(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20230117BHJP
C09J 167/00 20060101ALI20230117BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J167/00
C09J11/08
(21)【出願番号】P 2021564040
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2020046109
(87)【国際公開番号】W WO2021117826
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2019225645
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 真生
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑輔
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-088958(JP,A)
【文献】特開2009-221249(JP,A)
【文献】特開2010-106086(JP,A)
【文献】特開2011-088961(JP,A)
【文献】特開2015-120809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/38
C09J 167/00
C09J 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂、
架橋剤、及び前記ポリエステル樹脂100重量部に対して0~15重量部の粘着付与樹脂を少なくとも含有する粘着剤層を有し、
前記ポリエステル系樹脂は、カルボン酸成分として、イソフタル酸と、セバシン酸及びアゼライン酸の少なくとも一方とを含み、
前記ポリエステル系樹脂の重量平均分子量(Mw)が、50,000~150,000であり、
前記架橋剤がイソシアネート系架橋剤であり、
前記架橋剤の含有量が、前記ポリエステル樹脂100重量部に対して1.4~5.0重量部であり、
前記粘着剤層のバイオマス度が、80重量%以上であり、
前記粘着剤層のゲル分率が、40重量%以上であり、
対ステンレス板接着力が、4~14N/20mmであり、
前記粘着剤層が60℃、90%の高温・高湿環境下で500時間放置した後において、
界面剥離性を有することを特徴とする、粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着剤層のゲル分率が、40重量%~85重量%である、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記ポリエステル系樹脂が、イソフタル酸と、セバシン酸と、アゼライン酸とをカルボン酸成分として含む、請求項1
又は請求項2のいずれか一項に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着剤層の少なくとも片面に、離型ライナーを有することを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記ポリエステル系樹脂は、前記カルボン酸成分と前記カルボン酸成分1当量当たり1.1~2当量のジオール成分とを反応して得られる重合体である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは、例えば、携帯電子端末、カメラ、パソコン、家電、自動車等を構成する部品や部材の固定等のために使用される。
【0003】
このような部材固定用の粘着テープに用いられる原料として、例えば、シリコーン系粘着剤やアクリル系粘着剤等がある。しかし、シリコーン系粘着剤の場合、高コストであるため、経済性に乏しい。一方、アクリル系粘着剤の場合、低コストではあるが、その原料に石油を使用することが多いため、石油資源の枯渇や、廃棄処理による二酸化炭素排出の問題がある。
【0004】
近年、地球温暖化等の環境問題に対する関心が高まるにつれ、従来の石油由来の原料に代替するものとして、植物由来の原料を使用することが社会的に強く要求されてきている。
【0005】
しかし、植物由来の原料を用いて、従来の要求性能を満たすことは難しく、特に高いバイオマス度を有するテープは、接着性が劣るという欠点があった。
【0006】
そこで、植物由来の原料を用いたバイオマス度の高いポリエステル系の粘着テープであって、バイオマス度や、ゲル分率や、カルボン酸成分とジオール成分とのモル比や、対ポリカーボネート板接着力を特定の範囲に規定した粘着テープが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、地球環境保護の観点から使用済み製品をリサイクル、リユースする要請がある。リサイクル、リユースする際には、部品の固定に使用された粘着テープを剥離する必要があり、接着力に加え、リユース、リサイクル時に綺麗に剥離できる性能(再剥離性)にも優れた粘着テープの提供が求められている。
【0009】
しかし、上記特許文献1に記載の粘着テープは、ある程度高い接着力を示すものの、再剥離性に関しては十分とはいえなかった。
【0010】
そこで、本発明は、粘着テープであって、バイオマス度が高く、十分な接着力を有し、さらに再剥離性にも優れた粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、高いゲル分率、かつ高バイオマス度(例えば、80重量%以上)を示す粘着テープが、高い接着力、及び優れた再剥離性を示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含するものである。
[1]ポリエステル系樹脂を含有する粘着剤層を有し、粘着剤層のバイオマス度が、80重量%以上であり、粘着剤層のゲル分率が、40重量%以上であり、対ステンレス板接着力が、4~14N/20mmであることを特徴とする、粘着テープ。
