IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭硝子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両用窓ガラス 図1
  • 特許-車両用窓ガラス 図2
  • 特許-車両用窓ガラス 図3
  • 特許-車両用窓ガラス 図4
  • 特許-車両用窓ガラス 図5
  • 特許-車両用窓ガラス 図6
  • 特許-車両用窓ガラス 図7
  • 特許-車両用窓ガラス 図8
  • 特許-車両用窓ガラス 図9
  • 特許-車両用窓ガラス 図10
  • 特許-車両用窓ガラス 図11
  • 特許-車両用窓ガラス 図12
  • 特許-車両用窓ガラス 図13
  • 特許-車両用窓ガラス 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】車両用窓ガラス
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/32 20060101AFI20230117BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
H01Q1/32 A
H01Q1/22 C
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019114908
(22)【出願日】2019-06-20
(65)【公開番号】P2021002721
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛資
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 昇
(72)【発明者】
【氏名】江川 慶彦
(72)【発明者】
【氏名】才田 栄治
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-135944(JP,A)
【文献】特開2010-010962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/32
H01Q 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられるガラス板と、
所定の周波数帯の電波を受信するアンテナと、を有し、
前記アンテナは、
前記ガラス板の略水平方向に並んで配置される給電電極及びアース電極と、
前記給電電極に接続される給電側エレメントと、
前記アース電極に接続されるアース側エレメントと、
を有し、
前記給電側エレメントは、
前記給電電極から上方又は下方に伸びる接続導体と、
前記給電電極から前記給電電極の前記アース側エレメント側とは反対側に略水平方向に伸び、又は、前記接続導体の中間点から前記反対側に略水平方向に伸びる第1水平エレメントと、
前記接続導体の端部から前記反対側に略水平方向に伸びる第1エレメント、当該第1エレメントの端部から略垂直方向に伸びる第2エレメント、及び前記第2エレメントの端部から前記アース側エレメント側に伸びる第3エレメントを含んで、前記給電電極から前記アース側エレメントに向かう方向に開口するU字状のU字状エレメントと、
前記U字状エレメントの一部を共有して前記U字状エレメントに閉ループを形成するための少なくとも1つの閉ループエレメントと、
を有し、
前記アース側エレメントは、
前記アース電極から前記接続導体の延伸方向と同じ方向に伸びる第4エレメント、及び前記第4エレメントの端部から前記給電側エレメント側とは反対側の略水平方向に伸びる第5エレメントを含んで、L字状に形成される第1L字状エレメントを有する、車両用窓ガラス。
【請求項2】
前記第1水平エレメントの長さをL1、前記所定の周波数帯の中心波長をλ、前記ガラス板の波長短縮率をkとしたとき、(1/4)×λ×k≦L1≦(3/8)×λ×kを満足する、請求項1に記載の車両用窓ガラス。
【請求項3】
前記第1エレメント及び前記第3エレメントのそれぞれの長さは、前記第2エレメントの長さよりも長い、請求項1又は請求項2に記載の車両用窓ガラス。
【請求項4】
前記U字状エレメントの長さをL2、前記所定の周波数帯の中心波長をλ、前記ガラス板の波長短縮率をkとしたとき、(1/2)×λ×k≦L2≦×λ×kを満足する、請求項1~3の何れか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項5】
前記第3エレメントは、前記第1エレメントよりも長い、請求項1~4の何れか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項6】
前記給電側エレメントは、前記給電電極及び前記接続導体から、前記アース側エレメント側に伸びるエレメントを含まない、請求項1~5の何れか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項7】
前記閉ループエレメントは、前記接続導体の端部から上方又は下方に伸びる第6エレメント、及び当該第6エレメントの端部から略水平方向に伸びて前記第2エレメントに接続される第7エレメントを含んで、L字状に形成される第2L字状エレメントを有する、請求項1~6の何れか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項8】
前記閉ループエレメントは、略垂直方向に伸びて前記第1エレメントと前記第3エレメントとを短絡する第1短絡エレメントを有する、請求項1~6の何れか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項9】
前記閉ループエレメントは、前記第1エレメント、前記第2エレメント、前記第3エレメント、及び前記第1短絡エレメントによって、縦長の形状で形成される、請求項8に記載の車両用窓ガラス。
【請求項10】
前記閉ループエレメントは、前記接続導体の端部から上方又は下方に伸びる第6エレメント、及び当該第6エレメントの端部から略水平方向に伸びて前記第1短絡エレメントに接続される第7エレメントを含んで、L字状に形成される第2L字状エレメントを有し、
前記第1エレメント、前記第2エレメント、前記第3エレメント、及び前記第1短絡エレメントによって第1閉ループ部が形成され、
前記第6エレメント、前記第7エレメント、前記第1短絡エレメント、及び前記第1エレメントによって第2閉ループ部が形成される、請求項8又は請求項9に記載の車両用窓ガラス。
