(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】生体情報測定装置、生体情報測定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 7/04 20060101AFI20230124BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20230124BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
A61B7/04 Q ZDM
A61B7/04 D
A61B5/08
A61B5/0245 Z
(21)【出願番号】P 2019030009
(22)【出願日】2019-02-22
【審査請求日】2021-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2018032470
(32)【優先日】2018-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29~平成31年度 農林水産省、「革新的技術開発・緊急展開事業(うち人工知能未来農業創造プロジェクト)」試験研究計画名「AIを活用した呼吸器病・消化器病・周産期疾病の早期発見技術の開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】510108951
【氏名又は名称】公立大学法人広島市立大学
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100138955
【氏名又は名称】末次 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【氏名又は名称】末富 孝典
(72)【発明者】
【氏名】石光 俊介
(72)【発明者】
【氏名】飯島 聡志
(72)【発明者】
【氏名】中山 仁史
(72)【発明者】
【氏名】成 亦兵
(72)【発明者】
【氏名】成澤 健太
(72)【発明者】
【氏名】三上 修
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 道浩
(72)【発明者】
【氏名】石田 藍子
(72)【発明者】
【氏名】石田 三佳
(72)【発明者】
【氏名】井上 寛暁
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-135611(JP,A)
【文献】特開2007-236534(JP,A)
【文献】特開2012-125367(JP,A)
【文献】特開2008-206704(JP,A)
【文献】特開2012-120688(JP,A)
【文献】特表2016-538898(JP,A)
【文献】特表2008-528112(JP,A)
【文献】特開2017-192353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 7/00 - 7/04
A61B 5/00 - 5/03
A61B 5/06 - 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の生体内部を伝播する音波を検出する音波センサと、
前記音波センサで検出された音信号に基づいて、前記被検体の呼吸音又は心拍に関する情報を検出する情報検出部と、
を備え
、
前記情報検出部は、
前記音波センサで検出された音信号を二乗して得られるパワー信号を生成し、
前記パワー信号に現れる閾値以上のレベルを有する複数のピークを結ぶ折れ線又は曲線に基づいて、前記被検体の呼吸音に関する情報を検出する、
生体情報測定装置。
【請求項2】
前記情報検出部は、
前記パワー信号に現れる
前記複数のピークを補間して線でつなげることにより、
前記折れ線又は前記曲線を生成する、
請求項
1に記載の生体情報測定装置。
【請求項3】
前記情報検出部は
、
前記パワー信号のピークに基づいて、前記被検体の心拍に関する情報を検出する、
請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項4】
被検体の生体内部を伝播する音波を検出する音波センサと、
前記音波センサで検出された音信号に基づいて、前記被検体の呼吸音又は心拍に関する情報を検出する情報検出部と、
を備え、
前記情報検出部は、
前記音信号のメル周波数ケプストラム係数を、前記被検体の呼吸音に関する情報として検出
し、
次数が低い順に、1番目から6番目までの前記メル周波数ケプストラム係数の変化に基づいて、前記被検体の健康状態に関する情報を検出する、
生体情報測定装置。
【請求項5】
前記情報検出部は、
前記音波センサで検出された音信号の波形が零レベルまたは零レベル付近の一定区間と交差する数である零交差数を、前記被検体の呼吸音に関する情報として検出する、
請求項4に記載の生体情報測定装置。
【請求項6】
前記被検体は、家畜であり、
前記音波センサは、耳標における耳に接する面に取り付けられている、
請求項1から5のいずれか一項に記載の生体情報測定装置。
【請求項7】
前記音波センサのセンサ出力は、無線通信を介して、前記情報検出部に送信される、
請求項1から6のいずれか一項に記載の生体情報測定装置。
【請求項8】
前記音波センサは、複数の被検体に取り付けられ、
前記情報検出部は、
前記複数の被検体にそれぞれ取り付けられた前記音波センサで検出された音信号に基づいて得られた生体情報を収集して、前記被検体毎に管理する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の生体情報測定装置。
