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特許7214418接着性が向上した一剤熱硬化性エポキシ接着剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】接着性が向上した一剤熱硬化性エポキシ接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20230123BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J11/06
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018178531
(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公開番号】P2019059930
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-09-24
(31)【優先権主張番号】17192900.3
(32)【優先日】2017-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ハンリー
【審査官】宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-199937(JP,A)
【文献】特開2015-030745(JP,A)
【文献】特表2012-525453(JP,A)
【文献】国際公開第2017/121826(WO,A1)
【文献】特開平02-255883(JP,A)
【文献】特開昭54-149742(JP,A)
【文献】国際公開第2013/125684(WO,A1)
【文献】特表2011-529817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤:
a)1分子当たり平均して1つを超えるエポキシド基を有する少なくとも1つのエポキシ樹脂Aと、
b)エポキシ樹脂のための少なくとも1つの潜在性硬化剤と、
c)コハク酸及び無水フタル酸から選択される少なくとも1つのカルボン酸、
ここで、前記エポキシ樹脂接着剤は、100gのエポキシ樹脂接着剤当たり1.7~15ミリモルの前記少なくとも1つのカルボン酸を含み、かつ前記エポキシ樹脂接着剤は、25℃で10000Pa・sを超える粘度を有し、前記粘度は、加熱プレートを備えるレオメーター(MCR 301、AntonPaar)によってオシログラフィ的に決定される(スロット1000μm、測定プレート直径:25mm(プレート/プレート)、5Hzでの変形0.01、温度:25℃)。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂接着剤は、100gのエポキシ樹脂接着剤当たり2~13ミリモルの前記少なくとも1つのカルボン酸を含む、請求項記載の一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤。
【請求項3】
1分子当たり平均して1つを超えるエポキシド基を有するエポキシ樹脂Aの割合は、前記一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤の総重量に基づいて、25~70重量%である、請求項1又は2に記載の一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤。
【請求項4】
前記潜在性硬化剤は、ジシアンジアミド、グアナミン、グアニジン、アミノグアニジン、及びこれらの誘導体、置換尿素、イミダゾール及びアミン錯体から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤。
【請求項5】
少なくとも1つの靭性向上剤Dを更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載の一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂接着剤は、25℃で、15000Pasを超える粘度を有し、前記粘度は、加熱プレートを備えるレオメーター(MCR 301、AntonPaar)によってオシログラフィ的に決定される(スロット1000μm、測定プレート直径:25mm(プレート/プレート)、5Hzでの変形0.01、温度:25℃)、請求項1~のいずれか一項に記載の一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤。
【請求項7】
少なくとも1つの物理的又は化学的発泡剤を更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載の一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤。
【請求項8】
以下を含む、基材を接着結合する方法
i)請求項1~のいずれか一項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂接着剤を、基材S1の表面に適用する工程;
ii)前記適用された熱硬化性エポキシ樹脂接着剤を、更なる基材S2の表面に接触させる工程;
iii)前記熱硬化性エポキシ樹脂接着剤を、100~220℃の温度に加熱する工程;
ここで、前記基材S2は、前記基材S1と同じ材料又は異なる材料からなる。
【請求項9】
金属構造体を接着結合するか又は強化するための、或いは車両構造体又はサンドイッチパネル構造体におけるキャビティの充填を強化するための、請求項1~のいずれか一項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂接着剤の使用。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤を、170℃で20分間、及び/又は205℃で40分間、硬化したときのASTM D1002-10の引張剪断強度を向上するための、コハク酸及び無水フタル酸から選択される少なくとも1つのカルボン酸の使用。
【請求項11】
請求項1~のいずれか一項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂接着剤を加熱することによって得られる構造発泡体。
【請求項12】
請求項に記載の方法によって得られることができる、硬化した接着結合されたアセンブリを含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤の分野、更に、特に車両構造及びサンドイッチパネル構造におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性の一剤エポキシ樹脂接着剤は、車体構造、更に補強要素及び/又は構造発泡体における接着剤としてかなりの時代において既に使用されてきている。
