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  • 特許-シリコンウェーハの欠陥検査方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】シリコンウェーハの欠陥検査方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20230124BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
H01L21/66 N
G01N21/956 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019236531
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021106207
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2021-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】和田 直之
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-042945(JP,A)
【文献】特開2017-174933(JP,A)
【文献】特開平08-201305(JP,A)
【文献】特開平09-172047(JP,A)
【文献】特開2003-313089(JP,A)
【文献】特開2008-014848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01N 21/956
H01L 21/02
C30B 29/06
H01L 21/20-21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からシリコンウェーハの表面に光を照射する、光照射工程と、
光検出器により、前記表面で反射した光を検出する、光検出工程と、を含み、
前記シリコンウェーハを、前記光源及び前記光検出器に対して相対的に回転させながら、前記表面の欠陥を検査する、シリコンウェーハの欠陥検査方法であって、
前記シリコンウェーハは、主面の法線方向が結晶軸に対して傾斜するオフアングルを有し、
前記結晶軸に直交し、互いに直交する方向をx軸方向及びy軸方向とするとき、x軸に対する前記オフアングルの傾斜角度の大きさと、y軸に対する前記オフアングルの傾斜角度の大きさとが異なり、
前記シリコンウェーハの側面視において、前記表面に対して前記光検出器の検出光軸がなす角度をθとするとき、
相対的に回転する前記シリコンウェーハの周上の検査対象位置に応じて、前記角度θを調整することを特徴とする、シリコンウェーハの欠陥検査方法。
【請求項2】
相対的に回転する前記シリコンウェーハの周上の検査対象位置に応じて、前記角度θを、所定の基準角度からの大小を切り替えて調整する、請求項1に記載のシリコンウェーハの欠陥検査方法。
【請求項3】
前記角度θは、前記シリコンウェーハを、前記光源及び前記光検出器に対して相対的に90°回転させる毎に、前記所定の基準角度からの大小を切り替える、請求項2に記載のシリコンウェーハの欠陥検査方法。
【請求項4】
前記角度θを、前記所定の基準角度から大きくする際には、前記所定の基準角度よりも1~3°大きくなるように切り替え、且つ、
前記角度θを、前記所定の基準角度から小さくする際には、前記所定の基準角度よりも1~3°小さくなるように切り替える、請求項2又は3に記載のシリコンウェーハの欠陥検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハの欠陥検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンウェーハに発生するスリップ転位を検査することが行われている。スリップ転位は、転位の移動によって顕在するシリコン原子レベルの浅い段差であり、結晶方位に従った方向に長さを有することが特徴である。
【0003】
