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特許7211568インキ剥離方法、該インキ剥離方法に使用するインキ剥離剤、及びこれらを利用したプラスチック基材回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】インキ剥離方法、該インキ剥離方法に使用するインキ剥離剤、及びこれらを利用したプラスチック基材回収方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/02 20060101AFI20230117BHJP
   C09D 9/00 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
B29B17/02
C09D9/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022547724
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2022007444
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2021039114
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】千手 康弘
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-038777(JP,A)
【文献】特開2002-179955(JP,A)
【文献】特開2020-175620(JP,A)
【文献】中国実用新案第203854114(CN,U)
【文献】特開平10-292138(JP,A)
【文献】特開平08-164524(JP,A)
【文献】特開平06-220245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/00- 17/04
C08J 11/00- 11/28
C09D 9/00- 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)20質量%以上の水溶性溶剤、及び、(b)無機塩基を0.1質量%~10質量%含有するインキ剥離剤を使用し、インキ層を有する積層フィルムからインキ層を剥離除去する工程を有し、
前記インキ層を有する積層フィルムが、プラスチックフィルム層と、プラスチックフィルム層、金属箔層又は蒸着膜層から選択される層との少なくとも2以上の層を有し、該層の間にインキ層を有する積層体であり、
前記積層フィルムからインキ層を剥離除去する工程において、破砕と同時に圧送を行うことにより、前記インキ剥離剤中で積層フィルムを破砕しながら、積層フィルムを単層に分離し、且つ、積層フィルムからインキ層を剥離除去することを特徴とするインキ剥離方法。
【請求項2】
前記水溶性溶剤が、水溶性のアルコール類もしくは、引火点が21℃以上の水溶性溶剤である請求項1に記載のインキ剥離方法。
【請求項3】
前記インキ剥離剤が(c)又は(d)の少なくともいずれかを更に含有する請求項1又は2に記載のインキ剥離方法。
(c)水を前記インキ剥離剤全量に対し80質量%以下含有する。
(d)界面活性剤を前記インキ剥離剤全量に対し5質量%以下含有する。
【請求項4】
請求項1又は2のいずれか一項に記載のインキ剥離方法によりインキ層を剥離したプラスチックフィルムを回収することを特徴とするプラスチックフィルム回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキ層が設けられたプラスチック基材からインキ層を剥離するためのインキ剥離方法及び該剥離方法に使用するインキ剥離剤、並びにこれらを利用したプラスチック回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プラスチックごみの分別回収しているリサイクル率は、世界全体でみると製造されたプラスチックの9%である。ゴミとなった91%のプラスチックのうち、焼却処分されたものは12%であり、79%は埋め立て処分されたか、もしくは環境中に漏れ出ている(非特許文献1)。リサイクルされたプラスチック製品は、コストの観点から同じ製品に戻ることは難しく、基本的にはリサイクルするたびに劣化するため、品質が落ちた製品に生まれ変わらざるを得ない。リサイクルプラスチックの品質が落ちる理由としては、プラスチックにインキや顔料が不純物として混在していることがあげられる。しかし、多くのプラスチック製品はその表面に印刷加工が施されているため、リサイクル工程で脱色することが難しく、結果として再生プラスチック製品は着色している。このような顔料やインキなどを含んだ再生プラスチックは、着色のため商品価値が著しく低いだけではなく、不純物が起点となって物性的に劣化したプラスチックにしかならないのが実情であり、良品質の再生プラスチックを生み出すリサイクル方法が強く求められている。
【0003】
このような課題に対して、特許文献1は、プラスチック製品に印刷されたインキをアルカリ溶液中で剥離させるため、高酸価樹脂を主体としたインキを提供しているが、組成変化に伴う大幅な印刷適性劣化には述べられていない。特許文献2は、プラスチック製品から印刷層を剥離する方法として、加熱したアルカリ溶液中で攪拌する方法が提供されているが、印刷層を剥離するためには印刷層の下に高酸価樹脂による剥離層が必須となっている。これらの検討はインキおよび/または剥離層に、フマル酸やフタル酸、マレイン酸を初めとした高酸価樹脂を用い、リサイクル工程においてアルカリ溶液で剥離させているが、高酸価樹脂を溶解する際にアルカリ溶液は中和してしまうため、多量のアルカリ溶液が必要である。
【0004】
一方で、塗料や樹脂膜を溶解させるため、特許文献3は、鋼板を洗浄可能なアルカリ洗浄剤として5%水酸化ナトリウム水溶液に、添加剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いている。また、特許文献4~7は、それぞれの目的に合わせて、アミン化合物、水、グリコールエーテルの構成の洗浄液を用いている。ところが、例示されているこれら洗浄剤を用いても本願が目的とするフィルムに印刷されたインキ層は剥離することはできなかった。
【0005】
このように、従来技術における洗浄剤の多くは、配管内の乾いた塗料を溶解する、もしくはエッチングレジスト樹脂を溶解するために開発された洗浄剤であり、フィルム上に印刷されたインキ層を剥離させる目的ではなく、またそれらの洗浄剤にそのような効果はなかった。
【0006】
特に近年は包装材の多様化に伴い、包装材の高機能性、インキ膜のプラスチック基材への密着性の向上、印刷物の高意匠性がより一層求められていることから、包装材やインキの種類の多様化が進み、また、多色や多層のインキ層の形成も一般的に行われている。それと同時に、インキ層の剥離はより困難となる状況である。例えば、インキは用いられる樹脂の種類によって、熱可塑型タイプのインキ及び熱硬化型タイプのインキに大別できるが、熱硬化型タイプのインキはインキ膜が強固に結合しプラスチック基材に密着することから、インキ膜の剥離はより困難となる。また、印刷層が複数のフィルムの間に設けられている(裏刷り)積層フィルムの場合も、印刷層を除去するには複数のフィルムの分離が必要となるため、インキ膜の剥離はより困難となる。
