(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】耐火部材、耐火構造および耐火構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
A62C 3/16 20060101AFI20230123BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20230123BHJP
F16L 5/04 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
A62C3/16 B
E04B1/94 F
E04B1/94 T
F16L5/04
(21)【出願番号】P 2019131546
(22)【出願日】2019-07-17
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000165996
【氏名又は名称】株式会社古河テクノマテリアル
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591000506
【氏名又は名称】早川ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】淳山 稜
(72)【発明者】
【氏名】小川 道雄
(72)【発明者】
【氏名】小川 周幸
(72)【発明者】
【氏名】灘友 滉
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-052746(JP,A)
【文献】実開平06-000463(JP,U)
【文献】特開2002-102373(JP,A)
【文献】特開2018-201764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
E04B 1/94
F16L 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
区画部に形成された貫通孔と、前記貫通孔に挿入された長尺体との間に配置される耐火部材であって、
略筒状の芯材と、
前記芯材の外面側であって、一方の端部側に配置される第1シール部材と、
前記芯材の外面側であって、他方の端部側に配置される熱膨張部材と、
を具備する本体部と、
略筒状の前記本体部の内側に挿入可能であり、前記長尺体が貫通する孔を有する第2シール部材と、
を具備し、
前記第2シール部材は、前記本体部に対して着脱可能であることを特徴とする耐火部材。
【請求項2】
前記本体部の前記一方の端部側において、前記第1シール部材及び前記芯材の外径が大きくなるフランジ部が形成され、
前記フランジ部において、前記芯材は、前記第1シール部材と重なり合い、平面視において、前記第1シール部材の周方向端部及び外周側へ前記芯材がはみ出さないことを特徴とする請求項1記載の耐火部材。
【請求項3】
前記本体部の内面には、前記本体部の中心方向に突出し、前記第2シール部材を支持する支持部が形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐火部材。
【請求項4】
前記支持部は、
前記本体部の前記一方の端部側から前記第2シール部材を挿入した際に機能する第1支持部と、
前記第1支持部よりも前記他方の端部側に形成され、前記本体部の前記他方の端部側から前記第2シール部材を挿入した際に機能する第2支持部と、
を有することを特徴とする請求項3記載の耐火部材。
【請求項5】
前記本体部の周方向の一部には割部を有し、前記割部を閉じて丸めることで全体として略筒状となり、
前記第2シール部材は、割部を有さない環状であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の耐火部材。
【請求項6】
前記本体部の前記他方の端部側には、金属シートが張り付けられて、前記金属シートが、前記本体部の外面側から内面側に折り返されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の耐火部材。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の耐火部材を用いた耐火構造であって、
区画部に形成された貫通孔と、
前記貫通孔に挿通される長尺体と、
前記長尺体と接続され、前記区画部を覆うように配置される構造物と、
を具備し、
