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特許7210444化学機械平坦化基板から残留物を除去するための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】化学機械平坦化基板から残留物を除去するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230116BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20230116BHJP
   C11D 7/22 20060101ALI20230116BHJP
   B24B 55/06 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
H01L21/304 622Q
H01L21/304 622X
H01L21/304 622B
H01L21/304 647A
C11D7/26
C11D7/22
B24B55/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019526288
(86)(22)【出願日】2017-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 US2017063586
(87)【国際公開番号】W WO2018111545
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】62/434,153
(32)【優先日】2016-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500397411
【氏名又は名称】シーエムシー マテリアルズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】ホアン ヘリン
(72)【発明者】
【氏名】チー ツイ
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-210990(JP,A)
【文献】特開2014-199688(JP,A)
【文献】国際公開第2016/011329(WO,A1)
【文献】特表2015-512959(JP,A)
【文献】国際公開第2012/039390(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C11D 7/26
C11D 7/22
B24B 55/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CMP基板から残留物を除去する方法であって、前記方法が、
(a)CMP基板を提供すること、前記基板は、タングステン、銅、またはコバルトを含む表面層を有する、
(b)パッドを含むプラテンを提供すること、
(c)液体キャリア、及び
シクロデキストリン化合物、
からなる洗浄溶液を提供すること、前記洗浄溶液は、実質的に研磨粒子を含まない、
ならびに
(d)前記基板の表面に前記パッド及び前記洗浄溶液を動かしながら接触させて前記表面から前記残留物を除去すること、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記洗浄溶液が、洗浄溶液の総重量を基準として10~50,000ppmのシクロデキストリン化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記洗浄溶液が、本質的に水及びシクロデキストリン化合物からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記表面が、有機物質、ならびに有機物質及び無機物質の沈殿、凝集、または凝固した組み合わせを含む残留物粒子から選択される残留物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記残留物が、有機物質を含む残留物粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
CMP後のタングステン、銅、またはコバルトを含む表面層を有する基板を処理するための洗浄溶液であって、前記洗浄溶液が、
液体キャリア、及び
洗浄溶液の総重量を基準として10~50,000ppmのシクロデキストリン化合物、
からなり、前記洗浄溶液は、実質的に研磨粒子を含まない、前記洗浄溶液。
【請求項7】
本質的に水及びシクロデキストリン化合物からなる、請求項に記載の洗浄溶液。
【請求項8】
前記洗浄溶液が、実質的に界面活性剤を含有しない、請求項に記載の洗浄溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学機械平坦化(CMP)技術及び関連する組成物、特にCMP組成物ならびにCMP基板の表面上での残留物の形成を防止するため、またはCMP基板から残留物を除去するためのCMPプロセス工程中に有用な及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路、光デバイス、メモリデバイス、磁電部品、及び電子、メモリ、光学、及び同様の用途で使用される他のマイクロデバイスまたはマイクロデバイス部品の分野を含むマイクロ電子デバイスの分野では、マイクロ電子デバイスは、基板上に物質の組み合わせを堆積し、除去する複数の工程によって調製される。処理中に適用される層の物質は、金属などの導電性物質、ケイ素系物質(例えば、酸化ケイ素)などの半導体物質、またはポリマー物質であり得る。マイクロ電子デバイスは、マイクロ電子構造の層を基板上に構築するように、基板の表面でこれらの物質を選択的に適用し、選択的に除去することによって調製される。これらの工程間で、適用された物質層の多くは、基板の最上層(表面)を平坦化または研磨する工程によって処理される。製造中に平坦な表面を必要とするマイクロ電子デバイス基板の例には、集積回路、メモリディスク、磁電マイクロデバイスなどを製造するために使用される基板が含まれる。マイクロ電子デバイス基板の表面上に配置され、その表面から除去される金属及び半導体物質の例には、とりわけ、タングステン、コバルト、ニッケル、銅、金属合金(例えば、Al、NiC、TiC)、二酸化ケイ素などの酸化物が含まれる。多くの場合、導電性物質、例えば、タングステン、銅、またはコバルトなどの金属は、基板上に配置されて、基板の表面に予め調製された下部の構造を覆うかまたは充填する。導電性物質の層を配置した後、その物質の余分な部分(例えば、「過剰負荷」)を除去して、マイクロ電子デバイスの導電的特徴を形成する残存量の導電性物質を残さなければならない。
【0003】
マイクロ電子デバイス基板の表面を処理するための一般的な技術は、化学機械平坦化(CMP)による。用語「平坦化すること」及び「研磨すること」、ならびにこれらの単語の他の形態は、異なる含意を有するが、しばしば互換的に使用され、意図される意味は用語が使用される文脈によって伝えられる。説明を容易にするため、本明細書ではそのような一般的な用法に従い、用語「化学機械平坦化」及びその略語「CMP」は、「化学機械処理」及び「化学機械研磨」のより具体的な用語のいずれかを伝えるために使用される。
【0004】
