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特許7216267培養容器の収容体および培養処理システムおよび培養用収容体の使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】培養容器の収容体および培養処理システムおよび培養用収容体の使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20230125BHJP
【FI】
C12M1/00 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018125391
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020000195
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「再生医療の産業化に向けた評価基盤技術開発事業」「ヒト多能性幹細胞由来の再生医療製品製造システムの開発(網膜色素上皮・肝細胞)」委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】紀ノ岡 正博
(72)【発明者】
【氏名】越田 一朗
(72)【発明者】
【氏名】谷本 和仁
【審査官】幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-169502(JP,A)
【文献】特開2015-165797(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0191687(US,A1)
【文献】特開2014-023455(JP,A)
【文献】特開2011-004613(JP,A)
【文献】特開2010-252653(JP,A)
【文献】特開2007-097481(JP,A)
【文献】特開2005-278565(JP,A)
【文献】国際公開第2004/114378(WO,A1)
【文献】特開2004-321111(JP,A)
【文献】特開平10-104392(JP,A)
【文献】特開昭57-079879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12M 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
清浄化フィルタを有する通気部を備えて、細胞が収容された培養容器を収容するとともに、他の収容体と接続する接続部を備えた培養容器の収容体あって、
上記培養容器の収容体は、柔軟な素材によって構成されるとともに、当該柔軟な収容体の側面にスリットを開口し、当該スリットを開閉する密封可能な二枚重ねの短冊状部材を備え、
上記接続部は、上記短冊状部材を囲繞して設けられ、上記他の収容体に備えられた筒状部材に接続可能な筒体を備えることを特徴とする培養容器の収容体。
【請求項2】
清浄化フィルタを有する通気部を備えて、細胞が収容された培養容器を収容するとともに、他の収容体と接続する接続部を備えた培養容器の収容体であって、
上記培養容器の収容体は、柔軟な素材によって袋体として構成されるとともに、内部にゴムバンドを収容して密封され、
上記接続部として、上記袋体の一部は上記他の収容体に備えられた筒状部材の端部を覆うように構成され、当該袋体の筒状部材を覆った部分に上記ゴムバンドを掛けて当該筒状部材に保持させ、
保持させた状態において、上記ゴムバンドの内側で上記筒状部材の端部を覆った袋体の部分を開封するとともに、開封された袋体を外部で束ねることで密封することを特徴とする培養容器の収容体。
【請求項3】
上記請求項1または請求項2のいずれかに記載の培養容器の収容体を、インキュベータに収納されて細胞を培養するための培養用収容体、または外部から作業を行うためのグローブを設けた作業用収容体として備え、
上記他の収容体として、上記請求項1または請求項2のいずれか記載の培養容器の収容体を、上記培養用収容体または上記作業用収容体として備えるとともに、上記筒状部材を上記培養容器の収容体と他の収容体とを連結させる連結手段として備えたことを特徴とする培養処理システム。
【請求項4】
上記連結手段の筒状部材の内側に除染媒体を供給する除染手段を備えたことを特徴とする請求項3に記載の培養処理システム。
【請求項5】
上記連結手段の筒状部材に、操作者が筒状部材の内側に手を差し入れるためのグローブを設けたことを特徴とする請求項3または請求項4のいずれかに記載の培養処理システム。
【請求項6】
清浄化フィルタを有する通気部を備えて、細胞が収容された培養容器を収容するとともに、他の収容体と接続する接続部を備えた培養用収容体の使用方法であって、
軟な素材によって構成された複数の培養用収容体を内部を無菌状態として準備し、
当該培養用収容体を、内部が無菌状態のアイソレータまたは作業用収容体と上記接続部を介して接続して、複数の培養用収容体に細胞が収容された培養容器を収容し、当該培養容器を収容した複数の培養用収容体を密封して同じインキュベータに収納することで、上記培養用収容体に収容した状態のまま各培養容器内の細胞を同時に培養することを特徴とする培養用収容体の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は培養容器の収容体および培養処理システムおよび培養用収容体の使用方法に関し、詳しくは清浄化フィルタを有する通気部を備えて、細胞が収容された培養容器を収容する培養容器の収容体、およびインキュベータに収納されて細胞を培養するための培養用収容体と、外部から作業を行うためのグローブを有する作業用収容体とを備えた培養処理システムおよび培養用収容体の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療に用いる細胞の培養においては、外的要因により菌や微生物により細胞が汚染されることを防止するとともに、異なる患者の細胞同士による交差汚染を防止することが求められる。