前記貫通孔に対して、前記本体部が挿入されているとともに、前記第2シール部材が、前記長尺体と前記本体部の間に挿入されていることを特徴とする耐火構造。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の耐火部材を用いた耐火構造の施工方法であって、
区画部の一方の側から、前記区画部に形成された貫通孔に前記本体部を挿入する工程と、
前記区画部の一方の側を覆うように構造物を設置する工程と、
前記区画部の他方の側から、長尺体を前記構造物に接続する工程と、
前記区画部の他方の側から、前記第2シール部材を、前記長尺体と前記本体部との間に挿入する工程と、
を具備することを特徴とする耐火構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば床を貫通する配管等の貫通部に対して耐火性能を確保するための耐火部材等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建造物等において、区画部で区画された各部屋に配管等が敷設される場合がある。この場合、例えば一方の部屋で火災が発生すると、配管等が貫通する貫通孔を伝って、火災が建造物全体に広がり、甚大な被害をもたらすおそれがある。このため、熱膨張部材を用いて、火災時には貫通孔を熱膨張部材の膨張によって塞ぐ方法が採られている。
【0003】
例えば、配管の外周面と貫通孔の内周面との隙間にパテやモルタル等の不定形な充填材を使用する方法がある。しかし、パテやモルタル等は取り扱い性が悪いため、現場での施工作業性が悪く、施工に時間がかかるという問題がある。
【0004】
これに対し、熱膨張部材と目隠しを行うためのシール部材とを組み合わせて一体化した耐火部材が提案されている。例えば、熱膨張部材と保持部材(芯材)の一方の端部側に熱膨張部材を配置し、保持部材(芯材)の他方の端部側において、内周側と外周側にそれぞれシール部材を配置した耐火部材が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8(a)は、従来の耐火部材100を設置する工程を示す図である。耐火部材100は、芯材107、熱膨張部材113、内周側シール部材105及び外周側シール部材109等から構成される。
【0007】
芯材107は、金属線によって網状に形成される。熱膨張部材113、内周側シール部材105及び外周側シール部材109は、芯材107によって保持される。熱膨張部材113は、芯材107の下方に配置され、熱膨張部材113の上方において、内周側シール部材105及び外周側シール部材109が、芯材107によって保持される。また、熱膨張部材113の外周面には、金属フィルムが張り付けられる。
【0008】
芯材107は略筒状に形成される。芯材107の上端部は外方に向けてフランジ状に折り曲げられる。芯材107を挟み込むようにして、芯材107の内周側にはゴム製の内周側シール部材105が配置され、芯材107の外周側にはゴム製の外周側シール部材109が配置される。
【0009】
耐火部材100を床123に形成された貫通孔125に配置する際には、まず、貫通孔125に配管131を配置する。次に、
図8(b)に示すように、床123の上方から、配管131の外面と貫通孔125の内面との隙間に耐火部材100を挿入する。なお、耐火部材100に、軸方向に沿って割部を形成することで、割部を開いて配管131の側方から耐火部材100を配管131の外周に配置することができる。
【0010】
この際、芯材107のフランジ状の上端が、床123の上面と接触して耐火部材100の脱落が防止される。また、火災時には、熱膨張部材113が膨張して、貫通孔を塞ぎ、延焼を抑制することができる。また、通常時には、ゴム製の内周側シール部材105と外周側シール部材109の弾性変形によって、貫通孔125と配管131との隙間が確実に塞がれるため、目隠しを行うことができる。
【0011】
このように、熱膨張部材と内外のシール部材とが一体となった耐火部材を用いることで、耐火部材を貫通孔に挿入するだけで、配管の外周面と貫通孔の内周面の隙間を埋めて、耐火性能を得ることができる。したがって、不定形の充填材を配管等の外周面と貫通孔の内周面との間に充填する作業が不要となり、現場での施工作業が良好になるとともに、施工時間が短くなる。
【0012】
