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  • 特許-横方向放射を抑制したアンテナアレイ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】横方向放射を抑制したアンテナアレイ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 9/36 20060101AFI20230113BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20230113BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20230113BHJP
   H01Q 19/02 20060101ALI20230113BHJP
   H01Q 9/38 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
H01Q9/36
H01Q13/08
H01Q21/06
H01Q19/02
H01Q9/38
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018168055
(22)【出願日】2018-09-07
(65)【公開番号】P2020043422
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】504202472
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【弁理士】
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】深澤 敦司
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 由美
(72)【発明者】
【氏名】阿部 正治
(72)【発明者】
【氏名】木瀬 昌之
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-187439(JP,A)
【文献】特開2001-127523(JP,A)
【文献】特開平10-126146(JP,A)
【文献】特開2004-325160(JP,A)
【文献】特開2014-075723(JP,A)
【文献】特開平11-068448(JP,A)
【文献】米国特許第05087920(US,A)
【文献】特開2013-034184(JP,A)
【文献】特開平07-245521(JP,A)
【文献】特開2009-100253(JP,A)
【文献】国際公開第2015/083457(WO,A1)
【文献】特開2007-097115(JP,A)
【文献】実開平04-121110(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波の偏波を用いる複数の平面アンテナによって構成されるアンテナアレイであって、
前記平面アンテナはストリップラインを備え、
前記複数の前記平面アンテナのそれぞれは、ストリップライン共振器であり、前記アンテナアレイは、当該ストリップライン共振器を複数用いることにより円偏波アンテナアレイを構成し、
前記複数の平面アンテナの外周部に1個の幅広の導体を設け、
前記導体は、前記平面アンテナにおける電磁界の主な放射方向を向く面の端部に沿って設けられる導体プレートと、前記複数の前記平面アンテナの外側面を覆う筒導体とを有し、前記筒導体の一端は前記導体プレートと接続され、前記筒導体の他端は前記平面アンテナの一部を構成する地導体に接続され、
前記平面アンテナの最上面にはリアクタンス用内導体が設けられ、前記導体プレートは、前記リアクタンス用内導体と同一平面内に配設され、
前記導体プレートは、前記アンテナアレイの外縁における電気的な終端となっていて、当該導体プレートの幅方向の長さにより規定される前記アンテナアレイの終端経路の長さは1/4波長である、アンテナアレイ。
【請求項2】
前記地導体の下方に設置され、前記平面アンテナに背面側から給電する給電配線をさらに備える、請求項1記載のアンテナアレイ。
【請求項3】
前記平面アンテナは、前記地導体、第1誘電体、共振用内導体、第2誘電体、および前記リアクタンス用内導体により構成される平面型共振器であり、
前記複数の前記平面アンテナは、複数の前記共振用内導体および複数の前記リアクタンス用内導体に対して1個の前記地導体により複数の平面型共振器を構成する、
請求項1又は2に記載のアンテナアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦方向に放射するための円偏波平面型アンテナとそれを複数用いたアレイアンテナシステムにおいて、
横方向への放射を抑制することにより、放射特性を向上するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平面型アレイアンテナ(パッチアンテナとも言う)は、マイクロストリップライン、またはトリプレートストリップラインで、共振器を構成し、その共振器から縦方向に放射するよう設計される。これらのアンテナは厚さが薄く、誘電体の使用により、アンテナの大きさを小型にでき、航空機、船舶、衛星通信用として有効である。
【0003】
具体的には、マイクロストリップラインの平面型アレイアンテナでは、平面アンテナとして、誘電体の下面を地導体で覆い、上面の内導体とで共振器を構成し、内導体に給電する。
【0004】
従来のトリプレートストリップラインの平面型アレイアンテナ300では、地導体323、誘電体311、共振用内導体321、誘電体312、およびリアクタンス用内導体322により平面型共振器を構成する(図4参照)。導体322に給電し、導体322は、共振器の同調と縦方向への放射のガイドを兼ねる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はトリプレートストリップライン型平面アンテナを基準に考える。しかし、マイクロストリップライン型にも適用される。
x、y、z軸よりなる3次元を考え、z軸方向への電磁界の放射を想定する。図4に示すように、従来のストリップライン型アンテナでは、誘電体311、誘電体312、地導体323の全体がx-y面内で有限の大きさで周辺が切断されている。
【0006】
