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特許7209858固体充電式リチウムイオン電池のための粉末状固体電解質化合物
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  • 特許-固体充電式リチウムイオン電池のための粉末状固体電解質化合物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-12
(45)【発行日】2023-01-20
(54)【発明の名称】固体充電式リチウムイオン電池のための粉末状固体電解質化合物
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20230113BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230113BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20230113BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230113BHJP
   H01M 4/1391 20100101ALI20230113BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230113BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/1391
H01M4/62 Z
H01B1/06 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021549106
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-08
(86)【国際出願番号】 IB2020051354
(87)【国際公開番号】W WO2020170135
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】62/807,833
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/807,863
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】19162577.1
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19162591.2
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19176362.2
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501094270
【氏名又は名称】ユミコア
(73)【特許権者】
【識別番号】517107151
【氏名又は名称】ユミコア・コリア・リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】505282042
【氏名又は名称】ポステック・アカデミー‐インダストリー・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ビョンウ・カン
(72)【発明者】
【氏名】スン-ジュン・ウ
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/089430(WO,A1)
【文献】特表2016-519412(JP,A)
【文献】国際公開第2014/041669(WO,A1)
【文献】特開2012-186181(JP,A)
【文献】特開2008-112661(JP,A)
【文献】国際公開第2015/016046(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 4/00-4/62
H01B 1/00-1/24
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Li(3.5+L+x)Si(0.5+s-x)(0.5+p-x)Ge2x4+aを有する化合物を有し、-0.10≦L≦0.10であり、-0.10≦s≦0.10であり、-0.10≦p≦0.10であり、-0.40≦a≦0.40であり、かつ
0.0<x≦0.30である、固体充電式リチウムイオン電池に適する固溶体電解質。
【請求項2】
0.05≦x≦0.30である、請求項1に記載の固溶体電解質。
【請求項3】
0.10≦x≦0.30である、請求項2に記載の固溶体電解質。
【請求項4】
前記化合物が、一般式Li(3.5+x)Si(0.5-x)(0.5-x)Ge2xを有する、請求項1に記載の固溶体電解質。
【請求項5】
室温で少なくとも10-5S/cmのリチウムイオン伝導度を有する、請求項1又は4に記載の固溶体電解質。
【請求項6】
0.15≦x≦0.30である、請求項1又は2に記載の固溶体電解質。
【請求項7】
0.20≦x≦0.30である、請求項6に記載の固溶体電解質。
【請求項8】
0.25≦x≦0.30である、請求項7に記載の固溶体電解質。
【請求項9】