【0003】
従って、一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤の重要な使用分野の一つは、特に、本体構造におけるキャビティの接着結合又は発泡充填の関連において、スチール板及びアルミニウムなどの金属基材が典型的に存在する車両構造にある。双方の場合において、エポキシ樹脂組成物の塗布の後、車体は、CEC(陰極電着塗装)オーブン中で加熱され、これによって、熱硬化性エポキシ樹脂組成物も硬化され、必要に応じて発泡される。
【0004】
熱に暴露すると構造発泡体を形成する一剤熱硬化性エポキシ樹脂組成物を含む補強要素は、例えば、SikaReinforcer(登録商標)の商標名で知られている。特許文献1では、例えば、ポリスチレンなどの熱可塑性物、及びSBSブロックコポリマーなどの熱可塑性エラストマーの存在下でエポキシ樹脂を含む熱硬化性の発泡性シーラントを開示している。
【0005】
しかしながら、スチール板、特に油面スチール板、及びアルミニウムなどの前述の金属基材の場合、一剤熱硬化性エポキシ樹脂組成物の接着性が不十分であることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第6,387,470B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、結合の前に金属基材を前処理する必要なく、室温で好ましくは固体であり、特定の金属基材、特にスチール及びアルミニウムの金属基材への硬化した接着剤の接着性を向上する一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤を提供することである。この意図は、特に、向上した引張剪断強度を達成することである。同様に、好ましくは、硬化プロセスの結果として硬化したエポキシ樹脂接着剤の色の急激な変化を避けなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、この目的は、特に、比較的少量の特定のカルボン酸を、本発明によるエポキシ樹脂接着剤、特に本発明による25℃で好ましくは固体であるエポキシ樹脂接着剤において使用することによって達成できることが見出された。従って、本発明は、以下の態様1に記載の一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤に関する。
【0009】
カルボン酸を接着剤に混合することにより、スチール及びアルミニウムなどの特定の金属基材への接着性を著しく向上することが可能である。向上した接着性は、特に熱に対して堅牢である。
【0010】
これらの系への酸の混合は、一般的に普通ではなく、接着剤の特性は、接着性成分との酸の反応によって悪影響を受けることが想定されていたが、驚くべきことに何も起こらなかった。
【0011】
特定のカルボン酸によって観察される別の影響は、局所的な茶色の変色である。局所的な発熱がこの現象で役割を果たすということが想定される。
【0012】
本発明の更なる態様は、更なる独立的態様の主題である。本発明の特に好ましい実施形態は、従属的態様の主題である。
本発明の態様として、以下の態様を挙げることができる:
《態様1》
以下を含む、一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤:
a)1分子当たり平均して1つを超えるエポキシド基を有する少なくとも1つのエポキシ樹脂Aと、
b)エポキシ樹脂のための少なくとも1つの潜在性硬化剤と、
c)置換又は非置換のコハク酸、及び置換又は非置換のフタル酸から選択される少なくとも1つのカルボン酸と、
ここで、前記エポキシ樹脂接着剤は、100gのエポキシ樹脂接着剤当たり1.7~15ミリモルの前記少なくとも1つのカルボン酸を含み、かつ前記エポキシ樹脂接着剤は、25℃で10000Pa・sを超える粘度を有し、前記粘度は、加熱プレートを備えるレオメーター(MCR 301、AntonPaar)によってオシログラフィ的に決定される(スロット1000μm、測定プレート直径:25mm(プレート/プレート)、5Hzでの変形0.01、温度:25℃)。
《態様2》
前記少なくとも1つのカルボン酸は、コハク酸及び無水フタル酸から選択される、態様1に記載の一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤。
《態様3》
前記エポキシ樹脂接着剤は、100gのエポキシ樹脂接着剤当たり2~13ミリモル、2.5~10.5ミリモル、2.5~8.5ミリモル、2.5~6ミリモル、好ましくは3~5ミリモルの前記少なくとも1つのカルボン酸を含む、態様1又は2に記載の一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤。
《態様4》
1分子当たり平均して1つを超えるエポキシド基を有するエポキシ樹脂Aの割合は、前記一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤の総重量に基づいて、25~70重量%、25~60重量%、30~55重量%、30~50重量%、好ましくは30~45重量%である、態様1~3のいずれか一項に記載の一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤。
《態様5》
前記潜在性硬化剤は、ジシアンジアミド、グアナミン、グアニジン、アミノグアニジン、及びこれらの誘導体、置換尿素、イミダゾール及びアミン錯体、好ましくはジシアンジアミドから選択される、態様1~4のいずれか一項に記載の一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤。
《態様6》
少なくとも1つの靭性向上剤Dを更に含み、靭性向上剤Dの割合は、前記一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤の総重量に基づいて、好ましくは5~30重量%、7~25重量%、10~20重量%、より好ましくは10~15重量%である、態様1~5のいずれか一項に記載の一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤。
《態様7》