【0007】
そのため、多様なインキ膜や、多様な構成のプラスチックフィルムに対してインキ膜を剥離できる方法が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Science Advances 19 Jul 2017:Vol. 3, no. 7, e1700782
【特許文献】
【0009】
【文献】特願2020-506290号公報
【文献】特願平11-206883号公報
【文献】特開平10-280179号公報
【文献】特開平08-123043号公報
【文献】特開平08-245989号公報
【文献】特開平09-087668号公報
【文献】特開2006-83351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、プラスチック基材上に印刷された上に印刷されたインキ層を容易に剥離することができるインキ剥離方法及び該剥離方法に使用可能なインキ剥離剤、並びにこれらを利用したプラスチック基材回収方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち本発明は、(a)20質量%以上の水溶性溶剤、及び、(b)無機塩基を0.1質量%~10質量%含有するインキ剥離剤を使用し、インキ層を有するプラスチック基材からインキ層を剥離除去する工程を有することを特徴とするインキ剥離方法を提供する。
【0012】
また本発明は、前記記載のインキ剥離方法に使用するインキ剥離剤であって、(a)20質量%以上の水溶性溶剤、及び、(b)無機塩基を0.1質量%~10質量%を含有するインキ剥離剤を提供する。
【0013】
また本発明は、前記記載のインキ剥離方法によりインキ層を剥離したプラスチック基材を回収することを特徴とするプラスチック基材回収方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、インキ層が設けられたプラスチック基材からインキ層を容易に剥離することができる。そのため、インキが付着していないプラスチック基材を容易に回収することができ、再生プラスチックの品質を向上することができる。
【0015】
本発明の方法によると、インキの硬化膜をはじめとする種々の種類のインキ膜や、印刷層が複数のフィルムの間に設けられている(裏刷り)積層フィルムのような多様な構成のプラスチック基材においても、インキ層を容易に剥離することができる。つまり、プラスチック基材の種類を問わずインキ層を容易に剥離することができ、フィルムを単層に分離可能であることから、インキ層の回収プロセスを容易にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(インキ剥離剤)
本発明で使用するインキ剥離剤は、インキ層を有するプラスチック基材からインキ層を容易に剥離することができるもので、(a)20質量%以上の水溶性溶剤、及び、(b)無機塩基を0.1質量%~10質量%含有する水及び必要に応じて界面活性剤等を含有するものである。なお、インキ層が剥離されたプラスチック基材は回収分別再利用するために用いることができ、インキが除去されていることから高品質なリサイクルプラスチックを得られる。
【0017】
(a)水溶性溶剤は、水溶性のアルコール類もしくは、引火点が21℃以上の水溶性溶剤を1種又は2種以上含有することが好ましい。剥離剤に水溶性溶剤を用いることにより、剥離剤中に含有する無機塩基から生じる水酸化物イオンが水和されにくいため、水酸化物イオンの求核性が高くなり、また、疎水場環境においてインキ層剥離の反応を進行させることができることから、インキ膜の剥離に効果的である。
【0018】
引火点が21℃以上の水溶性溶剤は、消防法に定める第二石油類及び第三石油類に該当する有機溶媒のうち、水溶性の溶剤が好ましい。また、水溶性のアルコール類としては消防法に定めるアルコールが挙げられる。これらとして具体的には、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エタノール等が挙げられ、これらを単独で用いても混合して用いてもよい。
【0019】
インキ剥離剤において、水溶性溶剤は、20質量%以上の範囲で含有することが好ましい。水溶性溶剤の含有量が20質量%未満であると、インキ層を剥離する上で十分な効果を得ることが難しくなる。インキ層の剥離性の観点からは剥離剤中に水溶性溶剤を多く含有することが好ましく、具体的には、水溶性溶剤は30質量%以上が好ましく、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることが好ましい。
【0020】
本発明の剥離剤は、(b)無機塩基を含有する。無機塩基としては、具体的には水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが挙げられ、水酸化カリウムを用いることが好ましい。これらの無機塩基は、インキ剥離剤全量に対して0.1~10重量%の濃度で含有するが、0.1重量%~5重量%の濃度がより好ましい。またpHは10以上が好ましく、11以上が好ましく、12以上がより好ましい。
【0021】
本発明のインキ剥離剤は、(c)水を含有してもよい。インキ剥離剤中に水を含有することにより、インキ剥離方法の作業安定性や環境安定性を向上させることができる。水の含有量は、インキ剥離剤全量に対し80質量%以下で含有することが好ましい。水の含有量出社が80質量%を超えると、インキ層を剥離する上で十分な効果を得ることが難しくなる。
【0022】
水溶性溶剤と水との割合は、インキ層の剥離効果と安全性の観点から適宜調整可能であるが、質量比で、水溶性溶剤:水=20:80~100:0の範囲で用いることが好ましい。水溶性溶剤と水の総量において水溶性溶剤の割合の下限値は20質量%であることが好ましく、30質量%であることが好ましく、40質量%であることが好ましく、50質量%であることが好ましく、60質量%であることが好ましい。
【0023】
本発明のインキ剥離剤は、(d)界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は特に限定されるものではなく、公知の界面活性剤を使用できるが、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン系界面活性剤などが挙げられる。
【0024】
ノニオン性界面活性剤としては一般的には、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、などをあげることができ、これらの中では、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーがあげられる。
【0025】
本発明においては、一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物を含有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤を0.01重量%~5重量%含有するインキ剥離剤であることが好ましい。
【0026】
-O-[CH-CH(X)-O]n-H (1)
一般式(1)中、Rは直鎖又は分岐鎖のアルキル基、アルケニル基又はオクチルフェノール基を表し、nは平均付加モル数を表し、Xは水素又は短鎖アルキル基を示す。
【0027】