[2]粘着剤層のゲル分率が、40重量%~85重量%である、前記[1]に記載の粘着テープ。
[3]ポリエステル系樹脂の重量平均分子量(Mw)が、50,000~150,000である、前記[1]又は前記[2]に記載の粘着テープ。
[4]粘着剤層が60℃、90%の高温・高湿環境下で500時間放置した後においても、界面剥離性を有することを特徴とする、前記[1]~[3]のいずれかに記載の粘着テープ。
[5]粘着剤層の少なくとも片面に、離型ライナーを有することを特徴とする、前記[1]~[4]のいずれかに記載の粘着テープ。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、バイオマス度が高く、十分な接着力を有し、さらに再剥離性にも優れた粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の粘着テープの構成の一例を示す模式図である。
【
図2】本発明の粘着テープの構成の他の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の粘着テープについて詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の一実施態様としての一例であり、これらの内容に特定されるものではない。
(粘着テープ)
【0016】
本発明の粘着テープは、ポリエステル系樹脂を含有する粘着剤層を有する。粘着剤層のバイオマス度は、80重量%以上である。粘着剤層のゲル分率は、40重量%以上である。粘着剤層の対ステンレス板接着力は、4~14N/20mmである。
<粘着剤層>
【0017】
本発明の粘着テープに係る粘着剤層は粘着剤組成物から成り、上記粘着剤組成物にはポリエステル系樹脂の他、架橋剤や粘着付与剤を含むことができる。また、粘着剤組成物はさらにその他の成分を有してもよい。
<<ポリエステル系樹脂>>
【0018】
本発明に係る粘着剤組成物にはポリエステル系樹脂が含まれる。ポリエステル系樹脂には、少なくとも、カルボン酸成分と、ジオール成分とを重縮合して得られるポリエステルを用いることが好ましい。なお、ポリエステルの合成方法としては、特に限定されるものではなく、公知の重合方法を用いることができる。
【0019】
ポリエステルは、植物由来の原料により製造されることが好ましい。その理由としては、植物由来の原料は、カーボンニュートラルであるといわれており、地球環境にやさしく、環境対応型の粘着剤を得ることができるからである。
【0020】
ポリエステルは、カルボン酸成分を含み、カルボン酸成分としては、少なくとも、カルボキシル基を2個含むジカルボン酸を含有することが好ましい。
【0021】
ジカルボン酸は、セバシン酸、アゼライン酸、イソフタル酸などが挙げられる。ジカルボン酸は、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。中でも特に、セバシン酸やアゼライン酸は、植物由来で、地球環境にやさしいなどの観点から好ましい。
【0022】
その他としては、アジピン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、ドデセニル無水琥珀酸、フマル酸、琥珀酸、ドデカン二酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の脂肪族や脂環族ジカルボン酸等や、テレフタル酸、オルソフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,2’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等が挙げられる。
【0023】
また、上記ポリエステルは、ジオール成分を含み、上記ジオール成分としては、少なくとも、ヒドロキシル基を分子中に2個有するものを含有することが好ましい。
【0024】
ジオール成分は、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチルオクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族グリコールや、上記脂肪族グリコール以外のものとして、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリカーボネートグリコール等が挙げられる。ジオール成分は、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。例えば、ジエチレングリコール、エチレングリコールを組合せて使用することができる。
<<ポリエステル系樹脂の重量平均分子量(Mw)>>
【0025】
本発明に係るポリエステル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは50,000以上、中でも好ましくは55,000以上、より好ましくは60,000以上、より好ましくは80,000以上、さらに好ましくは100,000以上である。また、上記重量平均分子量(Mw)は、好ましくは150,000以下であり、中でも好ましくは140,000以下である。上記重量平均分子量(Mw)の範囲として具体的には、50,000~150,000の範囲が好ましく、55,000~150,000の範囲がより好ましく、特に好ましくは100,000~150,000の範囲であることが好ましい。重量平均分子量が60,000以上であれば、所望のゲル分率を有することにより、好ましい再剥離性を示す。また、重量平均分子量が100,000以上であるとき、高分子量により凝集力が高く、高い保持性を示す。一方、合成の容易性の観点から、重量平均分子量が150,000以下であることが好ましい。
【0026】
重量平均分子量(Mw)は、ポリマーをテトラヒドロフラン(THF)で溶解した溶液に対してゲル・パーミエイション・クロマトグラフィ(GPC)法を用いることにより、標準ポリスチレンにより作成した検量線から測定することができる。