化学機械平坦化では、基板はキャリアヘッドまたは「キャリア」によって保持され、基板の表面は、典型的には研磨スラリーなどの研磨物質の存在下で、CMPパッドの表面に対して押し付けられる。パッドは、基板表面に対向するプラテンに取り付けられ、キャリアによって保持される基板表面は、キャリア及び基板、プラテン、またはその両方を動かしながら配置することによってパッドの表面に対して移動する。基板から効果的かつ効率的に物質を除去するために望まれるように、スラリーは、化学物質及び研磨粒子の組み合わせを含有し得ることで、研磨粒子、化学物質、またはその両方の存在下での基板表面とパッドとの間の運動が、基板表面からの所望の量及び種類の物質の除去を引き起こして、理想的には平坦なまたは研磨された表面を生じさせる。基板表面から金属を除去するための典型的なスラリーは、化学物質及び研磨粒子が溶解または分散した多量の液体キャリアを含み得る。研磨粒子は、基板から特定の物質を除去するのに有用であるサイズ及び組成の特徴を有し得;例示的な粒子は、アルミナ、セリア、シリカ(様々な形態)、または他の金属もしくは金属酸化物物質から作製され得るか、またはそれを含有し得る。スラリーの化学物質は、完成した基板表面の所望の除去速度及び最終的なトポグラフィ(例えば、滑らかさ)を達成するように選択され、スラリー中の化学物質の種類及び量は、基板表面に存在する物質(複数可)の種類に依存し得る。化学物質の例には、界面活性剤、酸化剤、または(除去速度を制御するための)有機抑制剤、キレート化剤、及び有機基を含有する他の化学物質のうちの1つ以上として機能する有機化学物質が含まれる。他の可能性のある化学物質には、pH調整剤(塩基、酸)、及び殺生物剤(保存剤として)が含まれる。
【0005】
基板表面から導電性金属を除去する多くのCMPプロセスは2工程プロセスを使用する。第1の工程は、金属の「過剰負荷」の層の積極的な除去のために使用され、比較的高い除去速度を達成するために実施され;この工程はしばしば「バルク除去」工程と称される。バルク除去工程の後に表面を精製または「研磨」するために後続の工程が実施され、この工程はしばしば「研磨」工程と称される。バルク除去工程は、高い除去速度が生じるように選択された研磨粒子及び化学物質を含むスラリーを用いて実施される。他の物質(例えば、酸化ケイ素)と比較して金属を除去するためのバルク除去工程中の高い選択性は、必要とされなくてもよく、強調されなくてもよい。後続の研磨工程は一般的に、バルク除去工程で使用されるスラリーと比較して、異なる(例えば、積極性に劣る)研磨粒子及び異なる化学物質を含むスラリーを用いて実施される。研磨工程の間、異なる物質(例えば、酸化ケイ素)に対して1種類の物質(例えば、金属)のより選択的な除去が重要であり得、物質の高速除去はそれほど重要ではない。また、異なる処理パラメータは、基板とパッドとの間の相対運動の異なる速度、基板とパッドとの間の異なる圧力、及び異なる処理時間などの2つの異なる種類の工程を用いて使用され得る。望ましくは、現在の従来の実務によって、バルク除去工程は、キャリアから基板を除去することなく実施される。すなわち、基板は、バルク除去工程による処理のためのキャリア内に配置され、基板は、研磨工程における処理のための同じキャリア内に保持される。
【0006】
研磨工程の後には一般に「CMP後」洗浄工程が続き、その間に基板はキャリアから物理的に取り外され、ブラシ洗浄ステーションを含み得る手段によって基板表面を更に洗浄する洗浄装置に移され、ここでもやはりCMP洗浄溶液の存在下で基板が機械的にこすり洗いされ、すすがれる。
【0007】
多くのCMPプロセスでは、残留物は基板表面に蓄積し、処理工程の間及び後の両方で基板表面に存在し得る。欠陥のない完成したデバイスへの基板の効率的な処理は、後続の堆積及び除去工程中の処理のための高度に精製された清浄な基板表面の存在に依存するため、残留物の形成を防止するため、または一旦存在する残留物を除去するために多大な努力がなされている。特に研磨粒子を含有する残留物物質は、引っかきなどの表面欠陥、及び埋め込まれた粒子の形態のデバイス欠陥を生じさせ得るため、除去しなければならない。
【0008】
平坦化または研磨工程の後に、様々な可能性のある残留物の種類が基板表面に存在し得る。残留物は、スラリーを構成する物質のうちの1つ、例えば、化学物質または研磨粒子を単独でまたは組み合わせて含む場合がある。残留物はまた、CMPプロセス工程中にスラリーに導入される物質、例えば、処理中に基板表面から除去される物質(例えば、金属イオン)、またはスラリーの化学物質の反応もしくは化学修飾(例えば、酸化または還元)による処理中に生成される物質を含む。2つのそのような物質が、例えば溶液から沈殿し、凝集し、または凝固して固体残留物粒子(略して「残留物粒子」とも称される)を形成することによって、その2つが固体を生成するように組み合わさるかまたは相互作用する場合に、所定の固体、例えば、粒子タイプの残留物が処理工程中に形成される。これらの種類の残留物粒子の例は、スラリー中の有機化学物質が、その2つの物質が固体(例えば、凝集体、凝固体、または沈殿体)を形成するように金属物質と相互作用する場合に形成し得る。金属物質は、有機化学物質と組み合わさって沈殿、凝集、または凝固によって固体残留物粒子を形成し得るスラリー中の金属研磨粒子、金属含有研磨粒子(例えば、金属酸化物)、金属イオン、または別の金属含有物質であり得る。多くのスラリーは、金属物質に(化学的に、イオン的になどで)引き付けられ得る有機化学物質を含有する。
【0009】
固体残留物粒子は、粒子がCMP基板の表面に頑固に付着する程度までそれらが表面に引き付けられる場合に問題となる。そのような残留物粒子がCMP基板表面に存在する場合、残留物粒子を溶解するために、または表面から粒子を物理的に除去するために追加的な処理工程が必要とされ得る。そのような工程の例には、CMPプロセス工程を実施するために使用されるキャリアから基板を除去することなく、そのCMPプロセス工程(例えば、バルク除去工程、研磨工程など)の最後に実施される追加の洗浄またはすすぎ工程(「現場洗浄」)が含まれる。洗浄またはすすぎ工程は、典型的には、前の工程(または後続のCMP工程)と同じキャリア、プラテン、及びパッドを使用し得るが、研磨粒子を含有しない洗浄溶液を伴う。洗浄溶液は、代わりに、固体残留物粒子を溶解させるか、またはすすぎ流すため、脱イオン水のみ、または任意の有機溶媒、pH調整剤(酸または塩基)、界面活性剤、またはキレート化剤を有する脱イオン水を含有し得る。
【0010】
CMPプロセス工程中にスラリー中に存在する2つ以上の物質の組み合わせによって形成される残留物粒子の問題は、一連のより先の処理工程とより後の処理工程との間の物質の汚染によって悪化し得、特に、より先の工程及びより後の工程の両方のための同じキャリア内で保持される基板上でそれらの工程が実施される場合に悪化し得る。一連のCMP工程の間、化学物質または研磨粒子は、第1のまたはより先の工程の最後に、基板の表面または基板キャリアの表面に残存し得る。これらの物質は、基板表面またはキャリア上で後続の工程に運ばれ得る。先行する工程からの物質の1つ以上が後続の工程のスラリーの物質と適合しない(例えば、後続の工程の間に存在するまたは存在するようになる物質と組み合わさって凝固、沈殿、または凝集し得る)場合、残留物粒子は後続の工程の間に生成される。
【0011】
より先の工程の物質によってより後の工程の汚染を受けやすい複数の工程を含む例示的なCMP処理方法は、第1のバルク除去工程に続く同じ基板上での後続の研磨工程を含む、基板から金属を除去するための複数工程(例えば、2工程)プロセスを含む。バルク除去工程を実施するのに有用なスラリーの研磨粒子及び化学物質は、除去される金属物質の高い除去速度を含む、バルク除去工程の所望の結果を提供するように設計される。後続の(研磨)工程のためのスラリーの化学的性質は、高い除去速度を必要としないが、より穏やかな物質除去、及びしばしば、基板表面に更に存在する異なる種類の物質に対して基板から1種類の物質を除去する際の高い選択性を提供することが意図されている。効率性のため、これらの複数工程プロセスは好ましくは異なるプラテン及びパッドを使用して実施されるが、各工程について基板は同じキャリアを使用して保持される。キャリアは、第1の「バルク除去」スラリーを使用して、基板を第1のプラテンと係合するように基板を保持するために使用される。次いで、キャリアは、異なる研磨粒子及び化学物質を有する第2の(研磨)スラリーを使用して研磨工程を実施する第2のプラテンに基板を運ぶ。キャリア、基板、またはその両方は、第1のスラリーの化学物質、研磨粒子、または第1の工程の間に生成した化学物質を第2の工程に物理的に運び得る、すなわち、第2の工程を第1の工程の物質で汚染し得る。
