厚さ方向において、前記最上段の支持板と前記最下段の支持板とに挟まれた一段以上の前記支持板が、中間の支持板であり、
前記中間の支持板は、前記最上段の支持板が区画する空間と、前記最下段の支持板が区画する空間とに連通する連通孔を備え、
n段目の前記支持板と(n+1)段目の前記支持板とが、前記厚さ方向においてn段目の前記基板を挟んで支持し、
前記複数の支持板が積み重なった状態で、前記複数の支持板を締結する締結部をさらに備える
請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項3】
前記締結部は、ボルトとナットとを備え、前記厚さ方向において各支持板を貫通する孔を通る前記ボルトに前記ナットが締結される
請求項2に記載の基板収納容器。
【請求項4】
前記ポートは、前記最上段の支持板または前記最下段の支持板に接続され、前記ポートが接続された前記支持板がポート側支持板であり、
前記ナットは、前記ポート側支持板の表面において前記ボルトに締結されている
請求項3に記載の基板収納容器。
【請求項5】
各支持板は、前記基板に接する部位に位置する弾性部材を備え、
前記n段目の支持板が有する前記弾性部材と、前記(n+1)段目の支持板が有する前記弾性部材とが、前記厚さ方向において前記n段目の基板を挟んで支持する
請求項2から4のいずれか一項に記載の基板収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を形成するための基板として、シリコン基板が多用されている。シリコンは高い活性を有するため、シリコン基板が大気中の水分と反応することによって、シリコン基板の表面にはシリコン酸化膜が形成される。半導体装置を製造する過程において、シリコン酸化膜を有したシリコン基板の表面にシリコンの薄膜をエピタキシャル成長させた場合には、基板の面内において、薄膜の成長速度にばらつきが生じたり、薄膜内に空隙が生じたりする。そのため、薄膜をエピタキシャル成長させる前に、シリコン酸化膜をエッチングするエッチング装置を用いて、シリコン基板の表面に形成されたシリコン酸化膜が除去されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、半導体装置を製造する過程では、シリコン酸化膜を除去する工程とそれに次ぐ工程との間で、シリコン基板の表面が再び酸化される程度に長い時間経過してしまう場合がある。また、半導体装置の製造プロセスを設計する過程では、シリコン酸化膜を除去する工程とそれに次ぐ工程とを別々のクリーンルームで行うため、基板収納容器に収納されたシリコン基板をクリーンルームの外に搬出せざるを得ない場合がある。こうした実情から、シリコン基板の表面と水分との接触を抑えることが可能な基板収納容器が求められている。
【0005】
なお、こうした課題は、シリコン基板に限らず、水分との接触によって表面の変質が生じる基板において共通する。
本発明は、水分との接触による基板の表面での変質を抑えることを可能とした基板収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための基板収納容器は、基板を収納する収納空間を区画する本体であって、前記基板の数量に合わせた前記収納空間の容積に変更が可能に構成されて、かつ、前記収納空間を区画する面が金属製である前記本体と、前記本体に接続され、前記収納空間内の排気または前記収納空間内への不活性ガスの導入に用いられるポートと、を備える。
【0007】
上記構成によれば、本体において収納空間を区画する面が樹脂製である場合と比べて、収納空間内に本体から水分が放出されることが抑えられる。また、収納空間の容積が可変であることによって、収納空間内に収納される基板の数量に合わせて収納空間の容積を変更することが可能である。そのため、基板の容積に対して収納空間の容積が過剰に大きくなることが抑えられる。それゆえに、収納空間を区画する面が大きくなることが抑えられ、これによっても、本体から収納空間内に水分が放出されることが抑えられる。結果として、水分との接触による基板の表面での変質を抑えることが可能である。
【0008】