<<ポリエステル系樹脂の重量平均分子量の測定条件>>
【0027】
装置名:東ソー社製、HLC-8420GPC
濃度:4mg/mL(THF溶液)
注入量:100μL 溶媒:THF
流量:1.0mL/min
測定(カラム)温度:40℃
カラム:TSKgel G5000/G4000/G3000/G2000-HxL
検出器:RI、UV
【0028】
ポリエステル系樹脂の所望の粘着性を担保するためには、ジカルボン酸とジオール成分の当量数を考慮することが好ましい。例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分の配合割合は、ジカルボン酸1当量あたり、ジオール成分が1~2当量の範囲であることが好ましく、1.1~1.7当量の範囲であることが更に好ましい。
【0029】
なお、粘着テープに用いられるポリエステルの特性を損なわない程度であれば、カルボン酸成分やジオール成分以外のその他の成分を重合したり、また、重合後に添加したりすることも可能である。
【0030】
カルボン酸成分とジオール成分との重合(縮合重合)反応は、溶剤系、無溶剤系など従来公知の方法が使用できる。環境保護の観点から無溶剤系が特に好ましい。
【0031】
重合(縮合重合)反応で生成する水を除去する方法としては、トルエンやキシレンを用いて共沸脱水させる方法や、反応系内に不活性ガスを吹き込み、不活性ガスと共に、生成した水や、モノアルコールを反応系外に排出する方法、減圧下で溜出する方法等が挙げられる。
【0032】
重合(縮合重合)反応に用いられる重合触媒としては、通常のポリエステルの重合触媒に用いられるものを使用することができ、特に限定されるものではないが、例えば、ゲルマニウム系、チタン系、錫系、アンチモン系、亜鉛系等の種々の金属化合物を用いることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。触媒活性の高さから、二酸化ゲルマニウムを用いることが好ましい。
<<架橋剤>>
【0033】
本発明の粘着テープに係る粘着剤組成物には、架橋剤を含有することができる。架橋剤を用いて上記のポリエステル系樹脂を架橋反応させることにより、粘着剤層を形成することができる。架橋剤の種類としては本発明の効果を奏する限り、特に限定はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、再剥離性の観点から、イソシアネート系架橋剤が好ましく、多官能性イソシアネート系架橋剤がより好ましい。
【0034】
多官能性イソシアネート化合物としては、例えば、分子中に少なくとも2個以上のイソシアネート基を有する化合物であることが好ましく、より好ましくは3個以上であれば、特に制限されず、具体的には、脂肪族ポリイソシアネート類、脂環族ポリイソシアネート類、芳香族ポリイソシアネート類などを挙げることができる。架橋剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0035】
脂肪族ポリイソシアネート類としては、例えば、1,2-エチレンジイソシアネートや、1,2-テトラメチレンジイソシアネート、1,3-テトラメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネートなどのテトラメチレンジイソシアネート、1,2-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,5-ヘキサメチレンジイソシアネートなどのヘキサメチレンジイソシアネート、2-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0036】
脂環族ポリイソシアネート類としては、例えば、イソホロンジイソシアネートや、1,2-シクロヘキシルジイソシアネート、1,3-シクロヘキシルジイソシアネート、1,4-シクロヘキシルジイソシアネートなどのシクロヘキシルジイソシアネート、1,2-シクロペンチルジイソシアネート、1,3-シクロペンチルジイソシアネートなどのシクロペンチルジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート、4,4’-ジシクヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0037】
芳香族ポリイソシアネート類としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2, 2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2, 2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3, 3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、キシリレン-1,4-ジイソシアネート、キシリレン-1,3-ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0038】
また、多官能性イソシアネート化合物として、脂肪族ポリイソシアネート類や脂環族ポリイソシアネート類、芳香族ポリイソシアネート類以外に、芳香脂肪族ポリイソシアネート類による二量体や三量体を用いることができ、具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネートの二量体や三量体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートなどの重合物などが挙げられる。好ましくは、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体を用いることができる。
【0039】
多官能性イソシアネート化合物として、市販品を使用することもでき、具体的には、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートの三量体付加物として、商品名「バーノックD-40」(DIC株式会社製)や、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートの三量体付加物として、商品名「コロネートHL」(日本ポリウレタン工業社製)等が挙げられる。