【請求項11】
前記第1閉ループ部及び前記第2閉ループ部は略四角形であり、
前記第1閉ループ部の略水平方向の長さをW1、前記第2閉ループ部の長さをW2としたとき、W1<W2を満足する、請求項10に記載の車両用窓ガラス。
【請求項12】
前記W1と前記W2との比は、1:2から1:9までの範囲である、請求項11に記載の車両用窓ガラス。
【請求項13】
前記閉ループエレメントは、略垂直方向に伸びて前記第1エレメントと前記第3エレメントとを短絡する第1短絡エレメントを有し、
前記第1エレメント、前記第2エレメント、前記第3エレメント、及び前記第1短絡エレメントによって第1閉ループ部が形成され、
前記第7エレメントの端部は、前記第1閉ループ部に囲まれる空間に位置する、請求項7又は請求項10に記載の車両用窓ガラス。
【請求項14】
前記第7エレメントの端部は、前記第2エレメントに接続され、
前記第1閉ループ部に囲まれる空間が前記第7エレメントによって分割されている、請求項13に記載の車両用窓ガラス。
【請求項15】
前記給電側エレメントは、前記第6エレメントから、前記アース側エレメント側に伸びるエレメントを含まない、請求項7又は請求項10に記載の車両用窓ガラス。
【請求項16】
前記アース側エレメントは、前記アース電極と接続して前記給電側エレメント側とは反対側に略水平方向に伸びる第2水平エレメントを有する、請求項1~15の何れか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項17】
前記アース側エレメントは、前記第4エレメントの中間点から前記給電側エレメント側とは反対側に略水平方向に伸びるとともに、前記第2水平エレメントよりも、前記アース電極から離れて位置する第3水平エレメントを有する、請求項16に記載の車両用窓ガラス。
【請求項18】
前記アース側エレメントは、前記第4エレメントよりも前記給電側エレメント側に位置し、前記アース電極から前記接続導体の延伸方向と同方向に伸びるアース側垂直エレメントを有する、請求項16又は請求項17に記載の車両用窓ガラス。
【請求項19】
前記アース側エレメントは、前記第4エレメントよりも前記給電側エレメント側に位置し、前記アース電極から前記接続導体の延伸方向と同方向に伸びるアース側垂直エレメントを有し、
前記接続導体の少なくとも一部と、前記第4エレメントの一部及び前記アース側垂直エレメントの少なくとも一部とが、容量結合する、請求項1~18の何れか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項20】
前記アース側エレメントは、
前記第4エレメントの中間点から前記給電側エレメント側とは反対側に略水平方向に伸びる第3水平エレメントと、
略垂直方向に伸びて前記第3水平エレメントと前記第5エレメントとを短絡する第2短絡エレメントと、
を有する、請求項17~19の何れか一項に記載の車両用窓ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な周波数帯の信号を受信できる複数のアンテナが集約された車両用窓ガラスが実用化されている。当該アンテナは、例えばAM放送波用アンテナ、FM放送波用アンテナ、DAB(Digital Audio Broadcast)放送波(例えば、Band III:174MHz~240MHz)用アンテナ、地上デジタルテレビ(DTV)放送波用アンテナ、リモートキーレスエントリー(RKE:Remote Keyless Entry)用アンテナなどである。その中で、DTV放送波用アンテナには、いわゆるワンセグ放送によりVHF放送波、UVF放送波を受信できるアンテナの機能を有するものがある。この種のDTV放送波用アンテナとして、例えば特許文献1には、所望のアンテナ特性を実現する自動車用高周波ガラスアンテナが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の自動車用高周波ガラスアンテナは、所望のアンテナ特性を実現するため、双極型アンテナ用電極であるアース部及び給電部と、アース部に接続されるアンテナパターンである補助導体と、給電部に接続されるアンテナパターンとを備える。特許文献1では、給電部に接続されるアンテナパターンは、第1のエレメント、第2のエレメント、第3のエレメント、第1の接続導体、第2の接続導体を必須のエレメント(導体)とした基本アンテナパターンを備える。例えば、第3のエレメントは、給電部から水平方向でアース部側に向けて延伸するエレメントが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-135944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両用窓ガラスに搭載されるこの種の自動車用高周波ガラスアンテナには、より高い受信感度が求められているため、十分な受信感度を得る上での改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、所定の放送波の周波数帯に対する受信感度に優れたアンテナパターンを有する車両用窓ガラスを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係る車両用窓ガラスは、車体に設けられるガラス板と、所定の周波数帯の電波を受信するアンテナと、を有し、前記アンテナは、前記ガラス板の略水平方向に並んで配置される給電電極及びアース電極と、前記給電電極に接続される給電側エレメントと、前記アース電極に接続されるアース側エレメントと、を有し、前記給電側エレメントは、前記給電電極から上方又は下方に伸びる接続導体と、前記給電電極から前記給電電極の前記アース側エレメント側とは反対側に略水平方向に伸び、又は、前記接続導体の中間点から前記反対側に略水平方向に伸びる第1水平エレメントと、前記接続導体の端部から前記反対側に略水平方向に伸びる第1エレメント、当該第1エレメントの端部から略垂直方向に伸びる第2エレメント、及び前記第2エレメントの端部から前記アース側エレメント側に伸びる第3エレメントを含んで、前記給電電極から前記アース側エレメントに向かう方向に開口するU字状のU字状エレメントと、前記U字状エレメントの一部を共有して前記U字状エレメントに閉ループを形成するための少なくとも1つの閉ループエレメントと、を有し、前記アース側エレメントは、前記アース電極から前記接続導体の延伸方向と同じ方向に伸びる第4エレメント、及び前記第4エレメントの端部から前記給電側エレメント側とは反対側の略水平方向に伸びる第5エレメントを含んで、L字状に形成される第1L字状エレメントを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両用窓ガラスに形成するアンテナパターンによって所定の放送波の周波数帯に対する受信感度を高める効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る車両用窓ガラス100の構成例を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る車両用窓ガラス100のアンテナ4の構成例を示す図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る車両用窓ガラス100のアンテナ4(の第1変形例)を示す図である。