室温で2.0×10-5S/cm以上であり、かつ3.0×10-5S/cm以下であるリチウムイオン伝導度を有する、請求項1又は4に記載の固溶体電解質。
【請求項10】
室温で2.5×10-5S/cm以上であり、かつ3.0×10-5S/cm以下であるリチウムイオン伝導度を有する、請求項9に記載の固溶体電解質。
【請求項11】
第1の強度を有する第1のピークと、第2の強度を有する第2のピークとを含む1.5418Åの波長で測定されたXRDパターンを有する結晶構造を含み、前記第1及び第2のピークが、27.5°以上であり、かつ30.0°±0.5°以下である2θの範囲で存在し、前記XRDパターンが、更に、37.0°±0.5°≦2θ≦47.0°±0.5°において、前記第1又は第2の強度を上回る強度を有するピークを含まない、請求項1又は4に記載の固溶体電解質。
【請求項12】
第1の強度を有する第1のピークと、第2の強度を有する第2のピークとを含む1.5418Åの波長で測定されたXRDパターンを有する結晶構造を含み、前記第1及び第2のピークが、27.5°以上であり、かつ30.0°±0.5°以下である2θの第1の範囲で存在し、21.0°以上であり、かつ25.0°±0.5°以下である2θの第2の範囲では、前記XRDパターンが3つ以下のピークを有し、前記3つ以下のピークの各々が、前記第1又は第2の強度を上回る強度を有する、請求項1又は4に記載の固溶体電解質。
【請求項13】
第1の強度を有する第1のピークと、第2の強度を有する第2のピークとを含む1.5418Åの波長で測定されたXRDパターンを有する結晶構造を含み、前記第1及び第2のピークが、27.5°以上であり、かつ30.0°±0.5°以下である2θの第1の範囲で存在し、34.0°以上であり、かつ36.0°±0.5°以下である2θの第2の範囲では、前記XRDパターンが3つ以下のピークを有し、前記3つ以下のピークの各々が、前記第1又は第2の強度を上回る強度を有する、請求項1又は4に記載の固溶体電解質。
【請求項14】
請求項1又は4に記載の固溶体電解質を含む固体充電式リチウムイオン電池。
【請求項15】
請求項1又は4に記載の固溶体電解質に接触するLi金属ベースのアノードを有する負極を含む固体充電式リチウムイオン電池。
【請求項16】
前記電池の動作電圧が、200V以上であり、かつ500V以下である、電動乗り物における請求項14又は15に記載の固体電池の使用。
【請求項17】
電気自動車における請求項16に記載の固体電池の使用。
【請求項18】
請求項1又は4に記載の固溶体電解質と、一般式Li1+kM’1-kを有するカソード材料と、を含む、陰極液であって、M’=Ni1-x’-y’-z’Mnx’Coy’Z’であり、-0.05≦k≦0.05であり、0≦x’≦0.40であり、0.05≦y’≦0.40であり、かつ0≦z’≦0.05であり、Aが、Li、M’及びOとは異なるドープ要素であり、正極活物質粉末が、層状R-3m結晶構造を有する粒子を含み、前記陰極液が、D99≦50μmを有し、室温で少なくとも1.0×10-6S/mのイオン伝導度を有する、陰極液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車(EV)用途に好適な固体充電式リチウムイオン電池のための固体電解質(SE)に関する。本発明による固体電解質は、改善されたリチウムイオン伝導度を有する。
【背景技術】
【0002】
EVの開発に伴い、リチウムイオン電池が、そのような用途のための可能な一定の電力源としてのリチウムイオン電池に対する需要もある。
【0003】
ゼロエミッションの観点を除いて、EV用途に適する電池をレンダリングする追加の要件は、高容量、より長いサイクル寿命、より低コスト、及びより良好な安全性を含むべきである。
【0004】
電池に関する過去及び進行中の研究の大部分は、通常、液体電解質の使用を強調しているが、これは、このような電解質は、室温で約10-2S/cmの高いリチウムイオン伝導度を有し(エチレンカーボネート/ジメチルカーボネートEC/DMC 1M LiPFからなる電解質に対して測定される)、湿潤によって電極と良好な接触を提供するためである。しかしながら、液体電解質を含有する電池は、液体電解質が通常可燃性であるために懸念がある。
【0005】
固体電解質ベースの電池は、かなりより安全であり、電気自動車の電源のための液体電解質ベース電池の代替物とすることができる。SEの分解温度が液体電解質よりも高いため、液体電解質ベースの電池の代わりにこのようなSEベースの電池を含むEVは、より安全であり、その電池の製造もより安全である。SEベースの電池が、液体電解質ベースの電池よりもはるかに安全であるという明らかな利点を除いて、SEベースの電池はまた、液体電解質ベースの電池よりもコンパクトであり、したがって、より高い電力密度につながる。
【0006】
しかしながら、液体電解質と比較して、SEは、より低いリチウムイオン伝導度を有する(典型的には10-7~10-6S/cmの間に含まれる)ことも事実である。SEにおけるより低いリチウムイオン伝導度は、リチウムイオンのより高い移動エネルギーに起因する。
【0007】
