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特許7213872スケール用洗浄剤、及び該洗浄剤を用いてスケールを除去する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】スケール用洗浄剤、及び該洗浄剤を用いてスケールを除去する方法
(51)【国際特許分類】
   C23G 1/24 20060101AFI20230120BHJP
   C23G 1/08 20060101ALI20230120BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20230120BHJP
   C11D 7/06 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
C23G1/24
C23G1/08
C11D7/26
C11D7/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020519640
(86)(22)【出願日】2019-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2019019023
(87)【国際公開番号】W WO2019221091
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2018095435
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(72)【発明者】
【氏名】山田 敬志
(72)【発明者】
【氏名】大庭 三典
(72)【発明者】
【氏名】圖師 丈裕
(72)【発明者】
【氏名】坂口 勇人
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-033171(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104294292(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23G 1/00- 5/06
C11D 1/00-19/00
C25F 1/00- 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも1種のクエン酸アンモニウム類、
(B)少なくとも1種のクエン酸トリアルキル、及び
(C)水
を含有するスケール用洗浄剤であって、
該スケール用洗浄剤全量に対して、(A)成分が0.1質量%~60質量%、(B)成分が0.25質量%~10質量%で含まれる、スケール用洗浄剤。
【請求項2】
さらに、(D)pH調整剤が、前記スケール用洗浄剤全量に対して、0.0001質量%~15質量%で含まれる、請求項1に記載のスケール用洗浄剤。
【請求項3】
前記(D)pH調整剤がアンモニア、クエン酸、及び乳酸からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項2に記載のスケール用洗浄剤。
【請求項4】
前記(B)クエン酸トリアルキルが、クエン酸トリエチルである、請求項1~3のいずれか1項に記載のスケール用洗浄剤。
【請求項5】
前記スケール用洗浄剤のpHが6~8である、請求項1~4のいずれか1項に記載のスケール用洗浄剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のスケール用洗浄剤を用いて、ステンレス鋼に付着した、鉄成分を含むスケールを除去する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クエン酸アンモニウム類、クエン酸トリアルキル、及び水を含むスケール用洗浄剤、及び該洗浄剤を用いてスケールを除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレス鋼は建築、家電、厨房、輸送、工業等の様々な分野で利用されており、耐食性、耐熱性、強度、成形性等が必要とされる場面で用いられている。その中で化学・食品産業の設備や配管では、過酷な使用条件による腐食または金属片(異物)混入を防ぐため、特に耐食性に優れたステンレス鋼であるSUS316が用いられる場合がある。
【0003】
ステンレス鋼を利用した設備や配管を洗浄するために、酸性洗浄剤やアルカリ洗浄剤が用いられる。そのような設備や配管を繰り返し洗浄した場合、水中に含まれるマグネシウムイオン、カルシウムイオン等のイオン類と、酸性洗浄剤やアルカリ洗浄剤に含まれる酸性成分、アルカリ成分と結合して形成されるスケールと呼ばれる水不溶性の無機塩が、該ステンレス鋼の表面に付着することがある。これらのスケールは設備や配管の故障、機能低下、異物混入の原因となる。
【0004】
スケールを除去する方法として、水系洗浄剤を通液使用する方法が一般的に知られており、例えば、塩酸、フッ素化合物、界面活性剤を含む洗浄液を用いた洗浄方法が提案されている(例えば、特許文献1など)。しかしながら、上記の方法では塩酸やフッ酸などの劇物が使用されており、腐食性及び毒性が高く、ステンレス鋼に加え、その不動態被膜、防食コーティング層をも腐食してしまうという問題があった。
【0005】
上記の塩酸またはフッ酸を含む洗浄剤の代用品として、アルキレンポリアミンポリ酢酸のアンモニウム塩と、水酸基を有してもよいカルボン酸のアンモニウム塩を併用した、フッ素系スケール除去用洗浄剤が提案されている(例えば、特許文献2など)。しかしながら、上記の洗浄剤ではフッ素系のスケールの除去においては有効であるものの、マグネシウム、ナトリウム、鉄、クロムなどの他の金属と、リン酸またはカルボン酸などの酸成分により形成されるスケールなど、他の様々なスケール種の除去に不十分であることが分かった。
【0006】
また、ステンレス鋼は、加熱や溶接した部分で鉄分濃縮や成分変化による変色(テンパーカラー:酸化鉄成分を含む薄いスケール層)が生じ、耐食性の低下による発錆を起こす場合があることが知られている。このような変色成分が付着した、化学・食品産業の設備や配管を利用して製造された製品においては、製品への異物混入、製品の変質または変色が生じる場合があり、これらの鉄成分を含むスケールを除去する洗浄剤も求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭62-260081号公報