図4】本発明の第3実施形態に係る車両用窓ガラス100のアンテナ4(の第2変形例)を示す図である。
図5】本発明の第4実施形態に係る車両用窓ガラス100のアンテナ4(の第3変形例)を示す図である。
図6】本発明の第5実施形態に係る車両用窓ガラス100のアンテナ4(の第4変形例)を示す図である。
図7】本発明の第6実施形態に係る車両用窓ガラス100のアンテナ4(の第5変形例)を示す図である。
図8】本発明の第7実施形態に係る車両用窓ガラス100のアンテナ4(の第6変形例)を示す図である。
図9】本発明の第8実施形態に係る車両用窓ガラス100のアンテナ4(の第7変形例)を示す図である。
図10】本発明の第9実施形態に係る車両用窓ガラス100のアンテナ4(の第8変形例)を示す図である。
図11】第1実施形態に係るアンテナ4における、アンテナ利得の第1測定結果を示す図である。
図12】第2実施形態に係るアンテナ4-1における、アンテナ利得の第2測定結果を示す図である。
図13】第8実施形態に係るアンテナ4-7における、アンテナ利得の第3測定結果を示す図である。
図14】第8実施形態に係るアンテナ4-7における、アンテナ利得の第4測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態に係る車両用窓ガラス100を図面に基づいて詳細に説明する。なお、各形態において、平行、直角、水平、垂直、上下、左右などの方向には、本発明の効果を損なわない程度のずれが許容される。また、X軸方向、Y軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向は、互いに直交する。XY平面は、X軸方向及びY軸方向に平行な仮想平面を表す。図1以降において、X軸方向のうち、矢印で示す方向はプラスX軸方向とし、当該方向とは逆の方向はマイナスX軸方向とする。Y軸方向のうち、矢印で示す方向はプラスY軸方向とし、当該方向とは逆の方向はマイナスY軸方向とする。
【0011】
(第1実施形態)
図1は本発明の実施の形態に係る車両用窓ガラス100の構成例を示す図である。図1は、自動車の骨格である車体200の内側から後方に向かって平面視した車両用窓ガラス100を示す。車両用窓ガラス100は、例えば自動車用のリアガラスに適用される。
【0012】
図1以降において、X軸方向は、車体200の左右方向(横方向)、即ち、車体200の車幅方向、又は略水平方向に等しい。略水平方向には、鉛直方向に直交する水平面に対して、例えば0°から±15°の角度を成す線分と平行な方向も含まれる。Y軸方向は、車体200の上下方向(縦方向)、又は略垂直方向に等しい。略垂直方向には、鉛直方向に直交する水平面に対して、例えば0°から±15°の角度を成す線分と平行な方向も含まれる。
【0013】
車両用窓ガラス100は、ガラス板1と、ガラス板1に設けられる一対のバスバー2と、一対のバスバー2の間に延伸する複数の電熱線3と、ガラス板1に設けられるアンテナ4と、ガラス板1に設けられるカメラモジュール取付部5とを備える。なお、図1の破線は、ガラス板1の面上に備えられた遮光膜の縁であり、図1は、車両用窓ガラス100において、ガラス板1の周辺とカメラモジュール取付部5の周辺に、該遮光膜を配置した例を示す。遮光膜は、具体例に、黒色セラミックス膜等のセラミックスを使用できる。
【0014】
ガラス板1は、車体200の開口部に設けられる、透明又は半透明な板状の誘電体である。開口部は、車体200に設けられるフランジ(金属ボディ)で囲まれる空間である。
【0015】
図1において左端/右端に備えられる一対のバスバー2と接続する電熱線3は、ガラス板1の表面に発熱用のワイヤを設置したもの、発熱用の銀系のプリントを施したものなどである。なお、電熱線3の代わりに、バスバー2と接続する、透明導電膜を用いてもよい。
【0016】
カメラモジュール取付部5は、不図示のカメラモジュールが設置される領域であるが、カメラモジュール取付部5は任意に配置できる。即ち、車両用窓ガラス100は、カメラモジュール取付部5を含まなくてもよい。車両用窓ガラス100が、カメラモジュール取付部5を含む場合、電熱線3は、一対のバスバー2間を水平に延在するパターンのみで構成してもよい。なお、車両用窓ガラス100が、カメラモジュール取付部5を含む場合、アンテナ4は、カメラモジュールから発生するノイズの影響を受ける場合があるため、アンテナ4を構成するエレメントからカメラモジュール取付部5までの距離は、例えば100mm以上に設定されるとよい。これにより、ノイズの影響が軽減され、アンテナ利得を高めることができる。なお、アンテナ4を構成するエレメントからカメラモジュールまでの距離は、120mm以上が好ましく、150mm以上がより好ましい。
【0017】
アンテナ4は、例えばDTV放送波の周波数帯(約470~720MHz)の電波の水平偏波を受信する、二つの電極を備える双極型アンテナである。また、ガラス板1のうち、電熱線3がない空白領域には、後述する、アンテナ4の種々の実施形態のうち、同じもの、又は、異なるもの、を組み合わせて2箇所以上に配置してもよい。例えば、空白領域に(DTV放送波受信用に)アンテナ4を2箇所以上備えると、これらが、ダイバーシティアンテナとなる。さらに、該空白領域には、アンテナ4に加え、アンテナ4が受信する周波数帯以外の周波数帯で、例えば、AM放送波、FM放送波、DAB(Band III)放送波のうち少なくとも1つの周波数帯を受信するアンテナを備えてもよい。
【0018】
