(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】フィードブロック、多層押出成形品の製造方法、及び多層押出成形品の製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 48/495 20190101AFI20230124BHJP
B29C 48/86 20190101ALI20230124BHJP
B29C 48/21 20190101ALI20230124BHJP
【FI】
B29C48/495
B29C48/86
B29C48/21
(21)【出願番号】P 2018235824
(22)【出願日】2018-12-17
【審査請求日】2021-09-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑 勇輝
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-080933(JP,A)
【文献】特表2016-511177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融樹脂材料の複数の流路を合流させ、前記溶融樹脂材料を、複数の層を有する平坦な流出物として流出させるフィードブロックであって、
前記複数の流路を規定する複数の流路部と、
前記複数の流路部の下流端において前記複数の流路部と連結し、前記流路を合流させ一つの合流流路を構成する合流部と、
前記流路部の近傍に配置される複数のヒータと
を含み、
前記複数の流路部のそれぞれは、その下流において、上流よりも前記流路の幅が広い、前記合流部と接続される拡幅部を含み、
前記流路部として、第1外側流路部と、内側流路部と、第2外側流路部とを含み、
前記第1外側流路部は、その前記拡幅部として第1外側拡幅部を含み、
前記内側流路部は、その前記拡幅部として内側拡幅部を含み、
前記第2外側流路部は、その前記拡幅部として第2外側拡幅部を含み、
前記第1外側拡幅部及び前記第2外側拡幅部は、前記内側拡幅部よりも外側に配置され、
前記第1外側拡幅部の下流
端に、前記第1外側拡幅部の幅方向に並ぶ複数の加熱箇所が規定され、
前記第2外側拡幅部の下流
端に、前記第2外側拡幅部の幅方向に並ぶ複数の加熱箇所が規定され、
前記複数のヒータとして、前記第1外側拡幅部を加熱する複数の第1ヒータと、前記第2外側拡幅部を加熱する複数の第2ヒータとを含み、
前記複数の第1ヒータは、前記第1外側拡幅部の前記複数の加熱箇所のそれぞれに配置され、
前記複数の第2ヒータは、前記第2外側拡幅部の前記複数の加熱箇所のそれぞれに配置されている、
フィードブロック。
【請求項2】
前記第1外側拡幅部及び前記第2外側拡幅部のそれぞれにおいて、前記複数の加熱箇所が3つ以上規定されている、
請求項1に記載のフィードブロック。
【請求項3】
多層押出成形品の製造方法であって、
溶融樹脂材料を、複数の押出機から請求項1又は2に記載のフィードブロックの、前記複数の流路部へ供給する工程(A)、
前記溶融樹脂材料を前記フィードブロックに通し、複数の層を有する平坦な流出物とする工程(B)、
前記流出物を単層型Tダイに供給し、前記単層型Tダイから押し出す工程(C)を含み、
前記工程(B)は、
前記拡幅部の幅方向に並ぶ前記複数の加熱箇所を、前記複数のヒータにより独立して加熱する工程(B1)を含む、多層押出成形品の製造方法。
【請求項4】
製造された多層押出成形品の、少なくとも一つの層の厚みを、前記多層押出成形品の幅方向に並ぶ複数箇所において計測する工程(D)と、
前記工程(D)で計測された少なくとも一つの層の厚みに基づき、前記工程(B1)における前記拡幅部の幅方向に並ぶ前記複数の加熱箇所の加熱条件を調整する工程(E)とを更に含む、
請求項3に記載の多層押出成形品の製造方法。
【請求項5】
3層押出成形品の製造方法であって、
前記工程(A)では、前記溶融樹脂材料を、前記複数の押出機から請求項1又は2に記載のフィードブロックの、前記第1外側流路部と、前記内側流路部と、前記第2外側流路部とへ供給し、
前記工程(B)では、前記第1外側拡幅部及び前記第2外側拡幅部における、幅方向に並ぶ前記複数の加熱箇所を独立して加熱する、
請求項3又は4に記載の多層押出成形品の製造方法。
【請求項6】
前記第1外側流路部を流れる第1溶融樹脂材料の前記第1外側流路部の下流端における流速V1と、前記第2外側流路部を流れる第2溶融樹脂材料の前記第2外側流路部の下流端における流速V2とが、4cm/s以下である、請求項5に記載の多層押出成形品の製造方法。
【請求項7】
前記第1外側流路部を流れる第1溶融樹脂材料の前記第1外側流路部の下流端における流速V1と前記第2外側流路部を流れる第2溶融樹脂材料の前記第2外側流路部の下流端における流速V2との平均流速V
ave(cm/s)、及び、前記内側流路部を流れる第3溶融樹脂材料の前記内側流路部の下流端における流速V
in(cm/s)が、下記式(1)を満たす、請求項5又は6に記載の多層押出成形品の製造方法。
0.3<V
ave/V
in<6.5 (1)
【請求項8】
請求項1又は2に記載のフィードブロックと、
前記フィードブロックの下流端に接続される単層型Tダイと、
前記単層型Tダイから押し出される多層押出成形品の少なくとも一つの層の厚みを、前記多層押出成形品の幅方向に並ぶ複数箇所において計測する計測部と、
