(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】発酵乳及び発酵乳の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23C 9/13 20060101AFI20230119BHJP
A23C 9/123 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
A23C9/13
A23C9/123
(21)【出願番号】P 2018067772
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】市村 武文
(72)【発明者】
【氏名】市場 智子
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-071163(JP,A)
【文献】国際公開第2018/056425(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/133015(WO,A1)
【文献】特開2017-051142(JP,A)
【文献】国際公開第2010/047230(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101971880(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102986871(CN,A)
【文献】特開平09-154483(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0020151(US,A1)
【文献】特開2013-150608(JP,A)
【文献】特開2017-104120(JP,A)
【文献】特公昭48-031909(JP,B1)
【文献】国際公開第2016/186151(WO,A1)
【文献】本田洋之,乳糖のラクトース資化の特徴,MILK SCIENCE,2010年,vol.59, No.2,pp.131-136
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料乳を発酵させることにより製造される発酵乳であって、
前記原料乳の発酵が開始される前において、前記原料乳におけるグルコース濃度が前記原料乳の全量に対して7.0質量%以上15.0質量%以下であ
り、
発酵にブルガリア菌とサーモフィリス菌とが用いられる、発酵乳。
【請求項2】
請求項1に記載の発酵乳であって、
前記原料乳における乳糖濃度が、前記原料乳の全量に対して2.0質量%以下である、発酵乳。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発酵乳であって、
前記原料乳の発酵終了後13日を経過した時点における発酵乳の乳酸酸度は、前記原料乳の発酵終了後1日を経過した時点における発酵乳の乳酸酸度の1.00倍以上1.07倍以下である、発酵乳。
【請求項4】
請求項2に記載の発酵乳であって、
前記原料乳における乳糖濃度が、前記原料乳の全量に対して0.5質量%以上1.5質量%以下である、発酵乳。
【請求項5】
請求項4に記載の発酵乳であって、
前記原料乳の発酵終了後13日を経過した時点における発酵乳の乳酸酸度は、前記原料乳の発酵終了後1日を経過した時点における発酵乳の乳酸酸度の1.00倍以上1.03倍以下である、発酵乳。
【請求項6】
原料乳を調製する原料乳調製工程と、
調製された原料乳におけるグルコース濃度を前記調製された原料乳の全量に対して7.0質量%以上15.0質量%以下の範囲に調整するグルコース濃度調整工程と、
前記グルコース濃度が調整された原料乳を
ブルガリア菌とサーモフィリス菌とを用いて発酵させる発酵工程とを備える、発酵乳の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の発酵乳の製造方法であって、
前記グルコース濃度調整工程は、前記調製された原料乳にグルコースを添加する工程を含む、発酵乳の製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載の発酵乳の製造方法であって、
前記グルコース濃度調整工程は、前記調製された原料乳に含まれる少なくとも一部の乳糖を、乳糖分解酵素を用いて分解する工程を含む、発酵乳の製造方法。
【請求項9】
請求項6ないし請求項8のいずれかに記載の発酵乳の製造方法であって、
