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特許7211494室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/06 20060101AFI20230117BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20230117BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230117BHJP
【FI】
C08L83/06
C08K5/54
C08K3/013
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021514869
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(86)【国際出願番号】 JP2020015035
(87)【国際公開番号】W WO2020213402
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2019078627
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516272870
【氏名又は名称】韓国信越シリコーン株式会社
【氏名又は名称原語表記】SHIN-ETSU SILICONE KOREA Co.,LTD.
【住所又は居所原語表記】411, Seocho-daero, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク ジャリョン
(72)【発明者】
【氏名】ユン ドンソプ
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 功
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-015557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(i)下記一般式(1)で表されるジオルガノポリシロキサン、
【化1】
(式中、Rは同一又は異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、aは10以上の整数である。)
(ii)下記一般式(2)で表されるヒドロキシ基含有炭化水素系化合物 上記(i)成分のジオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合した水酸基1モルに対して0.01~0.5モルとなる量、及び
1-OH (2)
(式中、R1は炭素数3~20の同一又は異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基である。)
(iii)塩化白金酸六水和物 (A)成分全体の0.01~1質量%となる量
3成分のみからなる反応生成物:100質量部、
(B)無機充填剤:3~300質量部、
(C)1分子中に少なくとも3個の加水分解性基を有するオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物:1~20質量部、
(D)縮合硬化触媒:0.01~5質量部、
(E)シランカップリング剤(ただし、(C)成分及び(D)成分を除く):0.1~5質量部
を含有してなる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物であって、該室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物中において、無官能性シリコーンオイルの含有量が0質量%以上10質量%未満である室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物
【請求項2】
(B)成分の無機充填剤が煙霧質シリカ及び/又は炭酸カルシウムを含有するものである請求項1に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
(E)成分のシランカップリング剤が加水分解性基としてアルコキシシリル基を有するアミン系のシランカップリング剤である請求項1又は2に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
JIS K 6249で規定されるタイプAデュロメータ硬さが10~30であり、切断時伸びが500%以上であるシリコーンゴム硬化物を与えるものである請求項1~のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項5】
トルエンに24時間浸漬することによりトルエン層に抽出される成分の量が10質量%以下であるシリコーンゴム硬化物を与えるものである請求項1~のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項6】
建築用シーリング材用である請求項1~のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項7】
(i)下記一般式(1)で表されるジオルガノポリシロキサン、
【化2】
(式中、Rは同一又は異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、aは10以上の整数である。)
(ii)下記一般式(2)で表されるヒドロキシ基含有炭化水素系化合物:上記(i)成分のジオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合した水酸基1モルに対して0.01~0.5モルとなる量、及び
1-OH (2)
(式中、R1は炭素数3~20の同一又は異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基である。)
(iii)塩化白金酸六水和物:(i)、(ii)及び(iii)成分の合計質量に対して0.01~1質量%となる量
の3成分のみを0℃以上50℃以下で5分間以上混合して反応生成物(A)を調製した後、
該反応生成物(A)100質量部に対して、
(B)無機充填剤:3~300質量部、
(C)1分子中に少なくとも3個の加水分解性基を有するオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物:1~20質量部、
(D)縮合硬化触媒:0.01~5質量部、及び
(E)シランカップリング剤(ただし、(C)成分及び(D)成分を除く):0.1~5質量部
を均一に混合する工程を含む室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法であって、該室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物中において、無官能性シリコーンオイルの含有量が0質量%以上10質量%未満である室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中の湿気により縮合硬化反応によって室温で架橋(硬化)してシリコーンゴム弾性体となるオルガノポリシロキサン組成物に関し、特に石目地やガラス、塗装アルミパネルなどへ使用した際の周辺環境への汚染が少なく、各種基材、特にガラス、塗装アルミへの接着性に優れ、長期に渡って物性変化の少ない硬化物を与える室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