【0012】
CMPプロセス中にCMP基板の表面から残留物を除去するための既存の技術、例えば、「現場洗浄」技術は、所定の基板上の所定の種類の残留物に対して有効であり得る。有効性は、残留物の種類(化学物質、微粒子、凝集体、凝固体、沈殿体など)、その化学的及び物理的性質及び構造、基板の種類及び残留物と基板表面との間の引力の程度、ならびに残留物粒子を分解もしくは溶解するのにまたは基板表面から残留物粒子を脱会合するのに洗浄溶液が有効であるかどうかに依存し得る。既存の技術は、一般にまたは完全に、全ての種類の残留物粒子、特に、組み合わさって残留物粒子構造を形成する有機物質及び無機物質の両方を含有する残留物粒子を除去するのに有効ではない。CMP基板表面からこれらの種類の残留物粒子を除去するための新規でより有効な洗浄溶液及び現場洗浄工程に対する大きな必要性が存在し続けている。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、新規で独創的なCMP組成物(例えば、CMP後洗浄溶液または化学バフ溶液)、及びシクロデキストリン化合物が化学機械処理中に残留物粒子の形成を防止するように、またはシクロデキストリン化合物が残留物、特に基板の表面由来の有機物質残留物、または有機物質を含有する残留物粒子の除去を促進するのに有効であるように、CMP組成物(例えば、CMP後洗浄溶液または化学バフ溶液)またはCMP処理工程において、シクロデキストリン化合物を薬剤として使用することを含む新規で独創的なCMP処理工程に関する。例示的なCMP後洗浄溶液は、シクロデキストリンを含有し、CMP基板を、シクロデキストリン化合物を含有する洗浄溶液と、動かしてCMPパッドと接触させながら、接触させることによってCMP基板の表面から化学的または粒子状残留物を除去するための洗浄またはすすぎ工程に有用であり得る。シクロデキストリン化合物は、スラリー中または基板の表面に存在する有機物質残留物と、任意にではあるが必須ではなく、より大きな凝集体、微粒子、または凝固体、すなわち、残留物粒子の一部である有機物質残留物と複合体を形成し得る。方法は、1つ以上の平坦化または研磨工程中、その後またはそれらの間にCMP基板の「現場」洗浄(すすぎを含む)を含み、洗浄工程は、平坦化工程、研磨工程、またはその両方で使用される同一キャリアであるキャリアでCMP基板を保持することによって実施される。
【0014】
本発明によれば、シクロデキストリン化合物は、そのような残留物粒子の形成を防止するのに、またはそのような残留物粒子を分解するのに有効であり、またはそうでなければ基板表面から有機物質残留物または粒子残留物を除去するのに有効であることが発見された。水及びシクロデキストリンを含有する洗浄溶液は、基板表面に存在する化学的残留物、残留物粒子、またはその両方を有する基板の表面上に分配され得る。理論に縛られることを望むことなく、シクロデキストリンは、残留物または残留物粒子の有機物質をその疎水性内部に引き付け、複合体を形成すると考えられる。有機物質と複合体を形成することにより、シクロデキストリンは、有機物質を効果的に除去し、隔離し、または単離し、それが基板もしくはキャリアの表面で存在することを防止し、または基板もしくはキャリアの表面で残留物粒子の一部になることもしくはそれが残存することを防止する。そのため、シクロデキストリンを含有する洗浄溶液は、洗浄工程において基板またはキャリアの表面から化学的残留物または残留物粒子を除去するのに有効である。
【0015】
好ましい実施形態では、残留物及び残留物粒子の防止または除去を更に改善するためにキレート化剤も洗浄溶液に含まれ得る。やはり理論よって縛られることを望むことなく、キレート化剤が残留物粒子の無機(例えば、金属)部分に引き付けられ得、その無機部分は残留物粒子の構造から分散することが可能となり、残留物粒子は溶解し、分解し、またはそうでなければ基板またはキャリアの表面から除去されることが可能となる。
【0016】
一態様では、本発明は、CMP基板から残留物を除去する方法に関する。その方法は、(a)キャリア内にCMP基板を提供すること、(b)パッドを含むプラテンを提供すること、(c)液体キャリア、及びシクロデキストリン化合物を含む洗浄溶液を提供すること、及び(d)基板の表面にパッド及び洗浄溶液を動かしながら接触させて表面から残留物を除去することを含む。
【0017】
別の態様では、本発明は、CMP基板を処理するための洗浄溶液に関する。その溶液は、液体キャリア、及び洗浄溶液の総質量を基準として10~50,000ppmのシクロデキストリン化合物(洗浄溶液の総質量を基準として0.0010~5質量パーセント)を含む。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
本発明は、化学機械処理中に残留物及び残留物粒子の形成を防止するか、またはCMPすすぎもしくは洗浄工程中にCMP基板の表面からの残留物粒子の分解もしくは除去を促進する薬剤としてのシクロデキストリン化合物の使用を含む、新規で独創的なCMP組成物、CMP後洗浄溶液(化学バフ溶液)、及びCMPプロセス工程に関する。記載されている組成物は、シクロデキストリン化合物、及びプロセス工程(洗浄またはすすぎ工程を含むがこれらに限定されない)中にシクロデキストリン化合物を有効にすることが可能な他の成分を含有することで、CMP基板または基板を保持するキャリアの表面からの化学的残留物(例えば、有機物質)または残留物粒子の形成を防止し、またはそれを溶解し、分解し、もしくは物理的もしくは機械的に除去する。好ましいCMP組成物は、他の固体(例えば、研磨粒子)または化学物質を、例えば、基板表面からの物質(粒子残留物以外)の化学的または機械的除去を引き起こすか促進するために使用される種類の他の物質を実質的にまたは完全に排除するまで最小限にして(例えば、全く含まずに)、液体キャリアに溶解したシクロデキストリン化合物、任意のキレート剤、任意の殺生物剤、及び任意のpH調整剤を含有し得る。
【0019】
平坦化または研磨工程などの化学機械処理工程の間に、工程中に基板表面に存在する2つの異なる物質の組み合わせから、固体残留物の粒子が基板表面上に形成し得る。問題の残留物は、スラリーがCMP処理工程に添加されるときにスラリー中に初期に見られるか、または処理工程中に存在するようになるかのいずれかである様々な固体または溶解物質から形成され得る。有機物質及び無機物質(例えば、金属物質)などの2つ以上の物質は、化学的、物理的、または静電的特性を有し得、それらは、CMPプロセス工程の同じスラリー中に存在する場合、それらの物質を組み合わせ、溶液から沈殿させることによって、凝集体または凝固体を形成することなどによって固体残留物粒子を形成させる。基板表面、スラリー物質、及びCMPパッドの間の運動によって提供される剪断力及びエネルギーは、これらの粒子が形成される可能性を上昇させ得る。所定のそのような残留物粒子は、CMP基板の表面で形成される場合に問題となり、防止または除去のいずれかがなされなければならない。これらの残留物粒子は、一旦形成され、基板表面で存在するようになると、表面に頑固に引き付けられ得、分解または除去するのが困難である。
