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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-13
(45)【発行日】2023-01-23
(54)【発明の名称】薄膜製造装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/32 20060101AFI20230116BHJP
   C23C 14/24 20060101ALI20230116BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20230116BHJP
   H01M 10/058 20100101ALN20230116BHJP
   H01M 4/1391 20100101ALN20230116BHJP
【FI】
C23C14/32 D
C23C14/24 G
H05H1/24
H01M10/058
H01M4/1391
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021527109
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2020047911
(87)【国際公開番号】W WO2021132230
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2019236186
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】宜保 学
(72)【発明者】
【氏名】倉内 利春
(72)【発明者】
【氏名】江平 大
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-115383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/32
C23C 14/24
H05H 1/24
H01M 10/058
H01M 4/1391
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉可能なチャンバ内を移動する基板の一面に成膜粒子を付着させて薄膜を成膜する装置であって、
前記チャンバ内にプラズマを発生するプラズマ発生部と、
前記チャンバ内で前記基板を移動させる基板移動部と、
前記基板の一面に向けて成膜粒子を供給する成膜源供給部と、
前記成膜源供給部から前記基板の一面への前記成膜粒子による成膜領域を制限する成膜領域規定部と、
を有し、
前記プラズマ発生部が、前記基板の他面側に位置するマグネットと、
前記基板の一面近傍に成膜ガスを供給するガス供給部と、を有し、
前記成膜領域規定部が、前記基板の一面近傍に位置して開口を有する遮蔽部を有し、
前記成膜領域規定部が接地電位に設定され、
前記開口の径寸法が、前記マグネットの外径に0mm~20mmの長さ範囲を加算して得られた長さに設定され、
前記ガス供給部によって供給される成膜ガスが窒素を含み、
前記成膜源供給部によって供給される成膜源がリチウムを含む、
薄膜製造装置。
【請求項2】
密閉可能なチャンバ内を移動する基板の一面に成膜粒子を付着させて薄膜を成膜する装置であって、
前記チャンバ内にプラズマを発生するプラズマ発生部と、
前記チャンバ内で前記基板を移動させる基板移動部と、
前記基板の一面に向けて成膜粒子を供給する成膜源供給部と、
前記成膜源供給部から前記基板の一面への前記成膜粒子による成膜領域を制限する成膜領域規定部と、
を有し、
前記プラズマ発生部が、前記基板の他面側に位置するマグネットと、
前記基板の一面近傍に成膜ガスを供給するガス供給部と、を有し、
前記成膜領域規定部が、前記基板の一面近傍に位置して開口を有する遮蔽部を有し、
前記成膜領域規定部が浮遊電位に設定され、
前記開口の径寸法が、前記マグネットの外径に-20mm~+20mmの長さ範囲を加算して得られた長さに設定され、
前記ガス供給部によって供給される成膜ガスが窒素を含み、
前記成膜源供給部によって供給される成膜源がリチウムを含む、
薄膜製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄膜製造装置に関し、特にプラズマを用いて成膜する際に好適な技術に関する。
本願は、2019年12月26日に日本に出願された特願2019-236186号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の研究がおこなわれている。なかでも、負極、電解質、正極すべてが固体からなる全固体電池は、安全性と高エネルギー密度、長寿命を兼ね備えた電池としてその開発が期待されている。
【0003】
全固体電池の電解質膜の製造方法として、リチウムを含む成膜が必要であり、特許文献1,2に記載されるように、プラズマ蒸着によって成膜がおこなわれている。
このような電解質膜の成膜工程においては、例えば、リチウムとリンとを含む蒸着源を用いて、窒素を含むプラズマによって成膜して、窒素を含有した膜を成膜することが知られている。