平面型アンテナから放射される電磁界は、縦方向(z軸)のみでなく横方向(x、y軸)方向にも放射される。上述の構造では、平面型共振器の周辺で横方向の電磁界が反射し、内部の平面アンテナおよびアレイアンテナの指向性と干渉して、指向特性の劣化、特に利得の低下と狭帯域化をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アンテナの横方向へのマイクロ波の放射を抑制する方法を与える。具体的には、アンテナまたはアレイアンテナの周囲において、終端を短絡した四分の一波長線路を、x-y面内の最外部に設ける。
【0008】
これにより、アンテナからのx-y方向への放射を阻止する。このため、ストリップラインの地導体を縦方向(z軸方向、すなわち電磁界の主な放射方向)に沿って延長し、さらにリアクタンス用内導体と同一平面内で地導体を折り返し、その長さを四分の一波長に定める。
終端短絡の四分の一波長線路は、z方向への円筒と、上面での折り返しとで構成される。筒の形は円、正方形、その他も含み限定されない。
【発明の効果】
【0009】
アンテナ外周に設置した導体は、接続した筒導体および地導体とともに、終端短絡の四分の一線路を構成し、平面型共振器の付近、即ちz軸の原点付近(near field)での横方向(x-y平面)の放射の抑制に有効である。
【0010】
次に、本発明の構造は、z軸方向の指向性の向上をもたらす効果を説明する。
縦方向(z軸)への放射についての指向性は充分遠方の点(far field)で考える。IEEEの規程では波長の10倍以上の距離で規定され、この点で終端短絡の四分の一線路による効果を考える。
【0011】
上記で設けた外周導体は、幅が四分の一波長の導体である。この導体平面はアンテナのガイド(リアクタンス用内導体)の面と同一平面である。円筒の外縁を流れる電界と、アンテナまたはアンテナアレイによる合計の電界とは、回転の向きが互いに逆向きである。従って、充分に遠方で、かつ、アンテナまたはアンテナアレイの外側の領域では、電界は互いに逆方向で相殺しあって0となる。即ち、その部分には等価的に導体の円筒が形成されている。即ち、アンテナまたはアンテナアレイの外周に、円形導波管が設置されていることと等しい。
【0012】
上記、仮想導波管は横方向の放射電界を遮断し、従来横方向に放射されていたマイクロ波のエネルギーは、外部ではなく、内部のz方向に集められる。
従ってz方向の指向性利得が向上する。また同時に横方向への放射、受信電力エネルギーが抑制されるので、横方向からの電波を受信しにくくなり、希望波対不要波の比(DU比)が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明にかかるアンテナの実施の形態を示す縦断面図である。
図2】本発明にかかるアンテナの第2実施形態を示す平面図である。
図3】本発明にかかるアンテナの第3実施形態を示す平面図である。
図4】従来のアンテナの実施の形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明にかかるアンテナの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1に、横方向放射を抑制したアンテナ1の構造を示す。平面型アンテナ1は、トリプレートストリップライン型平面アンテナであり、地導体23、誘電体11、共振用内導体21、誘電体12、およびリアクタンス用内導体22により平面型共振器を構成する。共振用内導体21、リアクタンス用内導体22、地導体23の各素子は基板上に作られ、多層基板によって実現される。給電配線30は地導体23の下部に基板31を介して設置され、導体22に給電する。
【0016】
外周の導体13は、地導体23、誘電体11、共振用内導体22、誘電体12、およびリアクタンス用内導体21により構成される平面型共振器の、z軸方向(電磁界の主な放射方向)上面において端部に沿って設けられる、中央が開口された幅広の平板状の部材であり、z軸方向に軸を有する筒導体14を介して、地導体23に接続し、終端短絡の四分の一波長線路を構成する。
【0017】
筒導体14の上面から見た外形は円、正方形、その他も含み限定されない。外周の導体13の外形は、筒導体14のz軸方向上部の開口の形状に対応している。
【0018】
図2に本発明に係るアレイアンテナの第2実施形態を示す。本実施形態に係るアレイアンテナ100において、筒導体114内部は1/2波長ストリップライン共振器を複数用いた円偏波アレイアンテナで、共振用内導体121a、121b、121cおよび121d、ならびにリアクタンス用内導体122a、122b、122cおよび122dが、それぞれ地導体123とともに平面型共振器を構成している。円編波アレイアンテナのz軸方向上面において、中央が略円形に開口した円形の導体プレート113が端部に沿って設けられ、地導体123と接続されている。導体プレート113は、言い換えれば幅広の円環状の平板である。この導体プレート113は内部のアンテナの最上部、すなわち本形態においてはリアクタンス用内導体122a、122b、122cおよび122dと同一平面に構成される。
【0019】
外周上面の導体プレート113と地導体123の間には、終端短絡1/4波長線路が形成され、これにより平面アンテナの上部の平面に沿うマイクロ波の伝播を阻止する。さらにマイクロ波の伝搬方向(z軸)へのマイクロ波パワーを集中させることにより、利得を増大させる。
【0020】
図3は本発明に係るアレイアンテナの第3実施形態を示す。本実施形態に係るアレイアンテナ200において、筒導体214内部は1/2波長ストリップライン共振器を複数用いた線形偏波アレイアンテナで、そのz軸方向上面において、中央が略矩形に開口した、角を曲線にした矩形の導体プレート213が端部に沿って設けられ、地導体223と接続されている。この導体プレート213は内部のアンテナの最上部、すなわち本形態においてはリアクタンス用内導体222a、222b、222cおよび222dと同一平面に構成される。
【0021】
外周の導体プレート213と地導体223の間には、終端短絡1/4波長線路が形成され、これにより平面アンテナの上部の平面に沿うマイクロ波の伝播を阻止する。さらにマイクロ波の伝搬方向(z軸)へのマイクロ波パワーを集中させることにより、利得を増大させる。
【0022】
なお、上述の各実施形態において、内部のアンテナまたはアレイアンテナの形状に応じて、外周の導体プレートおよび筒導体の外周形状を六角形などの多角形や、その他の形状を用いても同一の効果を得ることができる。
【0023】
また、本発明の技術的思想は、トリプレートストリップライン型平面アンテナに限られるものではなく、マイクロストリップライン型の平面アンテナにも適用される。
【符号の説明】
【0024】
1 アンテナ
13 外周の導体(幅広の導体)
14 筒導体
21 リアクタンス用内導体
22 共振用内導体
23 地導体
図1
図2
図3
図4