例えば、特許文献1では、レーザ光を用いたシリコンウェーハの欠陥検査方法が開示されている。この方法は、レーザ光源から、シリコンウェーハの表面にレーザ光を照射し、反射光をフォトダイオードで検出することにより、シリコンウェーハの表面に形成された欠陥を検出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-174933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の手法では、スリップ転位が主に発生するシリコンウェーハの外周部においてレーザ光の散乱が強くなる場合があるなど、十分な検出感度が得られないおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、シリコンウェーハの表面に発生したスリップ転位を高感度で検出することのできる、シリコンウェーハの欠陥検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)光源からシリコンウェーハの表面に光を照射する、光照射工程と、
光検出器により、前記表面で反射した光を検出する、光検出工程と、を含み、
前記シリコンウェーハを、前記光源及び前記光検出器に対して相対的に回転させながら、前記表面の欠陥を検査する、シリコンウェーハの欠陥検査方法であって、
前記シリコンウェーハは、主面の法線方向が結晶軸に対して傾斜するオフアングルを有し、
前記結晶軸に直交し、互いに直交する方向をx軸方向及びy軸方向とするとき、x軸に対する前記オフアングルの傾斜角度の大きさと、y軸に対する前記オフアングルの傾斜角度の大きさとが異なり、
前記シリコンウェーハの側面視において、前記表面に対して前記光検出器の検出光軸がなす角度をθとするとき、
相対的に回転する前記シリコンウェーハの周上の検査対象位置に応じて、前記角度θを調整することを特徴とする、シリコンウェーハの欠陥検査方法。
【0008】
(2)上記(1)において、相対的に回転する前記シリコンウェーハの周上の検査対象位置に応じて、前記角度θを、所定の基準角度からの大小を切り替えて調整することが好ましい。
【0009】
(3)上記(2)において、前記角度θは、前記シリコンウェーハを、前記光源及び前記光検出器に対して相対的に90°回転させる毎に、前記所定の基準角度からの大小を切り替えることが好ましい。
【0010】
(4)上記(2)又は(3)において、前記角度θを、前記所定の基準角度から大きくする際には、前記所定の基準角度よりも1~3°大きくなるように切り替え、且つ、
前記角度θを、前記所定の基準角度から小さくする際には、前記所定の基準角度よりも1~3°小さくなるように切り替えることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シリコンウェーハの表面に発生したスリップ転位を高感度で検出することのできる、シリコンウェーハの欠陥検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】シリコンインゴットの一部を切断面と共に示す斜視図である。
図2】スリップについて模式的に示す、シリコンウェーハの平面図である。
図3】本発明の一実施形態にかかるシリコンウェーハの欠陥検査方法に用いることのできる光学系の一例を示す側面図である。
図4】本発明の一実施形態の検査方法について説明するための、シリコンウェーハの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0014】
本発明の一実施形態にかかるシリコンウェーハの欠陥検査方法について説明する。
まず、検査の対象となるシリコンウェーハについて説明する。
【0015】
図1は、シリコンインゴットの一部を切断面と共に示す斜視図である。例えば得られるシリコンウェーハの光学的特性やシュリンク作用等に鑑みて、シリコンインゴットからシリコンウェーハWを切り出す際に、意図的に、切り出したシリコンウェーハWの主面の法線方向がシリコンインゴットの結晶軸(成長軸)に対して傾斜するように、オフアングルを付与する場合がある。
【0016】
図1に示す例では、シリコンインゴットの結晶軸の結晶方位は、<100>であり、結晶軸に直交し、互いに直交する方向をx軸方向及びy軸方向(本例ではノッチが形成された位置をy軸の負の方向とする)とするとき、本例では、x軸に対するオフアングルの傾斜角度の大きさと、y軸に対するオフアングルの傾斜角度の大きさと異なっている(符号が異なり絶対値が等しい場合は、大きさが同じであるものとしている)。なお、x軸に対するオフアングルの傾斜角度及びy軸に対するオフアングルの傾斜角度のいずれか一方のみについては0°とすることもできる。特には限定されないが、x軸に対するオフアングルの傾斜角度を-1~1°とすることができ、y軸に対するオフアングルの傾斜角度を-1~1°とすることができる。一例としては、x軸に対するオフアングルの傾斜角度を0.5°とし、y軸に対するオフアングルの傾斜角度を0.2°とすることができる。なお、結晶軸の結晶方位が<110>であるシリコンインゴットを用いることもできる。
