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特許7216340シリコン単結晶の育成方法およびシリコン単結晶の引き上げ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】シリコン単結晶の育成方法およびシリコン単結晶の引き上げ装置
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20230125BHJP
   C30B 15/04 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
C30B29/06 502G
C30B15/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019162971
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2021042086
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】深津 宣人
(72)【発明者】
【氏名】横山 竜介
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-183688(JP,A)
【文献】特開2010-030860(JP,A)
【文献】特開2009-221062(JP,A)
【文献】特開2011-037678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/06
C30B 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョクラルスキー法によるシリコン単結晶の育成方法であって、
前記シリコン単結晶を回転させながら引き上げる引き上げ工程と、
前記シリコン単結晶の直胴部の引き上げ中に粒状ドーパントをシリコン融液の液面上に投下するドーパント投下工程と、を有し、
前記ドーパント投下工程では、前記粒状ドーパントの投下位置を、前記シリコン融液の液面において前記直胴部から離れる流れが支配的な領域上に設定することを特徴とするシリコン単結晶の育成方法。
【請求項2】
前記シリコン融液に水平磁場を印加する磁場印加工程を有し、
前記ドーパント投下工程では、
前記シリコン融液の液面の中心を原点、鉛直方向の上方をZ軸の正方向、水平磁場印加方向をY軸の正方向とした右手系のXYZ直交座標系において、前記原点を含み前記水平磁場印加方向に直交する磁場直交断面上で、Y軸の正方向を向いて時計回りまたは反時計回りの回転方向を有する対流が存在する状態において、
鉛直方向上方から見た前記シリコン単結晶の回転方向および前記対流の回転方向に基づいて前記粒状ドーパントの投下位置を設定することを特徴とする請求項1に記載のシリコン単結晶の育成方法。
【請求項3】
前記ドーパント投下工程では、
前記対流の回転方向が時計回りであり、かつ、前記シリコン単結晶の回転方向が時計回りである場合に、前記投下位置を前記X軸と前記Y軸で構成される座標平面の第四象限とし、
前記対流の回転方向が反時計回りであり、かつ、前記シリコン単結晶の回転方向が反時計回りである場合に、前記投下位置を前記座標平面の第一象限とし、
前記対流の回転方向が反時計回りであり、かつ、前記シリコン単結晶の回転方向が時計回りである場合に、前記投下位置を前記座標平面の第二象限とし、
前記対流の回転方向が時計回りであり、かつ、前記シリコン単結晶の回転方向が反時計回りである場合に、前記投下位置を前記座標平面の第三象限とすることを特徴とする請求項2に記載のシリコン単結晶の育成方法。
【請求項4】
前記投下位置が、前記X軸と前記Y軸で構成される座標平面の第一象限、第二象限、第三象限、および第四象限のうちひとつであるシリコン単結晶の引き上げ装置を用いるシリコン単結晶の育成方法であって、
前記磁場印加工程では、前記投下位置が、前記シリコン融液の液面において前記直胴部から離れる流れが支配的な領域上となるまで、前記水平磁場の印加を繰り返すことを特徴とする請求項2に記載のシリコン単結晶の育成方法。
【請求項5】
前記直胴部の直径をRS、前記投下位置のY軸座標の絶対値をYaとすると、前記投下位置は、Ya<RSを満たすように設定されていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のシリコン単結晶の育成方法。
【請求項6】
チョクラルスキー法によるシリコン単結晶の引き上げ装置であって、
石英ルツボと、
前記石英ルツボ内のシリコン融液を加熱する加熱装置と、
前記シリコン単結晶を回転可能に引き上げる引き上げ軸と、
前記シリコン融液に対して水平磁場を印加する磁場印加装置と、
前記シリコン融液の液面の中心を原点、鉛直方向の上方をZ軸の正方向、水平磁場印加方向をY軸の正方向とした右手系のXYZ直交座標系において、前記X軸と前記Y軸で構
