(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】ポリアセタール樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 59/00 20060101AFI20230116BHJP
C08G 2/24 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
C08L59/00
C08G2/24
(21)【出願番号】P 2018170615
(22)【出願日】2018-09-12
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】喜来 直裕
(72)【発明者】
【氏名】増田 栄次
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-113010(JP,A)
【文献】特公昭44-019263(JP,B1)
【文献】特開2000-319342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 59
C08G 2
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して
トリオキサン(a)、炭素数2以上のオキシアルキレン基を環内に有する環状アセタール化合物(b)、および1分子中に
グリシジルエーテル基由来ではないエポキシ基を2個以上有し
、前記エポキシ基以外は
炭素数が1以上の直鎖の炭化水素からなるポリエポキシ化合物(c)を共重合して得られる分岐ポリアセタール共重合体(B)を0.1~100質量部を混合して得られるポリアセタール樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリエポキシ化合物(c)が下記式で表されるポリエポキシ化合物である請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
【化1】
Pは
1~20の整数を表す。
【請求項3】
分岐ポリアセタール共重合体(B)がプロトン酸を重合触媒とした重合体である請求項1または2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱安定性に優れホルムアルデヒドの発生量が極めて少なく、強度が高く、長期耐熱性に優れたポリアセタール樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は、機械的特性、熱的特性、電気的特性、摺動性、成形性等において、優れた特性を持っており、主に構造材料や機構部品等として電気機器、自動車部品、精密機械部品等に広く使用されている。しかし、ポリアセタール樹脂が利用される分野の拡大に伴い、要求特性は益々高度化、複合化、特殊化する傾向にある。そのような要求特性として、ポリアセタール樹脂が本来有する優れた摺動性、外観等を維持したまま、強度向上、ホルムアルデヒドの発生抑制に対し一層の向上が要求される。
【0003】
これに対し、単に強度を向上させるだけの目的であれば、ポリアセタール樹脂に繊維状フィラー等を充填する方法が一般的であるが、この方法では、繊維状フィラー等の充填による成形品の外観不良や摺動特性の低下等の問題、更には靱性低下の問題がある。
【0004】
また、ポリアセタール共重合体では、コモノマー量を減少させることにより、摺動性や外観を実質的に損なうことなく強度を向上させることが知られているが、コモノマー減量の手法においては、靱性が低下するのみならずポリマーの熱安定性も低下する等の問題が生じ、必ずしも要求に応え得るものではなかった。
【0005】
分岐構造導入したポリアセタール共重合体を配合した強度向上も試みられているが(特許文献1)、分岐構造を導入したポリアセタール共重合体の重合の際に、コモノマーの種類によっては、カチオン重合触媒、特にプロトン酸を重合触媒とする場合に、重合開始が遅れ、突然爆発的に重合が起こってしまうことがあり、生産安定性の面からも課題があった。
【0006】
例えば、ポリアセタール共重合体に関して、トリオキサンと、1分子中にグリシジルエーテル基を2個以上有する化合物とを共重合させた共重合体が提案されている(特許文献2)。しかし、グリシジルエーテル基に代表されるエポキシ基とエーテル酸素を官能基として複数個有する化合物を重合に使用する場合、重合安定性に課題が残っている。特にプロトン酸を重合触媒に使用した場合、低触媒量では重合が起こらず、触媒量を上げると、不定期な誘導期ののち、突然激しい重合反応が起こる現象が発生し、重合制御を難しくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特公昭55-019942号公報
【文献】特開2001-163944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、加熱分解時のホルムアルデヒド発生量等の耐熱品質を損なうことなく、強度、長期耐熱性のレベルを改善するポリアセタール樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は下記によって達成された。
1. 線状ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して
