(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】触感見本システム及び触感評価方法
(51)【国際特許分類】
G09F 5/04 20060101AFI20230117BHJP
G01J 3/52 20060101ALI20230117BHJP
B41M 3/06 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
G09F5/04 Z
G01J3/52
B41M3/06 C
(21)【出願番号】P 2018186623
(22)【出願日】2018-10-01
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【氏名又は名称】西本 博之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雅人
【審査官】富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-223108(JP,A)
【文献】登録実用新案第3120314(JP,U)
【文献】実公昭49-022276(JP,Y1)
【文献】登録実用新案第3070468(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M1/00-3/18、7/00-9/04
G09F1/00-5/04
G01J3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる触感の複数の触感見本シートと、色、模様及び質感の少なくとも一が異なる複数のテクスチャ見本と、を備え、
前記触感見本シートは、前記テクスチャ見本が重ねられた際に、前記テクスチャ見本の色、模様及び質感の少なくとも一が透けて見える光透過性を有
し、
前記触感見本シートは、シート状の基材と基材上に印刷された印刷部とを備え、前記基材と前記印刷部は光透過性を有し、前記触感は前記印刷部に塗布されたインクによって調整されている、触感見本システム。
【請求項2】
重なり合う前記複数の触感見本シートを支持する連結部を更に備える請求項1記載の触感見本システム。
【請求項3】
前記触感見本シートは、複数の見本片に分割される破断を誘導する破断誘導構造を備えている請求項1
または2記載の触感見本システム。
【請求項4】
異なる触感の複数の触感見本シートと、色、模様及び質感の少なくとも一が異なる複数のテクスチャ見本と、を備え、前記触感見本シートは、前記テクスチャ見本が重ねられた際に、前記テクスチャ見本の色、模様及び質感の少なくとも一が透けて見える光透過性を有
し、前記触感見本シートは、シート状の基材と基材上に印刷された印刷部とを備え、前記基材と前記印刷部は光透過性を有し、前記触感は前記印刷部に塗布されたインクによって調整されている、触感見本システムを使用して、触感見本シートの触感を評価する触感評価方法であって、
前記複数の触感見本シートのそれぞれを、前記テクスチャ見本に重ね、前記テクスチャ見本に重ねた状態での前記触感見本シートの触感を確認する、触感評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に応じた触感を評価するために使用される触感見本システム及び触感評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デザイン作業や印刷物の発注等の際に使用する色見本が知られている。例えば、特許文献1には、透明または半透明のシートに印刷された色見本を透明又は半透明の成型対象物等に重ね合わせ、その時の色味を基に成型後の製品の色味をつかむことができる技術が開示されている。その他、色見本について開示する種々の文献が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-272276号
【文献】特開2017-058521号
【文献】特開2004-085968号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、製品のイメージをつかむためには色味だけでは不十分であり、触感も製品イメージに影響を及ぼす。ここにおいて、従来は触感を評価し、製品イメージを確認することができる見本や評価方法は存在しなかった。
【0005】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、製品等を想定した対象物に適した触感を評価するために使用される触感見本システム及び触感評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、異なる触感の複数の触感見本シートを備えた触感見本システムである。
【0007】
本発明では、複数の触感見本シートのそれぞれを、製品等を想定した対象物に重ねながら、触感見本シートの触感を確認することができる。その結果、対象物に適した触感を評価することができる。
【0008】
また、触感見本シートは光透過性を有することができる。触感見本シートは光透過性を有するので、対象物に重ねた状態で、対象物の色味を確認しながら触感の確認を行うことができる。その結果、触感見本シートを使用した簡便な方法で、色味と触感とを複合的に評価することができる。
【0009】
また、テクスチャ見本を更に備えることができる。製品等を想定した対象物としてテクスチャ見本を利用でき、製品等に適した触感を評価し易くなる。
【0010】
また、複数のテクスチャ見本を備え、複数のテクスチャ見本は、それぞれ色、模様及び質感の少なくとも一が異なることができる。複数のテクスチャ見本の中から、製品等を想定した好適なテクスチャ見本を選択し易くなる。
【0011】