【0040】
架橋剤の配合量は、例えば、架橋剤がイソシアネート化合物である場合には、粘着剤の主成分であるポリエステル系樹脂100重量部に対して、1.4~5.0重量部となることが好ましい。中でも1.4~4.0質量部の範囲、1.4~3.0質量部の範囲、さらに、1.4~2.0重量部の範囲であることがより好ましい。ポリエステル系樹脂100重量部に対して、架橋剤の配合量が1.4重量部以上となると、所望のゲル分率(例えば、40重量%以上)を有するため、良好な再剥離性が得られる。配合量が5.0重量部以下であれば、粘着剤は所望の接着力を示すことができる。
【0041】
架橋剤の種類としては、上記イソシアネート化合物の他、多価イソシアヌレート、多官能性メラミン化合物、多官能性エポキシ化合物、多官能性オキサゾリン化合物、多官能性アジリジン化合物、金属キレート化合物などを用いることもできる。
<<粘着付与剤>>
【0042】
本発明の粘着テープに用いられる粘着剤層を形成するため、粘着剤の主成分であるポリエステル系樹脂に、架橋剤と共に、粘着付与剤を組み合わせることで、所望の特性を有する粘着剤層を得ることができ、特に接着性(粘着性)の向上が期待できる。
【0043】
粘着付与剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができ、例えば、ロジン系粘着付与剤、テルペン系粘着付与剤、フェノール系粘着付与剤、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、キシレン樹脂、エポキシ系粘着付与剤、ポリアミド系粘着付与剤、ケトン系粘着付与剤、エラストマー系粘着付与剤などが挙げられ、特にバイオマス度を維持・向上させるため、植物由来の原料により製造されるロジン系やテルペン系粘着付与剤を用いることが好ましい。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0044】
ロジン系粘着付与剤としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの未変性ロジン(生ロジン)や、これらの未変性ロジンを重合、不均化、水添化などにより変性した変性ロジン(重合ロジン、安定化ロジン、不均化ロジン、完全水添ロジン、部分水添ロジンや、その他の化学的に修飾されたロジンなど)の他、各種のロジン誘導体などが挙げられる。上記ロジン誘導体としては、例えば、ロジン類(未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体など)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール系樹脂;未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したロジンのエステル化合物(未変性ロジンエステル)や、重合ロジン、安定化ロジン、不均化ロジン、完全水添ロジン、部分水添ロジンなどの変性ロジンをアルコール類によりエステル化した変性ロジンのエステル化合物(重合ロジンエステル、安定化ロジンエステル、不均化ロジンエステル、完全水添ロジンエステル、部分水添ロジンエステルなど)などのロジンエステル系樹脂;未変性ロジンや変性ロジン(重合ロジン、安定化ロジン、不均化ロジン、完全水添ロジン、部分水添ロジンなど)を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン系樹脂;ロジンエステル系樹脂を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル系樹脂;未変性ロジン、変性ロジン(重合ロジン、安定化ロジン、不均化ロジン、完全水添ロジン、部分水添ロジンなど)、不飽和脂肪酸変性ロジン系樹脂や不飽和脂肪酸変性ロジンエステル系樹脂におけるカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール系樹脂;未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体等のロジン系樹脂(特に、ロジンエステル系樹脂)の金属塩などが挙げられる。
【0045】
テルペン系粘着付与剤としては、例えば、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、ジペンテン重合体などのテルペン系樹脂や、これらのテルペン系樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性など)した変性テルペン系樹脂(例えば、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂など)などが挙げられる。
【0046】
粘着付与剤としては、中でも、軟化点が、100~170℃のものが好ましく、より好ましくは、100~165℃であり、更に好ましくは、100~135℃である。
【0047】
粘着付与剤は含有させないか或いは含有させても少ない方が、良好な再剥離性を示す。しかし、接着力が弱くなる場合がある。一方、粘着付与剤の含有量が多いと高い接着力を示すが、再剥離性が悪くなる場合がある。そこで、本発明では接着力及び再剥離性の両方の観点から考慮し、粘着付与剤の種類及び配合量を選択することが好ましい。例えば、粘着付与剤の配合量は、粘着剤の主成分であるポリエステル系樹脂100重量部に対して、0~15重量部が好ましい。
<<加水分解抑制剤>>
【0048】
本発明の粘着テープに用いる粘着剤層には、加水分解抑制剤を含有してもよく、加水分解抑制剤を含有することにより、特に高温高湿下での耐久性向上により、良好な再剥離性が期待できる。
【0049】