さらに好ましくは、一般式(1)のうちRが示す炭素原子数が10以上の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基が好ましい。炭素原子数は、10を超えて多いほどインキ剥離性がよく好ましい。具体的な炭素原子数は、炭素原子数10のデシル基、炭素原子数12のラウリル基、炭素原子数13のトリデシル基、炭素原子数14のミリスチル基、炭素原子数16のセチル基、炭素原子数18のオレイル基、ステアリル基があげられる。
【0028】
具体的な製品としては、第一工業製薬社製のノイゲンシリーズ,DSK NL-Dashシリーズ,DKS-NLシリーズ、日油社製のノニオンシリーズ、花王の社製エマルゲンシリーズ、ライオン社製のレオックスシリーズ,レオコールシリーズ,ライオノールシリーズなどのうち、一般式(1)であらわされるノニオン系界面活性剤のうちRが示す炭素原子数が10以上であれば該当するが、これに限定されるものではない。
【0029】
前記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤におけるHLB値は特に限定されるものではない。なお、ここでいうHLB値とは、界面活性剤の水と油(水に不溶性の有機化合物)への親和性の程度を表す値であり、グリフィン法(HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量)で定義されるものである。
【0030】
前記一般式(1)で表されるノニオン系界面活性剤のうち、Rが示す炭素原子数が10以上でかつ、HLB値が12.5未満の具体的な界面活性剤は、第一工業製薬社では、ノイゲンXL-41、ノイゲンLF-40X、ノイゲンTDS-30、ノイゲンTDS-50、ノイゲンTDS-70、ノイゲンTDX-50、ノイゲンSD-30、ノイゲンSD-60、DKS NL-15、DKS NL-30、DKS NL-40、DKS NL-50、DKS NL-60、DKS NL-70、ノイゲンET-83、ノイゲンET-102、DSK Dash400、DSK Dash403、DSK Dash404、DSK Dash408、ノイゲンLP-55ノイゲンLP-70、ノイゲンET-65、ノイゲンET-95、ノイゲンET-115、ノイゲンET-69、ノイゲンET-89、ノイゲンET-109、ノイゲンET-129、ノイゲンET-149、日油社製では、ノニオンK-204、パーソフトNK-60、ノニオンP-208、ノニオンP-210、ノニオンE-202、ノニオンE-202S、ノニオンE-205、ノニオンE-205S、ノニオンS-202、ノニオンS-207、ノニオンEH-204、ノニオンID-203、ノニオンHT-505、ノニオンHT-507、ノニオンHT-510、ノニオンHT-512、花王社製では、エマルゲン102KG、エマルゲン103、エマルゲン104P、エマルゲン105、エマルゲン106、エマルゲン108、エマルゲン210P、エマルゲン404、エマルゲン408、エマルゲン409PV、エマルゲン705、エマルゲン707、ライオン社製では、レオックスCL-30、レオックスCL-40、レオックスCL-50、レオックスCL-60、レオコールNL-30C、レオコールTD-50、レオコールTD-70、レオコールSC-50、レオコールSC-70などが例示できるが、これに限定されるものではない。
【0031】
また、一般式(1)で表されるノニオン系界面活性剤のうち、R1の炭素原子数が10以上の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、かつHLB値が12.5以上の具体的な界面活性剤は、第一工業製薬社では、ノイゲンXL-61、ノイゲンXL-6190、ノイゲンXL-70、ノイゲンXL-80、ノイゲンXL-100、ノイゲンXL-140、ノイゲンXL-160、XL-400D、ノイゲンXL-1000、ノイゲンLF-60X、ノイゲンLF-80X、ノイゲンLF-100X、ノイゲンTDS-80、ノイゲンTDS-100、ノイゲンTDS-120、ノイゲンTDS-200D、ノイゲンTDS-500F、ノイゲンTDX-80、ノイゲンTDX-80D、ノイゲンTDX-100D、ノイゲンTDX-120D、ノイゲンSD-70、ノイゲンSD-80、ノイゲンSD-110、ノイゲンSD-150、DKS NL-80、DKS NL-90、DKS NL-100、DKS NL-110、DKS NL-180、DKS NL-250、DKS NL-450F、DKS NL-600F、ノイゲンET-160,ノイゲンET-170,ノイゲンET-190,DSK Dash410,ノイゲンLP-80、ノイゲンLP-100、ノイゲンLP-180、ノイゲンET-135、ノイゲンET-165、ノイゲンET-159、ノイゲンET-189、日油社製では、ノニオンK-220,ノニオンK-230,ノニオンK-2100W,パーソフトNH-90C、パーソフトNK-100、パーソフトNK-100C、ノニオンP-210、ノニオンP-213、ノニオンE-212、ノニオンE-215、ノニオンE-230、ノニオンS-215、ノニオンS-220、ノニオンB-250、ノニオンID-206、ノニオンID-209、ディスパノールTOC、ノニオンHT-515、ノニオンHT-518、花王社製では、エマルゲン109P、エマルゲン120、エマルゲン123P、エマルゲン130K、エマルゲン147、エマルゲン150、エマルゲン220、エマルゲン320P、エマルゲン350、エマルゲン420、エマルゲン430、エマルゲン709、エマルゲン1108、エマルゲン1118S-70,エマルゲン1135S-70,エマルゲン1150S-60,エマルゲン4085,エマルゲン2020G-HA,エマルゲン2025G、ライオン社製では、レオックスCL-90、レオックスCL-230、レオコールTD-90、レオコールTD-90D、レオコールTDA-90-25、レオコールTDN-90-80、レオコールTD-120、レオコールTD-200、レオコールTDA-400-75、レオコールSC-80、レオコールSC-90、レオコールSC-120、レオコールSC-150、レオコールSC-200、レオコールSC-300、レオコールSC-400などが例示できるが、これに限定されるものではない。
【0032】
一般式(1)のうちRがオクチルフェノール基のとき、オクチルフェノールエトキシレートが好ましい。
【0033】
具体的な製品としては、ダウケミカル社TRITON(登録商標)シリーズ、ローディア社のIgepal CAシリーズ、シェルケミカルズ社のNonidet Pシリーズ、日光ケミカルズ社のNikkol OPシリーズがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0034】
両性界面活性剤として具体的には、ベタイン型の両面活性剤が好ましく、例えば一般式(2a)で表される少なくとも1種の化合物を含有するアルキルカルボキシベタイン骨格又はアルキルアミドカルボキシベタイン骨格の両性界面活性剤を含有することがより好ましい。
【0035】
R1-R2-N(CHCHCOO (2a)
(一般式(2a)中、R1は水素又はC(=O)R3-NH-(R3は直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す)を示し、R2はアルキレン基、アルケニレン基を示す。)
一般式(2a)中、R1は水素原子を表すことが好ましい。
