(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】組成物、その硬化物および硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 290/04 20060101AFI20230113BHJP
C09J 147/00 20060101ALN20230113BHJP
C09J 4/02 20060101ALN20230113BHJP
【FI】
C08F290/04
C09J147/00
C09J4/02
(21)【出願番号】P 2018144249
(22)【出願日】2018-07-31
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】松土 和彦
(72)【発明者】
【氏名】丸山 諒子
(72)【発明者】
【氏名】井上 尭大
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-119231(JP,A)
【文献】特開2004-299263(JP,A)
【文献】特開2011-246517(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141537(WO,A1)
【文献】特開2010-225322(JP,A)
【文献】特開2000-38547(JP,A)
【文献】国際公開第2013/157624(WO,A1)
【文献】特開2017-48257(JP,A)
【文献】特開2015-7191(JP,A)
【文献】特開2017-155144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F290/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン鎖と、アクリレート基またはメタクリレート基と、を有し、重量平均分子量が1,000以上であるポリオレフィン化合物と、
炭素原子数2以上20以下の環構造とエチレン性不飽和基とを有し、分子量が1,000未満の化合物からなる環構造成分と、
を含有し、
前記環構造成分が、炭素原子数が、3以上10以下である脂環式複素環を有する脂環式複素環化合物と、炭素原子数3以上であって、脂肪族炭化水素環を有する脂肪族炭化水素環化合物と、を含み、
前記脂環式複素環を有する脂環式複素環化合物が、アクリルアミド構造を有する化合物及びテトラヒドロフルフリルアクリレート若しくはテトラヒドロフルフリルメタクリレートを含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記ポリオレフィン化合物が、下記一般式(1)で表される末端水酸基を有するポリブタジエンと、下記一般式(2)で表されるジイソシアネート化合物と、の反応物に、下記一般式(3)で表される水酸基およびエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させてなるものであり、
(一般式(1)~(3)中、Aは、ポリブタジエン鎖を表し、mは、1または2を表し、
R
1
およびR
2
は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数3~8のシクロアルキレン基またはそれらの複合した基を表し、
前記炭素原子数3~8のシクロアルキレン基の水素原子の1または2以上は、炭素原子数1~6のアルキル基で置換されている場合があり、
R
3
は、水素原子またはメチル基である。)
前記ポリブタジエン鎖が、未水添ポリブタジエン鎖である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィン化合物の重量平均分子量が、3,500以上15,000以下である請求項
2記載の組成物。
【請求項4】
請求項1~3のうちいずれか一項記載の組成物からなることを特徴とする硬化物。
【請求項5】
請求項1~3のうちいずれか一項記載の組成物を硬化する硬化工程を有することを特徴とする硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、その硬化物および硬化物の製造方法に関し、詳しくは、接着力に優れた接着剤に用いることができる組成物、その硬化物および硬化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化性のアクリル系組成物は、透明性や優れた硬化速度を活かし、接着剤等の用途に用いられている。このようなアクリル系組成物としては、末端にアクリロイル基またはメタクリロイル基を有する、アクリロイル変性樹脂またはメタクリロイル変性樹脂を含むものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、高屈折率を示し、好ましくは改善された接着性および粘度を示す、硬化可能な接着剤、特に紫外線硬化可能な接着剤組成物が提案されている。この接着剤組成物は、高屈折率な接着層を形成可能であるため、レンズ等の光学部材間の接着に有用である旨が記載されている。また、特許文献2および特許文献3では、このようなアクリロイル変性樹脂またはメタクリロイル変性樹脂を含むことで、柔軟性、基材への接着性等に優れた接着剤が提案されており、例えば、画像表示装置を構成する光学部材間の接着に有用である旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-134936号公報
【文献】国際公開第2013/136945号
【文献】特開2015-164981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~3に記載される組成物では、十分な接着力が得られない場合があるといった問題があり、さらなる改善が求められているのが現状である。
【0006】
そこで、本発明の目的は、接着力に優れた接着剤に用いることができる組成物、その硬化物および硬化物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、末端にアクリロイル基またはメタクリロイル基を有する所定のポリオレフィン化合物と、環構造およびエチレン性不飽和基を有する所定の化合物と、を併用することで、接着力に優れた接着剤に用いることができる組成物となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の組成物は、ポリオレフィン鎖と、アクリレート基またはメタクリレート基と、を有し、重量平均分子量が1,000以上であるポリオレフィン化合物と、
炭素原子数2以上20以下の環構造とエチレン性不飽和基とを有し、分子量が1,000未満の化合物からなる環構造成分と、
を含有し、
前記環構造成分が、炭素原子数が、3以上10以下である脂環式複素環を有する脂環式複素環化合物と、炭素原子数3以上であって、脂肪族炭化水素環を有する脂肪族炭化水素環化合物と、を含み、
前記脂環式複素環を有する脂環式複素環化合物が、アクリルアミド構造を有する化合物及びテトラヒドロフルフリルアクリレート若しくはテトラヒドロフルフリルメタクリレートを含むことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の組成物においては、前記ポリオレフィン化合物が、下記一般式(1)で表される末端水酸基を有するポリブタジエンと、下記一般式(2)で表されるジイソシアネート化合物と、の反応物に、下記一般式(3)で表される水酸基およびエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させてなるものであり、
前記ポリブタジエン鎖が、未水添ポリブタジエン鎖であることが好ましい。
(一般式(1)~(3)中、Aは、ポリブタジエン鎖を表し、mは、1または2を表し、
R
1およびR
2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数3~8のシクロアルキレン基またはそれらの複合した基を表し、
前記炭素原子数3~8のシクロアルキレン基の水素原子の1または2以上は、炭素原子数1~6のアルキル基で置換されている場合があり、
R
3は、水素原子またはメチル基である。)
また、本発明の組成物においては、前記ポリオレフィン化合物の重量平均分子量が、3,500以上15,000以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の硬化物は、本発明の組成物からなることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の硬化物の製造方法は、本発明の組成物を硬化する硬化工程を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、接着力に優れた接着剤に用いることができる組成物、その硬化物および硬化物の製造方法を提供することができる。
【0015】
また、環構造成分が、環構造が脂肪族炭化水素環である脂肪族炭化水素環化合物を含むことで、ポリオレフィン化合物の分散安定性に優れたものとなり、ポリオレフィン化合物の重量平均分子量が、3,500以上15,000以下であることで、塗布性に優れたものとなる。さらに、本発明の硬化物は、接着性に優れており、さらにまた、本発明の硬化物の製造方法によれば、接着力に優れた硬化物を容易に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の組成物、その硬化物および硬化物の製造方法の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
A.組成物
まず、本発明の組成物について説明する。本発明の組成物は、ポリオレフィン鎖と、アクリレート基またはメタクリレート基と、を有し、重量平均分子量が1,000以上であるポリオレフィン化合物と、炭素原子数2以上20以下の環構造およびエチレン性不飽和基を有し、重量平均分子量が1,000未満の化合物からなる環構造成分と、を含有する。本発明の組成物は、これらの成分を含むため、接着力に優れたものとなる。ここで、上記各成分を含むことにより、接着力に優れたものとなる理由は、以下のように推察される。
【0018】
本発明の組成物に係るポリオレフィン化合物は、優れた柔軟性を有し、さらに、高分子量であるため、接着力に優れたものとなる。また、環構造成分は、環構造を有することにより、接着力に優れたものとなる。特に、環構造成分が脂環式複素環化合物を含むことにより、接着力に優れたものとなる。さらに、環構造成分が脂肪族炭化水素環化合物を含むことにより、特に、ポリオレフィン化合物の分散安定性を向上することができる。その結果、組成物中に安定的に分散するポリオレフィン化合物により、安定的に良好な接着力が得られる。このようなことから、ポリオレフィン化合物と、環構造成分とを組み合わせることで、接着力に優れたものとなるのである。さらにまた、ポリオレフィン化合物および環構造成分の両者を含むことで、有機材料および無機材料のいずれに対しても優れた接着力を発揮できる。したがって、本発明の組成物は、電子機器等の有機材料および無機材料が組み合わされた部材の接着剤等として、好適に用いることができる。
【0019】
A-1.ポリオレフィン化合物
本発明の組成物に係るポリオレフィン化合物は、ポリオレフィン鎖とアクリレート基またはメタクリレート基とを有し、重量平均分子量が1,000以上であるものである。