しかし、床を貫通する貫通孔に配管を設置する例として、例えば、バリアフリーユニットバスなど、貫通孔を覆うように床上に構造物が設置される場合がある。この場合、先に貫通孔に配管を配置してから、貫通孔の上方から耐火部材を挿入することができない。
【0013】
図9(a)は、耐火部材100が、床123の貫通孔125に設置され、上方に構造物127が設置された状態を示す図である。構造物127には、排水口などの配管接続部129が所定の位置に配置される。例えば、バリアフリーユニットバスなどの場合には、複数の配管接続部129が配置される。
【0014】
この場合には、まず、耐火部材100を床123の全ての貫通孔125に設置する。その後、構造物127の配管接続部129の位置を貫通孔125に合わせるようにして、構造物127を床123上に設置する。この際、内周側シール部材105の一部が弾性変形して、配管接続部129の外周に密着する。
【0015】
次に、
図9(b)に示すように、床123の下方から配管131を配管接続部129に接続する。以上により耐火構造を得ることができる。この際、内周側シール部材105の一部が弾性変形して、配管131の外周に密着するため、確実に隙間を埋めることができる。
【0016】
しかし、構造物127を配置した後、配管131を配管接続部129に接続する際に、内周側シール部材105によって、配管接続部129の一部が隠されてしまうため、配管接続部129の位置の把握が困難である。前述したように、隙間を確実に埋めるため、内周側シール部材105は弾性体であって、配管131や配管接続部129よりも内径が小さく設計されるため、下方からは配管接続部129を視認することが困難となる。
【0017】
また、配管131を無理に配管接続部129に接続しようとすると、内周側シール部材105の一部が、配管131と配管接続部129との間に挟み込まれる恐れがある。このように、配管131と配管接続部129との接続部に内周側シール部材105が挟み込まれてしまうと、配管131内を流れる流体の漏れの要因となる。
【0018】
また、配管131と配管接続部129との接続部には、通常、接着剤が塗布される。しかし、配管接続部129又は配管131へ塗布した接着剤が、内周側シール部材105に付着し、接続作業が困難なものとなる。
【0019】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、施工作業性が良好な耐火部材等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、区画部に形成された貫通孔と、前記貫通孔に挿入された長尺体との間に配置される耐火部材であって、略筒状の芯材と、前記芯材の外面側であって、一方の端部側に配置される第1シール部材と、前記芯材の外面側であって、他方の端部側に配置される熱膨張部材と、を具備する本体部と、略筒状の前記本体部の内側に挿入可能であり、前記長尺体が貫通する孔を有する第2シール部材と、を具備し、前記第2シール部材は、前記本体部に対して着脱可能であることを特徴とする耐火部材である。
【0021】
前記本体部の前記一方の端部側において、前記第1シール部材及び前記芯材の外径が大きくなるフランジ部が形成され、前記フランジ部において、前記芯材は、前記第1シール部材と重なり合い、平面視において、前記第1シール部材の周方向端部及び外周側へ前記芯材がはみ出さないことが望ましい。
【0022】
前記本体部の内面には、前記本体部の中心方向に突出し、前記第2シール部材を支持する支持部が形成されてもよい。
【0023】
この場合、前記支持部は、前記本体部の前記一方の端部側から前記第2シール部材を挿入した際に機能する第1支持部と、前記第1支持部よりも前記他方の端部側に形成され、前記本体部の前記他方の端部側から前記第2シール部材を挿入した際に機能する第2支持部と、を有してもよい。
【0024】
前記本体部の周方向の一部には割部を有し、前記割部を閉じて丸めることで全体として略筒状となり、前記第2シール部材は、割部を有さない環状であってもよい。
【0025】
前記本体部の前記他方の端部側には、金属シートが張り付けられて、前記金属シートが、前記本体部の外面側から内面側に折り返されていてもよい。
【0026】
第1の発明によれば、モルタルなどを使用することなく、防火構造を得ることができるため、作業性に優れる。特に、第2シール部材を、本体部に対して着脱可能とすることで、本体部を貫通孔に取り付けた状態において、例えば床下から配管接続部等を容易に視認することができる。また、第2シール部材を配管等の接続作業後に設置することができるため、配管等の接続作業が容易である。また、第2シール部材によって、配管と貫通孔との隙間を確実に埋めることができる。