【0004】
また、リチウムイオン電池の性能向上のために、膜質改善、特に、電解質膜におけるイオン伝導度の改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開2005-068554号公報
【文献】日本国特開2007-005149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1,2に記載された技術では、所望の膜質特性が得られていなかった。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成しようとするものである。
1.膜特性を向上した電解質膜を成膜可能とすること。
2.成膜された電解質膜における特性を均質化すること。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の薄膜製造装置は、密閉可能なチャンバ内を移動する基板の一面に成膜粒子を付着させて薄膜を成膜する装置であって、前記チャンバ内にプラズマを発生するプラズマ発生部と、前記チャンバ内で前記基板を移動させる基板移動部と、前記基板の一面に向けて成膜粒子を供給する成膜源供給部と、前記成膜源供給部から前記基板の一面への前記成膜粒子による成膜領域を制限する成膜領域規定部と、を有し、前記プラズマ発生部が、前記基板の他面側に位置するマグネットと、前記基板の一面近傍に成膜ガスを供給するガス供給部と、を有し、前記成膜領域規定部が、前記基板の一面近傍に位置して開口を有する遮蔽部を有し、前記成膜領域規定部が接地電位に設定され、前記開口の径寸法が、前記マグネットの外径に0mm~20mmの長さ範囲を加算して得られた長さに設定され、前記ガス供給部によって供給される成膜ガスが窒素を含み、前記成膜源供給部によって供給される成膜源がリチウムを含むことにより、上記課題を解決した。
本発明の薄膜製造装置は、密閉可能なチャンバ内を移動する基板の一面に成膜粒子を付着させて薄膜を成膜する装置であって、前記チャンバ内にプラズマを発生するプラズマ発生部と、前記チャンバ内で前記基板を移動させる基板移動部と、前記基板の一面に向けて成膜粒子を供給する成膜源供給部と、前記成膜源供給部から前記基板の一面への前記成膜粒子による成膜領域を制限する成膜領域規定部と、を有し、前記プラズマ発生部が、前記基板の他面側に位置するマグネットと、前記基板の一面近傍に成膜ガスを供給するガス供給部と、を有し、前記成膜領域規定部が、前記基板の一面近傍に位置して開口を有する遮蔽部を有し、前記成膜領域規定部が浮遊電位に設定され、前記開口の径寸法が、前記マグネットの外径に-20mm~+20mmの長さ範囲を加算して得られた長さに設定され、前記ガス供給部によって供給される成膜ガスが窒素を含み、前記成膜源供給部によって供給される成膜源がリチウムを含むことにより、上記課題を解決した。
【0009】
本発明の薄膜製造装置は、密閉可能なチャンバ内を移動する基板の一面に成膜粒子を付着させて薄膜を成膜する装置であって、前記チャンバ内にプラズマを発生するプラズマ発生部と、前記チャンバ内で前記基板を移動させる基板移動部と、前記基板の一面に向けて成膜粒子を供給する成膜源供給部と、前記成膜源供給部から前記基板の一面への前記成膜粒子による成膜領域を制限する成膜領域規定部と、を有し、前記プラズマ発生部が、前記基板の他面側に位置するマグネットと、前記プラズマ発生部が、前記基板の一面近傍に成膜ガスを供給するガス供給部と、を有し、前記成膜領域規定部が、前記基板の一面近傍に位置して開口を有する遮蔽部を有し、前記遮蔽部が、前記プラズマ発生部で発生させるプラズマの前記基板の一面に沿った方向における径寸法に対する、前記開口の径寸法の比が、110/100以下の範囲に設定される。
本発明によれば、開口の径寸法をプラズマの径寸法に対して、上記の範囲となるように設定したことにより、プラズマの周縁部で発生する活性度合いの低いプラズマによって成膜される成膜粒子が基板に付着しないように遮蔽部によって遮蔽することができる。これにより、成膜する薄膜の膜特性が劣化せず、好適な膜特性を有する薄膜を成膜することが可能となる。
【0010】
本発明の薄膜製造装置は、前記遮蔽部が、前記マグネットの前記基板の一面に沿った方向における径寸法に対する、前記開口の径寸法の比が、110/90以下の範囲に設定される。
これにより、開口の径寸法をマグネットの径寸法に対して、上記の範囲となるように設定したことにより、プラズマの周縁部で発生する活性度合いの低いプラズマによって成膜される成膜粒子が基板に付着しないように遮蔽部によって遮蔽する。これにより、成膜する薄膜の膜特性が劣化せず、好適な膜特性を有する薄膜を成膜することが可能となる。
【0011】