【0020】
本発明の組成物においては、高分子鎖としては、オレフィンを重合して得られるポリオレフィン鎖を有している。このようなポリオレフィン鎖としては、ポリブタジエン鎖、ポリイソプレン鎖が好ましく、なかでも、ポリブタジエン鎖、すなわち、ポリオレフィン化合物は、ポリブタジエン化合物であることが好ましい。高分子鎖として上述のポリオレフィン鎖を有することで、本発明の組成物に係るポリオレフィン化合物は、接着力に優れたものとなるからである。
【0021】
ここで、ブタジエン鎖は、ブタジエンを重合させて得られる未水添ブタジエン鎖またはその未水添ブタジエン鎖を水素化して得られる水添ブタジエン鎖である。
【0022】
本発明の組成物においては、接着力により優れたものとするとの観点からは、ブタジエン鎖が、未水添ブタジエン鎖を含むことが好ましい。ポリオレフィン化合物がポリオレフィン鎖として未水添ブタジエン鎖を含むことにより、例えば、ラジカル重合開始剤による重合工程後に加熱処理工程を実施した際に、未水添ブタジエン鎖中の二重結合同士が重合可能となる。その結果、本発明の組成物の硬化物は、架橋密度が高くなり、接着力により優れたものとなるからである。
【0023】
また、本発明の組成物の硬化物に柔軟性を付与できるとの観点からは、ブタジエン鎖が、水添ブタジエン鎖を含むことが好ましい。ポリオレフィン化合物がポリオレフィン鎖として水添ブタジエン鎖を含むことにより、例えば、ラジカル重合開始剤による重合工程後に加熱処理工程を実施しても、水添ブタジエン鎖は、鎖中に二重結合が無いため重合しない。その結果、本発明の組成物の硬化物は、架橋密度が低くなり、柔軟性に優れたものとなるからである。なお、水添ポリブタジエン鎖は、未水添ポリブタジエン鎖中の二重結合が100%水素添加されている必要はなく、例えば、ポリブタジエン鎖のヨウ素価が21以下であるものとすることができる。ヨウ素価は、JIS K 0070に準拠して測定することができる。
【0024】
本発明の組成物においては、ブタジエン鎖としては、より具体的には、下記式(a)で表される1,4-結合による繰り返し単位および下記式(b)で表される1,2-結合による繰り返し単位を骨格として有するものが挙げられる。
【0025】
【0026】
ここで、式(a)中、実線と点線の二重線部分は単結合または二重結合を表し、*は、結合箇所を表す。波線は二重結合の場合に、シス体またはトランス体のいずれかを表す。
【0027】
【0028】
ここで、式(b)中、実線と点線の二重線部分は単結合または二重結合を表し、*は、結合箇所を表す。
【0029】
式(a)および(b)中において、実線と点線の二重線部分が二重結合の場合は水素未添加の未水添ポリブタジエン鎖であり、単結合の場合は水素化して得られる水添ポリブタジエン鎖を表すものである。
【0030】
本発明の組成物においては、ブタジエン鎖は、式(a)で表される1,4-結合による繰り返し単位が、二重結合を有する場合には、トランス体、シス体、またはそれらの混合体が存在しうる。
【0031】
本発明の組成物においては、ブタジエン鎖の1,4-結合による繰り返し単位と1,2-結合による繰り返し単位との比率は、それぞれ0モル%以上100モル%以下とすることができる。すなわち、上記ブタジエン鎖は、1,4-結合による繰り返し単位または1,2-結合による繰り返し単位のみの高分子鎖であってもよく、1,4-結合による繰り返し単位と1,2-結合による繰り返し単位の混在した高分子鎖であってもよい。
【0032】
本発明の組成物においては、なかでも、ブタジエン鎖中の1,2-結合による繰り返し単位の比率が75モル%以上100モル%以下であり、1,4-結合による繰り返し単位の比率が0モル%以上25モル%以下が好ましい。かかる比率であることで、本発明の組成物は、接着力に優れたものとなるからである。
【0033】
このようなポリブタジエン鎖を有するポリオレフィン化合物としては、下記一般式(1)で表される末端水酸基を有するポリブタジエンと、下記一般式(2)で表されるジイソシアネート化合物と、の反応物に、下記一般式(3)で表される水酸基およびエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させてなるものを好ましく用いることができる。
【0034】
【0035】
ここで、一般式(1)~(3)中、Aは、ポリブタジエン鎖を表し、mは、1または2を表し、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数3~8のシクロアルキレン基またはそれらの複合した基を表し、炭素原子数3~8のシクロアルキレン基の水素原子の1または2以上は、炭素原子数1~6のアルキル基で置換されていてもよく、R3は、水素原子またはメチル基を表す。
【0036】
一般式(1)中のAは、ポリブタジエン鎖であり、未水添ブタジエン鎖、水添ブタジエン鎖のいずれであってもよく、例えば、式(a)で表される1,4-結合による繰り返し単位および式(b)で表される1,2-結合による繰り返し単位を骨格として有するものとすることができる。
【0037】
一般式(2)および(3)中のR1およびR2に用いられる炭素原子数1~10のアルキレン基としては、直鎖または分岐鎖を有してもよく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、ペンチレン基、1-メチルブチレン基、2-メチルブチレン基、へキシレン基等が挙げられる。
【0038】
一般式(2)および(3)中のR1およびR2に用いられる炭素原子数3~8のシクロアルキレン基としては、シクロプロピレン、2-メチルシクロプロピレン、シクロブチレン、2,2-ジメチルシクロブチレン、シクロペンチレン、2,3-ジメチルシクロペンチレン、シクロヘキシレン、1,3,3-トリメチルシクロヘキシレン、シクロオクチレン等が挙げられる。
【0039】
炭素原子数3~8のシクロアルキレン基の水素原子を置換しうる炭素原子数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、1-メチル-n-プロピル基、2-メチル-n-プロピル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1-イソプロピル-n-プロピル基等を挙げることができる。
【0040】
一般式(2)および(3)中のR1およびR2の「それらの複合した基」とは、「炭素原子数1~10のアルキレン基と、炭素原子数1~6のアルキル基で置換されていてもよい炭素原子数3~8のシクロアルキレン基とが結合した基」を意味する。なお、炭素原子数3~8のシクロアルキレン基の炭素原子数は、水素原子が炭素原子数1~6のアルキル基で置換基されている場合、炭素原子数1~6のアルキル基の炭素原子数を含まない数である。
【0041】
一般式(1)で表される末端水酸基を有するポリブタジエンの数平均分子量は、所望の接着力を得られるものであればよいが、1,000以上100,000以下が好ましく、なかでも、1,000以上5,000以下が好ましく、特に、1,000以上3,500以下が好ましく、なかでも特に、1,000以上2,500以下が好ましい。数平均分子量がかかる範囲であることで、本発明の組成物に係るポリオレフィン化合物は、塗布性および接着力に優れたものとなるからである。
【0042】
ここで、数平均分子量および重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。数平均分子量Mnおよび重量平均分子量Mwは、例えば、日本分光(株)製のGPC(LC-2000plusシリーズ)を用い、溶出溶剤をテトラヒドロフランとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw1110000、707000、397000、189000、98900、37200、13700、9490、5430、3120、1010、589(東ソー(株)社製 TSKgel標準ポリスチレン)とし、測定カラムをKF-804、KF-803、KF-802(昭和電工(株)製)として測定して得ることができる。また、測定温度は40℃とすることができ、流速は1.0mL/分とすることができる。
【0043】
R1としては、なかでも、炭素原子数1~6のアルキル基を置換基として有している炭素原子数3~8のシクロアルキレン基または無置換の炭素原子数3~8のシクロアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基を1または2以上置換基として有している炭素原子数4~8のシクロアルキレン基がより好ましい。R1がこれらの基であることで、本発明の組成物に係るポリオレフィン化合物は、環構造成分との相溶性に優れたものとなるからである。
【0044】
一般式(2)で表されるジイソシアネート化合物としては、具体的には、メチルジイソシアネート、1,2-エタンジイルジイソシアネート、1,3-プロパンジイルジイソシアネート、1,6-ヘキサンジイルジイソシアネート、3-メチル-オクタン-1,8-ジイルジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、1,2-シクロプロパンジイルジイソシアネート、1,3-シクロブタンジイルジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイルジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4-メチル-シクロヘキサン-1,3-ジイル-ジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられる。なかでも、脂環式ジイソシアネートが好ましく、特に、イソホロンジイソシアネートが好ましい。脂環式ジイソシアネートであることで、本発明の組成物に係るポリオレフィン化合物は、環構造成分との相溶性に優れたものとなるからである。ジイソシアネート化合物の使用量は、末端水酸基を有するポリブタジエンの水酸基に対して、0.2倍モル以上2倍モル以下とすることができる。
【0045】
一般式(3)で表される水酸基およびエチレン性不飽和基を有する化合物におけるR2としては、直鎖または分岐鎖を有する炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、直鎖または分岐鎖を有する炭素原子数1~5のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~3のアルキレン基がさらに好ましく、なかでも、エチレン基(-CH2-CH2-)が好ましい。R2がこれらの基であることで、本発明の組成物に係るポリオレフィン化合物は、環構造成分との相溶性に優れたものとなるからである。
【0046】