室温(23℃±15℃)で硬化してシリコーンゴム(エラストマー状の弾性体)となる組成物は従来から知られており、産業界で広く使用されてきた。室温で硬化する機構には、ヒドロシリル化反応によって硬化する機構、紫外線によって硬化する機構、水酸基とケイ素原子結合加水分解性基との縮合反応によって硬化する機構などが知られている。中でも縮合反応により硬化するオルガノポリシロキサン組成物は、室温で硬化し、各種基材に接着発現が可能で、ヒドロシリル化反応などに見られる不純物による硬化阻害を起しにくい利点を有するため、建築用シーリング材、土木用シーリング材などの用途で好適に用いられている。
【0003】
建築用シーリング材では硬化後のゴムのJIS K 6249で規定されたタイプAデュロメータ硬さが10~30で、切断時伸びが500%以上であるような日本シーリング材工業会の定めた基準で低~中モジュラスに該当するような低弾性の物性がシーリング目地への追従性の点で有利である。これに応える技術として反応性基のないシリコーンオイルで希釈する方法、あるいは種々の可塑剤を添加する方法などの対応が採用されている。しかしながら、これらの方法では低弾性率に対してそれなりの効果が認められるものの、長期の使用により目地周辺にマイグレーションした可塑剤に汚れが付着したり、天然石などの多孔質材料に使用した際には可塑剤が石材内部にマイグレーションして、滲み汚染が生じることがあり、これらの改良が望まれている。
【0004】
ここで、これらの汚染性について、完全に無くすことは困難だが、反応性の無いシリコーンオイルを可塑剤として配合しない組成物であれば、ある程度は達成される。しかしながら、この場合、硬化後のゴムのモジュラスが高くなり、また金属や各種塗装に対して接着性が十分でないという問題がある。そこで可塑剤を配合しない組成で軟らかいゴムを得るための方策として、2官能性の鎖長延長能を有する架橋剤と多官能性の架橋剤を併用して硬化反応中にジオルガノポリシロキサンの鎖を延ばしながら架橋を行うことにより、硬化後の架橋密度を低下させる方法が採られてきた。代表的なものとしてはアミノキシ型といわれるN,N-ジアルキルアミノキシ基を有するシロキサンを架橋剤に用いたもの、アミド型といわれるN-アルキルアセトアミド基を有するシランを架橋剤に用いたものが使用されている。しかしながら、これらには、組成物の貯蔵安定性が悪いことや、アルコールなど活性水素を有する化合物との共存により、硬化阻害を引き起こし、残存したフリーオイル成分が可塑剤と同様の汚染源になってしまうという問題点があった。
【0005】
そこで、良好な貯蔵安定性を有し、硬化阻害を起さず、従来から広く使用されて来た官能基を用いて架橋密度の低いゴムを得ようという提案がなされた(特許文献1:特開昭63-83167号公報)。これは鎖長延長能を有するRNHCH2MeSi(OMe)2などを使用するものである。しかしながら、この化合物を経済的に製造することは著しく困難であり、また他の架橋剤とのバランスを安定的にとることも困難であった。更に、分子鎖片末端が水酸基であり、もう一方の末端にトリアルキルシロキシ基を有するジオルガノポリシロキサンを用いる方法がいくつか提案されている(特許文献2,3:特開平9-151326号公報、特開2004-182942号公報)。しかしながら、この片末端がシラノール基で封鎖され、もう一方の片末端がトリアルキルシロキシ基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンの調製を、ジオルガノシクロポリシロキサンをアルカリ触媒もしくは酸触媒により平衡化重合するという一般的な方法で行った場合、無反応性のジオルガノポリシロキサンを副生してしまい、これの除去が不可能なため、組成物の使用時に滲み出し汚染が起こり天然石などの石目地汚染してしまうという問題が解決されなかった。
また、トリメチルシロキシリチウムを開始剤として環状シロキサン三量体を開環重合する方法やトリメチルヒドロキシシランなどを開始剤に用い、ケイ素五配位化合物の存在下において重合する方法により、副生する無反応性のジオルガノポリシロキサンを少量にすることができるが、モノマー、触媒が高価であるため、経済的に不利である。
また、ジフェニルメチルシラノールなどのトリオルガノシラノールを用いて硬化反応を遅延させて架橋密度を低下させることも提案された(特許文献4:特許第4912746号公報)が、長期間に渡って低モジュラス物性を維持することは困難であった。
【0006】
これまで説明したように、表面や天然石への滲み出し汚染が少なく、シーリング材として好ましい低モジュラスから中モジュラスの接着性に優れた軟らかいシリコーンゴム硬化物が得られる、貯蔵安定性に優れ、硬化後に長期間に渡って低いモジュラス物性を維持することのできる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭63-83167号公報
【文献】特開平9-151326号公報
【文献】特開2004-182942号公報
【文献】特許第4912746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、低モジュラスから中モジュラスの低弾性率のゴム弾性を長期間に渡って維持し、且つ、天然石や塗装アルミなどへの汚染が少ないシリコーンゴム硬化物を与える室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、予め下記一般式(1)で表されるジオルガノポリシロキサンと、該ジオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合した水酸基(シラノール)基に対して特定比率の下記一般式(2)で示されるアルコール化合物に代表されるヒドロキシ基含有炭化水素系化合物と、塩化白金酸を好ましくは0℃以上50℃以下で5分間以上混合して反応させた反応生成物を調製した後、該反応生成物と、一分子中に少なくとも3個の加水分解性基を有するオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物、無機充填剤、縮合硬化触媒、及びシランカップリング剤とを均一に混合して室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を製造することにより、該組成物中におけるフリーオイル(即ち、分子鎖両末端トリオルガノシロキシ基封鎖直鎖状ジオルガノポリシロキサンに代表される、分子鎖末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状及び/又は分岐鎖状ジオルガノポリシロキサン、又は分子中に官能性基を有さない環状ジオルガノポリシロキサン等のいわゆる無官能性シリコーンオイル)の副生が抑制されると共に、該組成物の硬化物として低~中モジュラスに該当する低弾性のシリコーンゴム硬化物が得られ、更に、被着材との接着性、特に例えばフッ素樹脂、アクリル樹脂等で表面処理されたアルミ材などの各種基材への接着性に優れ、天然石などの多孔質材料や塗装アルミパネル等の周辺環境を汚染しない低弾性の硬化物(シリコーンゴム)が得られ、且つ組成物貯蔵時の保存安定性が良好であり、上述した問題点を解決できる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物が得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及び該組成物の製造方法を提供するものである。
1.