また、触感見本シートは、シート状の基材と基材上に印刷された印刷部とを備え、触感は印刷部に塗布されたインクによって調整されていてもよい。インクの塗布によって様々な触感を有する触感見本シートを容易に実現できる。
【0012】
また、重なり合う複数の触感見本シートを支持する連結部を更に備えることができる。連結部によって複数の触感見本シートを纏めることができ、扱い易くなる。
【0013】
また、触感見本シートは、複数の見本片に分割される破断を誘導する破断誘導構造を備えていると好適である。破断誘導構造に沿って触感見本シートを分割することにより、一又は複数の見本片を切り離すことができ、この見本片を対象物に重ねながら触感を確認することができる。
【0014】
本発明は、異なる触感の複数の触感見本シートのそれぞれを、対象物に重ね、対象物に重ねた状態での触感見本シートの触感を確認する、触感評価方法である。
【0015】
本発明によれば、対象物に応じた触感見本シートの触感を確認することができる。その結果、対象物に適した触感を評価できる。ここで、「対象物に適した触感を評価する」とは、例えば、触感見本シートを対象物に重ねた状態で感性評価を行って複数の触感見本シートの中から好適な触感見本シートを選択する場合や、複数の触感見本シートを用いながら、対象物に対して相性の良い触感の傾向を特定する場合等を広く含む。
【0016】
本発明は、異なる触感の複数の触感見本シートと、テクスチャ見本とを備えた触感見本システムを使用して、触感見本シートの触感を評価する、触感評価方法であって、複数の触感見本シートのそれぞれを、テクスチャ見本に重ね、テクスチャ見本に重ねた状態での触感見本シートの触感を確認する、触感評価方法である。
【0017】
本発明によれば、対象物としてテクスチャ見本を用い、テクスチャ見本に応じた触感見本シートの触感を確認することができる。その結果、テクスチャ見本に適した触感を評価できる。ここで、「テクスチャ見本に適した触感を評価する」とは、例えば、触感見本シートをテクスチャ見本に重ねた状態で感性評価を行って複数の触感見本シートの中から好適な触感見本シートを選択する場合や、複数の触感見本シートを用いながら、テクスチャ見本に対して相性の良い触感の傾向を特定する場合等を広く含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、対象物に適した触感を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態に係る触感見本シートシステムにおける触感見本帳の一例を示し、(a)図は触感見本帳を閉じた状態の斜視図であり、(b)図は触感見本帳を開いた状態の平面図である。
【
図2】触感見本シートの断面図であり、(a)図は
図1のIIa-IIa線に沿った断面図であり、(b)図は
図1のIIb-IIb線に沿った断面図である。
【
図3】異なる方法で製造された触感見本シートの断面図であり、(a)図は、印刷部を備えた触感見本シートの断面図である。(b)図、及び(c)図は、印刷部を備えていない触感見本シートの断面図である。
【
図4】一実施形態に係る触感見本シートシステムにおけるテクスチャ見本帳の一例を示し、(a)図はテクスチャ見本帳を閉じた状態の斜視図であり、(b)図はテクスチャ見本帳を開いた状態の平面図である。
【
図5】テクスチャ見本シートの見本片の一部分に触感見本シートの見本片を重ねている状態を示す平面図である。
【
図6】一実施形態に係る触感見本シートシステムにおける触感見本シートを示し、(a)図は触感見本シートの平面図であり、(b)図は(a)図のb-b線に沿った断面図である。
【
図7】触感見本シートの見本片を対象物に貼付した状態を示す斜視図である。
【
図8】一実施形態に係る触感見本シートシステムの平面図である。
【
図9】一実施形態に係る触感見本シートシステムであり、(a)図は一例に係る触感見本シートシステムの斜視図であり、(b)図は一例に係る触感見本シートシステムの斜視図である。
【
図10】一実施形態に係る触感見本シートシステムであり、(a)図は、単体の触感見本帳の例であり、(b)図は、複数の触感見本帳を3次元的に配置した例である。
【
図11】一実施形態に係る触感見本シートシステムであり、(a)図は、単体の触感見本帳の例であり、(b)図は、複数の触感見本帳を3次元的に配置した例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、「触感見本システム」について定義する。触感見本システムのカテゴリーは、「物の発明」である。触感見本システムは、少なくとも、触感の異なる複数の触感見本シートを備えていれば足り、更に、他の付帯的な要素を備えていても良い。また、触感見本システムにおける複数の触感見本シートは、一定のまとまりをもって把握できればよい。従って、例えば、複数の触感見本シートが連結等されて一体化されている態様に限定されず、複数の触感見本シートが、それぞれ独立していたとしても、袋や箱などの容器に収められていたり、紐、ゴムなどの結束部材によって分離独立可能に結合されていたりする態様であってもよい。この場合、容器や結束部材なども触感見本システムの構成要素になり得る。
【0021】
次に、図面を参照しつつ本発明に係る触感見本システムの各実施形態について具体的に説明する。
図1に示されるように、一実施形態に係る触感見本システム1Aは、触感見本帳2Aを備えている。触感見本帳2Aは、触感の異なる複数の触感見本シート3Aを備えている。触感見本帳2Aは、重なり合う複数の触感見本シート3Aを支持する連結部21を備えている。連結部21は、例えば、複数の触感見本シート3Aを貫通する軸部であり、抜け止めのための処理が施されている。複数の触感見本シート3Aは、連結部21を中心にしてそれぞれ回転可能である。連結部21により、重なり合う複数の触感見本シート3Aを一体に纏めることができ、扱い易くなる。
