(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】水系のバイオファウリング抑制方法および水処理装置
(51)【国際特許分類】
B01D 65/06 20060101AFI20230117BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20230117BHJP
C02F 1/70 20230101ALI20230117BHJP
C02F 1/76 20230101ALI20230117BHJP
B01D 65/08 20060101ALI20230117BHJP
B01D 61/04 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
B01D65/06
C02F1/44 D
C02F1/70 Z
C02F1/76 A
B01D65/08
B01D61/04
(21)【出願番号】P 2021040854
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2022-03-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109508
【氏名又は名称】菊間 忠之
(72)【発明者】
【氏名】中田 耕次
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/133620(WO,A1)
【文献】特開2010-201313(JP,A)
【文献】国際公開第2019/031430(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/22、61/00-71/82
C02F1/44、1/70、1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素系酸化剤を含む水に全塩素換算が困難なバイオファウリング抑制剤若しくはスライムコントロール剤を添加し、
前記バイオファウリング抑制剤若しくはスライムコントロール剤が添加された後の水に還元剤を添加し、
次いで還元剤が添加された後の水に逆浸透膜を用いた処理を施すことを含
み、
前記バイオファウリング抑制剤若しくはスライムコントロール剤がイソチアゾロン化合物を含むものである、
塩素系酸化剤を含む水を処理する方法。
【請求項2】
塩素系酸化剤を含む水に全塩素換算が困難なバイオファウリング抑制剤若しくはスライムコントロール剤を添加し、
前記バイオファウリング抑制剤若しくはスライムコントロール剤が添加された後の水に還元剤を添加することを含
み、
前記バイオファウリング抑制剤若しくはスライムコントロール剤がイソチアゾロン化合物を含むものである、
逆浸透膜のファウリングを抑制する方法。
【請求項3】
前記バイオファウリング抑制剤若しくはスライムコントロール剤の添加量は、水の体積に対して、0.005~5mg/Lである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
還元剤が、亜硫酸、亜硫酸塩または重亜硫酸塩である、請求項1~3のいずれかひとつに記載の方法。
【請求項5】
塩素系酸化剤が、過塩素酸、過塩素酸塩、塩素酸、塩素酸塩、亜塩素酸、亜塩素酸塩、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩または塩素である、請求項1~4のいずれかひとつに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透膜のファウリングを抑制する方法および水処理方法に関する。より詳細に、本発明は、逆浸透膜上でのバイオフィルムの形成および逆浸透膜自体の損傷を抑制して、逆浸透膜のファウリングを抑制する方法、および逆浸透膜上でのバイオフィルムの形成および逆浸透膜自体の損傷を抑制しつつ、塩素系酸化剤を含む水を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜は、液体濃縮、脱塩、純水製造その他の水処理などに使用されている。逆浸透膜は、水処理などに使用している間に、種々な物質によって汚染され、透過流束が低下したり、選択透過率が低下したりする。逆浸透膜に用いられる膜としては、酢酸セルロース膜、ポリエーテル系膜、架橋アラミド系膜などが知られている。
【0003】
ところで、水処理装置の原水としては、例えば、工業用水、市水、井水、河川水、湖沼水、工場廃水などが用いられる。市水の殆どには次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系酸化剤が添加されている。または井水や回収水にも微生物の繁殖を抑える目的で塩素系酸化剤が添加されることがある。水に添加された塩素系酸化剤に由来する遊離塩素は逆浸透膜を侵すことがあるので、逆浸透膜の手前で残留遊離塩素を除去することが好ましい。
【0004】
一方、生物の繁殖条件が整い、スライムを形成しやすい水を処理する場合は、逆浸透膜において菌が繁殖し、逆浸透膜が閉塞(バイオファウリング)することがある。バイオファウリングまたはスライム形成を抑制するために、バイオファウリング抑制剤またはスライムコントロール剤を使用することがある。
【0005】
例えば、特許文献1は、酸化剤を含む水に亜硝酸及び/又はその塩を添加して該酸化剤を還元除去し、前記亜硝酸及び/又はその塩添加後の水に酸化性薬品を添加することを特徴とする、酸化剤を含む水を逆浸透膜装置で逆浸透膜処理する際の前処理方法を開示している。特許文献1は、酸化性薬品として、クロロスルファミン酸、クロロスルファミン酸の塩、および安定化次亜臭素酸系スライムコントロール剤よりなる群から選ばれる1種または2種以上を開示している。