【0017】
オフアングルを有するシリコンウェーハWにおいては、(図1にシリコンインゴットの状態で示すように)周上45°置きに異なる結晶方位が出現する。図示例では、ノッチの位置において結晶方位は<011>であり、周上に<011>と<001>とが45°置きに交互に出現している。なお、図1において、結晶方位は、正の方向と負の方向とで同じ表記としている。
【0018】
図2は、スリップについて模式的に示す、シリコンウェーハの平面図である。図2では、スリップを模式的に示すに当たってスリップの長さを誇張している。上記のようなシリコンウェーハWでは、縦方向のスリップが相対的に多く生じる領域と、横方向のスリップが相対的に多く生じる領域とが、周上で90°置きに交互に形成される。
【0019】
このように、まず、本実施形態の方法に供するシリコンウェーハWは、主面の法線方向が結晶軸に対して傾斜するオフアングルを有している。また、結晶軸に直交し、互いに直交する方向をx軸方向及びy軸方向とするとき、x軸に対するオフアングルの傾斜角度の大きさと、y軸に対するオフアングルの傾斜角度の大きさとが異なる。
なお、シリコンウェーハの導電型は、例えばp型とすることができるが、n型とすることもできる。シリコンウェーハの径は、特には限定されないが、例えば200mm、300mm、450mmとすることができる。
【0020】
次に、本実施形態の方法に供する光学系について説明する。
図3は、本発明の一実施形態にかかるシリコンウェーハの欠陥検査方法に用いることのできる光学系の一例を示す側面図である。図3は、シリコンウェーハWを側面から見た図を示している。
【0021】
図3に示すように、この光学系は、欠陥検査の対象物であるシリコンウェーハWと、シリコンウェーハWの表面に光を照射する光源1と、該表面で反射した光を検出する光検出器2と、を備えている。
【0022】
光源1は、シリコンウェーハWの表面の欠陥の検査に用いられる任意の既知のものとすることができる。光源1は、疑似平行光を照射することのできるスポット型ライトガイドとすることが好ましいが、他にも例えば蛍光灯等の集光灯とすることもでき、また、レーザ光源とすることもできる。
【0023】
光検出器2は、シリコンウェーハWの表面から反射された光を検出することにより、シリコンウェーハWの表面の欠陥を検出することのできる任意の既知のものとすることができる。光検出器2は、高分解能レンズ(特には限定されないが、例えばテンセントリックレンズであり、例えば倍率を0.5~1.5倍とし、焦点深度を50~80mmとすることができる)を有する高解像度エリアカメラ(特には限定されないが、例えば、解像度を1.0~3.0MPixelとし、フレームレートを50~200fpsとすることができる)とすることが好ましい。
【0024】
図4は、本発明の一実施形態の検査方法について説明するための、シリコンウェーハの平面図である。図4に示すように、本実施形態では、シリコンウェーハWを、光源1及び光検出器2に対して相対的に回転させながら(本例では、光源1及び光検出器2の周上の位置を固定し、シリコンウェーハWを回転させている)、該シリコンウェーハWの表面の欠陥を検査する。図3に示すように、本例では、スリップの発生し易いシリコンウェーハWの外周部(例えば、シリコンウェーハWの外縁から径方向内側に6mmまでの領域とすることができる)の上方に光源1及び光検出器2が位置している。図4においては、検査する領域を丸い破線で示している。ここで、図3に示すように、シリコンウェーハWの側面視において、シリコンウェーハWの表面に対して光検出器2の検出光軸がなす角度をθとし、また、シリコンウェーハWの側面視において、シリコンウェーハWの表面に対して入射光の光軸がなす角度φとする。
【0025】
本実施形態の検査方法では、相対的に回転するシリコンウェーハWの周上の検査対象位置に応じて角度θを調整する。
以下、本実施形態のシリコンウェーハの欠陥検査方法の作用効果について説明する。
【0026】
本実施形態のシリコンウェーハWの欠陥検査方法によれば、まず、検査に供するシリコンウェーハWとして、主面の法線方向が結晶軸に対して傾斜するオフアングルを有している。これにより、図2図4に示したように、シリコンウェーハWを、光源1及び光検出器2に対して相対的に回転させた際には、縦方向のスリップが相対的に多く生じる領域と、横方向のスリップが相対的に多く生じる領域とが、周上で90°置きに交互に、光源1及び光検出器2の位置に対して出現することになる。