そのため従来では、培養に必要な作業を行うためのアイソレータと、組織や細胞を培養するためのインキュベータとを備えたアイソレータシステムが知られ、細胞の汚染を防止するため、無菌環境を維持した状態で作業および培養を行うようにしている(特許文献1)。
この特許文献1において、インキュベータで培養中の細胞に対して培地交換や継代といった培養に必要な作業を行うには、インキュベータを移動させてアイソレータに接続して、無菌状態を維持しながらインキュベータの内部とアイソレータの内部とを連通させ、その後培養容器をアイソレータ内に移動させてから上記作業を行うようになっている。
一方で、開放タイプの培養容器を収納可能な内部空間を有し、気体を通過させる一方で微生物を通過させないフィルタを備え、内部空間が無菌状態に維持された培養容器収納ボックスが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-169502号公報
【文献】特開2004-154099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで上記特許文献1では、上記アイソレータにおいて培地交換や継代といった作業が終了すると、培養容器を再びインキュベータに収納してから当該インキュベータをアイソレータから分離し、インキュベータが分離されたアイソレータの内部を引き続き行われる作業に備えて除染するようになっている。
一方、上記インキュベータにおいても、一人の患者の細胞の培養が終了して次の患者の細胞を培養する際には、交差汚染を防止するために内部の除染を行わなければならない。
このような除染を行うには除染装置が必要であり、また異なるインキュベータを接続する毎にアイソレータの内部も除染しなければならず、その間は細胞の処理を行うことができず作業効率が悪いという問題がある。
これに対し、特許文献2の培養容器収納ボックスをインキュベータに収納すれば、各培養容器収納ボックスの内部は無菌状態に維持されていることから、インキュベータの内部を無菌状態に維持する必要はなく、周囲環境にインキュベータを開放しても培養容器収納ボックスを収納することが可能となる。
また上記培養容器収納ボックスを用いれば、培養容器収納ボックスごとに異なる患者の培養容器を収納している場合であっても、交差汚染の心配をする必要がないため、同じインキュベータに同時に収納して培養することが可能となる。
しかしながら、上記特許文献2の培養容器収納ボックスを用いる場合であっても、培養期間中の細胞について培地交換や継代といった培養に必要な作業を行うには、上記培養容器収納ボックスをアイソレータのような無菌環境下で開放して、収納されている培養容器を取り出す必要がある。
したがって、当該培養容器収納ボックスをアイソレータに搬入する前に当該培養容器収納ボックスの外面を除染する必要が生じるが、当該除染作業が煩雑であり効率的ではないという問題があり、また除染処理が細胞に悪影響を及ぼすことが懸念される。
このような問題に鑑み、本発明はより効率的に細胞の培養に必要な作業を行うことが可能な培養容器の収容体と、当該培養容器の収容体を用いた培養処理システムを提供するものとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1に記載の培養容器の収容体は、清浄化フィルタを有する通気部を備えて、細胞が収容された培養容器を収容するとともに、他の収容体と接続する接続部を備えた培養容器の収容体であって、
上記培養容器の収容体は、柔軟な素材によって構成されるとともに、当該柔軟な収容体の側面にスリットを開口し、当該スリットを開閉する密封可能な二枚重ねの短冊状部材を備え、
上記接続部は、上記短冊状部材を囲繞して設けられ、上記他の収容体に備えられた筒状部材に接続可能な筒体を備えることを特徴としている。
請求項2に記載の培養容器の収容体は、清浄化フィルタを有する通気部を備えて、細胞が収容された培養容器を収容するとともに、他の収容体と接続する接続部を備えた培養容器の収容体であって、
上記培養容器の収容体は、柔軟な素材によって袋体として構成されるとともに、内部にゴムバンドを収容して密封され、
上記接続部として、上記袋体の一部は上記他の収容体に備えられた筒状部材の端部を覆うように構成され、当該袋体の筒状部材を覆った部分に上記ゴムバンドを掛けて当該筒状部材に保持させ、
保持させた状態において、上記ゴムバンドの内側で上記筒状部材の端部を覆った袋体の部分を開封するとともに、開封された袋体を外部で束ねることで密封することを特徴としている。
また、請求項3に記載の培養処理システムは、上記請求項1または請求項2のいずれかに記載の培養容器の収容体を、インキュベータに収納されて細胞を培養するための培養用収容体、または外部から作業を行うためのグローブを設けた作業用収容体として備え、
上記他の収容体として、上記請求項1または請求項2のいずれかに記載の培養容器の収容体を、上記培養用収容体または上記作業用収容体として備えるとともに、上記筒状部材を上記培養容器の収容体と他の収容体とを連結させる連結手段として備えたことを特徴としている。
そして請求項6に記載の培養用収容体の使用方法は、清浄化フィルタを有する通気部を備えて、細胞が収容された培養容器を収容するとともに、他の収容体と接続する接続部を備えた培養用収容体の使用方法であって、
軟な素材によって構成された複数の培養用収容体を内部を無菌状態として準備し、
