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特許7209462荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法
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  • 特許-荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20230113BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230113BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20230113BHJP
   H01J 37/305 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
H01L21/30 541D
G03F7/20 504
H01J37/28 Z
H01J37/305 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017203668
(22)【出願日】2017-10-20
(65)【公開番号】P2019079858
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-04-09
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】中山 貴仁
【合議体】
【審判長】山村 浩
【審判官】松川 直樹
【審判官】金高 敏康
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-38297(JP,A)
【文献】特開平9-246135(JP,A)
【文献】特開昭59-98523(JP,A)
【文献】特開2012-94744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/027
H01L21/30
G03F7/20-7/24
G03F9/00-9/02
H01J37-30-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージに載置された描画対象の基板に対し荷電粒子ビームを照射してパターンを描画する描画部と、
前記ステージ上に設けられたマークと、
前記マークの表面高さを検出する高さ検出器と、
前記荷電粒子ビームの焦点を、前記基板の表面高さ及び検出された前記マークの表面高さにそれぞれ合わせて調整する焦点調整部と、
前記マークの表面高さに焦点を合わせた前記荷電粒子ビームの照射により、前記マーク表面での前記荷電粒子ビームの照射位置を検出する照射位置検出器と、
前記照射位置検出器により検出された前記照射位置から、前記マーク表面での前記荷電粒子ビームのドリフト量を算出し、該ドリフト量に基づいて、前記基板の表面でのドリフトによる照射位置ずれを補正する補正情報を生成するドリフト補正部と、
前記補正情報を用いて、前記荷電粒子ビームの照射位置を補正する描画制御部と、
を備え
前記マークに照射される前記荷電粒子ビームのビーム軸が傾いていることを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項2】
前記焦点調整部は、対物レンズを制御して前記荷電粒子ビームの焦点位置を調整することを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項3】
ステージ上に設けられた単一のマークを用いて荷電粒子ビームを調整し、前記ステージ上に載置された描画対象の基板に対し前記荷電粒子ビームを照射してパターンを描画する荷電粒子ビーム描画方法であって、
前記マークの表面高さを検出する工程と、
前記マークの表面高さに前記荷電粒子ビームの焦点を合わせるように焦点を調整して前記荷電粒子ビームを照射し、前記マークの表面での前記荷電粒子ビームの照射位置を検出する工程と、
検出した前記照射位置から、前記マーク表面での前記荷電粒子ビームのドリフト量を算出する工程と、
前記ドリフト量に基づいて、前記基板の表面でのドリフトによる照射位置ずれを補正する補正情報を生成する工程と、
前記補正情報を用いて、前記荷電粒子ビームの照射位置を補正する工程と、
を備え
前記マークに照射される前記荷電粒子ビームのビーム軸が傾いていることを特徴とする荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項4】
前記マークに対し前記荷電粒子ビームを照射する前に、対物レンズを用いて前記荷電粒子ビームの焦点を前記マークの表面に合わせることを特徴とする請求項3に記載の荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項5】
