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特許7214119高分子化合物、高分子化合物の合成方法、有機薄膜太陽電池材料及び有機薄膜太陽電池
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  • 特許-高分子化合物、高分子化合物の合成方法、有機薄膜太陽電池材料及び有機薄膜太陽電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】高分子化合物、高分子化合物の合成方法、有機薄膜太陽電池材料及び有機薄膜太陽電池
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20230123BHJP
   H10K 30/50 20230101ALI20230123BHJP
   C07D 513/04 20060101ALN20230123BHJP
   C07D 513/22 20060101ALN20230123BHJP
【FI】
C08G61/12
H01L31/04 152B
C07D513/04 301
C07D513/22
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019159031
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021038288
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-03-04
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「半導体ポリマーの開発と太陽電池高効率化」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100138955
【弁理士】
【氏名又は名称】末次 渉
(73)【特許権者】
【識別番号】000000354
【氏名又は名称】石原産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】尾坂 格
(72)【発明者】
【氏名】三木江 翼
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-131938(JP,A)
【文献】国際公開第2011/078248(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/015298(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/047808(WO,A1)
【文献】特開2013-131716(JP,A)
【文献】特表2016-531171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 2/00- 2/38
C08G 61/00- 61/12
C07D498/00-498/22
C07D503/00-505/24
C07D513/00-521/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1で表される繰り返し単位を含む、
【化1】

(式1中、Rはアルキル基を表す。)
ことを特徴とする高分子化合物。
【請求項2】
式13で表される化合物と式21で表される化合物とを反応させて式22で表される化合物を合成する工程と、
【化2】

式22で表される化合物と硫黄化剤とを反応させて式23で表される化合物を合成する工程と、
【化3】

式23で表される化合物とハロゲン化剤とを反応させて式24で表される化合物を合成する工程と、
【化4】

式24で表される化合物を用いて式1で表される高分子化合物を合成する工程と、を含む、
【化5】

(式1、式13、及び、式22~式24中、Rはアルキル基を表し、式21及び式24中、Xはハロゲン基を表す。)
ことを特徴とする高分子化合物の合成方法。
【請求項3】
請求項1に記載の高分子化合物を含む、
ことを特徴とする有機薄膜太陽電池材料。
【請求項4】
請求項3に記載の有機薄膜太陽電池材料を含む光活性層を有する、
ことを特徴とする有機薄膜太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物、高分子化合物の合成方法、有機薄膜太陽電池材料及び有機薄膜太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は光入力に対して電気出力を示す装置であり、化石燃料の枯渇問題や地球温暖化問題を背景に、クリーンエネルギーとして注目され、実用化されている。これまでシリコン系太陽電池が広く実用化されているが、塗布プロセスで製造可能なことやフレキシブル化、シースルー化が可能なことから有機薄膜太陽電池が新しい太陽電池技術として注目を集めており、高効率化を目指した種々の有機薄膜太陽電池材料の開発が行われている。