【0020】
除去が困難な残留物粒子の例には、金属または金属含有粒子、例えば金属研磨粒子または金属酸化物研磨粒子(例えば、アルミナ研磨粒子)と有機物質との組み合わせから形成される粒子が含まれる。金属物質及び有機物質は物理的、静電的、または化学的特性を有し、それらの特性は、CMPプロセス工程中にその2つがスラリー中に存在する場合、その2つの物質を互いに引き付けて結合させ、多数の研磨粒子及び有機物質の分子の集合から構成される凝集または凝固した残留物粒子構造を形成する。同様に除去することが困難な所定の他の残留物粒子は、(例えば、スラリー中に溶解した)金属イオンと金属イオンに引き付けられる有機物質との組み合わせによって形成され得、その場合、有機物質及び金属イオンが相互作用したときに、それらが溶液から沈殿し、処理されている基板の表面に引き付けられる残留物粒子となる。任意の起源の残留物粒子が十分に強力にCMP基板表面に引き付けられ、溶解できず、分解できず、またはそうでなければ多くの水のすすぎ及び基板表面とCMPパッドとの間の(動かしながらの)接触を使用して容易に除去できない場合、残留物粒子は、基板表面上に集まり、後続の処理のための基板上に残存する。それらのより後の処理工程においてこれらの粒子が困難性を生じさせることを防止するため、及び、基板を高品質で欠陥の少ない処理されたデバイスに更に処理することを可能にするため、これらの残留物粒子は基板表面から除去されなければならない。
【0021】
記載されている残留物粒子を形成することが可能な有機物質は、CMPプロセス工程中にスラリー中に存在し、かつスラリー中にも存在する金属物質(溶解され、固体、荷電、非荷電などであり得る)と化学的、静電的、または物理的に会合し、それと組み合わされて固体残留物粒子(例えば、沈殿体、凝集体、または凝固体)を形成し得る任意の有機物質であり得る。CMP処理用のスラリー中で使用するための多くの種類の有機物質が知られている。例には、とりわけ、界面活性剤、ポリマー、有機酸化剤、抑制剤、及び安定剤、またはこれらの成分の組み合わせとしてCMP技術分野で知られており、そのように称される成分が含まれる。
【0022】
本発明によれば、残留物または残留物粒子の有機物質はまた、シクロデキストリン化合物の環状分子に引き付けられてシクロデキストリン化合物と有機物質との複合体を形成することができる種類のものである。シクロデキストリンは、疎水性である(環状構造内の)内部空間を有する環状構造を有する。理論に縛られることなく、スラリー中または粒子残留物中の所定の種類の有機物質は、シクロデキストリン化合物及び有機物質が複合体を形成し得るようにシクロデキストリン化合物の分子の疎水性内部と会合することができ、これらの種類の有機物質は特に、シクロデキストリン化合物の環状内部部分に立体的に引き付けられ、次いでそこに保持され得る疎水性基(すなわち、疎水性化学部分)を有する分子を含むと考えられる。したがって、本明細書に記載の方法が基板またはキャリアの表面から除去するのに特に有用であり得る有機物質残留物の種類には、疎水性基を含む有機物質などの、シクロデキストリン化合物の疎水性内部内に位置し、保持され得る分子構造により、シクロデキストリン化合物と複合体を形成する種類が含まれる。同様に、CMP工程中に形成することが防止され得るか、または溶解し得るか、分解し得るか、もしくはシクロデキストリン化合物を含有するCMP溶液を使用してCMP洗浄工程によって基板表面またはキャリア表面から除去され得る残留物粒子には、シクロデキストリン化合物の疎水性内部内に位置し、保持され得る分子構造を有するか含む1つ以上の有機物質、例えば疎水性基を含む有機物質から形成され得るそれらの粒子が含まれる。
【0023】
有機物質の疎水性基は、シクロデキストリン分子の開いた疎水性内部空間内にその基が位置して、シクロデキストリン分子と「複合体」を形成することを可能にする化学構造を有し得る。このタイプの複合体を形成するためには、疎水性基が、環状シクロデキストリン化合物の疎水性内部に位置することが立体的かつ熱力学的に可能であるように、疎水性基は好ましくは比較的直鎖であるか、または高度に分岐していない場合がある。疎水性基は、シクロデキストリン分子の内部空間に配置された場合、有機物質分子とシクロデキストリン化合物分子との間に共有結合またはイオン性化学結合を伴わずに疎水性内部と会合すると考えられる。例示的な疎水性には、少量の分岐、任意の不飽和、及び任意のヘテロ原子、例えば荷電窒素またはリン原子を含有し得る直鎖及び分岐アルキル基が含まれる。
【0024】
有機物質と組み合わさって残留物粒子を形成し得る例示的な金属物質には、金属または金属含有(例えば、金属酸化物)研磨粒子、例えばアルミナ研磨粒子及び平坦化工程または研磨工程などのCMPプロセス工程において有用であることが知られている他の金属、金属酸化物、または金属含有粒子が含まれる。金属含有研磨粒子には、アルミナ、ジルコニア、希土類金属酸化物(酸化イットリウムまたはイットリアなど)由来のものが含まれる。他の例には、CMPプロセス工程に導入された(例えば、分配された)ときにCMPスラリー中に初期には存在しないが、CMPプロセス工程が実施されて基板表面からある量の金属物質を除去している間に発生する金属イオンが含まれる。これらの例には、銅、タングステン、銀、ニッケル、またはコバルトなどの金属イオン(カチオンまたはアニオン)、その金属を含む基板表面から除去され、スラリー中にイオンとして溶解するイオンが含まれる。
【0025】
有機物質及び無機物質は、荷電していなくても荷電していてもよく、例えば、反対の化学電荷を示してもよい。記載されている本発明の特定のCMPプロセス工程及び関連する方法では、例示的な残留物粒子は、正または負に荷電していてよく、かつ反対の電荷のものである有機物質に引き付けられる金属含有研磨粒子(例えば、アルミナ酸化物)を含有する凝集体の形態である。多くの界面活性剤は正または負に荷電している。例示的な残留物粒子は、負電荷を有する有機物質(例えば、界面活性剤)に引き付けられて、それと凝集した、正電荷を有する金属含有研磨粒子を含み得る。別の残留物粒子は、正電荷を有する有機物質(例えば、界面活性剤)に引き付けられて、それと凝集した、負電荷を有する金属含有研磨粒子を含み得る。
【0026】
本発明によれば、シクロデキストリン化合物を使用して、記載されている残留物粒子の形成を効果的に防止し、またはこれらの粒子を分解し、または処理中にCMP基板の表面からこれらの粒子を除去することができることが発見された。あるいは、シクロデキストリン化合物は、有機物質がスラリーに溶解し、残留物粒子の形成を防止するので、有機物質と複合体を形成してもよい。したがって、例示的なCMP後洗浄溶液、または「化学バフ溶液」または「CMP溶液」または「洗浄溶液」は、液体キャリア、シクロデキストリン、及び1つ以上の任意の化学物質、例えばpH調整剤、有機溶媒、殺生物剤、及びキレート化剤を含有する液体溶液である。
【0027】
この目的のためのシクロデキストリン化合物の使用の特定の例によれば、液体キャリア(例えば、水)及びシクロデキストリン化合物を(CMP工程で有用な研磨粒子及び様々な他の種類の化学物質の実質的な非存在の非存在下で、1つ以上の他の任意の成分、例えばキレート剤、pH調整剤、または殺生物剤と共に)含有するCMP後洗浄溶液は、基板表面に存在し、任意に同様に基板のキャリアの表面に存在する残留物(例えば、有機物質)、残留物粒子、またはその両方を有する基板の表面上に分配され得る。基板表面とパッド(例えば、研磨パッドなどのCMPパッド)との間の機械的運動は、洗浄溶液の存在下で残留物または残留物粒子の除去を容易にすることができる。理論に縛られることを望むことなく、シクロデキストリン化合物は、有機物質残留物、または残留物粒子の一部である有機物質を引き付けると考えられる。有機物質は、シクロデキストリン化合物の疎水性内部に引き寄せられて複合体を形成し、それにより、基板またはキャリアの表面からの有機物質の除去;残留物粒子の構造の分裂、溶解、または分解を引き起こすための残留物粒子からの有機物質の除去;または基板もしくは基板のキャリアの表面からの有機物質残留物、残留物粒子、またはその両方の量の低下を引き起こす任意の他の手段が可能になる。