【0027】
また、本体部の一方の端部側にフランジ部を形成することで、貫通孔に設置した際に、フランジが貫通孔の縁部に引っかかるため、貫通孔から本体部が脱落することを抑制することができる。また、フランジ部の平面視において、第1シール部材の外周側や周方向端部から芯材がはみ出さないようにすることで、金属線の先端を作業者が触れることを抑制し、安全に取り扱うことができる。
【0028】
また、本体部の内面に、本体部の中心方向に突出する支持部を形成することで、本体部から第2シール部材が脱落することを抑制することができる。
【0029】
この場合、支持部が、本体部の一方の端部側から第2シール部材を挿入した際に機能する第1支持部と、本体部の他方の端部側から第2シール部材を挿入した際に機能する第2支持部との両者を有すれば、本体部のいずれの方向から第2シール部材を挿入した際にも、本体部から第2シール部材が脱落することを抑制することができる。。
【0030】
また、本体部に割部を設けることで、取り扱いが容易である。また、第2シール部材が割部を有さない環状であれば、配管と貫通孔の隙間を確実に埋めることができる。
【0031】
また、本体部の他方の端部側に、金属シートを張り付け、金属シートを本体部の外面側から内面側に折り返すことで、取り扱い時に熱膨張部材を保護することができるとともに、熱膨張部材の膨張時にも、金属シートによって熱膨張部材の脱落を抑制することができる。
【0032】
第2の発明は、第1の発明に係る耐火部材を用いた耐火構造であって、区画部に形成された貫通孔と、前記貫通孔に挿通される長尺体と、前記長尺体と接続され、前記区画部を覆うように配置される構造物と、を具備し、前記貫通孔に対して、前記本体部が挿入されているとともに、前記第2シール部材が、前記長尺体と前記本体部の間に挿入されていることを特徴とする耐火構造である。
【0033】
第3の発明は、第1の発明に係る耐火部材を用いた耐火構造の施工方法であって、区画部の一方の側から、前記区画部に形成された貫通孔に前記本体部を挿入する工程と、前記区画部の一方の側を覆うように構造物を設置する工程と、前記区画部の他方の側から、長尺体を前記構造物に接続する工程と、前記区画部の他方の側から、前記第2シール部材を、前記長尺体と前記本体部との間に挿入する工程と、を具備することを特徴とする耐火構造の施工方法である。
【0034】
第2、第3の発明によれば、容易に耐火構造を施工することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、施工作業性が良好な耐火部材等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図4】耐火部材1を用いた耐火構造の施工工程を示す図。
【
図5】耐火部材1を用いた耐火構造の施工工程を示す図。
【
図6】耐火部材1を用いた耐火構造の施工工程を示す図。
【
図7】耐火部材1を用いた耐火構造の他の施工工程を示す図。
【
図8】従来の耐火部材100を用いた耐火構造の施工工程を示す図。
【
図9】従来の耐火部材100を用いた耐火構造の他の施工工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明にかかる耐火部材1を示す分解斜視図である。耐火部材1は、主に本体部3と第2シール部材5等から構成される。耐火部材1は、主に床等の区画部に形成された貫通孔に配置される部材であり、貫通孔と貫通孔に挿入される長尺体との間を塞ぐものである。
【0038】
本体部3は、主に、芯材7、第1シール部材9、金属シート11、熱膨張部材13等から構成され、全体が一体で構成される。本体部3の周方向の一部には、割部17を有する。本体部3は、割部17を閉じて丸めることで全体として略筒状となる。
【0039】
第2シール部材5は、略筒状の本体部3の内周側に挿入可能である。すなわち、第2シール部材5は、本体部3に対して着脱可能である。第2シール部材5は、中央に、長尺体が貫通する孔19を有し、割部を有さない環状の部材である。なお、第2シール部材5は、弾性部材であり、例えば難燃性のスポンジ等の発泡体を適用可能である。
【0040】