上記基板収納容器において、前記本体は、前記基板の厚さ方向に積み重なる金属製の支持板を三段以上備え、最上段の前記支持板は、前記本体の蓋体であり、最下段の前記支持板は、前記本体の底体であり、前記厚さ方向において、前記最上段の支持板と前記最下段の支持板とに挟まれた一段以上の前記支持板が、中間の支持板であり、前記中間の支持板は、前記最上段の支持板が区画する空間と、前記最下段の支持板が区画する空間とに連通する連通孔を備え、n段目の前記支持板と(n+1)段目の前記支持板とが、前記厚さ方向においてn段目の前記基板を挟んで支持し、前記複数の支持板が積み重なった状態で、前記複数の支持板を締結する締結部をさらに備えてもよい。上記構成によれば、n段目の支持板と(n+1)段目の支持板とが、n段目の基板を支持するため、収納する基板の数量に適した容積の収納空間を形成することが可能である。
【0009】
上記基板収納容器において、前記締結部は、ボルトとナットとを備え、前記厚さ方向において各支持板を貫通する孔を通る前記ボルトに前記ナットが締結されてもよい。上記構成によれば、ボルトに対するナットの螺合によって複数の支持板を締結することが可能であるため、複数の支持板を締結することが容易である。
【0010】
上記基板収納容器において、前記ポートは、前記最上段の支持板または前記最下段の支持板に接続され、前記ポートが接続された前記支持板がポート側支持板であり、前記ナットは、前記ポート側支持板の表面において前記ボルトに締結されていてもよい。
【0011】
上記構成によれば、ナットがポート側支持板の表面においてボルトに締結されるため、ボルトにナットを締結するときと、ポートを通じて収納空間内を排気するとき、または、ポートを通じて収納空間内に不活性ガスを導入するときとの両方において、ポート側支持板の表面が作業者に面するように、基板収納容器を配置することが可能である。これにより、基板収納容器に基板を収納する作業の効率を高めることができる。
【0012】
上記基板収納容器において、各支持板は、前記基板に接する部位に位置する弾性部材を備え、前記n段目の支持板が有する前記弾性部材と、前記(n+1)段目の支持板が有する前記弾性部材とが、前記厚さ方向において前記n段目の基板を挟んで支持してもよい。
【0013】
上記構成によれば、弾性部材によって基板が支持されるため、基板が金属製の面によって支持される場合に比べて、基板において支持板と接する部位が、支持板との摩擦によって損傷することが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態における基板収納容器の構造における一部を破断して示す斜視図。
【
図2】
図1が示す基板収納容器の構造を分割して示す分解断面図。
【
図3】中間体の表面と対向する方向から見た中間体の構造を示す平面図。
【
図4】
図1が示す基板収納容器の構造を示す断面図。
【
図5】
図1が示す基板収納容器の構造における他の例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1から
図5を参照して、基板収納容器の一実施形態を説明する。以下では、基板収納容器の構造、および、基板収納容器の作用を順に説明する。
[基板収納容器の構造]
図1から
図3を参照して、基板収納容器の構造を説明する。
図1は、基板収納容器の斜視構造を示している。なお、
図1では、基板収納容器における内部の構造を説明する便宜上、基板収納容器および基板の一部が破断されている。また、
図1では、図示の便宜上、ポートに取り付けられたバルブの図示が省略されている。
【0016】
図1が示すように、基板収納容器10は、本体11とポート12とを備えている。本体11は、基板Sを収納する収納空間11Aを区画する。本体11は、基板Sの数量に合わせた収納空間11Aの容積に変更が可能であり、かつ、収納空間11Aを区画する面11Sが金属製である。ポート12は、本体11に接続されている。ポート12は、収納空間11A内の排気、または、収納空間11A内への不活性ガスの導入に用いられる。
【0017】
本体11において収納空間11Aを区画する面11Sが樹脂製である場合と比べて、収納空間11A内に本体11から水分が放出されることが抑えられる。また、収納空間11Aの容積が可変であることによって、収納空間11A内に収納される基板Sの数量に合わせて収納空間11Aの容積を変更することが可能である。そのため、基板Sの容積に対して収納空間11Aの容積が過剰に大きくなることが抑えられる。それゆえに、収納空間11Aを区画する面11Sが大きくなることが抑えられ、これによっても、本体11から収納空間11A内に水分が放出されることが抑えられる。結果として、水分との接触による基板Sの表面での変質を抑えることが可能である。以下、