前記計測部が計測した、前記少なくとも一つの層の厚みに基づいて、前記フィードブロックの前記複数のヒータの温度を制御する温度制御部とを含む、多層押出成形品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィードブロック、多層押出成形品の製造方法、及び多層押出成形品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多層構造の樹脂押出成形品を製造する装置として、フィードブロック方式の装置が知られている。フィードブロック方式とは、押出機より複数種の溶融樹脂をフィードブロックに供給し、フィードブロック内で溶融樹脂を積層させてから、単層型Tダイに送り込んで拡幅して、多層押出成形品を得る装置の方式である。フィードブロック方式におけるフィードブロックとしては、例えば、フィードブロックが有する各樹脂の流路の合流部にベイン部材を設けて、ベイン部材の回動により流路形状を変更できるようにしたフィードブロックが知られている(特許文献1)。また、合流部付近にヒータを設けたフィードブロックも知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6094282号公報
【文献】特開平11-309770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マルチマニホールド方式とは、複数種の溶融樹脂をダイのマルチマニホールドに供給して拡幅し、ダイのリップの直前で積層させて、多層押出成形品を得る装置の方式である。マルチマニホールド方式の装置は、構造が複雑であるために、調整、分解及び組立に時間を要する。そのため、樹脂の種類を簡便に変更できない。
一方、フィードブロック方式では、マルチマニホールド方式と比較して構造が単純である。そのため、樹脂の種類をマルチマニホールド方式と比較して簡便に変更することができる。
【0005】
さて、多層押出成形品における各層の膜厚を均一にすることを目的として、特許文献1記載のフィードブロックは、前記のとおりベイン部材により流路形状を変更できるように構成されている。しかし、特許文献1のフィードブロックでは、粘度が異なる樹脂により製造する場合、異なる構成の多層押出成形品を製造する場合など、製造条件を切り替える場合には、通常生産ラインを停止して、フィードブロックの調整をしなければならない。
特許文献2記載のフィードブロックには、ヒータが設けられているが、かかるヒータは、合流部付近を全幅に亘って加熱するものであり、幅方向における複数箇所を独立して加熱するものではないため、多層押出成形品の幅方向における厚みのバラツキを低減するためにヒータの温度調整をすることが容易ではない。
【0006】
したがって、簡便に樹脂の種類を変更でき、多層押出成形品の幅方向における膜厚のバラツキを簡便に低減できる、フィードブロック;簡便に樹脂の種類を変更でき、多層押出成形品の幅方向における膜厚のバラツキを簡便に低減できる、多層押出成形品の製造方法;及び簡便に樹脂の種類を変更でき、多層押出成形品の幅方向における膜厚のバラツキを簡便に低減できる、多層押出成形品製造装置;が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するべく、鋭意検討した。その結果、本発明者は、フィードブロックに、複数のヒータを特定の配置で設けることにより、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
【0008】
[1] 溶融樹脂材料の複数の流路を合流させ、前記溶融樹脂材料を、複数の層を有する平坦な流出物として流出させるフィードブロックであって、
前記複数の流路を規定する複数の流路部と、
前記複数の流路部の下流端において前記複数の流路部と連結し、前記流路を合流させ一つの合流流路を構成する合流部と、
前記流路部の近傍に配置される複数のヒータと
を含み、
前記複数の流路部のそれぞれは、その下流において、上流よりも前記流路の幅が広い、前記合流部と接続される拡幅部を含み、
前記拡幅部の一以上のそれぞれにおいては、その幅方向に並ぶ複数の加熱箇所が規定され、
前記複数のヒータは、前記複数の加熱箇所のそれぞれに配置される、フィードブロック。
[2] 前記流路部として、第1外側流路部と、内側流路部と、第2外側流路部とを含み、
前記第1外側流路部は、その前記拡幅部として第1外側拡幅部を含み、
前記内側流路部は、その前記拡幅部として内側拡幅部を含み、
前記第2外側流路部は、その前記拡幅部として第2外側拡幅部を含み、
前記第1外側拡幅部及び前記第2外側拡幅部は、前記内側拡幅部よりも外側に配置され、
前記複数のヒータとして、前記第1外側拡幅部を加熱する複数の第1ヒータと、前記第2外側拡幅部を加熱する複数の第2ヒータとを含み、
前記複数の第1ヒータは、前記第1外側拡幅部の前記複数の加熱箇所のそれぞれに配置され、
前記複数の第2ヒータは、前記第2外側拡幅部の前記複数の加熱箇所のそれぞれに配置されている、
[1]記載のフィードブロック。
[3] 外側に配置された前記拡幅部のそれぞれにおいて、前記複数の加熱箇所が3つ以上規定されている、
[1]又は[2]に記載のフィードブロック。
[4] 多層押出成形品の製造方法であって、
溶融樹脂材料を、複数の押出機から[1]~[3]のいずれか1項に記載のフィードブロックの、前記複数の流路部へ供給する工程(A)、
前記溶融樹脂材料を前記フィードブロックに通し、複数の層を有する平坦な流出物とする工程(B)、
前記流出物を単層型Tダイに供給し、前記単層型Tダイから押し出す工程(C)を含み、
前記工程(B)は、
前記拡幅部の幅方向に並ぶ前記複数の加熱箇所を、前記複数のヒータにより独立して加熱する工程(B1)を含む、多層押出成形品の製造方法。
[5] 製造された多層押出成形品の、少なくとも一つの層の厚みを、前記多層押出成形品の幅方向に並ぶ複数箇所において計測する工程(D)と、
前記工程(D)で計測された少なくとも一つの層の厚みに基づき、前記工程(B1)における前記拡幅部の幅方向に並ぶ前記複数の加熱箇所の加熱条件を調整する工程(E)とを更に含む、
[4]に記載の多層押出成形品の製造方法。
[6] 3層押出成形品の製造方法であって、
前記工程(A)では、前記溶融樹脂材料を、前記複数の押出機から請求項2に記載のフィードブロックの、前記第1外側流路部と、前記内側流路部と、前記第2外側流路部とへ供給し、
前記工程(B)では、前記第1外側拡幅部及び前記第2外側拡幅部における、幅方向に並ぶ前記複数の加熱箇所を独立して加熱する、