芯材7は、例えば金属線によって構成される網状部材や孔を有する板状部材からなり、略筒状に形成可能である。芯材7は、本体部3の形状保持と、熱膨張部材13及び第1シール部材9を保持するための部材である。また、本体部3を貫通孔に挿入する際には、芯材7の剛性によって、本体部3が過剰に変形することなく、挿入作業性を向上させることができる。
【0041】
筒状とした際の芯材7の外面側であって、軸方向の一方の端部側(図中上方)には、第1シール部材9が配置される。同様に、芯材7の外面側であって、芯材7の他方の端部側(図中下方)には熱膨張部材13が配置される。第1シール部材9と熱膨張部材13は、芯材7によって保持される。
【0042】
第1シール部材9は、弾性部材であり、例えば難燃性のスポンジ等の発泡体を適用可能である。本体部3の一方の端部側(図中上方であって第1シール部材9側)には、フランジ部15が形成される。フランジ部15は、第1シール部材9及び芯材7が外方に折り曲げられて形成される。すなわち、フランジ部15は、フランジ部15以外の部位と比較して、第1シール部材9及び芯材7の外径が大きくなる部材である。
【0043】
図2は、本体部3の平面図である。フランジ部15において、第1シール部材9の外径は、芯材7の外径よりも大きい。また、フランジ部15において、第1シール部材9の周方向長さは、芯材7の周方向長さよりも長い。したがって、フランジ部15において、芯材7は、第1シール部材9と重なり合い、平面視において、第1シール部材9の周方向端部(割部17側)及び外周側へ芯材7がはみ出すことがない。
【0044】
このようにすることで、本体部3の取り扱い時に、芯材7を構成する金属部材の先端が他の部材に引っかかることがない。また、作業者が、作業中に誤って金属部材の端部に触れることを抑制することができるため安全である。
【0045】
図3は、
図2のA-A線断面図である。前述したように、第1シール部材9の下方には熱膨張部材13が配置される。また、熱膨張部材13を覆うように、本体部3の他方の端部側(図中下方であって熱膨張部材13側)には、金属シート11が張り付けられる。金属シート11は、熱膨張部材13を保護するとともに、熱膨張部材13の熱膨張時に、膨張方向を規制して、熱膨張部材13を支持する役割を有する。また、金属シート11が熱伝導部材として機能し、火災時には、金属シート11によって熱膨張部材13の全体に均一に熱を伝導させて膨張させることができる。
【0046】
金属シート11は、本体部3の下端において外面側から内面側に折り返される。この際、本体部3の外面側において、金属シート11は、熱膨張部材13の全体を覆うように配置される。また、本体部3の内面側において、金属シート11は、熱膨張部材13の一部を覆うように配置される。すなわち、金属シート11は、内面側よりも外面側の方が、折り返し長さが長い(被覆面積が大きい)。なお、芯材7の下端部は、金属シート11によって覆われて、露出しない。
【0047】
なお、金属シート11の張り付け方は、前述したようなものでなくてもよい。また、金属シート11は、必ずしも必須ではなく、不要な場合には熱膨張部材13を露出させてもよい。
【0048】
前述したように、芯材7は、第1シール部材9及び熱膨張部材13の内周側に配置される。このようにすることで、貫通孔との接触部が芯材7ではなく第1シール部材9となるため、貫通孔の内面に本体部3を確実に密着させることができる。また、熱膨張部材13が膨張する際には、芯材7を透過して中心方向へ熱膨張部材13が膨張するため、芯材7を、膨張後の熱膨張部材13の支持部材として機能させることができる。
【0049】
また、芯材7を構成する金属部材(例えば金属線)の一部が、本体部3の中心方向に折り曲げられて支持部21が形成される。すなわち、支持部21は、本体部3の内面において、本体部3の中心方向に突出する。支持部21は、本体部3の一端から略同一の位置において、周方向に所定の間隔で複数配置される。支持部21は、略筒状にした本体部3へ第2シール部材5を挿入した際に、本体部3から第2シール部材5が脱落することを防止して、第2シール部材5を支持する機能を有する。
【0050】
本実施形態では、支持部21は、本体部3の一方の端部側(フランジ部15側)に配置される第1支持部21aと、第1支持部21aよりも他端側(熱膨張部材13側)に配置される第2支持部21bとを有する。第1支持部21aは、本体部3のフランジ部15側から第2シール部材5を挿入した際に、第2シール部材5を支持する。また、第2支持部21bは、本体部3の下端側から第2シール部材5を挿入した際に、第2シール部材5を支持する。なお、いずれか一方の支持部のみでもよい。