前記マークに対し前記荷電粒子ビームを照射した後、前記荷電粒子ビームの焦点を前記基板の表面に合わせることを特徴とする請求項3又は4に記載の荷電粒子ビーム描画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、縮小投影型露光装置を用いて、石英上に形成された高精度の原画パターン(マスク、或いは特にステッパやスキャナで用いられるものはレチクルともいう。)をウェーハ上に縮小転写する手法が採用されている。高精度の原画パターンは、電子ビーム描画装置によって描画され、所謂、電子ビームリソグラフィ技術が用いられている。
【0003】
電子ビーム描画装置では、様々な要因により、描画中に電子ビームの照射位置が時間経過と共にシフトするビームドリフトと呼ばれる現象が発生し得る。このビームドリフトをキャンセルするため、ドリフト補正が行われる。ドリフト補正では、ステージ上に配置されたマーク基板に形成された測定用マークを電子ビームで走査し、電子ビームの照射位置を測定して、ドリフト量を求める。
【0004】
描画対象の試料(マスク)の厚さは公差により試料毎に異なり、通常、試料表面の高さと、マーク基板の表面の高さとは一致していない。電子ビームが試料やマーク基板に斜めに入射する場合、表面高さの違いから、マーク表面でのドリフト量と、試料表面でのドリフト量との間には誤差が生じる。マーク表面でのドリフト量をそのままドリフト補正に用いると、誤差分だけドリフト補正が不十分になるという問題があった。
【0005】
特許文献1には、ステージ上に高さが異なる複数のマークを設け、試料表面の高さより低いマークと、試料表面の高さより高いマークとを選択し、選択した2つのマークの表面でのドリフト量から、試料表面でのドリフト量を求め、試料表面とマーク表面との高低差に依存するビーム照射位置のずれを抑える手法が開示されている。
【0006】
しかし、特許文献1の手法では、少なくとも2つのマークを電子ビームで走査し、ドリフト量を測定する必要があるため、描画スループットが低下していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-38297号公報
【文献】特開2002-93678号公報
【文献】特開2001-168013号公報
【文献】特開2014-123613号公報
【文献】特開2003-272996号公報
【文献】特開2016-134486号公報
【文献】特開平9-246135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ドリフト補正を高精度に行い、パターンの描画精度を向上させると共に、描画スループットの低下を抑制することができる荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画装置は、ステージに載置された描画対象の基板に対し荷電粒子ビームを照射してパターンを描画する描画部と、前記ステージ上に設けられたマークと、前記マークの表面高さを検出する高さ検出器と、前記荷電粒子ビームの焦点を、前記基板の表面高さ及び検出された前記マークの表面高さにそれぞれ合わせて調整する焦点調整部と、前記マークの表面高さに焦点を合わせた前記荷電粒子ビームの照射により、前記マーク表面での前記荷電粒子ビームの照射位置を検出する照射位置検出器と、前記照射位置検出器により検出された前記照射位置から、前記マーク表面での前記荷電粒子ビームのドリフト量を算出し、該ドリフト量に基づいて、前記基板の表面でのドリフトによる照射位置ずれを補正する補正情報を生成するドリフト補正部と、前記補正情報を用いて、前記荷電粒子ビームの照射位置を補正する描画制御部と、を備え、前記マークに照射される前記荷電粒子ビームのビーム軸が傾いているものである。
【0010】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画装置において、前記焦点調整部は、対物レンズを制御して前記荷電粒子ビームの焦点位置を調整する。
【0011】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画方法は、ステージ上に設けられた単一のマークを用いて荷電粒子ビームを調整し、前記ステージ上に載置された描画対象の基板に対し前記荷電粒子ビームを照射してパターンを描画する荷電粒子ビーム描画方法であって、前記マークの表面高さを検出する工程と、前記マークの表面高さに前記荷電粒子ビームの焦点を合わせるように焦点を調整して前記荷電粒子ビームを照射し、前記マークの表面での前記荷電粒子ビームの照射位置を検出する工程と、検出した前記照射位置から、前記マーク表面での前記荷電粒子ビームのドリフト量を算出する工程と、前記ドリフト量に基づいて、前記基板の表面でのドリフトによる照射位置ずれを補正する補正情報を生成する工程と、前記補正情報を用いて、前記荷電粒子ビームの照射位置を補正する工程と、を備え、前記マークに照射される前記荷電粒子ビームのビーム軸が傾いているものである。