本発明の薄膜製造装置は、密閉可能なチャンバ内を移動する基板の一面に成膜粒子を付着させて薄膜を成膜する装置であって、前記チャンバ内にプラズマを発生するプラズマ発生部と、前記チャンバ内で前記基板を移動させる基板移動部と、前記基板の一面に向けて成膜粒子を供給する成膜源供給部と、前記成膜源供給部から前記基板の一面への前記成膜粒子による成膜領域を制限する成膜領域規定部と、を有し、前記プラズマ発生部が、前記基板の他面側に位置する(前記基板の前記一面とは反対側に位置する)マグネットと、前記基板の一面近傍に成膜ガスを供給するガス供給部と、を有し、前記成膜領域規定部が、前記基板の一面近傍に位置して開口を有する遮蔽部を有し、前記プラズマ発生部で発生させるプラズマの前記基板の前記一面に沿った方向における径寸法から、前記遮蔽部の前記開口の径寸法を引いて得られた長さは、前記マグネットの外径に20mmを加算して得られた長さ範囲以下に設定される。
言い換えると、前記遮蔽部が、前記プラズマ発生部で発生させるプラズマの前記基板の一面に沿った方向における径寸法に対する、前記開口の径寸法が、前記マグネットの外径+20mm以下の範囲(前記マグネットの外径に20mmを加算して得られる長さ以下の範囲)に設定される。
これにより、開口の径寸法をプラズマの径寸法に対して、上記の範囲となるように設定したことにより、プラズマの周縁部で発生する活性度合いの低いプラズマによって成膜される成膜粒子が基板に付着しないように遮蔽部によって遮蔽することができる。これにより、成膜する薄膜の膜特性が劣化せず、好適な膜特性を有する薄膜を成膜することが可能となる。
【0012】
本発明の薄膜製造装置は、前記成膜領域規定部が接地電位に設定され、前記開口の径寸法が、前記マグネットの外径に0mm~20mmの長さ範囲を加算して得られた長さに設定される。
言い換えると、前記開口の寸法が、前記マグネットの外径+0mm~20mmの範囲に設定される(前記マグネットの外径から前記マグネットの外径に20mmを加算して得られる長さまで範囲)。
これにより、開口の径寸法をマグネットの径寸法に対して、上記の範囲となるように設定したことにより、プラズマの周縁部で発生する活性度合いの低いプラズマによって成膜される成膜粒子が基板に付着しないように遮蔽部によって遮蔽する。これにより、成膜する薄膜の膜特性が劣化せず、好適な膜特性を有する薄膜を成膜することが可能となる。
【0013】
本発明の薄膜製造装置は、前記成膜領域規定部が浮遊電位に設定され、前記開口の径寸法が、前記マグネットの外径に-20mm~+20mmの長さ範囲を加算して得られた長さに設定される。
言い換えると、前記開口の寸法が、前記マグネットの外径-20mm~+20mmの範囲に設定される(前記マグネットの外径から20mmを差し引くことで得られる長さと、前記マグネットの外径に20mmを加算して得られる長さまで範囲)。
これにより、開口の径寸法をマグネットの径寸法に対して、上記の範囲となるように設定したことにより、プラズマの周縁部で発生する活性度合いの低いプラズマによって成膜される成膜粒子が基板に付着しないように遮蔽部によって遮蔽する。これにより、成膜する薄膜の膜特性が劣化せず、好適な膜特性を有する薄膜を成膜することが可能となる。
【0014】
本発明の薄膜製造装置は、前記開口の径寸法が、前記基板の移動方向において所定の範囲に設定される。
これにより、移動する基板において、成膜領域となる開口の全域においてプラズマの周縁部で発生する活性度合いの低いプラズマによって成膜される成膜粒子が基板に付着しないように遮蔽部によって遮蔽することにより、成膜する薄膜の膜特性が劣化せず、好適な膜特性を有する薄膜を成膜することが可能となる。
なお、基板の移動する方向と交差する方向において、特に、基板の移動する方向と直交する方向において、プラズマの活性度を均一化することができる。これにより、成膜領域の全域において、プラズマにより活性化する成膜粒子の活性度を均一化して、成膜特性が基板の全域において均質な膜特性の成膜をおこなうことが可能となる。
【0015】
本発明の薄膜製造装置は、前記ガス供給部によって供給される成膜ガスが窒素を含み、前記成膜源供給部によって供給される成膜源がリチウムを含む。
これにより、リチウムを含む電解質膜を成膜する際に、所望の状態に活性化した窒素を含有させて、好適な膜特性を有する電解質膜を成膜することができる。
したがって、リチウムイオン電池に用いて好適な電解質膜を成膜することができる。特に、イオン伝導度を向上したリチウム含有膜を成膜することが可能な製造装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、リチウムを含む電解質膜を成膜する際に、所望の状態に活性化した窒素を含有させて、好適な膜特性を有する電解質膜を成膜することができ、リチウムイオン電池に用いて好適な電解質膜を成膜することができ、特に、イオン伝導度を向上したリチウム含有膜を成膜することが可能な薄膜製造装置を提供することができるという効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る薄膜製造装置の第1実施形態を示す概略側断面図である。
図2】本発明に係る薄膜製造装置の第1実施形態における成膜領域付近の部分を示す拡大断面図である。
図3】本発明に係る薄膜製造装置の第1実施形態における成膜領域付近の部分を下面視して示す下面図である。