成される座標平面の第一象限、第二象限、第三象限および第四象限のそれぞれに粒状ドーパントを投下するドーパント投下装置と、を備えることを特徴とするシリコン単結晶の引き上げ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン単結晶の育成方法およびシリコン単結晶の引き上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン単結晶の製造にはチョクラルスキー法(以下、CZ法という)と呼ばれる方法が使われる。CZ法を用いた製造方法においては、シリコン単結晶の抵抗率は、シリコン融液に添加されるドーパントによって調節される。シリコン融液にドーパントを添加する方法として、シリコン単結晶の引き上げ中に粒状ドーパントを投下することによって、結晶中のドーパント濃度を一定に保つ技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平3-247585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、例えば、導管を介してシリコン融液に投下される粒状ドーパントが溶融することなくシリコン単結晶に付着して、有転位化することがあるという課題があった。
【0005】
本発明は、チョクラルスキー法によりシリコン単結晶を育成する際に、投下した粒状ドーパントが溶融前に単結晶に付着して有転位化することを防止することができるシリコン単結晶の育成方法およびシリコン単結晶の引き上げ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシリコン単結晶の育成方法は、チョクラルスキー法によるシリコン単結晶の育成方法であって、前記シリコン単結晶を回転させながら引き上げる引き上げ工程と、前記シリコン単結晶の直胴部の引き上げ中に粒状ドーパントをシリコン融液の液面上に投下するドーパント投下工程と、を有し、前記粒状ドーパントの投下位置を、前記シリコン融液の液面において前記直胴部から離れる流れが支配的な領域上に設定することを特徴とする。
【0007】
上記シリコン単結晶の育成方法において、前記シリコン融液に水平磁場を印加する磁場印加工程を有し、前記ドーパント投下工程では、前記シリコン融液の液面の中心を原点、鉛直方向の上方をZ軸の正方向、水平磁場印加方向をY軸の正方向とした右手系のXYZ直交座標系において、前記原点を含み前記水平磁場印加方向に直交する磁場直交断面上に、Y軸の正方向を向いて時計回りまたは反時計回りの回転方向を有する対流が存在する状態において、鉛直方向上方から見た前記シリコン単結晶の回転方向および前記対流の回転方向に基づいて前記粒状ドーパントの投下位置を設定することが好ましい。
【0008】
上記シリコン単結晶の育成方法において、前記ドーパント投下工程では、前記対流の回転方向が時計回りであり、かつ、前記シリコン単結晶の回転方向が時計回りである場合に、前記投下位置を前記X軸と前記Y軸で構成される座標平面の第四象限とし、前記対流の回転方向が反時計回りであり、かつ、前記シリコン単結晶の回転方向が反時計回りである場合に、前記投下位置を前記座標平面の第一象限とし、前記対流の回転方向が反時計回りであり、かつ、前記シリコン単結晶の回転方向が時計回りである場合に、前記投下位置を前記座標平面の第二象限とし、前記対流の回転方向が時計回りであり、かつ、前記シリコン単結晶の回転方向が反時計回りである場合に、前記投下位置を前記座標平面の第三象限とすることが好ましい。
【0009】
上記シリコン単結晶の育成方法において、前記投下位置が、前記X軸と前記Y軸で構成される座標平面の第一象限、第二象限、第三象限、および第四象限のうちひとつであるシリコン単結晶の引き上げ装置を用いるシリコン単結晶の育成方法であって、前記磁場印加工程では、前記投下位置が、前記シリコン融液の液面において前記直胴部から離れる流れが支配的な領域上となるまで、前記水平磁場の印加を繰り返すことが好ましい。
【0010】
上記シリコン単結晶の育成方法において、前記直胴部の直径をRS、前記投下位置のY軸座標の絶対値をYaとすると、前記投下位置は、Ya<RSを満たすように設定されていることが好ましい。
【0011】
本発明のシリコン単結晶の引き上げ装置は、チョクラルスキー法によるシリコン単結晶の引き上げ装置であって、石英ルツボと、前記石英ルツボ内のシリコン融液を加熱する加熱装置と、前記シリコン単結晶を回転可能に引き上げる引き上げ軸と、前記シリコン融液に対して水平磁場を印加する磁場印加装置と、前記シリコン融液の液面の中心を原点、鉛直方向の上方をZ軸の正方向、水平磁場印加方向をY軸の正方向とした右手系のXYZ直交座標系において、前記X軸と前記Y軸で構成される座標平面の第一象限、第二象限、第三象限および第四象限のそれぞれに粒状ドーパントを投下するドーパント投下装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、投下された粒状ドーパントが溶融する前にシリコン単結晶に付着して有転位化することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る引き上げ装置の概略断面図である。