【0003】
電子供与体として機能する有機薄膜太陽電池材料として、ナフタレンを基調とした電子欠損性骨格が知られている。この骨格は、広いπ共役を持つため、半導体ポリマーのビルディングユニットとして用いられてきた。非特許文献1及び非特許文献2には、ナフタレンを基調とした電子欠損性骨格であるナフトビスチアジアゾールを備える高分子化合物(PNTz4T)、及び、これと電子受容体として機能するPC61BMと組み合わせた有機薄膜太陽電池が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】I. Osaka et al., J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 3498
【文献】V. Vohra, et al., Nat. Photon. 2015, 9, 403
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで種々の有機薄膜太陽電池材料が開示されているものの、材料開発は未だ発展途上にあり、更なる光電変換効率等の特性に優れる有機薄膜太陽電池材料が求められている。
【0006】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、良好な光電変換効率を示す高分子化合物、高分子化合物の合成方法、有機薄膜太陽電池材料及び有機薄膜太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点に係る高分子化合物は、
式1で表される繰り返し単位を含む、
【化1】

(式1中、Rはアルキル基を表す。)
ことを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の観点に係る高分子化合物の合成方法は、
式13で表される化合物と式21で表される化合物とを反応させて式22で表される化合物を合成する工程と、
【化2】

式22で表される化合物と硫黄化剤とを反応させて式23で表される化合物を合成する工程と、
【化3】

式23で表される化合物とハロゲン化剤とを反応させて式24で表される化合物を合成する工程と、
【化4】

式24で表される化合物を用いて式1で表される高分子化合物を合成する工程と、を含む、
【化5】

(式1、式13、及び、式22~式24中、Rはアルキル基を表し、式21及び式24中、Xはハロゲン基を表す。)
ことを特徴とする。
【0009】
本発明の第3の観点に係る有機薄膜太陽電池材料は、
本発明の第1の観点に係る高分子化合物を含む、
ことを特徴とする。
【0010】
本発明の第4の観点に係る有機薄膜太陽電池は、
本発明の第3の観点に係る有機薄膜太陽電池材料を含む光活性層を有する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、良好な光電変換効率を示す高分子化合物、高分子化合物の合成方法、有機薄膜太陽電池材料及び有機薄膜太陽電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】高分子化合物P1を用いた有機薄膜太陽電池素子の電流密度-電圧特性のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(高分子化合物)
本実施の形態に係る高分子化合物は、式1で表される繰り返し単位を含む。式1中、Rはアルキル基を表し、これらは直鎖状でも分岐鎖状でもよいが、湿式成膜方等の塗布法によって成膜することを鑑みると分岐鎖状であることが好ましい。また、アルキル基の炭素数は20~28であることが好ましい。
【0014】
【化6】
【0015】
式1で表される高分子化合物の重量平均分子量は、10,000~1,000,000の範囲であることが好ましい。また、数平均分子量は10,000~200,000の範囲であることが好ましい。
【0016】
式1で表される高分子化合物は、ポリマー主鎖のナフトジチオフェン環にチオフェン環が二つ縮合した構造であるため、非特許文献1に開示されている高分子化合物(PNTz4T)よりもπ共役系が拡張されている。このため、式1で表される高分子化合物は、強い分子間相互作用を持ち、高い結晶性を有する。
【0017】
(高分子化合物の製造方法)
上述した式1で表される高分子化合物は、以下のようにして製造することができる。
【0018】
まず、式13で表される化合物と式21で表される化合物とを反応させて式22で表される化合物を合成する。なお、下式13、式22~式24中、Rはアルキル基を表す。また、下式21、式24中、Xはハロゲン基を表す。この合成における溶媒や触媒等の添加物、反応条件等は、「K. Itami et al., J. Am. Chem. Soc. 138, 10351 (2016)」に準拠して行い得る。
【0019】
【化7】
【0020】
続いて、式22で表される化合物と硫黄化剤とを反応させて式23で表される化合物を合成する。この合成における溶媒や触媒等の添加物、反応条件等は、「K. Itami et al., J. Am. Chem. Soc. 138, 10351 (2016)」に準拠して行い得る。