発酵終了後における発酵乳を10℃の温度で保存した場合、発酵終了時から13日を経過した発酵乳の乳酸酸度は、発酵終了時から1日を経過した発酵乳の乳酸酸度の1倍以上1.07倍以下である、発酵乳の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵乳及び発酵乳の製造方法に関し、さらに詳しくは、冷蔵時における酸度の上昇を抑制することができる発酵乳及び発酵乳の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨーグルト等の発酵乳は、乳酸菌の生菌を含有している。従って、発酵乳を低温(例えば、10℃以下)で保存している場合であっても、乳酸菌の生菌による発酵が進み、発酵乳の酸度が経時的に上昇する。酸度の上昇は、製造直後における発酵乳の風味及び味を変化させる原因となる。保存時における発酵乳の酸度上昇を抑制することにより、製造直後における発酵乳の風味及び味を安定的に維持することができると考えられる。
【0003】
特許文献1(特開平7-236416号公報)は、保存中のpHの低下を抑制することができる発酵乳の製造方法を開示している。特許文献1に係る発酵乳の製造方法では、ブルガリア菌の酸生成抑制株及びサーモフィルス菌の粘性物生産株が、乳酸菌スターターとしてヨーグルトミックスに添加される。ブルガリア菌の酸生成抑制株及びサーモフィルス菌の粘性物生産株が添加されたヨーグルトミックスを発酵させることにより、発酵乳が製造される。このようにして製造された発酵乳は、保存時における酸度の上昇を緩やかにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、特許文献1に係る発酵乳の製造方法は、乳酸菌スターターとしてブルガリア菌の酸生成抑制株及びサーモフィルス菌の粘性物生産株を使用する。ブルガリア菌の酸生成抑制株及びサーモフィルス菌の粘性物生産株以外の乳酸菌を、特許文献1に開示されている発酵乳の製造方法を適用することはできない。特許文献1に係る発酵乳の製造方法は、発酵乳の製造において、使用可能な乳酸菌の組み合わせが制限されるという問題がある。
【0006】
本開示は、発酵乳の製造に用いられる乳酸菌の菌株に関係なく、冷蔵中の酸度上昇を抑制することができる発酵乳及び発酵乳の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る発酵乳は、原料乳を発酵させることにより製造される。原料乳の発酵が開始される前において、原料乳におけるグルコース濃度が原料乳の全量に対して7.0質量%以上15.0質量%以下である。
【0008】
本開示に係る発酵乳において、原料乳における乳糖濃度が、前記原料乳の全量に対して2.0質量%以下であってもよい。
【0009】
本開示に係る発酵乳において、原料乳の発酵終了後13日を経過した時点における発酵乳の乳酸酸度は、原料乳の発酵終了後1日を経過した時点における発酵乳の乳酸酸度の1.00倍以上1.07倍以下であってもよい。
【0010】
本開示に係る発酵乳において、原料乳における乳糖濃度が、前記原料乳の全量に対して0.5質量%以上1.5質量%以下であってもよい。
【0011】
本開示に係る発酵乳において、原料乳の発酵終了後13日を経過した時点における発酵乳の乳酸酸度は、原料乳の発酵終了後1日を経過した時点における発酵乳の乳酸酸度の1.00倍以上1.03倍以下であってもよい。
【0012】
本開示に係る発酵乳の製造方法は、原料乳調製工程と、グルコース濃度調製工程と、発酵工程とを備える。原料乳調製工程は、原料乳を調製する。グルコース濃度調製工程は、調製された原料乳におけるグルコース濃度を調製された原料乳の全量に対して7.0質量%以上15.0質量%以下の範囲に調整する。発酵工程は、グルコース濃度が調整された原料乳を発酵させる。
【0013】
本開示に係る発酵乳の製造方法において、グルコース濃度調整工程は、調製された原料乳にグルコースを添加する工程を含んでもよい。
【0014】
本開示に係る発酵乳の製造方法において、グルコース濃度調整工程は、調製された原料乳に含まれる少なくとも一部の乳糖を、乳糖分解酵素を用いて分解する工程を含んでもよい。
【0015】
本開示に係る発酵乳の製造方法において、発酵終了後における発酵乳を10℃の温度で保存した場合、発酵終了時から13日を経過した発酵乳の乳酸酸度は、発酵終了時から1日を経過した発酵乳の乳酸酸度の1倍以上1.07倍以下であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本開示は、発酵乳の製造に用いられる乳酸菌の菌株に関係なく、冷蔵中の酸度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例1に係る発酵乳の乳酸酸度の経時変化を示す表である。
【