一般式(2a)で表される化合物は、一般式(2a-1)で表されるアルキルカルボキシベタイン骨格である両性界面活性剤であることが好ましい。
【0036】
2n+1(CHCHCOO (2a-1)
(一般式(2a-1)中、nは平均付加モル数を示す。)
一般式(2a-1)において、nは8以上であることが好ましく、10以上であることが好ましく、11以上であることが好ましい。
【0037】
一般式(2a)に該当する具体的な製品としては、日油社製では、ニッサンアノンBDF(登録商標)-R、ニッサンアノンBDF(登録商標)-SF、ニッサンアノンBDC-SF、ニッサンアノンBDL-SF、第一工業製薬社製では、アモーゲンCB-H、アモーゲンHB-C、新日本理化社製では、リカビオンB-200、リカビオンB-300、東邦化学工業社製では、オバゾリンCAB-30、オバゾリンISABなどがあげられる。また、一般式(1a-1)に該当する具体的な製品としては、第一工業製薬社製では、アモーゲンS、アモーゲンS-H、アモーゲンK、花王社製では、アンヒトール20BS、アンヒトール24B、アンヒトール86B、日油社製では、ニッサンアノンBF、ニッサンアノンBL、ニッサンアノンBL-SF、新日本理化社製では、リカビオンA-100、リカビオンA-200、リカビオンA-700、東邦化学社製では、オバゾリンLB、オバゾリンLB-SF、などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
また、ベタイン型の両性界面活性剤としては、イミダゾリニウムベタイン骨格を有するものでもよく、該当する具体的な製品としては日油社製では、ニッサンアノンGLM-R、ニッサンアノンGLM-R-LV、花王社製ではアンヒトール20Y-Bなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
また、両性界面活性剤としては、以下の一般式(2b)で表される界面活性剤であってもよい。
【0040】
R4-(NHCnb-N(R5) (2b)
(一般式(2b)中、R4は直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、nbは0~5の整数を表し、R5は水素、-CHCOONa又は-CHCOOHを示すが、2つ存在するR5は同一であっても異なってもよく、少なくとも一つのR5は-CHCOONaを示す。)
一般式(2b)中、R4は直鎖のアルキル基を表すことが好ましく、R4の炭素原子数は8以上であることが好ましく、10以上であることが好ましく、12以上であることが好ましい。
【0041】
一般式(2b)に該当する具体的な製品としては、日油社製では、ニッサンアノンLG-R、ニッサンアノンLAなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
また、両性界面活性剤としては、以下の一般式(2c)で表されるアミンオキサイド型の界面活性剤であってもよい。
【0043】
R6-N(CH (2c)
(一般式(2c)中、R6は直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
一般式(2c)中、 R6は一般式(2b)中、R4は直鎖のアルキル基を表すことが好ましく、R4の炭素原子数は8以上であることが好ましく、10以上であることが好ましく、12以上であることが好ましい。
【0044】
一般式(2c)に該当する具体的な製品としては、第一工業製薬社製では、アモーゲンAOL、花王社製ではアンヒトール20Nなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
カチオン性界面活性剤として具体的には、4級アンモニウム骨格のカチオン性面活性剤が好ましく、例えば一般式(3a)で表される少なくとも1種の化合物を含有する4級アンモニウム骨格のカチオン性界面活性剤を含有することがより好ましい。
【0046】
R1-N(R2R3)-R4 (3a)
(一般式(3a)中、R1は直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基、又は直鎖あるいは分岐鎖のアルケニル基を示し、該アルキル基又はアルケニル基中の-CH-は-C(=O)-、-NH-又は-C(=O)-NH-で置換されてもよく、R2及びR3は水素原子、直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基又は直鎖あるいは分岐鎖のアルケニル基を示し、R4は水素原子、直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基、直鎖あるいは分岐鎖のアルケニル基又はフェニル基を示し、該アルキル基又はアルケニル基中の末端の-CHは、カルボキシ基、又はフェニル基で置換されてもよい。)
一般式(3a)中、R1は、インキの剥離性をより高めるために、長鎖のアルキル基又はアルケニル基であることが好ましく、具体的には炭素素原子数8~30のアルキル基又はアルケニル基であることが好ましく、炭素原子数10~25のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数12~22のアルキル基又はアルケニル基であることが好ましい。アルキル基又はアルケニル基は直鎖であっても分岐していてもよいが、直鎖であることが好ましく、直鎖のアルキル基であることがより好ましい。
【0047】
R1は、アルキル基又はアルケニル基中の少なくとも一つ以上の-CH-が-C(=O)-、-NH-又は-C(=O)-NH-で置換されてもよい。中でも、アルキル基又はアルケニル基中の少なくとも一つ以上の-CH-が-C(=O)-NH-又は-NH-C(=O)で置換されていることが好ましく、アルキル基中の一つの-CH-が-C(=O)-NH-又は-NH-C(=O)で置換されていることが好ましく、R1中にアミドプロピル骨格を有することがより好ましい。
【0048】
R2及びR3は直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基又は直鎖あるいは分岐鎖のアルケニル基を示すことが好ましく、直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基を表すことが好ましい。中でも、炭素原子数1~3直鎖のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基を表すことがより好ましい。
【0049】
R4は、直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基、直鎖あるいは分岐鎖のアルケニル基又はフェニル基を示すことが好ましく、直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基を表すことがより好ましい。また、アルキル基又はアルケニル基中の末端の-CHは、カルボキシ基、又はフェニル基で置換されていることが好ましい。
【0050】
R4の炭素原子数1~8であることが好ましく、1~5であることが好ましく、1~3であることが好ましく、1又は2を表すことがより好ましい。
【0051】
R4がメチル基を表す場合は、R2及びR3もメチル基を表し、一般式(3a)がアルキルトリメチルアンモニウム骨格を示すことが好ましい。
【0052】