図2および
図3を参照して、本実施形態の基板収納容器10をより詳しく説明する。
【0018】
図2が示すように、本体11は、三段以上の支持板11aを備えている。各支持板11aは金属製である。各支持板11aは、例えばアルミニウムまたはステンレス鋼などから形成されている。複数の支持板11aは、基板Sの厚さ方向において積み重なっている。複数の支持板11aのうち、最上段の支持板11aが、本体11の蓋体11a1である。複数の支持板11aのうち、最下段の支持板11aが、本体11の底体11a2である。基板Sの厚さ方向において、最上段の支持板11aと最下段の支持板11aとに挟まれた一段以上の支持板11aが、中間の支持板11aである。なお、以下において、中間の支持板11aを中間体11a3とも称する。
【0019】
中間体11a3は、蓋体11a1が区画する空間と、底体11a2が区画する空間とに連通する連通孔a3vを備えている。本体11において、n段目の支持板11aと(n+1)段目の支持板11aとが、基板S厚さ方向においてn段目の基板Sを挟んで支持している。n段目の支持板11aと(n+1)段目の支持板11aとが、n段目の基板Sを支持するため、収納する基板Sの数量に適した容積の収納空間11Aを形成することが可能である。
【0020】
本実施形態において、蓋体11a1が1段目の支持板11aであり、中間体11a3が2段目の支持板11aであり、底体11a2が3段目の支持板11aである。蓋体11a1と中間体11a3とが、1段目に位置する1枚の基板Sを挟んで支持する。中間体11a3と底体11a2とが、2段目に位置する1枚の基板Sを挟んで支持する。本実施形態において、基板Sは例えば円板状を有している。基板Sは、例えばシリコン基板である。
【0021】
基板収納容器10は、締結部13をさらに備えている。締結部13は、複数の支持板11aが積み重なった状態で、複数の支持板11aを締結する。締結部13は、ボルト13aとナット13bとを備えている。ナット13bは、基板Sの厚さ方向において各支持板11aを貫通する孔を通るボルト13aに締結される。ボルト13aに対するナット13bの螺合によって複数の支持板11aを締結することが可能であるため、複数の支持板11aを締結することが容易である。締結部13がボルト13aとナット13bとを備えることによって、基板Sの収納に用いられる支持板11aの数が変わったとしても、ボルト13aに対するナット13bの螺合量を変更することによって、複数の支持板11aを締結することが可能にもなる。
【0022】
本実施形態では、蓋体11a1が、ボルト13aの一部が通る貫通孔a1hを有し、底体11a2が、ボルト13aの一部が通る貫通孔a2hを有し、中間体11a3が、ボルト13aの一部が通る貫通孔a3hを有している。3つの支持板11aが積み重なることによって、基板Sの厚さ方向からみて、各支持板11aの貫通孔a1h,a2h,a3hが互いに接続される。ボルト13aは、3つの貫通孔a1h,a2h,a3hが接続された孔に通される。
【0023】
基板収納容器10は、例えば蓋体11a1の周方向において等配された複数の締結部13を備えている。そのため、各支持板11aも、締結部13の数量に応じた数量の貫通孔a1h,a2h,a3hを有している。
【0024】
ポート12は、蓋体11a1に接続されている。本実施形態において、ポート12が接続された蓋体11a1が、ポート側支持板の一例である。ナット13bは、蓋体11a1の上面a1Uにおいてボルト13aに締結される。蓋体11a1の上面a1Uは、ポート側支持板の表面の一例である。ナット13bが蓋体11a1の上面a1Uにおいてボルト13aに締結される。そのため、ボルト13aにナット13bを締結するときと、ポート12を通じて収納空間11A内を排気するとき、または、ポート12を通じて収納空間11A内に不活性ガスを導入するときとの両方において、蓋体11a1の上面a1Uが作業者に面するように、基板収納容器10を配置することが可能である。これにより、基板収納容器10に基板Sを収納する作業の効率を高めることができる。
【0025】