図2】本発明の実施例2-1~2-5に係る発酵乳の乳酸酸度の経時変化を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0019】
[1.発酵乳の定義]
本実施の形態に係る発酵乳は、原料乳を発酵させることにより製造される。原料乳は、乳由来の成分を含む。原料乳は、従来から知られている方法により調整される。なお、以下の説明において、「本実施の形態に係る発酵乳」を単に「発酵乳」と記載する場合がある。
【0020】
本実施の形態に係る発酵乳は、乳等省令(昭和26年12月27日厚生省令第52号)で定義された発酵乳及び乳酸菌飲料である。乳等省令における発酵乳は、乳又はこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を乳酸菌又は酵母で発酵させ、糊状又は液状にしたもの又はこれらを凍結したものである。乳等省令における乳酸菌飲料は、乳等を乳酸菌又は酵母で発酵させたものを加工し、又は主要原料とした飲料である。
【0021】
本実施の形態に係る発酵乳の製造にあたり、少なくともブルガリア菌及びサーモフィルス菌の両者が、乳酸菌スターターとして原料乳に添加される。従って、本実施の形態に係る発酵乳は、ブルガリア菌及びサーモフィルス菌を含む。国連食糧農業機関(FAO)及び世界保健機関(WHO)により、ヨーグルトは、乳及び乳酸菌を原料とし、ブルガリア菌及びサーモフィルス菌の両者の菌による乳酸発酵作用により乳及び脱脂粉乳などの乳製品から作られると定義されているためである。
【0022】
本実施の形態において、原料乳は、最終製品の無脂乳固形分(SNF)を、5重量%以上,好ましくは6重量%以上、より好ましくは8重量%以上となるように含有する。原料乳の無脂乳固形分の上限は特に限定されないが、例えば30重量%以下又は25重量%以下であることが好ましい。
【0023】
本実施の形態において、原料乳は、最終製品の脂肪分(FAT)を、5重量%以下,好ましくは3重量%以下となるように含有する。原料乳の脂肪分の下限は特に限定されないが、例えば0重量%以上又は0.05重量%以上であることが好ましい。
【0024】
本実施の形態において、原料乳は、最終製品のタンパク質を、2重量%以上,好ましくは2.5重量%以上、より好ましくは3重量%以上となるように、また、15重量%以下、好ましくは10重量%以下となるように、含有する。
【0025】
本実施の形態において、「ブルガリア菌」とは、ラクトバチルス・デルブルエッキー・サブスピーシス・ブルガリクス(Lactobacillus delbruechii subsp. bulgaricus)種の乳酸菌のことである。「サーモフィルス菌」とは、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)種の乳酸菌のことである。乳酸菌スターターとして用いられるブルガリア菌及びサーモフィルス菌の各々において、菌株は特に限定されない。
【0026】
なお、本実施の形態に係る発酵乳は、ブルガリア菌及びサーモフィルス菌以外の乳酸菌を含んでいてもよい。例えば、本実施の形態に係る発酵乳は、ガセリ菌、ビフィズス菌等を含んでいてもよい。ガセリ菌とは、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)種の乳酸菌のことである。ビフィズス菌とは、ビフィドバクテリウム・ビフィドゥム(Bifidobacterium bifidum)種の乳酸菌のことである。
【0027】
[2.原料乳のグルコース濃度]
本実施の形態において、原料乳は、さらに、グルコースを含む。好ましくは、原料乳のグルコース濃度は、発酵開始時点において、原料乳の全量に対して7.0質量%以上15.0質量%以下である。より好ましくは、原料乳のグルコース濃度は、発酵開始時点において、原料乳の全量に対して7.3質量%以上10.0質量%以下である。さらに好ましくは、原料乳のグルコース濃度は、発酵開始時点において、原料乳の全量に対して7.5質量%以上8.0質量%以下である。発酵開始時点とは、乳酸菌スターターが原料乳に添加されたタイミングである。
【0028】
原料乳のグルコース濃度を、原料乳の発酵開始時点において、前述の範囲内に調整することにより、発酵乳の製造に用いられる乳酸菌の菌株に関係なく、冷蔵時における発酵乳の乳酸酸度の上昇を抑制することができる。
【0029】
具体的には、原料乳の発酵終了後1日を経過してから発酵終了後13日を経過するまでの期間において、発酵終了直後から冷蔵されている発酵乳の乳酸酸度の上昇は、発酵終了後1日を経過した日における発酵乳の乳酸酸度を基準として1.00倍以上1.07倍以下に抑制される。つまり、本実施の形態に係る発酵乳は、製造日から2週間を経過するまでの期間において、冷蔵中における発酵乳の乳酸酸度の上昇を抑制することができる。