主に探求されてきた固体充電式リチウムイオン電池(SSB)に好適なSEの周知の(無機)種類は、ガーネットを含むLa、Zr、及び一般式Li4±xSi1-xを有するLSPO(リチウムシリコンリン酸化物)-リスコン(リチウムイオン伝導体)電解質である。ガーネットを含むLa、Zr、特に立方ガーネット(LiLaZr12)は、高伝導度を示す。しかしながら、これらの材料は、La及びZrの含有量に起因して高価である。この化合物はまた、1000℃よりも高い温度で合成する必要があり、これは、高温でのリチウムの揮発性のために望ましくない。LSPOは、その高い化学的及び電気化学的安定性、高い機械的強度、及び高い電気化学的酸化電圧に関して周知であり、このような電解質はEV用途の有望な候補となる。
【0008】
Li3.5Si0.50.5のようなLSPO化合物は比較的低いリチウムイオン伝導度を有する。Li3.5Si0.50.5は、斜方晶単位セル及び四面体配位カチオンを有するγ-LiPOの結晶構造を有するLiPO及びLiSiOの固溶体である。本発明の範囲では、固溶体(ソリッド・ステート・ソリューションとも呼ばれる)は、溶媒中の1種以上の溶質の混合物の結果として、多成分固溶体を指す。具体的には、溶質は原子又は原子団(又は化合物)とすることができる。このような多成分系は、溶質の添加によって溶媒の結晶構造が変化しないままであるとき、及び化学成分が単一の均質相中に残存するとき、化合物ではなく溶液とみなされる。この系では、溶媒は、通常、最大部分を有する成分であり、この場合はLiPOである。溶媒成分の結晶構造は、ブレンド後に維持されるのに対し、他の成分(溶質、例えばLiSiO)は、溶媒の構造から逸脱する構造を有する別個の化合物を形成する代わりに溶媒構造に溶解する。
【0009】
Solid State Ionics(2015),283,109-114において、Wang,Daweiらは、LiBOの添加によるLSPOのリチウムイオン伝導度の強化を研究した。最も高いリチウムイオン伝導度は、0%の添加の場合の3.6×10-6S/cmと比較して、LiBOの20%で6.5×10-6S/cmであった。Solid State Ionics(2016),289,173-179において、Choi,Ji-wonらが行った別の研究では、0.7LiSiO+0.3LiPO固溶体系におけるAlカチオン置換の効果が調査された。7.7×10-6S/cmのリチウムイオン伝導度が、10mol%のAlを添加によって室温で達成された。
【0010】
Chem.Mater.(2018),30,5573-5582におけるSokseihaら及びSolid State Ionics(1980),1,187-197におけるKamphorstらは、LI4SIO4-U3PO3固溶体が、SiによるGeの可能な置換から離れて、LiGeO-LiPOよりも低い導電度を有することを指定する。
【0011】
Russian Journal of Electrochemistry(2010),46,No.2,243-246におけるBurmakinらはそれぞれ、Zrのような四価カチオンでドープされたチウムゲルマニウムリン酸塩固体電解質、Li3.75Ge0.70Zr0.050.25、Li3.50Zn0.125Ge0.750.25をそれぞれ開示している。これらの配合物中のGe含有量は、LSPOベースのSE中の固溶体の獲得を可能にしない。
【0012】
顕著であるが、LSPOベースの電解質の固溶体を達成しようとするこれらの試みは、必要とされる少なくとも0.50×10-5(又は5.0×10-6)S/cmの所望の閾値未満であり、電解質から作製された固体電池は、現在の液体電解質ベースの電池の有形の代替案である。
【0013】
確かに、このような電解質から作製された固体電池の使用をより効率よくし、したがってEV用途の分野におけるより固体電池の使用をより魅力的にするために、LSPOベースの電解質のリチウムイオン伝導性を改善する必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、EV用途に好適な固体二次電池におけるこのようなSEの使用に必要である固溶体を保持しながら、改善されたリチウムイオン伝導度を有するLSPOベースのSEを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の範囲では、本発明による電解質を含むSSBのアノードとして金属Liを使用することができる。
【0016】
ただし、本発明によるSEは、Li金属ベースのアノードに接触するようにすることができることを条件とするが、これは、SSBのLi金属ベースのアノードに適合しなければならないが、これは、そのアノードと接触している間のSEが化学的に安定したままでなければならないことを意味する。
【0017】
固溶体を保持しながら、改善されたリチウムイオン伝導度を有し、かつLi金属アノードと接触している間に化学的及び熱的に安定である固体電解質は、最大60mol%のゲルマニウム(Ge)を含むLSPOベースの電解質を含む、請求項1に記載の固溶体を提供することによって達成される。GeドープLSPOは、以下「LSPGO」として参照される。
【0018】
LSPGOベースの電解質が60mol%を超えるGeを含む場合、それは、少なくとも1つの不純物相(すなわち、LiSiO)を含み、このようなLiSiOを有するLSPGOベースの電解質は、本発明による固溶体ではない。同様の不純物相が、高含有量のGeに対して、Burmakinら(この場合、LiZrO)において観察される。
【0019】