【請求項9】
前記音波センサは、ピエゾマイクである、
請求項1から8のいずれか一項に記載の生体情報測定装置。
【請求項10】
音波センサが、被検体の生体内部を伝播する音波を検出する検出ステップと、
情報処理装置が、前記音波センサで検出された音信号に基づいて、前記被検体の呼吸音又は心拍に関する情報を検出する情報検出ステップと、
を含み
、
前記情報検出ステップにおいて、
前記音波センサで検出された音信号を二乗して得られるパワー信号を生成し、
前記パワー信号に現れる閾値以上のレベルを有する複数のピークを結ぶ折れ線又は曲線に基づいて、前記被検体の呼吸音に関する情報を検出する、
生体情報測定方法。
【請求項11】
音波センサが、被検体の生体内部を伝播する音波を検出する検出ステップと、
情報処理装置が、前記音波センサで検出された音信号に基づいて、前記被検体の呼吸音又は心拍に関する情報を検出する情報検出ステップと、
を含み、
前記情報検出ステップにおいて、
前記音信号のメル周波数ケプストラム係数を、前記被検体の呼吸音に関する情報として検出し、
次数が低い順に、1番目から6番目までの前記メル周波数ケプストラム係数の変化に基づいて、前記被検体の健康状態に関する情報を検出する、
生体情報測定方法。
【請求項12】
コンピュータを、
音波センサで検出された被検体の体内を伝播する音信号を二乗して得られるパワー信号のピークに基づいて、前記被検体の心拍に関する情報を検出する心拍情報検出部、
前記パワー信号
に現れる閾値以上のレベルを有する複数のピーク
を結ぶ折れ線又は曲線に基づいて、前記被検体の呼吸音に関する情報を検出する呼吸情報検出部、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報測定装置、生体情報測定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
家畜の飼養は大規模化が進んでいるが、損耗を防止して生産コストを低減するとともに、抗菌剤等の薬剤使用を減少して健康な家畜を生産するため、豚の呼吸器疾患や子牛の肺炎など、家畜の生産性を阻害する疾病対策を進めていく必要性が指摘されている(例えば、非特許文献1参照)。群飼養では、1頭が感染性の呼吸器病に罹患すると、群単位で疾病が拡大するため、大きな損耗につながる。そのため、疾病兆候の早期発見・早期治療が求められ、家畜の生体信号から呼吸器病の兆候をとらえることができる技術の開発が期待されている。これに呼応し、飼育舎に設置したマイクロフォンを用いた音による監視を通じて、豚の咳から呼吸器病の診断が試みられている(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】最近の家畜衛生をめぐる情勢について(平成30年2月),農林水産省http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/attach/pdf/index-114.pdf,2018年2月22日参照
【文献】C. Yongwha, et al., "Automatic Detection and Recognition of Pig Wasting Diseases Using Sound Data in Audio Surveillance Systems", Sensors 2013, 13(10), 12929-12942.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
養豚等において経営の大規模化や多頭飼養化が進み、衛生管理の重要性が高まっており、特に、損耗が大きく畜産経営に大きな影響を与える混合感染等に起因する呼吸器病の早期発見技術の確立が望まれている。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、呼吸器病の早期発見技術の確立に寄与することができる生体情報測定装置、生体情報測定方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点に係る生体情報測定装置は、
被検体の生体内部を伝播する音波を検出する音波センサと、
前記音波センサで検出された音信号に基づいて、前記被検体の呼吸音又は心拍に関する情報を検出する情報検出部と、
を備え、
前記情報検出部は、
前記音波センサで検出された音信号を二乗して得られるパワー信号を生成し、
前記パワー信号に現れる閾値以上のレベルを有する複数のピークを結ぶ折れ線又は曲線に基づいて、前記被検体の呼吸音に関する情報を検出する。
【0008】
また、前記情報検出部は、
前記パワー信号に現れる前記複数のピークを補間して線でつなげることにより、前記折れ線又は前記曲線を生成する、
こととしてもよい。
【0009】
前記情報検出部は、
前記パワー信号のピークに基づいて、前記被検体の心拍に関する情報を検出する、
こととしてもよい。
【0011】
本発明の第2の観点に係る生体情報測定装置は、
被検体の生体内部を伝播する音波を検出する音波センサと、
前記音波センサで検出された音信号に基づいて、前記被検体の呼吸音又は心拍に関する情報を検出する情報検出部と、
を備え、
前記情報検出部は、
前記音信号のメル周波数ケプストラム係数を、前記被検体の呼吸音に関する情報として検出し、
次数が低い順に、1番目から6番目までの前記メル周波数ケプストラム係数の変化に基づいて、前記被検体の健康状態に関する情報を検出する。
【0012】