【0012】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画方法は、前記マークに対し前記荷電粒子ビームを照射する前に、対物レンズを用いて前記荷電粒子ビームの焦点を前記マークの表面に合わせる。
【0013】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画方法は、前記マークに対し前記荷電粒子ビームを照射した後、前記荷電粒子ビームの焦点を前記基板の表面に合わせる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ドリフト補正を高精度に行い、パターンの描画精度を向上させると共に、描画スループットの低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態による電子ビーム描画装置の概略図である。
図2】電子ビームの可変成形を説明する図である。
図3】(a)は正常時のビーム軌道を示す図であり、(b)はビームが傾いて入射する場合のビーム軌道を示す図である。
図4】ビーム軌道の例を示す図である。
図5】マーク表面にフォーカスを合わせた状態を示す模式図である。
図6】実施の形態による描画方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは電子ビームに限るものでなく、イオンビーム等でもよい。
【0017】
図1は本発明の実施形態に係る電子ビーム描画装置の概略図である。図1に示す描画装置1は、描画対象の基板56に電子ビームを照射して所望のパターンを描画する描画部30と、描画部30の動作を制御する制御部10とを備えた可変成形型の描画装置である。
【0018】
描画部30は、電子鏡筒32及び描画室34を有している。電子鏡筒32内には、電子銃40、ブランキングアパーチャ41、第1成形アパーチャ42、第2成形アパーチャ43、ブランキング偏向器44、成形偏向器45、対物偏向器46、照明レンズ47、投影レンズ48、及び対物レンズ49が配置されている。対物レンズ49は、焦点位置をZ軸方向で調整可能なダイナミックフォーカスレンズである。ダイナミックフォーカスレンズとしては、静電レンズ、電磁レンズを用いることができるが、描画中に焦点位置を変更する場合はヒステリシスのない静電レンズが用いられる。
【0019】
描画室34内には、移動可能に配置されたステージ50が配置される。ステージ50上には、基板56が載置される。基板56は、例えば、半導体装置を製造する際の露光用マスク、マスクブランクス、半導体装置が製造される半導体基板(シリコンウェハ)等である。
【0020】
ステージ50は、水平面内で互いに直交するX方向及びY方向に移動可能なXYステージ50a、及びXYステージ50a上に設けられた台座50cを有する。台座50cは、駆動部50bにより、X方向及びY方向に直交するZ方向に移動可能になっている。基板56は、複数の支持ピン50dにより台座50c上に支持されている。ステージ50は、X方向、Y方向及びZ方向に基板56の位置を調整することができる。
【0021】
台座50cの表面には、水平面内でのステージ50(台座50c)の位置を測定するためのミラー50eと、電子ビームBのドリフト量を測定するためのマーク54が設けられている。マーク54は、例えば十字形状やドット形状をなし、シリコン基板上にタンタルやタングステン等の重金属が形成されたものである。高さの異なる複数のマーク54が設けられていてもよい。なお、マーク54は反射型に限定されるものではなく、透過型のマークを用いてもよい。この場合、開口部を有するマークと、開口部を透過した電子の電流量を測定する電流測定器とが設けられる。
【0022】
XYステージ50aには、基板56の表面(試料表面)の高さ基準となる基準高さ部材50fが設けられている。基準高さ部材50fの表面に電子ビームBの焦点を合わせると共に、基準高さ部材50fの表面と基板56の表面とを同じ高さにすることで、基板56の表面に電子ビームBの焦点を合わせることができる。
【0023】
ステージ50の上方には、マーク54に対する電子ビームBの照射により、電子ビームBの照射位置(ビーム位置)を検出する照射位置検出器52が設けられている。照射位置検出器52として、例えば、マーク54が電子ビームBにより走査され、マーク54により反射された反射電子を電流値として検出する電子検出器を用いることができる。検出されたビーム位置は、後述する制御計算機11に通知される。
【0024】