【0030】
冷蔵とは、0℃以上10℃以下の温度範囲での保存を意味する。発酵乳の乳酸酸度は、従来から知られている酸度の計測方法を使用することにより得られる。製造日とは、原料乳の発酵が終了した日を意味する。
【0031】
以下の説明において、特に説明のない限り、原料乳の発酵終了後1日を経過した日を「基準日」と記載し、製造日から13日を経過するまでの期間を「保存期間」と記載する。
【0032】
[3.原料乳の乳糖濃度]
原料乳は、さらに、乳糖を含んでいてもよい。好ましくは、原料乳における乳糖濃度は、発酵開始時点において、原料乳の全量に対して0.0質量%より大きく、かつ、2.0質量%以下である。原料乳が、0.0質量%より大きく、かつ、2.0質量%以下の濃度の乳糖を含む場合であっても、原料乳が7.0質量%以上15.0質量%以下の濃度のグルコースを含むことにより、冷蔵中における発酵乳の乳酸酸度の上昇を抑制することができる。具体的には、原料乳が、0.0質量%よりも大きく、かつ、2.0質量%以下の濃度の乳糖を含む場合、製造直後から冷蔵されている発酵乳の乳酸酸度の上昇は、保存期間において、基準日における発酵乳の乳酸酸度を基準として1.00倍以上1.06倍以下に抑制される。
【0033】
より好ましくは、原料乳における乳糖濃度は、発酵開始時点において、原料乳の全量に対して0.5質量%以上1.5質量%以下である。原料乳が、発酵開始時点において、0.5質量%以上1.5質量%以下の濃度の乳糖を含むことにより、本実施の形態に係る発酵乳は、乳酸酸度の上昇をさらに抑制することができる。つまり、原料乳が、0.5質量%以上1.5質量%以下の濃度の乳糖を含む場合、製造直後から冷蔵されている発酵乳の乳酸酸度の上昇は、保存期間において、発酵乳の基準日における乳酸酸度を基準として1.00倍以上1.03倍以下に抑制される。
【0034】
さらに好ましくは、原料乳における乳糖濃度は、発酵開始時点において、原料乳の全量に対して0.5質量%以上1.0質量%以下である。原料乳が、発酵開始時点において、0.5質量%以上1.0質量%以下の濃度の乳糖を含むことにより、製造直後から冷蔵されている発酵乳の乳酸酸度の上昇は、保存期間において、基準日における発酵乳の乳酸酸度を基準として1.00倍以上1.01倍以下に抑制される。つまり、原料乳が、0.5質量%以上1.0質量%以下の濃度の乳糖を含むことにより、本実施の形態に係る発酵乳は、製造直後における乳酸酸度を維持することができる。
【0035】
なお、原料乳は、乳糖を含有しなくてもよい。すなわち、原料乳の発酵開始時点において、原料乳における乳糖濃度は、原料乳の全量に対して0.0質量%であってもよい。
【0036】
[4.発酵乳の製造方法]
以下、本実施の形態に係る発酵乳の製造方法について詳しく説明する。
【0037】
[4.1.原料乳調製工程]
原料乳調製工程では、原料乳が調製される。原料乳の調製に用いられる原料として、例えば、水、生乳、脱脂粉乳、全粉乳、バターミルク、バター、クリーム、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)、ホエイタンパク質単離物(WPI)、α-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリンなどが挙げられる。
【0038】
原料乳は、上述のように、乳由来の成分を含んでいればよい。乳由来の成分とは、例えば、乳糖や、飽和脂肪酸などである。原料乳は、生乳に含まれる成分のうち少なくとも一部を含有すればよい。また、原料乳は、生乳に含まれていない成分を含有してもよい。
【0039】
このため、原料乳は、上記に列挙した全ての原料を含んでいなくてもよく、上記に列挙した原料以外の原料を使用してもよい。原料乳は、上述のように、従来から知られている方法で調製することができる。例えば、上記に列挙した原料を混合することにより混合物を生成し、生成された混合物を均質化することにより、原料乳を調製することができる。原料が、生乳、脱脂粉乳、及び全粉乳のうち少なくとも1つを含む場合、調製された原料乳は、乳糖を含む。
【0040】
[4.2.グルコース濃度調整工程]
原料乳調製工程で調製された原料乳のグルコース濃度を、調製された原料乳を全量として7.0質量%以上15.0質量%以下に調整する。原料乳調製工程の説明において列挙された原料は、グルコースを主成分として含有しておらず、グルコース含有量は無視してよい。列挙された原料から原料乳を調製した場合、グルコース濃度調整工程は、調製された原料乳のグルコース濃度を7.0質量%以上15.0質量%以下に調整するために、原料乳のグルコース濃度を増加させる。
