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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-26
(45)【発行日】2023-02-03
(54)【発明の名称】蒸着源、成膜装置、及び蒸着方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20230127BHJP
【FI】
C23C14/24 A
C23C14/24 C
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019003250
(22)【出願日】2019-01-11
(65)【公開番号】P2020111787
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】北沢 僚也
(72)【発明者】
【氏名】中村 寿充
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-325424(JP,A)
【文献】特開2015-137409(JP,A)
【文献】特開2015-067850(JP,A)
【文献】特開2016-125091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持し、前記基板の中心を中心軸として回転する基板ホルダに対向する蒸着源であって、
収容容器と、
前記収容容器に収容された複数の蒸発容器と
を具備し、
前記収容容器は、本体部と、内部に冷媒体が流通する経路が設けられた仕切部と、熱反射板であるリフレクタ部と、前記本体部、前記仕切部、及び前記リフレクタ部を覆う天板部とを有し、
前記本体部は、下部が閉塞され上部が開放された容器であり、前記仕切部と前記リフレクタ部とを収容し、
前記複数の蒸発容器のいずれかは、前記収容容器が前記仕切り部と前記リフレクタ部とによって区分けされた複数の空間のいずれかに収容され、
前記複数の蒸発容器のそれぞれには、蒸着材料を噴出する複数の噴出ノズルが設けられ、
前記複数の蒸発容器のそれぞれにおいて、前記複数の噴出ノズルが配置された配置域の最大長が前記基板の直径よりも短く構成されている
蒸着源。
【請求項2】
請求項1に記載された蒸着源であって、
前記複数の噴出ノズルから前記蒸着材料が噴出している際には、前記基板ホルダの中心に対する前記収容容器の中心の相対位置が固定されている
蒸着源。
【請求項3】
請求項1または2に記載された蒸着源であって、
前記配置域は、前記収容容器の中心の周りに複数配置されている
蒸着源。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載された蒸着源であって、
前記複数の空間のそれぞれは、前記仕切部と前記リフレクタ部とによって、前記収容容器の中心から前記収容容器の外周端に向かって放射状に区分けされている
蒸着源。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載された蒸着源であって、
前記複数の噴出ノズルは、前記収容容器の中心から前記収容容器の外周端に向かって並設されている
蒸着源。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1つに記載された蒸着源であって、
前記複数の蒸発容器から2つの蒸発容器を選択し、一方の蒸発容器を前記中心を中心として他方の蒸発容器の位置まで公転させた場合、前記一方の蒸発容器に設けられた前記複数の噴出ノズルが前記他方の蒸発容器に設けられた前記複数の噴出ノズルと重複する
蒸着源。
【請求項7】
請求項1または2に記載された蒸着源であって、
前記配置域は、前記収容容器の中心を含む直線を挟んで複数配置されている
蒸着源。
【請求項8】
請求項1、2、または7に記載された蒸着源であって、
前記複数の空間のそれぞれは、前記仕切部と前記リフレクタ部とによって、前記収容容器の中心を含む直線を対称に格子状に区分けされている
蒸着源。
【請求項9】
請求項1、2、7、または8に記載された蒸着源であって、
前記複数の噴出ノズルは、前記蒸発容器の長手方向に並設されている
蒸着源。
【請求項10】
請求項1、2、7~9のいずれか1つに記載された蒸着源であって、
前記複数の蒸発容器から前記中心を挟んで対向する2つの蒸発容器を選択し、一方の蒸発容器を前記中心を中心として他方の蒸発容器の位置まで公転させた場合、前記一方の蒸発容器に設けられた前記複数の噴出ノズルが前記他方の蒸発容器に設けられた前記複数の噴出ノズルと重複する
蒸着源。
【請求項11】
請求項1、2、7~10のいずれか1つのいずれか1つに記載された蒸着源であって、
前記複数の蒸発容器から前記収容容器の中心を含む直線を挟んで対向する2つの蒸発容器を選択した場合、一方の蒸発容器に設けられた前記複数の噴出ノズルが他方の蒸発容器に設けられた前記複数の噴出ノズルと線対称に配置されている
蒸着源。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1つに記載された蒸着源であって、