そして、縦方向のスリップの検出感度は、x軸に対するオフアングルの傾斜角度に(y軸に対するオフアングルの傾斜角度よりも相対的に大きく)依存し、また、横方向のスリップの検出感度は、y軸に対するオフアングルの傾斜角度に(x軸に対するオフアングルの傾斜角度よりも相対的に大きく)依存し、さらに、本実施形態では、x軸に対するオフアングルの傾斜角度の大きさと、y軸に対するオフアングルの傾斜角度の大きさとが異なっている。このため、縦方向のスリップと横方向のスリップとでは、光学的反射強度が異なる。
これに対し、本実施形態では、相対的に回転するシリコンウェーハWの周上の検査対象位置に応じて、上記角度θを調整する。これにより、光学的反射強度の異なる、縦方向のスリップと横方向のスリップとで、それぞれ検出感度が良好となるように、光検出器2の位置を調整することができる。
従って、本実施形態のシリコンウェーハWの欠陥検査方法によれば、シリコンウェーハの表面に発生したスリップ転位を高感度で検出することができる。
【0027】
さて、以下に上記の実施形態に基づいて行った実験の詳細について説明する。
表面欠陥の検査対象として、径300mm、p型、結晶面(100)のシリコンウェーハを用意した。光源として、疑似平行光を照射することのできるスポット型ライトガイドを用意し、光検出器として、高分解能レンズを有する高解像度エリアカメラを用意した。
シリコンウェーハの外周領域(シリコンウェーハの端縁から径方向内側に6mmまでの領域)について、上記光源及び光検出器の位置を、上記角度φを73°で固定し上記の角度θを74~80°で変更しながら、表面欠陥の検査を行った。表1において、角度θの基準角度(77°)は、角度φを73°として、シリコンウェーハを360°回転させた際に、360°での感度の総合評価が最も良くなる角度として予め求めたものである。また、周上の0°は、ノッチが形成された位置である。
以下の表1に評価結果を示す。なお、表1において、評価「A+」は範囲内で光量が十分良好であり、評価「A」は光量が十分良好だが一部の範囲で光量が良好であり、評価「B」は光量が良好であり、評価「C」は光量が少し不足又は多過であり、評価「D」は光量が少し不足又は多過であることを示している。評価「A+」、「A」及び「B」であれば、光量が良好であることにより、シリコンウェーハの表面に発生したスリップ転位を高感度で検出することができる。
【0028】
【表1】
【0029】
表1に示すように、周上の位置が0~45°の場合は、角度θが74~76°であれば評価が「A+」であり、周上の位置が45~135°の場合は、角度θが78~80°であれば評価が「A+」であり、周上の位置が135~225°の場合は、角度θが74~76°であれば評価が「A+」であり、周上の位置が225~315°の場合は、角度θが78~80°であれば評価が「A+」であり、周上の位置が315~0°の場合は、角度θが74~76°であれば評価が「A+」であった。
【0030】
このことから、相対的に回転するシリコンウェーハの周上の検査対象位置に応じて、上記角度θを、所定の基準角度(上記の例では77°)からの大小を切り替えて調整することが、シリコンウェーハの表面に発生したスリップ転位を高感度で検出する上でより好ましいことがわかった。
なお、上記の実験例では、所定の基準角度を360°の総合評価により予め求めたが、この場合には限定されず、過去のデータ等から所定の基準角度を定める等、様々な手法で所定の基準角度を決定することができる。
【0031】
また、表1に示した結果から、上記角度θは、シリコンウェーハWを、光源1及び光検出器2に対して相対的に90°回転させる毎に、所定の基準角度からの大小を切り替えることが好ましいことがわかった。これは、上述したように、光学的反射強度の異なる、縦方向のスリップが相対的に多い縦方向のスリップが相対的に多く生じる領域と、横方向のスリップが相対的に多く生じる領域とが、周上で90°置きに交互に、光源及び光検出器に対して出現することになるためであると考えられる。
【0032】
さらに、表1から、上記角度θを、所定の基準角度から大きくする際には、所定の基準角度よりも1~3°大きくなるように切り替え、且つ、角度θを、所定の基準角度から小さくする際には、所定の基準角度よりも1~3°小さくなるように切り替えることが好ましいこともわかった。
【符号の説明】
【0033】
1:光源
2:光検出器
W:シリコンウェーハ
図1
図2
図3
図4