上記加水分解抑制剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができ、例えば、ポリエステル系樹脂のカルボン酸末端基と反応して結合する化合物があげられ、具体的には、カルボジイミド基、エポキシ基、オキサゾリン基、等の官能基を有する化合物等が挙げられる。これらの中でもカルボジイミド基含有化合物が、カルボキシル基末端基由来のプロトンの触媒活性を消失させる効果が高い点で好ましい。
【0050】
カルボジイミド基含有化合物としては、例えば、日清紡ケミカル株式会社製のカルボジライト(登録商標)シリーズが挙げられ、それらの中でも、カルボジライト(登録商標)V-03、V-05、V-07、V-09は有機溶剤との相溶性に優れる点で好ましい。
<<その他の成分>>
【0051】
本発明の粘着テープに用いられる粘着剤層のゲル分率を効率よく調整するため、架橋触媒を適宜使用してもよい。触媒としては、例えば、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ブチルスズオキシド、ジオクチルスズジウラレート、チタンアセトアセテート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0052】
架橋触媒の配合量としては、特に制限されないが、粘着剤の主成分であるポリエステル系樹脂100重量部に対して、0.01~1重量部が好ましい。配合量が0.01重量部以上であると、触媒添加の効果が得られ、1重量部以下であると、ポットライフが比較的長期間維持できるため、塗布の安定性を得られる。
【0053】
また、ポットライフを延長するため、遅延剤として、アセチルアセトンやメタノール、オルト酢酸メチルなど適宜、配合してもよい。
【0054】
本発明の粘着テープに用いられる粘着剤層(粘着剤)の特性を損なわない程度であれば、シランカップリング剤、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、可塑剤、軟化剤、無機又は有機の充填剤、顔料や染料などの着色剤、老化防止剤、界面活性剤、金属粉、粒子状、箔状物などの一般的な添加剤を使用することができる。
<粘着剤層の形成方法>
【0055】
本発明の粘着テープの製造方法としては、例えば基材(中芯)を有する粘着テープであれば、基材の片面または両面に上記粘着剤組成物を塗工し、乾燥等することによって製造する方法(直接法)、または、離型ライナーの表面に粘着剤組成物を塗工し乾燥等することによって粘着剤層を形成した後、上記粘着剤層を、上記基材の片面または両面に転写することによって製造する方法(転写法)が挙げられる。
【0056】
また、基材レスの粘着テープの製造方法としては、例えば離型ライナーの表面に粘着剤組成物を塗工し乾燥等することによって粘着剤層を形成する方法が挙げられる。
【0057】
粘着剤組成物を基材または離型ライナーに塗工する方法としては、例えば、アプリケーター、ロールコーター、グラビアコーター、リバースコーター、スプレーコーター、エアーナイフコーター、ダイコーター等を使用する方法が挙げられる。
【0058】
粘着剤組成物を乾燥させる方法としては、例えば、50℃~140℃で30秒~10分間乾燥させる方法が挙げられる。また、乾燥後、硬化反応を促進する点から、30℃~50℃の範囲で更にエージングを行ってもよい。
<<バイオマス度>>
【0059】
本発明の粘着テープに係る粘着剤層のバイオマス度としては、好ましくは、80重量%以上であり、より好ましくは、90重量%以上である。バイオマス度が80重量%以上と高いことにより、地球環境にやさしく、環境対応型の粘着テープを得ることができ、好ましい態様となる。
【0060】
バイオマス度とは、粘着剤層の総重量に対し、粘着剤層を製造する際に使用する植物由来の原料の重量割合であり、以下の計算式により、算出する。
粘着剤層のバイオマス度(重量%)=100×[植物由来の原料の重量(g)]/[粘着剤層の総重量(g)]
<<ゲル分率>>
【0061】
良好な再剥離性を担保するために、ゲル分率は40重量%以上である。さらに、再剥離性を担保しつつ優れた接着力を可能にするためには、粘着剤層のゲル分率は、40重量%~85重量%の範囲であることが好ましい。また、本発明では、ゲル分率が所望の範囲となるようにポリエステルの分子量、架橋剤の種類及び含有量、並びに粘着付与剤の種類及び含有量等の諸条件を調製することが好ましい。
【0062】
ゲル分率が40重量%以上であると、良好な再剥離性が得られる。また、ゲル分率が約85重量%以下であると、良好な接着特性が得られる。中でも、接着特性と再剥離性とのバランスがより良好となることから、粘着剤層のゲル分率は、45重量%~60%重量%の範囲であることがより好ましい。
<<ゲル分率の測定方法>>
【0063】
ゲル分率の測定は下記による。離型シート上に、乾燥後の厚さが50μmになるように粘着剤を塗工し、100℃で3分間乾燥し、40℃4日エージングしたものを50mm角に切り取り、これを試料とする。次に、予め上記試料のトルエン浸漬前の重量(G1)を測定しておき、トルエン溶液中に23℃で24時間浸漬した後の試料のトルエン不溶解分を300メッシュ金網で濾過することにより分離し、110℃で1時間乾燥した後の残渣の重量(G2)を測定し、以下の式に従ってゲル分率が求められる。
ゲル分率(重量%)=(G2/G1)×100
<<接着力>>
【0064】
接着力は、対ステンレス板接着力を基準として評価することができる。対ステンレス板接着力は、4~14N/20mmの範囲であることが好ましい。接着力が4N/20mm以上である場合には、所望の接着力が得られるため、電子機器等の部材の固定用途に適する。
<<対ステンレス(SUS)板接着力の測定方法>>
【0065】
厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムで裏打ちされた20mm幅の粘着テープ(以下、試験片とする。)の粘着部を有する面と、清潔で平滑なステンレス板とを重ね、その上面を、2kgローラーを用いて1往復させることで加圧したものを、JISZ-0237に準じて23℃及び50%RHの条件下で1時間放置した後、上記粘着テープを、上記ステンレス板の貼付面に対して180°方向に0.3m/minの速度で引き剥がすことによって測定した。