図2図1のII-II線に沿った断面における要部の断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る温度測定装置の配置状態を示す模式図である。
図4】対流の回転方向、シリコン単結晶の回転方向を説明する模式図である。
図5】本発明の実施形態における水平磁場の印加方向とシリコン融液の対流の方向との関係を示す模式図である。
図6】本発明の実施形態におけるシリコン融液の対流の変化を示す模式図である。
図7】対流の回転方向が反時計回りであり、シリコン単結晶の回転方向が時計回りである場合の投下位置を示す図である。
図8】対流の回転方向が反時計回りである場合のシリコン融液の液面における流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
〔引き上げ装置〕
図1は、本発明の実施形態に係る引き上げ装置1の概略断面図である。図2は、図1のII-II線に沿った断面における要部の断面図である。図2では、簡略化のため、主にルツボ3と磁場印加装置5のみを示している。また、図中には、構造の理解の容易化のため、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を示す(他の図においても同様とする。)。X軸およびY軸は水平方向に対応し、Z軸は鉛直方向に対応する。
なお、図1は、Y軸の負方向から正方向に向かう方向から見た引き上げ装置1の概略断面図であり、以下、「Y軸の負方向から正方向に向かう方向」を単に「Y軸の正方向」といい、その反対の方向を「Y軸の負方向」という。他の軸(X軸、Z軸)においても同様とする。
【0015】
引き上げ装置1は、チョクラルスキー法によりシリコン単結晶Sを引き上げ、育成を行う装置である。図1および図2に示されるように、引き上げ装置1は、外郭を構成するチャンバ2と、チャンバ2の中心部に配置されるルツボ3と、ヒーター4と、磁場印加装置5と、ドーパント投下装置15と、制御装置18と、を備える。
【0016】
ルツボ3は、鉛直方向上方から見て(Z軸の負方向を向いて)円形をなす、シリコン融液Mが貯留される容器である。ルツボ3は、内側の石英ルツボ3Aと、外側の黒鉛ルツボ3Bとから構成される二重構造である。ルツボ3は、回転および昇降が可能でZ軸に沿って延びる支持軸6の上端部に固定されている。
【0017】
ヒーター4は、ルツボ3内のシリコン融液Mを加熱する加熱装置である。ヒーター4は、円筒形状をなし、ルツボ3の外側においてルツボ3の中心軸Aと同軸状に配置されている。ヒーター4は、抵抗加熱式の所謂カーボンヒーターである。ヒーター4の外側には、チャンバ2の内面に沿って断熱材7が設けられている。
【0018】
磁場印加装置5は、ルツボ3内のシリコン融液Mに対して水平磁場を印加する装置である。本実施形態の磁場印加装置5は、水平磁場印加方向(以下、磁場方向MDと呼ぶ。)がY軸の正方向となるように構成されている。水平磁場の磁場強度は例えば0.18テスラ~0.32テスラである。
磁場印加装置5は、それぞれ電磁コイルで構成された第1の磁性体5Aおよび第2の磁性体5Bを備える。第1の磁性体5Aおよび第2の磁性体5Bは、チャンバ2の外側においてルツボ3を挟んで対向するように設けられている。
【0019】
ルツボ3の上方には、支持軸6と同軸上に引き上げ軸8が配置されている。引き上げ軸8は、ワイヤなどによって形成されている。引き上げ軸8は、軸回りに時計回り(CW)または反時計回り(CCW)に所定の速度で回転する。引き上げ軸8の下端には種結晶SCが取り付けられている。引き上げ軸8は、種結晶SC(シリコン単結晶S)を、鉛直方向上方から見て(Z軸の負方向を向いて)時計回りまたは反時計回りに回転させる。
【0020】
チャンバ2内には、熱遮蔽体9が配置されている。熱遮蔽体9は、筒状をなし、ルツボ3内のシリコン融液Mの上方で育成中のシリコン単結晶Sを囲む。
熱遮蔽体9は、育成中のシリコン単結晶Sに対して、ルツボ3内のシリコン融液Mやヒーター4やルツボ3の側壁からの高温の輻射熱を遮断する。熱遮蔽体9は、結晶成長界面である固液界面SIの近傍に対しては、外部への熱の拡散を抑制し、単結晶中心部および単結晶外周部の引き上げ軸方向の温度勾配を制御する役割を担う。
【0021】