蓋体11a1は、例えば円板状を有している。蓋体11a1は円板状に限らず、例えば矩形板状などの円板状以外の形状を有してもよい。蓋体11a1は、上面a1Uと、上面a1Uとは反対側の面である下面a1Bとを含んでいる。蓋体11a1は、蓋体11a1の厚さ方向において蓋体11a1を貫通する通気孔a1vを有している。通気孔a1vには、ポート12が接続されている。
【0026】
蓋体11a1は、下面a1Bに窪みa1B1を有している。下面a1Bと対向する平面視において、窪みa1B1の面積は、基板Sの面積以上である。窪みa1B1の面積は、基板Sの面積よりも大きいことが好ましい。窪みa1B1には、下側溝a11が位置している。下面a1Bと対向する平面視において、下側溝a11は、基板Sが基板収納容器10に収納された場合に、基板Sに重なるように配置されている。上面a1Uに直交する平面に沿う断面において、下側溝a11は、逆台形状を有している。下側溝a11では、逆台形状を有した断面形状が、蓋体11a1の周方向の一部において連なっている。
【0027】
蓋体11a1は、基板Sに接する部位に位置する弾性部材a12を備えている。弾性部材a12は、下側溝a11に嵌まることによって、蓋体11a1のなかで基板Sに接する部位に位置している。弾性部材a12は、例えば樹脂製である。弾性部材a12は、例えばフッ素樹脂によって形成されている。
【0028】
中間体11a3は、例えば円板状を有している。中間体11a3は円板状に限らず、例えば矩形板状などの円板状以外の形状を有してもよい。ただし、中間体11a3の形状は、蓋体11a1の形状と同一であることが好ましい。中間体11a3は、上面a3Uと、上面a3Uとは反対側の面である下面a3Bとを含んでいる。中間体11a3は、中間体11a3の厚さ方向において中間体11a3を貫通する連通孔a3vを有している。上面a3Uと対向する平面視において、中間体11a3の一部分と基板Sとが重なる。上面a3Uと対向する平面視において、連通孔a3vによって区画される面積は、例えば、基板Sの面積よりも小さい。
【0029】
中間体11a3は、上面a3Uに上側溝a31を有している。上面a3Uと対向する平面視において、上側溝a31は、基板Sが基板収納容器10に収納された場合に、基板Sに重なるように配置されている。上面a3Uと直交する平面に沿う断面において、上側溝a31は、矩形状を有している。上側溝a31では、矩形状を有した断面形状が、中間体11a3の周方向の一部において連なっている。
【0030】
中間体11a3は、基板Sに接する部位に位置する弾性部材a32を備えている。弾性部材a32は、上側溝a31に嵌まることによって、中間体11a3のなかで基板Sに接する部位に位置している。そのため、1段目の支持板11aである蓋体11a1が有する弾性部材a12と、2段目の支持板11aである中間体11a3が有する弾性部材a32とが、基板Sの厚さ方向において、1段目の基板Sを挟んで支持する。弾性部材a32は、例えば樹脂製である。弾性部材a32は、例えばフッ素樹脂によって形成されている。
【0031】
弾性部材a12,a32によって基板Sが支持されるため、基板Sが金属製の面11Sによって支持される場合に比べて、基板Sにおいて支持板11aと接する部位が、支持板11aとの摩擦によって損傷することが抑えられる。
【0032】
中間体11a3は、下面a3Bに窪みa3B1を有している。下面a3Bと対向する平面視において、窪みa3B1の面積は、基板Sの面積以上である。窪みa3B1の面積は、基板Sの面積よりも大きいことが好ましい。窪みa3B1には、下側溝a33が位置している。下面a3Bと対向する平面視において、下側溝a33は、基板Sが基板収納容器10に収納された場合に、基板Sに重なるように配置されている。上面a3Uに直交する平面に沿う断面において、下側溝a33は、逆台形状を有している。下側溝a33では、逆台形状を有した断面形状が、中間体11a3の周方向の一部において連なっている。
【0033】
中間体11a3は、基板Sに接する部位に位置する弾性部材a34を下面a3Bにも備えている。弾性部材a34は、下側溝a33に嵌まることによって、中間体11a3のなかで基板Sに接する部位に位置している。弾性部材a34は、例えば樹脂製である。弾性部材a34は、例えばフッ素樹脂によって形成されている。
【0034】