[4]又は[5]に記載の多層押出成形品の製造方法。
[7] 前記第1外側流路部を流れる第1溶融樹脂材料の前記第1外側流路部の下流端における流速V1と、前記第2外側流路部を流れる第2溶融樹脂材料の前記第2外側流路部の下流端における流速V2とが、4cm/s以下である、[6]に記載の多層押出成形品の製造方法。
[8] 前記流速V1と前記流速V2との平均流速Vave(cm/s)、及び、前記内側流路部を流れる第3溶融樹脂材料の前記内側流路部の下流端における流速Vin(cm/s)が、下記式(1)を満たす、[6]又は[7]に記載の多層押出成形品の製造方法。
0.3<Vave/Vin<6.5 (1)
[9] [1]~[3]のいずれか1項に記載のフィードブロックと、
前記フィードブロックの下流端に接続される単層型Tダイと、
前記単層型Tダイから押し出される多層押出成形品の少なくとも一つの層の厚みを、前記多層押出成形品の幅方向に並ぶ複数箇所において計測する計測部と、
前記計測部が計測した、前記少なくとも一つの層の厚みに基づいて、前記フィードブロックの前記複数のヒータの温度を制御する温度制御部とを含む、多層押出成形品の製造装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡便に樹脂の種類を変更でき、多層押出成形品の幅方向における膜厚のバラツキを簡便に低減できる、フィードブロック;簡便に樹脂の種類を変更でき、多層押出成形品の幅方向における膜厚のバラツキを簡便に低減できる、多層押出成形品の製造方法;及び、簡便に樹脂の種類を変更でき、多層押出成形品の幅方向における膜厚のバラツキを簡便に低減できる、多層押出成形品製造装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るフィードブロックを概略的に示す、斜め方向からの透視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るフィードブロックを概略的に示す、縦断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係るフィードブロックを概略的に示す、側面透視図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る多層押出成形品の製造装置を模式的に説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0012】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。フィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
【0013】
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±3°、±2°又は±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0014】
フィルムにおいて幅方向とは、通常フィルムの搬送方向と直交する方向をいう。
【0015】
[1.フィードブロックの概要]
本発明の一実施形態に係るフィードブロックは、溶融樹脂材料の複数の流路を合流させ、溶融樹脂材料を、複数の層を有する平坦な流出物として流出させるものである。
【0016】
[1.1.溶融樹脂材料]
フィードブロックに供給される樹脂材料の種類は、特に限定されない。樹脂材料の例としては、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、脂環式構造を有する重合体を含む樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。これらの中でも、脂環式構造を有する重合体を含む樹脂が好ましい。脂環式構造を有する重合体を含む樹脂は、通常流動性が良好なので、膜厚のバラツキの小さい厚み精度の良好なフィルムを製造できる。また、脂環式構造を有する重合体を含む樹脂は、通常吸湿性が極めて低いので、寸法安定性に優れたフィルムを製造できる。
【0017】
脂環式構造を有する重合体の例としては、ノルボルネン構造を含有する単量体の開環重合体若しくは開環共重合体又はそれらの水素添加物;ノルボルネン構造を含有する単量体の付加重合体若しくは付加共重合体又はそれらの水素添加物;単環の環状オレフィン単量体の重合体又はその水素添加物;環状共役ジエン単量体の重合体又はその水素添加物;及び、ビニル脂環式炭化水素単量体の重合体若しくは共重合体又はそれらの水素添加物(例、芳香環を含む不飽和結合が水素化された水素添加物)が挙げられる。
【0018】
これらの中でも、良好な製膜性、優れた機械的強度、優れた耐熱性、及び優れた透明性の観点から、ノルボルネン構造を含有する単量体の開環重合体の水素添加物又は開環共重合体の水素添加物;ノルボルネン構造を含有する単量体の付加重合体の水素添加物又は付加共重合体の水素添加物が好ましい。
【0019】
樹脂材料は、結晶性であってもよいし、非晶性であってもよい。
【0020】
樹脂材料は、重合体の他に、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の、各種の添加剤を含んでいてもよい。
【0021】
樹脂材料が含みうる紫外線吸収剤の例としては、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤等の、有機紫外線吸収剤が挙げられる。
【0022】
トリアジン系紫外線吸収剤の具体例としては、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(へキシル)オキシ]-フェノール、及び2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジンが挙げられる。