水酸基およびエチレン性不飽和基を有する化合物としては、より具体的には、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-ヒドロキシ-n-プロピルアクリレート、3-ヒドロキシ-n-プロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-n-プロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-n-プロピルメタクリレート、2-ヒドロキシイソプロピルアクリレート、2-ヒドロキシイソプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシ-n-ブチルアクリレート、2-ヒドロキシ-n-ブチルアクリレート、3-ヒドロキシ-n-ブチルアクリレート、5-ヒドロキシ-n-ペンチルアクリレート、5-ヒドロキシ-n-ペンチルメタクリレート、2-ヒドロキシ-n-ペンチルアクリレート、2-ヒドロキシ-n-ペンチルメタクリレート、3-ヒドロキシ-n-ペンチルアクリレート、3-ヒドロキシ-n-ペンチルメタクリレート、4-ヒドロキシ-n-ペンチルアクリレート、4-ヒドロキシ-n-ペンチルメタクリレート、2-ヒドロキシシクロプロピルアクリレート、2-ヒドロキシシクロプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシシクロペンチルアクリレート、3-ヒドロキシシクロペンチルメタクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシルアクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシルメタクリレート等が挙げられ、なかでも、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-ヒドロキシ-n-プロピルアクリレート、3-ヒドロキシ-n-プロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-n-プロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-n-プロピルメタクリレート、2-ヒドロキシイソプロピルアクリレート、2-ヒドロキシイソプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシ-n-ブチルアクリレート、2-ヒドロキシ-n-ブチルアクリレート、3-ヒドロキシ-n-ブチルアクリレート、5-ヒドロキシ-n-ペンチルアクリレート、5-ヒドロキシ-n-ペンチルメタクリレート、2-ヒドロキシ-n-ペンチルアクリレート、2-ヒドロキシ-n-ペンチルメタクリレート、3-ヒドロキシ-n-ペンチルアクリレート、3-ヒドロキシ-n-ペンチルメタクリレート、4-ヒドロキシ-n-ペンチルアクリレート、4-ヒドロキシ-n-ペンチルメタクリレートが好ましく、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-ヒドロキシ-n-プロピルアクリレート、3-ヒドロキシ-n-プロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-n-プロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-n-プロピルメタクリレート、2-ヒドロキシイソプロピルアクリレート、2-ヒドロキシイソプロピルメタクリレートがより好ましく、特に、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。一般式(3)で表される水酸基およびエチレン性不飽和基を有する化合物が、これらの化合物であることで、本発明の組成物に係るポリオレフィン化合物は、環構造成分との相溶性に優れたものとなるからである。
【0047】
なお、末端水酸基を有するポリブタジエンの製造方法、末端水酸基を有するポリブタジエンとジイソシアネート化合物とを反応させて反応物を製造する方法、得られた反応物に水酸基およびエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させる方法については、特開2011-116965号公報等に記載の公知の方法を用いることができる。
【0048】
本発明の組成物に係るポリオレフィン化合物としては、なかでも、下記一般式(4)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0049】
【0050】
ここで、一般式(4)中、A、R1、R2およびR3は、一般式(1)~(3)と同様とすることができる。nは、1~100の整数が好ましく、2~15の範囲がより好ましく、3~12の範囲がさらに好ましく、特に、4~10の範囲が好ましい。nがかかる範囲であることで、本発明の組成物は、接着力に優れたものとなるからである。
【0051】
本発明の組成物に係るポリオレフィン化合物の重量平均分子量としては、所望の接着力を得られるものであればよいが、例えば、2,500以上25,000以下が好ましく、3,500以上15,000以下がより好ましく、4,000以上12,000以下がさらに好ましく、特に、5,000以上10,000以下が好ましい。重量平均分子量がかかる範囲であることで、ポリオレフィン化合物は、塗布性および接着力に優れたものとなるからである。
【0052】
本発明の組成物において、ポリオレフィン化合物の含有量は、所望の接着力が得られるものであればよく、例えば、組成物の固形分100質量部中、10質量部以上90質量部以下が好ましく、15質量部以上70質量部以下がより好ましく、20質量部以上65質量部以下がさらに好ましく、特に、30質量部以上50量部以下が好ましい。本発明の組成物に係るポリオレフィン化合物の含有量がかかる範囲であることで、本発明の組成物は、塗布性および接着力に優れたものとなるからである。なお、固形分とは、溶剤以外の全ての成分を含むものである。
【0053】
2.環構造成分
本発明の組成物に係る環構造成分は、炭素原子数2以上20以下の環構造およびエチレン性不飽和基を有し、分子量が1,000未満である化合物(以下、「環構造化合物」とも称す。)からなるものである。
【0054】
エチレン性不飽和基としては、メタクリル基、アクリル基、ビニル基等が挙げられる。
【0055】
エチレン性不飽和基の数は、一分子内に1つ、すなわち、環構造含有化合物は単官能化合物であってもよく、一分子内に2つ以上、すなわち、多官能化合物であってもよい。
【0056】
本発明の組成物においては、炭素原子数2以上20以下の環構造とは、1つの環構造中の環を構成する最低限の原子(以下、「環形成原子」とも称す)中の炭素原子数が2以上20以下であるものを示す。また、環構造がナフタレン環等の縮合環を含む構造、ノルボルナン環等の架橋縮合環を含む構造またはジシクロペンタニル基等の縮合環および架橋縮合環の両者を含む構造等の縮合環構造である場合、縮合環構造全体を1つの環構造とする。したがって、環構造が上記縮合環構造である場合には、縮合環構造中の炭素原子数が2以上20以下を満たすものであればよい。
【0057】
例えば、モルフォリンアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートおよびトリシクロデカンジメタノールジアクリレートは、それぞれ、炭素原子数4、炭素原子数7、炭素原子数10、炭素原子数5および炭素原子数10の環構造を有するものである。なお、環構造化合物が一分子内に複数の環構造を含む場合には、それぞれの環構造の炭素原子数が2以上20以下であればよい。
【0058】
本発明の組成物においては、環構造化合物一分子中の環構造の数としては、1以上であればよく、1以上10以下が好ましく、なかでも、1以上3以下が好ましい。環構造化合物一分子中の環構造の数がかかる範囲であることで、本発明の組成物は、接着力に優れたものとなるからである。なお、上述のように、縮合環構造は、1つの環構造とする。したがって、ジシクロペンタニルアクリレートは、環構造の数が1つの環構造化合物の例を表すものである。
【0059】
本発明の組成物においては、環構造化合物の環構造として、芳香族炭化水素環、脂肪族炭化水素環等の炭化水素環、芳香族複素環、脂環式複素環等の複素環を挙げることができる。なお、本発明の環構造成分に係る環構造化合物は、炭化水素環と複素環との両者を含む場合には、複素環化合物に該当するものとする。また、上記環構造化合物は、芳香族環と炭化水素環又は脂環式環とを含む場合には、芳香族環化合物に該当するものとする。したがって、一分子中に環構造として芳香族炭化水素環と脂肪族炭化水素環とを有する環構造化合物は、芳香族炭化水素環化合物に含まれるものとする。また、一分子中に環構造として芳香族炭化水素環と芳香族複素環とを有する環構造化合物は、芳香族複素環化合物に含まれるものとする。
【0060】
芳香族炭化水素環としては、環形成原子が炭素原子のみであり、芳香族性を有するものであればよく、ベンゼン環、ナフタレン環等を挙げることができる。
【0061】
上記芳香族炭化水素環の炭素原子数としては、接着力に優れたものとする観点からは、炭素原子数は6以上15以下が好ましく、特に、炭素原子数は6以上12以下が好ましい。
【0062】
環構造が芳香族炭化水素環である芳香族炭化水素環化合物としては、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノールアルキレンオキサイド変性アクリレート、フェノールアルキレンオキサイド変性メタクリレート、アルキルフェノールアルキレンオキサイド変性アクリレート、アルキルフェノールアルキレンオキサイド変性メタクリレート、p-クミルフェノールアルキレンオキサイド変性アクリレート、p-クミルフェノールアルキレンオキサイド変性メタクリレート、o-フェニルフェノールアルキレンオキサイド変性メタクリレート、o-フェニルフェノールアルキレンオキサイド変性アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシエチルメタクリレート等を挙げることができる。
【0063】
芳香族炭化水素環化合物としては、1つ以上のエポキシ基と芳香族炭化水素環を併有する芳香族エポキシ化合物に、不飽和カルボン酸を付加させた芳香族エポキシアクリレートも用いることができる。
【0064】
芳香族エポキシ化合物としては、芳香族炭化水素環とエポキシ基とを含む化合物であればよく、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、カテコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル等のフェニルジグリシジルエーテル;ビスフェノール-A型エポキシ化合物、ビスフェノール-F型エポキシ化合物、ビスフェノール-S型エポキシ化合物、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンのエポキシ化合物等のビスフェノール型エポキシ化合物;臭素化ビスフェノール-A型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノール-F型エポキシ化合物等のハロゲン化ビスフェノール型エポキシ化合物;フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、ビスフェノール-Aノボラック型エポキシ化合物、ナフタレン骨格含有エポキシ化合物等を挙げることができる。
【0065】