この場合、前記情報検出部は、
前記音波センサで検出された音信号の波形が零レベルまたは零レベル付近の一定区間と交差する数である零交差数を、前記被検体の呼吸音に関する情報として検出する、
こととしてもよい。
【0015】
前記被検体は、家畜であり、
前記音波センサは、耳標における耳に接する面に取り付けられている、
こととしてもよい。
【0016】
前記音波センサのセンサ出力は、無線通信を介して、前記情報検出部に送信される、
こととしてもよい。
【0017】
前記音波センサは、複数の被検体に取り付けられ、
前記情報検出部は、
前記複数の被検体にそれぞれ取り付けられた前記音波センサで検出された音信号に基づいて得られた生体情報を収集して、前記被検体毎に管理する、
こととしてもよい。
【0018】
前記音波センサは、ピエゾマイクである、
こととしてもよい。
【0019】
本発明の第3の観点に係る生体情報測定方法は、
音波センサが、被検体の生体内部を伝播する音波を検出する検出ステップと、
情報処理装置が、前記音波センサで検出された音信号に基づいて、前記被検体の呼吸音又は心拍に関する情報を検出する情報検出ステップと、
を含み、
前記情報検出ステップにおいて、
前記音波センサで検出された音信号を二乗して得られるパワー信号を生成し、
前記パワー信号に現れる閾値以上のレベルを有する複数のピークを結ぶ折れ線又は曲線に基づいて、前記被検体の呼吸音に関する情報を検出する。
本発明の第4の観点に係る生体情報測定方法は、
音波センサが、被検体の生体内部を伝播する音波を検出する検出ステップと、
情報処理装置が、前記音波センサで検出された音信号に基づいて、前記被検体の呼吸音又は心拍に関する情報を検出する情報検出ステップと、
を含み、
前記情報検出ステップにおいて、
前記音信号のメル周波数ケプストラム係数を、前記被検体の呼吸音に関する情報として検出し、
次数が低い順に、1番目から6番目までの前記メル周波数ケプストラム係数の変化に基づいて、前記被検体の健康状態に関する情報を検出する。
【0020】
本発明の第5の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
音波センサで検出された被検体の体内を伝播する音信号を二乗して得られるパワー信号のピークに基づいて、前記被検体の心拍に関する情報を検出する心拍情報検出部、
前記パワー信号に現れる閾値以上のレベルを有する複数のピークを結ぶ折れ線又は曲線に基づいて、前記被検体の呼吸音に関する情報を検出する呼吸情報検出部、
として機能させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、被検体の体内を伝播する音波に基づいて、呼吸音及び心拍に関する情報を取得する。呼吸音及び心拍に関する情報は、呼吸器病の早期発見技術の確立に寄与する情報となる。すなわち、本発明によれば、呼吸器病の早期発見技術の確立に寄与する情報を被検体の体内で伝播する音波を測定するという簡便な方法で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る生体情報測定装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】音波センサで検出された音信号の一例を示すグラフである。
【
図3】音信号のパワー信号の一例を示すグラフである。
【
図4】パワー信号のピークを補間して得られる
折れ線の一例を示すグラフである。
【
図5】
図1の情報検出部のハードウエア構成を示すブロック図である。
【
図6】
図1の情報検出部の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】複数の被検体を管理するシステム構成を示す図である。
【
図8】本発明の実施の形態2に係る生体情報測定装置の構成を示すブロック図である。
【
図10】ウイルス接種前後の音波センサで検出された音信号の零交差数の変化を示す図である。
【
図11】ウイルス接種前後の音波センサで検出された音信号のMFCC(1)の変化を示す図である。
【
図12】ウイルス接種前後の音波センサで検出された音信号のMFCC(2)の変化を示す図である。
【
図13】ウイルス接種前後の音波センサで検出された音信号のMFCC(3)の変化を示す図である。
【
図14】ウイルス接種前と接種後のそれぞれの経過日数に対して実施した検定結果のp値を示す図である。
【
図15】本発明の実施の形態3に係る生体情報測定装置の構成を示すブロック図である。
【
図16】(A)は、音波センサ10から抽出された音信号の生波形を示す図である。(B)及び(C)は、(A)の波形に対してウェーブレット変換を行ったときの波形を示す図である。
【
図17】(A)は、心音波形を示す図である。(B)は、(A)がウェーブレット変換された波形を示す図である。(C)は、(B)のエンベロープ波形を示す図である。
【
図18】
図15の生体情報測定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図19】(A)は、マザーウェーブレットとしてモーレットウェーブレットを用いたときの心音間隔を示す図である。(B)は、マザーウェーブレットとして音信号の一部を用いたときの心音間隔を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。全図において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号が付されている。
【0024】
実施の形態1.