【0023】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としては、2,2’-メチレンビス(4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、及び2,4-ジ-tert-ブチル-6-(5-クロロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノールが挙げられる。
【0024】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例としては、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、及び2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノンが挙げられる。
【0025】
これらの中でも、特に2,2’-メチレンビス(4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール)が好ましい。
【0026】
樹脂材料に紫外線吸収剤を含有させる方法としては、特に限定はなく、例えば、紫外線吸収剤をあらかじめ樹脂材料中に配合しておく方法;紫外線吸収剤を高濃度に含有するマスターバッチを用いる方法;紫外線吸収剤を押出機に直接供給し、紫外線吸収剤と重合体とを溶融混練する方法が挙げられる。
【0027】
[1.2.実施形態]
以下に本発明の一実施形態に係るフィードブロックを、
図1~
図3を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るフィードブロックを概略的に示す、斜め方向からの透視図である。
図2は、本発明の一実施形態に係るフィードブロックを概略的に示す、縦断面図である。
図2は、
図1における方向D1に垂直な面で、フィードブロックを切断した際の断面図を示している。
図3は、本発明の一実施形態に係るフィードブロックを概略的に示す、側面透視図である。
【0028】
フィードブロック100は、二種の、溶融樹脂材料A及び溶融樹脂材料Bを、三層を有する平坦な流出物として流出させるための構造を有する。
【0029】
フィードブロック100には、溶融樹脂材料Aを供給する配管1001と、溶融樹脂材料Bを供給する配管1002が接続されている。配管1001には、フィードブロック100の内部に備えられた配管101が接続されている。配管101の一端は、フィードブロック100の側面に開口しており、図示しないフランジを介して配管1001が接続されている。配管101の他端は、二方向に分岐する分岐部102が接続されている。分岐部102には、第1外側流路部110aと第2外側流路部110bとが接続されている。したがって、配管101に供給された溶融樹脂材料Aは、分岐部102において第1外側流路部110aと第2外側流路部110bとに分配されて、第1外側流路部110aと第2外側流路部110bとを流れるようになっている。第1外側流路部110aを流れる溶融樹脂材料A(第1溶融樹脂材料)と、第2外側流路部110bとを流れる溶融樹脂材料A(第2溶融樹脂材料)が互いに同じ流量となるように、第1外側流路部110aと第2外側流路部110bとは対称な形に構成されている。
【0030】
第1外側流路部110aは、分岐部102と接続される、管状である管状部111aと、管状部111aと接続される第1外側拡幅部112aとから構成されている。第1外側拡幅部112aは、フィードブロック100の底面と平行な断面が、
図1における方向D1と平行な長手方向を有する略矩形状である。管状部111aの直径よりも、第1外側拡幅部112aの長手方向における寸法は大きい。したがって、第1外側流路部110aは、下流の第1外側拡幅部112aにおいて、上流の管状部111aよりも流路の幅が広くなっている。管状部111aは、第1外側拡幅部112aの、長手方向における略中央部において第1外側拡幅部112aと接続している。
【0031】
第2外側流路部110bは、分岐部102と接続される、管状である管状部111bと、管状部111bと接続される第2外側拡幅部112bとから構成されている。第2外側拡幅部112bは、フィードブロック100の底面と平行な断面が、
図1における方向D1と平行な長手方向を有する略矩形状である。管状部111bの直径よりも、第2外側拡幅部112bの長手方向における寸法は大きい。したがって、第2外側流路部110bは、下流の第2外側拡幅部112bにおいて、上流の管状部111bよりも流路の幅が広くなっている。管状部111bは、第2外側拡幅部112bの、長手方向における略中央部において第2外側拡幅部112bと接続している。
【0032】
配管1002には、フィードブロック100の内部に備えられた内側流路部120が接続されている。内側流路部120の一端は、フィードブロック100の側面に開口しており、図示しないフランジを介して配管1002が接続されている。したがって、配管1002から供給された溶融樹脂材料Bは、内側流路部120を流れるようになっている。
【0033】
内側流路部120は、管状である管状部121と、管状部121と接続される内側拡幅部122とから構成されている。内側拡幅部122は、フィードブロック100の底面と平行な断面が、
図1における方向D1と平行な長手方向を有する略矩形状である。管状部121の直径よりも、内側拡幅部122の長手方向における寸法は大きい。したがって、内側流路部120は、下流の内側拡幅部122において、上流の管状部121よりも流路の幅が広くなっている。管状部121は、内側拡幅部122の、長手方向における略中央部において内側拡幅部122と接続している。
【0034】
第1外側流路部110aの下流端113a(即ち、第1外側拡幅部112aの下流端)、第2外側流路部110bの下流端113b(即ち、第2外側拡幅部112bの下流端)、及び内側流路部120の下流端123(即ち、内側拡幅部122の下流端)には、第1外側流路部110aと、内側流路部120と、第2外側流路部110bとを合流させる、合流部130が連結されている。合流部130は、フィードブロック100の底面と平行な断面が、