不飽和カルボン酸としては、カルボキシ基とエチレン性不飽和基とを有する化合物であればよく、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、o-、m-、p-ビニル安息香酸、アクリル酸またはメタクリル酸のα位ハロアルキル、アルコキシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ置換体等のモノカルボン酸、2-アクリロイロキシエチルコハク酸、2-メタクリロイロキシエチルコハク酸、2-アクリロイロキシエチルアジピン酸、2-メタクリロイロキシエチルアジピン酸、2-アクリロイロキシエチルフタル酸、2-メタクリロイロキシエチルフタル酸、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-アクリロイロキシエチルマレイン酸、2-メタクリロイロキシエチルマレイン酸、2-アクリロイロキシプロピルコハク酸、2-メタクリロイロキシプロピルコハク酸、2-アクリロイロキシプロピルアジピン酸、2-メタクリロイロキシプロピルアジピン酸、2-アクリロイロキシプロピルテトラヒドロフタル酸、2-メタクリロイロキシプロピルテトラヒドロフタル酸、2-アクリロイロキシプロピルフタル酸、2-メタクリロイロキシプロピルフタル酸、2-アクリロイロキシプロピルマレイン酸、2-メタクリロイロキシプロピルマレイン酸、2-アクリロイロキシブチルコハク酸、2-メタクリロイロキシブチルコハク酸、2-アクリロイロキシブチルアジピン酸、2-メタクリロイロキシブチルアジピン酸、2-アクリロイロキシブチルヒドロフタル酸、2-メタクリロイロキシブチルヒドロフタル酸、2-アクリロイロキシブチルフタル酸、2-メタクリロイロキシブチルフタル酸、2-アクリロイロキシブチルマレイン酸、2-メタクリロイロキシブチルマレイン酸、アクリル酸またはメタクリル酸にε-カプロラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン等のラクトン類を付加させたものである単量体、或いはヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレートに(無水)コハク酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸等の酸(無水物)を付加させた単量体、アクリル酸ダイマーやメタクリル酸ダイマー等が挙げられる。
【0066】
本発明の組成物においては、芳香族炭化水素環化合物中のエチレン性不飽和基の数としては、1以上5以下が好ましく、1以上3以下がより好ましく、特に、2以上3以下が好ましい。エチレン性不飽和基の数がかかる範囲であることで、接着力に優れたものとなるからである。
【0067】
本発明の組成物においては、芳香族炭化水素環化合物の含有量としては、本発明の組成物の固形分100質量部中、90質量部以下が好ましく、5質量部以上70質量部以下がより好ましく、10質量部以上50質量部以下がさらに好ましく、特に、15質量部以上30質量部以下が好ましい。芳香族炭化水素環化合物の含有量をかかる範囲とすることで、本発明の組成物は、接着力に優れたものとなるからである。
【0068】
上記脂肪族炭化水素環としては、環形成原子が炭素原子のみであり、かつ、芳香族性を有しないものであればよく、シクロヘキサン環、イソボルニル環、アダマンタン環、ジシクロペンテン環、ジシクロペンタン環、トリシクロデカン環、ノルボルネン環、ノルボルナン環等が挙げられる。
【0069】
上記脂肪族炭化水素環の炭素原子数としては、ポリオレフィン化合物の分散安定性および接着力に優れたものとする観点からは、炭素原子数は6以上15以下が好ましく、特に、炭素原子数は6以上12以下が好ましい。
【0070】
環構造が脂肪族炭化水素環である脂肪族炭化水素環化合物としては、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、アダマンチルアクリレート、アダマンチルメタクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、トリシクロデカンアクリレート、トリシクロデカンメタクリレート等を挙げることができる。
【0071】
脂肪族炭化水素環化合物としては、上記芳香族エポキシ化合物の水添物のエポキシ基に不飽和カルボン酸を付加させた化合物も用いることができる。
【0072】
脂肪族炭化水素環化合物は、ポリオレフィン化合物の分散安定性および接着力に優れたものとする観点からは、ジシクロペンタニルアクリレートまたはジシクロペンタニルメタクリレート等の脂肪族炭化水素環が架橋縮合環を含む構造である化合物が好ましい。
【0073】
本発明の組成物においては、脂肪族炭化水素環化合物中のエチレン性不飽和基の数としては、1以上5以下が好ましく、1以上3以下がより好ましく、特に、2以上3以下が好ましい。エチレン性不飽和基の数がかかる範囲であることで、接着力に優れたものとなるからである。
【0074】
本発明の組成物においては、脂肪族炭化水素環化合物の含有量としては、本発明の組成物の固形分100質量部中、90質量部以下が好ましく、1質量部以上70質量部以下がより好ましく、3質量部以上60質量部以下がさらに好ましく、特に、5質量部以上40質量部以下が好ましく、なかでも特に、6質量部以上20質量部以下が好ましい。脂肪族炭化水素環化合物の含有量をかかる範囲とすることで、本発明の組成物は、ポリオレフィン化合物の分散安定性および接着力に優れたものとなるからである。
【0075】
上記芳香族複素環としては、環形成原子が炭素原子以外の原子を含み、芳香族性を有するものであればよく、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、ナフチリジン環、シンノリン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、チオフェン環、フラン環、チアゾール環、オキサゾール環、インドール環、イソインドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンズトリアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、プリン環、カルバゾール環等を挙げることができる。
【0076】
上記芳香族複素環としては、接着力に優れたものとする観点からは、炭素原子数が4以上15以下の複素環が好ましく、特に、炭素原子数が4以上10以下の複素環が好ましい。
【0077】
環構造が芳香族複素環である芳香族複素環化合物としては、2-アクリロイロキシエチル-N-カルバゾールまたは2-メタアクリロイロキシエチル-N-カルバゾール等を挙げることができる。
【0078】
本発明の組成物においては、芳香族複素環化合物の含有量としては、本発明の組成物の固形分100質量部中、90質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、60質量部以下がさらに好ましく、特に、50質量部以下が好ましい。芳香族複素環化合物の含有量をかかる範囲とすることで、本発明の組成物は、接着力に優れたものとなるからである。
【0079】
上記脂環式複素環としては、環形成原子が炭素原子以外の原子を含み、芳香族性を有しないものであればよく、例えば、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、ホモピペリジン環、ホモピペラジン環、テトラヒドロピリジン環、テトラヒドロキノリン環、テトラヒドロイソキノリン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、ジヒドロベンゾフラン環、テトラヒドロカルバゾール環、カプロラクタム環、イソシアヌル環、ヒダントイン環等を挙げることができる。
【0080】
上記脂環式複素環としては、接着力に優れたものとする観点からは、炭素原子数が3以上10以下の複素環が好ましく、炭素原子数が3以上6以下の複素環がより好ましい。
【0081】
環構造が脂環式複素環である脂環式複素環化合物としては、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等が挙げられる。
【0082】
また、脂環式複素環化合物として、アクリロイルモルホリン、メタクリロイルモルホリン、アクリロイルピペリジン、メタクリロイルピペリジン、アクリロイルピロリジン、メタクリロイルピロリジン、1,4-ジアクリロイルピペラジン、1,4-ジメタクリロイルピペラジン等のアクリルアミド構造を有する化合物も挙げられる。
【0083】
さらに、脂環式複素環化合物として、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、モノアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノプロピルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノベンジルイソシアヌレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリメタクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌル環含有化合物も用いることができる。
【0084】
本発明の組成物においては、脂環式複素環化合物は、接着力に優れたものとする観点からは、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、アクリロイルモルホリン、メタクリロイルモルホリン、イソシアヌル環含有化合物等の単環の化合物であることが好ましい。
【0085】
また、本発明の組成物においては、脂環式複素環化合物は、ガラス転移温度が高く、接着力に優れた硬化物を容易に得られるとの観点からは、アクリロイルモルホリンまたはメタクリロイルモルホリン等のアクリルアミド構造を有する化合物であることが好ましい。
【0086】
本発明の組成物においては、脂環式複素環化合物が、アクリルアミド構造を有し、かつ、単環である化合物であることが好ましい。脂環式複素環化合物がかかる構造を有することで、接着力により優れたものとすることが容易だからである。また、ポリオレフィン化合物の分散安定性に優れたものとすることが容易だからである。
【0087】
本発明の組成物においては、脂環式複素環化合物としてのアクリルアミド構造を有する化合物の含有量は、所望のガラス転移温度および接着力を得られるものであればよいが、例えば、本発明の組成物の固形分100質量部中、90質量部以下が好ましく、5質量部以上60質量部以下がより好ましく、特に、10質量部以上50質量部以下が好ましい。アクリルアミド構造を含有する化合物の含有量をかかる範囲とすることで、本発明の組成物は、ガラス転移温度の高い硬化物を得られるとの効果および接着力のバランスに優れたものとなるからである。
【0088】
本発明の組成物においては、脂環式複素環化合物としてのアクリルアミド構造を有する化合物の含有量は、接着力および塗布性等のバランスの観点からは、本発明の組成物の固形分100質量部中に、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【0089】
本発明の組成物においては、脂環式複素環化合物としてのアクリルアミド構造を有する化合物の含有量は、接着力により優れたものとするとの観点からは、本発明の組成物の固形分100質量部中に、30質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましい。
【0090】