中間体11a3は、上面a3Uにシール用溝a35をさらに備えている。シール用溝a35は、中間体11a3の径方向において、上側溝a31よりも外側、かつ、貫通孔a3hよりも内側に位置している。上面a3Uと対向する平面視において、シール用溝a35は、中間体11a3の周方向に沿う閉環状を有している。シール用溝a35には、シールリングa36が嵌め込まれている。シールリングa36は、例えばOリングである。シールリングa36は、例えば樹脂製である。シールリングa36は、例えばフッ素樹脂によって形成されている。中間体11a3に蓋体11a1が積み重なることによって、シールリングa36が、中間体11a3と蓋体11a1との間で押しつぶされる。これにより、中間体11a3と蓋体11a1とによって区画される空間のなかで、中間体11a3の径方向におけるシールリングa36よりも内側の部分が、シールリングa36によって封止される。
【0035】
なお、
図2では、1つの中間体11a3のみを備える例が図示されている。これを変更して、基板収納容器10は、複数の中間体11a3を備えることが可能である。そして、基板収納容器10が収納する基板Sの数量に応じて、基板Sの収納に用いる中間体11a3の数を変えることによって、基板収納容器10が区画する収納空間11Aの容積を変更することが可能である。
【0036】
底体11a2は、例えば円板状を有している。底体11a2は円板状に限らず、例えば矩形板状などの円板状以外の形状を有してもよい。ただし、底体11a2の形状は、蓋体11a1の形状、および、中間体11a3の形状と同一であることが好ましい。底体11a2は、上面a2Uと、上面a2Uとは反対側の面である下面a2Bとを含んでいる。
【0037】
底体11a2は、上面a2Uに上側溝a21を有している。上面a2Uと対向する平面視において、上側溝a21は、基板Sが基板収納容器10に収納された場合に、基板Sに重なるように配置されている。上面a2Uと直交する断面において、上側溝a21は、矩形状を有している。上側溝a21では、矩形状を有した断面形状が、底体11a2の周方向における一部において連なっている。
【0038】
底体11a2は、基板Sに接する部位に位置する弾性部材a22を備えている。弾性部材a22は、上側溝a21に嵌まることによって、底体11a2のなかで基板Sに接する部位に位置している。そのため、2段目の支持板11aである中間体11a3が有する弾性部材a34と、3段目の支持板11aである底体11a2が有する弾性部材a22とが、基板Sの厚さ方向において、2段目の基板Sを挟んで支持する。弾性部材a22は、例えば樹脂製である。弾性部材a22は、例えばフッ素樹脂によって形成されている。
【0039】
底体11a2は、上面a2Uにシール用溝a23をさらに備えている。シール用溝a23は、底体11a2の径方向において、上側溝a21よりも外側、かつ、貫通孔a2hよりも内側に位置している。上面a2Uと対向する平面視において、シール用溝a23は、底体11a2の周方向に沿う閉環状を有している。シール用溝a23には、シールリングa24が嵌め込まれている。シールリングa24は、例えばOリングである。シールリングa24は、例えば樹脂製である。シールリングa24は、例えばフッ素樹脂によって形成されている。底体11a2に中間体11a3が積み重なることによって、シールリングa24が、底体11a2と中間体11a3との間において押しつぶされる。これにより、底体11a2と中間体11a3とによって区画される空間のなかで、底体11a2の径方向におけるシールリングa24よりも内側の部位が、シールリングa24によって封止される。
【0040】
ポート12には、バルブ12Vが取り付けられている。バルブ12Vは、ポート12の開放と閉塞とを行う。バルブ12Vが開くことによって、ポート12の内部が基板収納容器10の外部に開放される。バルブ12Vが閉じることによって、ポート12の内部が基板収納容器10の外部に対して閉塞される。ポート12を通じて収納空間11A内に導入される不活性ガスは、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、および、ヘリウムガスなどであってよい。
【0041】
図3は、中間体11a3の上面a3Uと対向する平面視における中間体11a3の平面構造を示している。なお、