まず、本発明の実施の形態1について説明する。
図1に示すように、生体情報測定装置1は、被検体としての豚Pの生体情報を測定するために用いられる。生体情報測定装置1は、センサ部2と、情報検出部3とを備える。
【0025】
豚Pは、家畜であり、その耳には認識番号が表示された耳標Sが取り付けられている。センサ部2は、その耳標Sに取り付けられている。情報検出部3は、センサ部2と無線通信可能であり、センサ部2から送信された信号を受信して、その信号に対する信号処理を行う。
【0026】
センサ部2は、音波センサ10と、アンプ部11と、送信装置12と、を備える。音波センサ10、アンプ部11,送信装置12は、耳標Sの内部に組み込まれている。
【0027】
音波センサ10は、豚Pの耳の表面に当接しており、被検体としての豚Pの生体内部を伝播する音波の信号(音信号)を検出する。音波センサ10としては、例えばピエゾマイクが用いられる。ピエゾマイクは、圧電素子から構成される。ピエゾマイクは、豚Pの生体内部を伝播する音波で振動する生体表面の振動に従って振動して、その音信号に相当する電気信号を出力する。
【0028】
アンプ部11は、音波センサ10から出力された電気信号を増幅して出力する増幅回路である。
【0029】
送信装置12は、音波センサ10で検出された音信号を無線通信により情報検出部3に送信する。本実施の形態では、無線通信としてFM(Frequency Modulation)波を用いた通信が採用される。具体的には、音波センサ10で検出された音信号をFM波に変調して、アンテナより出力する。
【0030】
情報検出部3は、音波センサ10で検出された音信号に基づいて、豚Pの呼吸音に関する情報を検出する。さらに、情報検出部3は、センサ部2で検出された音信号に基づいて、豚Pの心拍に関する情報を検出する。
【0031】
より具体的には、情報検出部3は、コンピュータ(情報処理装置)である。情報検出部3は、受信装置13と、心拍情報検出部14と、呼吸情報検出部15と、出力部16と、記憶部17と、を備える。
【0032】
受信装置13は、無線通信により送信装置12から送信される音信号を受信するFM波の受信装置である。具体的には、受信装置13は、受信したFM波の信号から音信号を復調して出力する。
図2には、このようにして復調され、出力された音信号の一例が示されている。
【0033】
心拍情報検出部14は、受信装置13で受信された音信号に基づいて、豚Pの心拍に関する情報を検出する。具体的には、心拍情報検出部14は、例えば、
図2に示す音信号を二乗して、そのパワー信号を生成する。
図3には、このパワー信号が示されている。このパワー信号では、閾値以上のレベルを有するピークが発生している。このパワー信号のピークが発生する周期は、豚Pの心拍周期に合致する。すなわち、パワー信号のピークの発生周期が、心拍に関する情報に対応する。
【0034】
呼吸情報検出部15は、受信された音信号に基づいて、豚Pの呼吸音に関する情報を検出する。具体的には、呼吸情報検出部15は、例えば、
図3に示す音信号のパワー信号のピーク
を結ぶ折れ線を生成する。
図4には、このパワー信号のピーク
を結ぶ折れ線が示されている。
【0035】
出力部16は、検出された豚Pの心拍又は呼吸音に関する情報を外部出力する。具体的には、出力部16は、心拍情報検出部14で検出された心拍情報、呼吸情報検出部15で検出された呼吸情報を出力する。
【0036】
記憶部17は、受信された音信号、検出された心拍又は呼吸音に関する情報を記憶する。具体的には、記憶部17は、受信装置13と、心拍情報検出部14と、呼吸情報検出部15で生成された各種信号、情報等を記憶する。
【0037】
図5に示すように、情報検出部3は、制御部31、主記憶部32、外部記憶部33、操作部34、表示部35及び無線通信回路36をハードウエア構成として備えている。主記憶部32、外部記憶部33、操作部34、表示部35及び無線通信回路36はいずれも内部バス30を介して制御部31に接続されている。
【0038】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)等から構成されている。このCPUが、外部記憶部33に記憶されているプログラム39に従って信号の二乗化、線形補間などの各種演算処理を実行することにより、
図1に示す生体情報測定装置1の情報検出部3の各構成要素が実現される。
【0039】
主記憶部32は、RAM(Random-Access Memory)等から構成されている。主記憶部32には、外部記憶部33に記憶されているプログラム39がロードされる。この他、主記憶部32は、制御部31の作業領域(データの一時記憶領域)として用いられる。
【0040】
外部記憶部33は、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD-RAM(Digital Versatile Disc Random-Access Memory)、DVD-RW(Digital Versatile Disc ReWritable)等の不揮発性メモリから構成される。外部記憶部33には、制御部31に実行させるためのプログラム39があらかじめ記憶されている。また、外部記憶部33は、制御部31の指示に従って、このプログラム39の実行の際に用いられるデータを制御部31に供給し、制御部31から供給されたデータを記憶する。