本発明の枠組みでは、LSPOベースの電解質の固溶体において最大60mol%までGeを取り入れることによって、0.50×10-5S/cmの最小値までリチウムイオン伝導を顕著に改善しつつ、上記固体溶液の特性を保存することが可能であり、これは、従来技術から現在知られているものに対する有意な寄与を構成する。
【0020】
また、本発明による電解質は、Li金属箔の存在下で安定であり、Li金属箔がアノードとして使用されるSSBにおけるその適合性を確認することも実証されている。
【0021】
本発明は、以下の実施形態に関する。
1.一般式Li(3.5+L+x)Si(0.5+s-x)(0.5+p-x)Ge2x4+aを有する化合物を含み、-0.10≦L≦0.10であり、-0.10≦s≦0.10であり、-0.10≦p≦0.10であり、-0.40≦a≦0.40であり、かつ0.00<x≦0.30である、固体充電式リチウムイオン電池に好適な固溶体電解質。
【0022】
実施形態1の第1の態様では、0.05≦x≦0.30、好ましくは、0.10≦x≦0.30である。
【0023】
実施形態1の第2の態様では、0.15≦x≦0.30であり、好ましくは、0.20≦x≦0.30である。
【0024】
2.化合物が、一般式Li(3.5+x)Si(0.5-x)(0.5-x)Ge2xを有する、実施形態1に記載の固溶体電解質。
【0025】
3.25℃で少なくとも10-5S/cmのリチウムイオン伝導率を有する、実施形態1又は2に記載の固溶体電解質。
【0026】
4.0.25≦x≦0.30である、前述の実施形態のいずれかに記載の固溶体電解質。
【0027】
5.2.0×10-5S/cm以上であり、かつ3.0×10-5S/cm以下であり、好ましくは、2.5×10-5S/cm以上であり、かつ3.0×10-5S/cm以下である25℃で測定されたリチウムイオン伝導度を有する、前述の実施形態のいずれかに記載の固溶体電解質。
【0028】
6.第1の強度を有する第1のピークと、第2の強度を有する第2のピークとを含む1.5418Åの波長で、かつ25℃で測定されたXRDパターンを有する結晶構造を含み、第1及び第2のピークが、27.5以上であり、かつ30.0±0.5°以下である2θの範囲内に存在し、XRDパターンが、更に、2θ>37.0±0.5°において、第1又は第2の強度を上回る強度を有するピークを含まない、前述の実施形態のいずれかに記載の固溶体電解質。
【0029】
7.第1の強度を有する第1のピークと、第2の強度を有する第2のピークとを含む1.5418Åの波長で、かつ25℃で測定されたXRDパターンを有する結晶構造を含み、第1及び第2のピークが、27.5以上であり、かつ30.0±0.5°以下である2θの第1の範囲内に存在し、21.0以上であり、かつ25.0±0.5°以下である2θの第2の範囲内では、XRDパターンは、3つ以下の追加のピークを有し、3つの追加のピークの各々が、第1又は第2の強度を上回る強度を有する、前述の実施形態のいずれかに記載の固溶体電解質。
【0030】
8.第1の強度を有する第1のピークと、第2の強度を有する第2のピークとを含む1.5418Åの波長で、かつ25℃で測定されたXRDパターンを有する結晶構造を含み、第1及び第2のピークが、27.5以上であり、かつ30.0±0.5°以下である2θの第1の範囲内に存在し、34.0以上であり、かつ36.0±0.5°以下である2θの第2の範囲では、XRDパターンが3つ以下の追加のピークを有し、3つの追加のピークの各々が、第1又は第2の強度を上回る強度を有する、前述の実施形態のいずれかに記載の固溶体電解質。
【0031】
9.前述の実施形態のいずれかによる固溶体電解質を含む固体充電式リチウムイオン電池。
【0032】
10.実施形態1~9のいずれかに記載の固溶体電解質に接触するLi金属ベースのアノードを有する負極を含む固体充電式リチウムイオン電池。
【0033】
11.電池の動作電圧が、200V以上であり、かつ500V以下である、電動乗り物、特に電気自動車における実施形態9又は10に記載の固体電池の使用。
【0034】
12.前述の実施形態のいずれかに記載の固溶体電解質と、一般式Li1+kM’1-kを有するカソード材料と、を含む、陰極液であって、M’=Ni1-x’-y’-z’Mnx’Coy’Z’であり、-0.05≦k≦0.05であり、0≦x’≦0.40であり、0.05≦y’≦0.40であり、かつ0≦z’≦0.05であり、Aが、Li、M’及びOとは異なるドープ要素であり、正極活物質粉末が、層状R-3m結晶構造を有する粒子を含み、陰極液が、D99≦50μmを有し、少なくとも1.0×10-6S/mのイオン伝導度を有する、陰極液。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】実施例1及び比較例1の様々なGeドーパント(Li(3.5+x)Si(0.5-x)(0.5-x)Ge2x4+a中のx)を有する試料についての電気化学インピーダンススペクトル(EIS)の比較。
図2】実施例1及び比較例1のGeドーパント(Li(3.5+x)Si(0.5-x)(0.5-x)Ge2x4+aのx)の量に対するリチウムイオン伝導度の変動。
図3】実施例1及び比較例1のX線回折パターンの比較。
図4】透過率(%)及び波数(cm-1)を示すEX1-A、EX1-B、EX1-C、及び比較例1のフーリエ変換赤外スペクトル。