また、R4がエチル基を表す場合は、エチル基中の末端の-CHは、カルボキシ基、又はフェニル基で置換されていることが好ましい。つまり、R4が-CH-(C(=O)OHを表すか、若しくは、ベンジル基を表すことが好ましい。
一般式(3a)で表される化合物は、一般式(3a-1)で表される4級アンモニウム骨格のカチオン性界面活性剤が好ましい。
【0053】
2n+1(CHR4 (3a-1)
(一般式(3a-1)中、nは平均付加モル数を示し、R4は請求項3に記載の一般式(3a)中のR4と同じ意味を示す。)
一般式(3a-1aにおいて、nが示す炭素原子数は8以上が好ましい。炭素原子数は、8を超えて多いほどインキ剥離性がよく好ましい。具体的な炭素原子数は、炭素原子数8のオクチル基、炭素原子数9のノニル基、炭素原子数10のデシル基、炭素原子数11のウンデシル基、炭素原子数12のラウリル基、炭素原子数13のトリデシル基、炭素原子数14のミリスチル基、炭素数15のペンタデシル基本、炭素原子数16のセチル基、炭素原子数18のオレイル基、ステアリル基があげられる。
【0054】
R4の好ましい基は、一般式(3a)と同様である。
これらの4級アンモニウム骨格のカチオン性面活性剤は、ハロゲンと塩を形成した4級アンモニウム骨格塩型であることが好ましく、Clと塩を形成することが好ましいく、より好ましくはBrと塩を形成することが好ましく、更に好ましくは、Iと塩を形成することが好ましい。ハロゲンと塩を形成した4級アンモニウム骨格塩は、ハロゲンの求核作用によりインキ膜の加水分解を促進することから、インキの剥離性を向上させると考えられる。
【0055】
中でも、塩化アルキルトリメチルアンモニウム型、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム型、塩化アルキルベンザルコニウム型の化合物が好ましい。
【0056】
一般式(3a)あるいは(3a-1)に該当する具体的な製品としては、日油社製では、ニッサンカチオンMA、ニッサンカチオンSA、ニッサンカチオンBB、ニッサンカチオンFB、ニッサンカチオンPB-300、ニッサンカチオンABT2-500、ニッサンカチオンAB、ニッサンカチオンAB-600、ニッサンカチオンVB-Mフレーク、ニッサンカチオンVB-F、ニッサンカチオン2-DB-500E、ニッサンカチオン2-DB-800E、ニッサンカチオン2ABT、ニッサンカチオン2-OLR、ニッサンカチオンF-50R、ニッサンカチオンM-100Rがあげられ、第一工業社製では、カチオーゲンTML、カチオーゲンTMP、カチオーゲンTMS、カチオーゲンDDM-PG、カチオーゲンBC-50、カチオーゲンTBBがあげられ、花王社では、コータミン24P、コータミン86Pコンク、コータミン60W、コータミン86W、サニゾールC、サニゾールB-50があげられ、ライオン社製では、リポガードC-50、リポガードT-28、リポガードT-30、リポガードT-50、リポガードT-800、リポガード16-29、リポガード16-50E、リポガード18-63、リポガード22-80、リポガードCB-50、リポガード210-80E、リポガード2C-75、リポガード2HP-75、リポガード2HPフレーク、リポガード2HT-75、リポガード2HTフレーク、リポガード20-75l、リポガード41-50、TMAC-50、TPAH-40、TBAB-50A、TBAB-100A、TBAH-40、リポガードPH-100、BTMAC-50、BTMAC-100A、BTEAC-50、BTEAC-100A、BTBAC-50A、などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
また、カチオン性界面活性剤は、1級~2級のアルカノールアミン骨格で表される少なくとも1種の化合物を含有することが好ましく、モノアルカノールアミン骨格で表される少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。
1級のモノアルカノールアミンとしては、炭素原子数1~4の低級アルカノールであることが好ましく、具体的には、モノエタノールアミン、2-アミノイソブタノールなどがあげられ、2級のモノアルカノールアミンとしては、N-メチルエタノールアミン、2-エチルアミノエタノール、イソプロパノールアミンなどがあげられるが、例示以外の物質も適宜使用することができる。また、これらモノアルカノールアミン系化合物は1種を単独でまたは2種以上を適宜に組合せて使用でき、水に混合して使用することもできる。
これらのモノアルカノールアミン骨格のカチオン性面活性剤は、ハロゲンと塩を形成したモノアルカノールアミン塩型であることが好ましく、Clと塩を形成することが好ましい。
【0058】
これらの界面活性剤は、単独で用いることもでき、又2種類以上を混合して用いることもできる。その添加量はインキ剥離剤全量に対し5重量%以下の範囲が好ましく、2質量%以下であることが好ましい。界面活性剤の下限値は特に限定されず、0質量%でもよいが、界面活性剤を含有する場合は0.1質量%以上であることが好ましい。
(温度)
本発明においては、インキ剥離剤の温度即ち液温は特に限定されるものではない。剥離剤としての洗浄効果がより高いのは液温が高い方であることから、30℃以上が好ましく、40℃以上が好ましく、50℃以上が好ましい。液温の上限は、液体状態が保てれば特段限定されないが、通常は90℃以下が好ましい。
【0059】
一方、インキ剥離剤中でプラスチック基材を破砕する場合、プラスチック基材をより細かく破砕するためには、液温が高すぎないことが好ましいことから、40℃以下が好ましく、30℃以下が好ましく、20℃以下であることが好ましい。破砕性が高いほど、インキの剥離性も向上する。
【0060】
以上のことから、インキ剥離剤の剥離性効果と、プラスチック基材の破砕性を考慮して液温を調整すればよく、具体的には、10℃~70℃の範囲で用いることが好ましい。
【0061】
(剥離設備)
前記インキ剥離剤を用いてインキ層を剥離する工程における設備や方法は特に限定されるものではないが、具体的には、容器内でインキ剥離剤を攪拌することができる攪拌翼付きモータを具備した装置、超音波を発生させる装置を具備した装置、容器ごと激しく振盪することができる装置などがあげられる。その他に、インキ剥離と共にプラスチック基材の破砕を同時に行う場合には、湿式破砕機やコロイドミル、粉砕ミルなどを例示することができる。
【0062】
(湿式破砕機)
本発明のインキ剥離方法に用いられる湿式破砕機の例の1つは、液体中の固形物を破砕・分散・混合・圧送を同時に行うことが出来る湿式破砕機である。具体的には剪断力及び/又は摩擦力より液体中の固形物を破砕する機構を有するものが好ましく、且つプラスチック基材を破砕して圧送できる機構を有する破砕機が好ましい。このような湿式破砕機としては、湿式破砕ポンプやコロイドミル、粉砕ミルが挙げられる。
【0063】
(湿式破砕ポンプ)
本発明で使用する湿式破砕ポンプは、液中で固形物を圧送しながら、固形物を固定刃と回転刃により破砕する機構を有することが好ましく、より好ましい機構は、切刃、破砕羽根車、シュラウドリング、グリッドの4点部品の組み合わせにより、3段階に破砕される機構である。
【0064】
湿式破砕ポンプにより、プラスチック基材は3段階で破砕される。プラスチック基材は、固定刃の切刃と回転刃の破砕羽根車の入り口のエッジによって荒切りされ、次いで軸流型の破砕羽根車によって攪拌圧送され、一部のプラスチック基材は固定刃のシュラウドリングの刃部に当たって切断される。破砕羽根車を通った積層フィルムは格子との間でさらに細かく破砕攪拌され、グリッドを通って加圧羽根車により加圧され、次工程に圧送される。