トリオキサン(a)、炭素数2以上のオキシアルキレン基を環内に有する環状アセタール化合物(b)、1分子中にエポキシ基を2個以上有しエポキシ基以外は炭化水素からなるポリエポキシ化合物(c)を共重合して得られる分岐ポリアセタール共重合体)(B)を0.1~100質量部を混合して得られるポリアセタール樹脂組成物。
2. 前記ポリエポキシ化合物(c)が下記式で表されるポリエポキシ化合物である前記1記載のポリアセタール樹脂組成物。
【化1】
Pは0~20の整数を表す。
3. 分岐ポリアセタール共重合体(B)がプロトン酸を重合触媒とした重合体である前記1または2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加熱分解時のホルムアルデヒド発生量等の耐熱品質を損なうことなく、強度、長期耐熱性のレベルを改善するポリアセタール樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0012】
<ポリアセタール樹脂組成物>
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、線状ポリアセタール樹脂(A)とトリオキサン(a)、炭素数2以上のオキシアルキレン基を環内に有する環状アセタール化合物(b)及び1分子中にエポキシ基を2個以上有しエポキシ基以外は炭化水素からなるポリエポキシ化合物(c)を共重合して得られる分岐ポリアセタール共重合体(B)とを含有するポリアセタール樹脂組成物である事を特徴とするものである。
本発明の樹脂組成物において、かかる分岐ポリアセタール共重合体の配合量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.1~100質量部であり、好ましくは0.5~100質量部である。
【0013】
<(A)線状ポリアセタール樹脂>
以下、本発明のポリアセタール樹脂組成物の構成について詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物の基体である線状ポリアセタール樹脂(A)とは、オキシメチレン単位(-CH2O-)を主たる構成単位とする高分子化合物であり、ポリアセタールホモポリマー(例えば米国デュポン社製、商品名「デルリン」等)、オキシメチレン基以外に他のコモノマー単位を含有するポリアセタールコポリマー(例えば、ポリプラスチックス(株)社製、商品名「ジュラコン」等)が含まれる。
【0014】
ポリアセタールコポリマーにおいて、コモノマー単位には炭素数2~6程度(好ましくは、炭素数2~4程度)のオキシアルキレン単位(例えば、オキシエチレン基(-CH2CH2O-)、オキシプロピレン基、オキシテトラメチレン基等)が含まれる。
また、コモノマー単位の含有量は、樹脂の結晶性を大幅に損なわない程度の量、例えば、ポリアセタール重合体の構成単位に占める割合として、一般的には0.01~20モル%、好ましくは、0.03~10モル%、更に好ましくは、0.1~7モル%程度の範囲から選択できる。
【0015】
ポリアセタールコポリマーは、二成分で構成されたコポリマー、三成分で構成されたターポリマー等であってよい。ポリアセタールコポリマーは、ランダムコポリマーの他、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー等であってよい。
本発明において配合するポリアセタール樹脂(A)としては、その熱安定性等の点で特にポリアセタールコポリマーが好ましい。また分岐ポリアセタール共重合体(B)の配合による強度改善効果も、基体となる線状ポリアセタール樹脂がポリアセタールコポリマーである場合、より顕著である。
【0016】
<(B)分岐ポリアセタール共重合体>
本発明の分岐ポリアセタール共重合体は、トリオキサン(a)、炭素数2以上のオキシアルキレン基を環内に有する環状アセタール化合物(b)および1分子中にエポキシ基を2個以上有しエポキシ基以外は炭化水素からなるポリエポキシ化合物(c)とを共重合し、分岐構造を形成させたポリアセタール共重合体である。
【0017】
≪(a)トリオキサン≫
本発明において用いられるトリオキサンとは、ホルムアルデヒドの環状三量体であり、一般的には酸性触媒の存在下でホルムアルデヒド水溶液を反応させることによって得られ、これを蒸留等の方法で精製して用いられる。
【0018】
≪(b)炭素数2以上のオキシエチレン基を環内に有する環状アセタール化合物≫
本発明の炭素数2以上のオキシエチレン基を環内に有する環状アセタール化合物とは、ポリアセタール共重合体の製造においてコモノマーとして一般に使用される化合物である、具体的には、1,3-ジオキソラン、1,3,6-トリオキソカン、1,4-ブタンジオールホルマール等が挙げられる。
本発明において、(b)成分は、トリオキサン100質量部に対して0.01~20質量部の範囲となるように使用するのが好ましく、さらに好ましくは0.05~5質量部の範囲である。
【0019】
≪(c)1分子中にエポキシ基を2個以上有しエポキシ基以外は炭化水素からなるポリエポキシ化合物≫
本発明で使用する(c)成分は、1分子中にエポキシ基を2個以上有しエポキシ基以外は炭化水素からなるポリエポキシ化合物であることを特徴とする。
一般に分子内にエポキシ基を導入する場合、エピクロルヒドリンを原材料としたグリシジルエーテル基の構造で導入されることが多いが、本発明のエポキシ基は、グリシジルエーテル基由来ではないエポキシ基を有することを特徴とする。
【0020】
本発明のグリシジルエーテル基とは、下記の構造の基をいう。*は他の構造との結合部位を表す。
【0021】
【0022】