前記エポキシ樹脂接着剤は、25℃で、15000Pasを超える、特に25000Pasを超える粘度を有し、前記粘度は、加熱プレートを備えるレオメーター(MCR 301、AntonPaar)によってオシログラフィ的に決定され(スロット1000μm、測定プレート直径:25mm(プレート/プレート)、5Hzでの変形0.01、温度:25℃)、前記エポキシ樹脂接着剤は、特に好ましくは25℃で固体である、態様1~6のいずれか一項に記載の一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤。
《態様8》
少なくとも1つの物理的又は化学的発泡剤を更に含む、態様1~7のいずれか一項に記載の一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤。
《態様9》
以下を含む、熱安定性基材を接着結合する方法
i)態様1~8のいずれか一項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂接着剤を、熱安定性基材S1の表面、特に金属の表面に適用する工程;
ii)前記適用された熱硬化性エポキシ樹脂接着剤を、更なる熱安定性基材S2の表面、特に金属の表面に接触させる工程;
iii)前記熱硬化性エポキシ樹脂接着剤を、100~220℃、特に120~200℃、好ましくは160~190℃の温度に加熱する工程;
ここで、前記基材S2は、前記基材S1と同じ材料又は異なる材料からなる。
《態様10》
金属構造体を接着結合するか又は強化するための、或いは車両構造体又はサンドイッチパネル構造体におけるキャビティの充填を強化するための、態様1~8のいずれか一項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂接着剤の使用。
《態様11》
一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤を、特に車両構造体及びサンドイッチパネル構造体における熱硬化性エポキシ樹脂接着剤を、好ましくは態様1~8のいずれか一項に記載の一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤を、170℃で20分間、及び/又は205℃で40分間、特に170℃で20分間、硬化したときのASTM D1002-10の引張剪断強度を向上するための、置換又は非置換コハク酸及び置換又は非置換フタル酸から選択される少なくとも1つのカルボン酸の使用。
《態様12》
態様1~8のいずれか一項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂接着剤を加熱することによって得られる構造発泡体。
《態様13》
態様9に記載の方法によって得られることができる、硬化した接着結合されたアセンブリを含む物品。
【発明を実施するための形態】
【0013】
従って、本発明は、
a)1分子当たり平均して1つを超えるエポキシド基を有する少なくとも1つのエポキシ樹脂Aと、
b)エポキシ樹脂のための少なくとも1つの潜在性硬化剤と、
c)置換又は非置換コハク酸、及び置換又は非置換フタル酸から選択される少なくとも1つのカルボン酸と、
を含む一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤に関する。
【0014】
エポキシ樹脂接着剤は、100gのエポキシ樹脂接着剤当たり1.7~15ミリモルの少なくとも1つのカルボン酸を含む。更に、エポキシ樹脂接着剤は、25℃で10000Pasを超える粘度を有し、粘度は、加熱プレートを備えるレオメーター(MCR 301、AntonPaar)によってオシログラフィ的(oscillographically)に決定される(スロット1000μm、測定プレート直径:25mm(プレート/プレート)、5Hzでの変形0.01、温度:25℃)。
【0015】
エポキシ樹脂接着剤は一剤であり、エポキシ樹脂接着剤の成分、特にエポキシ樹脂及び硬化剤が、通常の周囲温度又は室温で硬化が起こることなく、一剤に存在することを意味する。従って、一剤エポキシ樹脂接着剤は貯蔵において安定である。従って、この形態で扱うことはできるが、二剤系では、使用直前まで剤を混合することはできない。
【0016】
一剤エポキシ樹脂接着剤の硬化は、例えば、100~220℃の範囲などの、典型的には70℃を超える温度で、加熱することによって達成される。
【0017】
ポリオール又はポリイソシアネートなどの表現における接頭語「ポリ」は、化合物が2つ以上の記載された基を有することを意味する。ポリイソシアネートは、例えば、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物である。
【0018】
以下で使用される「互いに独立して」という表現は、同じ分子で、2つ以上の同一に示される置換基が、その定義に従って同一又は異なる意味を有し得ることを意味する。
【0019】
この文献における式の破線は、それぞれの場合において、問題の置換基と関連する分子の残りとの間の結合を表す。
特に明記しない限り、室温は、ここでは23℃の温度を指す。
【0020】
熱硬化性一剤エポキシ樹脂接着剤は、1分子当たり平均して1つを超えるエポキシド基を有する少なくとも一つのエポキシ樹脂Aを含む。エポキシド基は、好ましくはグリシジルエーテル基の形態である。
【0021】
1分子あたり平均して1つを超えるエポキシド基を有するエポキシ樹脂Aの割合は、一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤の総重量に基づいて、好ましくは25~70重量%、25~60重量%、30~55重量%、30~50重量%、好ましくは30~45重量%である。
【0022】
1分子当たり平均して1つを超えるエポキシ基を有するエポキシ樹脂Aは、好ましくは液状エポキシ樹脂又は固体エポキシ樹脂である。「固体エポキシ樹脂」という用語は、エポキシド技術の当業者には非常によく知られており、「液状エポキシ樹脂」とは対照的に使用される。固体樹脂のガラス転移温度は、室温より上であり、室温で固体樹脂を流動可能な粉末に粉砕することができることを意味する。
【0023】
好ましいエポキシ樹脂は、式(II)を有する。
【化1】
【0024】
この式において、置換基R’及びR’’は、互いに独立して、H又はCHである。
【0025】
固体エポキシ樹脂では、示数sは、>1.5、特に2~12の値を有する。
【0026】
この種類の固体エポキシ樹脂は、例えば、Dow又はHuntsman又はHexionから市販されている。
【0027】
1~1.5の示数sを有する式(II)の化合物は、半固体エポキシ樹脂として当業者に引用される。本発明の目的のために、この化合物は同様に固体樹脂であると考えられる。しかしながら、好ましい固体エポキシ樹脂は、狭義にはエポキシ樹脂であり、言い換えれば、示数sが>1.5の値を有する。
