(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】位相差フィルム
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20230117BHJP
C08F 297/04 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
G02B5/30
C08F297/04
(21)【出願番号】P 2018225494
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅田 毅
(72)【発明者】
【氏名】摺出寺 浩成
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健作
【審査官】藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-142561(JP,A)
【文献】国際公開第2015/002020(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B29C 48/305
B29C 55/04
C08F 297/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合単位Aと重合単位Bとを含む共重合体Pを含む樹脂Cからなり、
前記重合単位Aは、下記一般式(A)で表される単位であり、
前記重合単位Bは、下記一般式(B-1)又は一般式(B-2)で表される単位であり、
構造性複屈折を発現する、ラメラ状の相分離構造を含み、
前記相分離構造は、前記重合単位Aを主成分とする相(A)と、前記重合単位Bを主成分とする相(B)とを含み、
下記式(1)及び(2)を満たす、位相差フィルム。
f(B)>0.5 (1)
D(A)>D(B) (2)
ここで、f(B)は、前記共重合体Pにおける、前記重合単位Bの総重量比率を表し、
D(A)=ReA(450)/ReA(550)であり、
D(B)=ReB(450)/ReB(550)であり、
ReA(450)は、前記重合単位Aからなる重合体(A)から形成されたフィルム(A)の、波長450nmで測定された面内方向レターデーション(nm)を表し、
ReA(550)は、前記フィルム(A)の、波長550nmで測定された面内方向レターデーション(nm)を表し、
前記フィルム(A)は、前記重合体(A)の粉体を2枚のポリイミドフィルムの間に挟んで積層体とし、前記積層体を、温度280℃、圧力40MPa、2分間の条件で加圧してから前記ポリイミドフィルムを除去して厚み100μmのプレスフィルム(A)を製造し、次いで、前記プレスフィルム(A)を1.5倍に一軸延伸することにより製造され、
ReB(450)は、前記重合単位Bからなる重合体(B)から形成されたフィルム(B)の、波長450nmで測定された面内方向レターデーション(nm)を表し、
ReB(550)は、前記フィルム(B)の、波長550nmで測定された面内方向レターデーション(nm)を表
し、
前記フィルム(B)は、前記重合体(B)の粉体を2枚のポリイミドフィルムの間に挟んで積層体とし、前記積層体を、温度25℃、圧力20MPa、2分間の条件で加圧してから前記ポリイミドフィルムを除去して厚み100μmのプレスフィルム(B)を製造し、次いで、前記プレスフィルム(B)を3倍に一軸延伸することにより製造される。
【化1】
(前記一般式(A)において、
R
C
は、フェニル基、ビフェニルイル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ナフタセニル基、ペンタセニル基、及びターフェニルイル基からなる群より選択される基であり、
R
1
~R
3
のそれぞれは独立に、水素原子及び炭素数1~12のアルキル基からなる群より選択される基である。)
【化2】
(前記一般式(B-1)及び一般式(B-2)において、
R
4
~R
9
のそれぞれは独立に、水素原子及び炭素数1~6のアルキル基からなる群より選択される基である。)
【請求項2】
更に下記式(3)を満たす、請求項1に記載の位相差フィルム。
D(A)≧1.06 (3)
【請求項3】
更に下記式(4)を満たす、請求項1又は2に記載の位相差フィルム。
(D(A)-D(B))≧0.04 (4)
【請求項4】
波長550nmで測定された面内方向レターデーションRe(550)が、0nm以上10nm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
【請求項5】
波長450nmで測定された厚み方向レターデーションRth(450)の、波長550nmで測定された厚み方向レターデーションRth(550)に対する比率(Rth(450)/Rth(550))が、0以上1未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
【請求項6】
前記厚み方向レターデーションRth(450)の、前記厚み方向レターデーションRth(550)に対する比率(Rth(450)/Rth(550))が、0.75以上0.95以下である、請求項5に記載の位相差フィルム。
【請求項7】
前記ラメラ状の相分離構造における前記相(A)及び前記相(B)の厚みが、それぞれ50nm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
【請求項8】
前記重合体(A)の屈折率n(a)と前記重合体(B)の屈折率n(b)との差の絶対値(|n(a)-n(b)|)が、0.05以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
【請求項9】
前記相分離構造における相間距離が、200nm以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
【請求項10】
前記共重合体Pが、前記重合単位Aを主成分とするブロック(A)及び前記重合単位Bを主成分とするブロック(B)を有するブロック重合体である、請求項1~9のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
【請求項11】
前記共重合体Pが、トリブロック共重合体P’を含み、前記トリブロック共重合体P’は、前記重合単位Aを主成分とするブロック(A)及び前記重合単位Bを主成分とするブロック(B)を有する、(A)-(B)-(A)トリブロック共重合体である、請求項1~10のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
【請求項12】
前記共重合体Pが、ペンタブロック共重合体P”を含み、前記ペンタブロック共重合体P”は、前記重合単位Aを主成分とするブロック(A)及び前記重合単位Bを主成分とするブロック(B)を有する、(A)-(B)-(A)-(B)-(A)ペンタブロック共重合体である、請求項1~11のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の位相差フィルムの製造方法であって、
前記樹脂Cを、プレス加工法により加工することを含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などの表示装置において、その表示品質の向上のために、様々な種類の位相差フィルムが設けられることがある。位相差フィルムとしては、多層構造を有するフィルム(特許文献1、2)、ラメラ構造を有するブロック共重合体を用いたフィルム(特許文献3)が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-013378号公報