図2は、本発明の第1実施形態に係る車両用窓ガラス100のアンテナ4の構成例を示す図である。アンテナ4は、ガラス板1の略水平方向に並んで配置される給電電極10及びアース電極20と、給電電極10に接続される給電側エレメント41と、アース電極20に接続されるアース側エレメント42とを有する。
【0019】
給電側エレメント41及びアース側エレメント42は、DTV放送波用電波の水平偏波の受信に適するように形成される導体である。
【0020】
給電電極10及びアース電極20は、それぞれ概略四角形状の電極形状を例示できるが概略四角形状に限らない。なお、概略四角形状とは、角部が湾曲した四角形状のもの、すなわち角(四隅)が丸くなっているがおおよそ四角形とみなせるものである。概略四角形状には、角部が湾曲した正方形状又は長方形状のものが含まれる。アンテナ4において、例えば不図示の信号処理装置から伸びる同軸ケーブルの内部導体が、給電電極10へ電気的に接続され、当該同軸ケーブルの外部導体が、アース電極20へ電気的に接続される。なお、アース電極20はグランドに接続されるアース部ともいう。次に、給電側エレメント41、アース側エレメント42について説明する。
【0021】
<給電側エレメント>
給電側エレメント41は、接続導体30、第1水平エレメント40、U字状エレメント50、及び閉ループエレメント70を有する。
【0022】
接続導体30は、給電電極10と接続して下方(マイナスY軸方向)に伸びるエレメントであり、例えば、給電電極10の角部から延伸する。接続導体30のY軸方向の寸法は、例えば、DTV放送波の周波数帯(約470~720MHz)の中心周波数が590MHzであり、中心周波数での波長をλとし、ガラス板1の波長短縮率をk(例えば、約0.64)とすると、(1/4)×λ×k(約81mm)以下に設定することが好ましい。なお、給電電極10側と反対側となる接続導体30の端部は、給電電極10と接続して(下方に)延伸したエレメントが、後述する第1エレメント11と接する部分に相当する。
【0023】
給電電極10の角部は、例えば、給電電極10のマイナスY軸方向の端部とプラスX軸方向の端部とが接する部分である。アンテナ4が、例えば、車体200の開口部のうち上側の領域に設けられる場合、接続導体30が給電電極10から下方に伸びることで、車体200のルーフ(天井)に設けられるフランジの縁部から給電側エレメント41まで一定の距離、例えば30mm以上の距離に設定できる。これにより、当該縁部に給電側エレメント41が近づくことによるアンテナ利得の低下を抑制できる。
【0024】
第1水平エレメント40は、給電電極10又は、接続導体30の中間点30aから、接続導体30の第4エレメント14側とは反対側(プラスX軸方向)に略水平方向に伸びるエレメントである。接続導体30の中間点30aは、接続導体30のY軸方向の中心部でもよいし、接続導体30の中心部から上端側又は下端側へずれた位置でもよい。中間点30aは、接続導体30の長さを100としたとき、接続導体30と給電電極10との接続点を基準に0超95以下の範囲あればよく、0超80以下の範囲にあれば好ましく、0超65以下の範囲にあればより好ましい。
【0025】
第1水平エレメント40の寸法L1は、例えば、DTV放送波の周波数帯(約470~720MHz)の中心周波数が590MHzであり、中心周波数での波長をλとし、ガラス板1の波長短縮率をk(例えば、約0.64)とすると、(1/4)×λ×k(約81mm)~(1/4)×1.5×λ×k(約122mm)の範囲に設定することが好ましい。第1水平エレメント40の寸法L1がこの範囲であれば、当該周波数帯で共振するためアンテナ4のアンテナ利得が向上する。
【0026】
上記について要約すると、第1水平エレメント40の長さL1は、所定の周波数帯の中心波長をλ、ガラス板1の波長短縮率をkとしたとき、(1/4)×λ×k≦L1≦(3/8)×λ×kを満足するとよい。第1水平エレメント40の長さL1をこの範囲に設定することにより、DTV放送波の周波数帯の受信利得が向上する。
【0027】
U字状エレメント50は、第1エレメント11、第2エレメント12及び第3エレメント13を含んで、給電側エレメント41からアース側エレメント42に向かう方向に開口するU字状のエレメントである。U字状は、角部の外縁が直角に限らず直角以外の角度でもよく、曲線でもよい。なお、ここでいう「給電側エレメント41からアース側エレメント42に向かう方向に開口する」とは、給電側エレメント41とアース側エレメント42との間で、Y軸方向に延伸する仮想線を与えたとき、該仮想線よりもマイナスX軸方向に向けて開口する、という意味である。
【0028】
第1エレメント11は、接続導体30の(給電電極10とは反対側の)端部から、第4エレメント14側とは反対側(プラスX軸方向)に略水平方向に伸びるエレメントである。第2エレメント12は、第1エレメント11の端部から、第1エレメント11の第1水平エレメント40側とは反対側(マイナスY軸方向)に略垂直方向に伸びるエレメントである。第3エレメント13は、第2エレメント12の端部から、第2エレメント12のアース側エレメント42側(マイナスX軸方向)に略水平方向に伸びるエレメントである。
【0029】
U字状エレメント50の長さL2は、例えば、DTV放送波の周波数帯(約470~720MHz)の中心周波数が590MHzであり、中心周波数での波長をλとし、ガラス板1の波長短縮率をk(例えば、約0.64)とすると、(1/2)×λ×k(約163mm)~λ×k(約325mm)の範囲に設定することが好ましい。
【0030】
上記について要約すると、U字状エレメント50の長さL2は、所定の周波数帯の中心波長をλ、ガラス板1の波長短縮率をkとしたとき、(1/2)×λ×k≦L2≦λ×kを満足するとよい。U字状エレメント50の長さL2をこの範囲に設定することにより、アンテナ4のアンテナ利得が向上する。
【0031】
また、U字状エレメント50は折り返し形状のため、コンパクトなアンテナパターンを設計でき、電流分布の向きを揃えることができる。給電側エレメント41は、U字状エレメント50を有することで電流が同相になり、アンテナ4のアンテナ利得が高まる効果が得られる。また、U字状エレメント50を、水平方向の長さが垂直方向の長さよりも長い横長形状にすることで、水平偏波の電波を受信し易くなり、アンテナ4のアンテナ利得が向上する。
【0032】