図1における方向D1と平行である長手方向を有する略矩形状である。
【0035】
第1外側流路部110aの下流端113a、第2外側流路部110bの下流端113b、及び内側流路部120の下流端123はそれぞれ、方向D1と平行な長手方向を有する略矩形状の断面を有している。
【0036】
下流端113aは、下流端123の短手方向(方向D1と垂直な方向)の一方の側に隣接するように配置され、下流端113bは、他方の側に隣接するように配置されている。したがって、第1外側拡幅部112a及び第2外側拡幅部112bは、内側拡幅部122よりも、方向D1と垂直な方向において外側になるように配置されている。
【0037】
合流部130は、その下流端にフィードブロック100の底面において開口する開口部131を備える。開口部131は、方向D1と平行である長手方向を有する略矩形状である。開口部131は、後述する単層型Tダイの、樹脂受け入れ口と接続される。
【0038】
別の実施形態では、開口部は単層型Tダイの樹脂受け入れ口の形状に応じた他の形状となっている。例えば、開口部は、略円形状、略楕円形状であってもよい。この場合の合流部は、通常、断面が略矩形状から開口部の形状に次第に変化するように形成される。
【0039】
第1外側流路部110aの近傍、詳細には、第1外側拡幅部112aの下流端113aに隣接して、5つのヒータ140aが配置され、第1外側拡幅部112aの幅方向(長手方向)に並ぶ5つの加熱箇所h1を加熱するようになっている。すなわち、5つのヒータ140aは、5つの加熱箇所h1に対応して配置されている。5つの加熱箇所h1は、詳細には第1外側拡幅部112aの下流端113aの近傍、好ましくは下流端113aに規定されている。5つの加熱箇所h1は、互いに等間隔に規定されている。また、第2外側流路部110bの近傍、詳細には、第2外側拡幅部112bの下流端113bに隣接して、5つのヒータ140bが配置され、第2外側拡幅部112bの幅方向(長手方向)に並ぶ5つの加熱箇所h2を加熱するようになっている。すなわち、5つのヒータ140bは、5つの加熱箇所h2に対応して配置されている。5つの加熱箇所h2は、詳細には第2外側拡幅部112bの下流端113bの近傍、好ましくは下流端113bに規定されている。5つの加熱箇所h2は、互いに等間隔に規定されている。
【0040】
本実施形態では、ヒータ140aは、加熱箇所h1に接しておらず加熱箇所h1と一定の間隔を空けて配置されており、またヒータ140bは加熱箇所h2に接しておらず加熱箇所h2と一定の間隔を空けて配置されている。ヒータ140aと加熱箇所h1との間隔及びヒータ140bと加熱箇所h2との間隔は、ヒータ140a及びヒータ140bの加熱能力、フィードブロック100を形成する材料の熱伝導率等の特性により、適宜定められる。
【0041】
別の実施形態では、ヒータは、加熱箇所h1又は加熱箇所h2に接していてもよい。
また別の実施形態では、ヒータは、内側拡幅部122の幅方向に並ぶ複数の加熱箇所に配置されていてもよい。
また別の実施形態では、第1外側拡幅部112a、第2外側拡幅部112b、及び内側拡幅部122から選ばれる一以上の拡幅部に対して、それぞれ3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、又は10つ以上の加熱箇所が規定されていてもよい。
また別の実施形態では、拡幅部の幅方向に並ぶ複数の加熱箇所は、互いに等間隔に規定されていなくてもよく、例えば、拡幅部の幅方向における中心線に対して対称に規定されていてもよい。
【0042】
5つのヒータ140aには、配線141aがそれぞれ接続され、また5つのヒータ140bには、配線141bがそれぞれ接続され、すべてのヒータ140a、140bが互いに独立して、加熱箇所h1、h2を加熱できるようになっている。
【0043】
フィードブロック100を用いて製造された、多層押出フィルムの各層(第1外側流路部110aに対応する樹脂材料Aの層、内側流路部120に対応する樹脂材料Bの層、第2外側流路部110bに対応する樹脂材料Aの層)における、幅方向の厚み分布を測定し、その結果に基づいて、ヒータ140a及びヒータ140bの温度調整を行うことにより、各流路部の下流端を流れる、合流部130において合流する前の各溶融樹脂材料の幅方向における温度分布を変化させることができる。これにより各溶融樹脂材料の幅方向における粘度分布を変化させうる。例えば、多層押出フィルムにおけるある層の厚みが幅方向において不均一である場合、厚みが薄い部分に対応する加熱箇所を加熱するヒータの温度調整を行うことにより、加熱箇所近傍を流れる溶融樹脂材料の粘度を下げる。または、厚みが厚い部分に対応する加熱箇所を加熱するヒータの温度調整を行うことにより、加熱箇所近傍を流れる溶融樹脂材料の粘度を上昇させる。このように、各流路部の下流端を流れる溶融樹脂材料の幅方向における粘度分布を変化させることにより、多層押出フィルムの各層の厚みのバラツキを簡便に低減できる。
【0044】
多層押出フィルムの各層における、幅方向の厚み分布は、後述するように、分光膜厚計などの装置によりインラインで自動に測定してもよく、多層押出フィルムを切断し、断面を光学顕微鏡などで観察することなどにより測定してもよい。
【0045】
別の実施形態では、フィードブロックは、二種の材料を、二層を有する平坦な流出物として流出させる構成を有するものであってもよく、三種の材料を、三層を有する平坦な流出物として流出させる構成を有するものであってもよい。
【0046】
別の実施形態では、フィードブロックは、合流部に、特許第6094282号公報に示されるようなベイン部材を備えていてもよい。
【0047】
[2.多層押出成形品の製造装置]