【0028】
例示的なCMP後洗浄溶液は、CMPプロセスを介して表面層を構成する、すなわち、表面層の一部である物質を実質的に除去しない、すなわち、基板の表面を構成する物質の層からの物質を研磨または化学的に除去すること(CMP研磨、バルク除去、または平坦化工程がそうであろう)を引き起こさない工程において基板表面(またはキャリア)に存在する残留物粒子または微粒子を除去するのに有用である。結果的に、記載されている洗浄溶液は、CMPプロセスによる物質除去に適合された他の種類のCMPスラリー(例えば、(表面上に存在する残留物とは対照的に)基板表面を構成する物質を機械的に(研磨によって)または化学的に物質を除去するために適合された研磨粒子及び化学物質を含有するバルク除去スラリー、研磨スラリーなどと典型的に称される種類のスラリー)において有用ないかなる実質的な量の化学物質も研磨物質も必要とせず、好ましくは排除することができ、これらの物質の例には、金属(例えば、基板表面由来の銅、コバルト、銀、タングステン、または別の金属)、または酸化ケイ素などのケイ素系物質(これらは典型的には、バルク除去、平坦化、または研磨工程中に基板表面から機械的または化学的に除去される)が含まれる。
【0029】
具体的には、記載されている洗浄溶液は、研磨粒子、例えばシリカ粒子、セリア粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、ならびにスラリー中に固体(非溶解)形態で存在し、それにより平坦化または研磨工程などのCMPプロセス工程中に基板の表面を機械的に研磨し、その表面から物質を除去する機能をする任意の他の金属及び金属酸化物研磨粒子を排除し得る。本明細書の好ましい洗浄溶液、例えば、CMP後洗浄溶液は、洗浄溶液の総質量を基準として0.1、0.01、または0.001質量パーセント以下の固体研磨粒子を含有する。本発明のCMP組成物、例えば、洗浄溶液のための研磨粒子のこれらの量は、使用時の組成物及びCMP処理で使用するために希釈される濃縮形態で販売されているCMP濃縮組成物を典型とするものである。
【0030】
同様に、記載されている好ましい洗浄溶液は、CMP基板の表面層を構成する物質との、またはスラリーの別の物質との化学的相互作用によって機能する化学物質を必要とせず、任意に排除することができることで、基板表面からの表面層物質の効果的な除去(例えば、基板表面を構成する別の物質に対して基板表面を構成する1つの物質の除去速度を増加させるか、またはその選択性を改善することによる)を促進する。そのような化学物質の例には、とりわけ、界面活性剤(除去速度抑制剤として機能することを含む)、触媒(触媒安定剤を含む)、酸化剤が含まれる。例示的な洗浄溶液は、CMP溶液の総質量を基準として、1、0.1、0.01、または0.001質量パーセント以下の界面活性剤、抑制剤、触媒、または酸化剤のいずれか1つまたは組み合わせを含有し得る。これらの濃度は使用時点のものを意味し、高濃度の研磨粒子は濃縮組成物中に存在し、それは使用前に希釈される。
【0031】
記載したようにCMP後洗浄溶液から成分として金属イオン促進剤、酸化剤、及び界面活性剤を排除する目的のため、これらの用語は、CMP技術分野におけるそれらの意味と一致するように、かつ以下のように使用される。「界面活性剤」は、2つの液体間または液体と固体との間の表面張力(または界面張力)を低下させる有機化合物、典型的には疎水性基(例えば、炭化水素(例えば、アルキル)「尾部」)及び親水性基を含有する有機両親媒性化合物である。界面活性剤は、任意のHLB(親水性-親油性バランス)値のものであり得、荷電、非荷電などであり得、界面活性剤の多くの種類の例は化学及びCMP技術分野においてよく知られている。
【0032】
例示的な酸化剤(別名、酸化薬剤)には、無機及び有機過化合物が含まれる。Hawley’s Condensed Chemical Dictionaryによって定義されるペル化合物は、少なくとも1つのペルオキシ基(-O--O-)を含有する化合物または元素をその最も高い酸化状態で含有する化合物である。少なくとも1つのペルオキシ基を含有する化合物の例には、過酸化水素及びその付加物、例えば過酸化水素尿素及び過炭酸塩、有機過酸化物、例えば過酸化ベンゾイル、過酢酸、及び過酸化ジ-t-ブチル、一過硫酸塩(SO )、二過硫酸塩(S )、及び過酸化ナトリウムが含まれる。元素をその最も高い酸化状態で含有する化合物の例には、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、過臭素酸、過臭素酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩、過ホウ酸、及び過ホウ酸塩ならびに過マンガン酸塩が含まれる。CMPスラリー用にしばしば好ましい酸化剤は過酸化水素である。
【0033】
いくつかの例示的なCMP後洗浄溶液は、ごくわずかな量以下の任意の他の物質と共に、液体キャリア及びシクロデキストリン化合物を含有し得る。そのような組成物は、水(好ましくは脱イオン水)及びシクロデキストリン化合物からなり得るか、または本質的にそれらからなり得る。本質的に水(好ましくは脱イオン水)及びシクロデキストリン化合物からなる組成物は、水、シクロデキストリン化合物、及びCMP組成物の総質量を基準として0.5、0.1、0.01、または0.001質量パーセント以下の任意の他の物質を含有するものである。
【0034】
任意に、記載されているこれらの及び他の例示的なCMP後洗浄溶液は、ごくわずかな量以下の他の物質と共に、水、シクロデキストリン化合物、ならびにキレート剤、pH調整剤、及び殺生物剤のうちの1つ以上を含有し得、これは、洗浄溶液が水(好ましくは脱イオン水)、シクロデキストリン化合物、ならびにキレート剤、pH調整剤、及び殺生物剤のうちの1つ以上からなるかまたは本質的にそれらからなることを意味する。本質的に水(好ましくは脱イオン水)、シクロデキストリン、ならびにキレート剤、pH調整剤、及び殺生物剤のうちの1つ以上からなる組成物は、CMP組成物の総質量を基準として0.05、0.1、0.01、または0.001質量パーセント以下の任意の他の物質と共に、水、シクロデキストリン化合物、ならびに1つ以上のキレート剤、pH調整剤、及び殺生物剤を含有するものである。
【0035】
CMP後洗浄溶液はシクロデキストリン化合物を含み、シクロデキストリン化合物には誘導体化されていないシクロデキストリン化合物及び誘導体化されている化合物が含まれる。シクロデキストリン化合物は、複数の糖分子から作製され、かつ三次元の管状または環状の環構造に形成されたよく知られている化合物のファミリーであり、時に環状オリゴ糖と称される。シクロデキストリンは、単位間で1-4結合(下記の構造を参照されたい)によって連結されたα-D-グルコピラノシド分子単位から構成される。記載されているCMP組成物に有用なシクロデキストリンの形態には、6員環であるアルファシクロデキストリン、7員環であるβ(ベータ)-シクロデキストリン、及び8員環であるγ(ガンマ)-シクロデキストリンが含まれる:
【化1】
【0036】