チャンバ2の上部には、ガス導入口10が設けられている。ガス導入口10は、アルゴンガスなどの不活性ガスGをチャンバ2内に導入する。チャンバ2の下部には、排気口11が設けられている。排気口11は、図示しない真空ポンプの駆動により、チャンバ2内の気体を吸引して排出する。ガス導入口10からチャンバ2内に導入された不活性ガスGは、育成中のシリコン単結晶Sと熱遮蔽体9との間を下降する。次いで、不活性ガスGは、熱遮蔽体9の下端とシリコン融液Mの液面との隙間を経た後、熱遮蔽体9の外側、さらにルツボ3の外側に向けて流れる。その後、不活性ガスGは、ルツボ3の外側を下降し、排気口11から排出される。
【0022】
ドーパント投下装置15は、ルツボ3内のシリコン融液M中に、粒状ドーパントを投下する装置である。粒状ドーパントは、シリコン単結晶Sにドープされるドーパントであって、個体のドーパントを粒状に形成した添加物である。ドーパントの種類としては、製造されるシリコン半導体が、n型半導体であれば、リン(P)、アンチモン(Sb)、ヒ素(As)が挙げられ、p型半導体であれば、ホウ素(B)が挙げられる。
【0023】
ドーパント投下装置15は、ドーパント収容部15Aと、複数の導管16と、を有している。本実施形態のドーパント投下装置15は4本の導管16を有している(図1には、2本の導管16のみ示す。)。
ドーパント収容部15Aは、その内部に粒状ドーパントを収容する容器である。ドーパント収容部15Aは、例えば、チャンバ2の上方に図示しないブラケットを介して配置することができる。
【0024】
導管16は、ドーパント収容部15A内の粒状ドーパントをシリコン融液Mに導く管状の部材である。各々の導管16は、その上端が投下位置選択装置17を介してドーパント収容部15Aに接続され、その下端16Bがシリコン融液Mの上方で開口されている。ドーパント収容部15Aに収容されている粒状ドーパントは、導管16を通ってシリコン融液Mに投下される。粒状ドーパントの投下位置は、導管16の下端16Bの位置である。
【0025】
投下位置選択装置17は、ドーパント収容部15Aから供給される粒状ドーパントを少なくとも一つの導管16に導入する機能を有している。投下位置選択装置17は、制御装置18によって制御可能であり、例えば、複数の電磁バルブによって構成することができる。
【0026】
次に、各々の導管16の下端16Bの位置(粒状ドーパントの投下位置)について説明する。
図2に示すように、4本の導管16のうち、第1の導管161は、シリコン融液Mの液面MAの中心を原点、鉛直方向の上方をZ軸の正方向、磁場方向MDをY軸の正方向とした右手系のXYZ直交座標系のX軸とY軸で構成される座標平面において、シリコン融液Mの液面MAの第一象限に粒状ドーパントを投下するように形成されている。
第一象限は、X軸とY軸で構成される座標平面においてXもYも共に正の値を取る領域であり、第二象限は、X軸とY軸で構成される座標平面においてXは負の値、Yは正の値を取る領域であり、第三象限は、X軸とY軸で構成される座標平面においてXもYも共に負の値を取る領域であり、第四象限は、X軸とY軸で構成される座標平面においてXは正の値、Yは負の値を取る領域である。
【0027】
より具体的には、第1の導管161の下端16B1は、上方から見て(Z軸の負方向を向いて)、シリコン融液Mの液面MAの第一象限の領域内であって、Y軸座標の絶対値が、引き上げ中のシリコン単結晶Sの直胴部の半径RSを超えない領域に配置されている。
換言すれば、第1の導管161による粒状ドーパントの投下位置は、シリコン単結晶Sの直胴部の半径をRS、投下位置のY軸座標の絶対値をYaとすると、Ya<RSを満たすように設定されている。
【0028】
さらに、石英ルツボ3Aの内周面とシリコン単結晶Sの外周面との距離をLとすると、第1の導管161の下端16B1は、上方から見て、X軸とY軸で構成される座標平面において、原点を中心とした半径RS+L/2の円よりも外側に配置されている。
【0029】
すなわち、第1の導管161による粒状ドーパントの投下位置は、X軸とY軸で構成される座標平面の第一象限内であって、Y軸座標の絶対値が引き上げ中のシリコン単結晶Sの直胴部の半径RSを超えない領域、かつ、X軸とY軸で構成される座標平面において、原点を中心とした半径RS+L/2の円よりも外側の領域T1に設定されている。
【0030】
同様に、第2の導管162による粒状ドーパントの投下位置(第2の導管162の下端16B2)は、X軸とY軸で構成される座標平面の第二象限内であって、Y軸座標の絶対値Yaが引き上げ中のシリコン単結晶Sの直胴部の半径RSを超えない領域、かつ、X軸とY軸で構成される座標平面において、原点を中心とした半径RS+L/2の円よりも外側の領域T2に設定されている。
第3の導管163による粒状ドーパントの投下位置(第3の導管163の下端16B3)は、X軸とY軸で構成される座標平面の第三象限内であって、Y軸座標の絶対値Yaが引き上げ中のシリコン単結晶Sの直胴部の半径RSを超えない領域、かつ、X軸とY軸で構成される座標平面において、原点を中心とした半径RS+L/2の円よりも外側の領域T3に設定されている。