(A)(i)下記一般式(1)で表されるジオルガノポリシロキサン、
【化1】
(式中、Rは同一又は異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、aは10以上の整数である。)
(ii)下記一般式(2)で表されるヒドロキシ基含有炭化水素系化合物 上記(i)成分のジオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合した水酸基1モルに対して0.01~0.5モルとなる量、及び
1-OH (2)
(式中、R1は炭素数3~20の同一又は異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基である。)
(iii)塩化白金酸六水和物 (A)成分全体の0.01~1質量%となる量
3成分のみからなる反応生成物:100質量部、
(B)無機充填剤:3~300質量部、
(C)1分子中に少なくとも3個の加水分解性基を有するオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物:1~20質量部、
(D)縮合硬化触媒:0.01~5質量部、
(E)シランカップリング剤(ただし、(C)成分及び(D)成分を除く):0.1~5質量部
を含有してなる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物であって、該室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物中において、無官能性シリコーンオイルの含有量が0質量%以上10質量%未満である室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物

(B)成分の無機充填剤が煙霧質シリカ及び/又は炭酸カルシウムを含有するものである1に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。

(E)成分のシランカップリング剤が加水分解性基としてアルコキシシリル基を有するアミン系のシランカップリング剤である1又は2に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。

JIS K 6249で規定されるタイプAデュロメータ硬さが10~30であり、切断時伸びが500%以上であるシリコーンゴム硬化物を与えるものである1~のいずれかに記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。

トルエンに24時間浸漬することによりトルエン層に抽出される成分の量が10質量%以下であるシリコーンゴム硬化物を与えるものである1~のいずれかに記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。

建築用シーリング材用である1~のいずれかに記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。

(i)下記一般式(1)で表されるジオルガノポリシロキサン、
【化2】
(式中、Rは同一又は異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、aは10以上の整数である。)
(ii)下記一般式(2)で表されるヒドロキシ基含有炭化水素系化合物:上記(i)成分のジオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合した水酸基1モルに対して0.01~0.5モルとなる量、及び
1-OH (2)
(式中、R1は炭素数3~20の同一又は異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基である。)
(iii)塩化白金酸六水和物:(i)、(ii)及び(iii)成分の合計質量に対して0.01~1質量%となる量
の3成分のみを0℃以上50℃以下で5分間以上混合して反応生成物(A)を調製した後、
該反応生成物(A)100質量部に対して、
(B)無機充填剤:3~300質量部、
(C)1分子中に少なくとも3個の加水分解性基を有するオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物:1~20質量部、
(D)縮合硬化触媒:0.01~5質量部、及び
(E)シランカップリング剤(ただし、(C)成分及び(D)成分を除く):0.1~5質量部
を均一に混合する工程を含む室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法であって、該室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物中において、無官能性シリコーンオイルの含有量が0質量%以上10質量%未満である室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法
【0011】
本発明に係る室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、好適には該組成物中において、無官能性シリコーンオイル(即ち、分子鎖末端がトリオルガノシロキシ基(ケイ素原子がSi-O-C結合を有さないシロキシ基)で封鎖された、縮合硬化反応に関与しない直鎖状及び/又は分岐鎖状ジオルガノポリシロキサン、又は分子中に官能性基を含有しない環状ジオルガノポリシロキサン)の含有量が、0質量%以上10質量%未満であることが望ましい。この無官能性シリコーンオイル含有量が組成物中に10質量%以上であると該組成物を硬化して得られるシリコーンゴム硬化物をシーリング材等として御影石など多孔質な石材等へ適用した際に滲み出し汚染が発生する場合がある。なお、本発明に係る室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物中の無官能性シリコーンオイルの含有量は、後述するように、硬化物(シリコーンゴム)をトルエンに浸漬後に乾燥させて得られる質量減少試験(トルエン抽出試験)によって求めることができる。