【0041】
原料乳のグルコース濃度を調整する方法として、例えば、2つの方法が挙げられる。第1の方法は、調製された原料乳にグルコースを添加する方法である。第2の方法は、調製された原料乳に含まれる少なくとも一部の乳糖を分解する方法である。なお、原料乳のグルコース濃度を調整する方法として、これら2つの方法以外の方法を用いてもよい。
【0042】
調製された原料乳にグルコースを添加する第1の方法は、原料乳のグルコース濃度を容易に調整することができる。第1の方法を用いる場合、上述の原料乳調製工程において、所定のグルコースを上記に列挙された原料と混合することにより、グルコース濃度が7.0質量%以上15.0質量%以下である原料乳を調製することができる。この場合、グルコース濃度調整工程は、原料乳調製工程に包含される。
【0043】
第2の方法は、乳糖分解酵素であるラクターゼを、調製された原料乳に添加することにより、原料乳に含まれる少なくとも一部の乳糖を分解する。生乳及び乳製品(脱脂粉乳など)に含まれる糖質の主成分は、乳糖であり、生乳及び乳製品に含まれるグルコースの量は僅かである。このため、原料乳に含まれる乳糖を分解することにより、原料乳のグルコース濃度を増加させることができる。第2の方法は、グルコースを原料乳に添加する第1の方法に比べて、発酵乳に含まれる糖質の量を少なくすることができる。
【0044】
ラクターゼが添加された原料乳を、例えば、0℃以上50℃以下の温度範囲で保持することにより、ラクターゼによる乳糖の分解を促進させることができる。ラクターゼの至適pHが中性領域又は酸性領域であれば、ラクターゼの種類は特に限定されない。例えば、市販されているラクターゼを原料乳に添加することができる。
【0045】
なお、第2の方法は、ラクターゼを用いる方法以外の方法を用いて、原料乳に含まれる少なくとも一部の乳糖を分解してもよい。
【0046】
グルコースを添加する第1の方法と、乳糖を分解する第2の方法とを併用することにより、原料乳のグルコース濃度を7.0質量%以上15.0質量%以下に調整してもよい。乳糖の分解を、グルコースの添加前に行ってもよいし、グルコースの添加後に行ってもよい。
【0047】
なお、原料乳のグルコース濃度の調整は、ブルガリア菌及びサーモフィルス菌による原料乳の発酵開始タイミングまでに行われればよい。発酵の開始タイミングは、例えば、乳酸菌スターターを原料乳に添加するタイミングである。
【0048】
[4.3.殺菌工程]
殺菌工程では、グルコース濃度が調整された原料乳を加熱して殺菌する。原料乳の加熱殺菌には、従来から知られている方法を用いることができる。グルコース濃度調整工程において、原料乳に含まれる乳糖をラクターゼを用いて分解した場合、原料乳の加熱殺菌により、原料乳に添加されたラクターゼを失活させることができる。
【0049】
なお、グルコース濃度を調整するために乳糖を分解する場合、殺菌工程を乳糖の分解の前に行ってもよい。この場合、乳酸菌スターターが原料乳に添加されてから、原料乳のpHが低下することによりラクターゼが失活するまでの間、原料乳に含まれる乳糖を継続して分解することができる。
【0050】
[4.4.発酵工程]
殺菌された原料乳に乳酸菌スターターを添加し、乳酸菌スターターが添加された原料乳を所定の発酵条件で発酵させる。発酵の終了した原料乳が、本実施の形態に係る発酵乳として冷蔵される。乳酸菌スターターは、少なくとも、ブルガリア菌とサーモフィルス菌とを含む。乳酸菌スターターとして用いられるブルガリア菌及びサーモフィルス菌の菌株は、特に限定されない。
【0051】
発酵温度、発酵時間などの発酵条件は、原料乳に添加された乳酸菌スターターの種類や、求める発酵乳の風味などを考慮して適宜調整すればよい。例えば、原料乳を30℃以上50℃以下の環境下に置くことにより、乳酸菌による発酵を促進させることができる。発酵時間は、発酵温度、乳酸菌スターターの種類、発酵乳における希望乳酸酸度などに応じて適宜調整される。
【0052】
本実施の形態に係る発酵乳の製造方法により製造された発酵乳は、乳酸菌スターターとして原料乳に添加された乳酸菌の種類に関係なく、冷蔵時における乳酸酸度の上昇を抑制することができる。
【0053】
なお、上記実施の形態において、原料乳における発酵開始のタイミングを、乳酸菌スターターが原料乳に添加されるタイミングとして定義した。しかし、原料乳に添加された乳酸菌スターターの数は、誘導期(対数増殖期が開始されるまでの期間)において増加しない。このため、発酵開始のタイミングを、乳酸菌の対数増殖期が開始されるタイミングと定義することも可能である。
【実施例】
【0054】