また、U字状エレメント50は、第3エレメント13の寸法l3を第1エレメント11の寸法l1よりも長くすることによって、第1エレメント11の寸法l1を小さくしながら、U字状エレメント50の長さを確保できる。そのため、アンテナ4は、それのX軸方向の幅が必要以上に長くなることを抑制でき、よりコンパクトなアンテナパターンを設計できる。
【0033】
給電側エレメント41における閉ループエレメント70は、U字状エレメント50の一部を共有して、U字状エレメント50に閉ループを形成するエレメントである。閉ループエレメント70は、当該エレメントの一例として、第2L字状エレメント71を含む。つまり、本実施形態において、第2L字状エレメント71は、第6エレメント16及び第7エレメント17を含んで、L字状に形成されるエレメントである。
【0034】
第6エレメント16は、接続導体30の端部から下方に伸びるエレメントであり、第7エレメント17は、第6エレメント16の端部から略水平方向に伸びるエレメントである。そして、第7エレメント17の端部17aは、第2エレメント12に接続される。なお、接続導体30及び第6エレメント16は、給電電極10からこの順に接続されて、マイナスY軸方向に延伸する。そして、給電側エレメント41は、給電電極10、接続導体30及び第6エレメント16を起点として、アース側エレメント42側(例えば、マイナスX軸方向)に延伸するエレメントを含まないことが好ましく、その場合、アンテナ4が配置される領域の水平方向(X軸方向)の長さを短くできるため、該領域の省スペース化を実現しやすい。ただし、第3エレメント13は、所定のアンテナ利得を得る目的で適宜寸法調整をするため、アース側エレメントエリアに入ってもよい。ここで、「アース側エレメントエリア」とは、給電電極10とアース電極20の間隙の中間点を通り、上下方向(垂直方向)に伸びるY軸方向に仮想線を引いたとき、該仮想線からアース電極20側にある領域をいう。なお、該仮想線から給電電極10側の領域は「給電側エレメントエリア」と称する。
【0035】
給電側エレメント41は、第1エレメント11、第2エレメント12、第6エレメント16、及び第7エレメント17によって、略四角形のループエレメントである第1閉ループ部81が形成される。第1閉ループ部81が形成されることで、アンテナ4のインピーダンスを下げられるため、アンテナ利得を高める効果が得られる。
【0036】
<アース側エレメント>
アース側エレメント42は、第4エレメント14及び第5エレメント15を含んで、L字状に形成される第1L字状エレメント60を有する。第4エレメント14は、例えば、アース電極20の角部から下方(マイナスY軸方向)に伸びるエレメントである。第4エレメント14が伸びる方向は、接続導体30が給電電極10から伸びる方向と同じ(略平行する方向)である。アース電極20の角部は、例えば、アース電極20のマイナスY軸方向の端部とマイナスX軸方向の端部とが接する部分である。
【0037】
第5エレメント15は、第4エレメント14の(アース電極20側の反対側の)端部から、給電側エレメント41側とは反対側(マイナスX軸方向)の略水平方向に伸びるエレメントである。このように、アース側エレメント42として、第1L字状エレメント60を設けることで、アース側エレメント42と、給電側エレメント41の向きが、互いに反対向きとなり、アース電極20と給電電極10の間における、電流分布が最大となるため、所定の周波数帯におけるアンテナ利得が向上する。
【0038】
(第2実施形態)
図3は本発明の第2実施形態に係る車両用窓ガラス100のアンテナ4の第1変形例であるアンテナ4-1を示す図である。第2実施形態のうち上述の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで、省略又は簡略する。本実施形態に係るアンテナ4-1は、それの閉ループエレメント70が、(第1実施形態の)第2L字状エレメント71の代わりに、第1短絡エレメント72を含んで形成される。
【0039】
第1短絡エレメント72は、略垂直方向に伸びて第1エレメント11と第3エレメント13とを短絡するエレメントであって、閉ループを形成するエレメントの一例である。なお、給電側エレメント41は、給電電極10及び接続導体30を起点として、アース側エレメント42側(例えば、マイナスX軸方向)に延伸するエレメントを含まないことが好ましく、その場合、アンテナ4-1が配置される領域の水平方向(X軸方向)の長さを短くできるため、該領域の省スペース化を実現しやすい。
【0040】
本実施形態に係るアンテナ4-1では、第1エレメント11、第2エレメント12、第3エレメント13、及び第1短絡エレメント72によって略四角形の第1閉ループ部83が形成される。第1閉ループ部83が形成されることで、アンテナ4のインピーダンスを下げられるため、アンテナ利得を高める効果が得られる。なお、第1閉ループ部83は、縦長の形状でもよく、図3において、長方形の形状をなす第1閉ループ部83は、Y軸方向の長さがX軸方向の長さよりも長い。
【0041】
(第3実施形態)
図4は本発明の第3実施形態に係る車両用窓ガラス100のアンテナ4の第2変形例であるアンテナ4-2を示す図である。第3実施形態のうち上述の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで、省略又は簡略する。本実施形態に係るアンテナ4-2の閉ループエレメント70は、第2L字状エレメント71及び第1短絡エレメント72を有する。
【0042】
第1短絡エレメント72から第2エレメント12までのX軸方向の距離は、例えば30mmに設定される。第1短絡エレメント72から接続導体30までのX軸方向の距離は、例えば80mmに設定される。
【0043】
アンテナ4-2では、第7エレメント17の端部17aが、第1短絡エレメント72に接続される。この構成により、アンテナ4-2の給電側エレメント41には、2つの閉ループ部(略四角形の第1閉ループ部84及び第2閉ループ部82)が形成される。
【0044】
第1閉ループ部84は、第1エレメント11、第2エレメント12、第3エレメント13、及び第1短絡エレメント72によって形成される。そして、第2閉ループ部82は、第1エレメント11、第1短絡エレメント72、第6エレメント16、及び第7エレメント17によって形成される。
【0045】