【文献】特開2005-206620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明が解決しようとする課題は、ステンレス鋼や、その不動態被膜、防食コーティング層を腐食せず、変色原因となる鉄成分を含むスケールを除去することができる洗浄剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明者等は鋭意検討し、クエン酸アンモニウム類とクエン酸トリアルキルを特定量含むスケール用洗浄剤を見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、(A)少なくとも1種のクエン酸アンモニウム類、(B)少なくとも1種のクエン酸トリアルキル、及び(C)水を含有するスケール用洗浄剤であって、スケール用洗浄剤全量に対して、(A)成分が0.1質量%~60質量%、(B)成分が0.25質量%~10質量%で含まれる、スケール用洗浄剤である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のスケール用洗浄剤は、ステンレス鋼や、その不動態被膜、防食コーティング層を腐食せず、変色原因となる鉄成分を含むスケールを除去することができる。そして、本発明のスケール用洗浄剤により洗浄された、ステンレス鋼が使用された設備や配管は、故障や機能低下の発生を防止することができ、そのような設備で製造される製品への金属片などの異物混入を抑制することができる。また、ステンレス鋼に対する濡れ性も良好であり、スケールの洗浄に必要とされる洗浄剤の使用量を低減させることができ、経済面でも有利である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の(A)成分であるクエン酸アンモニウム類は、スケール中に含まれる金属成分に作用し、クエン酸アンモニウム金属錯体を形成する。この金属錯体は、後述する(B)成分であるクエン酸トリアルキルが存在すると、洗浄液中に溶解することができる。
【0012】
本発明のクエン酸アンモニウム類として、クエン酸モノアンモニウム、クエン酸ジアンモニウム、クエン酸トリアンモニウムが挙げられる。この中でも本発明においては、スケールの洗浄性の観点から、クエン酸トリアンモニウムが好ましい。クエン酸トリアンモニウムは、クエン酸とアンモニア水を中和させて得ることができ、クエン酸モノアンモニウムまたはクエン酸ジアンモニウムとアンモニア水を中和させて得ることもできる。また、関東化学(株)や富士フィルム和光純薬(株)などで販売されている市販品を使用することができる。
【0013】
クエン酸アンモニウム類の含有量は、本発明のスケール用洗浄剤全量に対して0.1質量%~60質量%であり、他の成分との相溶性の観点から0.1質量%~25質量%であることが好ましく、溶解速度の観点から、5質量%~12.5質量%であることがより好ましい。
【0014】
本発明の(B)成分であるクエン酸トリアルキルは、クエン酸に含まれる3つのカルボン酸が全てエステル化された化合物であり、スケール用洗浄に寄与するものである。クエン酸トリアルキル中のエステル化された部分のアルキル基としては、炭素原子数が1~6のアルキル基が挙げられる。当該アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第2ブチル基、第3ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、第2ペンチル基、第3ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。これらの中でも、上述したクエン酸アンモニウムの金属錯体をより溶解できるという観点から、炭素原子数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基がより好ましく、食品添加物として使用できるという安全性の観点からエチル基が特に好ましい。
【0015】
本発明の(B)成分であるクエン酸トリアルキルは、市販品を使用することもでき、例えば、クエン酸トリメチル、クエン酸トリエチルなどは関東化学(株)や富士フィルム和光純薬(株)などで販売されている。
【0016】
本発明の(B)成分であるクエン酸トリアルキルの含有量は、スケール用洗浄剤全量に対して0.25質量%~10質量%であり、界面活性の観点から、0.5質量%~10質量%であることが好ましく、他成分との相溶性の観点から1質量%~2.5質量%であることがより好ましい。
【0017】
本発明の(A)成分と(B)成分の配合比は、それぞれの成分が上記濃度範囲内であれば特に限定されないが、通常、(A)成分100質量部に対して、(B)成分が5質量部~50質量部、好ましくは10質量部~40質量部、より好ましくは10質量部~25質量部で、スケール洗浄剤に含まれる。
【0018】
本発明の(C)成分である水とは、水道水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水、RO水(逆浸透水)等を指すものとする。これらの中でも、蒸留水またはイオン交換水を用いることが好ましい。
【0019】
本発明の(C)成分の使用量としては、(A)成分、(B)成分、及び後述する任意に使用される(D)pH調整剤や増粘剤、界面活性剤、キレート剤等の他の成分との総量と合わせて、スケール用洗浄剤として100質量%となるように使用される。
【0020】
本発明においては、さらに(D)pH調整剤を使用してもよい。(D)pH調整剤を使用することにより、スケールの洗浄力を向上させることができる。(D)pH調整剤としては、無機酸類、有機酸類、塩基類を挙げることができる。
【0021】
上記無機酸類としては、例えば、硫酸、硝酸、ホウ酸、炭酸、次亜リン酸、亜リン酸、リン酸等が挙げられる。