以下、各実施例について説明する。ただし、本発明は、下記の各実施例に限定されるものではない。
【0055】
[試験例1:ソフトヨーグルトの製造]
{実施例1}
脱脂粉乳90.0g、ホエイタンパク質単離物(WPI)5.0g、グルコース40.0g、ゼラチン4.0g、水道水661.0gを混合して原料乳を調製した(SNF11.2質量%,FAT0.1質量%,タンパク質4.8質量%,乳糖5.0質量%)。調製された原料乳において、全ての原料が水に溶解していることを確認した。調製された原料乳の全量に対して0.1質量%のラクターゼ(GODO-YNL、合同酒精株式会社)を、調製された原料乳に添加することにより、調製された原料乳に含まれる乳糖を分解した。原料乳に含まれる乳糖は、脱脂粉乳に由来する。原料乳における乳糖分解率が100%となるまで(原料乳に含まれる乳糖が全て分解されるまで)、乳糖の分解を継続した。全ての乳糖が分解された原料乳を95℃の温度で加熱殺菌し、加熱殺菌された原料乳を40℃に冷却した。
【0056】
冷却された原料乳は、乳糖の分解により生成されたグルコースと、原料乳の調製時に添加されたグルコースとを含む。発酵開始時点(乳酸菌スターターを添加した時点)におけるグルコースの濃度は、冷却された原料乳の全量に対して7.5質量%である。
【0057】
明治ブルガリアヨーグルトLB81プレーン(株式会社明治製)から分離されたブルガリア菌とサーモフィラス菌を、冷却された原料乳に乳酸菌スターターとして添加した。乳酸菌スターターの添加量は、冷却された原料乳の全量に対して1.0質量%の量である。乳酸菌スターターが添加された原料乳を、乳酸酸度が0.85%となるまで、43℃の発酵室において静置発酵させることにより、実施例1に係る発酵乳を製造した。実施例1に係る発酵乳を60メッシュフィルタに通液させることにより、スムージング処理を行った。スムージング処理された発酵乳を300rpmで30分間撹拌しながら冷却することにより、実施例1に係るソフトヨーグルトを製造した。
【0058】
実施例1に係るソフトヨーグルトを5℃で冷蔵保存し、実施例1に係るソフトヨーグルトの乳酸酸度の変化を計測した。
【0059】
{比較例1}
脱脂粉乳90g、ホエイタンパク質単離物(WPI)5.0g、砂糖40.0g、ゼラチン4.0g、水道水661.0gを混合して原料乳を調製した(SNF11.2質量%,FAT0.1質量%,タンパク質4.8質量%,乳糖5.0質量%)。調製された原料乳において、全ての原材料が水に溶解していることを確認した。調製された原料乳を95℃の温度で加熱殺菌し、加熱殺菌された原料乳を40℃に冷却した。
【0060】
比較例1で用いられる乳酸菌スターター及び比較例1における原料乳の発酵条件は、実施例1と同じである。比較例1に係る発酵乳から比較例1に係るソフトヨーグルトを製造する手順は、実施例1と同じである。
【0061】
比較例1は、原料乳の調製においてグルコースに代えて砂糖を使用している。発酵開始時点(乳酸菌スターターを添加した時点)において、比較例1に係る原料乳のグルコース濃度は、比較例1に係る原料乳の全量に対して0.0質量%である。
【0062】
比較例1に係るソフトヨーグルトを5℃で冷蔵保存し、比較例1に係るソフトヨーグルトの酸度の変化を計測した。
【0063】
{実施例1と比較例1との比較}
図1は、実施例1に係るソフトヨーグルト及び比較例1に係るソフトヨーグルトの各々における乳酸酸度の経時変化を示す表である。
図1において、経過日数は、ソフトヨーグルトの製造日から経過した日数を示す。酸度上昇比は、計測終了日におけるソフトヨーグルトの乳酸酸度を、基準日におけるソフトヨーグルトの乳酸酸度で割った値である。基準日は、ソフトヨーグルトの製造日から1日を経過した日であり、計測終了日は、ソフトヨーグルトの製造日から13日を経過した日である。
【0064】
計測終了日における実施例1に係るソフトヨーグルトの乳酸酸度は、基準日における実施例1に係るソフトヨーグルトの乳酸酸度の1.03倍であった。計測終了日における比較例1に係るソフトヨーグルトの乳酸酸度は、基準日における比較例1に係るソフトヨーグルトの乳酸酸度の1.12倍であった。
【0065】
実施例1及び比較例1は、同じ乳酸菌スターターを用いている。それにも関わらず、比較例1に係るソフトヨーグルトに比べて、実施例1に係るソフトヨーグルトにおける乳酸酸度の上昇が抑制されている。つまり、発酵開始時点における原料乳のグルコース濃度を原料乳の全量に対して7.5質量%に調整することにより、冷蔵時における発酵乳の乳酸酸度の上昇を抑制できることが明らかとなった。
【0066】
[試験例2:ハードヨーグルトの製造]
{実施例2-1}