【文献】国際公開第2008/146924号
【文献】特開平05-164920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2のフィルムは、多数の層を組み合わせて所望の光学的特性を発現させているため、構造が複雑であり、位相差フィルムの製造コストが高く、また生産性も低くなる。
【0005】
また、透過させる光の波長により、位相差フィルムの光学的特性が大きく変化しないことが望ましく、そのために、位相差フィルムは逆波長分散性を有することが望ましい。ここで、逆波長分散性とは、Rth(450)/Rth(550)<1であるようなフィルムの特性をいう。ここで、Rth(450)は、波長450nmで測定されたフィルムの厚み方向のレターデーションを意味し、Rth(550)は、波長550nmで測定されたフィルムの厚み方向のレターデーションを意味する。
【0006】
したがって、逆波長分散性を有し、低いコストで容易に製造することができる位相差フィルムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するべく、鋭意検討した。その結果、特定の共重合体Pを含む樹脂を用いて構造性複屈折を発現するラメラ状の相分離構造を構成することにより、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
【0008】
[1] 重合単位Aと重合単位Bとを含む共重合体Pを含む樹脂Cからなり、
構造性複屈折を発現する、ラメラ状の相分離構造を含み、
前記相分離構造は、前記重合単位Aを主成分とする相(A)と、前記重合単位Bを主成分とする相(B)とを含み、
下記式(1)及び(2)を満たす、位相差フィルム。
f(B)>0.5 (1)
D(A)>D(B) (2)
ここで、f(B)は、前記共重合体Pにおける、前記重合単位Bの総重量比率を表し、
D(A)=ReA(450)/ReA(550)であり、
D(B)=ReB(450)/ReB(550)であり、
ReA(450)は、前記重合単位Aからなる重合体(A)から形成されたフィルム(A)の、波長450nmで測定された面内方向レターデーション(nm)を表し、
ReA(550)は、前記フィルム(A)の、波長550nmで測定された面内方向レターデーション(nm)を表し、
ReB(450)は、前記重合単位Bからなる重合体(B)から形成されたフィルム(B)の、波長450nmで測定された面内方向レターデーション(nm)を表し、
ReB(550)は、前記フィルム(B)の、波長550nmで測定された面内方向レターデーション(nm)を表す。
[2] 更に下記式(3)を満たす、[1]に記載の位相差フィルム。
D(A)≧1.06 (3)
[3] 更に下記式(4)を満たす、[1]又は[2]に記載の位相差フィルム。
(D(A)-D(B))≧0.04 (4)
[4] 波長550nmで測定された面内方向レターデーションRe(550)が、0nm以上10nm以下である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
[5] 波長450nmで測定された厚み方向レターデーションRth(450)の、波長550nmで測定された厚み方向レターデーションRth(550)に対する比率(Rth(450)/Rth(550))が、0以上1未満である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
[6] 前記厚み方向レターデーションRth(450)の、前記厚み方向レターデーションRth(550)に対する比率(Rth(450)/Rth(550))が、0.75以上0.95以下である、[5]に記載の位相差フィルム。
[7] 前記ラメラ状の相分離構造における前記相(A)及び前記相(B)の厚みが、それぞれ50nm以下である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
[8] 前記重合体(A)の屈折率n(a)と前記重合体(B)の屈折率n(b)との差の絶対値(|n(a)-n(b)|)が、0.05以上である、[1]~[7]のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
[9] 前記相分離構造における相間距離が、200nm以下である、[1]~[8]のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
[10] 前記共重合体Pが、前記重合単位Aを主成分とするブロック(A)及び前記重合単位Bを主成分とするブロック(B)を有するブロック重合体である、[1]~[9]のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
[11] 前記共重合体Pが、トリブロック共重合体P’を含み、前記トリブロック共重合体P’は、前記重合単位Aを主成分とするブロック(A)及び前記重合単位Bを主成分とするブロック(B)を有する、(A)-(B)-(A)トリブロック共重合体である、[1]~[10]のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
[12] 前記共重合体Pが、ペンタブロック共重合体P”を含み、前記ペンタブロック共重合体P”は、前記重合単位Aを主成分とするブロック(A)及び前記重合単位Bを主成分とするブロック(B)を有する、(A)-(B)-(A)-(B)-(A)ペンタブロック共重合体である、[1]~[11]のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、逆波長分散性を有し、低いコストで容易に製造することができる位相差フィルムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0011】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。フィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
【0012】
以下の説明において、「板」とは、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
【0013】
以下の説明において、フィルムの面内方向レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。また、フィルムの厚み方向のレターデーションRthは、別に断らない限り、Rth=[{(nx+ny)/2}-nz]×dで表される値である。ここで、nxは、フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、フィルムの前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。nzはフィルムの厚み方向の屈折率を表す。dは、フィルムの厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、550nmである。
【0014】