【0041】
上述の情報検出部3の心拍情報検出部14及び呼吸情報検出部15は、制御部31に対応している。
【0042】
操作部34は、キーボード及びマウスなどのポインティングデバイス等と、キーボードおよびポインティングデバイス等を内部バス30に接続するインターフェイス装置から構成されている。操作部34を介して、操作者が操作した内容に関する情報が制御部31に入力される。
【0043】
表示部35は、CRT(Cathode Ray Tube)またはLCD(Liquid Crystal Display)などから構成され、操作者が操作情報を入力する場合は、操作用の画面が表示される。表示部35には、例えば、心拍情報及び呼吸情報等が表示される。この表示部35が、出力部16に対応する。
【0044】
無線通信回路36は、センサ部2の送信装置12から送信されるFM波の無線信号を受信する通信回路である。この無線通信回路36を介して、音声データが受信される。
【0045】
次に、生体情報測定装置1の動作について説明する。センサ部2における音波センサ10は、常時又は間欠的に、豚Pの生体内の音波を検出し、検出した音信号を、アンプ部11で増幅して、送信装置12に出力している。送信装置12は、その音信号を、FM波に変調して、無線通信により、情報検出部3の受信装置13に送信する。
【0046】
図6に示すように、情報検出部3において、受信装置13は、送信装置12から送信された音信号を受信する(ステップS1)。
図2には、受信された音信号の一例が示されている。この音信号は、記憶部17に記憶される。
【0047】
続いて、心拍情報検出部14は、受信した音信号を二乗して、そのパワー信号を生成する(ステップS2;心拍情報検出ステップ)。
図3には、このパワー信号の一例が示されている。このパワー信号におけるピークが、心拍音を示している。心拍情報検出部14によって検出される心拍情報は、このピークが発生する時点及びその時点の間隔(周期)となる。この心拍情報は、記憶部17に記憶される。
【0048】
続いて、呼吸情報検出部15は、パワー信号に発生する複数のピークの補間を行う(ステップS3;呼吸情報検出ステップ)。具体的には、呼吸情報検出部15は、パワー信号に発生する複数のピークを線形補間でつないで
折れ線を生成する。この
折れ線が、呼吸情報となる。
図4には、この
折れ線が示されている。呼吸情報検出部15によって検出される
折れ線の情報、すなわち呼吸情報は、記憶部17に記憶される。
【0049】
続いて、出力部16は、心拍情報検出部14によって検出される心拍情報と、呼吸情報検出部15によって検出される呼吸情報とを外部出力する(ステップS4;出力ステップ)。ここでは、例えば、表示部35にこれらの情報が表示出力される。外部出力された心拍情報及び呼吸情報は、豚Pの呼吸器系の健康状態(呼吸器系疾患につながる健康状態)を評価するうえでの重要な情報となる可能性が高い。なお、このステップS3、S4が情報検出ステップに対応する。
【0050】
実際には、
図7に示すように、家畜である豚Pは、多頭数管理されており、情報検出部3は、各豚Pに取り付けられた複数のセンサ部2からそれぞれの豚Pの音波情報を受信する。情報検出部3では、それぞれの豚Pの認識番号と、音信号等のデータとを対応付けて記憶部17に記憶し、各豚Pの健康状態を管理する。なお、この場合、認識番号を音信号等のデータに対応付ける方法には、様々な方法がある。例えば、豚Pごとに、受信する無線信号のチャネルを変更するようにしてもよいし、音信号のヘッダとして送る信号を、認識番号を示す信号とするようにしてもよい。また、受信タイミングを、豚P毎に割り振るようにしてもよい。
【0051】
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、豚Pの体内を伝播する音波に基づいて、呼吸音及び心拍に関する情報を取得する。呼吸音及び心拍に関する情報は、呼吸器病の早期発見技術の確立に寄与する情報となる。すなわち、本実施の形態によれば、呼吸器病の早期発見技術の確立に寄与する情報を豚Pの体内で伝播する音波を測定するという簡便な方法で検出することができる。
【0052】
また、出願人は、音波センサ10で検出された音信号を二乗して得られるパワー信号を生成し、パワー信号のピークを結ぶ折れ線に基づいて、豚Pの呼吸音に関する情報を検出することに成功した。生体内の音信号のパワー信号に現れるピークを結ぶ折れ線が、その生体の呼吸音に相当することは、新たな知見である。本実施の形態では、この知見に基づいて、豚Pの体内を伝播する音波を、信号処理することにより、豚Pの呼吸音に関する情報を簡単に測定することができることとした。
【0053】
また、本実施の形態によれば、生体を伝播するパワー信号のピークを線形補間して、折れ線を生成した。このようにすれば、呼吸音に関する情報を信号処理により簡単に得ることができる。しかしながら、本発明はこれには限られない。ピーク間を結ぶのに、スプライン曲線補間のような曲線補間を採用するようにしてもよい。
【0054】
また、発明者らは、音信号を二乗して得られるパワー信号のピークが、その生体の心拍に相当するものであることを新たな知見として突き止めた。本実施の形態では、この知見に基づいて、豚Pの体内を伝播する音波を、信号処理することにより、豚Pの心拍に関する情報を簡単に測定することができることとした。
【0055】