本発明の一実施形態に係る多層押出成形品の製造装置は、フィードブロックと、フィードブロックの下流端に接続される単層型Tダイと、単層型Tダイから押し出される多層押出成形品の少なくとも一つの層の厚みを、前記多層押出成形品の幅方向に並ぶ複数箇所において計測する計測部と、計測部が計測した、少なくとも一つの層の厚みに基づいて、フィードブロックの前記複数のヒータの温度を制御する温度制御部とを含む。
【0048】
以下に、本発明の一実施形態に係る多層押出成形品の製造装置を、
図1~3に、更に
図4を用いて説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る多層押出成形品の製造装置を模式的に説明する概略図である。本実施形態の製造装置1000は、樹脂材料Aからなる第1スキン層、樹脂材料Bからなるコア層、及び樹脂材料Aからなる第2スキン層をこの順で備える、二種三層構造を有する押出フィルムを製造する装置である。
【0049】
製造装置1000は、溶融樹脂材料Aをフィードブロック100に供給する第1の供給系1100と、溶融樹脂材料Bをフィードブロック100に供給する第2の供給系1200とを備える。第1の供給系1100は、ペレット状の樹脂材料Aが投入されるホッパ1101、ホッパ1101に投入された樹脂材料Aを加熱し、溶融混練する押出機1102、押出機1102より送り出された溶融樹脂材料Aを定量し供給するギヤポンプ1103、及び、溶融しない異物などを除去する濾過器1104を備えている。第2の供給系1200も、第1の供給系1100と同様に、ペレット状の樹脂材料Bが投入されるホッパ1201、押出機1202、ギヤポンプ1203、及び、濾過器1204を備えている。
第1の供給系1100から供給される溶融樹脂材料Aは、フィードブロック100に接続された配管1001を流れ、フィードブロック100の配管101に供給される。
第2の供給系1200から供給される溶融樹脂材料Bは、フィードブロック100に接続された配管1002を流れ、フィードブロック100の管状部121に供給される。
【0050】
フィードブロック100の下流端には、単層型Tダイ1300が接続されている。単層型Tダイ1300の形状としては、特に限定はなく、例えば、ストレートマニホールド形状、フィッシュテール形状、及びコートハンガー形状が挙げられる。中でも、膜厚のバラツキが低減された多層押出フィルムを製造する観点から、単層型Tダイ1300は、コートハンガー形状であることが好ましい。単層型Tダイ1300は、リップ部1301を備える。リップ部1301は、多層押出フィルムにダイラインが発生することを抑制する観点から、炭化タングステンなどの硬質材料で形成されていることが好ましく、更にクロムメッキなどの処理により表面が平滑であることが好ましい。
【0051】
単層型Tダイ1300のリップ部1301から押し出された3層のフィルム状の流出物F1は、まずキャストロール1401、次いで冷却ロール1402、次いで冷却ロール1403により冷却されて、フィルムF2となる。フィルムF2は、テンションロール1404、テンションロール1405、テンションロール1406、駆動ロール1407a、1407bにより搬送され、巻き取りロール1408に巻き取られ、長尺のフィルムを巻き回したフィルムロールが製造される。
【0052】
テンションロール1406と駆動ロール1407a、1407bとの間には、フィルムF2が有する層(コア層、第1スキン層、第2スキン層のうちの少なくとも一層)の厚みを、フィルムF2の幅方向に並ぶ複数箇所においてインラインで計測する計測部1500が設けられている。計測部1500で計測されたフィルムの層の厚み値は、配線1501を通じて温度制御部1600に送られる。計測部1500としては、例えば分光膜厚計を含む装置を用いうる。
【0053】
温度制御部1600は、フィルムの層の厚み値に基づいて、ヒータ140a及びヒータ140bの温度を設定し、配線141a及び配線141bを通じて、ヒータ140a及びヒータ140bの温度を制御する。温度制御部1600としては、パーソナルコンピュータなどの、汎用装置を用いうる。
【0054】
製造装置1000は、延伸装置(例、一軸延伸装装置、二軸延伸装置、斜め延伸装置など)、裁断装置などの装置を更に備えていてもよい。
【0055】
製造装置1000は、フィードブロック100を備えることにより、多層押出フィルムの幅方向における膜厚のバラツキを簡便に低減できる。
【0056】
[3.多層押出成形品の製造方法]
本実施形態の多層押出成形品の製造方法は、前記一実施形態に係るフィードブロック100を用いて行われる。
本実施形態の製造方法は、下記工程(A)、工程(B)、及び工程(C)を含み、任意に、更に工程(D)及び工程(E)を含む。
【0057】
[3.1.工程(A)]
工程(A)では、溶融樹脂材料を、複数の押出機からフィードブロック100の複数の流路部へ供給する。より詳細には、溶融樹脂材料Aを、押出機からフィードブロック100の第1外側流路部110a及び第2外側流路部110bへ供給し、溶融樹脂材料Bを、押出機からフィードブロック100の内側流路部120へ供給する。
【0058】
[3.2.工程(B)]
工程(B)は、工程(A)の後に行われる。工程(B)では、溶融樹脂材料を、フィードブロック100に通し、複数の層を有する平坦な流出物とする。より詳細には、溶融樹脂材料A及び溶融樹脂材料Bをフィードブロック100に通し、樹脂材料Aからなる層、樹脂材料Bからなる層、及び樹脂材料Aからなる層をこの順で有する平坦な流出物とする。
【0059】
工程(B)は、フィードブロック100の拡幅部の幅方向に並ぶ複数の加熱箇所を、複数のヒータにより独立して加熱する工程(B1)を含む。より詳細には、工程(B1)では、第1外側拡幅部112aの幅方向に並ぶ複数の加熱箇所h1を、複数のヒータ140aにより独立して加熱し、第2外側拡幅部112bの幅方向に並ぶ複数の加熱箇所h2を、複数のヒータ140bにより独立して加熱する。
【0060】