上記有機酸類としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メチル酪酸、n-ヘキサン酸、3,3-ジメチル酪酸、2-エチル酪酸、4-メチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ジグリコール酸、2-フランカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、3-フランカルボン酸、2-テトラヒドロフランカルボン酸、メトキシ酢酸、メトキシフェニル酢酸、フェノキシ酢酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、ホスホノブタントリカルボン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)等が挙げられる。
【0022】
上記塩基類としては、例えば、アミンや水酸化第四級アンモニウム等の有機塩基、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、マグネシウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア等が挙げられる。
【0023】
上記に挙げた(D)pH調整剤の中でも、安全性、コスト及びスケールの洗浄性の観点から、アンモニア、クエン酸、乳酸を使用することが好ましく、アンモニア、クエン酸を使用することがより好ましい。また、上記に例示した(D)pH調整剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記に挙げた(D)pH調整剤の含有量としては、スケールの洗浄力と洗浄液の粘性、コスト等のバランスの観点から、スケール用洗浄剤中に0.0001質量%~15質量%であることが好ましく、0.05質量%~10質量%であることがより好ましく、0.05質量%~5質量%であることが更に好ましい。
【0025】
本発明のスケール用洗浄剤のpHは、特に制限されるものではないが、スケールの洗浄性の点から、4~12であることが好ましく、取り扱いの安全性の観点から6~8であることがより好ましい。
【0026】
本発明のスケール用洗浄剤は、必要に応じて、増粘剤、界面活性剤、キレート剤を含んでもよい。
上記増粘剤としては、例えば、グアーガム、エチルセルロース、キサンタンガム、カルボマー、カラギーナン、キトサン、ヒドロキシエチルセルロース、微結晶性セルロース、高分子量の固体ポリエチレングリコール、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、コロイド状二酸化ケイ素などを挙げることができる。
【0027】
上記界面活性剤としては、例えば、一般的なアニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩、第四級アミン塩及びピリジニウム塩等のカチオン性界面活性剤、ベタイン型、硫酸エステル型及びスルホン酸型等の両性界面活性剤等を使用することができる。
上記アニオン性界面活性剤として、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムドデシルサルフェート等のアルキルサルフェート類、ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート及びアンモニウムポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート等のポリオキシエチレンエーテルサルフェート類;ナトリウムスルホリシノレート、スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホン酸塩類;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩類;ナトリウムベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート類を使用することができる。さらに、高アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩、ポリオキシエチレンエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N-アシルアミノ酸塩、及びN-アシルメチルタウリン塩等も使用することができる。
【0028】
上記ノニオン性界面活性剤として、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート等の多価アルコールの脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類を使用することができる。さらに炭素数1~18のアルコールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物、アルキレングリコール及び/又はアルキレンジアミンのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物等も使用することができる。
【0029】
上記ノニオン性界面活性剤を構成する炭素数1~18のアルコールは例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、2-ブタノール、第3ブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、第3アミルアルコール、ヘキサノール、オクタノール、デカンアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、及びステアリルアルコール等である。
【0030】
上記アルキルフェノールは、例えば、フェノール、メチルフェノール、2,4-ジ第3ブチルフェノール、2,5-ジ第3ブチルフェノール、3,5-ジ第3ブチルフェノール、4-(1,3-テトラメチルブチル)フェノール、4-イソオクチルフェノール、4-ノニルフェノール、4-第3オクチルフェノール、4-ドデシルフェノール、2-(3,5-ジメチルヘプチル)フェノール、4-(3,5-ジメチルヘプチル)フェノール、ナフトール、ビスフェノールA、及びビスフェノールF等である。
【0031】
上記アルキレングリコールは、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、及び1,6-ヘキサンジオール等である。