【0021】
【化8】
【0022】
続いて、式23で表される化合物とハロゲン化剤とを反応させて式24で表される化合物を合成する。この合成における溶媒や触媒等の添加物、反応条件等は、「I. Osaka et al., J. Am. Chem. Soc., 134, 3498 (2012)」に準拠して行い得る。
【化9】
【0023】
続いて、式24で表される化合物を用いて式1で表される高分子化合物を合成する。例えば、式24で表される化合物とヘキサアルキルジスズやビス(1.5-シクロオクタジエン)ニッケル(0)とを反応させて合成することができる。ヘキサアルキルジスズを用いた合成における溶媒や触媒等の添加物、反応条件等は、「H. Bronstein, et al., J. Am. Chem. Soc., 133, 3272 (2011)」に準拠して行い得る。ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0)を用いた合成における溶媒や触媒等の添加物、反応条件等は、「A. P. Zoombelt, et al., Polymer, 50, 4564 (2009)」に準拠して行い得る。また、式24で表される化合物(a)と、式24で表される化合物と塩化トリアルキルスズとを反応させてできる化合物(b)とを反応させることでも合成することができる。この合成における溶媒や触媒等の添加物、反応条件等は、「I. Osaka, et al., J. Am. Chem. Soc., 134, 3498 (2012)」に準拠して行い得る。
【0024】
なお、式13で表される化合物は、式11で表される化合物とハロゲン化剤とを反応させて式12で表される化合物を合成し、続いて、式12で表される化合物とトリアルキルシリルアセチレンとを反応させることで合成し、用いることができる。式11、式12中のR、及び、式12中のXは、上記と同義である。また、式11で表される化合物の合成、式12で表される化合物の合成、及び、式13で表される化合物の合成における溶媒、触媒等の添加物、反応条件等は、それぞれ、「M. S. Wong et al. ACS Appl. Mater. Interfaces, 10, 34355 (2018)」、「B. J. Kim et al., J. Mater. Chem. A, 1, 14538 (2013)」、「M. J. EL et al., Chem. Commun. 48, 8919 (2012)」に準拠して行い得る。
【0025】
【化10】
【0026】
(有機薄膜太陽電池材料)
式1で表される高分子化合物は、有機薄膜太陽電池材料に用いることができる。有機薄膜太陽電池材料は、湿式成膜法等の塗布法によって有機太陽電池の光活性層を形成することができる。式1で表される高分子化合物は、所謂p型有機半導体として、電子供与体の機能を発揮する。
【0027】
有機薄膜太陽電池材料は、式1で表される高分子化合物のみを含んでいても、他の有機太陽電池材料や他の成分を含んでいてもよい。有機薄膜太陽電池材料は、電子受容体としての機能を発揮する電子受容性化合物を含むことが好ましい。電子受容性化合物は、所謂n型有機半導体材料として機能する化合物であればよく、フラーレン誘導体等、公知の化合物が用いられる。
【0028】
(有機薄膜太陽電池)
有機薄膜太陽電池は、上述した有機薄膜太陽電池材料を光活性層に用いる。有機薄膜太陽電池の構造は、一対の電極の間に光活性層を備える構造であれば特に制限されない。有機薄膜太陽電池の構成は、例えば、以下の態様が挙げられる。なお、p層、p材料とは、上述した有機薄膜太陽電池材料を含有する層、材料であり、n層、n材料とは、上述した電子受容性化合物を含有する層、材料を表す。
(A)電極/p材料とn材料の混合層/電極
(B)電極/p層/p材料とn材料の混合層/n層/電極
(C)電極/p層/n層/電極
【0029】
式1で表される高分子化合物は、基板に成膜した際、所謂フェイスオン配向を示す。ポリマー主鎖面が基板に平行なフェイスオン配向は、電荷が基板垂直方向に流れやすい。また、式1で表される高分子化合物は、π共役系が拡張された構造であるため、強い分子間相互作用を持ち、高い結晶性を有する。これらのことから、有機薄膜太陽電池の光活性層に用いた場合、光電変換効率等の特性が良好である。
【実施例
【0030】
以下、実施例に基づき、高分子化合物の合成、高分子化合物を用いた有機薄膜太陽電池の特性について説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0031】
(高分子化合物P1の合成)
下記スキームに基づいて、順次合成を行い、高分子化合物P1を合成した。
【0032】
【化11】
【0033】
(化合物2(2-ブロモ-3-(2-デシルテトラデシル)チオフェン)の合成)