【0022】
本実施形態に係る触感見本シート3Aは、矩形状であるが、触感見本シート3Aの形状は矩形状に限定されず、その他の多角形状、または円形や楕円形等であっても良く、更に、不規則な形状であってもよい。また、触感見本シート3Aは無色であっても、有色であってもよく、また、模様を有していても良い。
【0023】
触感見本シート3Aは、一例として基材32及び基材32上に印刷された印刷部33を備えている。触感見本シート3Aの触感は印刷部33に塗布されたインクによって調整されている。例えば、
図2の(a)図は、複数の触感見本シート3Aのうちの一の触感見本シート3Aの一例を示す断面図であり、
図2の(b)図は、複数の触感見本シート3Aのうちの他の触感見本シート3Aの一例を示す断面図である。なお、本実施形態は、触感を付与し、調整する態様の一例であり、本実施形態の如く、印刷やコーティングによって印刷部33が形成された形態の他、後述の通り、物理的な加工によって調整された形態や、複数のポリマをブレンドすることによって調整された形態等であっても良い。
【0024】
図2の(a)図及び(b)図に示されるように、印刷部33に形成される凹凸形状の違い、サイズの違い、凸部の密度の違いなど、外形形状の差(外形差)によって触感の違いを実現することができる。また、触感の違いは、外形差に限定されず、材質の違いなどに起因して生じる熱伝導の差(熱物性の差)によって実現することも可能である。以下、触感見本シート3Aの触感について更に詳しく説明する。
【0025】
「触感」とは、ヒトが物に触れた際に手や肌等で受ける知覚(感じ)である。また、「触感が異なる」とは、一般的には、ヒトが知覚として区別できる程度の相違を有する態様を意味し、ヒトの感性評価(官能検査)によって評価することができる。
【0026】
例えば、感性評価のパラメータの取得方法として、通常の感性評価の手法を用いることができる。また、主観評価としては、刺激量と感覚量を数量的に対応付ける精神物理学的測定法や、主観的な印象を測る基準(物差し)を作る方法としての尺度構成法が知られており、これらの手法を用いて触感の違いを評価することができる。
【0027】
また、複数の触感見本シート3Aの触感を、再現可能となるように数値化して定義することも可能である。例えば、精神物理学測定法や尺度構成法のうち、比例尺度、感覚尺度、順位尺度が数値として扱えることができる。なお、直接的な触感として数値化できない場合であっても、間接的な触感として、名義尺度(たとえば、男女、住居地域)などで定義することもできる。具体的には、男性が好んだ触感、女性が好んだ触感、あるいは住居地域それぞれで好まれた触感として区別し、定義することも可能である。
【0028】
なお、尺度構成法に用いられる心理尺度については様々な提案がなされている。例えば、堀 洋道(筑波大学・大妻女子大学名誉教授)監修、山本眞理子(元筑波大学教授)編、「心理測定尺度集I~VI」、サイエンス社発行等に多数の記載があり、これら及び独自に設定した尺度の中から適切なものを参酌することができる。
【0029】
また、複数の触感見本シート3Aと、数値化された触感とを対応付けて管理する必要がある場合において、数値化して値をグラフ化し、その大小関係を例えば、縦軸で表し、更に、その縦軸に多数の形容詞を記載して触感の程度を区別すると、管理上も煩雑になる。また、触感見本シート3Aに対応付けて触感の程度を形容詞によって表示する場合には、表示上、読み難くなってしまう。そこで、心理統計法、例えばセマンティック・ディファレンシャル法(SD法)などで、形容詞やオノマトペ相互間の関連を探り、相関の多いものをまとめて分かりやすく区分し、必要に応じて表示する事が望ましい。
【0030】
また、触感見本シート3Aの触感については、感性評価を行うことなく、例えば、剛性、摩擦係数、ミクロ的な表面粗さ、マクロ的な表面粗さ、温冷感等の各パラメータを測定することにより、異なる触感の有無を定量的に評価することができる。以下、具体的に説明する。
【0031】
[剛性について]
剛性は、JIS K7127に基づいて評価することができ、剛性が異なる場合に触感が異なるとして評価することができる。例えば、プラスチックフィルム製の触感見本シート3Aにおいて、剛性が400MPa程度の触感見本シート(LLDPE)に対し、剛性が2000MPa程度の触感見本シート(ラミネート品)は、触感が異なる。
【0032】
[摩擦係数について]
摩擦係数は、JISの動摩擦係数に基づいて評価することができる。また、触感見本シート3Aの触感を評価するため、好ましくはヒトの触感と一致する動摩擦係数の上昇率という観点で評価することができる。具体的には、動摩擦係数が0.1~0.7、測定速度を2mm/sから20mm/sに増加させた場合の動摩擦係数の上昇率という観点で評価でき、例えば、10%以上であると好ましいと評価することができる。なお、繊維業界で用いられているKES(Kawabata Evaluation System)の表面特性値、MIUの平均摩擦係数、MMDの平均摩擦係数の変、SMDの表面粗さの平均偏差なども利用できる。
【0033】
[ミクロな表面粗さ]
ミクロな表面粗さは、ISO25178表面性状パラメータを利用して評価することができるが、感性評価と連動した指標を選ぶのが望ましい。例として、KEYENCE社のホームページ(「粗さ」入門.com)、[2018年9月18日検索]、<https://www.keyence.co.jp/ss/3dprofiler/arasa/surface/parameters.jsp>を参照することができる。
【0034】