【0028】
液状エポキシ樹脂の場合、示数sは1未満の値を有する。好ましくは、sは0.2未満の値を有する。
【0029】
従って、問題の樹脂は、好ましくは、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、更にビスフェノールA/Fのジグリシジルエーテルである。これらの種類の液状樹脂は、例えば、Araldite(登録商標)GY 250、Araldite(登録商標)PY 304、Araldite(登録商標)GY 282(Huntsman)、又はD.E.R(商標)331又はD.E.R.(商標)330(Dow)又はEpikote 828(Hexion)として入手可能である。
【0030】
エポキシ樹脂Aとして更に適しているのは、エポキシノボラックと称されるものである。これらの化合物は、特に、以下の式:
【化2】
(式中、R2=
【化3】
又はCH、R1=H又はメチル、及びz=0~7)を有する。
【0031】
特に、これらの化合物は、フェノール―エポキシ又はクレゾール―エポキシノボラック(R2=CH)である。
【0032】
これらの種類のエポキシ樹脂は、HuntsmanからEPN又はECN更にTactix(登録商標)の商標名で、或いはDow Chemicalから製品シリーズD.E.N.(商標)で市販されている。
【0033】
エポキシ樹脂Aは、好ましくは、式(II)の液状エポキシ樹脂である。
【0034】
特に好ましい一実施形態においては、熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、s<1、特に0.2未満の式(II)の少なくとも1つの液状エポキシ樹脂だけでなく、s>1.5、特に2~12の式(II)の少なくとも1つの固体エポキシ樹脂も含む。
【0035】
更に、前述の液状エポキシ樹脂の割合が、一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤の総重量に基づいて、5~40重量%、10~35重量%、15~35重量%、好ましくは20~30重量%であることが有利である。
【0036】
更に、前述の固体エポキシ樹脂の割合が、一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤の総重量に基づいて、5~30重量%、5~25重量%、5~20重量%、好ましくは10~15重量%であることが有利である。
【0037】
熱硬化性一剤エポキシ樹脂接着剤は、エポキシ樹脂のための少なくとも1つの潜在性硬化剤を更に含む。潜在性硬化剤は、室温で実質的に不活性であり、高温、典型的には70℃以上の温度で活性化され、これにより硬化反応を開始する。エポキシ樹脂のための慣用の潜在性硬化剤を使用することができる。窒素を含む潜在性エポキシ樹脂硬化剤が好ましい。
【0038】
好ましくは、潜在性硬化剤は、ジシアンジアミド、グアナミン、グアニジン、アミノグアニジン、及びこれらの誘導体、置換尿素、イミダゾール及びアミン錯体、好ましくはジシアンジアミドから選択される。
【0039】
潜在性硬化剤の割合は、エポキシ樹脂接着剤の総重量に基づいて、好ましくは0.5~12重量%、より好ましくは1~8重量%、特に2~6重量%である。
【0040】
熱硬化性一剤エポキシ樹脂接着剤は、置換又は非置換コハク酸、及び置換又は非置換フタル酸から選択される少なくとも1つのカルボン酸を更に含む。
【0041】
記載されたカルボン酸は、非置換であっても置換されていてもよく、非置換カルボン酸が好ましい。
【0042】
記載された置換カルボン酸の場合、炭素原子に結合した1つ以上の水素原子は、置換基で置換されていてもよく、2つ以上の置換基が存在する場合、置換基は同一でも異なっていてもよい。置換されたカルボン酸は、好ましくは、1つ又は2つの置換基を有する。
【0043】
適切な置換基の例は、アルキル、例えばC~Cアルキルなど、シクロアルキル、例えばC~Cシクロアルキルなど、アリール、例えばフェニルなど、アラルキル、例えばフェニル基で置換されたC~Cアルキルなど、アラルキル、例えば1つ以上のC~Cアルキル基で置換されたフェニルなど、アルキルオキシ、例えばC~Cアルコキシなど、アリールオキシ、例えば、フェノキシ、アラルキルオキシなど、ヒドロキシル、ニトロ、オキソ(=O)、メルカプト、フェノール、及びハロゲンである。
【0044】
少なくとも1つのカルボン酸が、コハク酸及び無水フタル酸から好ましくは選択される。使用されるカルボン酸は、好ましくは水和水を含まない無水カルボン酸である。
【0045】
カルボン酸がコハク酸である場合、これは特に高い引張剪断強度値が得られる点で有利である。
【0046】
カルボン酸が無水フタル酸である場合、硬化したエポキシ樹脂接着剤に茶色の変色が形成されないという点で有利である。
【0047】
エポキシ樹脂接着剤は、100gのエポキシ樹脂接着剤当たり1.7~15ミリモルの少なくとも1つのカルボン酸を含む。好ましくは、エポキシ樹脂接着剤は、100gのエポキシ樹脂接着剤当たり2~13ミリモル、2.5~10.5ミリモル、2.5~8.5ミリモル、2.5~6ミリモル、好ましくは3~5ミリモルの少なくとも1つのカルボン酸を含む。これは、例えば、表1で明らかなように、特に170℃~205℃の硬化温度において、向上した引張剪断強度、更に凝集破断パターンに有益である。更に、カルボン酸としてコハク酸の場合、好ましい範囲は、硬化したエポキシ樹脂接着剤の茶色の変色を減少させる。
【0048】
一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤は、好ましくは、少なくとも1つの靭性向上剤Dを含む。靭性向上剤Dは、固体又は液体であり得る。
【0049】
特に、靭性向上剤Dは、末端封鎖ポリウレタンポリマーD1、液状ゴムD2、及びコアシェルポリマーD3からなる群から選択される。好ましくは、靱性向上剤Dは、末端封鎖ポリウレタンポリマーD1及び液状ゴムD2からなる群から選択される。
【0050】
靭性向上剤Dが末端封鎖ポリウレタンポリマーD1である場合、好ましくは式(I)の末端封鎖ポリウレタンプレポリマーである。
【化4】
【0051】
この式において、Rは末端イソシアネート基の除去後に、イソシアネート基で末端化された直鎖型又は分岐型のポリウレタンプレポリマーのp価の基であり、pは2~8の値を有する。
【0052】
更に、Rは、出現毎に独立して、
【化5】
からなる群から選択される置換基である。
【0053】
これらの式において、R、R、R、及びRはそれぞれ、互いに独立して、アルキル又はシクロアルキル又はアラルキル又はアリールアルキル基である、或いは、RはRとともに、又はRはRとともに、置換されていてもよい4~7員環の一部を形成する。