当該培養用収容体を、内部が無菌状態のアイソレータまたは作業用収容体と上記接続部を介して接続して、複数の培養用収容体に細胞が収容された培養容器を収容し、当該培養容器を収容した複数の培養用収容体を密封して同じインキュベータに収納することで、上記培養用収容体に収容した状態のまま各培養容器内の細胞を同時に培養することを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、培養容器の収容体に、密封可能な開閉部と当該開閉部を囲繞して形成した接続部を設けたので、培養容器を収容体に収容した状態で効率的に細胞の培養や処理を行うことができる。
請求項3の発明によれば、インキュベータに収納されて細胞を培養するための培養用収容体と、外部から作業を行うためのグローブを有する作業用収容体と、それらを気密に連結することのできる連結手段とを備えて培養処理システムを構成したので、培養容器を収容体に収容した状態で効率的に細胞の培養や処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施例にかかる細胞培養施設の構成図
図2】培養用収容体を説明する図
図3】作業用収容体を説明する図
図4】培養用収容体と作業用収容体との連結状態を示す図
図5】培養容器の収容体とアイソレータとの接続状態を示す図
図6】第2実施例にかかる作業用収容体を説明する図
図7】第3実施例にかかる連結手段を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について本発明を説明すると、図1は細胞培養施設1を示し、内部が所要の清浄度に維持された培養作業室2において、患者から採取した細胞を培養する施設となっている。
培養作業室2内には、内部が無菌状態に維持されて細胞の培養に必要な培養作業を行うためのアイソレータ3と、内部に細胞を収容して当該細胞の培養を行うインキュベータ4と、後述する軽微な培養作業を行うための作業台5とが設けられている。
【0009】
本実施例では、上記細胞をシャーレやフラスコ等の培養容器6(図2参照)に収容した状態で培養を行うが、当該培養容器6は可搬式の培養容器の収容体としての培養用収容体7に収容した状態で移動させるようになっている。
上記培養用収容体7は上記インキュベータ4に複数収納することが可能となっており、当該インキュベータ4では、培養用収容体7に培養容器6を収容したままの状態で細胞を培養することが可能となっている。
さらに本実施例では、培地交換などの軽微な培養作業については、上記アイソレータ3を用いずに上記作業台5で行うことが可能であり、当該培養作業に用いる資材や器具等を収容した作業用収容体8を予め培養作業室2内に準備しておき、当該作業用収容体8を上記培養用収容体7に接続して上記作業を行うようになっている。
【0010】
上記培養作業室2の内部は、図示しない環境維持手段によって所要の清浄度に維持されているものの、作業者が入室することは可能となっている。
アイソレータ3は、図5に示す過酸化水素蒸気などの除染媒体を供給する除染手段9によって、内部を除染することが可能となっており、また上記アイソレータ3には、資材や器具等を外部より搬入するためのパスボックス3aや、作業者が内部空間で作業するためのグローブ3bが設けられている。
そして上記アイソレータ3には、その外部に上記培養用収容体7が接続可能となっており、アイソレータ3との間で培養容器6を相互に移動させることが可能となっている。
上記インキュベータ4は、内部が細胞の培養に適した温度、湿度に維持されるとともに、炭酸ガス等の培養に有効な気体が供給されるようになっている。また、上記培養用収容体7を複数収納することが可能となっており、インキュベータ4の正面には培養用収容体7を出し入れするための開閉扉4aが設けられている。
上記作業台5は、上記培養用収容体7と上記作業用収容体8とを連結して所要の培養作業を行うためのスペースとなっており、単なるテーブルの他、内部が所要の清浄度に維持されたクリーンベンチを用いることができる。
なお、上記アイソレータ3やインキュベータ4については、従来公知であるためこれ以上の説明については省略するものとする。
【0011】
図2に示すように、上記培養用収容体7は、略直方体状の収容部11と、当該収容部11の上部に設けられた清浄化フィルタを有する通気部12と、収容部11の側部に設けられた開閉部13と、上記開閉部13を囲繞するように設けられた接続部14とから構成されている。
上記収容部11は、ビニール等の柔軟性を有する透明な素材を、ある程度の剛性が確保されるように立体的に成形した構成を有している。上記収容部11の内部には複数の培養容器6を収容することが可能となっており、また作業者によって持ち運びしやすいような形状および大きさに構成されている。
また上記収容部11の見えやすい位置には、ICタグやバーコード等の識別標識15が付されており、当該識別標識15を所要の識別手段によって認識することで、当該培養用収容体7に収容されている培養容器6およびその中に収容された細胞を特定し、そのデータを確認できるようになっている。
上記通気部12に備えた清浄化フィルタは、培養用収容体7の内部空間と外部との間で空気の流通を許容するものの、菌や微生物などは通さないHEPAフィルタ等の清浄化フィルタが用いられている。
このため培養用収容体7の内部空間が無菌状態にされている場合には、上記通気部12は、当該清浄化フィルタによって内部空間の無菌状態を維持しながら、気体の流通は許容するようになっており、培養用収容体7をインキュベータ4に収納した状態では、培養用収容体7の内部空間がインキュベータ4内と同じ温度、湿度に維持されるとともに、炭酸ガス等の気体が流入するようになっている。
【0012】