本発明によれば、CMP後洗浄溶液中に存在するシクロデキストリンは、基板(または基板キャリア)から有機残留物を除去するため、基板表面での残留物粒子の形成を防止するため、またはCMP基板もしくは基板キャリアの表面に存在する残留物粒子を分解もしくは溶解するために有効であり得ることが見出された。理論に縛られることなく、シクロデキストリン化合物は、その環状内部空間に有機物質、特に環状シクロデキストリン化合物分子の内部空間に含まれることが可能な構造を有する疎水性部分を含む有機物質を引き付けて含有すると考えられる。シクロデキストリン化合物は、有機物質と複合体を形成することができるので、シクロデキストリン化合物は、有機物質を効果的に隔離し、有機物質が残留物として基板または基板キャリアの表面に配置されることを防止し、または有機物質が基板またはキャリアの表面で残留物粒子の一部になることまたは一部として残存することを防止する。シクロデキストリン化合物が洗浄溶液中に存在する場合、表面に残留物を含有する基板表面を洗浄する工程では、シクロデキストリン化合物は、表面から有機物質を除去するのに、または残留物粒子の有機物質と相互作用して残留物粒子を溶解させるか、そうでなければ分解するのに有効である。
【0037】
記載されているCMP後洗浄溶液中のシクロデキストリン化合物の量は、液体キャリア中のシクロデキストリンの溶解度に大きく依存し得、これは、より高い濃度が一般に望ましいが、濃度レベルは典型的には液体キャリア中のシクロデキストリン化合物の溶解限度によって制限されることを意味する。シクロデキストリン化合物の所定の誘導体化類型は、誘導体化されていないシクロデキストリンと比較して液体キャリア中でより高い溶解度を示し得、そのため、上昇したレベルの溶解度を示す誘導体化されたシクロデキストリン化合物が洗浄溶液において好ましい場合がある。一般に、シクロデキストリン化合物は、基板または基板キャリアの表面から有機物質残留物を除去するため;CMPプロセス工程中でスラリー中の残留物粒子の形成を防止するかまたはその減少を引き起こすため;または形成し、CMP基板(及びキャリア)の表面に引き付けられる残留物粒子を除去するため、洗浄工程で使用されるときに有効である量で洗浄溶液中に存在し得る。所定の有用な実施形態では、シクロデキストリンは、洗浄溶液の総質量を基準として、約10~約50,000ppmの範囲のシクロデキストリン、例えば、約0.01~約5質量パーセント、約0.02~約1.5質量パーセントの量でスラリー中に存在し得る。これらの量は使用時点のものであり、濃縮組成物の場合はより高い。
【0038】
濃度は百万分の一(ppm)に基づいて記述される場合があり、ppmは質量基準比であることが意図されていることが留意される。例えば、0.01質量パーセントは100ppmと同等である。例示的な洗浄溶液の成分の濃度は、質量パーセントまたはppmとして記述され得る。
【0039】
記載されている洗浄溶液は、スラリーまたは残留物粒子の無機物質、例えば、金属物質と(例えば、イオン的に)会合するために機能し得るキレート剤(キレート化剤)を任意にかつ好ましく含有し得る。キレート剤は、金属物質と会合して、例えば、金属物質を隔離し得るか、またはそうでなければCMPプロセスの間にスラリー中にまたはCMP基板の表面に金属物質が残留物粒子を形成するのを防止し得る。あるいは、または更に、キレート剤は、残留物粒子の金属物質と相互作用し、金属物質と残留物粒子の有機物質との相互作用を妨害することによって残留物粒子の分解または除去を促進し得る。
【0040】
特定の基板を洗浄するための、特定の洗浄溶液中で有用となるキレート剤の化学構造及び性質(電荷を含む)は、様々な要因、特に洗浄工程中に存在する無機物質の種類に依存し得る。これらの無機物質の種類は、基板表面から除去された無機物質の種類、及び無機物質を除去するために使用されたそれらの無機物質、例えば研磨粒子の種類を含む、基板を処理する先行の工程の性質に依存する。好ましいキレート剤は、研磨粒子、例えば、アルミナ粒子の表面と静電的に会合して、粒子を残留物粒子の有機物質から解凝集させるか、またはそれを引き起こすことが可能であり得る。キレート剤は、研磨粒子と会合することによって、溶液中で研磨粒子を安定なものとし、凝集した残留物粒子から分離させ、そのため、キレート剤と接触したときに残留物粒子から分離させることができる。記載されている例示的な洗浄溶液では、キレート剤は、有機物質によって一緒に保持される研磨粒子を含有する残留物粒子を有する基板に適用された場合、残留物粒子を構成する研磨粒子の表面に静電的に引き付けられ得る。この引力に基づいて、キレート剤は、残留物粒子の一部である研磨粒子の表面と会合し、結果として、残留物粒子を分解するか、またはそうでなければ粒子が存在するCMP基板またはキャリアの表面から研磨粒子を除去することができる。
【0041】
キレート剤は、記載されているようにキレート剤として機能することが可能な任意の化学化合物であり得る。キレート剤は、単座、多座、及び任意の化学構造のものであり得る。既知のキレート剤の所定の例には、酸含有有機分子、特にカルボン酸含有有機分子、例えば、フタル酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、アスパラギン酸、またはそれらの組み合わせを含む線状または分岐状C1~C6カルボン酸化合物、ならびにグリシン、アミノ酸などが含まれる。
【0042】
他の例には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、コハク酸、アスパラギン酸、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、アクリルアミド、ホスホネートメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルハライド、またはそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含み得るモノマーから誘導されるカルボン酸基含有ポリマーが含まれる。ポリマーは、任意の有用な分子量、例えば、120~10,000ダルトンのものであり得る。
【0043】
記載されているCMP溶液中のキレート剤の量は、キレート剤の化学的性質、ならびにスラリー中または処理されている基板(またはそのキャリア)の表面の残留物(例えば、残留物粒子)の種類及び量、または、より一般的には、キレート剤と会合することになる物質の種類及び量を含む、スラリー中の他の物質の種類及び量などの要因に依存し得る。一般に、キレート剤は、例えば、洗浄工程において基板表面を洗浄するためのCMP組成物の使用時にCMP基板(またはキャリア)の表面に存在する残留物粒子の除去を促進するために、洗浄工程中に基板(またはキャリア)の表面に存在する粒子残留物の減少を引き起こすのに有効な量でCMP組成物中に存在し得る。所定の有用な実施形態では、キレート剤は、組成物の総質量を基準として約0.01~約5質量パーセントのキレート剤の範囲、例えば、約0.02~約1.5質量パーセントの量でスラリー中に存在し得る。これらの量はCMP組成物の使用時点のものであり、CMP濃縮組成物の場合はより高い。
【0044】
殺生物剤もまた、組成物の貯蔵寿命を延ばすために本明細書に記載されているCMP組成物、例えば、CMP濃縮物溶液に含まれ得る。有用な殺生物剤の例は、とりわけ、過酸化水素、イソチアゾロン、グルタルアルデヒドを含むよく知られているものであり、記載されているCMP溶液中に、例えば、濃縮溶液中に、任意の有効量で、例えばCMP溶液の質量を基準として10~1000ppmの範囲で含まれ得る。
【0045】