【0054】
更に、R9’及びR10はそれぞれ、互いに独立して、アルキル又はアラルキル又はアリールアルキル基である、或いは、アルキルオキシ又はアリールオキシ又はアラルキルオキシ基であり、R11はアルキル基である。
【0055】
12、R13、及びR14はそれぞれ、互いに独立して、二重結合を有していてもよい、又置換基されていてもよい2~5の炭素原子を有するアルキレン基である、或いは、フェニレン基又は水素化フェニレン基である。
【0056】
15、R16、及びR17はそれぞれ、互いに独立して、H又はアルキル基又はアリール基又はアラルキル基であり、R18はアラルキル基である、或いは、単環式又は多環式の、芳香族ヒドロキシル基を有していてもよい置換又は非置換芳香族基である。
【0057】
最後に、Rは、ヒドロキシル基及びエポキシド基の除去後に、第一級又は第二級ヒドロキシル基を含む脂肪族、脂環族、芳香族、又は芳香脂肪族エポキシドの基であり、mは1、2、又は3の値を有する。
【0058】
18は、特に一方では、ヒドロキシル基の除去後に、フェノール又はポリフェノール、特にビスフェノールを含むと考えるべきである。こうしたフェノール及びビスフェノールの好ましい例は、特に、フェノール、クレゾール、レゾルシノール、ピロカテコール、カルダノール((カシューナッツ殻油からの)3-ペンタデセニルフェノール)、ノニルフェノール、スチレン又はジシクロペンタジエンと反応したフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及び2,2’-ジアリルビスフェノールAである。R18は、他方では、特に、ヒドロキシベンジルアルコール、及びヒドロキシル基の除去後のベンジルアルコールを含むと考えるべきである。
【0059】
、R、R、R、R、R9’、R10、R11、R15、R16、又はR17が、アルキル基である場合、この基は、特に直鎖型又は分岐型C~C20アルキル基である。
【0060】
、R、R、R、R、R9’、R10、R15、R16、R17、又はR18が、アラルキル基である場合、特に、この部位は、メチレンを介して結合した芳香族基、特にベンジル基である。
【0061】
、R、R、R、R、R9’、又はR10が、アルキルアリール基である場合、特に、この基は、例えば、トリル又はキシリルなどのフェニレンを介して結合したC~C20アルキル基である。
【0062】
基Rは、好ましくは、式
【化6】
の置換基である。
【0063】

【化7】
の好ましい置換基は、NHプロトンの除去後のε-カプロラクタムである。
【0064】

【化8】
の好ましい置換基は、フェノール性水素原子の除去後の、モノフェノール又はポリフェノール、特にビスフェノールである。この基Rの特に好ましい例は、
【化9】
からなる群から選択される基である。
【0065】
これらの式中の基Yは、1~20の炭素原子、特に1~15の炭素原子を有する飽和、芳香族、又はオレフィン性不飽和ヒドロカルビル基である。Yとしては、特に、アリル、メチル、ノニル、ドデシル、フェニル、アルキルエーテル、カルボン酸エステル、又は1~3の二重結合を有する不飽和C15アルキル基が好ましい。
【0066】
最も好ましくは、R
【化10】
である。
【0067】
式(I)の末端封鎖ポリウレタンプレポリマーは、1つ以上のイソシアネート反応性化合物RHとともに、イソシアネート基で末端化された直鎖型又は分岐型のポリウレタンプレポリマーから調製される。こうしたイソシアネート反応性化合物が2つ以上使用される場合、反応は逐次的に又はこれらの化合物の混合物で行うことができる。
【0068】
反応は、NCO基の全てが反応したことを確実にするために、1つ以上のイソシアネート反応性化合物RHは、化学量論的に又は化学量論的に過剰で使用されるように起こることが好ましい。
【0069】
が基づくイソシアネート末端基を有するポリウレタンプレポリマーは、少なくとも1つのジイソシアネート又はトリイソシアネートから、更に末端のアミノ、チオール、又はヒドロキシル基を有するポリマーQPMから、及び/又は置換されていてもよいポリフェノールQPPから調製することができる。
【0070】
適切なジイソシアネートは、脂肪族、脂環族、芳香族、又は芳香脂肪族ジイソシアネート、特に、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、2,5-又は2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ナフタレン、1,5-ジイソシアネート(NDI)、ジシクロヘキシルメチルジイソシアネート(H12MDI)、p-フェニレンジイソシアネート(PPDI)、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等、更にこれらの二量体などの市販の製品である。HDI、IPDI、MDI、又はTDIが好ましい。
【0071】
適切なトリイソシアネートは、脂肪族、脂環族、芳香族、又は芳香脂肪族ジイソシアネートの三量体又はビウレット、特に、前の段落に記載のジイソシアネートのイソシアヌレート及びビウレットである。又、ジイソシアネート又はトリイソシアネートの適切な混合物を使用することも当然可能である。
【0072】
末端のアミノ、チオール、又はヒドロキシル基を有するポリマーQPMとして特に適切なものは、2つ又は3つの末端のアミノ、チオール、又はヒドロキシル基を有するポリマーQPMである。
【0073】
有利には、ポリマーQPMは、300~6000、特に600~4000、好ましくは700~2200g/当量のNCO反応性基の当量を有する。
【0074】
好ましいポリマーQPMは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールブロックポリマー、ポリブチレングリコール、ヒドロキシル末端ポリブタジエン、ヒドロキシル末端ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される600~6000ダルトンの平均分子量を有するポリオールである。
【0075】
ポリマーQPMとして特に好ましいのは、アミノ、チオール、又は好ましくはヒドロキシル基で末端化される、C~Cアルキレン基を有する、又は混合されたC~Cアルキレン基を有するα,ω-ジヒドロキシポリアルキレングリコールである。ポリプロピレングリコール又はポリブチレングリコールが特に好ましい。ヒドロキシル基末端ポリオキシブチレンが更に特に好ましい。
【0076】