上記のホームページにも記載の通り、ミクロな表面粗さとしては、「高さ」の基づき、Sa:算術平均高さ、Sz:最大高さ、Sq:二乗平均平方根高さ、Ssk:スキューネス(偏り度)、Sku:クルトシス(尖り度)、Sp:最大山高さ、Sv:最大谷深さの各パラメータを使用して評価することができる。また、「空間」に基づき、Sal:最小自己相関長さ、Str:表面性状のアスペクト比の各パラメータを使用して評価することができる。また、「複合」的な評価に基づき、Sdq:二乗平均平方根傾斜、Sdr:界面の展開面積比の各パラメータを使用して評価することができる。また、「機能」に基づき、Smr(c):負荷面積率、Smc(mr):逆負荷面積率、Sk:コア部のレベル差、Spk:突出山部高さ、Svk:突出谷部高さ、Smr1:突出山部とコア部を分離する負荷面積率、Smr2:突出谷部とコア部を分離する負荷面積率、Sxp:極点高さの各パラメータを使用して評価することができる。また、「機能(体積)」に基づき、Vvv:谷部の空隙容積、Vvc:コア部の空隙容積、Vmp:山部の実体体積、Vmc:コア部の実体体積の各パラメータを使用して評価することができる。また、「形態」に基づき、Spd:山の頂点密度、Spc:山頂点の算術平均曲、S10z:10点領域高さ、S5p:5点山領域高さ、S5v:5点谷領域深さ、Sda(c):平均谷領域面積、Sha(c):平均山領域面積、Sdv(c):平均谷領域容積、Shv(c):平均山領域体積の各パラメータを使用して評価することができる。
【0035】
[マクロな表面粗さ]
マクロな表面粗さは、例えば、針式の表面粗さ計で測定した結果を用いて評価することができる。また、3次元測定器を用いて場所をずらしながら変位を測定し、その測定結果を用いて評価することができる。
【0036】
[温冷感]
温冷感は、繊維業界で用いられているKESの熱物性を用いて評価することができる。例えば、触感見本シート3Aを触った瞬間の温冷感である熱流量ピーク値(Q max)を触感として評価することができる。また、触感見本シート3Aに継続的に触れている状態での温冷感である熱伝導率(K)を触感として評価することができる。
【0037】
なお、KESは、カトーテック株式会社のホームページ、[2018年9月18日検索]、<http://www.keskato.co.jp/products/#panel07>に記載の「KES-F7 サーモラボ」、「FR07 サーモラボ」等の装置を使用して測定できる。
【0038】
また、触感見本シート3Aは、製造方法によって異なる触感に調整することもできる。この場合、上記のパラメータやヒトの感性評価を行うことなく、製造方法や製造条件を特定することによって、間接的に異なる触感が実現されていることを特定することができる。以下、所望の触感に調整された触感見本シート3Aの製造方法、及び触感見本シート3Aについて説明する。
【0039】
最初に、印刷部33に塗布されたインクによって所望の触感に調整された触感見本シート3Aについて説明する。触感見本シート3Aは、シート状の基材32と基材32上に印刷された印刷部33とを備えている。印刷部33に塗布されたインクによって触感を調整することにより、様々な触感を有する触感見本シート3Aを容易に実現できる。なお、インクには、色素等を含む一般的なインクの他、コーティング剤も含まれる。
【0040】
基材32としては、例えば、樹脂フィルムを使用することができる。この樹脂フィルムとしては、各種の合成樹脂シート、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、ポリエステル、ポリアクリル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン等を使用することができる。
【0041】
印刷部33は、基材32の表面にインクを塗布することによって形成される。インクを塗布する方法(塗工方式)は、例えば、特許第4482803号に記載の方法を使用することができる。また、インクの塗布方法としては、印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の印刷方式、グラビアコーター、グラビアリバースコーター、フレキソコーター、ブランケットコーター、ロールコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、キスタッチコーター、キスタッチリバースコーター及びコンマコーター、コンマリバースコーター、マイクログラビアコーター等の塗工方式を使用することができる。
【0042】
また、触感を調整するための塗工方式(印刷部33を形成する方法)として、特開2015-180711号公報に記載の方法を使用することができる。
図3の(a)図は、この方法によって印刷部33を形成した態様を示す断面図である。この方法では、基材32の下塗り層上面にポリシロキサンを含むテクスチャーインキからなる中間層を形成した後、上塗り塗料を形成することで、中塗り塗膜33aと上塗り塗膜33bが一体化して意匠性よく凹凸形状を形成することができる。この方法によれば、所望の適切な触感となるように調整し易くなる。
【0043】
また、基材32の表面にコーティング処理を施すことで触感の調整を行うこともできる。このコーティング法として、例えば、ロールコート法、ダイコート法、スピンコート法、リップコート法、コンマコート法、バーコート法、ディップコート法、流延成膜法、グラビアコート法等の方法等を用いることができる。これらの方法で、基材32上にインクを塗布し、このインクを乾燥または硬化させることで所望の触感に調整することもできる。
【0044】