脱脂粉乳55.0gと、水道水445.0gとを混合して第1の混合液を調製した(SNF9.55質量%,FAT0.1質量%,タンパク質3.4質量%,乳糖5.0質量%)。調製された第1の混合液において、脱脂粉乳が全て溶解していることを確認し、調製された第1の混合液を95℃の温度で5分間加熱することにより、第1の原料乳を調製した。
【0067】
脱脂粉乳220.0gと、水道水1780.0gとを混合して第2の混合液を調製した(SNF9.55質量%,FAT0.1質量%,タンパク質3.4質量%,乳糖5.0質量%)。第2の混合液において脱脂粉乳が全て溶解していることを確認し、第2の混合液の全量に対して0.1質量%のラクターゼ(GODO-YNL、合同酒精株式会社製)を第2の混合液に添加することにより、第2の混合液に含まれる乳糖を全て分解した。第2の混合液に含まれる乳糖は、脱脂粉乳に由来する。乳糖が分解された第2の混合液を95℃の温度で5分間加熱することにより、第2の原料乳を調製した。
【0068】
第1の原料乳170.0gと、第2の原料乳284.5gと、グルコース31.6gと、水道水13.8gとを混合して、実施例2-1に係る原料乳を調製した。
【0069】
明治ブルガリアヨーグルトLB81プレーン(株式会社明治製)から分離したブルガリア菌とサーモフィラス菌を、乳酸菌スターターとして実施例2-1に係る原料乳に添加した。乳酸菌スターターの添加量は、実施例2-1に係る原料乳の全量に対して3質量%の量である。
【0070】
発酵開始時点(乳酸菌スターターの添加時点)において、実施例2-1に係る原料乳のグルコース濃度は、実施例2-1に係る原料乳の全量に対して8.0質量%であり、乳糖濃度は、実施例2-1に係る原料乳の全量に対して2.0質量%である。
【0071】
乳酸菌スターターが添加された実施例2-1に係る原料乳をカップ容器に充填した。実施例2-1に係る原料乳が充填されたカップ容器を43℃の温度に調整された発酵室に5時間静置することにより、実施例2-1に係る原料乳を発酵させた。発酵の終了した実施例2-1に係る原料乳を10℃以下の温度に冷却することにより、実施例2-1に係る発酵乳を製造した。
【0072】
{実施例2-2}
実施例2-2に係る原料乳の調製において、第1の原料乳と、第2の原料乳と、グルコースと、水道水との混合比が、実施例2-1と異なる。具体的には、第1の原料乳127.5gと、第2の原料乳327.0gと、グルコース30.4gと、水道水15.1gとを混合して、実施例2-2に係る原料乳を調製した。調製された実施例2-2に係る原料乳を、実施例2-1と同じ条件で発酵させることにより、実施例2-2に係る発酵乳を製造した。
【0073】
発酵開始時点において、実施例2-2に係る原料乳のグルコース濃度は、実施例2-2に係る原料乳の全量に対して8.0質量%であり、乳糖濃度は、実施例2-2に係る原料乳の全量に対して1.5質量%である。
【0074】
{実施例2-3}
実施例2-3に係る原料乳の調製において、第1の原料乳と、第2の原料乳と、グルコースと、水道水との混合比が、実施例2-1と異なる。具体的には、第1の原料乳85.0gと、第2の原料乳369.5gと、グルコース29.1gと、水道水16.3gとを混合して、実施例2-3に係る原料乳を調製した。調製された実施例2-3に係る原料乳を、実施例2-1と同じ条件で発酵させることにより、実施例2-3に係る発酵乳を製造した。
【0075】
発酵開始時点において、実施例2-3に係る原料乳のグルコース濃度は、実施例2-3に係る原料乳の全量に対して8.0質量%であり、乳糖濃度は、実施例2-3に係る原料乳の全量に対して1.0質量%である。
【0076】
{実施例2-4}
実施例2-4に係る原料乳の調製において、第1の原料乳と、第2の原料乳と、グルコースと、水道水との混合比が、実施例2-1と異なる。具体的には、第1の原料乳42.5gと、第2の原料乳412.0gと、グルコース27.9gと、水道水17.6gとを混合して、実施例2-4に係る原料乳を調製した。調製された実施例2-4に係る原料乳を、実施例2-1と同じ条件で発酵させることにより、実施例2-4に係る発酵乳を製造した。
【0077】
発酵開始時点において、実施例2-4に係る原料乳のグルコース濃度は、実施例2-4に係る原料乳の全量に対して8.0質量%であり、乳糖濃度は、実施例2-4に係る原料乳の全量に対して0.5質量%である。
【0078】
{実施例2-5}
実施例2-5に係る原料乳の調製において、第1の原料乳と、第2の原料乳と、グルコースと、水道水との混合比が、実施例2-1と異なる。具体的には、第2の原料乳454.5gと、グルコース26.6gと、水道水18.8gとを混合して、実施例2-5に係る原料乳を調製した。第1の原料乳は、実施例2-5に係る原料乳の調製において使用されない。調製された実施例2-5に係る原料乳を、実施例2-1と同じ条件で発酵させることにより、実施例2-5に係る発酵乳を製造した。