また、本実施の形態によれば、被検体は豚Pであり、音波センサ10が、耳標Sの耳に接する面に取り付けられている。このようにすれば、新たな装着具を備えることなく、豚Pの体内を伝播する音波を検出することができる。発明者らは、生体の様々な位置(例えば、鼻先、背中、頚椎付近)で、音信号を観測し、その音信号から呼吸音及び心拍に関する情報を検出した。この場合、豚Pにとっては、センサ部2を耳標Sに付けた場合に、心拍及び呼吸音に関する情報を、検出することができる部位であった。
【0056】
また、本実施の形態によれば、センサ部2のセンサ出力は、無線通信により、情報検出部3に送信される。このようにすれば、センサ部2と、情報検出部3とを物理的に分離することができる。なお、本実施の形態では、無線通信をFM波による通信としたが、本発明はこれには限られない。無線信号の周波数帯を他の周波数帯としてもよいし、携帯端末に取り入れられている短距離通信等の他の通信方式を採用してもよい。
【0057】
情報検出部3は、複数のセンサ部2からのセンサ出力を収集し、多数の豚Pの生体情報を測定する。このようにすれば、多数の豚Pの健康状態を統括管理することができる。
【0058】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態では、零交差数及びメル周波数ケプストラム解析(例えば、ケプストラム分析又はLPC(linear Prediction Coding)メルケプストラム演算)を行って、被検体としての豚Pの生体情報を検出する。
図8に示すように、本実施の形態では、情報検出部3の構成が、上記実施の形態1と異なっている。
【0059】
具体的には、本実施の形態では、情報検出部3は、心拍情報検出部14及び呼吸情報検出部15の代わりに、零交差数検出部20及びメル周波数ケプストラム検出部21を備える。
【0060】
零交差数検出部20は、ゼロクロス法を用いて、音波センサ10で検出された音信号の波形の零交差数を豚Pの呼吸音に関する情報として検出する。より具体的には、零交差数検出部20は、音波センサ10で検出された音信号の中から判定対象となる区間の音声データを抽出する。ここでは、まず、一定期間(1フレーム)の音声データが抽出される。零交差数検出部20は、その音声データの波形がゼロレベルと交差する零クロス点(
図9参照)を検出し、その数を零交差数として検出する。
【0061】
このように、零交差数は、信号レベルが零レベルまたは零レベル付近の一定区間と交差する数である。豚Pの体内の音の零交差数が多くなれば、豚Pが、呼吸器疾患などにかかって健康状態が悪化していることが疑われる。そこで、零交差数検出部20は、音波センサ10で検出された音信号の波形の零交差数を検出する。
【0062】
メル周波数ケプストラム検出部21は、音波センサ10で検出された音信号のメル周波数ケプストラム係数を、豚Pの呼吸音に関する情報として検出する。
【0063】
(メル周波数ケプストラム解析)
メル周波数ケプストラム解析の詳細について説明する。本実施の形態では、抽出された一定期間の音声データのメル周波数ケプストラム係数が検出される。メル周波数ケプストラム係数は、音響特徴量として一般的に用いられる。ここで、ケプストラムとは、音のスペクトルを信号とみなして周波数変換(例えばフーリエ変換)した結果である。ケプストラムを用いれば、音のスペクトルを少ないパラメータで表現することができ、スペクトルの微細構造とスペクトル包絡を分離し易くなる。メルとは、その係数が、人間の音声知覚の特徴を考慮し算出されたものであることを示している。メルケプストラムを用いれば、人の聴覚特性に合わせて低周波数領域を細かくサンプリングすることができる。
【0064】
まず、メル周波数ケプストラム検出部21は、プリエンファシスフィルタで音声データの波形の高域成分を強調する。プリエンファシスフィルタは、高域成分を強調することで声道特徴をはっきりと出すために用いられる。フィルタの演算式は、例えば、以下の式を採用することができる。
y(n)=x(n)-px(n-1)
ここで、nは、自然数であり、サンプリング番号である。また、x(n)は判定用の音声波形データであり、x(n-1)は1つ前の音声データの値である。pはプリエンファシス係数であり、0.97を用いることが多いが、設定する値は任意である。また、y(n)がフィルタの出力である。
【0065】
さらに、メル周波数ケプストラム検出部21は、窓関数(ハミング窓など)をかけた後に高域成分が強調された音声データに対して高速フーリエ変換(FFT)を行い、音声データの振幅スペクトルを求める。
【0066】
続いて、メル周波数ケプストラム検出部21は、振幅スペクトルにメルフィルタバンクをかけて圧縮する。メルフィルタバンクとは、例えば三角形のバンドパスフィルタを複数並べたものであり、メル尺度上で等間隔なフィルタバンクである。メル尺度は、人間の音声知覚を反映した周波数軸で単位はmelである。すなわち、メルフィルタバンクのバンドパスフィルタは、低周波域では間隔が狭くなっており、高周波域では間隔が広くなっている。バンドパスフィルタの数をチャネル数と呼ぶ。
【0067】
さらに、メル周波数ケプストラム検出部21は、圧縮した数値列を信号とみなして離散コサイン変換を行ってケプストラムを得る。そして、得られたケプストラムの低次成分がメル周波数ケプストラム係数(MFCC)であり、メル周波数ケプストラム検出部21は、MFCCを抽出する。MFCCは、次数が低い順に、MFCC(1)~MFCC(20)などと表現される。