上記のインクとしては、熱硬化型インク、溶剤型(トルエン)インク、溶剤型(ノントルエン)インク、水溶性インク等を使用することができ、更に。UV型(紫外線硬化型)のコーティングニスをインクとして使用しても良い。
【0045】
また、充填物を含んだインクの塗布によって触感を調整することもできる。この場合、充填物として、無機フィラー、無機ビーズ、ポリマーフィラー、ポリマービーズ等を使用することができる。
【0046】
次に、印刷部33を設けることなく触感を調整された触感見本シートについて説明する。例えば、
図3の(b)図に示されるように、第1の変形例に係る触感見本シート3Aでは、基材32上に接着剤を塗布して接着層34を形成し、接着層34の上に、粒体物35を塗布された触感見本シート3Aであり、粒体物35の塗布によって所望の触感に調整されている。また、例えば、
図3の(c)図に示されるように、第2の変形例に係る触感見本シート3Aでは、基材32上に両面テープ36が添付され、基材32とは反対側となる面に粒体物35が塗布された触感見本シート3Aであり、粒体物35の塗布によって所望の触感に調整されている。粒体物としては、微細粉末も含まれ、無機フィラー、無機ビーズ、ポリマーフィラー、ポリマービーズ等を使用することができる。
【0047】
また、印刷部33を設けない他の形態として、例えば、物理的な加工によって触感が調整された触感見本シートにすることもできる。物理的な加工として、例えば、プレス等で基材に圧力をかけて変形させることによって触感を調製したり、紙やすり等で基材の表面を荒らすことによって触感を調整したり、基材を過熱して可塑化させ、その状態で型などを用いて基材を変形させることによって触感を調製したりすることができる。また、物理的な加工として、例えば、レーザー版や彫刻版を用いることができる。また、物理的な加工として、基材の表面処理を行うこともできる。例えば、コロナ放電、フレーム法(火炎で表面を荒らす)、レーザー法等を使用した表面処理方法によって触感を調整することも可能である。
【0048】
また、物理的な加工によって触感が調整された触感見本シートとして、例えば、基材の製造時に、エンボスロール等で表面に凹凸模様を付与された触感見本シートにすることもできる。また、凹凸模様を付与した化粧シートを基材上に添付する形成方法(特開2002-144485参照)などを利用し、微細な凹凸を有する化粧シートが基材上に添付された触感見本シートにすることもできる。
【0049】
また、印刷部33を設けない他の形態として、例えば、基材の製造時に、2種類以上のポリマのブレンド(ポリマブレンド)により触感を調整された触感見本シートにすることもできる。また、印刷部33の代わりに、触感が調製されたフィルムを基材に貼り合わせることによって触感を調製された触感見本シートにすることもできる。
【0050】
次に、触感見本シート3Aの光透過性について説明する。光透過性とは、透明または半透明であることを意図している。より具体的には、光透過性の有無を「曇り度(ヘーズ)」によって定量的に評価することができる。例えば、「プラスチック-透明材料のヘーズの求め方(JIS K 7136)」に基づき、「曇り度(ヘーズ)」が85%以下の触感見本シート3Aによれば、製品等を想定した対象物に重ね合わせた際に、対象物の印刷物等の模様等を確認することができる。つまり、本実施形態において、光透過性を有するとは、「曇り度(ヘーズ)」が85%以下であることを意味する。また、「曇り度(ヘーズ)」が10%以下であれば、一般的な透明フィルムと同程度のヘーズとなり、模様等を明確に把握できるようになって望ましい。また、触感見本シート3Aは、色付きであっても良いが、無色であれば、対象物の模様のみならず、色や質感も把握できるようになって望ましい。
【0051】
なお、本実施形態に係る触感見本シート3Aは、光透過性を有しているが、透光性を有しておらず、「曇り度(ヘーズ)」が85%よりも大きく、例えば、遮光性を有する形態にすることもできる。
【0052】
次に、触感見本シート3Aに設けられた破断誘導構造37(
図1参照)について説明する。触感見本シート3Aは、複数の見本片31Aに分割される破断を誘導する破断誘導構造37を備えている。破断誘導構造37とは、せん断力を受けた際に、一定方向(切断予定線)に沿った切断を契機するように意図的に形成された構造である。破断誘導構造37は、例えば、切断予定線に沿ったミシン目であったり、切断予定線に沿った直線部分の厚みが他の部分より薄く形成されたりした構造であってもよい。
【0053】
本実施形態に係る触感見本システム1Aは、触感見本帳2Aに加え、更にテクスチャ見本帳4A(
図4参照)を備えていてもよい。テクスチャ見本帳4Aは、例えば、搬送時や保管時などにおいて、触感見本帳2Aとセットになった状態で収納されている。テクスチャ見本帳4Aは、複数のテクスチャ見本シート5Aを備えている。テクスチャ見本シート5Aは、製品等を想定した対象物の実際の印刷物等を模した見本である。テクスチャ見本シート5Aは、テクスチャ見本の一例である。なお、テクスチャ見本としては、2次元的なシート状に限定されず、3次元的な立体構造であっても良い。
【0054】
複数のテクスチャ見本シート5Aは、それぞれ色、模様及び質感の少なくとも一が異なる。色が異なるとは、色相、彩度、及び明度の少なくとも一つが異なっていればよく、また、模様との関係で色の相違の有無を複合的に評価することもできる。また、質感とは、材料がもつ視覚的な特徴や形態を意味し、所定の材料の質感を模して表現した形態も含まれる。テクスチャ見本シート5Aの色、模様または質感は、触感見本シート3Aの色、模様または質感等と異なっていても良いし、共通であっても良い。
【0055】