【0051】
次に、耐火部材1を用いた耐火構造の施工方法について説明する。
図4~
図6は、耐火構造の施工工程を示す図である。ここで、以下の説明では、区画部が床23である例を示し、貫通孔25に挿通される長尺体が配管31である例について説明する。なお、本発明において、床とは、階下から見た場合において天井となるものも含む。
【0052】
図4(a)に示すように、床23には貫通孔25が形成される。まず、床23に形成された貫通孔25に、床上から熱膨張部材13を下方にして本体部3を挿入する(図中矢印B)。この際、本体部3を略筒状に丸めることで、貫通孔25の内面等に本体部3を密着させることができる。また、フランジ部15は、貫通孔25よりも外径が大きく、床23の上面に接触するため、貫通孔25から本体部3が下方に脱落することがない。
【0053】
ここで、
図2に示すように、本体部3の周方向の両端部(割部17)においては、芯材7が設けられない。このため、割部17で本体部3の周方向端部を突き合せた際に、第1シール部材9の弾性変形によって、本体部3の径を多少調整することができる。例えば、同じ呼び径の貫通孔25であっても、加工方法によって、実際の内径が多少異なる。このため、芯材7を周方向の端部まで形成せずに、第1シール部材9の弾性変形を利用することで、貫通孔25の径ばらつきに対応することができる。
【0054】
次に、床23の上に構造物27を設置する(図中矢印C)。本実施形態では、構造物27は、例えばバリアフリーユニットバスである。この場合には、床23には複数の貫通孔25が形成され、構造物27の複数の配管接続部29の位置が、それぞれの貫通孔25の位置に合うように、構造物27が床23上に配置される。すなわち、床23の上方は、構造物27によって覆われる。
【0055】
次に、
図5に示すように、貫通孔25の下方に配管31を準備する。この際、配管31を第2シール部材5の孔19に挿通する(図中矢印D)。孔19の内径は配管31の外径よりもやや小さいため、第2シール部材5の弾性変形によって、第2シール部材5が配管31に密着する。なお、配管31の接続作業時には、第2シール部材5は、接続作業の妨げとならないように、配管31の基部側(図中下方)へ退避させておく。
【0056】
次に、配管接続部29に接着剤を塗布し、
図6(a)に示すように、貫通孔25の下方から、配管31を構造物27に接続する。第2シール部材5を退避させておくことで、貫通孔25の下方から配管接続部29を容易に視認することができる。このため、配管31と配管接続部29との接続が容易である。
【0057】
次に、
図6(b)に示すように、貫通孔25の下方から、配管31に沿って第2シール部材5を移動させて、第2シール部材5を配管31と本体部3との間に挿入する(図中矢印E)。この際、第2シール部材5の外径は、本体部3の内径よりもやや大きいため、第2シール部材5の弾性変形によって、第2シール部材5が本体部3の内面に密着する。
【0058】
また、前述したように、本体部3の内面には、第2支持部21bが配置される。このため、第2シール部材5を第2支持部21bの上方まで、本体部3に押し込むことで、第2シール部材5が本体部3から脱落することを防止することができる。なお、第2支持部21bが周方向に複数個所に配置されるため、第2シール部材5が斜めに挿入されることを抑制することができる。
【0059】
以上により、耐火部材1を用いた耐火構造30を得ることができる。すなわち、配管31が貫通孔25に挿通されるとともに、床23を覆うように配置される構造物27が配管31と接続され、貫通孔25には本体部3が挿入されているとともに、第2シール部材5が配管31と本体部3の間に挿入された耐火構造30を得ることができる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態にかかる耐火部材1によれば、モルタルなどを使用することなく、容易に耐火構造30を得ることができる。また、床23の上方に構造物27が設置されて、床23が覆われる場合であっても、容易に配管31を構造物27へ接続することができるとともに、確実に貫通孔25と配管31との間の隙間を埋めることができる。
【0061】