【0068】
豚Pの体内の音のメル周波数ケプストラム係数(MFCC)が変化すれば、豚Pが、呼吸器疾患などにかかって健康状態が悪化していることが疑われる。そこで、メル周波数ケプストラム検出部21は、音波センサ10で検出された音信号の波形のメル周波数ケプストラム係数(MFCC)を豚Pの呼吸音に関する情報として検出する。
【0069】
例えば、豚繁殖・呼吸障害症候群(Porcine Reproductive and Respiratory Syndrome; PRRS)ウイルスをブタに投与し,感染が成立した個体の耳から採取した体内伝導音に対しゼロクロス法を用いた解析を行った。信号採取は、ウイルス接種前、接種3日後、5日後、7日後、及び10日後にそれぞれ行われた。
図10、
図11、
図12及び
図13に示すように、ウイルス接種前の零交差数、MFCC(1)~MFCC(3)の第二四分位数(中央値)を基準とした場合、接種後の3日後、5日後、7日後、10日後では、第二四分位数が大きく変化している。零交差数検出部20及びメル周波数ケプストラム検出部21は、このような変化を、豚Pの呼吸音の変化、すなわち健康状態の変化として検出する。
【0070】
また、
図10、
図11、
図12及び
図13に示すように、ウイルス接種前においては、四分位範囲で示される零交差数、MFCC(1)~MFCC(3)のばらつき、すなわち四分位範囲が大きくなっていたが、接種3日目以降では、零交差数、MFCC(1)~MFCC(3)のばらつき(四分位範囲)が小さくなっている。零交差数検出部20は、このような零交差数、MFCC(1)~MFCC(3)のばらつきの変化を、豚Pの健康状態の変化として検出するようにしてもよい。
【0071】
図14のウイルス接種前と接種後のそれぞれの経過日数に対して実施した検定結果のp値を比較するとわかるように、ウイルス接種前と接種3日目以降では、零交差数、MFCC(1)、MFCC(2)、MFCC(3)、MFCC(4)、MFCC(5)及びMFCC(6)の特徴量において有意差が確認された。ここで、
図14は、解析結果をTukey-KramerのHSD検定により多重比較したものである。*は、5%水準、**は、1%水準で有意差が大きいことを示している。したがって、情報検出部3は、次数が低い順に、1番目から6番目までのメル周波数ケプストラム係数MFCC(1)~MFCC(6)の変化に基づいて、豚Pの健康状態に関する情報を検出すればよい。
【0072】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態では、ウェーブレット変換を行う。
図15に示すように、本実施の形態では、情報検出部3の構成が、上記実施の形態1と異なっている。
【0073】
情報検出部3は、心拍情報検出部14及び呼吸情報検出部15の代わりに、ウェーブレット解析部25を備える。ウェーブレット解析部25は、音波センサ10で検出された音信号に対してウェーブレット変換を行って、豚Pの呼吸音又は心拍に関する情報を検出する。
【0074】
ウェーブレット変換には、音信号との相関演算を行うアナライジング・ウェーブレット(マザーウェーブレット)が用いられる。マザーウェーブレットとしては任意のものを用いることができるが、本実施の形態では、一般的なモーレットウェーブレットを用いるものとする。
【0075】
図16(A)に示すような音信号(豚Pの耳から採取された体内伝導音の生波形)が取得された場合、ウェーブレット解析部25は、モーレットウェーブレットのスケールを変化させて、この波形に対してモーレットウェーブレットとの相関演算、すなわちウェーブレット変換を行う。すると、
図16(B)に示すような呼吸音の波形(スケール440)、
図16(C)に示すような心音の波形(スケール10)が抽出される。図中の丸は抽出された呼吸音及び心拍のピークを示している。
【0076】
FM通信により転送されるデータは,低周波数が減衰していたため、呼吸音や心拍のような低い周波数のパワーは減衰する。しかしながら、近年では、システムの改良により、低周波数特性が改善された。このため、低周波数に現れる呼吸音及び心拍そのものの振動をウェーブレット解析により抽出することが可能になった。ウェーブレット解析は,信号の微細な時間変動を抽出することができるので、より正確に呼吸数及び心拍数を測定できるようになる。
【0077】
なお、音信号としては、聴診器等で測定された心音波形(
図17(A))を用いるようにしてもよい。この場合、
図18に示すように、生体情報測定装置1は、音波センサ10の心音波形を測定する(ステップS11)。続いて、生体情報測定装置1(ウェーブレット変換部25)は、実信号ウェーブレット変換を行う(ステップS12)。さらに、生体情報測定装置1(ウェーブレット変換部25)は、変換された波形を二乗して、パワー信号(
図17(B))に変換する(ステップS13)。さらに、生体情報測定装置1(ウェーブレット変換部25)は、パワー信号のエンベロープ(
図17(C))を作成する(ステップS14)。さらに、生体情報測定装置1(ウェーブレット変換部25)は、心音の1音と2音を抽出し(ステップS15)、奇数番目を1音として心音間隔を計算する(ステップS16)。そして、生体情報測定装置1(ウェーブレット変換部25)は、
図19(A)及び