ポリフェノールQPPとして特に適しているのは、ビス、トリ、及びテトラフェノールである。この用語は、純粋なフェノールだけでなく、更に代わりに、適切な場合には、置換フェノールも指す。置換の性質は、非常に多様であり得る。これにより特に理解されるのは、フェノール性OH基が結合している芳香環系において直接置換することである。更に、フェノールは、単環式芳香族だけでなく、多環式又は縮合芳香族又はヘテロ芳香族であり、フェノール性OH基を芳香族又はヘテロ芳香族部位に直接有する。
【0077】
好ましい一実施形態においては、ポリウレタンプレポリマーは、少なくとも1つのジイソシアネート又はトリイソシアネートから、更に末端のアミノ、チオール、又はヒドロキシル基を有する1つのポリマーQPMから調製される。ポリウレタンプレポリマーは、ポリウレタン技術の当業者に公知の方法で、特に、ポリマーQPMのアミノ、チオール、又はヒドロキシル基に対して化学量論的に過剰量でジイソシアネート又はトリイソシアネートを使用することにより調製される。
【0078】
イソシアネート末端基を有するポリウレタンプレポリマーは、好ましくは性質上弾性である。好ましくは、このポリウレタンプレポリマーは、0℃未満のガラス転移温度Tgを示す。
【0079】
靭性向上剤Dは、液状ゴムD2であり得る。これは、例えば、カルボキシル末端又はエポキシ末端ポリマーであり得る。
【0080】
第1の実施形態においては、この液状ゴムは、カルボキシル末端又はエポキシド末端アクリロニトリル/ブタジエンコポリマー又はこれらの誘導体であり得る。この種類の液状ゴムは、例えば、Emerald Performance Materialsから、Hypro/Hypox(登録商標)CTBN及びCTBNX及びETBNの名称で市販されている。適切な誘導体は、特に、Struktol(登録商標)(Schill+Seilacher Group,Germany)社によって、製品ライン、Polydis(登録商標)で、特に製品ライン、Polydis(登録商標)36..で、或いは、製品ライン、Albipox(Evonik、Germany)で、市販されている種類の、エポキシド基を含むエラストマー変性プレポリマーである。
【0081】
第2の実施形態においては、この液状ゴムは、液状エポキシ樹脂と完全に混和性であり、エポキシ樹脂マトリックスが硬化したときにのみ分離して微小液滴を形成するポリアクリレート液状ゴムであり得る。この種類の液状ポリアクリレートゴムは、例えば、Dowの20208 XPAという名称で入手可能である。
【0082】
液状ゴムの混合物、特にカルボキシル末端又はエポキシ末端アクリロニトリル/ブタジエンコポリマー又はこれらの誘導体の混合物を使用することも当然可能である。
【0083】
第3の実施形態における靭性向上剤Dは、コア-シェルポリマーD3であり得る。コア-シェルポリマーは、弾性コアポリマー及び剛性シェルポリマーからなる。特に適切なコア-シェルポリマーは、硬質熱可塑性ポリマーの硬質シェルによって囲まれた弾性アクリルポリマー又はブタジエンポリマーのコアからなる。このコア-シェル構造は、ブロックコポリマーの分離によって自発的に形成される、或いは、ラテックスとして重合領域(polymerization regime)によって又はその後のグラフト化を伴う懸濁重合によって決定される。好ましいコア-シェルポリマーは、MBSポリマーとして知られているものであり、ArkemaからClearstrength(商標)、DowからParaloid(商標)、又はZeonからF-351(商標)の商標名で市販されている。
【0084】
特に好ましくは、一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤は、末端封鎖ポリウレタンポリマーD1だけでなく、液状ゴムD2も含む。
【0085】
靭性向上剤Dの割合は、エポキシ樹脂接着剤の総重量に基づいて、好ましくは5~30重量%、7~25重量%、10~20重量%、より好ましくは10~15重量%である。
【0086】
好ましい一実施形態においては、一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤は、少なくとも1つの充填剤Fを更に含む。ここでは、マイカ、タルク、カオリン、ワラストナイト、長石、閃長岩、クロライト、ベントナイト、モンモリロナイト、炭酸カルシウム(沈降又は粉砕)、ドロマイト、石英、シリカ(ヒュームド又は沈降)、クリストバライト、酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、中空セラミックビーズ、中空ガラスビーズ、中空有機ビーズ、ガラスビーズ、着色顔料が好ましい。炭酸カルシウム、酸化カルシウム、及びヒュームドシリカからなる群から選択される充填剤が、特に好ましい。
【0087】
充填剤F全体の総割合は、エポキシ樹脂接着剤の総重量に基づいて、有利には5~40重量%、好ましくは20~40重量%である。
【0088】
一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤は、更なる成分、特に、触媒、安定剤、特に、熱及び/又は光安定剤、チキソトロピー剤、可塑剤、溶剤、染料及び顔料、腐食防止剤、界面活性剤、消泡剤及び接着促進剤を含むことができる。
【0089】
好ましい一実施形態においては、一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤は、物理的又は化学的発泡剤を含む。このような発泡剤は、例えば、Akzo NobelからExpancel(商標)又はChemturaからCelogen(商標)として入手可能である。使用される場合、発泡剤の割合は、例えば、一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤の重量に基づいて、0.1~3重量%である。
【0090】
特に好ましい熱硬化性一剤エポキシ樹脂接着剤は、
-一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤の総重量に基づいて、5~40重量%、10~35重量%、15~35重量%、好ましくは20~30重量%の液状エポキシ樹脂と、
-一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤の総重量に基づいて、5~30重量%、5~25重量%、5~20重量%、好ましくは10~15重量%の固体エポキシ樹脂と、
-一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤の総重量に基づいて、1~8重量%、特に2~6重量%の、エポキシ樹脂のための少なくとも1つの潜在性硬化剤、特にジシアンジアミドと、
-エポキシ樹脂接着剤100g当たり、2~13ミリモル、2.5~10.5ミリモル、2.5~8.5ミリモル、2.5~6ミリモル、好ましくは3~5ミリモルの、コハク酸及び無水フタル酸から選択される少なくとも1つのカルボン酸と、