描画室34の外周面には、基板56やマーク54の表面高さを検出する高さ検出器58が設けられている。この高さ検出器58は、特に限定されるものではないが、例えば基板56やマーク54の表面に斜め上方からレーザ光を照射する投光部58aと、反射光を受光する受光部58bとを有するものを用いることができる。受光部58bによる反射光の受光位置から、基板56やマーク54の表面高さを検出することができる。表面高さの検出結果は制御計算機11に通知される。
【0025】
制御部10は、制御計算機11、ステージ位置測定部16、レンズ制御回路17、記憶装置18等を有している。制御計算機11は、ショットデータ生成部12、描画制御部13、ドリフト補正部14、及び焦点調整部15を有する。制御計算機11の各部の入出力データや演算中のデータはメモリ(図示略)に適宜格納される。
【0026】
制御計算機11の各部は、ハードウェアで構成してもよく、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、少なくとも一部の機能を実現するプログラムをCD-ROM等の記録媒体に収納し、電気回路を有するコンピュータに読み込ませて実行させてもよい。
【0027】
記憶装置18(記憶部)は、設計上の図形パターンが配置されたレイアウトデータを描画装置1に入力可能なフォーマットに変換した描画データを格納する。
【0028】
ショットデータ生成部12が記憶装置18から描画データを読み出し、複数段のデータ変換処理を行って装置固有のショットデータを生成する。ショットデータには、例えば、図形種、図形サイズ、照射位置、照射時間等が定義される。描画制御部13は、ショットデータに基づき、描画部30を制御して描画処理を行う。
【0029】
ドリフト補正部14は、基板56の表面でのドリフト量を算出し、ドリフト量をキャンセルするドリフト補正量を求める。ドリフト量の算出方法は後述する。ドリフト補正部14は、ドリフト補正量に基づいて、電子ビームBの偏向量(ビーム照射位置)の補正情報を生成し、描画制御部13に与える。描画制御部13は、この補正情報を用いて描画部30を制御し、ビーム照射位置を補正する。
【0030】
ステージ位置測定部16は、ステージ50の台座56上に固定されたミラー50eにレーザ光を入反射させてステージ50の位置を測定するレーザ測長器を含む。ステージ位置測定部16は、測定したステージ位置を制御計算機11に通知する。
【0031】
レンズ制御回路17は、焦点調整部15からの制御信号に基づいて、対物レンズ49を制御し、電子ビームBのフォーカス位置を調整する。
【0032】
図1では、実施の形態を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置1にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0033】
電子鏡筒32内に設けられた電子銃40から放出された電子ビームBは、ブランキング偏向器44内を通過する際に、ブランキング偏向器44によって、ビームオンの状態ではブランキングアパーチャ41を通過し、ビームオフの状態では、ビーム全体がブランキングアパーチャ41で遮蔽されるように偏向される。ビームオフの状態からビームオンとなり、その後ビームオフになるまでにブランキングアパーチャ41を通過した電子ビームBが1回の電子ビームのショットとなる。
【0034】
ブランキング偏向器44とブランキングアパーチャ41を通過することによって生成された各ショットの電子ビームBは、照明レンズ47により、矩形の開口42a(図2参照)を有する第1成形アパーチャ42に照射される。第1成形アパーチャ42の開口42aを通過することで、電子ビームBは矩形に成形される。
【0035】
第1成形アパーチャ42を通過した第1成形アパーチャ像の電子ビームは、投影レンズ48により第2成形アパーチャ43上に投影される。第2成形アパーチャ43上での第1アパーチャ像の位置は、成形偏向器45によって制御される。これにより、第2成形アパーチャ43の開口43aを通過する電子ビームの形状と寸法を変化させる(可変成形を行う)ことができる。
【0036】
第2成形アパーチャ43を通過した電子ビームは、対物レンズ49により焦点が合わされ、対物偏向器46により偏向されて、ステージ50上の基板56の所望する位置に照射される。
【0037】
描画装置1においては、図3(a)に示すビームB1のように、基板56に対し(ほぼ)垂直にビームが照射されることが望ましい。しかし、各種アンプの安定性、電子銃40の軸ズレ、チャージアップによるビームドリフト等によって、図3(b)に示すビームB2のように、ビーム軸が傾く。
【0038】
図4に示すように、ビーム軸が傾いていないビームB1は、ビームがフォーカスされた基板56の表面位置(Z=0)と、デフォーカスした位置(Z≠0)とで、ビーム位置は変わらない。一方、ビーム軸が傾いているビームB2では、ビーム照射面の高低差によるビーム位置のずれが生じる。
【0039】