第4の導管164による粒状ドーパントの投下位置(第4の導管164の下端16B4)は、X軸とY軸で構成される座標平面の第四象限内であって、Y軸座標の絶対値Yaが引き上げ中のシリコン単結晶Sの直胴部の半径RSを超えない領域、かつ、X軸とY軸で構成される座標平面において、原点を中心とした半径RS+L/2の円よりも外側の領域T4に設定されている。
【0031】
制御装置18は、投下位置選択装置17と電気的に接続されており、ドーパント収容部15Aから供給される粒状ドーパントを、4本の導管16のうち少なくとも1本の導管16に導くように、投下位置選択装置17を制御する。
【0032】
引き上げ装置1は、シリコン融液Mの液面MAの温度を測定する温度測定装置12を備える。温度測定装置12は、図1図3に示すように、シリコン融液Mの液面MA上の2箇所の測定点P1,P2(P)を測定するために、2つの反射部13および2つの放射温度計14を有する。温度測定装置12は制御装置18と電気的に接続されている。
【0033】
反射部13は、チャンバ2内部に設置されている。反射部13は、図3に示すように、その下端からシリコン融液Mの液面MAまでの距離(高さ)Kが600mm以上5000mm以下となるように設置されていることが好ましい。また、反射部13は、反射面13Aと水平面Fとのなす角度θfが40°以上50°以下となるように設置されていることが好ましい。このような構成によって、第1,第2の測定点P1,P2から、重力方向の反対方向にそれぞれ出射する輻射光RLの入射角θ1および反射角θ2の和が、80°以上100°以下となる。
【0034】
反射部13としては、耐熱性の観点から、一面を鏡面研磨して反射面13Aとしたシリコンミラーを用いることが好ましい。
放射温度計14は、チャンバ2外部に設置されている。放射温度計14は、チャンバ2に設けられた石英窓2Aを介して入射される輻射光RLを受光して、測定点Pの温度を非接触で測定する。
【0035】
なお、詳述はしないが、制御装置18は、ヒーター4、磁場印加装置5、支持軸6などに接続され、それぞれを制御している。
【0036】
図2に示すように、第1の測定点P1および第2の測定点P2は、ルツボ3の中心軸Aを含み、かつ、磁場方向MDと直交する仮想面F1上に設定されている。第1の測定点P1と第2の測定点P2とは、中心軸Aに対して対称をなす位置に設定されている。
温度測定装置12は、中心軸Aから第1の測定点P1までの距離をR1、中心軸Aから第2の測定点P2までの距離をR2、石英ルツボ3Aの内径の半径をRCとした場合、第1の測定点P1は以下の式(1)を、第2の測定点P2は以下の式(2)を満たす位置に設定することが好ましい。
0.375≦R1/RC<1 … (1)
0.375≦R2/RC<1 … (2)
R1/RCの値と、R2/RCの値とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0037】
〔対流の回転方向〕
本発明者らは、図4および図5に示すように、石英ルツボ3A中に固体の多結晶シリコン原料を投入して、融解した後、水平磁場を印加すると、シリコン融液M中に対流CFが生じることを知見した。以下、対流CFのメカニズムについて説明する。図4は、シリコン単結晶Sの回転方向および対流CFの回転方向を説明する模式図である。
【0038】
対流CFは、シリコン融液Mの液面MAとルツボ3の底面との中間で、磁場方向MDに延びる仮想軸線Vを中心にシリコン融液Mが仮想軸線V回りに流動するロール状の流れである。シリコン融液Mは、対流CFが生じることによって安定状態となる。
対流CFの回転方向は、図4および図5(A)に示すように、XYZ直交座標系において、原点を含み磁場方向MDに直交する磁場直交断面上で、Y軸の正方向を向いて時計回り(CW)が優勢となる場合と、図4および図5(B)に示すように、反時計回り(CCW)が優勢となる場合の2つのパターンがあった。
【0039】
このような現象の発生は、発明者らは、以下のメカニズムによるものであると推測した。
まず、水平磁場を印加せず、石英ルツボ3Aを回転させない状態では、石英ルツボ3Aの外周近傍でシリコン融液Mが加熱されるため、シリコン融液Mの底部から液面MAに向かう上昇方向の流れが生じる。上昇したシリコン融液Mは、シリコン融液Mの液面MAで冷却され、石英ルツボ3Aの中心で石英ルツボ3Aの底部に戻り、下降方向の流れが生じる。
【0040】
外周部分で上昇し、中央部分で下降する流れが生じた状態では、熱対流による不安定性により下降流の位置は無秩序に移動し、中心からずれる。このような下降流は、シリコン融液Mの液面MAにおける下降流に対応する部分の温度が最も低く、液面MAの外側に向かうにしたがって温度が徐々に高くなる温度分布によって発生する。