更に、(B)無機充填剤が無処理の炭酸カルシウム、炭酸カルシウムに対して3質量%以下の処理剤で処理されている炭酸カルシウム、及び煙霧質シリカの中から選択されるいずれか又は複数併用したものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、御影石など多孔質な石材等への滲み出し汚染が少ない低弾性率の硬化物(シリコーンゴム)を与えるものであり、目地の伸縮が大きな場合も良好な追従性を示すことから建築用シーリング材等として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物]
以下に、本発明に係る室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物について説明する。
【0014】
[(A)成分]
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に含まれる(A)成分は本発明の組成物の主剤(ベースポリマー)となるものであり、以下に示す3成分、(i)ジオルガノポリシロキサン、(ii)ヒドロキシ基含有炭化水素系化合物、(iii)塩化白金酸六水和物の反応生成物であり、(i)成分中のシラノール基の一部が(ii)成分のヒドロキシ基含有炭化水素系化合物と置換反応したものである。
【0015】
((i)成分)
(i)成分は下記一般式(1)により示される分子鎖両末端がシラノール基(ケイ素原子に結合した水酸基)(特には、ヒドロキシジオルガノシロキシ基)で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンである。
【化3】
(式中、Rは同一又は異種の非置換もしくは置換、好ましくはハロゲン原子置換の1価炭化水素基であり、aは10以上の整数である。)
【0016】
上記一般式(1)において、Rは独立にメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ヘキシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、及びフェニル基等のアリール基のような炭素数1~6の1価炭化水素基、あるいはこれらの基の水素原子の一部又は全部をF、Cl、Br等のハロゲン原子で置換したクロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等の1価の置換炭化水素基が挙げられ、メチル基、フェニル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。このRは同一の基であっても異種の基であってもよい。
【0017】
aは、上述した通り10以上の整数であり、好ましくは10~2,000の整数、より好ましくは50~1,200の整数、更に好ましくは100~1,000の整数であり、また、ジオルガノポリシロキサンの粘度が23℃で100~1,000,000mPa・sとなる数であることが好ましく、より好ましくは500~200,000mPa・sとなる数である。なお、粘度は回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型、レオメータ等)により測定した値である。上記一般式(1)において、ジオルガノシロキサン単位の繰り返し数(又は重合度)を示すaの値は、通常、トルエン等を展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析によるポリスチレン換算での数平均分子量(又は数平均重合度)等として求めることができる。
【0018】
((ii)成分)
(ii)成分は、下記一般式(2)で表されるアルコール化合物等に代表される分子中にヒドロキシ基を1個有する炭化水素系化合物であり、組成物中に配合する前に、(iii)塩化白金酸六水和物の存在下で(i)成分中の水酸基(即ち、分子鎖両末端のシラノール基)の一部と予め置換反応して、該シラノール基含有シロキシ基(ヒドロキシジオルガノシロキシ基)の一部が(オルガノオキシ)ジオルガノシロキシ基で置換された反応生成物(A)とするためのモジュラス低下剤として作用するものである。
1-OH (2)
(式中、R1は炭素数3~20の同一又は異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基である。)
【0019】
上記一般式(2)において、R1は非置換又は置換の1価炭化水素基であり、炭素数が3~20、特に6~10のものが好ましく、具体的にはプロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基、デシル基等の(シクロ)アルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、アリル基、ブテニル基、ベンジル基、2-フェニルエチル基等のアラルキル基、あるいはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をF、Cl、Br等のハロゲン原子やシアノ基などで置換した基、例えばクロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などが挙げられるが、このR1としては、イソプロピル基、ブチル基、2-エチルヘキシル基、フェニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基が好ましく、特に製造上の得易さの点からアルキル基が好ましく、イソプロピル基、ブチル基、2-エチルヘキシル基であることが更に好ましい。
【0020】