<<再剥離性>>
【0066】
再剥離性は、所定の環境条件下に放置された上記の試験片が、引き剥がした際に界面剥離を生じるか否かにより評価する。後述する実施例1~9、比較例1~3に関しては、対ステンレス(SUS)板接着力の試験で作成した試験片をステンレス板に貼り、摂氏60℃、湿度90%の環境下で500時間放置した後、該試験片をステンレス板から剥がす際、試験片が界面剥離を生じるか否かによって評価することができる。
【0067】
さらなる試験として、後述する実施例10~15に関しては、対ステンレス(SUS)板接着力の試験で作成した試験片をステンレス板に貼り、摂氏85℃の環境下(湿度調整せず)で500時間放置した後、試験片をステンレス板から剥がす際、試験片が界面剥離を生じるか否かについて評価することができる。
【0068】
なお、粘着剤層が界面剥離性を有するとは、被着体から粘着テープを剥がす際に、粘着テープの層間や層内で剥離せず、被着体との界面において被着面に糊残りせずに剥離することをいう。
<粘着テープの構成>
【0069】
本発明の粘着テープは、バイオマス度が、80重量%以上である粘着剤層を有するものであれば特に制限されない。例えば、粘着テープの一例として、
図1には、粘着剤層の片面に離型ライナーを貼付したもの(基材なし)が挙げられる。なお、離型ライナーは粘着剤層の両面に貼付してもよい。
【0070】
また、
図2には、基材の片面に粘着剤層を有し、粘着剤層の表面に離型ライナーを貼付したもの(基材有)が挙げられる。なお、粘着剤層としては、原料の同一、又は、異なる2層以上の粘着剤層を貼り合わせて1層の粘着剤層としたもの(積層体)を使用してもよいし、基材が2層以上有するとともに、粘着剤層を3層以上有する構成の粘着テープであってもよい。
<<基材>>
【0071】
本発明の粘着テープは、基材を設けてもよい。上記基材としては、例えば、不織布基材や樹脂フィルムを用いてもよい。
【0072】
上記不織布基材としては、例えば、マニラ麻、木材パルプ、レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維(ポリビニルアルコール繊維)、ポリアミド繊維等の化学繊維、およびこれらの混合物等を用いて得られる不織布が挙げられる。中でも、植物由来の原料を50%以上用いて生産された不織布を用いると、さらに好ましい。
【0073】
また、上記ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンフラノエート等のポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンエチレンビニルアルコール、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミドなどを用いて得られるシート又はフィルム;ガラス等の非発泡のフィルム基材を用いることができる。これらの基材の表面は、帯電防止処理、コロナ処理等が施されていてもよい。
【0074】
また、上記基材としては、発泡体基材を使用してもよい。上記発泡体基材としては、例えばポリオレフィン系発泡体、ポリウレタン系発泡体、アクリル系発泡体、その他のゴム系発泡体等を使用することができる。上記発泡体基材の表面は、帯電防止処理、コロナ処理等が施されていてもよい。中でも、植物由来の原料を20%以上用いて生産された上記樹脂フィルムを用いると、さらに好ましい。
【0075】
また、本発明の粘着テープに用いられる基材の特性を損なわない範囲であれば、中間層や下塗り層などを有していても構わない。
【0076】
基材の厚さとしては、その材質や形態などに応じて、適宜選択することができるが、例えば、1000μm以下が好ましく、1~1000μm程度であることがより好ましく、2~500μm程度が特に好ましくは、更に好ましくは3~300μm程度であり、特に好ましくは5~250μm程度である。
<<離型ライナー>>
【0077】
本発明の粘着剤層は、少なくとも片面に、離型ライナーを有することが好ましい。粘着剤層の片面(または両面)に離型ライナーを有することにより、粘着剤層(粘着テープ)の使用時まで、粘着剤層の表面を保護して、保存することができ、作業性等においても、有用である。
【0078】
離型ライナーとしては、特に限定されず、従来公知のものを適宜使用することができる。例えば、基材(離型ライナー用基材)の少なくとも片面に、剥離性を付与するため、例えば、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤(剥離剤)などによるコーティング処理が施された剥離コート層を形成したものを用いることができる。なお、離型ライナー用基材は、単層、複数層のいずれの形態も用いることができる。
【0079】
離型ライナー用基材としては、プラスチックフィルム、紙、発泡体、金属箔等の各種薄葉体等を用いることができ、特に好ましくは、プラスチックフィルムである。また、プラスチックフィルムの原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルや、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。また、植物由来の原料から得られるポリ乳酸やポリエステル、ポリアミドなどからなるプラスチックフィルムや、紙を好適に用いることができる。
【実施例】
【0080】
以下に、本発明の実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。粘着剤層の配合内容、及び評価結果の一覧については、表1に纏めた。
(ポリエステル系樹脂の調製)
【0081】
(ポリエステル樹脂(A-1)の調製)