樹脂の固有複屈折値の正負は、樹脂の成形物を延伸した場合における、かかる成形物の屈折率の挙動によって規定される。即ち、正の固有複屈折値を有する樹脂とは、延伸方向における当該成形物の屈折率が、延伸前に比べて大きくなる樹脂である。また、負の固有複屈折値を有する樹脂とは、延伸方向における当該成形物の屈折率が、延伸前に比べて小さくなる樹脂である。固有複屈折値は、誘電率分布から計算しうる。
【0015】
更に、ある特定の重合単位が正の固有複屈折値を有するとは、当該重合単位のみからなる重合体が、正の固有複屈折値を有することをいい、ある特定の重合単位が負の固有複屈折値を有するとは、当該重合単位のみからなる重合体が、負の固有複屈折値を有することをいう。したがって、重合単位の固有複屈折値の正負は、当該重合単位のみからなる単独重合体を調製し、当該重合体を任意の形状の成形物とし、当該成形物を延伸し、その光学特性を測定することにより容易に判定しうる。一般に、アルケン、ジエン等の炭化水素の重合単位の多くは正の固有複屈折値を有することが知られている一方、スチレン、ビニルナフタレン等の側鎖に芳香環を有する炭化水素の重合体の多くは負の固有複屈折値を有することが知られている。
【0016】
以下の説明において、あるフィルムの正面方向とは、別に断らない限り、当該フィルムの主面の法線方向を意味し、具体的には前記主面の極角0°且つ方位角0°の方向を指す。
【0017】
以下の説明において、あるフィルムの傾斜方向とは、別に断らない限り、当該フィルムの主面に平行でも垂直でもない方向を意味し、具体的には前記主面の極角が0°より大きく90°より小さい範囲の方向を指す。
【0018】
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±3°、±2°又は±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0019】
[1.位相差フィルム]
本実施形態の位相差フィルムは、樹脂Cからなる。
【0020】
[1.1.樹脂C]
樹脂Cは、特定の共重合体Pを含有する。共重合体Pは、重合単位Aと重合単位Bとを含む。共重合体Pは、好ましくは、重合単位Aを主成分とするブロック(A)、及び重合単位Bを主成分とするブロック(B)を有するブロック共重合体である。一般に、ブロック共重合体とは、複数種類のブロックが連結された分子構造を有する重合体であり、それぞれのブロックは、重合単位が連結することにより構成される鎖である。本発明の一実施形態における特定のブロック共重合体は、特定のブロック(A)及びブロック(B)を有する。以下の説明においては、かかる特定のブロック共重合体を、単に「ブロック共重合体」という場合がある。ここで、あるブロックにおいて主成分である重合単位とは、当該ブロックを構成する重合単位の全重量に対して、50重量%以上である重合単位をいう。
【0021】
重合単位Aは、負の固有複屈折値を有するものとしうる。一方、重合単位Bは、正の固有複屈折値を有するものとしうる。
【0022】
重合単位Aの例としては、下記一般式(A)で表される単位が挙げられる。
【0023】
【0024】
RCは、フェニル基、ビフェニルイル基(例、4-ビフェニルイル基、2-ビフェニルイル基、3-ビフェニルイル基)、ナフチル基(例、1-ナフチル基、2-ナフチル基)、アントラセニル基(例、アントラセン-1-イル基、アントラセン-2-イル基、アントラセン-9-イル基)、フェナントレニル基(例、フェナントレン-1-イル基、フェナントレン-2-イル基、フェナントレン-3-イル基、フェナントレン-4-イル基、フェナントレン-9-イル基)、ナフタセニル基(例、ナフタセン-1-イル基、ナフタセン-2-イル基、ナフタセン-5-イル基)、ペンタセニル基(例、ペンタセン-1-イル基、ペンタセン-2-イル基、ペンタセン-5-イル基、ペンタセン-6-イル基)、及びターフェニルイル基からなる群より選択される基である。
【0025】
R1~R3のそれぞれは独立に、水素原子及び炭素数1~12のアルキル基からなる群より選択される基である。かかるアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及びヘキシル基が挙げられる。
式(A)においては、
好ましくは、R1が水素原子である。
好ましくは、R2及びR3が水素原子である。
好ましくは、RCがナフチル基である。
より好ましくは、R2及びR3が水素原子であり且つRCがナフチル基であるか、又は、R2及びR3が水素原子であり且つR1が水素原子である。更に好ましくは、R2及びR3が水素原子であり、RCがナフチル基であり、且つR1が水素原子である。
【0026】
重合単位Aは、重合単位Aを与える単量体(a)を重合させることにより得うる。単量体(a)の例としては、ビニルナフタレン及びその誘導体が挙げられる。ビニルナフタレンの例としては、1-ビニルナフタレン、及び2-ビニルナフタレンが挙げられる。ビニルナフタレンの誘導体の例としては、α-メチル-1-ビニルナフタレン、α-エチル-1-ビニルナフタレン、α-プロピル-1-ビニルナフタレン、α-ヘキシル-1-ビニルナフタレン、α-メチル-2-ビニルナフタレン、α-エチル-2-ビニルナフタレン、α-プロピル-2-ビニルナフタレン、及びα-ヘキシル-2-ビニルナフタレンが挙げられる。ビニルナフタレン及びその誘導体としては、工業的な入手の容易性の観点から、2-ビニルナフタレンが好ましい。
共重合体Pは、重合単位Aとして1種のみを単独で有していてもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて有していてもよい。したがって、重合単位Aを形成するための単量体(a)としては、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
【0027】
重合単位Bの例としては、下記一般式(B-1)及び(B-2)で表される単位が挙げられる。
【0028】
【0029】
R4~R9のそれぞれは独立に、水素原子及び炭素数1~6のアルキル基からなる群より選択される基である。かかるアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及びヘキシル基が挙げられる。R4~R9のそれぞれは独立に、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0030】
重合単位Bは、重合単位Bを与えうる単量体(b)を重合させて重合単位とし、更に当該重合単位中に二重結合が存在する場合はそれを水素化することにより得うる。単量体(b)の例としては、下記一般式(bm)で表される化合物が挙げられる。
【0031】
【0032】
単量体(b)の好ましい例としては、ブタジエン(式(bm)におけるR4~R9の全てが水素原子)、イソプレン(式(bm)におけるR4~R9のうちR6又はR7がメチル基で他が水素原子)、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、及び2,4-ジメチル-1,3-ペンタジエンが挙げられる。その中でも、透明性、耐熱性、及び加工性に優れた樹脂Cを得る観点から、ブタジエン及びイソプレンがより好ましい。重合単位Bの好ましい例としては、R4~R9として、単量体(b)の好ましい例におけるR4~R9と同じものを有するものが挙げられる。