上記開閉部13は、上記収容部11の側面に開口されたスリット13aと、このスリット13aを収容部11の外側で閉じるようにして、上記収容部11の外側面にスリット13aに沿って設けた二枚重ねの短冊状部材13b、13bから構成されている。
この短冊状部材13b、13bは収容部11と同様に柔軟性を有する素材により形成され、長手方向の両端で結合されて、一方の内側には長手方向に連続して凸部が、他方の内側に長手方向に連続して凹部が形成されており、凸部を凹部に嵌合させることにより二枚重ねの短冊状部材13b、13bを密閉させて、スリット13aを密封して開閉部13を閉鎖することができるようになっている。
さらに、このように構成される開閉部13を囲繞して、接続部14が設けられている。接続部14は収容部11と同様に柔軟性を有する素材により形成され、上記短冊状部材13b、13bの周囲を取り囲んで、短冊状部材13b、13bよりも高く収容部11の外側面に立設させた筒体14aにより構成されている。
このような構成により、開閉部13の二枚重ねの短冊状部材13b、13bを密閉状態から離間させて、凹部から凸部を抜き出すことにより、接続部14の筒体14aの内側で、閉鎖されていた開閉部13を開放することができるようになっている。
【0013】
さらに、本発明の培養容器の収容体としては、上記培養用収容体7に加えて作業用収容体8を備えている。
上記作業用収容体8は、図3に示すように、略円柱状の収容部21と、収容部21の外周面に設けられた清浄化フィルタを有する通気部22と、同じく外周面に設けられたグローブ23と、収容部21の端面21aに設けられた開閉部24と、上記開閉部24を囲繞するように設けられた接続部25とから構成されている。
上記作業用収容体8の収容部21は、ビニール等の柔軟性を有する透明な素材を立体的に成形して構成され、収容部21の内部には複数の培養容器6を収容することが可能となっており、また作業者によって持ち運びしやすいような形状および大きさに構成されている。
上記通気部22が備える清浄化フィルタは、作業用収容体8の内部空間と外部との間で空気の流通を許容するものの、菌や微生物は通さないHEPAフィルタ等の清浄化フィルタが用いられており、作業用収容体8は培養用収容体7と同様に内部空間の無菌状態を維持することができるようになっている。
上記グローブ23は、収容部21の外周面に形成した開口に設けられ、作業者が外部から手を差し入れて装着することで、作業用収容体8の内部空間で培養に伴う軽微な作業を行うことが可能となっている。
なお、上記グローブ23については、上記収容部21が袋体のようなより柔軟な素材から構成されて、収容部21の外部から内部の資材を扱うことができる場合には、これを省略することが可能である。
【0014】
上記作業用収容体8の開閉部24と接続部25は、円柱状の収容部21の端面21aに設けられている。
すなわち、上記開閉部24は、上記収容部21の端面21aに開口されたスリット24aと、このスリット24aを収容部21の内側で閉じるようにして、上記端面21aの内側面にスリット24aに沿って設けた二枚重ねの短冊状部材24b、24bから構成されている。
この短冊状部材24b、24bは収容部21と同様に柔軟性を有する素材により形成され、長手方向の両端で結合され、一方の内側には長手方向に連続して凸部が、他方の内側には長手方向に連続して凹部が形成されている。
このような構成により、上記凸部を凹部に嵌合させることで二枚重ねの短冊状部材24b、24bを密閉させて、スリット24aを密封し、開閉部24を閉鎖することができるようになっている。
さらに、このように構成される開閉部24を囲繞して接続部25が設けられている。接続部25は収容部21と同様に柔軟性を有する素材により形成され、開閉部24のスリット24aの周囲を取り囲んで端面21aの外側面に立設させた筒体25aにより構成されている。
このような構成により、上記グローブ23を介して収容部21の内部で開閉部24の二枚重ねの短冊状部材24b、24bを密閉状態から離間させて、凹部から凸部を抜き出すことにより、接続部25の筒体25aの内側で、閉鎖されていた開閉部24を開放することができるようになっている。
【0015】
そして、これら培養用収容体7および作業用収容体8に加えて、図4に示すように、これら培養用収容体7および作業用収容体8を連結する連結手段26を備えて本発明の培養処理システムが構成されている。
連結手段26は、金属製もしくは樹脂製の円筒状の筒状部材26aから構成され、その外径寸法は上記培養用収容体7の接続部14の筒体14aの内径寸法より小さくなるよう形成されている。
これにより、上記培養用収容体7の接続部14の筒体14aの先端を上記筒状部材26aの一端側に被せ、さらに筒体14aの上から連結手段26に付属するゴムバンド26bを掛けることで、上記筒体14aを筒状部材26aの外周面に密着させて保持させることができ、筒体14aと筒状部材26aとを気密性を維持して接続するようになっている。
また、上記培養用収容体7を連結手段26に接続させた場合と同様に、上記作業用収容体8の接続部25の筒体25aの先端を、上記筒状部材26aの培養用収容体7を接続させた一端側とは反対の他端側に被せ、筒体25aの上から連結手段26に付属するゴムバンド26cを掛けることで、筒体25aを筒状部材26aの外周面に密着させて保持させることができ、筒体25aと筒状部材26aとを気密性を維持して接続するようになっている。
このように、上記連結手段26の筒状部材26aの両端に培養用収容体7および上記作業用収容体8の接続部14、25を接続させることで、上記培養用収容体7と上記作業用収容体8とを連結させることができるとともに、筒状部材26aの内側の空間と、上記接続部14、25の内側の空間とによって、外部から隔離された連結空間Sを形成することができる。