【0079】
発酵開始時点において、実施例2-5に係る原料乳のグルコース濃度は、実施例2-5に係る原料乳の全量に対して8.0質量%であり、乳糖濃度は、実施例2-5に係る原料乳の全量に対して0.0質量%である。
【0080】
{比較例2-1}
脱脂粉乳80.0gと、水道水720.0gとを混合して、第3の混合液を調製した(SNF9.55質量%,FAT0.1質量%,タンパク質3.4質量%,乳糖5.0質量%)。調製された第3の混合液において、脱脂粉乳が全て水道水に溶解していることを確認した。その後、第3の混合液を95℃の温度で5分間加熱することにより、比較例2-1に係る原料乳を調製した。調製された比較例2-1に係る原料乳を発酵させることにより、比較例2-1に係る発酵乳を製造した。比較例2-1における発酵条件及び冷却条件は、実施例2-1と同じである。
【0081】
発酵開始時点において、比較例2-1に係る原料乳のグルコース濃度は、比較例2-1に係る原料乳の全量に対して0.0質量%であり、乳糖濃度は、比較例2-1に係る原料乳の全量に対して5.0質量%である。
【0082】
{比較例2-2}
比較例2-1と同様の手順で調製した第3の混合液に、ラクターゼ(GODO-YNL、合同酒精株式会社製)を添加することにより、第3の混合液に含まれる乳糖を全て分解した。第3の混合液に含まれる乳糖は、脱脂粉乳に由来する。乳糖が分解された第3の混合液を95℃の温度で5分間加熱することにより、比較例2-2に係る原料乳を調製した。調製された比較例2-2に係る原料乳を発酵させることにより、比較例2-2に係る発酵乳を製造した。比較例2-2における発酵条件及び冷却条件は、実施例2-1と同じである。
【0083】
発酵開始時点において、比較例2-2に係る原料乳のグルコース濃度は、比較例2-2に係る原料乳の全量に対して2.5質量%であり、乳糖濃度は、比較例2-1に係る原料乳の全量に対して0.0質量%である。
【0084】
{発酵乳における酸度の経時変化}
図2は、実施例2-1~2-5及び比較例2-1~2-2の各々に係る発酵乳における乳酸酸度の経時変化を示す表である。また、
図2は、発酵開始時点における、実施例2-1~2-5及び比較例2-1~2-2の各々に係る原料乳のグルコース濃度及び乳酸濃度を示している。
【0085】
計測終了日における実施例2-1~2-4に係る発酵乳の乳酸酸度は、基準日における実施例2-1~2-4に係る発酵乳の乳酸酸度の1.06倍以下である。これに対して、計測終了日における比較例2-1~2-2に係る発酵乳の乳酸酸度は、基準日における比較例2-1~2-2に係る発酵乳の乳酸酸度の1.09倍以上である。
【0086】
実施例2-1~2-4に係る原料乳は、発酵開始時点において、2.0質量%以下の乳糖を含み、8質量%の濃度のグルコースを含む。従って、原料乳が2.0質量%以下の乳糖を含有している場合であっても、原料乳のグルコース濃度を8質量%に調整することにより、冷蔵時における乳酸酸度の上昇を抑制できる発酵乳を製造できることが明らかとなった。
【0087】
計測終了日における実施例2-5に係る発酵乳の乳酸酸度は、基準日における実施例2-5に係る発酵乳の乳酸酸度の1.07倍以下である。つまり、原料乳が乳糖を含んでいない場合であっても、発酵開始時点における原料乳のグルコース濃度を原料乳の全量に対して8質量%に調整することにより、冷蔵時における発酵乳の乳酸酸度の上昇を抑制できることが明らかとなった。
【0088】
計測終了日における実施例2-2~2-4に係る発酵乳の乳酸酸度は、基準日における実施例2-2~2-4に係る発酵乳の乳酸酸度の1.03倍以下である。つまり、乳糖濃度が0.5質量%以上1.5質量%以下であり、かつ、グルコース濃度が8.0質量%である原料乳を発酵させることにより、冷蔵時における乳酸酸度の上昇をさらに抑制できる発酵乳を製造できることが明らかとなった。
【0089】
実施例2-3、2-4に係る発酵乳における酸度上昇比が、それぞれ、1.005、1.008となっており、実施例2-3、2-4に係る発酵乳の乳酸酸度が冷蔵時に殆ど上昇していないことが分かる。つまり、乳糖濃度が0.5質量%以上1.0質量%以下であり、かつ、グルコース濃度が8.0質量%である原料乳を発酵させることにより、製造日における乳酸酸度を維持できる発酵乳を製造できることが明らかとなった。
【0090】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。