共重合体Pは、重合単位Bとして1種のみを単独で有していてもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて有していてもよい。したがって、重合単位Bを形成するための単量体(b)としては、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
【0033】
共重合体Pがブロック(A)を有する場合、ブロック(A)は、重合単位A以外に任意の重合単位を有しうる。かかる任意の重合単位の例としては、単量体(a)と共重合可能な任意の単量体の重合により形成される単位、及び当該単位の水素化により形成される単位が挙げられる。
共重合体Pがブロック(B)を有する場合、ブロック(B)は、重合単位B以外に任意の重合単位を有しうる。かかる任意の重合単位の例としては、単量体(b)が重合してなる重合単位であって水素化されていない二重結合が残存するもの、並びに単量体(b)と共重合可能な任意の単量体の重合により形成される単位及び当該単位の水素化により形成される単位が挙げられる。
ただし、樹脂Cの光学的特性及び機械的特性の発現の観点から、ブロック(A)における重合単位Aの割合及びブロック(B)における重合単位Bの割合はいずれも高いことが好ましい。ブロック(A)における重合単位Aの割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは75重量%以上、更に好ましくは95重量%以上であり、特に好ましくは、ブロック(A)は重合単位Aのみからなる。ブロック(B)における重合単位Bの割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは75重量%以上、更に好ましくは95重量%以上であり、特に好ましくは、ブロック(B)は重合単位Bのみからなる。
【0034】
ブロック(A)及びブロック(B)は、非相溶性であることが好ましい。これらが非相溶性であることにより、位相差フィルムにおいて相分離構造をより容易に得ることができる。ブロック(A)及びブロック(B)が非相溶性であるか否かは、ブロック共重合体におけるこれらのブロックの大きさと同程度の分子量を有する、重合単位Aからなる単独重合体及び重合単位Bからなる単独重合体の相溶性の有無に基づいて判定しうる。かかる単独重合体の相溶性の有無は、これらの単独重合体を混合して混合物とし、これらが溶融する温度においた場合に、これらが相分離するか否かにより判定しうる。
【0035】
共重合体Pの分子構造は、重合単位A及び重合単位Bを有する限りにおいて特に限定されず、任意の構成を有する分子構造としうる。例えば、共重合体Pがブロック共重合体である場合、当該ブロック共重合体は、直線型ブロック共重合体であってもよく、グラフト型ブロック共重合体であってもよい。
直線型ブロック共重合体の例としては、ブロック(A)及びブロック(B)が連結した(A)-(B)のブロック構成を有するジブロック共重合体;ブロック(A)、ブロック(B)及びもう一つのブロック(A)がこの順に連結した(A)-(B)-(A)のブロック構成を有するトリブロック共重合体(本願において、「トリブロック共重合体P’」という場合がある);3つのブロック(A)及び2つのブロック(B)が、(A)-(B)-(A)-(B)-(A)の順に連結したブロック構成を有する、ペンタブロック共重合体(本願において、「ペンタブロック共重合体P”」という場合がある);並びにそれより多数のブロックが連結したブロック構成を有する直線型ブロック共重合体が挙げられる。多数のブロックが連結したブロック構成の例としては、(A)-((B)-(A))n-(B)-(A)、及び(B)-((A)-(B))n-(A)-(B)(nは1以上の整数)のブロック構成が挙げられる。
グラフト型ブロック共重合体の例としては、ブロック(A)に、側鎖としてブロック(B)が連結した(A)-g-(B)のブロック構成を有するブロック共重合体が挙げられる。
【0036】
樹脂Cに所望の光学的特性を発現させる観点から、好ましくは、共重合体Pは、1分子あたり2個以上の重合体ブロック(A)および1個以上の重合体ブロック(B)を有する分子構造を有するブロック共重合体としうる。より好ましくは、ブロック共重合体は、(A)-(B)-(A)のブロック構成を有するトリブロック共重合体としうる。
【0037】
また別の実施形態では、ブロック共重合体は、好ましくは、(A)-(B)-(A)-(B)-(A)のブロック構成を有するペンタブロック共重合体としうる。
【0038】
樹脂Cは、共重合体Pとして1種のみを単独で含んでいてもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて含んでいてもよい。
【0039】
樹脂Cは、共重合体Pのみからなってもよく、共重合体Pに加えて任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分の例としては、染料、顔料、酸化防止剤等の添加剤が挙げられる。かかる任意の成分の割合は、本発明の効果を損ねない範囲の割合としうる。具体的には、樹脂Cにおける共重合体Pの割合は、好ましくは98重量%以上、より好ましくは99%以上であり、更により好ましくは、樹脂Cは共重合体Pのみからなる。
【0040】
[1.2.位相差フィルムに含まれる構造及び特性]
位相差フィルムは、構造性複屈折を発現する、ラメラ状の相分離構造を含む。相分離構造は、位相差フィルムを構成する樹脂Cの層内に形成される。樹脂Cの相分離構造とは、樹脂Cにおける共重合体Pの重合単位Aで構成される部分(例えばブロック(A))と重合単位Bで構成される部分(例えばブロック(B))の自己組織化により、層内において、重合単位Aを主成分とする相(相(A)ともいう。)と、重合単位Bを主成分とする相(相(B)ともいう。)とが、区別しうる別々の相に分離することをいう。以下の説明においては、これらの相を単に「重合単位Aの相」及び「重合単位Bの相」ということがある。ラメラ状の相分離構造とは、層状の相(A)と層状の相(B)とが交互に重なりあった構造を意味する。このような相分離構造を呈した配向層は、構造が光の波長よりも十分に小さい場合に構造性複屈折を発現しうる。
ここで、ある相において、主成分である重合単位とは、相を構成する重合単位の全重量に対して、50重量%以上含まれる重合単位をいう。
【0041】
相(A)を構成する重合単位の全重量に対して、重合単位Aは、好ましくは80重量%以上、より好ましくは95重量%以上、更に好ましくは99重量%以上であり、100重量%以下としうる。相(B)を構成する重合単位の全重量に対して、重合単位Bは、好ましくは80重量%以上、より好ましくは95重量%以上、更に好ましくは99重量%以上であり、100重量%以下としうる。
【0042】
共重合体Pが、重合単位Aを主成分とするブロック(A)と、重合単位Bを主成分とするブロック(B)とを有するブロック共重合体である場合、相(A)は通常ブロック(A)により構成され、相(B)は通常ブロック(B)により構成される。
【0043】
構造性複屈折とは、かかる相分離構造のように、異なる屈折率を有する複数種類の相を含む構造において生じる複屈折である。例えば、ある構造において、ある屈折率n1を持つ相中に、n1とは異なる屈折率n2を持つ相が存在する場合、当該構造は、構造性複屈折を発現しうる。構造性複屈折は、各相が等方的な媒質で形成されていても複屈折が生じるという点で、延伸による分子配向で生じる配向性複屈折とは明確に異なるものである。