【0065】
圧送速度は特に限定されるものではないが、インキ層の剥離や、プラスチック基材が積層したプラスチック積層体を各層に分離する際の剥離と分離効率を考慮すると、0.03m/min以上が好ましい。圧送速度の上限は特に限定されなく、装置の標準的な運転速度、例えば1.4m/minでも十分に、インキ層の剥離とプラスチック積層体の単層への分離をすることが出来る。
【0066】
グリッド形状は特に限定されない。グリッド口径は積層フィルムの破砕後の大きさに関与するため、グリッド口径は0.1~50mmが好ましく、破砕効率や破砕後の積層フィルムの大きさを考慮すると、より好ましくは1~20mmである。
【0067】
具体的な湿式破砕ポンプとしては、ハスクバーナ・ゼノア社のKDシリーズ、ニクニ社のサンカッタシリーズ、古河産機システムズ社のディスインテグレータシリーズ、相川鉄工社のインクラッシャーシリーズ、三和ハイドロテック社のスキャッターなどが例示できる。
【0068】
(コロイドミル)
本発明で使用するコロイドミルは、粒子が液体中を浮遊している分散系において粒子サイズを低減するために使用される機械である。コロイドミルは、ロータとステータの組み合わせからなり、固定されたステータに対してロータは高速で回転する。高速回転により、生じる高レベルの剪断により液中の粒子サイズを小さくするために使用される。
【0069】
コロイドミルの破砕部は、歯形状をした円錐台形状のロータと、ステータの組み合わせからなり、ロータとステータは吐出口に近づくにつれて狭くなるようなテーパ形状となっている。プラスチック基材は、吐出口に近づくにつれて狭くなるリング状の間隙で、強力な剪断、圧縮、衝撃を繰り返し与えられ破砕される。
【0070】
具体的なコロイドミルは、一般的にコロイドミルと呼称される分散機であれば特に限定されないが、IKA社のコロイドミルMKシリーズ、イワキ社のWCMシリーズ、マウンテック社のPUCコロイドミルシリーズ、ユーロテック社のキャビトロンなどが例示できる。
【0071】
(粉砕ミル)
本発明で使用する粉砕ミルは、固形物が液体中を浮遊している系において固形物を粉砕するために使用される機械であり、フードプロセッサーのような機能及び外観である。ここでいう粉砕ミルは、回転刃の高速回転により、生じる高レベルの剪断により液体中の固形物サイズを小さくするために使用される。
【0072】
具体的な粉砕ミルは、バッチ式であり、液中に固形物を入れ回転刃によって粉砕することができる機械であれば特に限定されないが、IKA社のMultiDriveシリーズ、大阪ケミカル社のマイティ―ブレンダーシリーズ、ワーリングシリーズ、ブレンダーシリーズ各種が例示できる。
【0073】
前記湿式破砕機を用いて洗浄剤で破砕することにより、異種プラスチックが積層したプラスチック積層体を単層のフィルムやプラスチック基板に分離することができる。また、プラスチック積層体には、接着剤の他、商品名等の表示や装飾性を付与するための印刷インキ膜を設けている場合が殆どであるため、インキ層が設けられたプラスチック積層体においては、剥離剤中でプラスチック積層体を破砕することにより、インキ層をより効率的に剥離除去することができる。このように、剥離中でプラスチック積層体を破砕することにより、プラスチック積層体に設けられたインキ層の剥離除去とプラスチック積層体の単層分離とを同時に行うことができる。そのため、インキ層が最外層に存在せず、2種以上のプラスチック基材の間にインキ膜を有する積層体構造においても、インキ層の剥離除去を簡素なプロセスで行える。例えば、食品包装用をはじめとしたプラスチック積層フィルムに最も多く使用されているインキはグラビアインキやフレキソインキであるが、剥離剤を用いた湿式破砕工程においては、該印刷インキ層も剥離させることができる。また、積層フィルムにはアルミニウム等の金属の箔や蒸着膜が積層している場合もあるが、本発明においては金属の箔や蒸着膜も剥離あるいは溶解させることができる。
【0074】
(回収設備)
インキ層や、インキ層剥離後のプラスチック基材を回収する設備や方法は特に限定されるものではないが、例えば、濾過機、遠心分離機、自動掻上げバー・スクリーン、傾斜式ワイヤ・スクリーン、回転ドラム式スクリーンなどを用いることができる。
【0075】
(インキ層を有するプラスチック基材)
本発明のインキ剥離方法に用いられるインキ層を有するプラスチック基材は、プラスチック基材にインキ膜が付着しているものであれば特に限定されるものではない。インキ層は、例えば、グラビア印刷機、フレキソ印刷機、オフセット印刷機、インクジェット印刷機等を使用し、有機溶剤型印刷インキ、水性型又は活性エネルギー線硬化型インキを印刷された印刷インキである。複数のインキ種を用いる多色印刷のインキ層であってもよい。
【0076】
インキの種類は特に限定されるものではなく、本発明のインキ剥離剤を用いることによりインキの種類を問わずインキ層を剥離できる。本発明のインキ剥離剤は水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の無機塩基を含有することから、アルカリに弱い樹脂を含むインキ、例えばインキに使用している樹脂に硝化綿を含むことや、酸化を持つ樹脂を含むことが、より剥離しやすくなるため好ましい。
【0077】
プラスチック基材は、素材、形状など特に限定されるものではなく、また、単層構造であっても、異種プラスチックが積層されたプラスチック積層体であってもよい。
【0078】
(プラスチック積層体)
本発明のインキ剥離方法に用いられるプラスチック積層体は、少なくとも2以上の層を有するプラスチック積層体であり、プラスチック基板上に、インキ層、接着剤層、他のプラスチック層、蒸着膜層、金属箔層等の複数の層がラミネートされた積層体である。このような積層体としては特に限定なく、食品包装用や生活用品に使用されている反応性接着剤でラミネート接着された積層フィルムがあげられるが、もちろん非反応性の接着剤、例えば熱可塑性樹脂接着剤でラミネート接着された積層フィルムや、押し出し積層法で熱融着して得られた積層フィルムも、本発明のインキ剥離方法によりインキ層を剥離でき、各々の単層フィルムに分離回収することができる。また、シート状や容器形状の積層体であってもよい。
【0079】
また、例えばペットボトルなどの容器には、商品名等の表示や装飾性を付与するために、筒状に形成された積層フィルムであるシュリンクラベルが用いられており、リサイクル時には該シュリンクラベルを消費者がはがして、ペットボトル本体とシュリンクラベルとを別々に廃棄することが多いが、本発明のインキ剥離方法では、ペットボトル本体とシュリンクラベルとが一体となった状態でも、インキ層を剥離・回収できる。特に、湿式粉破砕機を用いた場合には、インキ剥離と共に、ペットボトル本体からシュリンクラベルを分離し、且つシュリンクラベルを各々の単層フィルムに分離することができる。
【0080】
反応性接着剤でラミネート接着された積層フィルムは、少なくとも2つの樹脂フィルム層の間に、または、プラスチック基材と金属箔や蒸着膜層との間に、前記反応性接着剤からなる接着剤層を積層されていることが多い。具体的には、該積層フィルムにおいて、樹脂フィルム層を(F)と表現し、金属箔や蒸着膜層の金属箔層を(M)と表現し、前記反応性接着剤等の接着剤層を(AD)と表現すると、積層フィルムの具体的態様として以下の構成が考えられるが、もちろんこれに限定されることはない。