この連結空間Sが形成された状態で、上記作業用収容体8のグローブ23を用いて上記作業用収容体8の開閉部24を開放するとともに、さらに開放された開閉部24から筒状部材26aにグローブ23に差し入れて培養用収容体7の開閉部13を開放させる。
すると、培養用収容体7および上記作業用収容体8の内部空間同士が筒状部材26aを介して連通し、上記作業用収容体8のグローブ23を用いて培養用収容体7に収容された培養容器6を作業用収容体8の内部空間へと取り出して、所要の作業を行うことが可能となっている。
【0016】
そして本実施例においては、連結手段26の筒状部材26aの内側に除染媒体を供給する除染手段27を備えており、上記連結空間Sに露出している部分を除染するようになっている。
連結空間Sに露出している除染すべき部分としては、外部に暴露された培養用収容体7における接続部14の筒体14aの内側や開閉部13とその周囲面、および作業用収容体8における接続部25の筒体25aの内側や開閉部24とその周囲面、および連結手段26における筒状部材26aの内側がある。
本実施例における除染手段27は、連結手段26の筒状部材26aの内側に除染媒体として過酸化水素蒸気からなる除染ガスを供給する供給配管28、筒状部材26aの内側から除染ガスを排出させる排出配管29を備えており、供給配管28に設けた開閉弁28aを開いて除染ガスを供給し、また排出配管29に設けた開閉弁29aを開いて除染ガスを排出させるとともに、除染手段27から清浄気体を供給してエアレーションを行う。
なお、除染手段27としては、除染媒体として除染ガスを供給するものに限らず、アルコール等の殺菌液を噴霧するようなものでも良い。また、除染手段27を備えず、連結手段26による連結後に連結空間Sに露出している部分を作業者が殺菌液を噴霧するような簡易的な除染方式を採用することもできる。
この場合、予め作業用収容体8の内部に殺菌剤の噴霧容器を収容しておき、開閉部24の開放と同時に筒状部材26aの内側に噴霧し、さらに噴霧しながら培養用収容体7の開閉部13を開放させるようにする。
また、培養作業室2の清浄度が十分に高い場合には、予め上記筒状部材26aの内側や上記開閉部13、24およびその周辺に殺菌液を噴霧し、その後連結手段26に培養用収容体7および作業用収容体8を連結するようにしてもよい。
このように連結空間Sを除染することで、上記培養用収容体7および上記作業用収容体8の開閉部13、24を開放しても、上記培養用収容体7の内部空間と作業用収容体8の内部空間とを無菌状態を維持したまま連通させることができる。
【0017】
上記培養用収容体7および作業用収容体8は上記アイソレータ3に接続することが可能となっており、図5はこのうち培養用収容体7を接続した状態を示している。
上記アイソレータ3の外側面には上記培養用収容体7や作業用収容体8を接続するための接続手段16が設けられ、当該接続手段16の設けられた位置には当該アイソレータ3の内部からグローブ3bによって操作可能な開閉扉17が設けられている。
上記接続手段16は接続部材16a備え、この接続部材16aは上記連結手段26の筒状部材26aと同様に、金属製もしくは樹脂製の円筒状の部材から構成され、その外径寸法は上記培養用収容体7の接続部14の筒体14aや、上記作業用収容体8の接続部25の筒体25aの内径寸法より小さくなるよう形成されている。
これにより、上記筒体14aや筒体25aの先端を上記接続部材16aの先端に被せ、筒体14aまたは筒体25aの上から接続手段16に付属するゴムバンド16bを掛けることで、筒体14aまたは筒体25aを接続部材16aの外周面に密着させて保持させることができ、筒体14aや筒体25aと接続部材16aとが気密性を維持して接続され、上記培養用収容体7または上記作業用収容体8をアイソレータ3に接続できるようになっている。
またこのように接続することで、上記培養用収容体7の開閉部13や上記作業用収容体8の開閉部24とアイソレータ3の開閉扉17との間には、上記接続部材16aの内側の空間と上記接続部14、25および開閉扉17とによって外部から隔離された接続空間SAが形成されるようになっている。
そして本実施例においては、アイソレータ3が備える除染手段9により、上記接続空間SAに露出している部分を除染するようになっている。接続空間SAに露出している除染すべき部分としては、外部に暴露された培養用収容体7の接続部14の筒体14aの内側や開閉部13とその周囲面、または作業用収容体8の接続部25の筒体25aの内側や開閉部24とその周囲面、および接続手段16の接続部材16aの内側とアイソレータ3の開閉扉17の外側面がある。
本実施例における除染手段9は、接続手段16の接続部材16aの内側に除染媒体として過酸化水素蒸気からなる除染ガスを供給する供給配管9A、接続部材16aの内側から除染ガスを排出させる排出配管9Bを備えており、供給配管9Aに設けた開閉弁9Aaを開いて除染ガスを供給し、また排出配管9Bに設けた開閉弁9Baを開いて除染ガスを排出させるとともに、除染手段9から清浄気体を供給してエアレーションを行う。
このような構成により、アイソレータ3の内部空間と培養用収容体7や作業用収容体8の内部空間とを無菌状態を維持したまま連通させることができる。
なお、上記接続部材16aと上記接続部14、25および開閉扉17とによって形成される接続空間SAは、上記アイソレータ3の内部空間よりも十分に狭いため、当該アイソレータ3の内部空間を上記除染手段9によって除染する場合に比べて短時間に行うことができる。
【0018】
上記構成を有する培養容器の収容体および培養処理システムを用いた細胞の培養手順について説明する。なお、細胞の培養方法や処理手法等は従来公知であるため、各工程についての詳細な説明については省略するものとする。