なお、原料となる3-(2-デシルテトラデシル)チオフェン(化合物1)は、「M. S. Wong et al. ACS Appl. Mater. Interfaces, 10, 34355 (2018)」に基づいて合成し、用いた。
100mLのナスフラスコに化合物1(3.00g,7.13mmol)、クロロホルム(20mL)、酢酸(4mL)を入れ0℃に冷却したのち、N-ブロモスクシンイミド(1.27g,7.13mmol)を3回に分けて加え5時間撹拌した。
反応溶液に水を加えてクエンチしたのち、ヘキサンで三回抽出した。
有機層を水および、食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。
濾過、濃縮を行い、ヘキサンを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで化合物2(2.26g,4.52mmol,収率92%)を得た。
【0034】
(化合物3(3-(2-デシルテトラデシル)―2-エチニルチオフェン)の合成)
100mLの三口フラスコに化合物2(2.26g,4.50mmol)、ヨウ化銅(I)(42.9mg,0.225mmol)、トリフェニルホスフィン(71.0mg,0.025mmol)、トリメチルシリルアセチレン(666mg,6.78mmol)を入れ、還流管を接続後、三回アルゴン置換した。
次にトリエチルアミン(10mL)、テトラヒドロフラン(10mL)を加え、30分アルゴンバブリングした後、触媒としてテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを加えて90℃で12時間攪拌した。
室温まで放冷したのち、反応溶液にテトラブチルアンモニウムフロリド(5.08g,19.4mmol)を加え一晩撹拌した。
続いて、水を加えてヘキサンで三回抽出した。
有機層を水および、食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。
その後濾過、濃縮を行い、ヘキサンを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、化合物3(1.49g,3.35mmol,収率74%)を得た。
【0035】
化合物3の物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.15 (d, J = 4.0Hz, 1H), 6.82 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 3.41 (s, 1H), 2.63 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 1.67 (m, 1H), 1.32-1.25 (m, 40H), 0.90-0.83 (t, 6H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 148.36, 128.75, 126.04, 117.80, 83.20, 39.17, 34.21, 33.61, 32.11, 30.16, 29.91, 29.88, 29.86, 29.84, 29.83, 29.54, 29.53, 26.72, 22.86, 14.17, [M + H]+, m/z 1193.6680, Found 1193.66418
【0036】
(化合物5(5,10-ビス((3-(2-デシルテトラデシル)チオフェン-2-イル)エチニル)ナフト[1,2-c:5,6-c’]ビス[1,2,5]チアジアゾール)の合成)
原料となる4, 8-ジブロモ-ナフト[1,2-c:5,6-c’]ビス[1,2,5]チアジアゾール(化合物4)は、「S. Mataka et al., Bull. Chem. Soc. Jpn., 64, 68 (1991)」に基づいて合成し、用いた。
100mL三口フラスコに化合物4(539mg, 1.34mmol)、ヨウ化銅(I)(25.5mg,0.134mmol)、トリフェニルホスフィン(4.2mg,0.161mmol)、化合物3(1.49g,445mmol)を入れ、還流管を接続後、三回アルゴン置換した。
次に、テトラヒドロフラン(27mL)、トリエチルアミン(27mL)の混合溶媒を加え、30分アルゴンバブリングを行った。
その後、触媒としてテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(155mg,0.134mmol)を加え、90℃で12時間撹拌した。
反応溶液を室温まで放冷し、クロロホルムを加えた後、水および、食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。
その後、濾過、濃縮し、クロロホルム:ヘキサン=1:3の混合溶媒を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、メタノールで再沈殿することで、化合物5(1.06g,0.938mmol,収率70%)を得た。
【0037】