本発明の組成物においては、脂環式複素環化合物としてのアクリルアミド構造を有する化合物の含有量は、所望の接着力を得られるものであればよいが、例えば、本発明の組成物に係るポリオレフィン化合物100質量部に対して、200質量部以下が好ましく、5質量部以上180質量部以下がより好ましく、10質量部以上150質量部以下がさらに好ましく、20質量部以上120質量部以下が特に好ましく、30質量部以上110質量部以下が最も好ましい。アクリルアミド構造を有する化合物の含有量をかかる範囲とすることで、本発明の組成物は、ガラス転移温度の高い硬化物を得られるとの効果および接着力のバランスに優れたものとなるからである。
【0091】
本発明の組成物においては、脂環式複素環化合物としてのアクリルアミド構造を有する化合物の含有量は、接着力および塗布性等のバランスの観点からは、本発明の組成物にかかるポリオレフィン化合物100質量部に対して、60質量部以下が好ましく、35質量部以上50質量部以下がより好ましい。
【0092】
本発明の組成物においては、脂環式複素環化合物としてのアクリルアミド構造を有する化合物の含有量は、接着力により優れたものとする観点からは、本発明の組成物に係るポリオレフィン化合物100質量部に対して、50質量部以上が好ましく、80質量部以上がより好ましい。
【0093】
本発明の組成物においては、脂環式複素環化合物中のエチレン性不飽和基の数としては、1以上5以下が好ましく、1以上3以下がより好ましく、1以上2以下がさらに好ましい。エチレン性不飽和基の数がかかる範囲であることで、硬化収縮が少ないものとなる結果、接着力に優れたものとなるからである。また、ガラス転移温度の高い硬化物を得られるとの効果および硬化収縮が少ないものとなる効果のバランスの観点からは、脂環式複素環化合物中のエチレン性不飽和基の数は、2以上5以下が好ましく、2以上4以下であることがより好ましい。
【0094】
本発明の組成物においては、脂環式複素環化合物の含有量としては、本発明の組成物の固形分100質量部中、90質量部以下が好ましく、10質量部以上75質量部以下がより好ましく、15質量部以上70質量部以下がさらに好ましく、25質量部以上65質量部以下が特に好ましく、30質量部以上60質量部以下が最も好ましい。脂環式複素環化合物の含有量をかかる範囲とすることで、本発明の組成物は、接着力に優れたものとなるからである。
【0095】
本発明の組成物においては、環構造成分は、接着力に優れたものとする観点からは、脂環式複素環化合物を含むことが好ましい。また、ポリオレフィン化合物の分散安定性を良好なものとする観点からは、環構造成分は、脂肪族炭化水素環化合物、芳香族炭化水素環化合物等を含むことが好ましい。一方、ポリオレフィン化合物の分散安定性および接着力に優れたものとする観点からは、環構造成分は、脂環式複素環化合物と、脂肪族炭化水素環化合物および芳香族炭化水素環化合物の少なくとも一方と、の組み合わせであることが好ましい。より具体的には、環構造成分は、脂環式複素環化合物として、アクリロイルモルホリンまたはメタクリロイルモルホリン等のアクリルアミド構造を有する化合物等と、脂肪族炭化水素環化合物として、ジシクロペンタニルアクリレートまたはジシクロペンタニルメタクリレート等の脂肪族炭化水素環が架橋縮合環を含む構造である化合物等と、の組み合わせであることが好ましい。
【0096】
環構造成分が脂環式複素環化合物と、脂肪族炭化水素環化合物および芳香族炭化水素環化合物の少なくとも一方と、の組み合わせである場合、脂肪族炭化水素環化合物および芳香族炭化水素環化合物の合計の含有量は、脂環式複素環化合物100質量部に対して、5質量部以上200質量部以下が好ましく、10質量部以上70質量部以下がより好ましく、15質量部以上60質量部以下がさらに好ましく、特に20質量部以上40質量部以下が好ましい。脂肪族炭化水素環化合物および芳香族炭化水素環化合物の合計の含有量をかかる範囲とすることで、本発明の組成物は、ポリオレフィン化合物の分散安定性および接着力に優れたものとなるからである。
【0097】
本発明の組成物においては、環構造成分の含有量は、所望の接着力を得られるものであればよいが、本発明の組成物の固形分100質量部中、10質量部以上90質量部以下が好ましく、15質量部以上80質量部以下がより好ましく、20質量部以上70質量部以下がさらに好ましく、30質量部以上60質量部以下が特に好ましく、40質量部以上50質量部以下が最も好ましい。環構造成分の含有量をかかる範囲とすることで、本発明の組成物は、接着力に優れたものとなるからである。
【0098】
本発明の組成物においては、環構造成分の含有量は、所望の接着力を得られるものであればよいが、本発明の組成物に係るポリオレフィン化合物100質量部に対して、1質量部以上400質量部以下が好ましく、5質量部以上350質量部以下がより好ましく、10質量部以上300質量部以下がさらに好ましく、30質量以上250質量部以下が特に好ましく、中でも特に60質量部以上150質量部以下が好ましく、80質量部以上120質量部以下であることが好ましい。環構造成の含有量をかかる範囲とすることで、本発明の組成物は、接着力に優れたものとなるからである。
【0099】
3.ラジカル重合性成分
本発明の組成物は、ポリオレフィン化合物および環構造成分以外のラジカル重合性化合物を含むことができる。ラジカル重合性化合物としては、環構造を含まず、分子量が1,000未満のエチレン性不飽和基を有するラジカル重合性化合物からなるものを用いることができる。このようなラジカル重合性化合物としては、公知の化合物を用いることができ、例えば、特開2016-176009号公報に記載のラジカル重合性化合物の中から、選択することができる。
【0100】
本発明の組成物においては、なかでも、ラジカル重合性化合物が、アクリルアミド構造を有する化合物であることが好ましい。かかる化合物を用いることで、本発明の組成物は、例えば、アクリルアミド構造を有する化合物として、環構造成分のみを含む場合と比較して、低粘度とすることが容易であると共に、基材への濡れ性の調整が容易となるからである。また、ガラス転移温度が高く、耐熱性に優れた硬化物を容易に得ることができる。
【0101】
本発明の組成物においては、アクリルアミド構造を有する化合物としては、所望のガラス転移点を得られるものであればよいが、例えば、下記一般式(5)で表される化合物を挙げることができる。
【0102】
【0103】
ここで、一般式(5)中、R11は、水素原子またはメチル基であり、R12は、水素原子または炭素原子数1~10のアルキル基であり、R13は、単結合または二価の有機基であり、R14は、水素原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1~8のアシル基、エポキシ基、炭素原子数1~8のアルコキシ基、ジメチルアミノ基またはその塩を表す。
【0104】
R12に用いられる、炭素原子数1~10のアルキル基としては、環構造を含まない直鎖または分岐のアルキル基であればよく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、n-ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、n-ヘプチル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、イソヘプチル基、tert-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基等が挙げられる。
【0105】
R13に用いられる、二価の有機基としては、環構造を含まない直鎖または分岐の構造を有するものであればよく、例えば、炭素原子数1~10のアルキレン基を好ましく用いることができる。
【0106】
炭素原子数1~10のアルキレン基としては、上述の炭素原子数1~10のアルキル基から水素原子を1つ除去した構造とすることができ、より具体的にはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられる。
【0107】
R14に用いられる炭素原子数1~8のアシル基としては、環構造を含まないものであればよく、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基(プロパノイル基)、ブチリル基(ブタノイル基)、バレリル基(ペンタノイル基)、ヘキサノイル基等の脂肪族アシル基等が挙げられる。
【0108】
R14に用いられる炭素原子数1~8のアルコキシ基としては、環構造を含まないものであればよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、イソブトキシ基、n-ヘキシルオキシ基、2-ヘキシルオキシ基、3-ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられる。
【0109】
R14に用いられるジメチルアミノ基の塩としては、ジメチルアミノ基の塩化メチル塩(-N+(CH3)3Cl-)等が挙げられる。
【0110】
本発明の組成物においては、ガラス転移温度の高い硬化物を得られるとの効果および接着力向上のバランスの観点からは、R12が、水素原子または炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、なかでも、水素原子、メチル基、エチル基またはプロピル基が好ましい。
【0111】
本発明の組成物においては、ガラス転移温度の高い硬化物を得られるとの効果および接着力向上のバランスの観点からは、R13が、単結合または炭素原子数1~5のアルキレン基が好ましく、なかでも、水素原子、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、イソブチレン基が好ましい。
【0112】
本発明の組成物においては、ガラス転移温度の高い硬化物を得られるとの効果および接着力向上のバランスの観点からは、R14が、水素原子、ヒドロキシル基、炭素原子数2~6のアシル基、ジメチルアミノ基またはその塩が好ましく、なかでも、水素原子、ヒドロキシル基、アセチル基、プロピオニル基、ジメチルアミノ基であることが好ましい。
【0113】
ラジカル重合成分としてのアクリルアミド構造を有する化合物としては、具体的には、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、N-ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-n-ブトキシメチルアクリルアミド、N-イソブトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド・塩化メチル塩等が挙げられる。
【0114】
本発明の組成物においては、なかでも、ガラス転移温度の高い硬化物を得られるとの効果および接着力向上のバランスの観点からは、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、N-ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等が好ましい。これらは単独または2種以上混合して用いることができる。
【0115】
アクリルアミド構造を有する化合物の市販品としては、HEAA、ACMO、DMAPAA、DMAA、NIPAM、DEAA(以上、KJケミカルズ社製)、DAAm(以上、日本化成社製)、NBMA、IBMA、NMMA、TBAA、MBAA(以上、MRCユニテック社製)、NMAM(以上、三木理研工業株式会社製)等が挙げられる。