また、培養用収容体7と作業用収容体8は、予め内部を密封した状態でガンマ線や電子線等による放射線滅菌により内部を滅菌し無菌状態として準備されており、ディスポーザブル製品として使用後は廃棄することを想定している。なお、培養用収容体7や作業用収容体8は対応する患者数に応じて複数準備しており、連結手段26は少なくとも一つ準備するようにしている。
最初に、上記アイソレータ3の内部で培養容器6に細胞を収容する播種作業を行う。
この時、上記パスボックス3aを用いて、患者から採取した細胞や、未使用の培養容器6、その他播種作業に必要な資材や器具等を上記アイソレータ3の内部に搬入しておく。
アイソレータ3の内部では、図示しないロボットや上記グローブ3bを装着した作業者が上記資材や器具等を用いて播種作業を行い、複数の培養容器6にそれぞれ培養液とともに細胞を収容する。
【0019】
次に、アイソレータ3の内部で準備した培養容器6を上記培養用収容体7に収容する作業を行う。
まず、上記培養用収容体7を事前にアイソレータ3の接続手段16に接続し、上記除染手段9を用いて接続部材16aの内部に形成された接続空間SAを除染しておく。なお、接続空間SAを除染する作業は、上記播種作業と並行して行うようにしてもよい。
上記接続空間SAの除染が終了した状態で、上記アイソレータ3のグローブ3bを装着した作業者がアイソレータ3の開閉扉17を開放するとともに、上記培養用収容体7の開閉部13を開放して、アイソレータ3内の培養容器6を培養用収容体7に収容し、その後開閉部13を閉鎖し開閉扉17を閉鎖する。
この時、アイソレータ3の内部空間および培養用収容体7の内部空間、ならびに上記接続空間SAは無菌状態が維持されているため、培養容器6を無菌状態下で培養用収容体7に収容させることができる。
【0020】
次に、作業者は上記アイソレータ3から上記培養用収容体7を取り外し、これを上記インキュベータ4に収容して、細胞の培養を開始する作業を行う。
上記培養用収容体7は持ち運び可能であるため、作業者は培養用収容体7をインキュベータ4まで搬送し、これをそのままインキュベータ4の内部に収納することができる。
ここで、培養作業室2やインキュベータ4の内部については、無菌状態が担保されていないが、培養用収容体7は通気部12に清浄化フィルタを備え、内部が無菌状態に維持されるため、培養作業室2やインキュベータ4の内部空間の環境にかかわらず、細胞を無菌状態下で培養することが可能となっている。
インキュベータ3から培養用収容体7を離脱させると、引き続き作業用収容体8をインキュベータ3に接続させて、作業用収容体8で作業を行うために必要な資材や器具等をアイソレータ3内から収容させる。
この場合も培養収容体7の場合と同様にして、上記接続空間SAを除染してから作業用収容体8とインキュベータ3とを連通させるようにし、アイソレータ3の内部で開閉扉17を開放するが、上記作業用収容体8の開閉部24については、作業用収容体8の内部よりグローブ23を装着した作業者が開放するようになっている。また離脱させる際にはそれぞれに閉鎖してから離脱させる。
【0021】
本実施例では、上記インキュベータ4の内部に複数の培養用収容体7を収納可能であり、各培養用収容体7毎に異なる患者の細胞を収容した培養容器6を収容し、これらを同じインキュベータ4で同時に培養することも可能である。
つまり、各培養用収容体7はそれぞれ通気部12に清浄化フィルタを備えていることから、他の培養用収容体7に収容された培養容器6の細胞との間でクロスコンタミネーションが発生することはない。
また、上記培養用収容体7にはそれぞれ識別標識15が付されていることから、収容されている培養容器6および収容した細胞を特定し、そのデータを培養用収容体7の外部から確認することができ、細胞の取り違えが生じないようになっている。
【0022】
次に、上記インキュベータ4において所定の培養期間が経過すると、上記培養容器6中の培養液を交換する培養液交換作業を行う。
作業者は、該当する培養用収容体7を上記インキュベータ4より取り出し、これを上記作業台5へ移動させる。一方作業台5には培養液交換作業に必要な資材や器具等が収容された作業用収容体8と、連結手段26とを予め準備しておく。
そして作業者は、上記連結手段26を用いて培養用収容体7に作業用収容体8を連結させ、上記除染手段27により上記連結手段26の筒状部材26の内側に除染媒体として過酸化水素蒸気等を供給して、除染およびエアレーションを実行する。
続いて作業者は、作業用収容体8のグローブ23を装着して、当該作業用収容体8の開閉部24および培養用収容体7の開閉部13を開放し、上記培養用収容体7と作業用収容体8の内部を連通させると、培養用収容体7に収容された培養容器6を作業用収容体8へと移動させる。
そして作業者は、当該作業用収容体8の内部において、上記グローブ23を用いて培養容器6内の培養液を交換する作業を行い、使用済みの培養液は作業用収容体8に予め収容しておいた排液容器に回収する。
培養液の交換が終了した培養容器6は再度作業者によって培養用収容体7に収容され、その後上記開閉部13、24を閉鎖したら、培養用収容体7を上記連結手段26より離脱させ、再度インキュベータ4に収容する。
なお、培養用収容体7を離脱させる前に、上記除染手段27により連結手段26の筒状部材26aの内側に除染媒体を供給し、除染およびエアレーションを実施すれば、細胞由来のウイルスの拡散や感染を防止することができる。
一方、上記作業用収容体8については、密封された状態のまま上記連結手段26を取り外し、収容されたままの上記排液容器やその他の器具と共に医療廃棄物として廃棄することができ、細胞由来のウイルスの拡散や感染を防止することができる。