(F)/(AD)/(F)、
(F)/(AD)/(F)/(AD)/(F)、
(F)/(AD)/(M)/(AD)/(F)、
(F)/(AD)/(M)、
(F)/(AD)/(M)/(F)、
(F)/(AD)/(F)/(AD)/(M)/(AD)/(F)、
(F)/(AD)/(M)/(AD)/(F)/(AD)/(F)、
(M)/(AD)/(M)、
(M)/(AD)/(F)/(AD)/(M)、
(AD)/(F)/(AD)/(M)、
(AD)/(F)/(AD)/(F)/(AD)、等。
【0081】
本発明のインキ剥離方法に用いられるプラスチック積層体は、樹脂フィルム層にインキ層を有する構成であるが、インキ層の設けられる場所は特に限定されない。例えば、インキ層は積層フィルムの最外層に設けられていてもよいし、樹脂フィルム層(F)と接着剤層(AD)の間であってもよい。樹脂フィルム層(F)と接着剤層(AD)の間にインキ層を有する場合は(裏刷り)、インキ層と接着剤層がより強固に結合することからインキ層の剥離がより困難となるが、本発明の方法により裏刷り印刷の構成においてもインキ層を効果的に剥離することができる。中でも、インキ剥離剤中でプラスチック積層体を破砕することにより、インキ層の剥離と、プラスチック積層体を構成する各層の分離を同時に行うことができる。
【0082】
積層フィルムは、さらに、紙層、酸素吸収層、アンカーコート層、インキの剥離を容易にするための脱離用プライマー層等を有することもある。
【0083】
樹脂フィルム層(F)は、求められる役割で分類すると、基材フィルム層(F1)や包装材料を形成する際にヒートシール部位となるシーラント層(F2)などとして機能する。
【0084】
例えば基材フィルム層(F1)となる樹脂フィルムとしては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直線状低密度ポリエチレン、OPP(2軸延伸ポリプロピレン)、CPP(無延伸ポリプロピレン)などのポリオレフィン系フィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系フィルム;ナイロン6、ナイロン6,6、メタキシレンアジパミド(N-MXD6)などのポリアミド系フィルム;ポリ乳酸などの生分解性フィルム;ポリアクリロニトリル系フィルム;ポリ(メタ)アクリル系フィルム;ポリスチレン系フィルム;ポリカーボネート系フィルム;エチレン-酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)系フィルム;ポリビニルアルコール系フィルム;ポリ塩化ビニリデン、等のKコート等、これらの顔料を含むフィルムが挙げられる。これらフィルムにアルミナ、またはシリカ等の蒸着した透明蒸着フィルムも使用してよい。
【0085】
また前記フィルム材料の表面に火炎処理、コロナ放電処理、またはプライマー等のケミカル処理などの各種表面処理が実施されていることもある。
【0086】
これらの基材として、PETなどのポリエステル系のフィルムは本発明の剥離剤に対して溶解しやすいことから、プラスチック積層体においてポリエステル系のフィルムを有している構成は、インキの剥離とプラスチックフィルムの単層分離及び回収に効果的な構成である。例えば、PET/INK/AD/CPP等のプラスチック積層体は、裏刷り印刷の構成で且つ異種のプラスチックフィルムを使用するためインキの剥離とプラスチックフィルムの単層分離及び回収が困難な構成であるにもかかわらず、PETの溶解によりインキ剥離とCPPの回収を容易に行うことができる。
【0087】
シーラント層(F2)となる可撓性ポリマーフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系フィルム、イオノマー樹脂、EAA樹脂、EMAA樹脂、EMA樹脂、EMMA樹脂、生分解樹脂のフィルムなどが好ましい。汎用名では、CPP(無延伸ポリプロピレン)フィルム、VMCPP(アルミ蒸着無延伸ポリプロピレンフィルム)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、VMLDPE(アルミ蒸着無低密度ポリエチレンフィルム)フィルム、これらの顔料を含むフィルム等が挙げられる。フィルムの表面には火炎処理、コロナ放電処理、またはプライマー等のケミカル処理などの各種表面処理が実施されていてもよい。
【0088】
金属箔層(M)としては、例えば金、銀、銅、亜鉛、鉄、鉛、錫及びこれらの合金、スチール、ステンレス、アルミニウム等の、展延性に優れた金属の箔があげられる。金属箔層(M)は本発明の剥離剤に対して溶解しやすいことから、プラスチック積層体において金属箔層(M)を有している構成は、インキの剥離とプラスチックフィルムの単層分離及び回収に効果的な構成である。
【0089】
紙層としては、天然紙や合成紙などが挙げられる。第1および第2のシーラント層は、上述のシーラント層と同様の材料で形成されていることもある。
【0090】
他の層には、公知の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、非反応性接着剤層、易接着コート剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤などを含んでいる場合もある。
本発明のインキ膜剥離方法及びプラスチック基材回収方法について、具体的態様の一例を述べて詳細に説明する。
【0091】
(工程1:インキ層の剥離工程)
まず、インキ層が設けられたプラスチックフィルムをインキ剥離剤に浸漬する。浸漬する時間は、60分以内の範囲であることが多い。なお本発明においては、インキ層がフィルムから100%完全に剥離する必要はなく、後述の工程2でフィルムを回収しその後のリサイクル工程において不都合がない程度であれば、ある程度のインキ膜がフィルムに残存していてもよい。具体的にはプラスチックフィルムから75重量%以上のインキ膜が剥離されていればよい。
【0092】
工程1において、インキ剥離剤に浸漬する回数は1回でも数回に分けて行ってもよい。浸漬回数を1回行ったのち、分離したフィルムを回収する工程2を行ってもよいし、浸漬回数を数回行ったのち工程2を行ってもよい。また工程1において複数浸漬を行う場合は、インキ剥離剤の種類や濃度を変更したりしてもよい。また工程の間に、水洗や水切り、脱水、乾燥など、公知の工程を適宜加えてもよい。
【0093】
工程1において、前述した湿式破砕機を用いて、剥離剤中でプラスチックフィルムを破砕することが好ましい。破砕により、プラスチックフィルムの剥離が生じやすくなることからインキ層の剥離性が向上する。また、裏刷り印刷されたフィルムの場合、フィルムの破砕によりラミネートされていた各層が単層に分離されやすくなり、インキ層の剥離も促進される。
【0094】
(工程2:分離したフィルムの回収工程)
フィルムから分離したインキ層の多くは、インキ剥離剤に溶解せずにインキ剥離剤中で残渣となっている。即ち工程1におけるインキ剥離剤中には、剥離したフィルムと、印刷インキなどの残渣が浮遊している状態となっている。これらを洗浄液から取り出した後、プラスチックフィルムを分別して回収する。
【0095】