また、第1閉ループ部84の水平方向(X軸方向)の長さをW1、第2閉ループ部82の水平方向(X軸方向)の長さをW2としたとき、W1<W2を満足することが好ましい。さらに、W1とW2との比は、1:2から1:9までの範囲が好ましい。この構成により、アンテナ4のインピーダンスをより一層下げられ、アンテナ利得がより一層高まる効果が得られる。なお、W1とW2との比は、1:3から1:8までの範囲がより好ましい。なお、第1閉ループ部84は、縦長の形状でもよく、図4において、長方形の形状をなす第1閉ループ部84は、Y軸方向の長さがX軸方向の長さよりも長い。
【0046】
(第4実施形態)
図5は本発明の第4実施形態に係る車両用窓ガラス100のアンテナ4の第3変形例であるアンテナ4-3を示す図である。第4実施形態のうち上述の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで、省略又は簡略する。本実施形態に係るアンテナ4-3の第7エレメント17の端部17aは、第1閉ループ部84に囲まれる空間(第1閉ループ部84の外縁よりも内側)に位置する。第7エレメント17の端部17aは、第1エレメント11から第2エレメント12に向かって一定距離離れた位置であって、第2エレメント12に達しない位置に設けられる。
【0047】
この構成により、2つの閉ループ部(第1閉ループ部84及び第2閉ループ部82)が形成される。さらに、第3実施形態に係るアンテナ4-2に対して、アンテナ4-3は、第7エレメント17の導体長を調整可能な実施形態であるので、例えば、DTV放送波の周波数帯に対してアンテナ利得を調整しやすくなる。これにより、アンテナ4-3は、所定の周波数帯における、アンテナ利得のバラつきが小さく平坦化がしやすくなる。
【0048】
(第5実施形態)
図6は本発明の第5実施形態に係る車両用窓ガラス100のアンテナ4の第4変形例であるアンテナ4-4を示す図である。第5実施形態のうち上述の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで、省略又は簡略する。図6の本実施形態に係るアンテナ4-4の第7エレメント17の端部17aは、第2エレメント12に接続される。
【0049】
この構成により、第1閉ループ部84に囲まれる空間が第7エレメント17によって上下に2分割され、第1閉ループ部84に2つの閉ループ部が形成され、その結果、3つの閉ループ部が形成される。本実施形態に係るアンテナ4-4によれば、閉ループ部の数を増やすことで、アンテナ4のインピーダンスをより一層下げられるため、より広い周波数帯域で高アンテナ利得であり、かつ、バラつきが小さく平坦性を有するアンテナ利得が得られる。
【0050】
(第6実施形態)
図7は本発明の第6実施形態に係る車両用窓ガラス100のアンテナ4の第5変形例であるアンテナ4-5を示す図である。第6実施形態のうち上述の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで、省略又は簡略する。とくに、本実施形態に係るアンテナ4-5は、アース側エレメント42の変形パターンを示したものであり、給電側エレメント41は、第1~第5実施形態のいずれかを援用できる。そして、図7の本実施形態に係るアンテナ4-5は、アース側エレメント42が、図5に示す構成に加え、第2水平エレメント80、及び第3水平エレメント90を有する。
【0051】
第2水平エレメント80は、例えば、アース電極20の角部から、給電電極10側とは反対側(マイナスX軸方向)に略水平方向に伸びるエレメントである。アース電極20の角部は、例えば、アース電極20のマイナスY軸方向の端部とマイナスX軸方向の端部とが接する部分である。なお、第2水平エレメント80は、アース電極20を起点とするのではなく、第4エレメント14の中間点を起点に給電側エレメント41側とは反対側に略水平方向に伸びるエレメントでもよい。この場合、第2水平エレメント80の起点は、後述する第3水平エレメント90の起点よりも、アース電極20に近い方に位置する。言い換えると、第3水平エレメント90は、第2水平エレメント80よりもアース電極20側に位置する。
【0052】
第3水平エレメント90は、第4エレメント14の中間点14aから給電側エレメント41側とは反対側に略水平方向に伸びるエレメントである。第4エレメント14の中間点14aは、第4エレメント14のY軸方向の中心部でもよいし、第4エレメント14の中心部から上端側又は下端側へずれた位置でもよい。中間点14aは、第4エレメントの長さを100としたとき、第4エレメント14とアース電極20との接続点を基準に5以上95以下の範囲あればよく、20以上80以下の範囲にあれば好ましく、30以上70以下の範囲にあればより好ましい。
【0053】
第1L字状エレメント60、第2水平エレメント80、第3水平エレメント90のそれぞれの寸法は、例えば、DTV放送波の周波数帯(約470~720MHz)の中心周波数が590MHzであり、中心周波数での波長をλとし、ガラス板の波長短縮率をk(例えば、約0.64)とすると、(1/4)×1.5×λ(約121mm)以下に設定することが好ましい。
【0054】
第1L字状エレメント60の寸法は、例えば90mmである。第4エレメント14の寸法は、例えば25mmである。第5エレメント15の寸法は、例えば65mmである。第2水平エレメント80の寸法は、例えば70mmである。第3水平エレメント90の寸法は、例えば70mmである。各々のエレメントの寸法を上記の範囲に設定することによって、当該周波数帯で共振するためアンテナ4-5のアンテナ利得が向上する。
【0055】
(第7実施形態)
図8は本発明の第7実施形態に係る車両用窓ガラス100のアンテナ4の第6変形例であるアンテナ4-6を示す図である。第7実施形態のうち上述の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで、省略又は簡略する。図8の本実施形態に係るアンテナ4-6は、アース側エレメント42が、図7に示す構成に加え、第2短絡エレメント91、及びアース側垂直エレメント92を有する。
【0056】
第2短絡エレメント91は、略垂直方向に伸びて第3水平エレメント90と第5エレメント15とを短絡するエレメントである。また、アース側垂直エレメント92は、第4エレメント14よりも給電側エレメント41側に位置し、アース電極20から接続導体30が給電電極10から伸びる方向と同方向(マイナスY軸方向)に伸びるエレメントである。アース側垂直エレメント92は、接続導体30と略平行する方向に設けられる。なお、本実施形態のアンテナ4-6は、第2短絡エレメント91とアース側垂直エレメント92のうち、いずれか一方を有していてもよく、両方を有してもよい。なお、本実施形態に係るアンテナ4-6は、これら両方を有することで、所定の周波数帯のアンテナ利得をより向上できる。