例えば、図6(A)の状態では、中心が石英ルツボ3Aの回転中心からずれた第1の領域A1の温度が最も低く、その外側に位置する第2の領域A2、第3の領域A3、第4の領域A4、第5の領域A5の順に温度が高くなっている。
【0041】
そして、図6(A)の状態で、水平磁場を磁場方向MDに印加すると、石英ルツボ3Aの上方から見たときの下降流DFの回転が徐々に拘束され、図6(B)に示すように、磁場方向MDと直交する水平方向にオフセットした位置に拘束される。
なお、下降流DFの回転が拘束されるのは、シリコン融液Mに作用する水平磁場の強度が特定強度よりも大きくなってからと考えられる。このため、下降流DFの回転は、水平磁場の印加開始直後には拘束されず、印加開始から所定時間経過後に拘束される。
【0042】
一般に磁場印加によるシリコン融液M内部の流動変化は、以下の式(3)で得られる無次元数であるMagnetic Number Mで表されることが報告されている(Jpn. J. Appl. Phys., Vol.33(1994) Part.2 No.4A, pp.L487-490)。
【0043】
【数1】
【0044】
式(3)において、σはシリコン融液Mの電気伝導度、Bは印加した磁束密度、hはシリコン融液Mの深さ、ρはシリコン融液Mの密度、vは無磁場でのシリコン融液Mの平均流速である。
本実施形態において、下降流DFの回転が拘束される水平磁場の特定強度の最小値は、0.01テスラであることがわかった。0.01テスラでのMagnetic Numberは1.904である。本実施の形態とは異なるシリコン融液Mの量や石英ルツボ3Aの径においても、Magnetic Numberが1.904となる磁場強度(磁束密度)から、磁場による下降流DFの拘束効果(制動効果)が発生すると考えられる。
【0045】
図6(B)に示す状態から水平磁場の強度をさらに大きくすると、図6(C)に示すように、下降流DFの右側と左側における上昇方向の流れの大きさが変化し、図6(C)であれば、下降流DFの左側の上昇方向の流れが優勢になる。
最後に、磁場強度が0.2テスラになると、図6(D)に示すように、下降流DFの右側の上昇方向の流れが消え去り、左側が上昇方向の流れ、右側が下降方向の流れとなり、時計回り(CW)の対流CFとなる。時計回りの対流CFの状態では、図5(A)に示すように、磁場直交断面において、シリコン融液Mにおける右側領域RRから左側領域LRに向かうにしたがって、温度が徐々に高くなっている。
一方、図6(A)の最初の下降流DFの位置を石英ルツボ3Aの回転方向に180°ずらせば、下降流DFは、図6(C)とは位相が180°ずれた左側の位置で拘束され、反時計回り(CCW)の対流CFとなる。反時計回りの対流CFの状態では、図5(B)に示すように、シリコン融液Mにおける右側領域RRから左側領域LRに向かうにしたがって、温度が徐々に低くなっている。
このような時計回りや反時計回りのシリコン融液Mの対流CFは、水平磁場の強度を0.2テスラ未満にしない限り、維持される。
【0046】
〔シリコン単結晶の育成方法〕
次に、本実施形態のシリコン単結晶の引き上げ装置1を用いたシリコン単結晶の育成方法について説明する。本実施形態のシリコン単結晶の育成方法は、粒状ドーパントの投下位置を考慮して行われるものである。
シリコン単結晶の育成方法は、加熱工程と、引き上げ工程と、磁場印加工程と、温度測定工程と、対流回転方向推定工程と、ドーパント投下工程と、をこの順序で有する。なお、工程の順序については、適宜変更してもよい。
【0047】
加熱工程は、チャンバ2内を減圧下の不活性ガス雰囲気に維持した状態で、ルツボ3を回転させるとともに、無磁場状態でルツボ3内のシリコン原料を溶融するとともに、シリコン融液Mを加熱する工程である。
引き上げ工程は、シリコン単結晶Sを回転させながら引き上げる工程である。
磁場印加工程は、シリコン融液Mの温度を保持しながら磁場印加装置5を制御して、回転している石英ルツボ3A内のシリコン融液Mに対して水平磁場を印加する工程である。
水平磁場が印加されることによって、シリコン融液Mに、図5(A)に示すような磁場直交断面で時計回り(CW)の対流CF、または、図5(B)に示すような反時計回り(CCW)の対流CFが発生する。
【0048】
温度測定工程は、図3および図5に示すように、対流CFの回転方向が固定された後、温度測定装置12によってシリコン融液Mの液面MAの温度を測定する工程である。なお、対流CFの回転方向が固定されたことは、例えば、水平磁場の印加開始からの経過時間に基づいて判断することができる。
【0049】
対流回転方向推定工程は、温度測定装置12によって測定された温度に基づいて、対流CFの回転方向を推定する工程である。
制御装置18は、第1の測定点P1の温度が第2の測定点P2の温度よりも高い場合、磁場直交断面で時計回り(CW)の対流CFが発生していると推定し、第1の測定点P1の温度が第2の測定点P2の温度よりも低い場合、磁場直交断面で反時計回り(CCW)の対流CFが発生していると推定する。