【0116】
本発明の組成物においては、ラジカル重合成分としてのアクリルアミド構造を有する化合物の含有量は、所望の接着力を得られるものであればよいが、例えば、本発明の組成物の固形分100質量部中、50質量部以下が好ましく、なかでも5質量部以上30質量部以下が好ましく、特に、10質量部以上20質量部以下が好ましい。アクリルアミド構造を有する化合物の含有量が上述の範囲であることで、本発明の組成物は、ガラス転移温度の高い硬化物を得られるとの効果および接着力向上のバランスに優れたものとなるからである。
【0117】
また、本発明の組成物においては、ラジカル重合性成分としてのアクリルアミド構造を有する化合物と、脂環式複素環化合物としてのアクリルアミド構造を有する化合物との合計の含有量としては、所望の接着力を得られるものであればよいが、例えば、本発明の組成物の固形分100質量部中、10質量部以上60質量部以下が好ましく、15質量部以上50質量部以下がより好ましく、30質量部以上45質量部以下がさらに好ましい。これらの含有量をかかる範囲とすることで、本発明の組成物は、ガラス転移温度の高い硬化物を得られるとの効果および接着力向上のバランスに優れたものとなるからである。ラジカル重合性成分の含有量としては、所望の接着力を得られるものであればよく、例えば、上述のアクリルアミド構造を有する化合物の含有量と同様とすることができる。
【0118】
4.ラジカル重合開始剤
本発明の組成物は、ポリオレフィン化合物および環構造成分を含むものであるが、ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。本発明の組成物は、ポリオレフィン化合物および環構造成分の重合が容易となるからである。ラジカル重合開始剤としては、ラジカルを発生し、ポリオレフィン化合物および環構造成分を重合可能なものである。このようなラジカル重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤および熱ラジカル重合開始剤のいずれも用いることができるが、硬化速度等に優れる等の観点からは、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0119】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテルおよびベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンジルジメチルケタール等のベンジルケタール類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ベンジル-1-ジメチルアミノ-1-(4’-モルホリノベンゾイル)プロパン、2-モルホリル-2-(4’-メチルメルカプト)ベンゾイルプロパン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-ヒドロキシ-1-ベンゾイルシクロヘキサン、2-ヒドロキシ-2-ベンゾイルプロパン、2-ヒドロキシ-2-(4’-イソプロピル)ベンゾイルプロパン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、4-ブチルベンゾイルトリクロロメタン、4-フェノキシベンゾイルジクロロメタン等のアセトフェノン類;2-メチルアントラキノン、1-クロロアントラキノンおよび2-アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントンおよび2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトンおよび4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド等のオキサイド類;3-(2-メチル-2-モルホリノプロピオニル)-9-メチルカルバゾール等のカルバゾール類;ベンジル、ベンゾイル蟻酸メチル等のα-ジカルボニル類;特開2000-80068号公報、特開2001-233842号公報、特開2005-97141号公報、特表2006-516246号公報、特許第3860170号公報、特許第3798008号公報、WO2006/018973号公報、特開2011-132215号公報、WO2015/152153号公報に記載の化合物等のオキシムエステル類;p-メトキシフェニル-2,4-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ナフチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-ブトキシスチリル)-s-トリアジン等のトリアジン類;過酸化ベンゾイル、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、エチルアントラキノン、1,7-ビス(9’-アクリジニル)ヘプタン、チオキサントン、1-クロル-4-プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、フェニルビフェニルケトン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド、2-(p-ブトキシスチリル)-5-トリクロロメチル-1,3,4-オキサジアゾール、9-フェニルアクリジン、9,10-ジメチルベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール、チオキサントン/アミン等が挙げられる。
【0120】
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブチルバレレート、ジクミルパーオキサイド等の過酸化物類;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物類;テトラメチルチラウムジスルフィド等が挙げられる。
【0121】
これらラジカル重合開始剤の含有量としては、接着力に優れた組成物を得られるものであればよい。例えば、本発明の組成物の固形分100質量部中に、0.01質量部以上20質量部以下が好ましく、0.1質量部以上15質量部以下がより好ましく、1質量部以上10質量部以下がさらに好ましく、3質量部以上8質量部以下が特に好ましい。ラジカル重合開始剤の含有量をかかる範囲とすることで、本発明の組成物は、接着力に優れたものとなるからである。また、ラジカル重合開始剤の含有量としては、接着力に優れた組成物を得られるものであればよいが、本発明の組成物に係るポリオレフィン化合物および環構造成分の合計100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下が好ましく、0.1質量部以上15質量部以下がより好ましく、1質量部以上10質量部以下がさらに好ましく、3質量部以上8質量部以下が特に好ましい。ラジカル重合開始剤の含有量をかかる範囲とすることで、本発明の組成物は、接着力に優れたものとなるからである。
【0122】
5.溶剤
本発明の組成物は、必要に応じて、上記各成分を溶解または分散可能な溶剤を含んでもよい。溶剤としては、25℃、大気圧下で液状であり、組成物の各成分を分散または溶解可能なものである。また、溶剤は、ポリオレフィン化合物、環構造成分等と反応しないものである。したがって、例えば、環構造成分に分類されるものは、25℃、大気圧下で液状であっても、本発明の組成物においては、溶剤に該当しないものである。
【0123】
このような溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、クロロホルム、塩化メチレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、メタノール、エタノールおよびイソプロパノール等を挙げることができる。
【0124】
本発明の組成物においては、溶剤の含有量としては、本発明の組成物を接着剤として使用容易とする観点からは、本発明の組成物100質量部中、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、1質量部以下がさらに好ましく、0質量部が最も好ましい。
【0125】
6.その他の成分
本発明の組成物は、ポリオレフィン化合物および環構造成分を有し、必要に応じてラジカル重合開始剤を有するものであるが、さらに必要に応じてその他の成分を含むものであってもよい。このような、その他の成分としては、組成物を硬化速度に優れたものとする観点から、チオール化合物を含むことが好ましい。例えば、上記組成物の硬化方法として、露光処理および加熱処理を同時に、この順で、または逆の順で実施することで、組成物を速い硬化速度で硬化することが容易となる。
【0126】
チオール化合物としては、本発明の組成物の硬化速度を向上できるものであればよく、チオール基を2以上有する多官能チオール化合物であることが好ましい。多官能チオール化合物としては、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン等の2官能チオール化合物、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)等の3官能チオール化合物、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)等の4官能チオール化合物、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)等の6官能チオール化合物等が挙げられる。本発明の組成物においては、なかでも、3官能チオール化合物、4官能チオール化合物または6官能チオール化合物であることが好ましい。本発明の組成物が、加熱処理時の硬化速度に優れたものとなるからである。
【0127】
チオール化合物の市販品としては、例えば、カレンズMT(登録商標)BD-1(商品名、2官能チオール化合物、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、昭和電工(株))、カレンズMT(登録商標)NR-1(商品名、3官能チオール化合物、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、昭和電工(株))、カレンズMT(登録商標)PE-1(商品名、4官能チオール化合物、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、昭和電工(株))、EGMP-4(商品名、2官能チオール化合物、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、SC有機化学(株))、TMMP(商品名、3官能チオール化合物、トリメチロールプロパン トリス(3-メルカプトプロピオネート、SC有機化学(株))、TEMPIC(商品名、3官能チオール化合物、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、SC有機化学(株))、PEMP(商品名、4官能チオール化合物、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、SC有機化学(株))、DPMP(商品名、6官能チオール化合物、ジペンタエリスリトールヘキサキス、(3-メルカプトプロピオネート)、SC有機化学(株))等が挙げられる。