前記複数の噴出ノズルから、2つの前記噴出ノズルを選択した場合、前記収容容器の中心により近く配置された噴出ノズルのほうが口径が小さく構成されている
蒸着源。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1つに記載された蒸着源であって、
前記複数の蒸発容器のいずれかにおいて、前記基板ホルダが回転する方向において、少なくとも2つの前記噴出ノズルが並設されている
蒸着源。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1つに記載された蒸着源であって、
前記複数の噴出ノズルのいずれかが前記中心軸に向けて傾いて配置されている
蒸着源。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1つに記載された蒸着源であって、
前記複数の蒸発容器は、前記収容容器から脱着可能に構成されている
蒸着源。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1つに記載された蒸着源であって、
前記複数の蒸発容器は、誘導加熱方式により加熱される
蒸着源。
【請求項17】
基板を支持し、前記基板の中心を中心軸として回転する基板ホルダと、
前記基板ホルダに対向し、収容容器と、前記収容容器に収容された複数の蒸発容器とを有し、前記収容容器は、本体部と、内部に冷媒体が流通する経路が設けられた仕切部と、熱反射板であるリフレクタ部と、前記本体部、前記仕切部、及び前記リフレクタ部を覆う天板部とを有し、前記本体部は、下部が閉塞され上部が開放された容器であり、前記仕切部と前記リフレクタ部とを収容し、前記複数の蒸発容器のいずれかは、前記収容容器が前記仕切り部と前記リフレクタ部とによって区分けされた複数の空間のいずれかに収容され、前記複数の蒸発容器のそれぞれには、蒸着材料を噴出する複数の噴出ノズルが設けられ、前記複数の蒸発容器のそれぞれにおいて、前記複数の噴出ノズルが配置された配置域の最大長が前記基板の直径よりも短く構成されている蒸着源と、
前記基板ホルダ及び蒸着源を収容する真空容器と
を具備する成膜装置。
【請求項18】
基板ホルダに基板を支持し、前記基板の中心を中心軸として前記基板ホルダを回転し、
前記基板ホルダに蒸着源を対向させ、
収容容器と、前記収容容器に収容された複数の蒸発容器とを具備し、前記収容容器は、本体部と、内部に冷媒体が流通する経路が設けられた仕切部と、熱反射板であるリフレクタ部と、前記本体部、前記仕切部、及び前記リフレクタ部を覆う天板部とを有し、前記本体部は、下部が閉塞され上部が開放された容器であり、前記仕切部と前記リフレクタ部とを収容し、前記複数の蒸発容器のいずれかは、前記収容容器が前記仕切り部と前記リフレクタ部とによって区分けされた複数の空間のいずれかに収容され、前記複数の蒸発容器のそれぞれには、蒸着材料を噴出する複数の噴出ノズルが設けられ、前記複数の蒸発容器のそれぞれにおいて、前記複数の噴出ノズルが配置された配置域の最大長が前記基板の直径よりも短く構成された前記蒸着源から前記蒸着材料を蒸発させて、前記基板に膜を形成する
蒸着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着源、成膜装置、及び蒸着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機LEDに代表されるように、有機化合物の薄膜を利用する素子が提供されている。有機化合物は、金属に比べて熱に弱く、また金属に比べて蒸気圧が高いことから、薄膜の形成では、スパッタリング方式、CVD等が用いられず真空蒸着法が用いられることが多い。
【0003】
例えば、蒸着装置では、真空容器の下部に蒸着源が配設され、蒸着源の上部に、基板ホルダによって支持された基板が配置される。そして、基板を回転させながら、蒸着源によって蒸発された有機材料を基板に付着させ、基板上に有機薄膜を形成する。しかしながら、このような蒸着装置では、基板ホルダ、マスク等の端部による遮蔽の影響によって、基板に形成する有機薄膜の厚みが均一にならないという問題があった。
【0004】
このような状況の中、リニアソース方式の蒸着源を基板に対向させて、基板を回転しながら、該蒸着源を基板に対して相対的に平行移動して基板に有機薄膜を形成する技術がある(例えば、特許文献1参照)。このような方法によれば、基板の回転作用のほかに蒸着源の平行移動の作用が加わって、基板に均一な有機薄膜が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-176126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、基板に対して該蒸着源を相対的に平行移動させると、蒸着源を基板の端から端まで移動させる分、タクトタイムが余分にかかってしまう。また、平行移動によって蒸着源と基板とがオフセット状態になると、蒸着源から蒸発する蒸着材料の殆どが基板から逸れて基板に付着しないことになる。このため、基板に対する蒸着材料の付着効率が落ちてしまう。このように、蒸着装置においては、蒸着材料の使用効率に限りが生じている。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、蒸着材料の使用効率を向上させた蒸着源、成膜装置、及び蒸着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る蒸着源は、基板を支持し、上記基板の中心を中心軸として回転する基板ホルダに対向する蒸着源である。上記蒸着源は、収容容器と、上記収容容器に収容された複数の蒸発容器とを具備する。上記複数の蒸発容器のそれぞれには、蒸着材料を噴出する複数の噴出ノズルが設けられている。上記複数の蒸発容器のそれぞれにおいて、上記複数の噴出ノズルが配置された配置域の最大長が上記基板の直径よりも短く構成されている。