温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管及び真空装置の付いた反応缶に、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸0.14当量、セバシン酸(バイオマス由来)0.5当量、アゼライン酸(バイオマス由来)0.5当量、ポリオール成分としてエチレングリコール(バイオマス由来)1.4当量、ジエチレングリコール(バイオマス由来)0.05当量、触媒として二酸化ゲルマニウム0.0064重量%を仕込み、内温250℃まで除々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。その後、内温270℃まで上げ1.33hPaまで減圧し、3時間かけて重縮合反応を行いポリエステル系樹脂(A-1)を製造した。得られたポリエステル樹脂(A-1)の重量平均分子量は138,000であった。また、ポリエステル樹脂(A-1)のバイオマス度は、92%であった。
【0082】
(ポリエステル樹脂(A-2)の調製)
温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管及び真空装置の付いた反応缶に、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸0.15当量、セバシン酸(バイオマス由来)0.48当量、アゼライン酸(バイオマス由来)0.5当量、ポリオール成分としてエチレングリコール(バイオマス由来)1.48当量、ジエチレングリコール(バイオマス由来)0.05当量、触媒として二酸化ゲルマニウム0.0064重量%を仕込み、内温250℃まで除々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。その後、内温270℃まで上げ1.33hPaまで減圧し、3時間かけて重縮合反応を行いポリエステル系樹脂(A-2)を製造した。得られたポリエステル樹脂(A-2)の重量平均分子量は56,000であった。また、ポリエステル樹脂(A-2)のバイオマス度は、92%であった。
【0083】
ポリエステル樹脂のバイオマス度は、以下の式から算出した値である。
<<ポリエステル樹脂のバイオマス度>>
ポリエステル樹脂のバイオマス度(重量%)=100×[植物由来の原料の重量(g)]/[ポリエステル樹脂の調製に使用した原料の総重量(g)]
(実施例1)
【0084】
上記ポリエステル系樹脂(A-1)100重量部に、架橋剤としてトリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体(DIC株式会社製「バーノックD-40」、以下、「D-40」と略記する。)1.8重量部を配合し、ゲル分率が48重量%になる粘着剤を得た。
【0085】
上記粘着剤を、離型ライナー(両面が剥離処理された厚さ125μmの剥離紙)の重剥離処理面に塗工し、85℃で3分間乾燥させ、別の離型ライナーの軽剥離処理面に貼り合わせることによって、厚さ50μmの粘着剤層を作製した。その後、40℃の環境下で96時間熟成させることによって、両面粘着テープを得た。その後、両面粘着テープについて接着力及び再剥離性評価1に関する評価試験を行った。評価結果の詳細を表1に示す。<接着力評価>
【0086】
両面粘着テープの離型ライナー(軽剥離処理側)を剥離した後、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムで裏打ちし、20mm幅に切断したものを試験片とした。
【0087】
上記試験片の離型ライナーを剥離し、清潔で平滑なステンレス板の表面に貼付し、その上面で2kgローラーを1往復させることで加圧したものを、JISZ-0237に準じ、23℃及び50%RHの条件下で1時間放置した後、23℃及び50%RHの雰囲気下で引張試験機を用いて、対ステンレス(SUS)板接着力(剥離方向:180°、引張速度:0.3m/min)を測定した。
<再剥離性評価1>
【0088】
対ステンレス(SUS)板接着力の試験で作成した試験片をステンレス板に貼り、摂氏60℃、湿度90%の環境下で500時間放置した後、ステンレス板から剥がす際、試験片が界面剥離を生じるか否かによって評価した。界面剥離を生じる場合には、再剥離性があると評価し、表1中で「○」と示した。一方、ステンレス板から剥がす際、凝集破壊を生じるなどして、界面剥離を生じない場合には、再剥離性がないと評価し、表1中で「×」と示した。
【0089】
<粘着剤層のバイオマス度>
下記式から算出した粘着剤層のバイオマス度の値を表1に示す。
粘着剤層のバイオマス度(重量%)=100×[植物由来の原料の重量(g)]/[粘着剤層の総重量(g)]
【0090】
なお、粘着剤層のバイオマス度(重量%)は、上記粘着剤層を作成した粘着剤のバイオマス度と同様であり、上記式中の「植物由来の原料の重量(g)」は「(溶剤を除く)粘着剤に含まれる植物由来の原料の重量(g)」と同義であり、「粘着剤層の総重量(g)」は「(溶剤を除く)粘着剤の総重量(g)」と同義である。
(実施例2)
【0091】
実施例1と同様の手順で、配合量を表1に示す通りに調製して粘着剤を得た。次に、実施例1と同様の手順で両面粘着テープを得た。その後、両面粘着テープを上述の接着力評価及び再剥離性評価1に関する評価試験に供した。評価結果の詳細を表1に示す。また、上述した式から算出した粘着剤層のバイオマス度の値を表1に示す。
(実施例3)
【0092】
実施例1と同様の手順で、配合量を表1に示す通りに調製して粘着剤を得た。次に、実施例1と同様の手順で両面粘着テープを得た。その後、両面粘着テープを上述の接着力評価及び再剥離性評価1に関する評価試験に供した。評価結果の詳細を表1に示す。また、上述した式から算出した粘着剤層のバイオマス度の値を表1に示す。
(実施例4)
【0093】
上記ポリエステル系樹脂(A-1)100重量部に、粘着付与剤Aとして荒川化学工業株式会社「スーパーエステルA-100」(バイオマス度:100重量%)10重量部、架橋剤として「D-40」2.4重量部を配合し、ゲル分率が45重量%になる粘着剤を得た。
【0094】