【0057】
アース側垂直エレメント92の寸法は、例えば、DTV放送波の周波数帯(約470~720MHz)の中心周波数が590MHzであり、中心周波数での波長をλとし、ガラス板の波長短縮率をk(例えば、約0.64)とすると、(1/4)×λ(約81mm)以下に設定することが好ましい。アース側垂直エレメント92を上記の範囲に設定することによって、当該周波数帯のアンテナ利得をより向上できる。
【0058】
(第8実施形態)
図9は本発明の第8実施形態に係る車両用窓ガラス100のアンテナ4の第7変形例であるアンテナ4-7を示す図である。第8実施形態のうち上述の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで、省略又は簡略する。図9の本実施形態に係るアンテナ4-7では、第7実施形態に係るアンテナ4-6と比べて、接続導体30が給電電極10の左側の下方から伸びる点が異なる。接続導体30は、給電電極10のマイナスY軸方向の端部とマイナスX軸方向の端部とが接する部分(角部)から下方に伸びる。接続導体30は、アース側垂直エレメント92及び第4エレメント14がアース電極20から伸びる方向と同方向に、それぞれ、略平行に伸びる方向に設けられる。
【0059】
本実施形態に係るアンテナ4-7では、接続導体30がアース側垂直エレメント92及び第4エレメント14に近づくため、接続導体30の少なくとも一部と、第4エレメント14の一部、及びアース側垂直エレメント92の少なくとも一部とが、容量結合しやすくなる。このため、接続導体30とアース側垂直エレメント92との間に静電結合部が形成され、接続導体30と第4エレメント14との間に静電結合部が形成される。容量結合とは、間に静電容量を有する二つの導体がコンデンサとして機能することで、二つの回路(給電側エレメント41とアース側エレメント42)を結合することである。なお、容量結合部となる2つのエレメント間の距離は、30mm以下が好ましく、25mm以下がより好ましい。また、該距離の下限は、2つのエレメントが接続しなければとくに制限はないが、例えば、5mm以上である。
【0060】
このように、接続導体30にアース側垂直エレメント92及び第4エレメント14を容量結合させることにより、アンテナ4-7のインピーダンスを下げられ、アンテナ利得を高める効果が得られる。
【0061】
また、第1水平エレメント40は、接続導体30の中間点30aに接続する代わりに、給電電極10に接続してもよい。この場合の構成例について、図10を参照して説明する。
【0062】
(第9実施形態)
図10は本発明の第9実施形態に係る車両用窓ガラス100のアンテナ4の第8変形例であるアンテナ4-8を示す図である。第9実施形態のうち上述の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで、省略又は簡略する。図10の本実施形態に係るアンテナ4-8は、第1水平エレメント40が、例えば、給電電極10の角部から、アース側エレメント42側とは反対側(プラスX軸方向)に略水平方向に伸びる。給電電極10の角部は、例えば、給電電極10のマイナスY軸方向の端部とプラスX軸方向の端部とが接する部分である。
【0063】
なお、第1実施形態から第9実施形態に係る車両用窓ガラス100のアンテナ4(及び4-1~4-6)において、給電側エレメント41は、給電電極10の下側ではなく上側に設けてもよい。その場合、アース側エレメント42は、アース電極20の下側ではなく上側に設けるようにするとよい。
【0064】
次に、実際の車両のリアガラスのガラス面に取り付けたアンテナ装置について、地上デジタルテレビ(DTV)放送波の帯域におけるアンテナ利得の測定結果を、図11図12図13図14に例示する。
【0065】
<例1>
図11は、第1実施形態に係るアンテナ4における、アンテナ利得の第1測定結果を示す図であり、例1のアンテナ4のアンテナ利得の測定結果を、比較例のパターンにおけるアンテナ利得の測定結果と併せて示した図である。なお、図11の縦軸はアンテナ利得(単位:dBi)であり、横軸は周波数(単位:MHz)である。図11のアンテナ利得のデータは、例えば車両用窓ガラス100を組み付けた車体200の中心を、ターンテーブルの中心にセットして、その車体200を360°回転させたときのアンテナ利得の平均値をプロットしたものである。また、アンテナ利得の平均値は、例えば回転角度が1°毎に、DTV放送波の周波数帯において12MHz毎に測定された複数のデータの平均値である。
【0066】
例1は、図2におけるアンテナ4の各部の寸法を以下のとおりに設定した。下記寸法は、いずれも、第1実施形態に記載する好ましい寸法の範囲に含まれる。
【0067】
接続導体30:25mm
給電電極10~中間点30a間の距離:10mm
第1水平エレメント40:110mm
第1エレメント11:110mm
第2エレメント12:50mm
第3エレメント13:135mm
(U字状エレメント50(L2):295mm)
第4エレメント14:25mm
第5エレメント15:65mm
(第1L字状エレメント60:90mm)
第6エレメント16:25mm
第7エレメント17:110mm
(第2L字状エレメント71:135mm)
【0068】
図11における実線は、例1の測定結果であり、とくに、第2L字状エレメント71を設けて第1閉ループ部81を形成したときのアンテナ利得の測定結果である。一方、図11における破線は、比較例として、第2L字状エレメント71を設けなかったとき、すなわち第1閉ループ部81を形成しなかったときのアンテナ利得の測定結果である。
【0069】
図11の測定結果によれば、第1閉ループ部81を有さなかった、比較例のアンテナにおけるDTV放送波の周波数帯の平均利得が、-5~-6[dBi]程度であったのに対し、第1閉ループ部81を有した、例1のアンテナ4におけるDTV放送波の周波数帯の平均利得は、約1.34[dBi]であった。このように、第1閉ループ部81を有する方が、アンテナ利得が良好であった。すなわち、閉ループエレメント70(第2L字状エレメント71)を設けることで、アンテナ4のアンテナ利得が向上することを確認できた。
【0070】
<例2>
図12は、第2実施形態に係るアンテナ4-1における、アンテナ利得の第2測定結果を示す図であり、例2のアンテナ4-1のアンテナ利得の測定結果を、比較例のパターンにおけるアンテナ利得の測定結果と併せて示した図である。なお、図12に示す測定結果、そして該測定結果を得るための測定条件は、例1と同じである。