-エポキシ樹脂接着剤の総重量に基づいて、5~30重量%、7~25重量%、10~20重量%、より好ましくは10~15重量%の、末端封鎖ポリウレタンポリマーD1及び液状ゴムD2からなる群から選択される少なくとも1つの靱性向上剤Dと、
-一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤の総重量に基づいて、好ましくは0.1~3重量%の物理的又は化学的発泡剤と、
-エポキシ樹脂組成物の総重量に基づいて、好ましくは5~40重量%、好ましくは20~40重量%の、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、及びヒュームドシリカからなる群から選択される充填剤Fと、
を含む。
【0091】
好ましい一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤が、エポキシ樹脂接着剤の総重量に基づいて、80重量%を超える、好ましくは90重量%を超える、特に95重量%を超える、特に好ましくは98重量%を超える、最も好ましくは99重量%を超える前述の成分からなることが、更に有利であり得る。
【0092】
一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤は、25℃で10000Pasを超える、特に25℃で15000Pasを超える粘度を有する。特に好ましくは、25℃での粘度は、25000Pasを超える値を有する。最も好ましくは、エポキシ樹脂接着剤は、25℃で固体である。
【0093】
一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤が60℃で5000Pasを超える、特に60℃で8000Pasを超える粘度を有することが、更に好ましい。
【0094】
ここで、粘度は、加熱プレートを備えるレオメーター(MCR 301、AntonPaar)によってオシログラフィ的に測定される(スロット1000μm、測定プレート直径:25mm(プレート/プレート)、5Hzでの変形0.01、温度:25℃)。60℃での粘度の測定の場合、対応して、測定温度は60℃である。
【0095】
熱硬化性エポキシ樹脂接着剤は、好ましくは、ヒドロキシアルキルアミド又はヒドロキシアルキル尿素Hを実質的に含まない。ヒドロキシアルキルアミドは、式(VI)の化学部位を含む。ヒドロキシアルキル尿素は、式(VII)の化学部位を含む。
【化11】
【0096】
これらの式において、m’は2~6の値、特に2の値を有し、R4’は、H、又は1~5の炭素原子を有するアルキル基である、或いは式Cm’2m’OHのヒドロキシアルキル基である。
【0097】
ここで、「実質的に含まない」という用語は、一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤におけるカルボン酸の総モル量に基づいて、カルボン酸のモル量の50%未満、特にカルボン酸のモル量の20%未満、好ましくはカルボン酸のモル量の10%未満、最も好ましくはカルボン酸のモル量の5%未満の割合を指す。
【0098】
本発明のエポキシ樹脂接着剤が前述のカルボン酸及びヒドロキシアルキルアミド又はヒドロキシアルキル尿素Hを含む場合、これらの成分は、温度が上昇すると互いに反応する場合があり、縮合反応によって、水を生成し、場合によっては、硬化したエポキシ樹脂接着剤の制御されない発泡を招く可能性がある。
【0099】
この種類の接着剤は、熱安定材料の結合に必要である。熱安定材料とは、少なくとも硬化時間の間、100~220℃、好ましくは120~200℃の硬化温度で寸法的に安定である材料を意味する。特に、これらは、ABS、ポリアミド、ポリフェニレンエーテルなどの金属及びプラスチック、SMCなどの複合材料、不飽和ポリエステルGRP、及び複合材料エポキシド又はアクリレート材料である。特に、熱安定プラスチックは、更に、ポリスルホン又はポリエーテルスルホンである。
【0100】
好ましい用途は、少なくとも1つの材料が金属である場合である。特に、金属は、陰極電着(CEC)によって被覆された金属である。
【0101】
特に好ましい使用は、特に自動車産業における車体構造において、同一又は異なる金属の接着結合であると考えられる。好ましい金属は、特に、自動車製造において典型的に対面する改版(version)において、特にスチール、特に電気亜鉛メッキ、溶融亜鉛メッキ、油面スチール、ボナ亜鉛被覆スチール、次いで、リン酸塩処理スチール、更にアルミニウムである。
【0102】
特に、この種類の接着剤は、10℃~80℃の温度、特に10℃~60℃の温度で、結合される材料と最初に接触され、その後、典型的には100℃~220℃、好ましくは120~200℃の温度で硬化される。
【0103】
従って、本発明の更なる態様は、熱安定性基材を接着的に結合する方法に関し、この方法は、
i)上記で詳述した熱硬化性エポキシ樹脂接着剤を熱安定性基材S1の、特に金属の表面に塗布する工程と、
ii)塗布された熱硬化性エポキシ樹脂接着剤を、更なる熱安定性基材S2の、特に金属の表面に接触させる工程と、
iii)熱硬化性エポキシ樹脂接着剤を、100~220℃、特に120~200℃、好ましくは160~190℃の温度に加熱する工程と、
を含み、この場合に、基材S2は、基材S1と同じ材料又は異なる材料からなる。
【0104】
熱安定性基材S1及びS2は、特に、既に前述した熱安定材料である。
【0105】
熱安定材料の結合のためのこの種類の方法は、硬化した接着的に結合されたアセンブリを含む物品をもたらす。この種類の物品は、好ましくは車両、或いは車両の中に又はその上に搭載するための構成部品である。
【0106】
更に、本発明の組成物は、自動車製造だけでなく、その他の用途分野にも適している。例えば、船舶、貨車、バス、又は鉄道車両などの輸送手段の構造物、或いは洗濯機などの消費財の構造物において関連した用途が特に注目される。
【0107】
本発明の組成物によって結合された材料は、典型的には120℃~-40℃、好ましくは100℃~-40℃、特に80℃~-40℃の温度で使用される。
【0108】
本発明の熱硬化性エポキシ樹脂接着剤の特に好ましい使用の一つは、車両構造における、熱硬化性の、特に発泡性の車両構造接着剤としてのその使用である。
【0109】
本発明の熱硬化性エポキシ樹脂接着剤の更に特に好ましい使用は、金属構造の接着的結合又は強化、或いは車両構造又はサンドイッチパネル構造でのキャビティの充填の強化におけるその使用である。車両構造でのキャビティの充填の補強における使用が、特に好ましい。
【0110】