【0006】
特許文献2は、微多孔膜と、特殊な構造単位を含有する架橋高分子薄膜とからなる複合半透膜を逆浸透操作するに際し、0.5~5000ppmの塩素系殺菌剤を含有するpH4~7の水溶液で殺菌処理し、しかる後に1.0~5000ppmの還元剤を含有する水溶液で洗浄して複合半透膜を反復使用することを特徴とする複合半透膜の使用方法を開示している。
【0007】
特許文献3は、第一面と第二面とを有する正浸透膜において、第一面をフィード溶液に接触させるとともに、第二面をフィード溶液より高い浸透圧を有するドロー溶液に浸透させることで、フィード溶液中に含まれる水を、正浸透膜を通して第一面側から第二面側に移動させる浸透工程と、浸透工程の前にフィード溶液およびドロー溶液の少なくとも一方に塩素系殺菌剤を添加する殺菌剤添加工程と、殺菌剤添加工程の後、浸透工程の前にフィード溶液およびドロー溶液の少なくとも一方に還元剤を添加する還元剤添加工程を含む、正浸透処理方法を開示している。
【0008】
特許文献4は、海水を逆浸透膜に透過させることで得られた淡水を用いて原油産出用の圧入水を生産する圧入水生産システムにおいて、海水に塩素系殺菌剤を添加する殺菌剤添加装置と、殺菌剤添加装置によって塩素系殺菌剤が添加された海水中の残留塩素濃度を測定する残留塩素濃度測定装置と、残留塩素濃度測定装置の後段に設置され、塩素系殺菌剤が添加された海水に対して、海水中の残留塩素を脱塩素化する還元剤を添加する還元剤添加装置と、還元剤添加装置により還元剤が添加された海水が透過されることで圧入水を得る逆浸透膜と、残留塩素濃度測定装置により測定された残留塩素濃度に基づいて、殺菌剤添加装置による塩素系殺菌剤の添加量を制御する演算制御装置と、を備える、圧入水生産システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2016-221500号公報
【文献】特開昭59-26101号公報
【文献】特開2015-188787号公報
【文献】特開2016-22458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、逆浸透膜上でのバイオフィルムの形成および逆浸透膜自体の損傷を抑制して、逆浸透膜のファウリングを抑制する方法、および逆浸透膜上でのバイオフィルムの形成および逆浸透膜自体の損傷を抑制しつつ、塩素系酸化剤を含む水を処理する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために検討した結果、以下の実施形態を包含する本発明を完成するに至った。
〔1〕 塩素系酸化剤を含む水にバイオファウリング抑制剤若しくはスライムコントロール剤を添加し、バイオファウリング抑制剤若しくはスライムコントロール剤が添加された後の水に還元剤を添加し、次いで還元剤が添加された後の水に逆浸透膜を用いた処理を施すことを含む、塩素系酸化剤を含む水を処理する方法。
【0012】
〔2〕 塩素系酸化剤を含む水にバイオファウリング抑制剤若しくはスライムコントロール剤を添加し、バイオファウリング抑制剤若しくはスライムコントロール剤が添加された後の水に還元剤を添加することを含む、逆浸透膜のファウリングを抑制する方法。
【0013】
〔3〕 バイオファウリング抑制剤若しくはスライムコントロール剤が、イソチアゾロン化合物を含むものである、〔1〕または〔2〕に記載の方法。
〔4〕 還元剤が、亜硫酸、亜硫酸塩または重亜硫酸塩である、〔1〕~〔3〕のいずれかひとつに記載の方法。
〔5〕 塩素系酸化剤が、過塩素酸、過塩素酸塩、塩素酸、塩素酸塩、亜塩素酸、亜塩素酸塩、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩または塩素である、〔1〕~〔4〕のいずれかひとつに記載の方法。
【0014】
〔6〕 イソチアゾロン化合物が、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾール-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾール-3-オン、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾール-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾール-3-オン、1,2-ベンゾイソチアゾール-3-オン、N-メチル-1,2-ベンゾイソチアゾール-3-オン、またはN-(n-ブチル)-1,2-ベンゾイソチアゾール-3-オンである、〔3〕に記載の方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の方法を用いると、逆浸透膜上でのバイオフィルムの形成および逆浸透膜自体の損傷を抑制して、逆浸透膜のファウリングを抑制することができる。本発明の水処理方法によると、塩素系酸化剤を含む水を、逆浸透膜上でのバイオフィルムの形成および逆浸透膜自体の損傷を効果的に抑制しつつ、処理することができる。本発明の方法は、逆浸透膜の使用可能期間を延ばし、逆浸透膜の交換若しくは洗浄の頻度を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の水処理装置の構成例を示す図である。
【
図2】従来技術の水処理装置の構成例を示す図である。
【
図3】従来技術の水処理装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の塩素系酸化剤を含む水を処理する方法は、塩素系酸化剤を含む水にバイオファウリング抑制剤若しくはスライムコントロール剤を添加し、バイオファウリング抑制剤若しくはスライムコントロール剤が添加された後の水に還元剤を添加し、次いで還元剤が添加された後の水に逆浸透膜を用いた処理を施すことを含む。