図5】比較例1及び2のX線回折パターンの比較
図6】(a)250℃で溶融したLi金属への曝露前及び(b)15分の曝露後のLSPOのX線回折パターンの比較
図7】EX2-CAT-A及びCEX3-CAT-Bのキャパシティに対する電圧のグラフの比較
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の発明の実施するための形態では、本発明の実施を可能にするために、好ましい実施形態を詳細に記載する。本発明は、これらの特定の好ましい実施形態に関して記載するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではないことが理解されるだろう。それとは対照的に、本発明は、以下の発明を実施するための形態を考慮すれば明らかになるように、多数の代替物、変形物、及び均等物を含む。
【0037】
本発明は、一般式Li(3.5+x)Si(0.5-x)(0.5-x)Ge2x4+a(LSPGO)を有するLSPO化合物を有するゲルマニウムを開示し、ここで、0.00<x≦0.30であり、-0.40≦a≦0.40である。これは、LiGeO、LiPO及びLiSiOの固溶体である。GeがLSPO化合物においてSi及びPと等しく置換する場合、請求項1に記載の化合物のリチウムイオン伝導度は、0.10.以上のx値対して有意に増加する(少なくとも10-5S/cmに達する)ことが観察される。更に、Li(3.5+x)Si(0.5-x)(0.5-x)Ge2x4+a(0.10≦x≦0.30)のイオン伝導度は徐々に増加し、xが0.30であるときに最大となる。具体的には、請求項1に記載の化合物の伝導度は、狭い範囲、0.20<x≦0.30、特に、0.25≦x≦0.30に対して、予測し得ない程高い(2.0 10-5S/cmよりも高い)。請求項1に記載のより広い範囲のGe含有量と比較して、このより狭い範囲は、1.5~3.0倍のリチウムイオン伝導度の増加をもたらし、これは顕著である。
【0038】
このような少なくとも10-5S/cmの高伝導度は、固溶体LSPOタイプの電解質については報告されていない。
【0039】
加えて、本発明に係る電解質はLi金属アノードと相溶性がある。
【0040】
本発明はまた、本発明による、NMCタイプの正極活物質と、本発明によるLSPO化合物を有するゲルマニウムとの混合物から作製される陰極液化合物も含む。
【0041】
多結晶NMC及びモノリシックNMCの両方を、本発明による陰極液中の正極活物質として使用することができる。「モノリシック」形態とは、二次粒子が基本的に1つの一次粒子のみを含有する形態を指す。文献では、それらは、単結晶材料、モノ結晶材料、及び一体材料とも称される。一次粒子の好ましい形状は、円礫(pebble stone)形状と説明することができる。モノリシック形態は、高い焼結温度、より長い焼結時間、及びより高過剰のリチウムの使用によって達成することができる。「多結晶」形態は、二次粒子が、2つ以上の一次粒子を含有する形態を指す。
【0042】
(固体)陰極液材料は、酸化雰囲気下で600℃~800℃で1~20時間熱処理される陰極液を生成するように、LSPO化合物を有するゲルマニウムをNMC組成物と混合することによって調製される。特に、その陰極液を生成するための方法は、LSPOを有するゲルマニウム及びNMC組成物が混合されて混合物を提供し、次いでそれが焼結される、共焼結ベースのプロセスである。
【0043】
陰極液中のLSPOを有するゲルマニウム及びNMC正極活物質の各組成を取得するためのいくつかの方法が存在する。陰極液中の固体電解質と正極活物質との間の中央粒径(D50)の差は、2μm以上であるのに対し、エルボジェット空気分類器(https://elcanindustries.com/elbow-jet-air-classifier/)などの分類器を使用して分離することができる。別個の粒子の組成は、陰極液中のLSPO材料を有するゲルマニウム及びNMC正極活物質を決定するために、セクションF)誘導結合プラズマ法で開示されるプロトコルにより測定される。
【0044】
透過型電子顕微鏡(TEM)における電子エネルギー損失分光法(EELS)の使用は、陰極液中のLSPO材料を有するゲルマニウム及びNMC正極活物質の各組成物を取得するための別の実施例である。要素及びそれらの原子量は、断面のLSPO粒子を有するゲルマニウム及びNMC正極活物質粒子のEELSを別々に測定することによって直接取得することができる。
【0045】
実施例では、以下の分析方法を使用する。
【0046】
A)電気化学インピーダンス分光法(EIS)
円筒形ペレットは、以下の手順によって調製される。0.175gの粉末状固体電解質化合物試料を、1.275cmの直径を有する金型に入れる。230MPaの圧力を金型に加える。そのペレットを、酸素雰囲気において、700℃で3時間、焼結する。銀ペーストは、EIS測定を可能にするために、Ag/ペレット/Agの試料構成を有するように、ペレットの両側に塗られる。この測定値の標準偏差は、2.0×10-8である。
【0047】
EISは、積分周波数応答分析器を備えたIvium-n-Stat機器、ポテンシオスタット/ガルバノスタットを使用して実行される。この機器は、周波数掃引に対するインピーダンス応答を収集するために、電池/燃料電池で使用されることが一般的である。測定周波数範囲は、10Hz~10-1Hzである。設定点/ディケードは10であり、設定電圧は0.05Vである。測定は、室温(25℃で)で行われる。リチウムイオン伝導度は、以下の式によって計算される。