ジグリシジルエーテル基のみに由来のエポキシ基を有するエポキシ化合物をコモノマーとすることが周知技術として知られているが、本発明では、グリシジルエーテル基が存在しない方が、組成物のホルムアルデヒド発生量を抑制しつつ強度が改善されることを見出したものである。
【0023】
具体的には、1,3-ブタジエンジエポキシド(下記C-5)、1,4-ペンタジエンジエポキシド、1,5-ヘキサジエンジエポキシド(下記C-4)、1,6-ペプタジエンジエポキシド、1,7-オクタジエンジエポキシド(下記C-3)、1,8-ノナジエンジエポキシド、1,9-デカジエンジエポキシド(下記C-2)、1,10-ウンデカジエンジエポキシド、1,11-ドデカジエポキシド(下記C-1)等を挙げることができる。
【0024】
【0025】
好ましくは、下記一般式1,2で表されるエポキシ化合物である。
【化4】
Pは、0~20の整数を表す。
【0026】
【化5】
nは,0~10の整数、m、nは、それぞれ1~10の整数を表す。
【0027】
本発明において、(c)成分は、トリオキサン100質量部に対して0.01~5質量部の範囲となるように使用するのが好ましく、さらに好ましくは0.03~1質量部の範囲である。
【0028】
<分岐ポリアセタール共重合体の重合方法>
本発明の分岐ポリアセタール共重合体の重合方法は、トリオキサン、炭素数2以上のオキシアルキレン基を環内に有する環状アセタール化合物および1分子中にエポキシ基を2個以上有しエポキシ基以外は炭化水素からなるポリエポキシ化合物とを、カチオン重合触媒の存在下、共重合させることを特徴とする。
【0029】
<カチオン重合触媒>
カチオン重合触媒としては、トリオキサンを主モノマーとするカチオン共重合において公知の重合触媒が使用できる。代表的には、ルイス酸、プロトン酸が挙げられる。特に、プロトン酸であることが好ましい。
【0030】
≪プロトン酸≫
プロトン酸としては、パーフルオロアルカンスルホン酸、ヘテロポリ酸、イソポリ酸等が挙げられる。パーフルオロアルカンスルホン酸の具体例として、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸、ペンタデカフルオロへプタンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸が挙げられる。
【0031】
ヘテロポリ酸とは、異種の酸素酸が脱水縮合して生成するポリ酸をいい、中心に特定の異種元素が存在し、酸素原子を共有して縮合酸基が縮合してできる単核又は複核の錯イオンを有する。イソポリ酸とは、イソ多重酸、同核縮合酸、同種多重酸とも称され、V価又はVI価の単一種類の金属を有する無機酸素酸の縮合体から成る高分子量の無機酸素酸をいう。
【0032】
ヘテロポリ酸の具体例として、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、リンタングストバナジン酸、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸、ケイモリブドタングステ
ン酸、ケイモリブドタングステントバナジン酸等が挙げられる。特に、重合活性の観点から、ヘテロポリ酸は、ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステン酸から選択されることが好ましい。
【0033】
イソポリ酸の具体例として、パラタングステン酸、メタタングステン酸等に例示されるイソポリタングステン酸、パラモリブデン酸、メタモリブデン酸等に例示されるイソポリモリブデン酸、メタポリバナジウム酸、イソポリバナジウム酸等が挙げられる。中でも、重合活性の観点から、イソポリタングステン酸であることが好ましい。
【0034】
≪ルイス酸≫
ルイス酸としては、例えば、ホウ素、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物が挙げられ、具体的には三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン及びその錯化合物又は塩が挙げられる。
【0035】
重合触媒の量は特に限定されるものでないが、全モノマーの合計に対して0.1ppm以上50ppm以下であることが好ましく、0.1ppm以上30ppm以下であることがより好ましい。特に好ましくは0.1ppm以上10ppm以下である。(以下、単位のppmはすべて質量基準である。)
【0036】
本発明のポリアセタール共重合体の製造においては、上記成分の他に分子量を調整する成分を併用し、末端基量を調整することができる。分子量を調整する成分としては、不安定末端を形成することのない連鎖移動剤、即ち、メチラール、モノメトキシメチラール、ジメトキシメチラール等のアルコキシ基を有する化合物が例示される。
【0037】
本発明のポリアセタール共重合体の重合方法は、特に限定されるものではない。製造するにあたり、重合装置も特に限定されるものではなく、公知の装置が使用され、バッチ式、連続式等、いずれの方法も可能である。また、重合温度は65℃以上135℃以下に保つことが好ましい。
カチオン重合触媒は、重合に影響のない不活性な溶剤で希釈して使用することが好ましい。
【0038】
重合後の重合触媒の失活は従来公知の方法で行うことができる。例えば、重合反応後、重合機より排出される生成反応物、重合機中の反応生成物に塩基性化合物又はその水溶液等を加えて行うこともできる。
重合触媒を中和し失活するための塩基性化合物は、特に限定されるものでない。重合及び失活の後、必要に応じて更に、洗浄、未反応モノマーの分離回収、乾燥等を従来公知の方法にて行う。