また、本発明の逆浸透膜のファウリングを抑制する方法は、塩素系酸化剤を含む水にバイオファウリング抑制剤若しくはスライムコントロール剤を添加し、バイオファウリング抑制剤若しくはスライムコントロール剤が添加された後の水に還元剤を添加することを含む。
【0018】
本発明に用いられる塩素系酸化剤の例としては、過塩素酸、過塩素酸塩、塩素酸、塩素酸塩、亜塩素酸、亜塩素酸塩、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩、塩素などを挙げることができる。塩素は電極を使用して系中で生成させることもできる。過塩素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩および次亜塩素酸塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩などを挙げることができ、好ましくはナトリウム塩を挙げることができる。これらのうち、本発明においては次亜塩素酸ナトリウムが賞用される。
【0019】
バイオファウリング抑制剤若しくはスライムコントロール剤を添加する直前の水に含有する塩素系酸化剤の量は、特に限定されないが、塩素質量濃度として、水の体積に対して、通常、0.1~10mg/L、好ましくは0.3~2mg/Lである。塩素質量濃度は、JIS K 0400-33-10: 1999 N,N-ジエチル-1,4-フェニレンジアミンを用いるDPD法により測定することができる。
【0020】
本発明に用いられるバイオファウリング抑制剤若しくはスライムコントロール剤としては、2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド、イソチアゾロン化合物、アンモニアクロラミン、クロロスルファミン酸、安定化次亜臭素酸系スライムコントロール剤(オルガノ(株)製 商品名「オルパージョン E266シリーズ」、Nalco社製 商品名「スタブレックス」)などを挙げることができる。これらのうち、イソチアゾロン化合物を含むものが好ましい。イソチアゾロン化合物としては、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾール-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾール-3-オン、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾール-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾール-3-オン、1,2-ベンゾイソチアゾール-3-オン、N-メチル-1,2-ベンゾイソチアゾール-3-オン、N-(n-ブチル)-1,2-ベンゾイソチアゾール-3-オンなどを挙げることができる。バイオファウリング抑制剤若しくはスライムコントロール剤は、顆粒、粉末、水溶液若しくは液体の形態で添加することが好ましい。
【0021】
バイオファウリング抑制剤若しくはスライムコントロール剤の添加量は、用いるバイオファウリング抑制剤若しくはスライムコントロール剤の種類などによって異なる。
全塩素換算が可能なバイオファウリング抑制剤若しくはスライムコントロール剤の場合、添加量は、水の体積に対して、通常、0.01~50mg/Lである。
例えば、クロロスルファミン酸ナトリウムの場合、添加量は、水の体積に対して、全塩素換算として、通常、0.1~10mg/L、好ましくは0.5~3mg/Lである。
安定化次亜臭素酸系スライムコントロール剤の場合、添加量は、水の体積に対して、全塩素換算として、通常、0.01~3mg/L、好ましくは0.02~0.2mg/Lである。
2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミドの場合、添加量は、水の体積に対して、全塩素換算として、通常、0.1~10mg/L、好ましくは0.2~6mg/Lである。
【0022】
全塩素換算が困難なバイオファウリング抑制剤若しくはスライムコントロール剤の場合、添加量は、水の体積に対して、通常、0.005~5mg/Lである。例えば、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾール-3-オンなどのイソチアゾロン化合物の場合、添加量は、水の体積に対して、通常、0.01~2mg/L、好ましくは0.03~1mg/Lである。
【0023】
本発明に用いられる還元剤の例としては、亜硝酸、亜硝酸塩、亜硫酸、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、チオ硫酸、チオ硫酸塩などを挙げることができる。亜硝酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩およびチオ硫酸塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩などを挙げることができ、好ましくはナトリウム塩を挙げることができる。これらのうち、亜硫酸水素ナトリウム、または亜硫酸ナトリウムが賞用される。還元剤は水溶液の形態で添加することが好ましい。
【0024】
還元剤の添加量は、特に制限されないが、還元剤を添加する直前の水に含有する塩素系酸化剤1g当量に対して、好ましくは1g当量以上、より好ましくは1.5~4g当量、さらに好ましくは2~3g当量である。なお、1g当量は1モルの質量を価数で除した値である。また、本発明においては、残留塩素計を、塩素系酸化剤を含む水が通る水処理施設の配管に取り付けて、塩素質量濃度を計測し、その測定値に基いて、還元剤の添加量を調節してもよい。還元剤の添加量の調節のために、制御システムを組んでもよい。