【0071】
例2は、図3におけるアンテナ4の各部の寸法を以下のとおりに設定した。下記寸法は、いずれも、第2実施形態に記載する好ましい寸法の範囲に含まれる。なお、アース側エレメント42の寸法は、例1と同じとした。
【0072】
接続導体30:25mm
給電電極10~中間点30aの距離:10mm
第1水平エレメント40:110mm
第1エレメント11:110mm
第2エレメント12:50mm
第3エレメント13:135mm
(U字状エレメント50(L2):295mm)
第1短絡エレメント72:50mm
第1短絡エレメント72~第2エレメント12間の距離:30mm
【0073】
図12における実線は、例1の測定結果であり、とくに、第1短絡エレメント72を設けて第1閉ループ部83を形成したときのアンテナ利得の測定結果である。一方、図12における破線は、比較例として、第1短絡エレメント72を設けなかったとき、すなわち第1閉ループ部83を形成しなかったときのアンテナ利得の測定結果である。
【0074】
図12の測定結果によれば、例1と同様、第1閉ループ部83を設けること、すなわち、第1短絡エレメント72を設けることでアンテナ4-1のアンテナ利得が向上することを確認できた。第1短絡エレメント72を設けない時の平均アンテナ利得は-3.6[dBi]であるのに対して、第1短絡エレメント72を設けた時の平均アンテナ利得は-0.3[dBi]であり、3.3[dB]の向上が見られた。
【0075】
<例3>
図13は、第8実施形態に係るアンテナ4-7における、アンテナ利得の第3測定結果を示す図であり、例3のアンテナ4-7のアンテナ利得の測定結果を、比較例のパターンにおけるアンテナ利得の測定結果と併せて示した図である。なお、図13に示す測定結果、そして該測定結果を得るための測定条件は、例1と同じである。
【0076】
例3は、図8におけるアンテナ4-7の各部の寸法を以下のとおりに設定した。下記寸法は、いずれも、第8実施形態に記載する好ましい寸法の範囲に含まれる。
【0077】
接続導体30:25mm
給電電極10~中間点30a間の距離:10mm
第1水平エレメント40:110mm
第1エレメント11:110mm
第2エレメント12:50mm
第3エレメント13:135mm
(U字状エレメント50(L2):295mm)
第1短絡エレメント72:50mm
第1短絡エレメント72~第2エレメント12間の距離(W1):30mm
第6エレメント16~第1短絡エレメント72間の距離(W2):80mm
W1:W2=3:8
第4エレメント14:25mm
第5エレメント15:65mm
(第1L字状エレメント60:90mm)
第6エレメント16:25mm
第7エレメント17:110mm
(第2L字状エレメント71:135mm)
第2水平エレメント80:70mm
第3水平エレメント90:70mm
アース電極20~中間点14a間の距離:10mm
第4エレメント14~第2短絡エレメント91間の距離:30mm
アース側垂直エレメント92:40mm
アース側垂直エレメント92~接続導体30間の距離:22mm
アース側垂直エレメント92~第4エレメント14間の距離:13mm
【0078】
図13における実線は、例3の測定結果であり、とくに、第1水平エレメント40を設けたときのアンテナ利得の測定結果である。一方、図13における破線は、比較例として、第1水平エレメント40を設けなかったときのアンテナ利得の測定結果である。図13の測定結果によれば、第1水平エレメント40を設けることでアンテナ4-7のアンテナ利得が向上することを確認できた。第1水平エレメント40を設けなかったときの平均アンテナ利得は、-0.9[dBi]であるのに対して、第1水平エレメント40を設けた時の平均アンテナ利得は1.3[dBi]であり、2.2[dB]の向上が見られた。
【0079】
<例4>
図14は、第8実施形態に係るアンテナ4-7における、アンテナ利得の第4測定結果を示す図である。なお、図14における測定結果(実線、破線)は、いずれも実施例であり、図14における実線は、例3におけるアンテナ4-7の寸法と同じであり、例3の実線の測定結果と同じである。一方、図14における破線は、アース側垂直エレメント92を設けなかったこと以外は例3と同じ寸法で得られたアンテナのアンテナ利得の測定結果である。図14の測定結果によれば、アース側垂直エレメント92を設けなかったとしても、所定のアンテナ利得が得られるが、アース側垂直エレメント92を設けたことで(アンテナ4-7の)アンテナ利得がより向上することを確認できた。アース側垂直エレメント92を設けない場合の平均アンテナ利得は0.1[dBi]であるのに対して、アース側垂直エレメント92を設けた場合の平均アンテナ利得は1.3[dBi]であり、1.2[dB]の向上が見られた。
【0080】
なお、アンテナ4-5、アンテナ4-6のアース側エレメント42の構成は、前述したアンテナ4,4-1,4-2,4-4にも組み合わせることができる。
【0081】
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 :ガラス板
2 :バスバー
3 :電熱線
4 :アンテナ
4-1 :アンテナ
4-2 :アンテナ
4-3 :アンテナ
4-4 :アンテナ
4-5 :アンテナ
4-6 :アンテナ
4-7 :アンテナ
5 :カメラモジュール取付部
10 :給電電極
11 :第1エレメント
12 :第2エレメント
13 :第3エレメント
14 :第4エレメント
14a :中間点
15 :第5エレメント
16 :第6エレメント
17 :第7エレメント
17a :端部
20 :アース電極
30 :接続導体
30a :中間点
40 :第1水平エレメント
41 :給電側エレメント
42 :アース側エレメント
50 :U字状エレメント
60 :第1L字状エレメント
70 :閉ループエレメント
71 :第2L字状エレメント
72 :第1短絡エレメント
80 :第2水平エレメント
81 :第1閉ループ部
82 :第2閉ループ部
83 :第1閉ループ部
84 :第1閉ループ部
90 :第3水平エレメント
91 :第2短絡エレメント
92 :アース側垂直エレメント
100 :車両用窓ガラス
200 :車体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14