得られた化合物5の物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.01 (s, 2H), 7.32 (d, J = 4.0 Hz, 2H), 6.94 (d, J = 4.4 Hz, 2H), 2.89 (d, J = 5.6 Hz, 4H), 1.83 (m, 2H), 1.57-1.15 (m, 80H), 0.87-0.83 (m, 12H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 154.30, 152.54, 149.38, 129.34, 129.20, 127.58, 125.61, 118.28, 117.32, 91.68, 91.50, 39.53, 34.57, 33.65, 32.07, 32.05, 32.04, 32.03, 30.27, 30.19, 29.87, 29.85, 29.84, 29.82, 29.81, 29.79, 29.49, 29.48, 29.46, 26.79, 22.83, 22.81, 14.26, 14.24, [M + H]+, m/z 1193.6680, Found 1193.66418
【0038】
(化合物6(5,11-ビス((3-(2-デシルテトラデシル)チオフェン-2-イル)ジチエノ[3’,2’:3,4;3”,2”:7,8]ナフト[1,2-c:5,6-c’]ビス[1,2,5]チアジアゾール)の合成)
20mLマイクロウェーブチューブに化合物5(282mg,0.250mmol)、硫黄(257mg,1.00mmol)、N,N-ジメチルアセトアミド10mLを入れ、密栓した。
マイクロウェーブ反応装置を用いて、200℃で45分反応させた。
その後、室温まで冷却し、反応溶液に水を加え、ヘキサンで三回抽出した。
有機層を水、食塩水、および、5wt%水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。
その後濾過、濃縮を行い、ジクロロメタンを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製、濃縮後にヘキサンからヘキサン:ジクロロメタン10:1を展開溶媒としたグラジエントカラムにより精製することで、化合物6(128mg,0.069mmol,収率28%)を得た。
【0039】
化合物6の物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.20 (s, 2H), 7.35 (d, J = 4.8 Hz, 2H), 7.03 (d, J = 4.8 Hz, 2H), 2.95 (d, J = 4.8 Hz, 4H), 1.80 (m, 4H), 1.29-1.12 (m, 80H), 0.87-0.82 (m, 12H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 150.42, 150.39, 142.12, 140.58, 136.80, 131.32, 130.80, 130.34, 125.07, 120.81, 118.50, 39.20, 34.33, 33.73, 32.07, 32.05, 32.04, 32.03, 30.31, 30.19, 29.89, 29.86, 29.84, 29.80, 29.50, 29.49, 26.78, 26.73, 22.83, 22.82, 14.25; APCI-MS, calculated for C70H104N4S6 ([M] = 1192.6587), [M + H]+, m/z 1193.6680, Found 1193.66418
【0040】
(化合物7(5,11-ビス((5-ブロモ-3-(2-デシルテトラデシル)-チオフェン-2-イル)ジチエノ[3’,2’:3,4;3”,2”:7,8]ナフト[1,2-c:5,6-c’]ビス[1,2,5]チアジアゾール)の合成)
100mL三口フラスコに化合物6(91.1mg,0.077mmol)を加え、三回アルゴン置換した。
0℃まで冷却し、クロロホルム(10mL)、N-ブロモスクシンイミド(36mg,0.20mmol)を5時間かけて少量ずつ加えた。
その後、反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで三回抽出した。水および食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過、濃縮を行った。
ヘキサン:酢酸エチル=50:1の混合溶媒を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、さらに、分取HPLCにより精製した。
酢酸エチルを用いて再結晶を行うことで化合物7(80.5mg,0.056mmol,収率73%)を得た。
【0041】