【0044】
構造性複屈折が実際に生じていることは、フィルムの光学特性を測定することによって確認されうる。押出成形、プレス加工、溶剤キャスト等の常法で製膜した未延伸フィルムは通常、分子配向がランダムであるためRe及びRthがほぼゼロに近い値をとる。一方、構造性複屈折が発現している未延伸フィルムでは、常法で製膜した通常の未延伸フィルムで観察される値よりも大きな値のRe及びRthが観察される。したがって、かかる値の測定により、構造性複屈折の発現の確認を行いうる。ただし、電子顕微鏡やX線小角散乱による構造観察を併せて行うことにより、より確実な構造性複屈折の発現の確認を行いうる。
【0045】
位相差フィルムは、下記の式(1)を満たす。
f(B)>0.5 (1)
【0046】
ここで、f(B)は、共重合体Pにおける、重合単位Bの総重量比率を表す。共重合単位Pにおける重合単位Bの総重量比率とは、共重合体Pの重量に対する、共重合体Pに含まれる重合単位Bの総重量の比率をいう。
【0047】
f(B)は、共重合体PのNMRを測定することにより決定されうる。
【0048】
f(B)は、通常0.50より大きく、好ましくは0.55以上、より好ましくは0.60以上であり、好ましくは0.90以下、より好ましくは0.85以下、更に好ましくは0.80以下である。
f(B)は、共重合体Pの製造のための材料及び製造の操作を適宜調整することにより調整しうる。
【0049】
位相差フィルムは、更に下記の式(2)を満たす。
D(A)>D(B) (2)
ここで、D(A)=ReA(450)/ReA(550)であり、D(B)=ReB(450)/ReB(550)である。位相差フィルムが、式(1)及び式(2)を満たすことで、位相差フィルムが逆波長分散性を備えうる。
【0050】
ReA(450)は、重合単位Aからなる重合体(A)から形成されたフィルム(A)の、波長450nmで測定された面内方向レターデーション(nm)を表し、
ReA(550)は、フィルム(A)の、波長550nmで測定された面内方向レターデーション(nm)を表し、
ReB(450)は、重合単位Bからなる重合体(B)から形成されたフィルム(B)の、波長450nmで測定された面内方向レターデーション(nm)を表し、
ReB(550)は、フィルム(B)の、波長550nmで測定された面内方向レターデーション(nm)を表す。
【0051】
重合単位Aからなる重合体(A)は、重合単位Aに対応する単量体を重合させ、更に必要に応じて水素添加などの反応を行うことにより得られうる。重合単位Bからなる重合体(B)は、重合単位Bに対応する単量体を重合させ、更に必要に応じて水素添加などの反応を行うことにより得られうる。共重合体Pがブロック(A)及びブロック(B)を有する場合、重合体(A)及び重合体(B)はそれぞれ、ブロック(A)及びブロック(B)の製造方法と同様にして得られうる。
【0052】
フィルム(A)は、例えば、次のとおりにして製造しうる。まず、重合体(A)を破砕して粉体とし、粉体を2枚のポリイミドフィルムの間に挟んで積層体とし、積層体を加圧してからポリイミドフィルムを除去して厚み100μmのプレスフィルム(A)を製造する。加圧の条件は、温度280℃、圧力40MPa、時間2分間としうる。次いで、プレスフィルム(A)を1.5倍に一軸延伸することによりフィルム(A)が得られる。
【0053】
フィルム(B)は、例えば、次のとおりにして製造しうる。まず重合体(B)を破砕して粉体とし、粉体を2枚のポリイミドフィルムの間に挟んで積層体とし、積層体を加圧してからポリイミドフィルムを除去して厚み100μmのプレスフィルム(B)を製造する。加圧の条件は、温度25℃、圧力20MPa、時間2分間としうる。次いで、プレスフィルム(B)を3倍に一軸延伸することによりフィルム(B)が得られる。
【0054】
位相差フィルムは、下記式(3)を満たすことが好ましい。
D(A)≧1.06 (3)
D(A)は、好ましくは1.06以上、より好ましくは1.07以上、更に好ましくは1.08以上であり、1.20以下としうる。D(A)の範囲が前記範囲にあることで、より効果的に位相差フィルムに逆波長分散性を付与しうる。
【0055】
位相差フィルムは、下記式(4)を満たすことが好ましい。
(D(A)-D(B))≧0.04 (4)
(D(A)-D(B))は、好ましくは0.04以上、より好ましくは0.05以上であり、0.10以下としうる。(D(A)-D(B))の範囲が前記範囲にあることで、より効果的に位相差フィルムに逆波長分散性を付与しうる。
【0056】
相(A)と、相(B)との屈折率差は大きければ大きいほど構造性複屈折を効率良く発現することが可能である。したがって、重合単位Aからなる重合体(A)の屈折率n(a)と、重合単位Bからなる重合体(B)の屈折率n(b)との差の絶対値(|n(a)-n(b)|)は大きい方が好ましく、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、更により好ましくは0.14以上としうる。
【0057】
屈折率n(a)は、重合体(A)から前記のとおりプレスフィルム(A)を製造し、プレスフィルム(A)の屈折率を測定することにより得うる。屈折率n(b)は、重合体(B)から前記のとおりプレスフィルム(B)を製造し、プレスフィルム(B)の屈折率を測定することにより得うる。
【0058】
相(A)及び相(B)の厚みは、それぞれ50nm以下であることが好ましい。このようにラメラ状の相分離構造における相(A)及び相(B)の厚みが薄いことにより、相分離構造が構造性複屈折を十分に発現できる。相(A)及び相(B)の厚みは、0nmより大きく、例えば10nm以上としうる。
【0059】
ラメラ状の相分離構造における相間距離は、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、更に好ましくは100nm以下であり、0nmより大きく、例えば10nm以上としうる。相間距離とは、ラメラとラメラとの間の間隔(すなわち、ラメラの層の繰り返し単位のピッチ)をいう。相間距離としては、小角X線散乱の測定で得られた散乱パターンを理論曲線とフィッティングして求められた値を採用しうる。
相間距離の調整は、共重合体Pの分子構造を調整することにより行いうる。例えば共重合体Pとしてブロック共重合体を採用し、ブロック(A)及び(B)の長さ等の要素を適宜調整することにより行いうる。
【0060】
相分離構造における相間距離、及び相(A)及び(B)の厚みがこのように可視光よりも十分に小さいことにより、構造複屈折が発現しうる。また、フィルムの着色及び光線透過率の低下を抑制することができる。
【0061】
位相差フィルムは、波長550nmで測定された面内方向レターデーションRe(550)が、好ましくは0nm以上10nm以下である。位相差フィルムは、波長550nmで測定された厚み方向レターデーションRth(550)が、好ましくは80nm以上、より好ましくは90nm以上、更に好ましくは100nm以上であり、大きいほど好ましいが、300nm以下としうる。位相差フィルムは、好ましくはネガティブCプレートに近い特性を有する。これにより、位相差フィルムを例えばネガティブAプレートと組み合わせて、液晶表示装置の正面方向及び傾斜方向からの光漏れ、液晶表示装置を正面方向及び傾斜方向から観察した場合のカラーシフトを抑制しうる。ここで、ネガティブCプレートとは、フィルムの屈折率nx、ny、及びnzが、nx=ny>nzの関係にあるフィルムをいう。また、ネガティブAプレートとは、フィルムの屈折率nx、ny、及びnzが、ny<nx=nzの関係にあるフィルムをいう。