工程(B)では、第1外側流路部110aを流れる第1溶融樹脂材料(本実施形態では、溶融樹脂材料A)の第1外側流路部110aの下流端113aにおける流速V1と、第2外側流路部110bを流れる第2溶融樹脂材料(本実施形態では、溶融樹脂材料A)の第2外側流路部110bの下流端113bにおける流速V2とが、0cm/sより大きく4cm/s以下であることが好ましい。流速V1は、より好ましくは3cm/s以下であり、更に好ましくは2cm/s以下であり、流速V2は、より好ましくは3cm/s以下であり、更に好ましくは2cm/s以下である。流速V1及び流速V2を、前記範囲内に収めることにより、効果的に多層押出フィルムの幅方向における膜厚のバラツキを簡便に低減できる。
【0061】
流速V1及びV2は、それぞれ実測してもよいし、それぞれ、フィードブロック100に供給される第1溶融樹脂材料(本実施形態では溶融樹脂材料A)の流量と下流端113aの断面積とから、及び第2溶融樹脂材料(本実施形態では溶融樹脂材料A)の流量と下流端113bの断面積とから、計算により算出してもよい。
流速V1及びV2は、フィードブロック100に供給される溶融樹脂材料Aの流量を調整することによって調整できる。
【0062】
流速V1と流速V2との平均流速Vave(cm/s)、及び、内側流路部120を流れる第3溶融樹脂材料(本実施形態では、溶融樹脂材料B)の内側流路部120の下流端123における流速Vin(cm/s)が、下記式(1)を満たすことが好ましい。平均流速Vave及び流速Vinが、下記式(1)を満たすことにより、膜厚の調整がより容易となり、効果的に多層押出フィルムの幅方向における膜厚のバラツキを簡便に低減できる。
【0063】
0.3<Vave/Vin<6.5 (1)
【0064】
Vave/Vinの値は、好ましくは0.3より大きく、より好ましくは0.4以上、更に好ましくは0.5以上であり、好ましくは6.5より小さく、より好ましくは6以下、更に好ましくは5以下である。
【0065】
ここで、流速Vinは、実測してもよいし、フィードブロック100に供給される第3溶融樹脂材料(本実施形態では溶融樹脂材料B)の流量と下流端123の断面積とから、計算により算出してもよい。
【0066】
[3.3.工程(C)]
工程(C)は、工程(B)の後に行われる。工程(C)では、フィードブロック100から流出した流出物を、単層型Tダイに供給し、単層型Tダイから押し出す。単層型Tダイとしては、前記製造装置1000が備える単層型Tダイ1300と同様のものを用いうる。
【0067】
[3.4.工程(D)]
工程(D)では、製造された多層押出成形品の少なくとも一つの層の厚みを、多層押出成形品の幅方向に並ぶ複数箇所において計測する。より詳細には、製造された多層押出フィルムの、樹脂材料Aからなる層(第1外側流路部110aに対応する第1スキン層及び第2外側流路部110bに対応する第2スキン層)の厚みを、多層押出フィルムの幅方向に並ぶ複数箇所において計測する。計測手段は特に限定されない。厚みは、分光膜厚計などの装置によりインラインで自動に測定してもよく、多層押出フィルムを切断し、断面を光学顕微鏡などで観察することなどにより測定してもよい。
【0068】
[3.5.工程(E)]
工程(E)は、工程(D)の後に行われる。工程(E)では、工程(D)で計測された少なくとも一つの層の厚みに基づき、工程(B1)における拡幅部の幅方向に並ぶ前記複数の加熱箇所の加熱条件を調整する。より詳細には、工程(D)で計測された、樹脂材料Aからなる層(第1外側流路部110aに対応する第1スキン層及び第2外側流路部110bに対応する第2スキン層)の厚みに基づき、工程(B1)における、第1外側拡幅部112aの幅方向に並ぶ複数の加熱箇所h1及び第2外側拡幅部112bの幅方向に並ぶ複数の加熱箇所h2の加熱条件を調整する。加熱箇所h1の加熱条件は、ヒータ140aの温度を制御することにより調整できる。加熱箇所h2の加熱条件は、ヒータ140bの温度を制御することにより調整できる。
【0069】
工程(E)の後、工程(D)に戻り、工程(E)及び工程(D)が繰り返されてもよい。
【0070】
[3.6.任意の工程]
本実施形態の製造方法は、前記工程(A)~(D)以外に、任意の工程を備えていてもよい。任意の工程の例としては、多層押出フィルム(多層押出成形品)を、延伸(例、一軸延伸、二軸延伸、斜め延伸)する工程、及び多層押出フィルムを裁断する工程が挙げられる。
【0071】
[4.多層押出成形品の好適な用途]
本発明のフィードブロックを用いて製造された多層押出成形品は、幅方向の厚みのバラツキが低減されているので、例えば、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム、透明導電フィルムなどの光学フィルムの素材として好適に使用できる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0073】
以下の説明において、量を表す「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0074】
[実施例1~実施例6]
(樹脂材料Aの準備)
樹脂材料Aとして、熱可塑性樹脂である、環状オレフィン重合体を含むシクロオレフィン樹脂(日本ゼオン社製「ゼオノア」、ガラス転移温度123℃)のペレットを用意した。
【0075】
(樹脂材料Bの準備)
添加剤として、紫外線吸収剤(ADEKA社製「LA-31RG」)を用意した。前記のシクロオレフィン樹脂90重量部及び紫外線吸収剤10部を二軸押出機にて溶融混練し、押出したストランドをペレタイザーで成形して、熱可塑性樹脂である、ペレット状の樹脂材料Bを得た。
【0076】
(多層押出フィルムの製造)
多層押出フィルムとしての多層光学フィルムを、フィードブロック100を備える、
図4に示す製造装置1000を用いて製造した。