テクスチャ見本帳4Aは、重なり合う複数のテクスチャ見本シート5Aを支持する連結部41を備えている。連結部41は、例えば、複数のテクスチャ見本シート5Aを貫通する軸部であり、抜け止めのための処理が施されている。複数のテクスチャ見本シート5Aは、連結部41を中心にしてそれぞれ回転可能である。連結部41により、重なり合う複数のテクスチャ見本シート5Aを一体に纏めることができ、扱い易くなる。
【0056】
本実施形態に係るテクスチャ見本シート5Aは、矩形状であるが、テクスチャ見本シート5Aの形状は矩形状に限定されず、その他の多角形状、または円形や楕円形等であっても良く、更に、不規則な形状であってもよい。
【0057】
テクスチャ見本シート5Aは、複数の見本片51に分割される破断を誘導する破断誘導構造57を備えている。破断誘導構造57とは、せん断力を受けた際に、一定方向(切断予定線)に沿った切断を契機するように意図的に形成された構造である。破断誘導構造57は、例えば、切断予定線に沿ったミシン目であったり、切断予定線に沿った直線部分の厚みが他の部分より薄く形成されたりした構造であってもよい。
【0058】
次に、本実施形態に係る触感見本システム1Aを用いて触感を確認する触感評価方法について説明する。触感見本システム1Aは触感見本帳2Aとテクスチャ見本帳4Aとを備えている。評価者(ヒト)は、テクスチャ見本帳4Aの複数のテクスチャ見本シート5Aの中から、製品等を想定した対象物に準ずる一又は複数のテクスチャ見本シート5Aを選択する。次に、評価者は、触感見本帳2Aの複数の触感見本シート3Aのそれぞれを、選択したテクスチャ見本シート5Aに重ね、この状態での触感見本シート3Aの触感を確認し、テクスチャ見本シート5Aに適した触感を評価する。
【0059】
補足として、評価者は、テクスチャ見本帳4Aを使用することなく、触感見本帳2Aの複数の触感見本シート3Aのそれぞれを対象物(一例として
図7の対象物100参照)に重ね、この状態での触感見本シート3Aの触感を確認し、対象物に適した触感を評価することもできる。
【0060】
ここで、「対象物(テクスチャ見本シート)に適した触感を評価する」とは、例えば、触感見本シートを対象物に重ねた状態で感性評価を行って複数の触感見本シートの中から好適な触感見本シートを選択する場合や、複数の触感見本シートを用いながら、対象物に対して相性の良い触感の傾向を特定する場合等を広く含む。より、具体的には、評価者は、テクスチャ見本シート5Aに対する触感見本シート3Aの触感について、指や肌で触れて確認し、相性なども踏まえて、硬さ、柔らかさ、心地よさ等を総合的に判断し、テクスチャ見本シート5Aに適した触感を評価することができる。また、評価者は、例えば、上述の感性評価の手法に従って、この評価を行うこともできる。
【0061】
また、「対象物」とは、製品等を想定したサンプルや模型を広く含み、完成形としての製品の形状等をそのまま模した形状であっても、その形状の一部分であっても良い。また、「製品等」とは、売買の対象となる商品等に限定されず、社内でのみ使用される有体物や開発段階での試作品なども広く含む。
【0062】
本実施形態に係る触感見本システム1Aを用いた触感評価方法によれば、対象物(テクスチャ見本シート5A含む)に応じた触感見本シート3Aの触感を確認することができる。その結果、対象物に適した触感を評価できる。
【0063】
特に、本実施形態は、触感見本シート3Aを用いた触感評価方法であり、手触りなどで触感を比べながら製品等に適した触感の触感見本シート3Aを評価できるので、例えば、視覚障碍者であっても製品等に適した触感を評価できる。従って、視覚障碍者にとっての快適な商品や環境の提供にも有利になる。
【0064】
また、本実施形態に係る触感見本シート3Aは光透過性を有する。従って、触感見本シート3Aをテクスチャ見本シート5Aに重ねると、テクスチャ見本シート5Aの色や模様等が透けて見える。その結果、本実施形態に係る触感見本システム1Aによれば、触感見本シート3Aの触感のみならず、透けて見えるテクスチャ見本シート5Aの色味も含めた複合的な評価、つまり、色味及び触感の複合評価を行うことができる。
【0065】
また、触感見本シート3Aは破断誘導構造37を備えており、テクスチャ見本シート5Aは破断誘導構造57を備えている。触感見本シート3Aは、破断誘導構造37に沿って分割可能であり、この分割によって一又は複数の見本片31A(触感見本片)を切り離すことができる。また、テクスチャ見本シート5Aは、破断誘導構造57に沿って分割可能であり、この分割によって一又は複数の見本片51(テクスチャ見本片)を切り離すことができる。その結果、触感見本片31Aを対象物やテクスチャ見本片51に重ねながら触感を確認することができ、対象物やテクスチャ見本片51に適した触感を評価できる(
図5参照)。特に、触感見本片31Aは透光性を有しているので、対象物やテクスチャ見本片51に重ねた状態で、対象物等の色味を確認しながら触感の評価を行うことができる。
【0066】
次に、他の一実施形態に係る触感見本システム1Bについて、
図6及び
図7を参照して説明する。触感見本システム1Bは、複数の触感見本シート3Bを備えた触感見本帳(図示省略)を備えている。触感見本シート3Bは、上述の実施形態に係る触感見本シート3Aと同様の構造を備えており、基材32と基材32上に印刷された印刷部33とを備え、光透過性を有する。また、触感見本シート3Bは、上述同様、印刷部33を設けることなく、各種の方法によって所望の触感を実現した構造であっても良い。
【0067】
触感見本シート3Bの基材には、粘着層38を介して剥離紙39が接着されている。剥離紙39は触感が調整された印刷部33とは反対側に面に設けられている。剥離紙39は粘着層38を保護する機能を有し、基材32に対して剥離可能である。触感見本シート3Bは破断誘導構造37を備えており、触感見本シート3Bは、複数の見本片31Bに分割可能である。