具体的な方法の一例としては、例えば、浮上選別において、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン等の比重の軽いプラスチックと(浮物)、ポリオレフィンより比重の重いポリエステル、ナイロン等の縮合合成系フィルム、もしくは金属箔等の重量物を選別し、重量物を取り除き、次に、洗浄脱水工程で回収したプラスチックを洗浄・脱水し、遠心分離で比重の異なるプラスチックを分別する。例えば水に沈む比重1以上の塩化ビニル樹脂やポリエチレンテレフタレート等を含むプラスチック分離物と、塩化ビニル樹脂を含まないポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂を含むプラスチック分離物に分けることができる。
【0096】
さらなる分別は、浮遊分別で使用する液体、例えば水と有機溶剤や塩との配合比率を適宜変更することにより比重を変化させることで可能である。
【0097】
(工程3:洗浄溶液の回収、再利用)
工程1~2で使用したインキ剥離剤は、インキ剥離剤を回収するために濾過機、遠心分離機、限外濾過機から選ばれるいずれか1つ以上の洗浄剤リサイクル機に供給し、固形物や残渣の濃縮物を取り除いたのちに再利用される。工程1~2においてインキ層の剥離工程、比重分離工程を行いながら、その一方で洗浄剤の再利用工程を連続的に運転し、固形物や残渣の濃縮物をインキ剥離剤から分離することもできる。
【0098】
(工程4:フィルムの乾燥)
工程2において分離したフィルム各種を分取後、残留水分を除去するために減圧加熱乾燥、熱風乾燥、加圧圧縮乾燥から選ばれるいずれか1つ以上のフィルム乾燥を行う。これらを組み合わせて使用することができる。工程5でのリサイクルペレットを作製する事前処理として、フィルムの乾燥後もしくは乾燥中にブリケットマシンのような加圧圧縮機を用いてブリケットを作製してもよい。
【0099】
(工程5:リサイクルペレットの作製)
工程4で乾燥されたフィルム片もしくはブリケットを1軸および2軸の混錬機に投入し、リサイクルペレットを作製する。混錬条件は特に限定されないが、リサイクル前の樹脂性能を大きく劣化させないために、180~280℃で運転することが好ましい。
【0100】
本発明で使用されるインキ剥離剤は、無機塩基と、無機塩基を溶解可能な水溶性溶剤を用いるものである。水溶性溶剤中では、無機塩基から生じる水酸化物イオンが水和されないため、求核性が高くなり、インキ膜の剥離に効果的である。また、水溶性溶剤は極性が低いため、疎水場環境でインキ層剥離の反応がより進行したものと考えられる。
【実施例
【0101】
以下に、本発明の内容および効果を実施例により更に詳細に説明する。また、各実施例及び比較例で原料として用いたフィルム、印刷インキ、反応性接着剤、有機溶剤を以下に示す。
【0102】
(積層フィルムに使用するフィルム)
OPP:2軸延伸ポリプロピレンフィルム 20um
CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム 35um
VMCPP:アルミ蒸着無延伸ポリプロピレンフィルム 25um
PET:ポリエチレンテレフタレートフィルム 12um
(印刷インキ)
INK1:フィナート R507原色藍(DICグラフィックス(株)社製)
INK2:フィナート R794白 G3(DICグラフィックス(株)社製)と硬化剤 CVLハードナー#10(DIC(株)社製)との2液硬化型インキ
(反応性接着剤)
AD1:溶剤型接着剤 ディックドライ LX-470ELとSP-60との2液型接着剤(エーテル系接着剤)(DIC(株)社製)
AD2:無溶剤接着剤 ディックドライ 2K-SF-400AとHA-400Bとの2液型接着剤(エステル系接着剤)(DIC(株)社製)
(積層フィルムの製造方法)
積層フィルムは、下記印刷方法により対象とするフィルムに印刷後、下記ラミネート方法により対象とするフィルムを貼りあわせて作成した。フィルムの層構成や反応性接着剤、印刷インキの種類は表1の組み合わせにより行った。
【0103】
(印刷方法)
印刷インキであるグラビアインキは、プルーファーを用いて各インキをフィルム「Film1」に展色した。
【0104】
(ラミネート方法)
印刷インキを展色したフィルム「Film1」の印刷インキの展色面に、反応性接着剤「AD」をラミネーターで固形分3g/m2の塗膜量になるように塗布し、フィルム「Film2」と貼り合わせた。貼り合わせた積層フィルムは、40℃で72時間エージング反応させた。表1に示す積層フィルム「LAM1」~「LAM4」を得た。なお空欄は、構成が存在しないことを示す。
【0105】
【表1】
【0106】
積層フィルム「LAM1」 ~「LAM4」を2cm×6cmのサイズにカットし試験片を得た。
【0107】
(洗浄工程)
PRO1:洗浄剤に静かに30分間浸漬した。
PRO2:ホモディスパーを使用し、200rpmで10分間攪拌した。
PRO3:ニクニ製 サンカッタ C125H を使用し、0.1m3/minで圧送した。
【0108】
(インキ洗浄剤)
水と、表2に示す界面活性剤0.3重量%と、表3に示す水溶性溶剤と、水酸化カリウムを2重量%とを混合して、表4に示すインキ洗浄剤を調整した。
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】
【0111】
水と、水酸化カリウム2重量%を混合した場合、表4に〇と記載した。
界面活性剤0.3重量%を配合した場合、表4に品名を記載した。
水溶性溶剤を混合した場合、上段に種類を、下段に配合重量%を記載した。
配合しなかった場合、「-」を記載した。
表4のインキ洗浄剤組成は、縦方向に加算し100重量%となるように、不足分は水を加えた。
【0112】
【表4】
【0113】
【表5】
【0114】
(積層フィルムからのインキ除去性)
表4~5の結果1は、積層フィルムからのインキ除去状態を示している。各洗浄工程で積層フィルムを洗浄し、乾燥したのちに、印刷部のインキ除去性について、光学顕微鏡を用いて撮影された写真の画像処理にて面積を算出し、以下式を用いてインキ除去率を求めることで判定した。
インキ除去率(%)=(1-洗浄後のインキ付着面積/洗浄前のインキ付着面積)×100
◎:印刷部の100%が除去。
〇:印刷部の75%以上100%未満が除去。
〇△:印刷部もしくは積層部の50%以上75%未満が除去。
× :全く剥離しない~50%未満が除去。
なお、◎、○、〇△は実用上問題がない範囲である。
【0115】
評価結果をまとめた表を、表6~表9に示す。
【0116】
【表6】
【0117】
【表7】
【0118】
【表8】
【0119】
この結果より、20質量%以上の水溶性溶剤及び無機塩基を含有するインキ剥離剤を使用した例は、インキ層の剥離が容易に達成された。実施例1~5に示すように、PRO1の浸漬しただけでも剥離性を確認できた。また、PRO3により、積層フィルムの破砕を行った場合には、LAM4やLAM5の構成においてより優れた剥離性を示すことがわかった。
【要約】
本発明は、(a)20質量%以上の水溶性溶剤、及び、(b)無機塩基を0.1質量%~10質量%含有するインキ剥離剤を使用し、インキ層を有するプラスチック基材からインキ層を剥離除去する工程を有することを特徴とするインキ剥離方法である。本発明により、プラスチック基材上に印刷された上に印刷されたインキ層を容易に剥離することができるインキ剥離方法及び該剥離方法に使用可能なインキ剥離剤、並びにこれらを利用したプラスチック基材回収方法を提供することができる。