【0128】
チオール化合物の含有量は、本発明の組成物の固形分100質量部中に、0.1質量部以上20質量部以下とすることができ、1質量部以上10質量部以下が好ましく、2質量部以上8質量部以下であることがより好ましい。本発明の組成物が、加熱処理時の硬化速度に優れたものとなるからである。
【0129】
これ以外にも、その他の成分として、必要に応じて、無機フィラー、有機フィラー、顔料、シランカップリング剤、染料等の着色剤、光増感剤、消泡剤、増粘剤、チクソ剤、界面活性剤、レベリング剤、難燃剤、可塑剤、安定剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、静電防止剤、流動調整剤および接着促進剤等の各種樹脂添加物等を含むことができる。
【0130】
また、紫外線吸収剤および酸化防止剤としては、フェノール性水酸基が保護基で保護され、加熱等により保護基を脱離することで、紫外線吸収剤または酸化防止剤としての機能が発現する潜在性添加剤も用いることができる。このような潜在性添加剤としては、例えば、国際公報WO2017/170465号に記載の潜在性添加剤を挙げることができる。
【0131】
これらのその他の成分の合計の含有量は、本発明の組成物の固形分100質量部中に30質量部以下とすることができる。
【0132】
7.組成物の製造方法
本発明の組成物の製造方法としては、各成分を均一に混合できる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、公知の混合方法を用いることができる。混合方法については、公知の混合装置を用いる方法を採用でき、例えば、3本ロール、サンドミル、ボールミル等を用いる方法を用いることができる。
【0133】
8.用途
本発明の組成物の用途としては、高い接着力が要求される硬化物を形成して使用する用途であれば特に限定されるものではなく、接着剤、プリント配線基板のレジスト材料の他、レジストインキ、カーフィルター用顔料レジストインキ、半導体封止剤、インキ、プラスチック塗料、紙印刷、フィルムコーティング、ガラスコーティング、飛散防止塗料、家具塗装等の種々のコーティング分野、FRP、ライニング、さらにはエレクトロニクス分野における絶縁ワニス、絶縁シート、積層版、プラズマディスプレイパネル、ディスプレイ素子等の表示媒体や、位相差板、偏光板、光偏光プリズム、各種光フィルター等の光学異方体、接着剤、絶縁材、構造材、光導波路クラッド等を挙げることができる。なかでも、有機材料および無機材料のいずれに対しても優れた接着力を発揮できるとの利点を効果的に発揮するために、電子機器等の各種部材に用いられることが好ましく、特に、有機材料および無機材料の両者と接するように用いられる部材の形成用途、接着剤であることが好ましい。
【0134】
本発明の組成物の硬化物が形成される対象としては、有機材料、無機材料のいずれであってもよい。
【0135】
有機材料としては、例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエステル;ポリアミド、ポリイミド;ポリウレタン;エポキシ樹脂;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ-1,4-シクロヘキセンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-1,2-ジフェノキシエタン-4,4’-ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリテトラフルオロエチレン、シクロオレフィンポリマー等のポリオレフィン;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル等のビニル化合物;ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸エステル等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリオキシエチレン、ノルボルネン樹脂;液晶材料等の高分子材料が挙げられる。
【0136】
無機材料としては、例えば、ソーダガラスおよび石英ガラス等のガラス、鉄、銅、アルミニウム、ステンレス等の金属、その酸化物(金属酸化物)等を挙げることができる。
【0137】
B.硬化物
次に、本発明の硬化物について説明する。
本発明の硬化物は、本発明の組成物の硬化物である。本発明の組成物は、上述の成分を含むものであるため、接着力に優れたものとなる。以下、本発明の硬化物について説明する。なお、本発明の組成物については、上記「A.組成物」の項に記載の内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0138】
本発明の硬化物は、ポリオレフィン化合物および環構造成分に由来する構造単位を含む重合体を有するものである。ここで、上記重合体中のポリオレフィン化合物に由来する構造単位は、ポリオレフィン化合物中のアクリレート基またはメタクリレート基により重合した構造単位を含むことが好ましい。
【0139】
本発明の組成物に含まれるポリオレフィン化合物が、例えば、未水添ブタジエン鎖のように、ポリオレフィン鎖中に二重結合を含むものである場合、重合体中のポリオレフィン化合物に由来する構造単位は、ポリオレフィン鎖中の二重結合により重合した構造単位を含むものであってもよく、含まないものであってもよい。
【0140】
本発明の硬化物においては、硬化物の接着力を向上する観点からは、重合体中のポリオレフィン化合物に由来する構造単位は、ポリオレフィン鎖中の二重結合により重合した構造を含むものであることが好ましい。
【0141】
本発明の硬化物の形状については、用途等に応じて適宜設定することができる。
【0142】
本発明の硬化物の製造方法としては、本発明の組成物を硬化させることができる方法であればよい。本発明の硬化物の製造方法としては、後述する「C.硬化物の製造方法」に記載の方法を用いることができる。
【0143】
C.硬化物の製造方法
次に、本発明の硬化物の製造方法について説明する。
本発明の硬化物の製造方法は、本発明の組成物を硬化する硬化工程を有する。本発明の硬化物の製造方法によれば、本発明の組成物が上述の成分を含むものであるため、接着力に優れた硬化物を容易に得ることができる。以下、本発明の硬化物の製造方法に含まれる各工程について説明する。
【0144】
1.硬化工程
本発明の硬化物の製造方法に含まれる硬化工程は、本発明の組成物を硬化する工程である。本工程における本発明の組成物を硬化する方法としては、ポリオレフィン化合物に由来する構造単位および環構造成分に由来する構造単位を含む重合体を形成できる方法であればよい。
【0145】
このような方法としては、例えば、本発明の組成物として、ポリオレフィン化合物および環構造成分と共にラジカル重合開始剤を含むものを用い、ラジカル重合開始剤により重合する方法を挙げることができる。
【0146】
ラジカル重合開始剤を用いることで、重合体に含まれるポリオレフィン化合物に由来する構造単位が、ポリオレフィン化合物中のアクリレート基またはメタクリレート基により重合した構造単位を含むものとすることが容易だからである。
【0147】
また、重合方法は、ラジカル重合開始剤の種類に応じて異なる。例えば、本発明の組成物が、ラジカル重合開始剤として光ラジカル重合開始剤を含む場合には、本発明の組成物に対して光照射を行う方法を用いることができる。本発明の組成物に照射される光としては、波長300nm~450nmの光を含むものとすることができる。本発明の硬化物の製造方法においては、光照射の光源としては、例えば、超高圧水銀、水銀蒸気アーク、カーボンアーク、キセノンアーク等を挙げることができる。照射される光としては、レーザー光を用いてもよい。レーザー光としては、波長340~430nmの光を含むものを用いることができる。
【0148】
レーザー光の光源としては、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムネオンレーザー、YAGレーザー、および半導体レーザー等の可視から赤外領域の光を発するものも用いることができる。なお、これらのレーザーを使用する場合には、本発明の組成物は、可視から赤外の当該領域を吸収する増感色素を含むことができる。
【0149】
また、本発明の組成物が、ラジカル重合開始剤として熱ラジカル重合開始剤を含む場合には、本発明の組成物に対して加熱処理を行う方法を用いることができる。加熱温度としては、本発明の組成物を安定的に硬化できるものであればよく、60℃以上、好ましくは100℃以上300℃以下とすることができる。加熱時間としては、10秒~3時間程度とすることができる。
【0150】
本発明の硬化物の製造方法においては、重合方法の種類は、1種類のみを含むものであってもよく、2種類以上を含むものであってもよい。
【0151】
2.その他の工程
本発明の硬化物の製造方法は、必要に応じてその他の工程を有するものであってもよい。このような工程としては、硬化工程後に、硬化物を加熱処理するポストベーク工程、硬化工程前に、本発明の組成物を加熱処理して、本発明の組成物中の溶剤を除去するプリベーク工程、硬化工程前に、本発明の組成物の塗膜を形成する塗膜形成工程等を挙げることができる。
【0152】
プリベーク工程における加熱条件としては、本発明の組成物中の溶剤を除去できるものであればよく、例えば、70℃以上150℃以下で30秒~300秒間とすることができる。
【0153】
塗膜形成工程で、本発明の組成物を塗布する方法としては、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬等の公知の方法を用いることができる。なお、塗膜は、基材上に形成することができる。
【0154】
基材としては、硬化物の用途等に応じて適宜設定することができ、上記「A.組成物」の項に記載の硬化物が形成される対象等を挙げることができる。また、本発明の硬化物は、基材上で形成された後、基材から剥離して用いても、基材から他の被着体に転写して用いてもよい。
【0155】
ポストベーク工程における加熱条件としては、硬化工程により得られた硬化物の強度等を向上できるものであればよく、例えば、200℃以上250℃以下で20分間~90分間とすることができる。このような加熱条件であることで、ポリオレフィン化合物が、例えば、未水添ブタジエン鎖のように、ポリオレフィン鎖中に二重結合を含むものである場合、重合体中のポリオレフィン化合物に由来する構造単位は、ポリオレフィン鎖中の二重結合により重合した構造単位を含むものとすることが容易だからである。したがって、本発明の組成物の硬化物は、接着力により優れたものとなるからである。
【0156】
本発明の組成物、その硬化物および硬化物の製造方法は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0157】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0158】
[製造例1]
セパラ型のフラスコにイソホロンジイソシアネート(IPDI)110gとオクチル酸錫を加え、80℃に加熱した。次いで、日本曹達製GI-1000(GI-1000)560gを滴下して、80℃で1時間攪拌した。その後、ヒドロキシエチルアクリレート25gを滴下し、さらに80℃で3時間攪拌し、ポリオレフィン化合物1を得た。得られたポリオレフィン化合物1の重量平均分子量(Mw)は、8,200であった。なお、合成に用いたGI-1000は、末端を水酸基で変性した水添ポリブタジエンであり、ヨウ素価が21(g/100g)以下であり、数平均分子量(Mn)は1,500である。