【0048】
【数1】
【0049】
ここで、Lはペレットの厚さであり、Aは試料の面積であり、Rは電気化学インピーダンス分光法によって取得される抵抗である。
【0050】
B)X線回折試験
円筒形ペレットは、以下の手順によって調製される。0.175gの粉末状固体電解質化合物試料を、1.275cmの直径を有する金型に入れる。230MPaの圧力を金型に加える。そのペレットを、酸素雰囲気において、700℃で3時間、焼結する。
【0051】
ペレット試料のX線回折パターンは、1.5418Åの波長で放射されるCu Kα放射線源を使用して、Rigaku X線回折計(D/MAX-2500/PC)で収集する。機器の構成は、1°のソーラースリット(Soller slit、SS)、1°の発散スリット(divergence slit、DS)、及び0.15mmの受光スリット(reception slit、RS)に設定する。回折パターンは、毎分4°の走査速度で10~70°(2θ)の範囲で取得される。取得されたXRDパターンを、X’Pert HighScore Plusソフトウェアを使用したリートベルト法によって分析する。ソフトウェアは、信頼性の高いリートベルト解析結果を有する粉末パターン分析ツールである。
【0052】
C)フーリエ変換赤外(FTIR)分光法
LSPGO粉末のFTIR透過スペクトルは、Thermo Scientific FTIR Spectrometer(Nicolet iS 50)を使用し、1200~500cm-1の波長範囲で、4cm-1の解像度及び32スキャンの走査サイクルで収集された。
【0053】
D)粒径分布
粒径分布(psd)測定で使用される陰極液粉末試料は、めのう乳鉢及び乳棒を使用して、陰極液粉末試料を手で粉砕することによって調製される。psdは、水性媒体中に陰極液粉末試料の各々を分散させた後、Hydro MV湿式分散付属品を備えるMalvern Mastersizer 3000を使用して測定する。陰極液粉末の分散を改善するために、十分な超音波照射及び撹拌を適用し、適切な界面活性剤を導入する。D50及びD99は、Hydro MV測定値を有するMalvern Mastersizer 3000から取得された累積体積%分布の50%及び99%における粒径として定義される。
【0054】
E)コイン電池試験
正極の調製のために、0.16gのNMC、0.03gの導体(Super P)、及び0.125gの8重量%のPVDFバインダーを含有する陰極液を、NMP中に遊星遠心ミキサー(Thinky mixer)を使用して20分間混合する。均一化したスラリーを、ギャップが15μmであるドクターブレードコータを使用して、アルミニウム箔の片面上に塗り広げる。スラリー被覆箔を乾燥させ、直径8mmの円形状に打ち抜く。Swagelok電池は、正極、13mmの直径を有するセパレータ、及び負極として11mmの直径を有するリチウム箔の構成を有するアルゴン充填グローブボックス内で組み立てられる。EC/DMC(1:1重量%)中の1M LiPFを電解質として使用する。各電池は、自動電池サイクラーWonatech-WBCS3000を使用して、25℃でサイクルさせる。コイン電池を、4.3~2.5V/Liの金属窓範囲にて、0.1Cで試験する。
【0055】
F)誘導結合プラズマ(ICP)
正極活物質、固体電解質、及び陰極液の組成物は、Agillent ICP 720-ESを使用して誘導結合プラズマ(ICP)法によって測定される。1グラムの粉末試料を、三角フラスコ内の50mLの高純度塩酸(溶液の総量に対して少なくとも37重量%のHCl)に溶解させる。粉末を完全に溶解させるまで、フラスコを時計皿でカバーし、380℃でホットプレート上で加熱する。室温まで冷却した後、三角フラスコからの溶液を250mLのメスフラスコに注ぐ。その後、メスフラスコの250mLの標線まで脱イオン水で充填し、続いて、完全に均質化させた。ピペットで適切な量の溶液を取り出し、2回目の希釈のために250mLメスフラスコに移し、ここで、メスフラスコの250mLの標線まで内部標準及び10%塩酸を満たした後、均一化させる。最後に、この溶液をICP測定に使用する。
【0056】
本発明を、以下の実施例において更に例示する。以下の試料を調製した。
【0057】
比較例1:
一般式Li3.50Si0.500.50を有するCEX1を、以下の工程によって調製した。
1)混合:対応するモル比に従って、約6.0gの総重量のLiCO、SiO、及び(NHHPOを、250mlのボトルに140mlの脱イオン水と、3、5及び10mmの直径を有するYドープZrOボール各100gと共に入れた。ボトルを、300RPMの従来のボールミル装置で24時間回転させた。均一に混合したスラリーを90℃で12時間乾燥させた。
2)焼成:乾燥した混合物を、Ar雰囲気において、900℃で6時間、焼成した。
3)粉砕:1.4gの焼成した粉末を、45mlのボトルに30mlのアセトンと、1mmの直径を有する3.4gのYドープZrOボールと共に入れた。ボトルを、500RPMの従来のボールミル装置で6時間回転させた。粉砕粉末を70℃で6時間乾燥させた。