【0050】
ドーパント投下工程は、シリコン単結晶Sの直胴部の引き上げ中にシリコン融液M中に粒状ドーパントを投下する工程である。ドーパント投下工程では、粒状ドーパントの投下位置を、シリコン融液Mの液面MAにおいてシリコン単結晶Sの直胴部から離れる流れが支配的な領域上に設定する。具体的には、ドーパント投下工程では、シリコン単結晶Sの回転方向および対流CFの回転方向に基づいて、以下の表1に示すようなルールで粒状ドーパントの投下位置を設定する。
【0051】
【表1】
【0052】
すなわち、制御装置18は、対流CFの回転方向が時計回りであり、かつ、シリコン単結晶Sの回転方向が時計回りである場合に、第4の導管164に粒状ドーパントを導入するように投下位置選択装置17を制御する。これにより、粒状ドーパントの投下位置は、X軸とY軸で構成される座標平面の第四象限内であって、Y軸座標の絶対値が引き上げ中のシリコン単結晶Sの直胴部の半径RSを超えない領域、かつ、X軸とY軸で構成される座標平面において、原点を中心とした半径RS+L/2の円よりも外側の領域T4に設定される。
【0053】
制御装置18は、対流CFの回転方向が反時計回りであり、かつ、シリコン単結晶Sの回転方向が反時計回りである場合に、第1の導管161に粒状ドーパントを導入するように投下位置選択装置17を制御する。これにより、粒状ドーパントの投下位置は、X軸とY軸で構成される座標平面の第一象限内であって、Y軸座標の絶対値が引き上げ中のシリコン単結晶Sの直胴部の半径RSを超えない領域、かつ、X軸とY軸で構成される座標平面において、原点を中心とした半径RS+L/2の円よりも外側の領域T1に設定される。
【0054】
制御装置18は、対流CFの回転方向が反時計回りであり、かつ、シリコン単結晶Sの回転方向が時計回りである場合に、第2の導管162に粒状ドーパントを導入するように投下位置選択装置17を制御する。これにより、粒状ドーパントの投下位置は、X軸とY軸で構成される座標平面の第二象限内であって、Y軸座標の絶対値が引き上げ中のシリコン単結晶Sの直胴部の半径RSを超えない領域、かつ、X軸とY軸で構成される座標平面において、原点を中心とした半径RS+L/2の円よりも外側の領域T2に設定される。
【0055】
制御装置18は、前記対流CFの回転方向が時計回りであり、かつ、シリコン単結晶Sの回転方向が反時計回りである場合に、第3の導管163に粒状ドーパントを導入するように投下位置選択装置17を制御する。これにより、粒状ドーパントの投下位置は、X軸とY軸で構成される座標平面の第三象限内であって、Y軸座標の絶対値が引き上げ中のシリコン単結晶Sの直胴部の半径RSを超えない領域、かつ、X軸とY軸で構成される座標平面において、原点を中心とした半径RS+L/2の円よりも外側の領域T3に設定される。
【0056】
次いで、設定された投下位置(導管16)より粒状ドーパントが投下され、シリコン融液Mにドーパントが添加される。
【0057】
次に、上記実施形態の効果について説明する。以下の説明では、図7に示すように、対流CFの回転方向が反時計回り(CCW)であり、かつ、シリコン単結晶Sの回転方向RDが時計回り(CW)である場合に、投下位置を領域T2とすることによる効果について説明する。
対流CFの回転方向が反時計回りであるとすると、シリコン融液Mの液面MAにおいては、図8の矢印FL1~FL3で示すような流れが生じる。このうち、矢印FL2で示す流れは、シリコン単結晶Sに向かう流れであり、矢印FL3で示す流れは、シリコン単結晶Sから離れる流れである。
【0058】
ここで、矢印FL2で示す流れの中に粒状ドーパントを投下した場合、粒状ドーパントが溶融する前に、シリコン単結晶Sに到達することがある。粒状ドーパントが溶融することなくシリコン単結晶Sに到達すると、有転位化の原因となる。
一方、矢印FL3で示す流れの中に粒状ドーパントを投下すると、粒状ドーパントは、シリコン単結晶Sに向かうことなく、ルツボ3内壁面に向かって流れた後、ルツボ3の底面に向かって潜り込むように流れる。これにより、粒状ドーパントが溶融することなくシリコン単結晶Sに到達することを防止することができる。
【0059】
また、鉛直方向上方から見たシリコン単結晶Sの回転方向RDが時計回りであるとすると、粒状ドーパントの投下位置は、第二象限とすることが好ましい。第二象限に粒状ドーパントを投下すると、粒状ドーパントが、シリコン単結晶Sの回転に伴う流れに乗って、シリコン単結晶Sから離れる方向に流されるからである。
【0060】
さらに、粒状ドーパントの投下位置は、シリコン単結晶Sの外周面から離隔していることが好ましい。粒状ドーパントの投入位置がシリコン単結晶Sに近いと、溶融前の粒状ドーパントがシリコン単結晶Sに到達する恐れがあるからである。