図3では、図示の便宜上、弾性部材a32が嵌め込まれる上側溝a31と、シールリングa36が嵌め込まれるシール用溝a35との図示が省略されている。また、
図3では、基板収納容器10に収納される基板Sが破線で示されている。
【0042】
図3が示すように、中間体11a3は、複数の弾性部材a32を備えている。複数の弾性部材a32は、中間体11a3の周方向に沿って間隔を空けて配置されている。本実施形態では、中間体11a3は、例えば4つの弾性部材a32を備えている。4つの弾性部材a32は、中間体11a3の周方向において等配されている。
【0043】
なお、図示を省略したが、本実施形態では、蓋体11a1が4つの弾性部材a12を備えている。各弾性部材a12は、基板Sの厚さ方向から見て、中間体11a3が備える1つの弾性部材a32と重なっている。また、中間体11a3はさらに4つの弾性部材a34を備えている。各弾性部材a34は、基板Sの厚さ方向から見て、上面a3Uに位置する1つの弾性部材a32と重なっている。また、底体11a2が、4つの弾性部材a22を備えている。各弾性部材a22は、基板Sの厚さ方向から見て、中間体11a3が備える1つの弾性部材a34と重なっている。
【0044】
このように、基板収納容器10では、1段目の基板Sが、蓋体11a1の周方向において等配された複数の弾性部材a12と、中間体11a3の周方向において等配された複数の弾性部材a32とによって支持される。これにより、蓋体11a1と基板Sとの間、および、中間体11a3と基板Sとの間の各々に隙間が形成される。そのため、蓋体11a1が区画する空間と、中間体11a3が区画する空間とが、連通孔a3vおよび上述した隙間を通じて連通される。
【0045】
また、基板収納容器10では、2段目の基板Sが、中間体11a3の周方向において等配された複数の弾性部材a34と、底体11a2の周方向において等配された複数の弾性部材a22とによって支持される。これにより、中間体11a3と基板Sとの間、および、底体11a2と基板Sとの間の各々に隙間が形成される。そのため、中間体11a3が区画する空間と、底体11a2が区画する空間とが、連通孔a3vおよび上述した空間を通じて連通される。
【0046】
それゆえに、基板収納容器10では、蓋体11a1、中間体11a3、および、底体11a2が積み重なり、かつ、基板Sが基板収納容器10に収納された状態において、ポート12を介してシールリングa24,a36よりも内側の空間を排気することが可能である。あるいは、基板収納容器10では、ポート12を介してシールリングa24,a36よりも内側の空間に不活性ガスを導入することが可能である。
【0047】
[基板収納容器の作用]
図4および
図5を参照して、基板収納容器10の作用を説明する。以下では、
図4を用いて基板収納容器10が3段の支持板11aによって形成される場合の作用を説明する。また、
図5を用いて基板収納容器10が6段の支持板11aによって形成される場合の作用を説明する。
【0048】
図4が示すように、基板収納容器10を用いて2枚の基板Sを収納する場合には、3つの支持板11aを準備する。そして、1段目の支持板11aである蓋体11a1と、2段目の支持板11aである中間体11a3との間に1段目の基板Sを配置する。これにより、蓋体11a1の弾性部材a12と、中間体11a3の弾性部材a32とによって、1段目の基板Sを挟んで支持する。さらには、中間体11a3に対して蓋体11a1が積み重なることによって、中間体11a3のシールリングa36が蓋体11a1によって押しつぶされる。これにより、蓋体11a1と中間体11a3とが形成する空間が、シールリングa36によって封止される。
【0049】
また、中間体11a3と、3段目の支持板11aである底体11a2との間に2段目の基板Sを配置する。これにより、中間体11a3の弾性部材a34と、底体11a2の弾性部材a22とによって、2段目の基板Sを挟んで支持する。さらには、底体11a2に対して中間体11a3が積み重なることによって、底体11a2のシールリングa24が中間体11a3によって押しつぶされる。これにより、中間体11a3と底体11a2とが形成する空間が、シールリングa24によって封止される。
【0050】