第1の供給系1100により、溶融樹脂材料Aをフィードブロック100の第1外側流路部110a及び第2外側流路部110bに供給した。また第2の供給系1200により、溶融樹脂材料Bをフィードブロック100の内側流路部120に供給した。
ここで、溶融樹脂材料A及び溶融樹脂材料Bのフィードブロック100への供給量は、流速V1、流速V2、及び流速V
inが、表1に示す値となるように調整した。
また、第1外側流路部110aの近傍に配置された5つのヒータ140a及び第2外側流路部110bの近傍に配置された5つのヒータ140bの温度を、表1に示すとおりに調製した。ここで、5つのヒータ140aに対して、
図1において手前にある順にa1からa5までの番号を付し、ヒータa1~a5としている。また、5つのヒータ140bに対して、
図1において手前にある順にb1からb5までの番号を付し、ヒータb1~b5としている。
【0077】
次いで、フィードブロック100から単層型Tダイ1300に、溶融樹脂材料A及び溶融樹脂材料Bの層を有する流出物を供給した。これにより、単層型Tダイ1300には、溶融樹脂材料Bの層と、溶融樹脂材料Bの層の両面上及び幅方向の両側に配された溶融樹脂材料Aの層が充填された。
【0078】
次いで、単層型Tダイ1300のリップ部1301から、溶融樹脂材料Aと溶融樹脂材料Bとをフィルム状に押し出し、キャストロール1401、冷却ロール1402及び冷却ロール1403で冷却して、光学フィルムとしてのフィルムF2を得た。押出条件は、ダイリップの間隙を0.5mm、単層型Tダイの幅を1700mm、フィードブロック100に供給される溶融樹脂材料A及び溶融樹脂材料Bの温度をそれぞれ260℃、キャストロール1401の温度を100℃、冷却ロール1402及び冷却ロール1403の温度を90℃とした。
【0079】
フィルムF2を、幅方向に切断し、切断面を光学顕微鏡(オリンパス社製「BX51」)により観察し、各層の界面を観察することにより第1スキン層と第2スキン層との総膜厚(スキン層総膜厚)を計測した。計測点は幅方向に100mm間隔とした。計測されたスキン層総膜厚の中で、最大の膜厚と最小の膜厚との差を、すべての計測点におけるスキン層総膜厚の平均で割り、100を乗ずることにより、膜厚バラツキ度(%)を求めた。膜厚バラツキ度(%)が小さいほど、溶融樹脂材料Aにより形成された、第1スキン層及び第2スキン層の幅方向における膜厚のバラツキが低減されている。結果を表1に示す。
【0080】
[比較例1]
特許第6094282号公報記載の合流装置のように、ベイン部材を備えるが、ヒータを流路部近傍に備えていないフィードブロックC1を準備した。フィードブロック100の代わりにフィードブロックC1を用いた以外は製造装置1000と同じ構成の製造装置を用いて、樹脂材料A及び樹脂材料Bから光学フィルムを製造した。製造に際しては、第1スキン層及び第2スキン層の幅方向における膜厚のバラツキがなるべく小さくなるように、フィードブロックC1のベイン部材を調整した。また、溶融樹脂材料Aが流れる2つの流路部の下流端における流速の平均Vaveと、溶融樹脂材料Bが流れる流路部の下流端における流速Vinを、表1に示すように調整した。
製造した光学フィルムについて、実施例同様にして膜厚バラツキ度(%)を求めた。結果を表1に示す。
【0081】
[比較例2]
ヒータ140a及びヒータ140bを備えていない以外は、フィードブロック100と同様の構成を有するフィードブロックC2を準備した。フィードブロック100の代わりにフィードブロックC2を用いた以外は製造装置1000と同じ構成の製造装置を用いて、樹脂材料A及び樹脂材料Bから光学フィルムを製造した。製造に際しては、溶融樹脂材料Aが流れる2つの流路部の下流端における流速の平均Vaveと、溶融樹脂材料Bが流れる流路部の下流端における流速Vinを、表1に示すように調整した。
製造した光学フィルムについて、実施例同様にして膜厚バラツキ度(%)を求めた。結果を表1に示す。
【0082】
[表の説明]
下記表において、各記号は下記の意味を表す。
V1:第1外側流路部の下流端における溶融樹脂材料Aの流速
V2:第2外側流路部の下流端における溶融樹脂材料Aの流速
Vave:流速V1と流速V2との平均流速
Vin:内側流路部の下流端における溶融樹脂材料Bの流速
【0083】
【0084】
以上の結果によれば、実施例1~6において製造された光学フィルムの幅方向における膜厚バラツキ度は、比較例2において製造された光学フィルムの幅方向における膜厚バラツキ度より小さく、フィードブロック100によれば、幅方向における膜厚のバラツキを低減できることが分かる。
【0085】
また、実施例1~6において製造された光学フィルムの幅方向における膜厚バラツキ度は、比較例1と同等以上であり、フィードブロック100によれば、ベイン部材を有する複雑な構造のフィードブロックC1と同等以上に、幅方向における膜厚のバラツキを低減できることが分かる。したがって、フィードブロック100によれば、簡便に幅方向における幅方向のバラツキを低減できることが分かる。
【0086】
以上の結果は、本発明のフィードブロックが、簡便に樹脂の種類を変更でき、多層押出成形品の幅方向における膜厚のバラツキを簡便に低減できることを示す。
【符号の説明】
【0087】
100 :フィードブロック
101 :配管
102 :分岐部
110a :第1外側流路部
110b :第2外側流路部
111a :管状部
111b :管状部
112a :第1外側拡幅部
112b :第2外側拡幅部
113a :下流端
113b :下流端
120 :内側流路部
121 :管状部
122 :内側拡幅部
123 :下流端
130 :合流部
131 :開口部
140a :ヒータ(第1ヒータ)
140b :ヒータ(第2ヒータ)
141a :配線
141b :配線
1000 :製造装置
1100 :第1の供給系
1200 :第2の供給系
1300 :単層型Tダイ
1500 :計測部
1501 :配線
1600 :温度制御部
h1 :加熱箇所
h2 :加熱箇所