【0068】
次に、本実施形態に係る触感見本システム1Bを用いて触感を確認する触感評価方法について説明する。触感見本システム1Bは、複数の触感見本シート3Bを備えている。触感見本シート3Bを使用する際、評価者は、複数の触感見本シート3Bそれぞれから適宜に見本片31Bを切り離しながら剥離紙39を剥がす。次に、評価者は、見本片31Bのそれぞれを、対象物100に重ねるように貼付し、対象物100に重ねた状態での見本片31Bの触感を確認し、対象物100に適した触感を評価する。また、見本片31Bは、光透過性を有しているので、見本片31Bを対象物100に重ねた状態で、対象物100の印刷物等の色味が透けて見える。その結果、対象物100に対する触感見本シート3Bの評価を、触感のみならず、色味も含めて複合的に評価できる。
【0069】
次に、他の一実施形態に係る触感見本システム1Cについて、
図8を参照して説明する。触感見本システム1Cは、触感見本帳2Cを備えており、触感見本帳2Cは、テクスチャ見本部5Cが設けられた台紙2cと、台紙2cに貼り付けられた複数の触感見本シート3Cとを備えている。複数の触感見本シート3Cは、上記の実施形態に係る触感見本シート3Cと同様の構造を備え、それぞれ異なる触感となるように調整されている。テクスチャ見本部(テクスチャ見本の一例)5Cは、製品等を想定して色、模様及び質感の少なくとも一を印刷等で表現した部分であり、台紙2cに直接設けてもよいし、台紙2cとは別のテクスチャ見本シートを貼り付けて形成しても良い。本実施形態では、台紙2cに一種類のテクスチャ見本部5Cを設けているが、色や模様が異なる複数種類のテクスチャ見本部5Cを設けても良い。
【0070】
触感見本シート3Cは、テクスチャ見本部5Cに重なるように配置されている。また、触感見本シート3Cのテクスチャ見本部5Cに重なっていない一部分は、台紙2cに接着(固定)されている。その結果、触感見本シート3Cは、台紙2cに接着されている一部分を支点として、テクスチャ見本部5Cに重なる部分を捲って台紙2cから離間させることができる。
【0071】
この触感見本システム1Cを用いて触感評価方法を実施する際、評価者は、複数の触感見本シート3Cのそれぞれを、テクスチャ見本部5Cに重ね、テクスチャ見本部5Cに重ねた状態での触感見本シート3Cの触感を確認し、テクスチャ見本部5Cに適した触感を評価する。更に、触感見本シート3Cは、光透過性を有しているので、触感見本シート3Cをテクスチャ見本部5Cに重ねた状態で、テクスチャ見本部5Cの印刷物等の色味が透けて見える。その結果、テクスチャ見本部5Cに対する触感見本シート3Cの評価を、触感のみならず、色味も含めて複合的に評価できる。
【0072】
次に、他の実施形態に係る触感見本システム1D、1Eについて、
図9を参照して説明する。触感見本システム1D(
図9の(a)図参照)は、触感見本帳2Dを備えている。触感見本帳2Dは、複数の異なる触感の触感見本シート3Dと、触感見本シート3Dを収容する容器6とを備えている。触感見本シート3Dは上記の実施形態に係る触感見本シート3Dと同様の構造を備え、また、複数の触感見本シート3Dは、連結部等で一体化することなく、それぞれ独立している。
【0073】
また、触感見本システム1E(
図9の(b)図参照)は、触感見本帳2Eを備えている。触感見本帳2Cは、複数の触感見本ブロック22と、複数の触感見本ブロック22を収容する容器6とを備えている。触感見本ブロック22は、複数の触感見本シート3Eを積層して形成されており、複数の触感見本シート3Eは、互いに剥離可能に接着されている。一の触感見本ブロック22を形成する複数の触感見本シート3Eの触感は同一である。また、異なる触感見本ブロック22同士を比較した場合、一の触感見本ブロック22を形成する触感見本シート3Eの触感は、他の触感見本ブロック22を形成する触感見本シート3Eの触感に対して異なっている。なお、一の触感見本ブロック22を形成する触感見本シート3Eの触感を、それぞれ異なるように形成してもよい。
【0074】
この触感見本システム1D、1Eを用いて触感評価方法を実施する際、評価者は、複数の触感見本シート3D、3Eのそれぞれを、対象物に重ね、対象物に重ねた状態での触感見本シート3D、3Eの触感を確認し、対象物に適した触感を評価する。更に、触感見本シート3D、3Eは、光透過性を有しているので、触感見本シート3D、3Eを対象物に重ねた状態で、対象物の印刷物等の色味が透けて見える。その結果、対象物に対する触感見本シート3D、3Eの評価を、触感のみならず、色味も含めて複合的に評価できる。
【0075】
次に、他の実施形態に係る触感見本システム1Fについて、
図10を参照して説明する。触感見本システム1Fは、触感見本帳2Fを備えている。触感見本帳2Fは、所定のテクスチャ見本部が設けられた台紙2fと、テクスチャ見本部に重なるように台紙2f上に貼付された複数の触感見本シート3Fとを備えている。複数の触感見本シート3Fは、例えば、基材32(
図3参照)上に設けられたフィラーによって触感を調製されている。一枚の台紙2fには、異なる触感の複数の触感見本シート3Fが2次元的に区別されながら規則的に配置されている。具体的には、X軸方向(縦)に沿うように複数の触感見本シート3Fが並んで配置されており、また、Y軸方向(横)に沿うように複数の触感見本シート3Fが並んで配置されている。そして、X軸とY軸との交差位置に相当する位置(
図10の(a)図では最左列で最下段)の触感見本シート3Fは基準となる触感見本シート3Fである。
【0076】
縦横に並んだ複数の触感見本シート3Fのうち、X軸方向に並んだ複数の触感見本シート3Fは、基準となる触感見本シート3Fから離れる程、フィラーの量が多くなっている。また、Y軸方向に並んだ複数の触感見本シート3Fは、基準となる触感見本シート3Fから離れる程、フィラーの径が大きくなっている。