図4】本発明に係る薄膜製造装置の第2実施形態における成膜領域付近の部分を下面視して示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る薄膜製造装置の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における薄膜製造装置を示す概略側断面図であり、図1において、符号100は、薄膜製造装置である。図1において、X軸、Y軸及びZ軸方向は相互に直交する3軸方向を示し、X軸及びY軸は、水平方向、Z軸方向は鉛直方向を示す。
【0019】
本実施形態に係る薄膜製造装置100は、図1に示すように、真空チャンバ(チャンバ)110と、成膜部120と、搬送部(基板移動部)130と、回収部(基板移動部)160と、搬送機構(基板移動部)170と、を有する。
【0020】
真空チャンバ110は、密閉可能な構造を有し、真空ポンプP1を有する第1排気ラインLに接続される。これにより、真空チャンバ110は、その内部が所定の減圧雰囲気に排気又は維持可能に構成される。また、真空チャンバ110は、図1に示すように、成膜部120、搬送部130および回収部160をそれぞれ区画する複数の仕切り板111,115を有する。
【0021】
成膜部120は、仕切り板111と真空チャンバ110の外壁により区画された成膜室であり、その内部に蒸発源121を有する。また、成膜部120は、第1排気ラインLに接続されている。これにより、真空チャンバ110が排気される際には、先ず、成膜部120内が排気される。
【0022】
一方、成膜部120は搬送部130と連通しているため、成膜部120内が排気されると、搬送部130内も排気される。これにより、成膜部120と搬送部130との間に圧力差が生じる。この圧力差により、後述するリチウムを含む原料の蒸気流が搬送部130内に侵入することが抑制される。成膜部120には、成膜ガスを供給するガス供給部S0が接続される。ガス供給部S0は、プラズマ発生部を構成する。ガス供給部S0は、窒素を含む成膜ガスを供給可能とされる。
【0023】
蒸発源(成膜源供給部)121は、リチウムを含む原料を蒸発させる蒸発源であり、例えば、抵抗加熱式蒸発源、誘導加熱式蒸発源、電子ビーム加熱式蒸発源等で構成される。
【0024】
搬送部130は、仕切り板115と、真空チャンバ110の外壁に区画された搬送室であり、真空チャンバ110内のY軸方向の上方の位置に配置される。本実施形態では、第1排気ラインLを成膜部120にのみ接続したが、搬送部130にも別の排気ラインを接続することにより、搬送部130と成膜部120とを独立して排気してもよい。
【0025】
搬送機構(基板移動部)170は、巻出しローラ171と、メインローラ172と、巻取りローラ173と、を有する。
【0026】
巻出しローラ171、メインローラ172及び巻取りローラ173は、それぞれ図示しない回転駆動部を備え、Z軸周りに所定の回転速度で図1における矢印方向にそれぞれ回転可能に構成されている。これにより、真空チャンバ110内において、巻出しローラ171から巻取りローラ173へ向かって基材(基板)Fが所定の搬送速度で搬送される。
【0027】
巻出しローラ171は、成膜部120より基材Fの搬送方向上流側に設けられ、基材Fをメインローラ172に送り出す機能を有する。なお、巻出しローラ171とメインローラ172との間の適宜の位置に独自の回転駆動部を備えていない適宜の数のガイドローラ(図示略)が配置されてもよい。
【0028】
メインローラ172は、基材Fの搬送方向において巻出しローラ171と巻取りローラ173との間に配置される。メインローラ172は、Y軸方向における下部の少なくとも一部が、仕切り板111に設けられた開口部111aを通って成膜部120に臨む位置に配置される。メインローラ172は、所定の間隔を空けて開口部111aに対向し、蒸発源121とY軸方向に対向する。メインローラ172は、ステンレス鋼、鉄、アルミニウム等の金属材料で筒状に構成され、その内部に例えば図示しない温調媒体循環系等の温調機構が設けられてもよい。メインローラ172の大きさは特に限定されないが、典型的には、Z軸方向の幅寸法が基材FのZ軸方向の幅寸法よりも大きく設定される。
【0029】
巻取りローラ173は、仕切り板115と、真空チャンバ110の外壁により区画された空間である回収部160に配置され、巻出しローラ171から巻き出され基材Fを回収する機能を有する。成膜部120を通過して巻取りローラ173より回収された基材Fには、リチウムを含む蒸発材料が成膜されている。巻取りローラ173とメインローラ172との間の適宜の位置に独自の回転駆動部を備えない適宜の数のガイドローラ(図示略)が配置されてもよい。なお、仕切り板115を設けないこともできる。
【0030】
基材Fは、例えば、所定幅に裁断された長尺のフィルムである。基材Fは、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス等の金属で構成される。基材の材料は金属に限られない。基材Fの材料として、OPP(延伸ポリプロピレン)フィルム、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、PPS(ポリフェニレンサルファイド)フィルム、PI(ポリイミド)フィルム等の樹脂フィルムが用いられてもよい。基材Fの厚さは、特に限定されず、例えば数μm~数十μmである。また、基材Fの幅や長さについても特に制限はなく、用途に応じて適宜決定可能である。