【0025】
塩素系酸化剤は、微生物の繁殖を抑制するが、その一方で逆浸透膜を侵食する。塩素系酸化剤を還元剤によって還元してしまうと、微生物繁殖の抑制効果が無くなり、逆浸透膜においてファウリングを生じやすくなる。そこで、本発明においては、塩素系酸化剤を含む水に、先ず、バイオファウリング抑制剤若しくはスライムコントロール剤を添加して、次いで還元剤を添加して塩素系酸化剤を還元している。バイオファウリング抑制剤若しくはスライムコントロール剤は、還元剤の添加によっても、その含有量が差ほど減らないので、塩素系酸化剤が還元反応によって消費された後にも、微生物の繁殖の抑制効果が維持され、逆浸透膜においてファウリングを抑制できる。
【0026】
なお、本発明に用いられる逆浸透膜は、逆浸透を利用して、低分子物質またはイオンと、水とを分離するために使用される半透膜である。逆浸透は、半透膜を挟んで濃縮液と透過液を配置し、濃縮液側に浸透圧を超える圧力を加えて水を透過液側に透過させることである。該半透膜に使用される材料は、特に制限されず、例えば、ポリアミド、ポリスルホン、ポリイミド、セルロースなどが挙げられる。
逆浸透膜は、通常、他の部材と一体化して膜モジュールの形態にして使用される。膜モジュールとしては、ケーシング収納方式膜モジュール、槽浸漬方式膜モジュールなどが挙げられる。ケーシング収納方式膜モジュールは、逆浸透膜、それの支持体、流路材などの部材をケーシングに収納し一体化したものである。ケーシング収納方式膜モジュールとしては、例えば、スパイラル型モジュールなどの平膜を用いたモジュール、キャピラリー型モジュール、中空糸型モジュールなどの管状膜を用いたモジュールを挙げることができる。
【0027】
次に、実施例及び比較例を示して、本発明をより具体的に説明する。但し、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものでない。
【0028】
比較例1
排水をUF膜装置で処理して表1に示す水質の水(以下、被処理水)を用意した。なお、この被処理水は、無機物質の濃度が低いので、実施例および比較例を行っている期間に、逆浸透膜に無機物質由来のスケールを生じさせないものであることが確認されている。
【0029】
【0030】
図2に示す水処理装置にES20(日東電工(株)製逆浸透膜)を用いた逆浸透膜モジュールを設置した。
次亜塩素酸ナトリウム(塩素系酸化剤)の添加量が1mg/L、重亜硫酸ナトリウム(還元剤)の添加量が1.5mg/Lとなるように、
図2に示す水処理装置に、被処理水を通して、水処理を行った。通水開始から15日経過したところで、モジュールの差圧が急激に上昇し、装置が自動停止した。
【0031】
比較例2
図3に示す水処理装置にES20を用いた逆浸透膜モジュールを設置した。
次亜塩素酸ナトリウム(塩素系酸化剤)の添加量が1mg/L、重亜硫酸ナトリウム(還元剤)の添加量が1.5mg/L、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(バイオファウリング抑制剤)の添加量が0.5mg/Lとなるように、
図3に示す水処理装置に、被処理水を通して、水処理を行った。通水開始から16日経過したところで、モジュールの差圧が急激に上昇し、装置が自動停止した。なお、表1に示す水質の有機排水に、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(バイオファウリング抑制剤)を0.5mg/L添加するとバイオフィルムが発生しないことがわかっている。還元剤の添加点とバイオファウリング抑制剤添加点との間においてバイオフィルムが発生し、それが逆浸透膜に堆積したようである。
【0032】
実施例1
図1に示す水処理装置にES20を用いた逆浸透膜モジュールを設置した。
次亜塩素酸ナトリウム(塩素系酸化剤)の添加量が1mg/L、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(バイオファウリング抑制剤)の添加量が0.5mg/L、重亜硫酸ナトリウム(還元剤)の添加量が1.5mg/Lとなるように、
図1に示す水処理装置に、被処理水を通して、水処理を行った。通水開始から50日経過しても、モジュールの差圧は、ほとんど変わらなかった。
【0033】
バイオファウリング抑制剤の添加後で且つ還元剤の添加前の水中の、次亜塩素酸ナトリウムの濃度は1.0mg/L、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンの濃度は0.5mg/Lであった。
還元剤の添加後で且つ逆浸透装置の前の水中の、次亜塩素酸ナトリウムの濃度は0.15mg/L(約85%減少)、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンの濃度は0.37mg/L(約26%減少)であった。還元剤の添加によって塩素系酸化剤は大幅に減少するのに対してバイオファウリング抑制剤は差ほど減少しないことがわかる。
なお、次亜塩素酸ナトリウムの濃度はDPD法によって、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンの濃度はHPLC法によって、分析した。
【符号の説明】
【0034】
1:被処理水
2:塩素系酸化剤の添加装置
7:バイオファウリング抑制剤若しくはスライムコントロール剤の添加装置
3:還元剤の添加装置
4:逆浸透膜装置
5:濃縮水
6:透過水