【0062】
波長450nmで測定された位相差フィルムの厚み方向レターデーションRth(450)の、波長550nmで測定された位相差フィルムの厚み方向レターデーションRth(550)に対する比率(Rth(450)/Rth(550))は、好ましくは、0以上、より好ましくは0.75以上であり、好ましくは1未満、より好ましくは0.95以下であり、好ましくは0以上1未満であり、より好ましくは0.75以上0.95以下である。比率(Rth(450)/Rth(550))が、前記範囲内に収まることで、透過させる光の波長により、位相差フィルムの光学的特性が大きく変化することを抑制しうる。
【0063】
[1.3.位相差フィルムの製造方法]
本実施形態の位相差フィルムは、樹脂Cから従前公知の方法により製造されうる。製造方法の例としては、押出成形法、プレス加工法、及び溶剤キャスト法が挙げられる。中でも、ラメラ状の相分離構造を発現しやすくする観点から、プレス加工法が好ましい。
【0064】
プレス加工法における条件は、樹脂Cの熱軟化温度、分解温度、相転移温度などの特性により適宜設定されうる。プレス加工における温度は、好ましくは200℃以上、より好ましくは210℃以上、更に好ましくは230℃以上であり、好ましくは300℃以下、より好ましくは290℃以下、更に好ましくは280℃以下である。プレス加工における圧力は、好ましくは10MPa以上、より好ましくは20MPa以上、更に好ましくは30MPa以上であり、好ましくは100MPa以下、より好ましくは90MPa以下、更に好ましくは80MPa以下である。プレス加工における加圧時間は、好ましくは60秒以上、より好ましくは90秒以上、更に好ましくは120秒以上であり、好ましくは300秒以下、より好ましくは240秒以下、更に好ましくは180秒以下である。
【0065】
プレス加工による樹脂Cの加工例を以下に示す。まず樹脂Cの粉体を、一対の耐熱性のあるフィルム(ポリイミドフィルムなど)の間に挟み、積層体を作製する。次いで、積層体を、例えば電熱加圧装置などの加工装置により加熱しながら加圧する。加圧終了後、圧を開放して室温まで冷却し、一対のフィルムを除去して、位相差フィルムを得る。
【0066】
[2.用途]
本実施形態の位相差フィルムは、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置等の表示装置の構成要素として用いうる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0068】
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0069】
[評価方法]
(フィルムのレターデーション)
位相差測定装置(王子計測機器(株)製「KOBRA-21-ADH」)を用いてフィルムのレターデーションを測定した。
【0070】
(相分離構造)
フィルムを2mm×4mmの大きさにカットし、それらを厚み方向に30枚重ねてフォルダに固定し、小角X線散乱測定施設(あいちSR、ビームライン8S3)を用い、カメラ長4m、X線エネルギー8.2KeV、測定qレンジ:約0.06~3nm-1、1試料あたりの露光時間60秒の条件で散乱パターンを得た。得られた散乱パターンを理論曲線とフィッティングして相分離構造を決定し、各相の厚み及び相間距離を算出した。
【0071】
X線の照射面は、フィルムの断面とし、積分範囲は厚み方向及び厚み方向に垂直な方向についてそれぞれ20°とした。それぞれの積分から得られたデータから相間距離を算出し、厚み方向と厚み方向に垂直な方向の相間距離の平均値及び相のそれぞれについての厚みの平均値を測定値とした。
【0072】
(Re(450)/Re(550)の測定)
(D(A)の測定)
(重合体(A)の製造)
乾燥し、窒素ガスで置換された耐圧反応器に、溶媒としてトルエン500mL、重合触媒としてn-ブチルリチウム0.29mmolを入れた後、単量体(a)として2-ビニルナフタレン7.0gを添加して25℃で1時間反応させ、重合反応を行った。反応混合物を大量の2-プロパノールに注いで、重合体を沈殿させ分取した。得られた重合体をゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定したところ重量平均分子量(Mw)は100000であった。熱機械的分析装置(TMA)により測定した重合体のガラス転移温度は145℃であった。
【0073】
(プレスフィルム(A)の製造)
得られた重合体を粉砕機により粉砕し粉体とした。得られた粉体を一対のポリイミドフィルム(各厚み100μm)の間に挟み積層体とし、積層体を加圧した。加圧は、電熱加圧装置を用いて行った。加圧の条件は、温度280℃、圧力40MPa、加圧時間2分間とした。加圧終了後、圧を解放して空気中で室温まで冷却し、ポリイミドフィルムを除去した。この操作により、厚み100μmの未延伸である、プレスフィルム(A)を作製した。
【0074】
(フィルム(A)の製造)
作製したプレスフィルム(A)を、加熱式引張試験機を用いて、チャック間80mm、延伸速度100%/分、温度155℃の条件で1.5倍に一軸延伸し、延伸フィルム(フィルム(A))を得た。波長550nmで測定されたフィルム(A)の、面内方向におけるレターデーションRe(550)は、140nmであった。また、フィルム(A)の、Re(450)/Re(550)の値(D(A))は、1.08であった。
【0075】
(D(B)の測定)
(重合体(B)の製造)
乾燥し窒素ガスで置換された耐圧反応器に、溶媒としてトルエン100mL、重合触媒としてn-ブチルリチウムの1.6Mヘキサン溶液270μL(0.43mモル)を入れた。その後、単量体(b)としてのブタジエンの25wt%トルエン溶液64gを添加し、更に50℃で1時間反応させ重合体を得た。GPC測定より、重合体の数平均分子量(Mn)は80000、重量平均分子量(Mw)は85000、分子量分布は1.06であった。1H-NMR測定より、オレフィン部分の積分値の割合から、重合体は、89%のポリ(1,4-ブタジエン)、11%のポリ(1,2-ブタジエン)により構成されていた。
【0076】
得られた重合体を濃縮し、トルエンを除去した後、p-キシレン700mLに溶解させた。この溶液に、p-トルエンスルホニルヒドラジド55gを添加し、減圧および窒素置換操作を複数回繰り返すことにより溶液内の酸素を除いた後、温度120℃で6時間反応させた。この反応により、ブタジエンに由来する二重結合に対する水素添加を行った。水素添加の終了後、大量のアセトンとメタノールを反応溶液に注ぎ、水添重合体(重合体(B))を、塊状の生成物40gとして得た。得られた水添重合体をNMRにて分析したところ、水素添加率は、99%より大きかった。
【0077】
(プレスフィルム(B)の製造)
得られた重合体(B)としての水添重合体の塊2gを一対のポリイミドフィルム(各厚み100μm)の間に挟み積層体とし、積層体を加圧した。加圧は、電熱加圧装置を用いて行った。加圧の条件は、温度25℃、圧力20MPa、加圧時間2分間とした。加圧終了後、圧を解放し、ポリイミドフィルムを除去した。この操作により、厚み100μmの未延伸である、プレスフィルム(B)を作製した。
【0078】
(フィルム(B)の製造)