図19(B)に示すようなトレンドグラムを作成する(ステップS17)。
【0078】
本実施の形態では、マザーウェーブレットとしてモーレットウェーブレットを用いたが、本発明はこれには限られない。マザーウェーブレットとしては、任意の波形のものを用いることができる。例えば、音波センサ10の音信号から一部抽出された一定時間の波形(瞬時相関関数)を、マザーウェーブレットとして用いることができる。この場合、心音波形の1回分の波形を瞬時相関関数として用いることができる。
図19(A)には、ウェーブレットを用いなかった場合の心音間隔のばらつきが示されており、
図19(B)には、音波形の一部をマザーウェーブレットとして用いた場合の心音間隔のばらつきが示されている。これらの波形を比較するとわかるように、マザーウェーブレットとして心音波形の一部を用いるようにすれば、より高精度なウェーブレット解析が可能となる。
【0079】
このように、ウェーブレット解析を用いれば、信号の微細な時間変動を抽出することができるので、高いSN比での呼吸音及び心拍の検出が可能となる。
【0080】
上述のように、上記各実施の形態によれば、体内伝導音の利用により、外部の騒音や他の家畜の発する音に影響されることなく家畜の生体信号を抽出することができる。
【0081】
また、上記各実施の形態によれば、体内伝導により心音を抽出することができるので、抽出された心音波形に信号処理を施すことによって自律神経の状態を判断することで家畜の罹患状況を判断することができる。
【0082】
また、上記各実施の形態によれば、体内伝導により呼吸音を抽出することができるので、心音の他、呼吸音そのものから家畜の罹患状況を判断することができる。さらに、心音および呼吸音の情報を、豚Pに設置した小型端末にて抽出・蓄積し,一定時間に一度送信できる集中管理システムを構築することができる。
【0083】
上記各実施の形態では、被検体に装着するのが、センサ部2のみであったが本発明はこれには限られない。センサ部2及び情報検出部3を被検体に装着するようにしてもよい。この場合でも、情報検出部3で検出された情報を中央の管理コンピュータに送り、管理コンピュータで一括管理することができる。
【0084】
上記各実施の形態では、被検体を豚Pとした。しかしながら、本発明は、これには限られない。被検体を牛や他の家畜としてもよい。また、生体内で伝達され心拍及び呼吸に係る音波を観測可能な被検体であれば、本実施の形態に係る生体情報測定装置1を適用することができる。
【0085】
また、生体内を伝播する音波には、呼吸音や心拍音以外にも、咳、くしゃみ、餌を食べるときの咀嚼音、水飲み音、運動や腸管の蠕動音なども含まれている。このため、生体情報測定装置1により、それらの音信号を捉え、音信号から咳等の情報を抽出するようにしてもよい。
【0086】
また、上記各実施の形態では、生体情報測定装置1の情報検出部3は、携帯端末又はパーソナルコンピュータなどの一般的なコンピュータを用いて実現してもよいし、専用の装置として実現してもよい。
【0087】
その他、情報検出部3のハードウエア構成やソフトウエア構成は一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【0088】
制御部31、主記憶部32、外部記憶部33、操作部34、表示部35及び無線通信回路36、内部バス30などから構成される情報検出部3の処理を行う中心となる部分は、上述のように、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM等)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行する情報検出部3を構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することで生体情報測定装置1を構成してもよい。
【0089】
コンピュータの機能を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。
【0090】
搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。たとえば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)にコンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介してコンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。
【0091】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、被検体の呼吸音及び心拍に関する情報を検出するのに適用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 生体情報測定装置、2 センサ部、3 情報検出部、10 音波センサ(ピエゾマイク)、11 アンプ部、12 送信装置、13 受信装置、14 心拍情報検出部、15 呼吸情報検出部、16 出力部、17 記憶部、20 零交差数検出部、21 メル周波数ケプストラム検出部、25 ウェーブレット解析部、30 内部バス、31 制御部、32 主記憶部、33 外部記憶部、34 操作部、35 表示部、36 無線通信回路、39 プログラム、P 豚(被検体)、S 耳標