(ii)成分は(i)成分の一般式(1)で表されるジオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)1モルに対して0.01~0.50モル、好ましくは0.05~0.45モル、より好ましくは0.1~0.4モルとなる量の範囲で添加される。(i)成分のジオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)1モルに対して、0.01モル未満では十分なモジュラス低下効果が得られず、目的とする軟らかいゴム弾性を有する硬化物が得難く、0.50モルを超えると硬化性、接着性が悪化すると共に、得られる硬化物中にフリーオイル成分(分子鎖両末端トリオルガノシロキシ基封鎖直鎖状ジオルガノポリシロキサンに代表される、分子鎖末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状及び/又は分岐鎖状ジオルガノポリシロキサン、又は分子中に官能性基を含有しない環状ジオルガノポリシロキサン等のいわゆる無官能性シリコーンオイル)が増えて著しい汚染を生じるおそれがある。
【0021】
((iii)成分)
(iii)成分の塩化白金酸六水和物は、(ii)成分のヒドロキシ基含有炭化水素系化合物と(i)成分のシラノール基を有効に(定量的に)置換反応させる働きをする成分であり、本発明の特徴となる成分である。化学式ではH2PtCl6・6H2Oで表され、市販されているものをそのまま使用することができる。
【0022】
(iii)成分は(A)成分全体(即ち、(i)、(ii)、(iii)成分の合計質量)の0.01~1質量%となる量で添加される。0.01質量%未満だと、(i)成分と(ii)成分を反応させる効果が十分に得られず、1質量%を超えるとコスト面で不利益が生じる。
【0023】
[(B)成分]
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、(B)成分として無機充填剤を含む。
(B)成分の無機充填剤としては、炭酸カルシウム、煙霧質シリカ、酸化アルミニウム、水酸化アルミ、タルク、ガラスバルーン、結晶性シリカ微粉末、非晶性シリカ微粉末、シリカヒドロゲル、シリカエアロゲル、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、フェライト、酸化鉄、カーボンブラック、グラファイト、マイカ、クレイ、ベントナイト等が挙げられる。中でも、煙霧質シリカ及び/又は炭酸カルシウムを含有するものであることが好ましい。
【0024】
炭酸カルシウムは、その処理剤が脂肪酸、樹脂酸、ロジン酸、及び/又はそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、脂肪酸エステル、第四級アンモニウム塩である処理剤により処理された炭酸カルシウムであるか、無処理の炭酸カルシウムであるか自由に選択される。また、煙霧質シリカについても同様に上記処理剤により処理された煙霧質シリカであるか、無処理の煙霧質シリカであるかを自由に選択できる。ここで使用される樹脂酸としては、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、デキストロピマール酸、レボピマール酸、パルストリン酸、サンダラコピマール酸等が例示される。なお、樹脂酸以外のカルボン酸としては、特に制限されないが、炭素数12以上のものが好ましく、例えばステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等を用いることができる。上記処理剤で処理される炭酸カルシウムは、平均一次粒径が0.1μm以下、特に0.03~0.1μmのコロイダル炭酸カルシウム、及び/又は0.1μmより大きい重質炭酸カルシウムを単独又は併用して使用することができる。また、上記処理剤による炭酸カルシウムの処理量は、炭酸カルシウムに対して3.0質量%以下、特に0.5~2.5質量%である。処理量が3.0質量%より多いと組成物の接着性が損なわれる。
なお、コロイダル炭酸カルシウムの粒径は電子顕微鏡法により測定した値であり、重質炭酸カルシウムの粒径は空気透過法により測定し、算出された比表面積からの計算値である。
【0025】
(B)成分の無機充填剤の配合量は、(A)成分100質量部に対して3~300質量部、好ましくは8~200質量部の範囲である。配合量が3質量部未満では目的とする補強性が得られない。300質量部を超えると、組成物調製時の混練が困難であるのに加え、硬化後のゴム弾性が硬く、目的とするゴム弾性を有する組成物が得難い。
【0026】
本発明の組成物には、必要に応じ他の充填材を併用してもよく、これら充填材の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0027】
[(C)成分]
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、(C)成分として1分子中に少なくとも3個の加水分解性基を有するオルガノシラン(ただし、(D)成分を除く)及び/又はその部分加水分解縮合物(即ち、該加水分解性オルガノシランを部分的に加水分解して生成する、分子中に残存加水分解性基を少なくとも2個、好ましくは3個以上有するオルガノシロキサンオリゴマー)を含む。該(C)成分は、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物において、保存安定剤、架橋剤として作用するものである。
【0028】