CMP組成物は、濃縮形態で、またはCMPプロセス工程での使用中に、任意のpH、例えば、酸性、中性、または塩基性を有し得る。組成物は、実質的に任意の好適なpH調整剤または緩衝系を含み得る。例えば、好適なpH調整剤には、とりわけ、硝酸、硫酸、リン酸、フタル酸、クエン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸などのpHを低下させるのに有効な有機酸及び無機酸が含まれる。あるいは、pHを上昇させるために、塩基、例えば、KOH、NaOH、NHOH、水酸化テトラメチルアンモニウム、または有機塩基、例えばエタノールアミン及びジエタノールアミンなどが含まれ得る。
【0046】
酸化剤は本発明が機能するために必須ではないが、洗浄溶液は、質量基準で100~50,000ppmの過酸化水素などの酸化性化学物質を含有し得る。
【0047】
また、所定の例示的な洗浄溶液は、金属含有触媒を必要とせず、実質的に含有しなくてもよく、これは例えば、洗浄溶液が、洗浄溶液の総質量を基準として0.01質量パーセント未満の金属含有触媒、例えば、0.005質量パーセント未満の金属イオン促進剤を含有することを意味する。
【0048】
また、所定の例示的な洗浄溶液は、界面活性剤を必要とせず、実質的に含有しなくてもよく、これは例えば、洗浄溶液が、洗浄溶液の総質量を基準として1、0.5、または0.01質量パーセント未満の界面活性剤を含有することを意味する。
【0049】
シクロデキストリン化合物を含有する、記載されているCMP溶液を使用するための方法の様々な例によれば、そのようなCMP溶液は、洗浄工程の間にCMP基板表面から(及び任意にそのキャリアから)残留物、例えば、有機物質残留物、残留物粒子、またはその両方を除去するためにCMP洗浄工程において有用であり得る。
【0050】
CMP基板は、マイクロ電子デバイス基板、概して、基材と、選択的に堆積され、かつ表面層を含むマイクロ電子的特徴の層を生成するために基板から選択的に除去された多数の物質層とを含む平らなウエハであり得る。表面層は、1つ以上の金属(例えば、銅、タングステン、銀、コバルト、ニッケルなど)、絶縁物質、及び半導体物質を含むそのような堆積物質から作製され得る。表面では、基板の表面層を構成する堆積物質の一部ではないが、有機物質残留物、残留物粒子、またはその両方を含む、記載されている残留物が存在し得る。
【0051】
洗浄工程によれば、表面に残留物を有するCMP基板をCMP研磨パッドなどのパッドと接触させ、CMP洗浄溶液を研磨パッド、基板表面、またはその両方の上に分配する。所望の量の圧力で、パッドと基板表面との間の相対運動が提供される。洗浄工程中に研磨粒子は、洗浄溶液の一部としても、任意の他の供給源によっても表面上に分配されず、パッドまたは基板表面に分配されるのに必要とされるCMP溶液のみがCMP洗浄溶液である。シクロデキストリン化合物及び任意のキレート剤などを含有するCMP溶液を使用する洗浄工程は、基板表面、及び更に、任意にかつ好ましくは、洗浄工程の間に基板を保持し、かつ1つ以上の先行するCMPプロセス工程の間に基板を保持するために使用された可能性があるキャリアの表面に存在する残留物(有機物質残留物、残留物粒子、またはその両方)の量を減少させるのに有効である。すなわち、洗浄工程の結果、基板表面での残留物の量、例えば、残留物粒子の数は、洗浄工程の前に表面に存在する量と比較して減少する。
【0052】
有用な方法の様々な例によって、CMP基板は、少なくとも2つの工程、任意に2つを超える工程を含む複数の工程のCMP処理方法によって処理されている基板であり得、それらの工程は、第1の(先行のまたはより先の)工程及び第2の(後続のまたはより後の)工程と称されるものを含む。有用な方法の所定の具体的な例によれば、CMP基板は、少なくとも2つの工程、任意に2つを超える工程を含む複数の工程のCMP処理方法によって処理されている基板であり得、それらの工程は、キャリアによって保持されている基板を有する第1のプラテンで実施される第1の(先行のまたはより先の)工程、及び同じキャリアによって依然として保持されている基板を用いて異なる(すなわち、第2の)プラテンで実施される第2の(後続のまたはより後の)工程と称されるものを含む。基板が同じキャリアによって保持されたまま基板を第1の(より先の)プラテンから第2の(後続の)プラテンに移動させることは、より先の工程の物質によって後の工程の汚染の可能性を導くが、その理由は、キャリア及び基板が異なる(後続の、例えば、第2の)プラテンに一緒に移動するときに、CMP基板の表面上またはキャリアの表面に第1の工程の物質が残存するからである。より先のCMPプロセス工程から運ばれた物質が、後続のCMPプロセス工程で存在する1つ以上の物質と適合しない場合、すなわち、より先のCMPプロセス工程から運ばれた物質が、残留物粒子を形成するように後続のCMPプロセス工程で存在する物質と組み合わさることができる場合、そのときは、より先の工程からの物質での後続の工程の汚染が、後続の工程の間にCMP基板の表面においてそのような残留物粒子の形成を可能とする。
【0053】
そのような複数工程のプロセスのより先の工程の例は、比較的高い除去速度でのCMP基板の表面層から金属を除去するためのバルク除去(または「平坦化」)工程である。バルク除去工程用のスラリーは、表面層からの金属の比較的高い除去速度を生じさせるように設計された研磨粒子及び化学物質を含み得る。例示的なバルクスラリーは、触媒、酸化剤、及び他の任意の化学物質と共に、アルミナ粒子及び界面活性剤(疎水性部分を含む)を含有し得る。バルク除去工程の後の後続工程の例は、異なる組成を有するスラリー(すなわち、「研磨スラリー」)を必要とする研磨工程である。研磨スラリーは、低レベルの欠陥で、表面層からの金属の高い除去速度を必要とせずに、所望のトポグラフィを有するように基板表面を研磨するために、基板の表面に対してより穏やかな効果を及ぼすように設計された研磨粒子及び化学物質を含み得る。バルク除去工程で使用される比較的硬質のアルミナ粒子とは対照的に、研磨スラリーは好ましくは、もしあれば、より軟質の研磨粒子を含有し得る。研磨スラリーは、例えば、アルミナ粒子の実質的な非存在下でシリカ粒子を含有し得る。
【0054】
記載されているすすぎ工程を含む一連の工程の特定の実施形態は、少なくとも2つのプラテン、例えば、3つのプラテン(P1、P2、及びP3)を含み得、それにCMP後洗浄工程が続き;単一のキャリアが、処理中にプラテンで、次いで第2のプラテンで、次いで任意の第3のプラテンで基板を保持する。第1の工程の間、第1のプラテンでは、CMP基板はキャリアによって保持され、第1のプラテンに関連するCMPパッドと接触する。パッドと基板表面との間に運動及び圧力を適用して、基板表面から物質を除去する、例えば、基板の表面層から金属(例えば、連続タングステン層)物質を除去する。第1の工程は、「バルク除去工程」と称されるものであり得、これは、基板表面(またはCMPパッド)上に第1のスラリー(例えば、金属物質の除去のためのバルク除去スラリー)を分配して、表面層から金属物質の除去を促進することを含む。例示的なバルク除去スラリーは、アルミナ粒子などの研磨粒子、界面活性剤(疎水性基を含む)、酸化剤(例えば、有機酸化剤または過酸化水素)、金属含有触媒(例えば、任意の有機安定剤を有する鉄含有触媒)、またはバルク除去工程で典型的に使用される他の化学的もしくは研磨物質のうちの1つ以上を含有し得る。例示的なバルク除去工程は、タングステン、コバルト、ニッケル、または基板上に予め堆積した別の金属の表面層の一部を除去するために基板上で実施され得る。
【0055】