4)焼結:乾燥粉末を酸素雰囲気において、700℃で3時間焼結して、最終的なLSPO固体電解質化合物を得た。
【0058】
実施例1
一般式Li(3.5+x)Si(0.5-x)(0.5-x)Ge2xを有するGeドープLSPO試料を、異なる量のGeOを添加し、LiCO、SiO、及び(NHHPOの量を、目標モル比により混合工程で調整したことを除いて、CEX1と同様に調製した。EX1-A、EX1-B、EX1-C、EX1-D、EX1-E、及びEX1-Fは、それぞれ0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、及び0.30のxを有した。
【0059】
比較例2
一般式Li(3.5-3x)Si(0.5-x)(0.5-x)2x4+aを有するSドープLSPO試料CEX2-A1及びCEX2-A2を、GeOの代わりに異なる量のLiSOを添加したことを除いて、実施例1の試料と同様に調製した。CEX2-A1及びCEX2-A2は、それぞれ0.05及び0.10のxを有した。
【0060】
一般式Li(3.5-3x)Si(0.5-x)(0.5-x)Ga2x4+aを有するGaドープLSPO試料CEX2-Bを、GeOの代わりにGaを添加したことを除いて、実施例1の試料と同様に調製した。CEX2-Bは、0.05のxを有した。
【0061】
説明実施例1
Li金属を有する電解質の安定性を調べるために、EX1-BのLSPGO試料を、Ar雰囲気下で溶融Li金属と直接接触させる。この目的のために、EX1-Bのペレットは、0.175gのEX1-A粉末を2349.7kgf/cmの圧力下でプレスし、続いて、O雰囲気下で700℃で3時間、焼結することによって作製される。Li箔のストライプを、(制御非酸化雰囲気下で)250℃のホットプレートで加熱されたステンレス鋼プレート上に置く。取得された溶融Liを、調製したEX1-Bペレットに直接注いで、ペレットを15分間観察する。この説明実験は、Ar雰囲気を有するグローブボックス内で実施される。ペレットは、最終的な熱暴走を検出するために視覚的に観察/監視され、構造はX線回折を使用して調べられる。
【0062】
結果
【0063】
【表1】
【0064】
xは、CEX1及びEX1-A~EX1-Fにおいては式Li(3.5+x)Si(0.5-x)(0.5-x)Ge2xのもの、CEX2-A1及びCEX2-A2においては式Li(3.5-3x)Si(0.5-x)(0.5-x)2xのもの、及びCEX2-Bにおいては式Li(3.5+3x)Si(0.5-x)(0.5-x)Ga2xのものである。)
【0065】
本発明によるLSPGOの向上した伝導度
表1は、実施例及び比較例の試料のリストを要約する。x=0.05~0.30(EX1-A~EX1-F)におけるLSPGO試料は、LSPO試料(CEX1)よりも高いリチウムイオン伝導度を有することが分かる。LSPOを有するS及びGa(CEX2-A1、CEX2-A2、及びCEX2-B)の場合、リチウムイオン伝導度はより低い。
【0066】
図1は、Li(3.5+x)Si(0.5-x)(0.5-x)Ge2x4+a(x=0.00~0.30)のEIS測定の典型的なナイキスト線図を示す。プロットは、X軸におけるインピーダンスの実数部及びY軸における虚数部から構成される。グラフの左側に高周波測定値が現れると、半円を形成し、これに、低周波測定値の結果として低角度スパイクが続く。半円形成は、SEにおけるリチウム伝導に対応する。CEX1のリチウムイオン伝導度は、LSPOについて以前に公開されたものに匹敵して、室温で4.4×10-6である。より高いGe量を有する半円直径の減少は、より良好な伝導度を示唆する試料のより低い抵抗を示す。
【0067】
図2は、リチウムイオン伝導度の改善を示し、この値は、構造中のより多くのGeと比例して増加する。最も高いリチウムイオン伝導度は、x=0.25で2.7×10-5であり、これはCEX1の約6倍である。xが0.30であるとき、値は2.4×10-5に減少し、0.25が最適な濃度であると結論付ける。
【0068】
本発明によるGeドープLSPOにおける固溶体の保持について、図3は、CEX1(非ドープ電解質)及びEX1-A~EX1-FのXRDパターンを示す。LSPOを有するGe試料は、不純物を含まない単一のLISICON相を有し、Geが良好にドープされていることを実証することが観察される。全てのグラフでは、γ-LiPO構造は、(121)及び(200)平面を表す28°~29°における特性二重ピーク、並びに(220)、(131)、(211)、及び(002)平面に対応する34°~36°における4つの連続ピークによって示されるように、維持される。左側にシフトされたピーク位置は、表1に示されたより大きな結晶体積に関連する。観察された単相はまた、LSPOを有するGEの固溶体形成の証拠としても作用する。
【0069】
加えて、P-O、Si-O、及びGe-Oの振動バンドがマークされた状態で、FTIR測定値を図4に表示する。580cm-1、910cm-1、及び約1050cm-1における振動バンドは、四面体P-Oの振動モードに対応し、985~1005cm-1領域におけるバンドはまた、四面体構造においてもSi-Oの振動モードに対応する。全てのバンドは、構造中のGeの添加と共に透過率信号の増加を示す。一方、Ge-O振動に対応する790cm-バンドの透過率は、構造中のより多くのGeと共に減少する。Geの原子置換は、構造を変化させることなく、Si及びP部位で成功裏に生じたと結論付けられる。この観察結果はXRDのものと一致し、ここで、LSPOの構造は、ドーピングの際に維持される。