【0031】
図2は、本実施形態における薄膜製造装置の成膜領域付近の部分を示す拡大側断面図であり、図3は、本実施形態における薄膜製造装置の成膜領域付近の部分を下面視した下面図である。
成膜部120には、図2図3に示すように、蒸発源(成膜源)121とメインローラ172との間に、成膜領域規定部として、開口21を有するシールド(遮蔽部)20が設けられる。
また、メインローラ172の内部位置、つまり、基材Fの裏面(他面)側となる位置には、マグネット30が配置される。
【0032】
シールド20は、図2図3に示すように、メインローラ172に巻回された基材Fに対して、成膜領域を規定する矩形の開口21を有する。シールド20は、開口21以外の基材Fを覆っていればよく、シールド20の輪郭は、図3において模式的に示している。
【0033】
シールド20は、板状の導体とされ、その電位はグランド(接地状態、シールド20は接地されている)とされる。シールド20は、メインローラ172に巻回された基材Fに対して、略平行となるように配置される。なおシールド20は成膜条件に応じてフローティング(浮遊電位)とされてもよい。なお公知の電源を用いて所定の電位がシールド20に付与されている場合もフローティングとみなす。
【0034】
シールド20は、メインローラ172における開口21の外方位置で、仕切り板(マスク)111に対して遮蔽板部111bによって接続されている。遮蔽板部111bは、仕切り板111に設けられた開口部111aの外方を囲んでいる。遮蔽板部111bは、シールド20と仕切り板111との間の空間を密閉している。シールド20と遮蔽板部111bとは、プラズマ発生領域pを囲むように外方に配置されている。
【0035】
プラズマ発生領域pは、マグネット30の形状に対応している。
マグネット30は、メインローラ172の外方に向けて磁束を形成するように配置される。
【0036】
本実施形態においては、マグネット30は、環状、特に、略矩形の環状にプラズマを発生可能に両極が形成される。したがって、プラズマ発生領域pは、図3に示すように、基材Fの表面(一面)に対して環状に設定される。開口21の近傍における基材Fの移動方向はX方向とされる。
X方向におけるプラズマ発生領域pの径寸法Mpは、X方向におけるマグネット30の径寸法M30によって規定される。径寸法M30は、X方向におけるマグネット30の輪郭の幅寸法である。X方向におけるプラズマ発生領域pの径寸法Mpは、プラズマが存在する矩形領域におけるX方向の長さである。X方向におけるマグネット30の径寸法M30は、略矩形輪郭のマグネット30におけるX方向に延在する辺の長さ寸法を意味する。
【0037】
図3に示すように、X方向におけるシールド20の開口21の径寸法M21は、X方向における開口縁21a,21aが互いに離間する寸法である。開口縁21a,21aは、互いに平行に対向している。開口縁21a,21aは、Z方向、すなわち、基材Fの移動方向に対して直交する方向に延在している。開口縁21a,21aに直交する開口縁21b,21bは、X方向、すなわち、基材Fの移動方向に延在している。
開口縁21b,21bは、互いに平行に対向している。
【0038】
略矩形輪郭のマグネット30のX方向における径寸法M30に対する、シールド20の開口21の径寸法M21は、図3を参照して以下のように決定される。
(A1)径寸法M21が、外径M30に対して+20mm以下の範囲(外径M30に20mmを加算して得られた値以下の範囲)である。
(A2)径寸法M21が、外径M30に対して+0mm~20mmの範囲(外径M30の値と、外径M30に20mmを加算して得られた値の範囲)である。
(A3)径寸法M21が、外径M30に対して-20mm~20mmの範囲(外径M30から20mmを差し引いて得られた値と、外径M30に20mmを加算して得られた値の範囲)である。
さらに、シールド20における開口21の径寸法M21は、略矩形のマグネット30の外径M30に対する比の値として、110/90以下の範囲、86/90~106/90の範囲に設定される。
これにより、シールド20は、プラズマ発生領域のX方向における径寸法Mpに対する、開口21の径寸法M21が、110/100以下の範囲、86/100~106/100の範囲に設定される。
【0039】
シールド20は、図3に示すように、Z方向において開口縁21b,21bが互いに離間する寸法は、Z方向における基材Fの幅寸法より小さく設定されている。
マグネット30のZ方向における径寸法M30Zに対する、シールド20の開口21の開口寸法M21Zは、図3を参照して以下のように決定される。
(B1)開口寸法M21Zが、マグネット30の径寸法M30Zに対して+20mm以下の範囲(径寸法M30Zに20mmを加算して得られた値以下の範囲)である。