作製したプレスフィルム(B)を、加熱式引張試験機を用いて、チャック間80mm、延伸速度100%/分、温度25℃の条件で3倍に一軸延伸し、延伸フィルム(フィルム(B))を得た。波長550nmで測定されたフィルム(B)の、面内方向におけるレターデーションRe(550)は、140nmであった。また、フィルム(B)の、Re(450)/Re(550)の値(D(B))は1.03であった。
【0079】
(屈折率)
JA-ウーラム社製エリプソメータ「M-2000U]を用いて、前記プレスフィルム(A)及びプレスフィルム(B)について波長550nmでの屈折率を測定した。プレスフィルム(A)の屈折率(n(a))は、1.67であった。プレスフィルム(B)の屈折率(n(b))は、1.53であった。
【0080】
(液晶表示装置の表示性能)
(ネガティブAプレートの作製)
共押出成形により、[1]層(15μm)-[3]層(5μm)-[2]層(100μm)-[3]層(5μm)-[1]層(15μm)をこの順で備える、長尺の未延伸積層体フィルムを得た。ここで、[1]層は、ノルボルネン系重合体(日本ゼオン(株)、ゼオノア1020、ガラス転移温度105℃)からなる。[2]層は、スチレン-無水マレイン酸共重合体(ノヴァケミカルジャパン(株)、ダイラークD332、ガラス転移温度130℃、オリゴマー含有量3重量%)からなる。[3]層は、変性エチレン-酢酸ビニル共重合体(三菱化学(株)、モディックAPA543、ビカット軟化点80℃)からなる。
【0081】
次に、前記で得た長尺の未延伸積層体フィルムを、フィルム温度を140℃に設定した加熱ゾーンを30秒間で通過させ、次いで、長手方向に1.50倍に延伸し、厚みが114μmの延伸フィルムを得た。
得られた延伸フィルムの波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe(550)、及び厚み方向のレターデーションRth(550)を、前記の方法で測定した。Re(550)は150nmであり、Rth(550)は-75nmであり、面内遅相軸は長手方向に垂直であり、そのばらつきは±0.05°であり、残留揮発成分含有量は0.01重量%以下であった。すなわち、得られた延伸フィルムは、面内遅相軸が長手方向に垂直である、ネガティブAプレートであった。
【0082】
(視認側偏光板の作製)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。次いで、評価対象の位相差フィルムを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の一方の表面に貼り付けた。次に、前記で作製した延伸フィルム(ネガティブAプレート)を、評価対象の位相差フィルムの表面に、接着剤を用いて貼り付けた。このとき、前記偏光子の吸収軸と、位相差フィルムの遅相軸とが垂直になるように配置した。厚み80μmのセルローストリアセテートフィルム(富士フイルム(株)製「TD-80UF」)を用意し、片面に鹸化処理を行った。次いで、偏光子の裏面(位相差フィルムが貼合されていない側の面)と、前記セルローストリアセテーロフィルムの鹸化処理された面とを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合せ、視認側偏光板(P1)を作製した。
【0083】
(バックライト側偏光板の作製)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。また、市販のセルロースアシレートフィルム1(富士フイルム(株)製「Z-TAC」)を用意し、鹸化処理した。次いで、偏光子の一方の面に、前記セルロースアシレートフィルム1を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り付けた。市販のセルローストリアシレートフィルム2(富士フイルム(株)製「フジタックTD80UF」)を用意し、鹸化処理を行った。次いで、偏光子の他方の面に、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、鹸化処理されたセルローストリアシレートフィルム2を貼り付け、70℃で10分間以上乾燥して、偏光板(P2)を作製した。
【0084】
(IPSモード液晶表示装置の作製)
IPSモードの液晶テレビ(松下電器産業(株)社製「TH-32LX500」)から、液晶セルを取り出し、視認側及びバックライト側に貼られてあった偏光板、及び光学フィルムを剥がした。この液晶セルは、電圧無印加状態及び黒表示時では液晶分子がガラス基板間で実質的に平行配向しており、その遅相軸方向は画面に対して水平方向であった。上記の平行配向セルの上下のガラス基板に、視認側偏光板として作製した前記偏光板(P1)、及びバックライト側偏光板として作製した偏光板(P2)を、粘着剤を用いて貼り合わせた。偏光板(P1)については、評価対象の位相差フィルムを液晶セルガラス基板に接触させて貼合し、偏光板(P2)については、セルローストリアシレートフィルム1(Z-TACフィルム)を液晶セルガラス基板に接触させて貼合した。また、偏光板(P1)のそれぞれの吸収軸と液晶セルの遅相軸とが垂直になるようにし、偏光板(P1)と偏光板(P2)のそれぞれの吸収軸が直交するように配置した。このようにして偏光板を貼り合せた液晶セルを、再度、液晶テレビに組み込み、表示性能評価用の液晶表示装置を作製した。
【0085】
(表示性能の評価)
前記で作製した液晶表示装置を、正面方向及び傾斜方向から目視で観察し、光漏れ及びカラーシフトを評価した。
【0086】
[実施例1]
(共重合体Pの製造)
乾燥し窒素ガスで置換された耐圧反応器に、溶媒としてトルエン100mL、重合触媒としてn-ブチルリチウムの1.6Mヘキサン溶液270μL(0.43mモル)を入れた。その後、耐熱反応器に、単量体(a)としての、2-ビニルナフタレン(芳香族ビニル系化合物)の25wt%トルエン溶液10gを添加して25℃で1時間反応させ、一段階目の重合反応を行った。一段階目の重合反応の終了後、重合体の一部を採取し、テトラヒドロフランを溶剤とするGPCによる分子量の測定から、数平均分子量(Mn)が18300、重量平均分子量(Mw)が19700、分子量分布が1.08であることを確認した。
【0087】
次いで、耐熱反応器中の反応混合物に、単量体(b)としての、ブタジエン(鎖状共役ジエン系化合物)の25wt%トルエン溶液40gを添加し、更に50℃で1時間反応させ、二段階目の重合反応を行った。その結果、反応混合物中に、(2-ビニルナフタレンブロック)-(ブタジエンブロック)のブロック構成を有するジブロック共重合体を得た。GPC測定より、ジブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は45200、重量平均分子量(Mw)は47900、分子量分布は1.06であった。また、オレフィン部分の積分値の割合から、ブタジエンブロックは、89%のポリ(1,4-ブタジエン)、11%のポリ(1,2-ブタジエン)により構成されていた。
【0088】