【0077】
また、触感見本システム1Fは、複数の触感見本帳2Fを3次元的に配置することも可能である。触感見本帳2Fは、テクスチャ見本部が形成された台紙2fと、台紙2f上に規則的に配置された複数の触感見本シート3Fを備えている。一枚の台紙2fにおいて、複数の触感見本シート3Fの2次元的な配置の規則性は、
図10の(a)図に示された触感見本帳2Fに共通する。一方で、複数の触感見本帳2Fの台紙2fそれぞれのテクスチャ見本部は、色、模様及び質感の少なくとも一が異なる。そして、
図10の(b)図に示されるように、テクスチャ見本部の相違をZ軸と仮定し、複数の触感見本帳2Fを3次元的に扱うことも可能である。
【0078】
次に、他の実施形態に係る触感見本システム1Gについて、
図11を参照して説明する。触感見本システム1Gは、触感見本帳2Gを備えている。触感見本帳2Gは、所定のテクスチャ見本部が設けられた台紙2gと、テクスチャ見本部に重なるように台紙2g上に貼付された複数の触感見本シート3Gとを備えている。触感見本シート3Gは、例えば、基材32(
図3参照)上に設けられたフィラーによって触感を調製されており、複数の触感見本シート3Gは、異なる触感を有する。また、本実施形態に係る触感見本シート3Gは、複数の見本部3a、3b、3cを備えており、見本部3a、3b、3cは、それぞれ異なる触感を有する。
【0079】
一枚の台紙2g上には、複数の触感見本シート3Gが2次元的に区別されながら規則的に配置されている。具体的には、複数の触感見本シート3Gは、扇状に並んで配置されており、時計回り方向を基準とした場合の上流側に配置された触感見本シート3Gよりも、下流側に配置された触感見本シート3Gの方が、フィラーの量が多くなっている。また、上記の時計回り方向を回転方向と仮定し、それぞれの触感見本シート3Gを見た場合に、遠心方向内寄りの見本部3cのフィラーの径の大きさよりも、遠心方向外寄りの見本部3aのフィラーの径の大きさの方が大きくなっている。
【0080】
また、触感見本システム1Gは、複数の触感見本帳2Gを3次元的に配置することも可能である。触感見本帳2Gは、テクスチャ見本部が形成された台紙2gと、台紙2g上に規則的に配置された複数の触感見本シート3Gを備えている。一枚の台紙2gにおいて、複数の触感見本シート3Gの2次元的な配置の規則性は、
図11の(a)図に示された触感見本帳2Gに共通する。一方で、複数の触感見本帳2Gの台紙2gそれぞれのテクスチャ見本部は、色、模様及び質感の少なくとも一が異なる。そして、
図11の(b)図に示されるように、複数の触感見本帳2Gを3次元的に扱うことも可能である。
【0081】
この触感見本システム1F、1Gを用いて触感評価方法を実施する際、評価者は、テクスチャ見本部に重ねられた状態での複数の触感見本シート3F、3Gの触感を確認し、テクスチャ見本部に適した触感を評価する。更に、触感見本シート3Cは、光透過性を有しているので、触感見本シート3F、3Gをテクスチャ見本部に重ねた状態で、テクスチャ見本部の印刷物等の色味が透けて見える。その結果、テクスチャ見本部に対する触感見本シート3F、3Gの評価を、触感のみならず、色味も含めて複合的に評価できる。
【0082】
上記の各実施形態に係る触感見本システム1A~1Gでは、複数の触感見本シート3A~3Gを、それぞれ対象物100等に重ねながら、触感見本シート3A~3Gの触感を確認することができる。その結果、対象物100等に適した触感を評価できる。
【0083】
また、触感見本シート3A~3Gが光透過性を有する形態によれば、対象物等に重ねた状態で、対象物等の色味を確認しながら触感の確認を行うことができる。その結果、触感見本シートを使用した簡便な方法で、色味と触感とを複合的に評価し、例えば、製品のイメージを確認することができる。
【0084】
また、各実施形態に係る触感見本システム1A~1Gにおいて、適宜にテクスチャ見本シート5A(テクスチャ見本帳)やテクスチャ見本部5Cを備えた形態にすることができる。そして、製品等を想定した対象物としてテクスチャ見本シート5Aやテクスチャ見本部5Cを利用することにより、製品等に適した触感を評価し易くなる。
【0085】
また、複数のテクスチャ見本シート5Aや複数のテクスチャ見本部5Cを備え、且つ、複数のテクスチャ見本シート5Aやテクスチャ見本部5Cが、それぞれ色、模様及び質感の少なくとも一が異なる形態にすることもできる。このような形態によれば、複数のテクスチャ見本シート5Aやテクスチャ見本部5Cの中から、製品等を想定した好適なテクスチャ見本シート5Aやテクスチャ見本部5Cを選択し易くなる。
【0086】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。例えば、各実施形態に係る触感見本シートにおいて触感の調整は、印刷部に塗布されたインク(コーティング剤含む)によって行われたり、基材の表面に塗布された粒状物のサイズや配置等によって行われたり、物理的な加工によって行われたり、ポリマブレンドによって行われたり、触感が調製されたフィルムを基材に貼り合わせることによって行われたりすることができる。また、各実施形態に記載の構造や要素を他の実施形態に適宜に組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0087】
1A~1G…触感見本システム、3A~3G…触感見本シート、5A…テクスチャ見本シート(テクスチャ見本)、5C…テクスチャ見本部(テクスチャ見本)、32…基材、33…印刷部、21…連結部、31A…見本片、37…破断誘導構造、100…対象物。