上記粘着剤を、離型ライナー(両面が剥離処理された厚さ125μmの剥離紙)の重剥離処理面に塗工し、85℃で3分間乾燥させることによって、厚さ50μmの粘着剤層を作製した。その後、40℃の環境下で96時間熟成させることによって、両面粘着テープを得た。その後、両面粘着テープを上述の接着力評価及び再剥離性評価1に関する評価試験に供した。評価結果の詳細を表1に示す。また、上述した式から算出した粘着剤層のバイオマス度の値を表1に示す。
(実施例5)
【0095】
実施例4と同様の手順で、配合量を表1に示す通りに調製して粘着剤を得た。次に、実施例4と同様の手順で両面粘着テープを得た。その後、両面粘着テープを上述の接着力評価及び再剥離性評価1に関する評価試験に供した。評価結果の詳細を表1に示す。また、上述した式から算出した粘着剤層のバイオマス度の値を表1に示す。
(実施例6)
【0096】
粘着付与剤Bとしてハリマ化成株式会社「ハリタックPCJ」(バイオマス度:95重量%)10重量部を用いる以外は、実施例4と同様の手順で、配合量を表1に示す通りに調製して粘着剤を得た。次に、実施例4と同様の手順で両面粘着テープを得た。その後、両面粘着テープを上述の接着力評価及び再剥離性評価1に関する評価試験に供した。評価結果の詳細を表1に示す。また、上述した式から算出した粘着剤層のバイオマス度の値を表1に示す。
【0097】
(実施例7)
上記ポリエステル系樹脂(A-2)100重量部に、架橋剤として「D-40」2.5重量部を配合し、ゲル分率が40重量%になる粘着剤を得た。
【0098】
上記粘着剤を、離型ライナー(両面が剥離処理された厚さ125μmの剥離紙)の重剥離処理面に塗工し、85℃で3分間乾燥させ、別の離型ライナーの軽剥離処理面に貼り合わせることによって、厚さ50μmの粘着剤層を作製した。その後、40℃の環境下で96時間熟成させることによって、両面粘着テープを得た。その後、両面粘着テープを上述の接着力評価及び再剥離性評価1に関する評価試験を行った。評価結果の詳細を表1に示す。また、上述した式から算出した粘着剤層のバイオマス度の値を表1に示す。
【0099】
(実施例8)
実施例7と同様の手順で、配合量を表1に示す通りに調製して粘着剤を得た。次に、実施例7と同様の手順で両面粘着テープを得た。その後、両面粘着テープを上述の接着力評価及び再剥離性評価1に関する評価試験に供した。評価結果の詳細を表1に示す。また、上述した式から算出した粘着剤層のバイオマス度の値を表1に示す。
【0100】
(実施例9)
実施例7と同様の手順で、配合量を表1に示す通りに調製して粘着剤を得た。次に、実施例7と同様の手順で両面粘着テープを得た。その後、両面粘着テープを接着力評価及び再剥離性評価1に関する評価試験に供した。評価結果の詳細を表1に示す。また、上述した式から算出した粘着剤層のバイオマス度の値を表1に示す。
(比較例1)
【0101】
実施例4と同様の組成で、架橋剤だけ1.1重量部に変更して配合し、ゲル分率が20重量%になる粘着剤を得た。次に、実施例4と同様の手順で両面粘着テープを得た。その後、両面粘着テープを上述の接着力評価及び再剥離性評価1に関する評価試験に供した。評価結果の詳細を表1に示す。また、上述した式から算出した粘着剤層のバイオマス度の値を表1に示す。
(比較例2)
【0102】
実施例5と同様の組成で、架橋剤だけ1.1重量部に変更して配合し、ゲル分率が18重量%になる粘着剤を得た。次に、実施例4と同様の手順で両面粘着テープを得た。その後、両面粘着テープを上述の接着力評価及び再剥離性評価1に関する評価試験に供した。評価結果の詳細を表1に示す。また、上述した式から算出した粘着剤層のバイオマス度の値を表1に示す。
(比較例3)
【0103】
実施例6と同様の組成で、架橋剤だけ1.3重量部に変更して配合し、ゲル分率が17重量%になる粘着剤を得た。次に、実施例4と同様の手順で両面粘着テープを得た。その後、両面粘着テープを上述の接着力評価及び再剥離性評価1に関する評価試験に供した。評価結果の詳細を表1に示す。また、上述した式から算出した粘着剤層のバイオマス度の値を表1に示す。
【0104】
【0105】
実施例1~9で得た両面粘着テープに関し、摂氏85℃の環境下(湿度調整せず)で500時間放置した後、ステンレス板から剥がす際、試験片が界面剥離を生じるか否かによって再剥離性の評価を行った(下記再剥離性評価2)。その結果、実施例1~3、実施例7~9で得た粘着テープの再剥離性は良好(○)であった(それぞれ、実施例10~15の試験結果とした)。
<再剥離性評価2>
【0106】
対ステンレス(SUS)板接着力の試験で作成した試験片を、摂氏85℃の環境下(湿度調整せず)で500時間放置した後、ステンレス板から剥がす際、試験片が界面剥離を生じるか否かについて評価した。
【0107】
実施例1~15は、表1等に示されるように、80重量%以上の高バイオマス度、40重量%以上のゲル分率、対ステンレス板接着力が、4~14N/20mmの十分な接着力を有し、かつ再剥離性試験において、粘着テープが60℃、90%の高温・高湿環境下(又は85℃の高温環境下)で500時間放置した後においても界面剥離を有し、良好な再剥離性を示した。
【0108】
一方、比較例においては、良好な再剥離性を得られないことが確認された。比較例においては、いずれもゲル分率が40重量%未満であり、再剥離性試験において、凝集破壊(×)が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、携帯電話、スマートフォン、タブレットPC、携帯音楽プレイヤー、及び、PDA等の持ち運び可能な携帯用電子(電気)機器や、デジタルカメラ、ビデオ、カーナビゲーション、パーソナルコンピューター、テレビ、ゲーム機、エアコン、コピー機などの部材固定に用いられる粘着テープとして利用できる。
【0110】
本出願は、2019年12月13日に出願された日本出願である特願2019-225645号に基づく優先権を主張し、当該日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【符号の説明】
【0111】
1 離型ライナー
2 粘着剤層
3 基材