(B2)開口寸法M21Zが、マグネット30の径寸法M30Zに対して+0mm~20mmの範囲(径寸法M30Zの値と、径寸法M30Zに20mmを加算して得られた値の範囲)である。
(B3)開口寸法M21Zが、マグネット30の径寸法M30Zに対して-20mm~20mmの範囲(径寸法M30Zから20mmを差し引いて得られた値と、径寸法M30Zに20mmを加算して得られた値の範囲)である。
さらに、シールド20における開口21の開口寸法M21Zは、マグネット30の径寸法M30Zに対する比の値として、180/160以下の範囲、140/160~180/160の範囲に設定される。
【0040】
メインローラ172に巻回された基材Fの表面(一面)に対するシールド20の位置に関し、図2に示すように、Y方向における離間寸法がMdとなるように、シールド20と基材Fの表面(一面)とがY方向に離間している。
シールド20は、マグネット30のX方向における径寸法M30に対する、メインローラ172に巻回された基材Fの表面(一面)に対するY方向の離間寸法Mdが、3~35mm、または7~35mmとなるように設定されている(図2参照)。
【0041】
また、メインローラ172には、プラズマ発生電源55が接続されてプラズマ発生電力が供給可能とされる。プラズマ発生電源55は、交流電源または直流電源とされる。プラズマ発生電源55は、プラズマ発生部を構成する。
【0042】
薄膜製造装置100は、以上のような構成を有する。
なお図示せずとも、薄膜製造装置100は、蒸発源121や搬送機構170、真空ポンプP1、ガス供給部S0、プラズマ発生電源55、マグネット30等を制御する制御部を備える。上記制御部は、CPUやメモリを含むコンピュータで構成され、薄膜製造装置100の全体の動作を制御する。
また薄膜製造装置100の構成は図に示す構成に限定されるものではなく、例えば、成膜部120、蒸発源121、搬送部130および回収部160の配置や大きさ等、および、蒸着源、供給するガス種、供給電位、などは適宜変更することが可能である。あるいは、薄膜製造装置100の上記構成要素のうちいずれかを設けないことも可能である。
【0043】
薄膜製造装置100における成膜においては、まず、真空チャンバ110内を排気し、成膜部120、搬送部130および回収部160を所定の真空度に維持する。
また、基材Fを支持する搬送機構170を駆動させ、基材Fを巻出しローラ171から巻取りローラ173に向けて搬送させる。基材Fは、成膜部120において、X方向に沿って搬送(移動)される。
なお、後述するように、基材Fには、あらかじめ、正極あるいは集電体などが所定の領域に形成されている。
【0044】
成膜部120では、ガス供給部S0から成膜部120内に窒素を含有するガスが導入される。
また、成膜部120では、接続されたプラズマ発生電源55から、メインローラ172にプラズマ発生電力が供給される。同時に、成膜部120では、接続された電源から供給された電力によって、マグネット30が磁束を発生する。
これにより、プラズマ発生領域pにプラズマが発生する。
【0045】
成膜部120では、蒸発源121が、例えば電子ビーム等によって加熱されてリチウムを含む蒸着材料(成膜原料)を蒸発させ、メインローラ172上の基材Fに向けて出射するリチウムを含む蒸着材料(成膜原料)の蒸気流を形成する。
このとき、リチウムを含む蒸着材料(成膜原料)の蒸気流は、シールド20の開口21によって、基材Fへの到達領域を規制される。
【0046】
シールド20の開口21付近の領域において、プラズマ化された窒素ガスによって活性化されたリチウムを含む蒸着粒子は、窒素を含有した電解質膜として基材Fの表面に成膜される。
【0047】
同時に、開口21によって移動する基材Fに対して成膜領域を規定することで、膜厚方向における膜特性の均一化を図ることもできる。
具体的に、X方向に移動する基材Fに対して成膜する場合には、基材Fの表面に順に成膜粒子が付着していく。このため、基材の移動にともなって、位置によるプラズマの活性化に差があると、膜厚方向に膜特性が変化してしまうことによる。これに対して、本実施形態では、開口21が形成されている部分以外のシールド20によって、活性化していないプラズマを遮蔽することができるため、膜厚方向に膜特性が変化しない。
【0048】
本実施形態の薄膜製造装置100においては、シールド20を用いることにより、X方向とされる基材Fの移動方向において、プラズマの周縁部および中心部で発生する活性度合いの低いプラズマによって成膜される距離と、マグネット30の形状に対応した活性度合いの高いプラズマによって成膜される距離とが、Z方向においてほぼ均一となるように設定することが可能となる。
これにより、Z方向とされる基材Fの移動方向と直交する方向において、膜特性が均一になるように膜組成を設定することができる。特に、膜に含有するNの割合が均一になるように膜組成を設定することができる。
【0049】