また、フランジ部15において、芯材7よりも第1シール部材9のサイズが大きいため、芯材7が第1シール部材9の外周側や周方向端部に突出することがない。このため、安全であり、取り扱いが容易である。また、貫通孔25に取り付けた際に、芯材7が床23と接触することがないため、床23に傷がつくことがなく、第1シール部材9を床23に密着させることができる。
【0062】
また、本体部3に割部17を設けることで、取り付け作業が容易であるとともに、割部17には芯材7が配置されないため、第1シール部材9の弾性変形によって、多少の貫通孔25のサイズばらつきにも対応可能である。一方、第2シール部材5は割部を有さない環状であるため、配管31の外周に密着させて確実に隙間を埋めることができる。
【0063】
また、本体部3の内面側に第2支持部21bを形成することで、第2シール部材5を本体部3に挿入した際に、第2シール部材5が本体部3から脱落することを防止すすることができる。
【0064】
また、金属シート11によって、熱膨張部材13を保護することができる。また、金属シート11は熱伝導性が高いため、火災時には、熱膨張部材13の全体に短時間で熱を伝えることができる。また、熱膨張部材13が膨張すると、内面側の金属シート11が貫通孔25の中心方向に向けて変形して受け部となり、膨張後の熱膨張部材13の脱落を抑制することができる。
【0065】
なお、本発明は、上述した実施形態には限定されない。例えば、区画部として床23の例を示したが、壁などに対しても耐火部材1は適用可能である。また、貫通孔25に挿通される長尺体として、配管31の例を示したが、電線であってもよい。すなわち、構造物27としては、バリアフリーユニットバスに限定されず、区画部を覆うものであれば、本発明の効果を効果的に得ることができる。この場合には、まず、区画部の一方の側から、区画部に形成された貫通孔25に本体部3を挿入し、区画部の一方の側を覆うように構造物27を設置し、区画部の他方の側から、長尺体を構造物27に接続した後に、第2シール部材5を、長尺体と本体部3との間に挿入すればよい。
【0066】
また、構造物27が配置されない場合には、従来と同様の方法で耐火部材1を使用することができる。例えば、
図7(a)に示すように、床23の貫通孔25に配管31が挿通されている場合には、床23の上方から本体部3を貫通孔25に挿入し、その後、
図7(b)に示すように、第2シール部材5を床23の上方から挿入(図中矢印F)してもよい。この場合には、第1支持部21aと接触するまで第2シール部材5を本体部3に挿入すればよい。なお。この場合には、第2シール部材5にも割部を形成しておくことで、作業が容易となる。
【0067】
また、第1シール部材9を相対的に硬くして、第2シール部材5を相対的に軟らかくしてもよい。第1シール部材9を硬めにすることで、貫通孔25に設置した際に本体部3が滑りにくい。一方、第2シール部材5が軟らかめであれば、配管31と本体部3に確実に密着させることができるとともに、変形させながら本体部3へ挿入する際の抵抗を小さくすることができる。また、配管31の中心軸と貫通孔25の中心とが多少ずれて、位置によって配管31と本体部3の隙間が一定でない場合も、第2シール部材5の変形によって確実に隙間を塞ぐことができる。
【0068】
また、本体部3に割部を形成する場合には、本体部3を長尺で作製しておき、貫通孔のサイズに応じて切断して使用することもできる。また、本体部3に割部を形成せずに環状としてもよい。
【0069】
また、本体部3は、全体として一体化して形成されるのではなく、周方向に複数に分割されてもよい。例えば、
図10(a)、
図10(b)に示す本体部3aのように、周方向に2分割されていてもよい。なお、この場合でも、第2シール部材5は、周方向に連続した環状としてもよい。
【0070】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0071】
1………耐火部材
3………本体部
5………第2シール部材
7………芯材
9………第1シール部材
11………金属シート
13………熱膨張部材
15………フランジ部
15a………筒状部
17………割部
19………孔
21………支持部
21a………第1支持部
21b………第2支持部
23………床
25………貫通孔
27………構造物
29………配管接続部
30………耐火構造
31………配管
100………耐火部材
105………内周側シール部材
107………芯材
109………外周側シール部材
113………熱膨張部材
123………床
125………貫通孔
127………構造物
129………配管接続部
131………配管