【0070】
CEX2のXRDを、図5のCEX1と比較する。LSPO構造を有するS(CEX2-A)は依然として良好に維持され、一方、LSPO構造を有するGa(CEX2-B)は、グラフ中に()でマークされた複数の不純物ピークを有する。このことは、LSPO系ではGaのドープが容易ではなく、固溶体はCEX2-Bについては形成に失敗している。
【0071】
Li金属箔を有するLSPGOの化学的安定性
Li金属を有するLSPGOの化学的安定性を、溶融したLi金属と直接接触させて調べた。
【0072】
溶融したLi金属への曝露後のLSPGOペレットXRD回折パターンを、図6に示すように曝露前の元のパターンと比較する。両方の測定値は、構造が同じままであることを示す同じピーク位置を有する回折グラムを生成した(Li金属との反応の結果として構造的変化は存在しない)。ペレットはまた、熱暴走又は任意の発熱反応なしに、接触時に非常に安定であることが観察される。
【0073】
実施例2(陰極液)
Li(Ni0.60Mn0.20Co0.20)Oの目標式を有するM-NMC622化合物、及びモノリシック形態は、二重焼結プロセス及び以下のように実行される湿式ミル粉砕プロセスによって取得される。
1)共沈:約4μmのD50を有する混合遷移金属水酸化物を、韓国特許第101547972B1号(6ページ25行目~7ページ32行目)に記載のプロセスによって調製する。
2)第1のブレンド:リチウム欠乏焼結前駆体を得るために、LiCO及び共沈生成物を、0.85のLi/M比で、30分間、Henschelミキサーで均一にブレンドして第1のブレンドを取得する。
3)1回目の焼結:第1のブレンドを、酸素含有雰囲気下で、935℃で10時間焼結する。この工程から得られた生成物は、Li/M’=0.85を有する粉末状リチウム欠乏焼結前駆体である。
4)ブレンド:リチウム欠乏焼結前駆体をLiOH・HOとブレンドして、Liの化学量論量をLi/M’=1.01に補正する。ブレンドは、第2のブレンドを取得するために、ミキサーで30分間行われる。
5)2回目の焼結:2回目のブレンドを、ローラーハースキルン(RHK)において、酸素含有雰囲気において、890℃で10時間焼結する。焼結されたブロックをジョークラッシュ破砕装置によって破砕する。
6)湿式ミル粉砕:凝集している中間粒子をモノリシックな一次粒子に破壊するために、湿式ボールミル粉砕プロセスを適用する。5Lのボトルを1Lの脱イオン水、5.4kgのZrOボール、及びプロセス番号5からの1kgの第2の焼結生成物で充填する。ボトルを市販のボールミル装置上で回転させる。
7)回復加熱工程(3回目の焼結):湿式ミル粉砕された生成物を、炉において、酸素含有雰囲気下で、750℃で10時間加熱する。焼結化合物をふるい分けする。
【0074】
陰極液材料EX2-CAT-Aは、重量で1:1の混合比によりM-NMC622及びEX1-B(Li3.60Si0.400.40Ge0.20)を混合し、続いて、酸素雰囲気(すなわち空気のような)において、700℃で3時間熱処理することによって作製される。EX1-Bは、2μmの中央粒径(D50)を有する。
【0075】
陰極液材料EX2-CAT-Bは、混合物を600℃で加熱することを除いて、EX2-CAT-Aの調製と同様に取得される。
【0076】
比較例3(陰極液)
CEX3-CAT-A及びCEX3-CAT-Bは、表2に示すように、混合物をそれぞれ500℃、900℃で加熱したことを除いて、EX2-CAT-Aの調製と同様に取得される。
【0077】
【表2】
【0078】
:-CAT-は「陰極液」を表す。
**:測定されない。
【0079】
表2に表示するようなサイズ分布測定の結果は、EX2-CAT-A、EX2-CAT-B、CEX3-CAT-A、及びCEX3-CAT-Bが、約10.2~10.5μmの同様のD50を有することを示す。しかしながら、D99値は、より高い共焼結温度でより大きい。例えば、EX2-CAT-AのD99(700℃での焼結からもたらされる)は、34.7μmであり、CEX3-CAT-BのD99(900℃での共焼結からもたらされる)は、143.0μmである。図7に表示するようにEX2-CAT-A及びCEX3-CAT-Bのコイン電池の特性は、電気化学性能に対する共焼結温度の効果を示す。ここで、900℃で焼結されたCEX3-CAT-Bは、700℃で焼結されたEX2-CAT-Aと比較して低い放電容量を明確に示す。
【0080】
一方、600℃未満の共焼結温度も好ましくない。表2で提供されるイオン伝導度データはまた、陰極液のイオン伝導度が共焼結温度に依存し、ここで、陰極液は、より高い共焼結温度でより導電性であることも実証している。700℃で共焼結調製してもたらされたEX2-CAT-Aは、10-5S/cmのイオン伝導度を有し、(500℃で共焼結してもたらされる)CEX3-CAT-Aは、10-7S/cmのイオン伝導度を有し、すなわち、x100の減少が、CEX3-CAT-A’イオン伝導度に関してこの試料に対して観察される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7