熱硬化性エポキシ樹脂接着剤は、特に支持体に塗布することができる。この種類の支持体は、特に熱安定性基材S1として既に前述した種類の熱安定材料から作製される。この場合、熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、溶融状態で支持手段に塗布される。
【0111】
従って、前述した状態の熱硬化性エポキシ樹脂組成物を塗布した支持体を用いた金属構造体を強化する補強要素を容易に実現することができる。
【0112】
これらの補強要素は、補強される金属構造に固定される、又は補強される金属構造のキャビティに固定される。ここで、固定は、クリップ、フック、リベット、ねじ、溝、又は接着剤などの固定手段によって、或いはクランプを可能にするための構造の適切な配置によって行うことができる。従って、支持体は、この種類の固定手段を有することが好ましい。補強される構造体が、例えば、突出した縁/フック又はねじ/ねじ山などの固定手段に対応する対向片(counter-piece)を有することが特に好ましい。
【0113】
従って、本発明の更なる態様は、上記で詳述した熱硬化性エポキシ樹脂接着剤を100~220℃、好ましくは120~200℃の温度に加熱することによって得られる硬化したエポキシ樹脂接着剤に関する。
【0114】
特に、本発明の更なる態様は、既に記載した熱硬化性エポキシ樹脂接着剤から加熱することによって得られる構造発泡体に関する。
【0115】
構造発泡体の重要な特性は、第1に、加熱の際に発泡することであり、第2に、組成物の化学的硬化により、大きな力を伝達し、従って、構造体、典型的には金属構造体を強化することができることである。この種類の構造発泡体は、典型的には、金属構造体のキャビティに使用される。又、これらは、特に、前述の補強要素における成分として使用することができる。
【0116】
これらは、例えば、輸送手段の車体の支柱のキャビティに取り付けられることができる。支持体は、この補強要素を所望の位置で保持する。補強要素は、慣習的に車体構造、即ち車体の構造化の際に導入される。CEC浴を通過した後、車体はCECオーブンに入り、ここで、CECコーティング材料は、典型的には160~190℃の温度で焼成される。こうした温度で形成された蒸気は、発泡剤として発泡体の形成をもたらし、熱硬化性組成物は、ここで化学的に架橋により反応し、接着剤の硬化をもたらす。
【0117】
従って、これらの補強要素は、このようなキャビティの形状及び/又は狭い範囲のために、アセンブリ後に多くの場合、このようなキャビティの効率的な補強又は封止を実施する、或いはこのようなキャビティにおいて騒音の伝達を遮断することが困難である場所で頻繁に使用される。
【0118】
これらの構造発泡体により、軽量であるにもかかわらず高い強度及び封止された構造を得ることが可能である。更に、構造発泡体の充填及び封止機能のため、キャビティから内部を閉鎖することができ、従って、道路の騒音及び振動の顕著な減少を達成することが可能である。
【0119】
更に、本発明は、一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤、特に車両構造及びサンドイッチパネル構造における熱硬化性エポキシ樹脂接着剤の、170℃で20分間、及び/又は205℃で40分間、特に170℃で20分間、硬化したときのASTM D1002-10の引張剪断強度を増加させるための、記載した、置換又は非置換コハク酸及び置換又は非置換フタル酸から選択される少なくとも1つのカルボン酸の使用を包含する。これは、好ましくは、前述の熱硬化性エポキシ樹脂接着剤である。引張剪断強度の増加は、前述のカルボン酸のいずれも含まない一剤熱硬化性エポキシ樹脂接着剤との比較に関する。引張剪断強度は、好ましくは、実施例の項で使用される方法によって決定される。使用される少なくとも1つのカルボン酸の性質及び量は、好ましくは前述の通りであり、又、特に好ましいとされる上記で識別された性質及び量が好ましく使用される。
【0120】
本発明は、以下の本文において、実施例により更に説明されるが、いかなる意味においても本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0121】
実施例におけるそれぞれの特性の試験に用いた試験方法は以下の通りである。
【0122】
粘度
粘度は、加熱プレートを備えるレオメーター(MCR 301、AntonPaar)によってオシログラフィ的に測定される(スロット1000μm、測定プレート直径:25mm(プレート/プレート)、5Hzでの変形0.01、温度:20℃~70℃、加熱速度10℃/分)。
【0123】
引張剪断強度(LSS)
測定は、ASTM D1002-10の一般的なラインに従う。引張剪断強度は、以下の設定(mmでの寸法)を用いて測定した。
試験温度:23℃
結合面積:12.7mm×25.4mm
接着層の厚さ:0.8mm
硬化:170℃で20分、又は205℃で40分
試験速度:13mm/分
【0124】
凝集破断/接着破断(破断モード)
引張剪断強度から得られた破断モードの視覚的評価を、CFとAFに分けた。CF=凝集破断、AF=接着破断。
【0125】
試験例
エポキシ樹脂接着剤に使用されるベース配合物は、下記の配合物であった。
【0126】
【表1】
【0127】
それぞれの場合において、ベース配合物に、以下の表1に列挙された規定の割合のカルボン酸を加えた(ミリモルの酸/100gのエポキシ樹脂接着剤の量)。基準として、カルボン酸を加えずにベース配合物を試験した(基準1及び基準2)。更に、本発明ではないカルボン酸として、1-[2-(イソプロペニルカルボニルオキシ)エチル]コハク酸を使用した(基準3及び基準4)。接着試験に使用した基材は、油面スチール板であり、又はアルミニウムであった。
【0128】
【表2】
【0129】
引張剪断強度(LSS)、及び破断モードの測定結果を表1に同様に列挙する。これらの結果から、カルボン酸を含まない組成物は、引張剪断強度のレベルが著しく低いことが明らかである。又、両方の硬化温度でアルミニウム基材における接着破断モードでも同じく明らかである。
【0130】
更に、(2-ヒドロキシエチル)メタクリレート(HEMA)及びコハク酸のモノエステルとして、1-[2-(イソプロペニルカルボニルオキシ)エチル]コハク酸は、本発明ではないカルボン酸の負の例であることが判明している(基準3及び基準4)。これらの組成物は、同様に、引張剪断強度のレベルが著しく低い。
【0131】
全ての組成物、基準1~基準4、更に実施例1~実施例6は、25℃で固体であったため、25℃で25000Pasを超える粘度を有した。60℃での粘度は10000Pasであった。
【0132】
【表3】