第2のプラテンで実施される第2の工程は、第1の工程に対して異なる(例えば、第2の)CMPパッド及び異なるスラリーを含み得る。第1のスラリーの物質(第2のプラテンに運ばれる場合)と第2のスラリーの物質との間の非適合性は、第2の(または後続の)工程の間に残留物粒子を形成させ得る。典型的には、第2の工程は、基板の表面層から除去される物質の量に関してそれほど積極的ではないように設計され得る。第2の工程は、研磨粒子を含有するスラリーを含み得るが、研磨粒子の一部または全ては、第1の工程で使用された研磨粒子とは異なり得る(例えば、より軟質であるかまたは異なる平均粒子サイズのものであり得る)。タングステン含有表面を処理するための一連の工程では、バルク除去工程は、例えば、アルミナ粒子を含有するスラリーを含み得、第2の(例えば、研磨)工程は、減少した量のアルミナ粒子と共にまたはアルミナ粒子を伴わずにシリカ粒子を含有するスラリーを使用し得る。第2の工程のスラリーは、例えば、第2のスラリー中の研磨粒子の総質量を基準として1、0.5、0.1、0.05または0.001質量パーセント未満のアルミナ粒子を含有し得る。第2の工程は、キャリアにおけるプラテンまたは基板の回転速度、キャリアとパッドとの間の圧力、工程を実施するための時間、すなわち、基板が運動及び圧力を伴ってパッドと接触している間の時間を含む、第1の工程と比較して同じまたは異なる処理パラメータを使用して実施され得る。あるいは、所定の種類の金属含有基板(例えば、タングステン含有基板表面)を処理するために典型的であり得るように、第2の工程は、プラテンまたは基板のより遅い回転速度、基板とパッドとの間の減少した量の圧力、パッドと基板との間の減少した量の接触時間のうちの1つ以上を使用して実施され得る。
【0056】
本発明の洗浄工程の一実施形態では、第2のプラテンでの研磨工程などのCMP処理工程の後、基板表面をすすぎ、残留物を除去するためにすすぎ工程が実施され得る。有機物質残留物、残留物粒子、またはその両方などの残留物が研磨工程後に存在する場合、すすぎ工程は、基板表面からその残留物を除去するのに有用であり得る。すすぎ工程は、第2のプラテンで研磨工程を実施するために使用されたものと同じキャリアに基板を保持して、第2のプラテンで実施され得る。
【0057】
具体的には、第2の(研磨)工程は、研磨スラリーをパッドまたは基板表面に分配することによって第2のプラテンで実施され得、基板表面は、基板とパッドとの間の運動及び圧力で研磨される。研磨工程の終点で、研磨粒子を有するスラリーの分配が終了した。次いで、CMP後洗浄溶液を使用する洗浄工程が、同じプラテンで、同じパッドを使用して、キャリアから基板を除去することなく実施され得る。この洗浄工程のために、シクロデキストリン化合物を含有し、そうでなければ本明細書に記載されているCMP後洗浄溶液は、パッドまたは基板表面に分配される。対向するパッドと基板表面との間の圧力及び運動を伴って、かつパッド及び基板表面に存在するCMP洗浄溶液を用いて、基板をパッドと接触させる。運動、圧力、及びCMP洗浄溶液により、基板表面の残留物が除去され得る。有機物質残留物はシクロデキストリン化合物と複合体を形成し、除去され得る。追加的にまたは代替的に、シクロデキストリン及び任意のキレート剤の作用によって、本明細書に記載されているように基板表面の残留物粒子が溶解され、分解され、または基板表面から除去され得る。
【0058】
任意に、第3のCMPプロセス工程が、第2の工程後に第3のプラテンで実施され得る。第3の工程は、第2の工程と同様または同一であり得、第2の工程のものと同様または同一のスラリー、パッド及びプロセスパラメータを含み得る。他の実施形態では、第3の工程のスラリーは、第1または第2のスラリーの1つ以上の物質と非適合性である1つ以上の物質を含み得、これは第3の工程の間に残留物粒子の形成をもたらす可能性がある。第2の工程の後、例えば、第2のプラテンで実施される洗浄工程は、第2の工程の最後にキャリアまたは基板表面に存在する金属物質または有機物質の形態の残留物を除去するのに有効であり得る。金属物質または有機物質が除去されず、第3の工程のスラリーの物質と非適合性である場合、残留物粒子が第3の工程中に潜在的に形成するであろう。第2の工程後に実施される洗浄工程は、キャリアまたは基板表面から非適合性物質(複数可)を除去し、第3の工程の間に残留物粒子の形成を防止する。
【0059】
一連のCMPプロセス工程の後、例えば、プラテン1、2、及び3での一連の工程、または別の一連の工程の後、基板は所望の通りに処理され得る。多くの処理方法によって、研磨工程またはすすぎ工程の後の即座の次の工程は、CMP後洗浄工程における洗浄であり得る。そのような工程は、CMP処理技術分野において知られており、CMP処理工程中に基板を保持するために使用されたキャリアから基板を除去すること、及び保持機またはキャリアの別の種類を任意に使用すること、CMP後洗浄装置に基板を配置することを含む。CMP後洗浄装置の多くの種類、モデル、及び入手先がよく知られており、市販されている。これらの装置は、時に超音波処理の助けを借りて、液体、ブラシ、高温、またはこれらの組み合わせを使用して基板表面から残留物を除去する。しばしば、液体は、酸(HF)、塩基(NH OH )、界面活性剤、酸化剤、または他の化学試薬を含み得る水溶液である。追加的にまたは代替的に、方法はまた、CMP後洗浄工程で基板を洗浄するために、CMP後洗浄装置を用いて、シクロデキストリン化合物を含む本明細書に記載されているCMP洗浄溶液を使用することを含み得る。
本発明は、以下の態様を含んでいる。
(1)CMP基板から残留物を除去する方法であって、前記方法が、
(a)CMP基板を提供すること、
(b)パッドを含むプラテンを提供すること、
(c)液体キャリア、及び
シクロデキストリン化合物、
を含む洗浄溶液を提供すること、ならびに
(d)前記基板の表面に前記パッド及び前記洗浄溶液を動かしながら接触させて前記表面から前記残留物を除去すること、
を含む、前記方法。
(2)前記洗浄溶液が、洗浄溶液の総重量を基準として10~50,000ppmのシクロデキストリン化合物を含む、(1)に記載の方法。
(3)前記洗浄溶液が、本質的に水及びシクロデキストリン化合物からなる、(1)に記載の方法。
(4)前記洗浄溶液が、本質的に水、シクロデキストリン化合物、及び1つ以上のキレート剤、pH調整剤、及び殺生物剤からなる、(1)に記載の方法。
(5)前記洗浄溶液が、実質的に研磨粒子を含有しない、(1)に記載の方法。
(6)前記洗浄溶液が、キレート剤を更に含有する、(1)に記載の方法。
(7)前記表面が、有機物質、ならびに有機物質及び無機物質の沈殿、凝集、または凝固した組み合わせを含む残留物粒子から選択される残留物を含む、(1)に記載の方法。
(8)前記残留物が、有機物質及び金属含有研磨粒子を含む残留物粒子を含む、(1)に記載の方法。
(9)前記研磨粒子が、アルミナ粒子である、(8)に記載の方法。
(10)前記基板が、タングステン、銅、またはコバルトを含む表面層を含む、(1)に記載の方法。
(11)CMP後の基板を処理するための洗浄溶液であって、前記溶液が、
液体キャリア、及び
洗浄溶液の総重量を基準として10~50,000ppmのシクロデキストリン化合物、
を含む、前記洗浄溶液。
(12)本質的に水及びシクロデキストリン化合物からなる、(11)に記載の洗浄溶液。
(13)キレート剤を更に含む、(11)に記載の洗浄溶液。
(14)前記洗浄溶液が、実質的に研磨粒子を含有しない、(11)に記載の洗浄溶液。
(15)前記キレート剤が、カルボン酸基含有キレート剤である、(13)に記載の洗浄溶液。
(16)前記キレート剤が、マロン酸、マレイン酸、線状もしくは分岐状C1~C6カルボン酸化合物、フタル酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、またはそれらの組み合わせから選択される化合物である、(13)に記載の洗浄溶液。
(17)前記キレート剤が、カルボン酸基含有ポリマーである、(13)に記載の洗浄溶液。
(18)前記溶液が、実質的に界面活性剤を含有しない、(11)に記載の洗浄溶液。