これにより、本実施形態における薄膜製造装置100は、ベースバイアスと成膜領域とをシールド20によって最適化し、充分に活性化されたプラズマ以外を遮蔽することによって、電解質膜における充分な窒化を可能として、膜特性、特に、イオン伝導度の向上した電解質膜を製造することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態の薄膜製造装置100がロールトゥロール装置である場合を説明したが、本発明は、この構成に限定されるものではなく、基板搬送中に枚葉の基板に成膜する構成としてもよい。
また、本実施形態の薄膜製造装置は、電解質膜の成膜部以外に、他の成膜部や、他の処理部を有することも可能である。
【0051】
以下、本発明に係る薄膜製造装置の第2実施形態を、図面に基づいて説明する。
図4は、本実施形態における薄膜製造装置における成膜領域付近の部分を下面視して示す下面図である。本実施形態において、上述した第1実施形態と異なるのは、マグネットに関する点であり、これ以外の上述した第1実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
本実施形態におけるマグネット30は、環状、特に、円環状にプラズマを発生可能として両極が形成される。したがって、プラズマ発生領域pは、図4に示すように、基材Fの表面(一面)に対して環状に設定される。開口21の近傍における基材Fの移動方向はX方向とされる。
【0053】
X方向におけるプラズマ発生領域pの径寸法Mpは、X方向におけるマグネット30の輪郭における最大の径寸法M30によって規定される。X方向におけるプラズマ発生領域pの径寸法Mpは、X方向における最大のプラズマが存在する長さである。X方向におけるマグネット30の径寸法M30は、X方向における最大のマグネット30の長さ寸法を意味する。
【0054】
マグネット30のX方向における径寸法M30に対する、シールド20の開口21の径寸法M21は、図4を参照して以下のように決定される。
(C1)径寸法M21が、外径M30に対して+20mm以下の範囲(外径M30に20mmを加算して得られた値以下の範囲)である。
(C2)径寸法M21が、外径M30に対して+0mm~20mmの範囲(外径M30の値と、外径M30に20mmを加算して得られた値の範囲)である。
(C3)径寸法M21が、外径M30に対して-20mm~20mmの範囲(外径M30から20mmを差し引いて得られた値と、外径M30に20mmを加算して得られた値の範囲)である。
さらに、シールド20における開口21の径寸法M21は、マグネット30の外径M30に対する比の値として、110/90以下の範囲、86/90~106/90の範囲に設定される。
これにより、シールド20は、プラズマ発生領域のX方向における径寸法Mpに対する、開口21の径寸法M21が、110/100以下の範囲、86/100~106/100の範囲に設定される。
【0055】
マグネット30のZ方向における径寸法M30Zに対する、シールド20の開口21の開口寸法M21Zは、図4を参照して以下のように決定される。
(D1)開口寸法M21Zが、略矩形のマグネット30の径寸法M30Zに対して+20mm以下の範囲(径寸法M30Zに20mmを加算して得られた値以下の範囲)である。
(D2)開口寸法M21Zが、略矩形のマグネット30の径寸法M30Zに対して+0mm~20mmの範囲(径寸法M30Zの値と、径寸法M30Zに20mmを加算して得られた値の範囲)である。
(D3)開口寸法M21Zが、略矩形のマグネット30の径寸法M30Zに対して-20mm~20mmの範囲(径寸法M30Zから20mmを差し引いて得られた値と、径寸法M30Zに20mmを加算して得られた値の範囲)である。
さらに、シールド20における開口21の開口寸法M21Zは、マグネット30の径寸法M30Zに対する比の値として、180/160以下の範囲、140/160~180/160の範囲に設定される。
【0056】
本実施形態においては、X方向とされる基材Fの移動方向において、プラズマの周縁部および中心部で発生する活性度合いの低いプラズマによって成膜される距離と、略矩形輪郭のマグネット30の形状に対応した活性度合いの高いプラズマによって成膜される距離とが、Z方向においてほぼ均一となるように設定することが可能となる。
これにより、Z方向とされる基材Fの移動方向と直交する方向において、膜特性が均一になるように膜組成を設定することができる。特に、膜に含有するNの割合が均一になるように膜組成を設定することができる。
【0057】
ここで、基材Fの移動方向に沿って成膜された薄膜における膜特性を検討する。
【0058】
Z方向で開口21の中央付近となる位置においては、図4に示すように、図において右側の開口縁21aから左側に向けて移動してきた基材Fは、まず、活性化の乏しい外領域p1にわずかに曝された後、充分に活性化されたプラズマ領域p0を移動する。
この間、高い膜特性の電解質膜が成膜される。次いで、基材Fが活性化の乏しい内領域p2を通過した後、ふたたび、図において左側に位置する充分に活性化されたプラズマ領域p0を移動する。この間、高い膜特性の電解質膜が成膜される。最後に、基材Fは、左側の活性化の乏しい外領域p1にわずかに曝された後、図において左側の開口縁21aから遮蔽された領域へと移動していく。
【0059】