そして、3つの支持板11aを貫通するように、各支持板11aの貫通孔にボルト13aを通す。ナット13bをボルト13aに螺合させることによって、各支持板11aを締結する。その後、ポート12を通じて収納空間11A内を排気することによって、または、ポート12を通じて収納空間11A内に不活性ガスを導入することによって、基板収納容器10内に収納された基板Sが、排気以降またはガスの導入以降において水分と接触することが抑えられる。
【0051】
図5が示すように、基板収納容器10は、3枚以上の基板Sを収納することが可能である。
図5が示す例では、基板収納容器10は、5枚の基板Sを収納している。この場合には、基板収納容器10が備える中間体11a3を4つ用いることによって、1つの中間体11a3のみを用いる場合に比べて、基板収納容器10が区画する収納空間11Aの容積が拡大される。
【0052】
基板収納容器10では、2段目の支持板11aである第1の中間体11a3と、3段目の支持板11aである第2の中間体11a3との間に、2段目の基板Sが配置される。これにより、第1の中間体11a3の弾性部材a34と、第2の中間体11a3の弾性部材a32とが、2段目の基板Sを挟んで支持する。第2の中間体11a3と、4段目の支持板11aである第3の中間体11a3との間に、3段目の基板Sが配置される。これにより、第2の中間体11a3の弾性部材a34と、第3の中間体11a3の弾性部材a32とが、3段目の基板Sを挟んで支持する。第3の中間体11a3と、5段目の支持板11aである第4の中間体11a3との間に、4段目の基板Sが配置される。これにより、第3の中間体11a3の弾性部材a34と、第4の中間体11a3の弾性部材a32とが、4段目の基板Sを挟んで支持する。
【0053】
以上説明したように、基板収納容器の一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)本体11において収納空間11Aを区画する面11Sが樹脂製である場合と比べて、収納空間11A内に本体11から水分が放出されることが抑えられる。また、収納空間11Aの容積が可変であることによって、収納空間11A内に収納される基板Sの数量に合わせて収納空間11Aの容積を変更することが可能である。そのため、基板Sの容積に対して収納空間11Aの容積が過剰に大きくなることが抑えられる。それゆえに、収納空間11Aを区画する面11Sが大きくなることが抑えられ、これによっても、本体11から収納空間11A内に水分が放出されることが抑えられる。結果として、水分との接触による基板Sの表面での変質を抑えることが可能である。
【0054】
(2)n段目の支持板11aと(n+1)段目の支持板11aとが、n段目の基板Sを支持するため、収納する基板Sの数量に適した容積の収納空間11Aを形成することが可能である。
【0055】
(3)ボルト13aに対するナット13bの螺合によって複数の支持板11aを締結することが可能であるため、複数の支持板11aを締結することが容易である。
【0056】
(4)ナット13bが蓋体11a1の上面a1Uにおいてボルト13aに締結される。そのため、ボルト13aにナット13bを締結するときと、ポート12を通じて収納空間11A内を排気するとき、または、ポート12を通じて収納空間11A内に不活性ガスを導入するときとの両方において、蓋体11a1の上面a1Uが作業者に面するように、基板収納容器10を配置することが可能である。これにより、基板収納容器10に基板を収納する作業の効率を高めることができる。
【0057】
(5)弾性部材によって基板Sが支持されるため、基板Sが金属製の面11Sによって支持される場合に比べて、基板Sにおいて支持板11aと接する部位が、支持板11aとの摩擦によって損傷することが抑えられる。
【0058】
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[本体]
・本体11が備える各支持板11aにおいて、収納空間11Aを区画する面11Sのみが金属製であり、面11S以外の部分が金属以外の材料から形成されてもよい。金属以外の材料は、例えば合成樹脂であってよい。この場合であっても、収納空間11Aを区画する面11Sが金属製である以上は、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0059】
[弾性部材]