【0159】
[製造例2]
GI-1000の代わりに、日本曹達製G-1000(G-1000)を滴下した以外は、製造例1と同様にしてポリオレフィン化合物2を得た。得られたポリオレフィン化合物2の重量平均分子量(Mw)は、8,000であった。なお、合成に用いたG-1000は、末端を水酸基で変性した未水添ポリブタジエンであり、1,4-結合による繰り返し単位の含有割合が85モル%以上であり、1,2-結合による繰り返し単位の含有割合が15モル%以下であり、数平均分子量(Mn)が1,400である。
【0160】
[製造例3]
IPDIの添加量を220g、G-1000の添加量を700g、ヒドロキシエチルアクリレートの添加量を120gとした以外は、製造例2と同様にして、ポリオレフィン化合物3を得た。得られたポリオレフィン化合物3の重量平均分子量(Mw)は、3,000であった。
【0161】
[製造例4]
IPDIの添加量を160g、G-1000の添加量を900g、ヒドロキシエチルアクリレートの添加量を12gとした以外は、製造例2と同様にして、ポリオレフィン化合物4を得た。得られたポリオレフィン化合物4の重量平均分子量(Mw)は、21,000であった。
【0162】
[製造例5]
未水添ポリブタジエンの代わりに、ポリエチレングリコール(東京化成社製、重量平均分子量2,000)を用いた以外は、製造例1と同様にして、ポリエチレングリコール化合物を得た。得られたポリエチレングリコール化合物の重量平均分子量は、9,000であった。
【0163】
[製造例6]
未水添ポリブタジエンの代わりに、ポリプロピレングリコール(東京化成社製、重量平均分子量2,000)を用いた以外は、製造例4と同様にして、ポリプロピレングリコール化合物を得た。得られたポリプロピレングリコール化合物の重量平均分子量は、20,000であった。
【0164】
[製造例7]
ヒドロキシエチルアクリレートの代わりにヘプタノールを用いた以外は、製造例4と同様にして非重合性のポリブタジエン化合物1を合成した。得られたポリブタジエン化合物1の重量平均分子量は、20,000であった。
【0165】
[製造例8]
ヒドロキシエチルアクリレートの代わりにヘプタノールを用いた以外は、製造例2と同様にして非重合性のポリブタジエン化合物2を合成した。得られたポリブタジエン化合物2の重量平均分子量は、7,000であった。
【0166】
[実施例1~10、参考例1~11および比較例1~6]
下記表1~4に記載の配合に従って、ポリオレフィン化合物、環構造成分、その他の樹脂成分、ラジカル重合開始剤、シランカップリング剤およびシリカ微粒子を混合し、25℃で1時間攪拌して各組成物を得た。また、各成分は以下の材料を用いた。なお、表中の配合量は、各成分の質量部を表すものである。
【0167】
(ポリオレフィン化合物)
A1:製造例1で製造したポリオレフィン化合物1(ポリオレフィン鎖が水添ポリブタジエン、重量平均分子量8,200)
A2:製造例2で製造したポリオレフィン化合物2(ポリオレフィン鎖が未水添ポリブタジエン、重量平均分子量8,000)
A3:製造例3で製造したポリオレフィン化合物3(ポリオレフィン鎖が未水添ポリブタジエン、重量平均分子量2,100)
A4:製造例4で製造したポリオレフィン化合物4(ポリオレフィン鎖が未水添ポリブタジエン、重量平均分子量21,000)
【0168】
(環状構造含有成分)
B1:下記式(B1)で表される化合物(脂環式複素環化合物)
B2:下記式(B2)で表される化合物(脂環式複素環化合物)
B3:下記式(B3)で表される化合物(脂肪族炭化水素環化合物、新中村化学工業社製A-DCP(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート))
B4:ビスフェノールA型エポキシアクリレート(芳香族炭化水素環化合物、新中村化学工業社製NKオリゴEA-1020)
B5:下記式(B5)で表される化合物(脂環式複素環化合物(イソシアヌル環含有化合物)、新中村化学工業社製A9300-1CL)
【0169】
【0170】
(その他の樹脂成分)
C1:製造例5で得られたポリエチレングリコール化合物(重量平均分子量9,000)
C2:製造例6で得られたポリプロピレングリコール化合物(重量平均分子量20,000)
C3:製造例7で得られたポリブタジエン化合物1
C4:製造例8で得られたポリブタジエン化合物2
C5:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
C6:ジメチルアクリルアミド(DMAA、CH2=CHCON(CH3)2)
C7:ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA、CH2=CHCONHC2H4OH)
C8:ジエチルアクリルアミド(DEAA、CH2=CHCON(C2H5)2)
C9:ダイアセトンアクリルアミド(DAAM、CH2=CHCONHC(CH3)2CH2COCH3)
【0171】
(ラジカル重合開始剤)
D1:下記式(D1)で表される化合物(光ラジカル重合開始剤)
D2:下記式(D2)で表される化合物(光ラジカル重合開始剤)
【0172】
【0173】
(チオール化合物)
E1:下記式(E1)で表される化合物(多官能チオール化合物)
【0174】
【0175】
(添加剤)
F1:シランカップリング剤(信越シリコーン社製KBM-503)
G1:シリカフィラー(日本アエロジル社製R-972)
G2:シリカフィラー(アドマテックス製SOE-5)
【0176】
[評価]
各組成物について、接着力、塗布性、光照射時硬化速度、加熱処理時硬化速度、分散安定性の評価を行った。
【0177】
1.接着力
各組成物を用いて製造された評価用サンプルの90°ピール試験(剥離強度測定)を行い、以下の基準で判断した。結果を下記表1~4に示す。なお、評価用サンプルは、各組成物を、各種基材(ポリイミドフィルム(SKCKOLON社製、膜厚50μm)およびポリエチレンテレフタレート(東洋紡社製A-4300P、膜厚100μm))に、バーコーターで硬化後の厚みが3μmとなるように、塗布した後、コロナ放電処理を施したCOP(シクロオレフィンポリマー、日本ゼオン(株)製:品番ゼオノアフィルム14-060)フィルムとラミネーターを用いて貼り合わせ、無電極紫外光ランプを用いて1,000mJ/cm2に相当する光をCOPフィルム越しに照射し、組成物を硬化し、次いで、2.5cm幅に切り出して評価用サンプルを得た。また、90°ピール試験は、小型卓上荷重試験器MODEL-FTN1-13A(アイコーエンジニアリング(株)製)を用いて、引張速度50mm/minで90°剥離して得た。評価基準は以下のとおりである。
【0178】
◎:材料破壊または10N/10mm以上
〇:5N/10mm以上10N/10mm未満
△:1N/10mm以上5N/10mm未満
×:1N/10mm未満
なお、90°ピール試験で得られた剥離強度が大きいほど、高い接着力を有すると評価できる。結果を表1~4に併記する。
【0179】
さらに、各組成物を、各種基材(LCP基材(住友化学社製E5508、膜厚2mm)、SUS基材(SUS304、膜厚2mm)、アルミ(ADC-12、膜厚2mm))に、硬化後の厚み(接着層の厚み)が50μmとなるようにディスペンサで塗布し、ガラスと貼り合わせ、無電極紫外光ランプを用いて1,000mJ/cm2に相当する光をガラス越しに照射し、組成物を硬化した後、180℃15分で加熱処理を行い、評価用サンプルを得た。この評価用サンプルを用いて、JIS K 6850「接着剤の引張り剪断接着強さ試験方法」に準拠する方法で、剥離強度を測定した。また、基材およびガラス基材の貼り合わせは、組成物の硬化物と、基材およびガラスとの接触面積が、直径の100mmの円形状となるように調整した。また、測定装置として、小型卓上試験機EZ-X(島津製作所製)を用い、測定温度25℃、引張速度5mm/minの条件で、せん断接着力(N)を測定し、以下の基準で評価を行った。
【0180】
◎:材料破壊または5N以上
〇:2N以上5N未満
△:1N以上2N未満
×:1N未満
結果を表1~4に併記する。
【0181】
2.塗布性
得られた各組成物を、それぞれを、JIS Z8803:2011記載の方法に準じ、25℃においてE型粘度計で粘度を測定した。判断基準は以下のとおりである
【0182】
〇:1.0Pa・S以上10Pa・S以下
△:1.0Pa・S未満または10Pa・S超
なお、評価基準が〇である場合には、優れた塗布性を有し、例えば、表面に凹凸がある基材上にも所望の膜厚で塗布可能となる。結果を表1~4に併記する。
【0183】
3.光照射時硬化速度
各組成物を、無電極紫外光ランプを用いて150mJ/cm2に相当する光をCOPフィルム越しに照射した以外は、上記「1.接着力」と同様の方法を用いてポリエチレンテレフタレート及びCOPフィルムに硬化物が挟持された評価用サンプルを得た。次いで、露光後5秒経過毎に、得られた評価用サンプルのCOPフィルムを剥離し、剥離した面を触診し、硬化物にタックがなくなるまでの時間を計測し、下記基準で評価を行った。なお、剥離する箇所は、初めて剥離する箇所を剥離して評価する。
【0184】
〇:30秒未満
△:30秒以上
硬化時間が短いほど、硬化速度に優れることを意味する。結果を表1~4に併記する。
【0185】
4.加熱処理時硬化速度
各組成物を、ガラス基材上に硬化後の塗膜の厚みが50μmとなるようにディスペンサで塗布して塗膜を形成し、評価用サンプルを得た。次いで、評価用サンプルを、オーブンを用いて150℃で加熱処理を開始した。次いで、加熱処理開始から15分経過毎に、評価用サンプルの塗膜の表面を触診し、塗膜にタックがなくなるまでの時間を計測し、下記基準で評価を行った。
【0186】
〇:15分未満
△:15分以上
硬化時間が短いほど、硬化速度に優れることを意味する。結果を表1~4に併記する。
【0187】
5.分散安定性
各組成物について、目視で確認し、以下の基準で評価を行った。
◎:凝集物が存在しない。
〇:凝集物が存在する。
なお、凝集物が少ない方が、分散安定性に優れることを意味する。結果を表1~4に併記する。
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
表1~4より、実施例の組成物は、様々な基材との間で優れた接着力を発揮することが確認できた。また、ポリオレフィン化合物が、ポリオレフィン鎖として未水添ポリブタジエン鎖を含む化合物であることで、特に優れた接着力を発揮することが確認できた。さらに、ポリオレフィン化合物の重量平均分子量が、3,500以上15,000以下であることで、塗布性および接着力により優れたものなることが確認できた。さらにまた、環構造成分が脂肪族炭化水素環化合物または芳香族炭化水素環化合物を含むことで、組成物の分散安定性が向上することが確認できた。これは、脂環族環化合物等が、ポリオレフィン化合物を分散安定化する効果を有するためと推察される。
【0193】
また、環構造成分が脂肪族複素環化合物を含むことで、組成物の接着力が向上することが確認できた。これは、脂肪族複素環が有する高い極性により、基材との相溶性が向上し、接着力の向上に寄与したと推察される。