【0023】
本実施例によれば、上記培養液交換作業のような軽微な培養作業については、上記培養用収容体7と作業用収容体8を連結して行うことが可能となっており、アイソレータ3の内部で当該作業を行うよりも効率的に培養作業を行うことができる。
つまり、培養液交換作業をアイソレータ3内で行う間、その他の患者の細胞に対する培養作業はできず、また他人の患者の細胞を取り扱う際にはアイソレータ3内を除染する必要があることから、除染作業の分だけ余計に作業時間がとられてしまうこととなる。
これに対し、本実施例では培養液交換作業のような軽微な培養作業については、アイソレータ3を用いずに行うことが可能であるため、その間に他の患者の細胞への培養作業をアイソレータ3において行うことが可能となり、それに伴う除染作業が不要で、効率的に異なる患者の細胞を処理することができる。
なお、作業用収容体8の内部での作業は、上記培養用収容体7と連結または連通していない状態であっても、上記開閉部24を密封したまま上記グローブ23を用いて行うことができる。
【0024】
その後、所定の培養期間が経過すると、増殖した細胞を他の培養容器6に移し替える継代作業を行うが、この作業はアイソレータ3内で行う。
そこで、作業者は該当する培養用収容体7をインキュベータ4より取り出し、これを上記アイソレータ3の接続手段16を介して接続して、収容されている培養容器6をアイソレータ3内に移動させ、アイソレータ3において上記継代作業を行う。
この場合に、上記特許文献2に記載の培養容器収納ボックスを使用した場合には、アイソレータ3に搬入するためにパスボックス3aで培養容器収納ボックスの外面を除染しなければならず、この除染作業は接続手段16における接続空間SAの除染よりも容積が大きいことから処理に時間が掛かることとなる。
また、除染ガスを用いる場合は、フィルタ部から除染ガスが内部に流入して細胞に悪影響を及ぼす危険性があり、フィルタ部を塞いだ場合であっても、除染やエアレーションに数時間を要するため、その間は温度や湿度および炭酸ガス等の気体の管理ができないことによる細胞への影響が懸念される。
このようにして継代作業が終了し、培養容器6を再度培養用収容体7に収容させたら、上記開閉扉17および開閉部13を閉鎖し、培養用収容体7をアイソレータ3より離脱させ、これをそのままインキュベータ4に収納する。
この作業においても、培養用収容体7をアイソレータ3に接続することで行えるため、培養用収容体7をアイソレータ3内に搬入して行う場合に比べて効率的かつ安全に作業を行うことができる。
【0025】
ここで説明した作業の他にも、上記細胞の培養に関する培養作業がある場合には、当該作業に必要な資材や作業内容に応じて、上記アイソレータ3を用いた作業とするか、上記作業用収容体8を用いた作業をとするかを決定すればよい。
そして細胞の培養が完了したら、培養容器6を上記培養用収容体7に収容した状態で、細胞培養施設1から外部の医療機関等に持ち出すことが可能である。
また、本発明の培養容器の収容体および培養処理システムを使用することにより、再生医療に利用される細胞の培養処理をより柔軟に実行することが可能となる。
すなわち、個人の細胞を保管している細胞バンクのような施設において、細胞を培養用収容体7に収容させ、また培養液や資材や器具等を製造メーカーで無菌的に作業用収容体8に収容させて出荷し、それら培養用収容体7や作業用収容体8を細胞培養施設や細胞加工施設に搬入するようにする。
これらの施設では、様々な患者由来の細胞を収容した培養容器を培養用収容体7に収容して取り扱い、それらはICタグやバーコード等の識別標識15により管理される。
細胞培養施設や細胞加工施設においては、単なる培養のみならず細胞増幅や分化誘導、組織構築等の操作や、分離、精製、梱包、保存等の作業が行われるが、その場合も工程間において培養用収容体7に収容して移送することで、コンタミネーションを防止しつつ識別標識15による管理が可能となる。
またそれにより、一つの施設で全工程を完結する必要性はなく、工程毎に施設や業者を移りながら培養や加工等の処理を行うことも可能となる。
また、作業用収容体8を用いることで、所定の清浄度を維持する培養作業室2や無菌性を担保するアイソレータ3等の設備が整備されていない施設においても作業を行うことが可能となり、感染等を防止しながら適切に廃棄物を処理することができる。
そして、細胞は培養用収容体7に収容した状態で工程を移行させることが可能で、最終的に培養用収容体7に収容した状態で、医療機関等の施設に搬入して、要求される細胞や組織、細胞製品を提供することが可能となり、細胞バンク等の細胞提供機関や原材料や資材の製造メーカーから最終の医療機関まで、一貫した管理を実現することができる。
【0026】
図6は第2実施例にかかる培養容器の収容体を示し、主に作業用収容体8に代えて利用できる収容体およびその使用方法を説明する図となっている。
本実施例における作業用収容体108は、柔軟性を有する樹脂製の袋体からなる収容部121と、収容部121に設けられた清浄化フィルタを備えた通気部122と、収容部121に設けられたグローブ123とから構成され、作業用収容体8の開閉部24や接続部25に相当する構成としては、上記連結手段26の筒状部材26aを覆うことができ、さらに開封した後に束ねて密封できる余裕を袋体からなる上記収容部121に持たせたことにある。なお、収容部121の内部に予めリング状のゴムバンド131収容させている。
本実施例の作業用収容体108は、通気部122を除いて密封されるとともに、ガンマ線や電子線等の放射線滅菌により内部が滅菌されており、通気部122に設けられた清浄化フィルタによって流入する外気が清浄化され、外部からの菌や微生物等の侵入が防止されて内部が無菌状態に維持されている。