(C)成分のオルガノシラン化合物及びその部分加水分解縮合物が有する加水分解性基としては、例えばケトオキシム基(ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、メチルイソブチルケトオキシム基など)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基など)、アシルオキシ基(アセトキシ基など)、アルケニルオキシ基(イソプロペノキシ基など)等が挙げられる。また、(C)成分中において、加水分解性基以外にケイ素原に結合する置換基(1価炭化水素基)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基などの、非置換の1価炭化水素基が挙げられる。(C)成分は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含む官能性基で置換した一価炭化水素基を分子中に含まないものである点において、後述する(D)成分の縮合硬化触媒及び(E)成分のシランカップリング剤とは明確に区別されるものである。
【0029】
(C)成分の具体例としては、テトラキス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(ジメチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン(別名メチルトリス2-ブタノンオキシムシラン)、エチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン(別名ビニルトリス2-ブタノンオキシムシラン)などのケトオキシムシラン類、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのアルコキシシラン類、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシランなどのアセトキシシラン類、メチルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、フェニルトリイソプロペノキシシランなどのイソプロペノキシシラン類、並びにこれらのシランの部分加水分解縮合物等が挙げられる。これらは単独で用いても複数種を併用してもよい。
【0030】
(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して1~20質量部、好ましくは5~15質量部の範囲である。配合量が1質量部未満では十分な架橋が得られず、目的とするゴム弾性を有する硬化物が得難く、20質量部を超えると空気に触れない深部の硬化速度が遅くなると共に、硬化後のゴム弾性が硬くなり、価格的にも不利となる。
【0031】
[(D)成分]
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、組成物の硬化を促進するために(D)成分として縮合硬化触媒を含む。
【0032】
(D)成分の縮合硬化触媒としては、この種の組成物における硬化促進剤として従来から一般的に使用されている縮合硬化触媒が挙げられ、特に制限されるものではない。例えばジブチルスズジメトキサイド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズビス(アセチルアセトナート)、ジブチルスズビス(ベンジルマレート)、ジメチルスズジメトキサイド、ジメチルスズジアセテート、ジオクチルスズジオクテート、ジオクチルスズジラウレート、スズジオクテート、スズジラウレート等の有機スズ化合物、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テトラノルマルプロピルチタネート、テトラ-2-エチルヘキシルチタネート、ジイソプロピルジターシャリーブチルチタネート、ジメトキシチタンビスアセチルアセトナート、ジイソプロポキシチタンビスエチルアセトアセテート、ジターシャーリーブトキシチタンビスエチルアセトアセテート、ジターシャリーブトキシチタンビスメチルアセトアセテート等の有機チタン化合物などの金属ルイス酸、ブチルアミン、オクチルアミン等のアミン化合物及びその塩、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等のグアニジル基を含有する加水分解性シラン及びシロキサンなどを1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0033】
(D)成分の縮合硬化触媒の配合量は、(A)成分100質量部に対して10質量部以下、特に0.01~5質量部の範囲である。縮合硬化触媒の配合量が10質量部より多いと耐久性試験後の亀裂、破損が起き易くなる。添加量が少ないと硬化までの時間が長くなり実用的に好ましくない。
【0034】
[(E)成分]
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化物の接着性を向上させるために(E)成分としてシランカップリング剤(ただし、(C)成分及び(D)成分を除き、詳しくは分子中に、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含む官能性基(但し、グアニジル基を除く)で置換した1価炭化水素基とケイ素原子に結合した加水分解性基とを有する、いわゆる炭素官能性加水分解性シラン又はカーボンファンクショナルシラン)を含む。
【0035】
(E)成分のシランカップリング剤としては、加水分解性基としてアルコキシシリル基を有するアミン系のシランカップリング剤であることが好ましく、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N-アミノメチルベンジルアミノ)プロピルトリメトキシシラン等が例示される。
【0036】
(E)成分のシランカップリング剤の配合量は、(A)成分100質量部当たり0.1~5質量部、好ましくは0.2~5質量部の範囲である。配合量が0.1質量部未満では十分な接着性が得られず、5質量部を超えると価格的に不利となる。
【0037】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物には、上記成分以外にも必要に応じて各種の配合剤、例えば顔料、染料、接着付与剤、チクソトロピー向上剤、防腐剤、難燃剤、防カビ剤などを添加してもよい。なお、これら任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0038】