これに対して、Z方向で開口21の開口縁21bに近接する位置においては、図4の下側に示すように、図において右側の開口縁21aから左側に向けて移動してきた基材Fは、まず、活性化の乏しい外領域p1を移動する。その後、基材Fは、充分に活性化されたプラズマ領域p0を移動する。例示しているZ方向位置では、基材Fは、内領域p2を通過しない。そして、基材Fは、左側の活性化の乏しい外領域p1を通過し後、図において左側の開口縁21aから遮蔽された領域へと移動していく。
【0060】
このように、本実施形態におけるシールド20においては、開口21の径寸法M21がプラズマ発生領域のX方向における径寸法Mpに対して所定の関係を満たしている。これにより、X方向に移動する基材Fにおいては、充分に活性化されたプラズマ領域p0を移動する距離と、活性化の乏しい外領域p1および内領域p2とを移動する距離との比率が、Z方向の各位置において、それぞれ、ほぼ均一化されている。
【0061】
これにより、X方向に移動する基材Fには、Z方向の全領域において、均一化された膜特性を有する電解質膜を成膜することができる。
しかも、本実施形態においては、ロールトゥロール装置とされる薄膜製造装置100において、Z方向の全領域において、均一化された膜特性を有する電解質膜を連続して成膜することができる。
さらに、シールド20によって、活性化の乏しい外領域p1が制限されていることにより、電解質膜における膜特性を向上することができる。
【実施例
【0062】
以下、本発明にかかる実施例を説明する。
【0063】
ここで、本発明における薄膜製造装置の具体例として、成膜試験について説明する。
【0064】
<実験例1~11>
上述した薄膜製造装置100により、LiPON膜を形成し、その膜質として、イオン伝導度を測定した。
成膜条件を、以下に示す。
【0065】
成膜部圧力:0.1~0.3Pa、
プラズマ供給電力:30W
ガスが導入される部位:シールド近傍の位置
ガス流量:100sccm
基材F搬送スピード:0.5~5m/min
基材Fの材質:銅箔およびPET樹脂基材
【0066】
さらに、シールド20における寸法を以下のように設定して、それぞれ実験例1~4とした。
X方向における開口21の径寸法M21:70~166mm
Z方向のシールド20の離間寸法Md:3~35mm
マグネット30のX方向における径寸法M30:90mm
また、シールド20における電位を接地電位(グランド:GND)および浮遊電位(フローティング:FTG)とした。
その結果を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
なお、実験例3においては、イオン伝導度を測定できるだけの成膜ができなかった。
【0069】
これらの結果から、実験例4,5,6,9,10,11に示すように、開口21の径寸法M21を磁気回路の外径+20mmよりも小さく(磁気回路の外径に20mmを加算して得られた値よりも小さく)設定することで、高いイオン伝導度を有する電解質膜を成膜することが可能であることがわかる。つまり、このとき発生したプラズマ発生領域pの径寸法は100mmであったので、プラズマ発生領域pの径寸法に対して、開口21の径寸法M21を110/100以下となるようにシールド20を設ければ、磁気回路の大小にかかわらず高いイオン伝導度を有する電解質膜を成膜することが可能であることがわかる。
同様にマグネット(磁気回路)30の径寸法M30に対して、開口21の径寸法M21を110/90以下となるようにシールド20を設ければ、磁気回路の大小にかかわらず高いイオン伝導度を有する電解質膜を成膜することが可能であることがわかる。
さらにシールド20が接地電位(GND)に設定された場合、開口21の径寸法M21を磁気回路の外径+0~20mm(磁気回路の外径の値から磁気回路の外径に20mmを加算して得られた値までの範囲)に設定すればよいことがわかる。同様に、シールド20が浮遊電位(FTG)に設定された場合、開口21の径寸法M21をマグネット(磁気回路)30の外径-20~+20mm(磁気回路の外径から20mmを差し引いて得られた値と、磁気回路の外径に20mmを加算して得られた値の範囲)に設定すればよいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の活用例として、電解質膜として、リチウムを含む蒸着材料と窒素を含むプラズマとを用いてLiPON等のリチウムと窒素を含む電解質膜の成膜、あるいは、リチウムを含む蒸着材料と酸素を含むプラズマとを用いて、LCO等のリチウムと酸素を含む正極材料の成膜をおこなう装置を挙げることができる。
【符号の説明】
【0071】
100…薄膜製造装置
20…シールド(遮蔽部)
21…開口
21a…開口縁
21b…開口縁
30…マグネット
55…プラズマ発生電源
111b…遮蔽板部
120…成膜部
121…蒸発源(成膜源供給部)
170…搬送機構(基板移動部)
172…メインローラ
F,F0…基材(基板)
F2…電解質膜(薄膜)
M21…径寸法
M30…径寸法
Md…離間寸法
Mp…径寸法
p…プラズマ発生領域
S0…ガス供給部
図1
図2
図3
図4