化合物7の物性データは次の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.00 (s, 2H), 6.98 (s, 2H), 2.86 (d, J = 2.4 Hz, 4H), 1.76-1.74 (m, 2H), 1.30-1.13 (m, 80H), 0.87-0.82 (m, 12H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 150.38, 150.35, 141.32, 140.90, 137. 02, 133.87, 132.25, 130.34, 121.24, 118.56, 112.36, 39.23, 34.29, 33.62, 32.08, 32.06, 32.05, 32.04, 30.25, 29.88, 29.85, 29.84, 29.80, 29.51, 29.50, 26.68, 14.25
【0042】
(高分子化合物P1の合成)
2mLマイクロウェーブチューブに化合物7(67.6mg, 0.05mmol)、ヘキサメチルジチン(16.4mg,0.05mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(1.16mg,0.001mol)、トルエン(2mL)を入れ、窒素封入し、密栓した。
マイクロウェーブ反応装置を用いて、200℃で3時間反応させた。
その後、室温まで冷却後、反応液を5%塩酸/メタノール溶液に注ぎ込み、3時間撹拌した。沈殿した固体を濾取し、ソックスレー抽出器を用いて、メタノール、n-ヘキサンで洗浄した後、クロロホルムで抽出した。
得られた溶液を一部濃縮し、メタノールに再沈殿することで、高分子化合物P1(57mg,収率95%)を暗緑色固体として得た(数平均分子量20,000)。
【0043】
(高分子化合物P1の特性評価)
高分子化合物P1の最高被占有分子軌道(HOMO)準位、最低空分子軌道(LUMO)準位、およびバンドギャップをサイクリックボルタンメトリーにより評価した。HOMO準位は-5.32eV、LUMO準位は-3.42eV、HOMO-LUMOギャップは1.90eVを示した。
【0044】
また、比較例として、非特許文献1に開示の高分子化合物(PNTz4T)についても上記と同様に評価し、表1にまとめた。高分子化合物P1では、PNTz4Tに比べ、HOMO準位が低くなっており、バンドギャップが大きく、n型有機半導体材料と組み合わせた際に、出力電圧が向上することが示される。
【0045】
【表1】
【0046】
続いて合成した高分子化合物P1を用いて太陽電池素子を作製し、光電変換効率を評価した。
【0047】
(高分子化合物P1を用いた太陽電池素子の作製)
ITO膜がパターンニングされたガラス基板を十分洗浄後、UVオゾン処理を行った。次に、酸化亜鉛のメタノール溶液を1200rpmで10秒間スピンコートし、電子取り出し層を形成した。
電子取り出し層を成膜した基板をグローブボックス内に持ち込み、高分子化合物P1及びフラーレン誘導体であるPC61BM(Phenyl C61-butyric acid methyl ester)を3vol%の1,8-ジヨードオクタンを添加したクロロベンゼン溶液(高分子化合物P1/PC61BMの重量比=1/2)を用いて、スピンコートにより光活性層を形成した(膜厚340nm)。
さらに、活性層上に、正孔取り出し層として厚さ7.5nmの三酸化モリブデン(MoO)膜を、次いで電極層として厚さ100nmの銀膜を、抵抗加熱型真空蒸着法により順次成膜し、4mm角の有機薄膜太陽電池素子を作製した。
【0048】
(高分子化合物P1を用いた太陽電池素子の評価)
得られた有機薄膜太陽電池にソーラシミュレーター(AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm)を用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定した。図1に電流密度-電圧特性のグラフを示す。
【0049】
得られた図1から短絡電流密度Jsc(mAcm-2)、開放電圧Voc(V)、曲線因子FFを求めた。高分子化合物P1について、Jsc=16.9mA/cm、Voc=0.85V、FF=0.76であり、光電変換効率(η)を、式η=(Jsc×Voc×FF)/100より算出したところ、11.0%であった。
【0050】
また、比較例として、高分子化合物P1を非特許文献1に開示の高分子化合物(PNTz4T)を用いる以外、上記と同様にして、有機薄膜太陽電池素子(光活性層の膜厚350nm)を作製し、その特性を評価した。
【0051】
高分子化合物P1、及び、PNTz4Tを用いて得られた有機薄膜太陽電池の特性を表2にまとめた。高分子化合物P1を用いて得られた有機薄膜太陽電池は、PNTz4Tを用いて得られた有機薄膜太陽電池に比べて、高い光電変換効率を示し、良好な特性を有していることがわかる。
【0052】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る高分子化合物は、有機薄膜太陽電池の光活性層を形成する有機薄膜太陽電池材料として利用可能である。
図1