その後、反応混合物に、更に単量体(a)としての2-ビニルナフタレンの25wt%トルエン溶液10gを添加して、25℃で17時間反応させ、三段階目の重合反応を行った。重合反応終了後、100μLのメタノールを添加し、(2-ビニルナフタレンブロック)-(ブタジエンブロック)-(2-ビニルナフタレンブロック)のブロック構成を有する、トリブロック共重合体を含む反応混合物を得た。トリブロック共重合体の一部を採取し、GPCにより分子量を測定した。その結果、トリブロック共重合体は、数平均分子量(Mn)が45000、重量平均分子量(Mw)が55000、分子量分布が1.06であることを確認した。また、1H-NMR測定より、三段階目で加えた2-ビニルナフタレンが全て消費されていることを確認した。
【0089】
得られたトリブロック共重合体を濃縮し、トルエンを除去した後、p-キシレン700mLに溶解させた。この溶液に、p-トルエンスルホニルヒドラジド55gを添加し、減圧および窒素置換操作を複数回繰り返すことにより溶液内の酸素を除いた後、温度120℃で6時間反応させた。この反応により、ブタジエンブロックの二重結合に対する水素添加を行った。水素添加の終了後、大量のアセトンとメタノールを反応溶液に注ぎ、水添ブロック共重合体を、塊状の生成物20gとして得た。得られた水添ブロック共重合体は、「重合単位Aとして2-ビニルナフタレン単位を含有する重合体ブロック[A]」-「重合単位Bとして水添ブタジエン単位を含有する重合体ブロック[B]」-「重合単位Aとして2-ビニルナフタレン単位を含有する重合体ブロック[A]」というトリブロック構成を有していた。
【0090】
得られた水添ブロック共重合体(共重合体P)を1H-NMRにて分析した。その結果、水添ブロック共重合体における2-ビニルナフタレン単位と水添ブタジエン単位との重量比は33:67であった。したがって、重合単位Aの重量分率wAは0.33、重合単位Bの重量分率wBは0.67であった。また、水添ブロック共重合体におけるブタジエン単位に対する水素添加率は、>99%であった。また、熱機械的分析装置(TMA)により測定した水添ブロック共重合体の熱軟化温度Tdは、103℃であった。
【0091】
(位相差フィルムの作製)
前記項目(共重合体Pの製造)で得られたトリブロック共重合体を、樹脂Cとして用いた。樹脂Cを、粉砕機により粉砕し粉体とした。得られた粉体を一対のポリイミドフィルム(各厚み100μm)の間に挟み積層体とし、積層体を加圧した。加圧は、電熱加圧装置を用いて行った。加圧の条件は、温度290℃、圧力40MPa、加圧時間5分間とした。加圧終了後、圧を解放して空気中で室温まで冷却し、ポリイミドフィルムを除去した。この操作により、厚み75μmの位相差フィルム1を作製した。
【0092】
得られた位相差フィルム1について、前記の方法により断面からX線を入射させて小角散乱法により観察したところ、相間距離が40nm、相の厚み20nmのラメラ構造が観察された。また、厚み方向に平行な断面の切片を作成してTEMで観察したところ、ラメラ状の相分離構造が確認された。
【0093】
得られた位相差フィルム1について、波長550nmで面内方向レターデーションRe(550)及び厚み方向レターデーションRth(550)を測定したところ、Re(550)=4nm、Rth(550)=90nmであり、構造性複屈折によりネガティブCプレートに近い特性が得られていた。また、Rth(450)/Rth(550)=0.80<1であり、位相差フィルム1が逆波長分散性を持つことを確認した。
【0094】
得られた位相差フィルム1について、前記の方法で液晶表示装置に組み込み、液晶表示装置の表示性能を評価した。その結果、組み込み前と比較して、正面方向及び傾斜方向のいずれの方向からも光漏れは少なく、またカラーシフトが抑制されていた。
【0095】
[比較例1]
日本ゼオン製のシクロオレフィン樹脂「ゼオノア1020」を用意した。この樹脂を、押し出し機を用いて樹脂温260℃で溶融し、幅400mmのダイから表面温度90℃の冷却ロール状にシート状に押し出し、厚み100μmの未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを、フロート方式の縦延伸機を用いて110℃で流れ方向に1.5倍に延伸し、更にテンターを用いて幅方向に110℃で1.4倍に延伸し、厚み58μmの位相差フィルムC1を得た。
【0096】
得られた位相差フィルムC1について、前記の方法により断面からX線を入射させて小角散乱法により観察したところ、明瞭なピークを得られず、相分離構造を確認できなかった。
【0097】
得られた位相差フィルムC1について、波長550nmで面内方向レターデーションRe(550)及び厚み方向レターデーションRth(550)を測定したところ、Re(550)=3nm、Rth(550)=90nmであり、ネガティブCプレートの特性を有していた。位相差フィルムC1のRe(450)/Re(550)=1.08>1であり、位相差フィルムC1は、弱い正波長分散性を示した。
【0098】
得られた位相差フィルムC1について、前記の方法で液晶表示装置に組み込み、液晶表示装置の表示性能を評価した。その結果、正面方向及び傾斜方向から観察した場合のカラーシフトは、実施例1と比較して悪化した。
【0099】
[比較例2]
実施例1において、重合の第2段階において添加するブタジエンの量を調整し、2-ビニルナフタレン:ブタジエンの重量比67:33(すなわち、重量分率wA=0.67、重量分率wB=0.33)のブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体のガラス転移温度は123℃であった。このブロック共重合体を樹脂Cの代わりに用いた以外は実施例1の(位相差フィルムの作製)と同様にして、厚み75μmの位相差フィルムC2を得た。
【0100】
位相差フィルムC2を前記の方法により断面からX線を入射させて小角散乱法により観察したところ、相間距離が40nm、厚み20nmのラメラ構造が観察された。また、厚み方向に平行な断面の切片を作成してTEMで観察したところ、ラメラ状の相分離構造が確認された。
【0101】
得られた位相差フィルムC2について、波長550nmで面内方向レターデーションRe(550)及び厚み方向レターデーションRth(550)を測定したところ、Re(550)=4nm、Rth(550)=90nmであり、構造性複屈折によりネガティブCプレートに近い特性が得られていることを確認した。また、Rth(450)/Rth(550)=1.20>1であり、位相差フィルムC2は正波長分散性を示した。
【0102】
得られた位相差フィルムC2について、前記の方法で液晶表示装置に組み込み、液晶表示装置の表示性能を評価した。その結果、正面方向及び傾斜方向から観察した場合のカラーシフトは、実施例1と比較して悪化した。
【0103】
以上の結果から、以下の事項が分かる。
共重合体を含んでいない比較例1に係る位相差フィルムC1は、逆波長分散性を示さず、正面方向及び傾斜方向から観察した場合のカラーシフトの評価が悪い。
また、ラメラ状の相分離構造を有していても、f(B)(比較例2においては、重合単位Bの共重合体Pにおける重量分率wB)>0.5を満たさない位相差フィルムC2も、逆波長分散性を示さず、正面方向及び傾斜方向から観察した場合のカラーシフトの評価が悪い。
これに対して、実施例1に係る、f(B)(実施例1においては、重合単位Bの共重合体Pにおける重量分率wB)>0.5を満たし、ラメラ状の相分離構造を有する位相差フィルム1は、逆波長分散性を示し、正面方向及び傾斜方向から観察した場合のカラーシフトの評価が良好である。
【0104】
以上の結果は、本発明の位相差フィルムが、逆波長分散性を有し、低いコストで容易に製造されうることを示す。