【0027】
以下、本実施例にかかる作業用収容体108を、上記連結手段26に接続して上記培養用収容体7と連結する方法について説明する。
まず図6(a)に示すように、上記収容部121が開封されていない状態の作業用収容体108により、作業者が上記グローブ123を用いて収容部121の内部から操作を行い、当該収容部121の一部で連結手段26の筒状部材26aの端部を覆う。この際、通気部122により空気が自由に流通するため、作業性は良い。
続いて作業者は、袋体収容部121の内部で上記ゴムバンド131を操作し、上記収容部121における上記連結部材26aを覆った部分にゴムバンド131を掛けて、当該筒状部材26aの外周面に保持させて、開放されている筒状部材26aを封鎖する。
この状態において、収容部121は開封されていないため、その内部空間の無菌状態は維持されており、また上記収容部121で上記筒状部材26aの端部を覆うことで、上記筒状部材26aの内側には、外部から隔離された連結空間Sが形成される。
その後、上記第1実施例の培養用収容体7と作業用収容体8を連結させた場合と同様にして、除染手段27によって連結空間Sに除染媒体を供給して、連結空間Sに露出している培養用収容体7の開閉部13や接続部14の部分や筒状部材26の内周面、および収容部121の外面を除染する。
【0028】
続いて、図6(b)に示すように、作業者は上記収容部121の内部から、グローブ123を介して上記ゴムバンド31の内側で連結手段26の筒状部材26aの端部の開口を覆っている収容部121の部分を破り、これにより収容部121を開封し、さらに培養用収容体7の開閉部13を開放する。
このように、収容部21の一部をゴムバンド131の内側で開封することで、作業用収容体108の内部空間と培養用収容体7の内部空間とを連結手段26を介して無菌状態を維持したまま連通させることができる。
その後は、上記第1実施例と同様、作業者は上記グローブ123を用いて培養用収容体7に収容した培養容器6を、作業用収容体108の内部へと移動させ、所要の培養作業を行うことができる。
【0029】
そして、作業が終了すると、再び培養容器6を培養用収容体7に収容させて開閉部13を閉鎖し、図6(c)に示すように、作業者は上記収容部121の外部で、当該収容部121における上記連結手段26の筒状部材26a付近の部分を束ねて絞り、当該絞った部分を例えばテープやバンド、ベルト、紐などによって密封した状態で固定する。これにより、収容部121の内部空間を外部空間から隔離した状態となり、開放された収容部121が閉鎖される。
その後、作業者は上記筒状部材26aに装着されているゴムバンド131を取り外して、収容部121を筒状部材26aの端部から離脱させることで、作業用収容体108を内部の資材等とともに医療廃棄物として廃棄することができる。
【0030】
上記第2実施例の作業用収容体108は、接続部として収容部121の一部で筒状部材26aの端部の開口を覆ってゴムバンド131で保持させ、また収容部121の一部を開閉部として、作業者が開封し、その後収容部21を外部で束ねて絞り、固定することで封鎖するため、開閉部や接続部として収容部121に特別な構成を要さず、上記第1実施例に比べてより安価な収容体として作業用収容体108を得ることができる。
【0031】
図7は第3実施例にかかる培養処理システムを示し、特に連結手段26およびその使用方法を説明する図となっている。
本実施例の連結手段26は上記第1実施例と同様、筒状部材26aから構成されており、その両端に上記培養用収容体7および作業用収容体8の接続部14、25を接続するようになっている。
また上記第1実施例同様、筒状部材26aの内側に形成される連結空間Sには、除染手段27によって除染媒体が供給されるようになっている。
そして本実施例の筒状部材26aの外周面には開口が形成されており、当該開口に作業者が装着可能なグローブ32が設けられている。
上記グローブ32を装着することで、作業者は上記筒状部材26aの内側に手を入れて培養用収容体7の開閉部13を開放することができ、筒状部材26aの内部で培養容器6を移動させることが可能となっている。
図7には1つのグローブ32を示しているが、筒状部材26aの対向する箇所にもグローブ32を備えており、両側から手を差し入れることができるようになっている。
【0032】
本実施例のような連結手段26を用いることで、筒状部材26aの両側に培養用収容体7を接続させて、グローブ32を用いて一方の培養用収容体7の内部で作業を実施することも可能で、この場合には上記作業用収容体8を省略することも可能となる。
また、培養用収容体7に収容した培養容器6を相互に移動させることが可能となり、例えば同じ患者の細胞について整理することが可能となる。
【0033】
なお上記各実施例において、作業者が殺菌液を噴霧する簡易的な除染方式が採用可能な場合、上記第1実施例において連結手段26を省略し、上記培養用収容体7の接続部14と作業用収容体8の接続部25とを直接接続することも考えられる。
これと同様、第2実施例においても連結手段26を省略して、上記培養用収容体7の接続部14に対して、作業用収容体108の収容部121の一部を直接被せて覆い、ゴムバンド131で保持させて接続することが考えられる。
【符号の説明】
【0034】
1 細胞培養施設 2 培養作業室
3 アイソレータ 4 インキュベータ
5 作業台 6 培養容器
7 培養用収容体 8 作業用収容体
11、21 収容体 12、22 通気部
13、24 開閉部 14、25 接続部
23 グローブ 26 連結手段
S 連結空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7