【0039】
上記のようにして得られるポリアセタール共重合体は、その重量平均分子量が10000~500000(GPCによるポリメタクリル酸メチル換算)であることが好ましく、特に好ましくは20000~150000である。また、末端基については、1H-NMRにより検出されるヘミホルマール量(例えば、特開2001-11143公報記載の方法による)が0~4mol/kgであることが好ましく、特に好ましくは0~2mmol/kgである。
【0040】
ヘミホルマール末端基量を上記範囲に制御するためには、重合に供するモノマー、コモノマー総量中の不純物、特に水分を20ppm以下にするのが好ましく、特に好ましくは10ppm以下である。
【0041】
<その他成分>
上記の如き本発明の樹脂組成物には、必要に応じて選択される各種安定剤を配合するのが好ましい。ここで用いられる安定剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、窒素含有化合物、アルカリ或いはアルカリ土類金属の水酸化物、無機塩、カルボン酸塩等のいずれか1種または2種以上を挙げることができる。更に、本発明を阻害しない限り、必要に応じて、熱可塑性樹脂に対する一般的な添加剤、例えば染料、顔料等の着色剤、滑剤、核剤、離型剤、帯電防止剤、界面活性剤、或いは、有機高分子材料、無機または有機の繊維状、粉体状、板状の充填剤等を1種または2種以上添加することができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0043】
実施例および比較例で使用した線状ポリアセタール樹脂および分岐ポリアセタール共重合体は以下の通りである。
【0044】
<線状ポリアセタール樹脂(A)>
線状ポリアセタール樹脂は、次のようにして調製した。
二軸パドルタイプの連続式重合機にトリオキサン(TOX)96.7質量%と1,3-ジオキソラン(DO)3.3質量%とメチラール800ppmの混合物を連続的に供給し、触媒として三フッ化ホウ素20ppmを添加し重合を行った。
重合機吐出口より排出された重合体は、直ちにトリエチルアミン1000ppm含有水溶液を加えて粉砕、攪拌処理を行うことにより触媒の失活を行い、次いで、遠心分離、乾燥を行うことにより線状ポリアセタール共重合体を得た。
【0045】
<分岐ポリアセタール共重合体(B)>
分岐ポリアセタール共重合体は、次のようにして調製した。
熱媒を通すことのできるジャケットと撹拌羽根を有する密閉オートクレーブ中に300gのトリオキサン(a)を入れ、さらに(b)成分として1,3-ジオキソラン(DO)または1,4-ブタンジオールホルマール(BDF)を、(c)成分として表1に示す化合物を、それぞれ表1に示した質量部の割合になるように添加した。これら内容物を撹拌し、ジャケットに80℃の温水を通して内部温度を約80℃に保った後、触媒溶液(リンタングステン酸はギ酸メチルの溶液,トリフルオロメタンスルホン酸はシクロヘキサンの溶液)を表1に示す触媒濃度(対全モノマー)になる様に加えて重合を開始した。
【0046】
5分後にこのオートクレーブへトリエチルアミン1000ppmを含む水300gを加えて反応を停止し、内容物を取り出して200メッシュ以下に粉砕し、アセトン洗浄及び乾燥後、分岐ポリアセタール共重合体を得た。
【0047】
比較として下記ジグリシジル化合物X-1(ブタンジオールジグリシジルエーテル:グリシジルエーテル基が2個のもの)を本発明の(c)成分に替えて使用したポリアセタール共重合体を重合し、比較の分岐ポリアセタール共重合体を得た。
【化6】
【0048】
<実施例および比較例>
表1に示す各種成分を表1に示す割合で添加混合し、ベント付き二軸の押出機で溶融混練してペレット状の組成物を調製した。
なお、全ての試料において、溶融混錬の際に、(A)成分と(B)成分の合計量100質量部に対して、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert―ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート](製品名:Irganox245,BASF社製)0.35質量部、メラミン0.08質量部を添加した。
【0049】
<評価>
なお、実施例における特性評価項目及び評価方法は以下の通りである。結果を表1に示す。
[引張試験]
機械物性の代表として引張強度を測定した。厚さ 4mmのISO Type-A試験片を成形し、JIS527-1,2に準拠した引張り強度(TS)を測定した。
【0050】
[耐ヒートエージング性(長期耐熱性)評価]
厚さ4mmのISO Type-A試験片を成形し、ギヤーオーブン(東洋精機((株))製)中で140℃に40日保持し、ISO527―1、2に準拠した引張強度を測定し、加熱処理前の引張強度(TS)に対する保持率を求め、以下の通りに○~×に区分した。
×:40日後のTS保持率が80%未満
○:40日後のTS保持率が80%以上
【0051】
[溶融体からのホルムアルデヒド発生量]
5gのペレットを正確に秤量し、金属製容器中に200℃で5分間保持した後、容器内の雰囲気を蒸留水中に吸収させる。この水溶液のホルムアルデヒド量をJISK0102,29.(ホルムアルデヒドの項)に従って定量し、ペレットから発生するホルムアルデヒドガス量(ppm)を算出した。
【0052】
【0053】
表1から、本発明では、強度、耐ヒートエージング性(長期耐熱性)といった物性に優れ、さらにホルムアルデヒド発生抑制にも優れていることがわかる。