よって、図7に示すように、領域T2が原点を中心とした半径RS+L/2の円よりも外側に設定されていることによっても粒状ドーパントが溶融することなくシリコン単結晶Sに到達することを防止することができる。
【0061】
なお、投下位置は、図7に示す領域T2に限ることはない。すなわち、シリコン融液Mの液面MAにおいてシリコン単結晶Sの直胴部から離れる流れが支配的な領域上であれば、領域は適宜変更してもよい。例えば、図7に示す領域T2よりもシリコン単結晶Sに近い位置に粒状ドーパントを投下してもよい。
【0062】
また、本実施形態の引き上げ装置1は、導管16が4本あることによって、投下位置をより確実にシリコン融液Mの流れ方向が直胴部から離れる流れが支配的な領域とすることができる。
【0063】
〔他の実施形態〕
なお、上記実施形態では、ドーパント投下装置15として、複数の導管16を有し、第一象限から第四象限まで、全ての象限に粒状ドーパントを投下可能な装置を用いたがこれに限ることはない。
ドーパント投下装置15を、例えば、2本の導管16を有する装置とし、対流CFの回転方向のみに基づいて粒状ドーパントの投下位置を設定する構成としてもよい。換言すれば、第一象限から第四象限まで、全ての象限に粒状ドーパントを投下可能な装置とする必要はない。
【0064】
また、1本の導管16を移動可能に設け、導管16を所望の象限位置に移動させる構成としてもよい。
また、ドーパント投下装置15を、例えば、1本の導管16を有し、第一象限から第四象限のうち一つの象限のみに粒状ドーパントを投入する装置としてもよい。
このような形態の引き上げ装置を用いてシリコン単結晶Sの引き上げ中に粒状ドーパントを投下する場合、投下位置がシリコン融液Mの液面MAにおいてシリコン単結晶Sの直胴部から離れる流れが支配的な領域上となるまで、磁場印加装置5による水平磁場の印加を繰り返せばよい。
【実施例
【0065】
次に、本発明の実施例および比較例について説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例では、図1に示すような引き上げ装置1を用いて、直径300mmのシリコン単結晶Sを引き上げ中に、ドーパント投下装置15を用いてシリコン融液M中に粒状ドーパントを投下し、シリコン単結晶Sの有転位化率を比較した。
【0066】
〔実施例1~4/比較例1~4〕
実施例1~4では、粒状ドーパントの投下位置を実施形態と同様とした。
比較例1~4では、粒状ドーパントの投下位置を実施形態と異なるものとした。一例として、実施例1では、対流CFの回転方向が時計回りであり、かつ、シリコン単結晶Sの回転方向が時計回りである場合に、第四象限に粒状ドーパントを投下しているが、比較例1では、第三象限に粒状ドーパントを投下した。
また、実施例1~4、比較例1~4では、投下位置のY軸座標の絶対値がシリコン単結晶Sの半径より大きくなるように設定した。すなわち、実施例1~4、比較例1~4では、図8の矢印FL1で示す流れの中に粒状ドーパントを投下した。
【0067】
〔評価〕
本発明の実施形態と同様に、対流CFの回転方向およびシリコン単結晶Sの回転方向を考慮して粒状ドーパントの投下位置を設定した実施例1~4は、対流CFの回転方向およびシリコン単結晶Sの回転方向を考慮することなく粒状ドーパントの投下位置を設定した比較例1~4と比較して、有転位化率が著しく低くなった。
以上のことから、対流CFの回転方向およびシリコン単結晶Sの回転方向を考慮して、粒状ドーパントの投下位置を、シリコン融液Mの液面MAにおいてシリコン単結晶Sの直胴部から離れる流れが支配的な領域上に設定することによって、有転位化率を低くすることができることが確認できた。
【0068】
【表2】
【0069】
〔実施例5~8/比較例5~8〕
実施例5~8では、粒状ドーパントの投下位置を実施形態と同様とした。
比較例5~8では、粒状ドーパントの投下位置を実施形態と異なるものとした。
また、実施例5~8、比較例5~8では、投入位置を、投下位置のY軸座標の絶対値がシリコン単結晶Sの半径を超えないように設定した。すなわち、実施例5~8、比較例5~8では、図8の矢印FL2、FL3で示す流れの中に粒状ドーパントを投下した。
【0070】
〔評価〕
実施例1~4/比較例1~4と同様に、対流CFの回転方向およびシリコン単結晶Sの回転方向を考慮することで、有転位化率が低くなった。また、投入位置を、投下位置のY軸座標の絶対値がシリコン単結晶Sの半径を超えないように設定することで、さらに有転位化率を低くすることができた。
【0071】
【表3】
【符号の説明】
【0072】
1…引き上げ装置、2…チャンバ、3…ルツボ、4…ヒーター、5…磁場印加装置、12…温度測定装置、15…ドーパント投下装置、16…導管、17…投下位置選択装置、18…制御装置、CF…対流、M…シリコン融液、MD…磁場方向、S…シリコン単結晶、T1~T4…領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8