【0032】
上記アルキレンジアミンは、例えば先に説明したアルキレングリコールのアルコール性水酸基がアミノ基に置換された化合物である。上記エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物としては、ランダム付加物とブロック付加物のいずれも使用することができる。
【0033】
上記カチオン性界面活性剤として例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルピリジニウムブロマイド及びイミダゾリニウムラウレート等を使用することができる。
【0034】
上記両性界面活性剤として例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチル酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシメチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタイン、ヒドロキシプロピルリン酸の金属塩等のベタイン型両性界面活性剤、β-ラウリルアミノプロピオン酸の金属塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、硫酸エステル型両性界面活性剤及びスルホン酸型両性界面活性剤を使用することができる。
【0035】
上記キレート剤としては、例えば、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、アスパラギン酸二酢酸、エチレンジアミンジコハク酸、若しくはこれらのアルカリ金属塩、又はアンモニウム塩などのアミノポリカルボン酸型キレート剤;カルボキシメチルオキシサクシネート、オキシジサクシネート、酒石酸モノサクシネート、酒石酸ジサクシネート、若しくはこれらのアルカリ金属塩、又はアンモニウム塩などのオキシカルボン酸型キレート剤、ニトリロトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、若しくはこれらのアルカリ金属塩、又はアンモニウム塩などのホスホン酸型キレート剤などが挙げられる。
【0036】
本発明のスケール用洗浄剤は、金属成分を含むスケールを除去することができる。スケールに含まれる金属成分とは、スケール中に含まれる酸成分、若しくは塩基成分と塩形成をすることができる金属イオンである。そのような金属イオン中の金属元素としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、銀、亜鉛、アルミニウム、チタンなどである。これらの金属元素からなる金属イオンを含むスケールは、一般的に知られている洗浄液には不溶であるが、本発明のスケール用洗浄剤に含まれる(A)成分であるクエン酸アンモニウム類がスケール中の金属イオンに作用して、スケール中の金属成分と塩交換することにより、クエン酸アンモニウムの金属錯体を形成する。さらに(B)成分であるクエン酸トリアルキルに、前記金属錯体を溶解させることができる。従って、本発明のスケール用洗浄剤を用いれば、スケールを効率良く除去することができる。特にステンレス鋼におけるスケール除去に有効であり、特に、SUS316を用いた設備のスケール除去に有効である。
また、上記金属元素の中では、特に鉄を含むスケールに対して効率よく除去することができる。
【0037】
本発明のスケール用洗浄剤によりスケールを除去する方法においての、スケール用洗浄剤の使用量としては、スケール1質量部に対して、スケール用洗浄剤を10質量部~10000質量部使用すればよい。
【実施例
【0038】
以下本発明を実施例により、具体的に説明する。尚、以下の実施例等において%は特に記載が無い限り質量基準である。
実施例について使用した原料は以下の通りである。
クエン酸トリアンモニウム:富士フィルム和光純薬(株)製
クエン酸モノアンモニウム:富士フィルム和光純薬(株)製
クエン酸ジアンモニウム:富士フィルム和光純薬(株)製
クエン酸トリエチル:富士フィルム和光純薬(株)製
クエン酸トリナトリウム:富士フィルム和光純薬(株)製
クエン酸:富士フィルム和光純薬(株)製
アンモニア水:富士フィルム和光純薬(株)製
【0039】
[実施例1~5、比較例1~5]
200mlビーカーに、表1に示す通りの原料を加え、25℃にて、原料が完全に溶解するまで撹拌を行い、それぞれ洗浄剤を得た。
【0040】
[スケール溶解性評価]
200mlビーカーに、得られたそれぞれの洗浄剤99.8質量部と縮合リン酸多価金属塩スケール粉末0.2質量部を加え、45℃、24時間静置した後の溶液を観察し、スケール粉末が溶解しているかを確認した。溶液が緑色透明となっているものを合格とし、スケール粉末が溶解せず水中に分散し、懸濁液として観察されるものを不合格とした。
【0041】
なお、上記スケール粉末は、リン酸を含む過酸化水素水のSUS316製気化設備の内壁に付着したものであり、SEM-EDX(SU-5000、(株)日立ハイテクノロジーズ製、測定条件:加速電圧15kV、低真空10Pa)による成分分析で組成を確認したところ、元素の質量%は、O:40.6wt%、Na:0.5wt%、Al:5.9wt%、P:26.0wt%、Cr:3.2wt%、Mn:0.3wt%、Fe:20.8wt%、Ni:2.5wt%(5回の測定の平均値)であった。
【0042】
[濡れ性評価]
上記得られたそれぞれの洗浄剤を、マイクロピペットで50μL分取し、50×50×1mmのSUS316試験片(日本テストパネル(株)製)の面に滴下し、液滴のステンレス面への広がり(円状の液滴の直径)を定規で測定した。広がりの大きいものが、ステンレス面への濡れ性が良好であり、油脂汚染部や凹凸部を噴霧洗浄する時に使用量が低減可能で有利である。今回の評価では、洗浄剤の液滴の直径が9mm以上のものを合格とした。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1からわかる通り、本発明のスケール用洗浄剤は、鉄を含む縮合リン酸塩であるスケールを効率良く溶解することができ、ステンレス鋼に付着するスケールの洗浄性に優れていることが分かった。本発明以外の洗浄剤では、スケール溶解性、ステンレス鋼に対する濡れ性の両方の評価が低かった。