例えば、基板56の表面高さと、マーク54の表面高さとが異なる場合、ビーム軸が傾いているビームB2は、基板56とマーク54とで照射位置に誤差が生じる。これにより、マーク54の表面でのドリフト量と、基板56の表面でのドリフト量との間には誤差が生じる。マーク54の表面でのドリフト量をそのまま基板56の表面でのドリフト量とみなしてドリフト補正を行うと、誤差分だけドリフト補正が不十分になる。
【0040】
そこで、本実施形態では、対物レンズ49の焦点位置をずらし、図5に示すように、マーク54の表面に焦点を合わせてから、マーク54の表面でのドリフト量を測定する。これにより、マーク54の表面と、基板56の表面との高低差によるビーム照射位置のズレが抑えられ、基板56の表面でのドリフト量を精度良く求めることができる。
【0041】
このようなドリフト補正処理を含む描画方法を、図6に示すフローチャートを用いて説明する。ドリフト補正処理は、描画処理中、所定の時間間隔で行われる。描画開始直後などビームが安定していない状態では、ドリフト補正を行う間隔は短く、時間の経過に伴い徐々に長くなる。描画処理の開始前に、高さ検出器58が基板56の表面の高さを検出する。描画制御部13が、ステージ50の駆動部50bを制御し、基準高さ部材50fの表面と基板56の表面とを同じ高さにしている。
【0042】
ドリフト補正を行うにあたり、まず、高さ検出器58が、マーク54の表面高さを検出する(ステップS1)。検出されたマーク表面高さを記憶部に格納し、次回以降のドリフト補正時に参照できるようにしてもよい。
【0043】
焦点調整部15が対物レンズ49の焦点位置を調整し、マーク54の表面高さに焦点を合わせる(ステップS2)。例えば、予め高さの異なる複数のマークを使って、対物レンズ49の励磁電流に対する焦点高さの感度を求めておく。ステップS1で検出したマーク表面高さに応じて励磁電流を制御し、マーク54の表面高さに焦点を合わせることができる。
【0044】
ステージ50を移動させ、マーク54を対物レンズ49の中心位置に合わせ、電子ビームBによりマーク54を走査する(ステップS3)。
【0045】
照射位置検出器52が反射電子を検出し、ビームプロファイルを測定して、ビーム照射位置を検出する。ドリフト補正部14が、検出されたビーム照射位置と、基準位置とのずれ量を、マーク表面におけるドリフト量として算出する(ステップS4)。
【0046】
マーク54の表面高さに焦点を合わせた電子ビームBでマーク54を走査したため、ビーム軸が傾いていても、マーク54の表面と基板56の表面との高低差によるビーム照射位置のズレが抑えられている。そのため、マーク54の表面でのドリフト量を、基板56の表面でのドリフト量としてみなすことができる。
【0047】
ドリフト補正部14が、マーク54の表面におけるドリフト量に基づいて、ドリフト補正量を算出する(ステップS5)。
【0048】
焦点調整部15が対物レンズ49の焦点位置を調整し、基板56の表面高さに焦点位置を戻す(ステップS6)。
【0049】
描画制御部13が、記憶装置18から読み出した描画データと、算出されたドリフト補正量に基づいて、ビーム照射位置を補正しながら描画処理を行う(ステップS7)。次のドリフト量の測定時期までは(ステップS8_Yes、ステップS9_No)、ステップS5で算出したドリフト量を用いて、描画処理を行う。
【0050】
このように本実施形態によれば、マーク54の表面高さに焦点を合わせたビームでマーク54を走査してドリフト量を求めるため、マーク表面でのドリフト量と基板表面でのドリフト量との間に生じる誤差が抑えられる。これにより、ドリフト補正を高精度に行い、パターンの描画精度を向上させることができる。また、1個のマーク54を走査してドリフト量を求めればよく、複数のマークを走査する場合と比較して、描画スループットを向上させることができる。
【0051】
上記実施形態では、対物レンズ49の焦点位置をずらしてマーク54をスキャンする例について説明したが、焦点調整部15がステージ50の駆動部50bを制御し、マーク54の表面が焦点位置に合うようにステージ高さを変えてもよい。
【0052】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 描画装置
10 制御部
11 制御計算機
12 ショットデータ生成部
13 描画制御部
14 ドリフト補正部
15 焦点調整部
18 記憶装置
20 ブランキング回路
22 レンズ制御回路
30 描画部
32 電子鏡筒
34 描画室
40 電子銃
41 ブランキングアパーチャ
42 第1成形アパーチャ
43 第2成形アパーチャ
44 ブランキング偏向器
45 成形偏向器
46 対物偏向器
47 照明レンズ
48 投影レンズ
49 対物レンズ
50 ステージ
52 照射位置検出器
54 マーク
56 基板
58 高さ検出器
図1
図2
図3
図4
図5
図6