・各支持板11aは弾性部材を備えなくてもよい。この場合には、収納空間11A内に水分を放出する部材が減るため、基板Sの表面が水分に接触することがより抑えられる。なお、上述したように、支持板11aにおける金属製の面11Sと基板Sとの摩擦を抑える上では、各支持板11aは、弾性部材を備えることが好ましい。
【0060】
[支持板]
・基板収納容器10は、n段目の支持板11aと(n+1)段目の支持板11aとの間にm枚(mは2以上の整数)の基板Sを挟むことが可能であってもよい。この場合には、例えば、n段目の支持板11aが、m個の窪みを下面に有し、かつ、(n+1)段目の支持板11aが、上面において各窪みと対向する位置に連通孔を備えることが可能である。
【0061】
・基板収納容器10は、2段の支持板11aのみを備えてもよい。この場合であっても、1枚の基板Sに合わせた容積を基板収納容器10は備えることが可能である。なお、例えば、本体11が、蓋体11a1と底体11a2との間に金属製のベローズなどのような伸縮部を有することによって、本体11の容積を変更することが可能であり、かつ、本体11が収納することが可能な基板Sの数量を変更することが可能である。
【0062】
[締結部]
・ナット13bは、最下段の支持板11aである底体11a2と接してもよい。この場合には、ポート12は底体11a2に接続されてもよいし、蓋体11a1に接続されてもよい。ポート12が底体11a2に接続される場合には、上述した(4)に準じた効果を得ることはできる。
【0063】
・基板収納容器10は、互いに異なる長さを有した複数のボルトを備えてもよい。この場合には、基板収納容器10の厚さ、言い換えれば、基板Sの収納に用いられる支持板11aの数に応じて、複数のボルトのうちのいずれかを用いることが可能である。あるいは、基板収納容器10は、1種のボルトのみを備えてもよい。この場合には、ボルトは、基板収納容器10における最大の厚さから最小の厚さまでにわたって、ナットとともに複数の支持板11aを締結することが可能であればよい。
【0064】
・締結部13は、複数の支持板11aを挟むことが可能なクランプでもよい。
[ポート]
・ポート12は、最下段の支持板11aである底体11a2に接続されてもよい。この場合には、ナット13bは、蓋体11a1と接してもよいし、底体11a2と接してもよい。ナット13bが底体11a2と接する場合には、上述した(4)に準じた効果を得ることはできる。
【0065】
・ポート12は、中間体11a3に接続されてもよい。この場合であっても、ポート12を通じて、収納空間11A内を排気すること、あるいは、ポート12を通じて、収納空間11Aに不活性ガスを導入することは可能である。
【0066】
[弾性部材]
・各支持板11aの上面および下面において、複数の弾性部材は、各支持板11aの周方向において等配されなくてもよい。すなわち、各支持板11aの上面および下面において、複数の弾性部材は、各支持板11aの周方向において偏って配置されてもよい。この場合であっても、n段目の支持板11aが有する弾性部材と、(n+1)段目の支持板11aが有する弾性部材とによって基板Sを支持することによって、上述した(5)に準じた効果を得ることはできる。
【0067】
・各支持板11aが備える弾性部材は、基板Sの厚さ方向からみて、他の支持板11aが備える弾性部材に重なるように配置されなくてもよい。また、各中間体11a3において、上面a3Uに位置する各弾性部材a32は、下面a3Bに位置するいずれかの弾性部材a34に重なるように配置されなくてもよい。
【0068】
[基板]
・基板収納容器10が収納する対象は、シリコン基板以外の基板であってもよい。例えば、レジスト膜を表面に有した基板や化合物半導体基板などを基板収納容器10が収納することによって、各基板の表面と水分との接触により、表面において変質が生じることが抑えられる。
【符号の説明】
【0069】
10…基板収納容器、11…本体、11a…支持板、11A…収納空間、11a1…蓋体、11a2…底体、11a3…中間体、11S…面、12…ポート、12V…バルブ、13…締結部、13a…ボルト、13b…ナット、a11,a33…下側溝、a12,a22,a32,a34…弾性部材、a1B,a2B,a3B…下面、a1B1,a3B1…窪み、a1h,a2h,a3h…貫通孔、a1U,a2U,a3U…上面、a1v…通気孔、a21,a31…上側溝、a23,a35…シール用溝、a24,a36…シールリング、a3v…連通孔、S…基板。