以上のように、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、水分の非存在下で保存し、使用時に開封するなどして空気中に晒すことで空気中の水分と反応し、室温で硬化して低モジュラスから中モジュラスのシリコーンゴム弾性体となる。また、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、好ましくはJIS K 6249で規定されるタイプAデュロメータ硬さが10~30であり、切断時伸びが500%以上であるシリコーンゴム硬化物を与えるものであり、また好ましくはトルエンに24時間浸漬することによりトルエン層に抽出される成分の量が10質量%以下であるシリコーンゴム硬化物を与えるものである。また、ヒドロシリル化反応により硬化する硬化機構のものやアミノキシ型、アミド型にみられる硬化阻害などを起こしにくく、天然石など多孔質材料に使用した場合に滲み出し汚染を発生しにくく、各種基材、特に塗装されたアルミ材に接着性を示す。それゆえ、接着剤、コーティング材、とりわけ建築用シーリング材に有用である。
【0039】
[室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法]
本発明に係る室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法は、上記(i)成分(上記一般式(1)で表されるジオルガノポリシロキサン)、上記(ii)成分(上記(i)成分の一般式(1)で表されるジオルガノポリシロキサン中の水酸基1モルに対して0.01モル~0.5モルとなる量の上記一般式(2)で表されるヒドロキシ基含有炭化水素系化合物)、及び上記(iii)成分((i)、(ii)及び(iii)成分の合計質量に対して0.01~1質量%となる量の塩化白金酸六水和物)を0℃以上50℃以下で5分間以上混合して反応生成物(A)を調製した後、該反応生成物(A)100質量部に対して、
上記(B)無機充填剤:3~300質量部、
上記(C)1分子中に少なくとも3個の加水分解性基を有するオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物:1~20質量部、
上記(D)縮合硬化触媒:0.01~5質量部、及び
上記(E)シランカップリング剤(ただし、(C)成分及び(D)成分を除く):0.1~5質量部
を均一に混合する工程を含むものである。
【0040】
ここで、本発明では、(i)成分の式(1)で表されるジオルガノポリシロキサン、(ii)成分のヒドロキシ基含有炭化水素系化合物、及び(iii)成分の塩化白金酸六水和物を0℃以上50℃以下で5分間以上混合して、(i)成分中のシラノール基の一部を(ii)成分のヒドロキシ基含有炭化水素系化合物と置換反応させて反応生成物(A)を得る。
【0041】
この反応生成物(A)の調製方法において、(i)成分、(ii)成分、(iii)成分を混合して反応させる温度は0℃以上50℃以下であり、10℃以上40℃以下であることが好ましい。温度が0℃より低いとモジュラス低減効果が十分でなく、50℃を超えると(ii)成分の揮発量が増え狙い通りの物性が得られ難くなるおそれがある。
【0042】
混合反応時間については所望の効果を得るには5分間以上必要であり、好ましくは10分間以上である。長時間となることに特に制限は無いが、長時間の混合を行うことはコスト的な不利益が生じるため、次工程に移るまでに時間が空く場合はおおよそ3時間程度で混合を終了し、密閉保管しておいたものを使用することが好ましい。
【0043】
以上のようにして得られた反応生成物(A)と、その他の上記成分(B)~(E)を常法により(好ましくは減圧下で)混合して、上述した本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を製造することができる。
【実施例
【0044】
以下において、実施例と比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、粘度は回転粘度計による測定値である。
【0045】
[実施例1]
23℃における粘度が50,000mPa・sの分子鎖両末端水酸基封鎖ジメチルポリシロキサン100質量部(上記式(1)においてa=874、ケイ素原子に結合した水酸基含有量0.00305モル)に塩化白金酸六水和物0.017質量部と2-エチルヘキサノール0.15質量部(水酸基末端ジメチルポリシロキサン中のケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)1モルに対して0.38モルとなる量)を添加し、均一になるまで23℃で10分間混合し、反応生成物1を調製した。
次いで反応生成物1:100質量部に対し、コロイダル炭酸カルシウム(商品名「OKYUMWHA BK-04」、Dongho Calcium Co.,Ltd社製、平均一次粒子径0.04μm)を70質量部、メチルトリス2-ブタノンオキシムシランを8質量部、ビニルトリス2-ブタノンオキシムシランを2質量部、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシランを1質量部、ジオクチルスズジラウレートを0.05質量部添加し、減圧下で均一になるまで混合し、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0046】
[比較例1]
塩化白金酸六水和物0.017質量部の代わりに白金の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体0.17質量部を添加したこと以外は実施例1と同様に室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0047】
[比較例2]
反応生成物1を予め調製せず、反応生成物1の代わりに23℃における粘度が50,000mPa・sの分子鎖両末端水酸基封鎖ジメチルポリシロキサン100質量部を使用したこと以外は実施例1と同様に室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0048】
[比較例3]
2-エチルヘキサノールを添加しないこと以外は実施例1と同様にして室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0049】
[比較例4]
実施例1において反応生成物1に代えて塩化白金酸六水和物を添加せずに、23℃における粘度が50,000mPa・sの分子鎖両末端水酸基封鎖ジメチルポリシロキサン100質量部(上記式(1)においてa=874、ケイ素原子に結合した水酸基含有量0.00305モル)と2-エチルヘキサノール0.15質量部(水酸基末端ジメチルポリシロキサン中のケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)1モルに対して0.38モルとなる量)を混合した混合物1を用い、最後に0.017質量部の塩化白金酸六水和物を添加したこと以外は実施例1と同様にして室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0050】
[比較例5]
2-エチルヘキサノールの添加量を0.20質量部(水酸基末端ジメチルポリシロキサン中のケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)1モルに対して0.51モルとなる量)としたこと以外は実施例1と同様にして室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0051】
[評価方法]
得られた室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物について以下の評価を行った。
(1)硬化物の物理特性(タイプAデュロメータ硬さ、引張強さ、切断時伸び)
上記実施例、比較例で調製された組成物を2mmの型枠に流し込み、23℃、50%RHで7日間養生して2mm厚さのゴムシートを得た。得られたゴムシート(室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物)に関する物理特性(タイプAデュロメータ硬さ、引張強さ、切断時伸び)をJIS K6249で規定される「硬化シリコーンゴムの試験方法」(硬さ試験、引張試験)により測定した。
(2)ASTM C719 クラス50伸縮疲労耐久性試験
シーリング目地での耐ムーブメント性を評価するため、ASTM規格C719に準拠した±50%の伸縮疲労耐久性試験を実施した。詳しくは、以下のように試験を実施した。
(サンプル準備)
支持基材(材質;フロートガラス、寸法;縦1インチ横3インチ厚さ1/4インチ)を使用し、n=3で測定する。
支持基材用プライマーを塗布後、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を施工し、硬化養生(23℃、50%RHで7日間養生)する(目地幅=1/2インチ)。
70℃、50%圧縮を一週間経てからサイクル試験に移る。
(サイクル試験)
50%伸長と50%圧縮を1サイクルとし室温で10サイクル試験を行う(目地の動くスピード=1/8(インチ/h))。
次にヒートサイクル試験(70℃下で50%圧縮後、-26℃下で50%伸長)を10サイクル行う。
試験後にサンプルを確認し、剥離もしくは凝集破壊の面積がサンプル全体(n=3合計面積)の50%以下なら合格(○)とし、これ以外を不合格(×)とした。
(3)トルエン抽出量
組成物中のフリーオイル成分の量の指標として、当該組成物中における分子鎖末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状及び/又は分岐鎖状ジオルガノポリシロキサン及び官能性基を含有しない環状ジオルガノポリシロキサンの含有量を下記の質量減少試験(トルエン抽出試験)によって求めた。即ち、トルエン抽出量について、気温23℃、湿度50%RHで7日間養生硬化して得た硬化物2gを100gのトルエンに24時間浸漬後、気温23℃、湿度50%RHの環境下で24時間乾燥させ、次式のように浸漬前後の硬化物の質量の差から算出した。
(トルエン抽出量(質量%))={(トルエン浸漬前の硬化物質量)-(トルエン浸漬後の硬化物質量)}/(トルエン浸漬前の硬化物質量)×100
トルエン抽出量10質量%以下の場合は天然石などの多孔質材料へ使用した場合に滲み出し汚染が少ないことが期待できるため良好と判定した。
(4)滲み出し汚染性
滲み出し汚染性として以下の評価を行った。
厚さ10mmで縦50mm幅50mmの白御影石2枚の間に幅10mm深さ10mm幅50mmの目地を作製し、未硬化の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を目地に充填し、ヘラで目地表面を平滑に仕上げた後、23℃で2週間養生したものを汚染確認用試験体とした。この試験体を屋外曝露3か月した後に目視で白御影石表面を観察し、滲み出し汚染が濡れ模様として目地から1mm以上の範囲で確認された場合を不良(×)、汚染が目地から1mm未満であった場合を良好(〇)と判定した。
以上の結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
以上のように、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は硬化後に低硬度で伸びのあるシリコーンゴム硬化物となり、動きの大きな目地にも使用でき、更にはトルエンで抽出されるようなフリーオイル成分の量が少ないため、多孔質な天然石などの目地に使用された場合でも長期間に渡って浸透汚染が少ないことが期待できる。