【0009】
このような蒸着源によれば、回転する基板ホルダに対向する蒸着源において、複数の蒸発容器のそれぞれに、蒸着材料を噴出する複数の噴出ノズルが設けられ、複数の蒸発容器のそれぞれにおいて、複数の噴出ノズルが配置された配置域の最大長が基板の直径よりも短く構成されているので、蒸着材料の使用効率が大きく向上する。
【0010】
上記蒸着源においては、上記複数の噴出ノズルから上記蒸着材料が噴出している際には、上記基板ホルダの中心に対する上記収容容器の中心の相対位置が固定されてもよい。
【0011】
このような蒸着源によれば、複数の噴出ノズルから蒸着材料が噴出されている際には、基板ホルダの中心に対する収容容器の中心の相対位置が固定されているので、蒸着材料の使用効率が大きく向上する。
【0012】
上記蒸着源においては、上記配置域は、上記収容容器の中心の周りに複数配置されてもよい。
【0013】
このような蒸着源によれば、配置域は、収容容器の中心の周りに複数配置されるので、蒸着材料の使用効率が大きく向上する。
【0014】
上記蒸着源においては、上記収容容器は、上記収容容器の中心から上記収容容器の外周端に向かって放射状に区分けされた複数の第1空間を有し、上記複数の第1空間のいずれかに上記複数の蒸発容器のいずれかが配置されてもよい。
【0015】
このような蒸着源によれば、収容容器は、収容容器の中心から収容容器の外周端に向かって放射状に区分けされた複数の第1空間を有し、複数の第1空間のいずれかに複数の蒸発容器のいずれかが配置されているので、蒸着材料の使用効率が大きく向上する。
【0016】
上記蒸着源においては、上記複数の噴出ノズルは、上記収容容器の中心から上記収容容器の外周端に向かって並設されてもよい。
【0017】
このような蒸着源によれば、複数の噴出ノズルは、収容容器の中心から収容容器の外周端に向かって並設されているので、蒸着材料の使用効率が大きく向上する。
【0018】
上記蒸着源においては、上記複数の蒸発容器から2つの蒸発容器を選択し、一方の蒸発容器を上記中心を中心として他方の蒸発容器の位置まで公転させた場合、上記一方の蒸発容器に設けられた上記複数の噴出ノズルが上記他方の蒸発容器に設けられた上記複数の噴出ノズルと重複してもよい。
【0019】
このような蒸着源によれば、2つの蒸発容器のうち、一方の蒸発容器を上記中心を中心として他方の蒸発容器の位置まで公転させた場合、一方の蒸発容器に設けられた複数の噴出ノズルが他方の蒸発容器に設けられた複数の噴出ノズルと重複するので、蒸着材料の使用効率が大きく向上する。
【0020】
上記蒸着源においては、上記配置域は、上記収容容器の中心を含む直線を挟んで複数配置されてもよい。
【0021】
このような蒸着源によれば、配置域は、収容容器の中心を含む直線を挟んで複数配置されているので、蒸着材料の使用効率が大きく向上する。
【0022】
上記蒸着源においては、上記収容容器は、上記収容容器の中心を含む直線を対称に格子状に区分けされた複数の第2空間を有し、上記複数の蒸発容器のいずれかに上記複数の第2空間のいずれかが配置されてもよい。
【0023】
このような蒸着源によれば、収容容器は、収容容器の中心を含む直線を対称に格子状に区分けされた複数の第2空間を有し、複数の蒸発容器のいずれかに複数の第2空間のいずれかが配置されているので、蒸着材料の使用効率が大きく向上する。
【0024】
上記蒸着源においては、上記複数の噴出ノズルは、上記蒸発容器の長手方向に並設されてもよい。
【0025】
このような蒸着源によれば、複数の噴出ノズルは、蒸発容器の長手方向に並設されているので、蒸着材料の使用効率が大きく向上する。
【0026】
上記蒸着源においては、上記複数の蒸発容器から上記中心を挟んで対向する2つの蒸発容器を選択し、一方の蒸発容器を上記中心を中心として他方の蒸発容器の位置まで公転させた場合、上記一方の蒸発容器に設けられた上記複数の噴出ノズルが上記他方の蒸発容器に設けられた上記複数の噴出ノズルと重複してもよい。
【0027】
このような蒸着源によれば、2つの蒸発容器のうち、一方の蒸発容器を上記中心を中心として他方の蒸発容器の位置まで公転させた場合、一方の蒸発容器に設けられた複数の噴出ノズルが他方の蒸発容器に設けられた複数の噴出ノズルと重複するので、蒸着材料の使用効率が大きく向上する。
【0028】
上記蒸着源においては、上記複数の蒸発容器から上記直線を挟んで対向する2つの蒸発容器を選択した場合、一方の蒸発容器に設けられた上記複数の噴出ノズルが他方の蒸発容器に設けられた上記複数の噴出ノズルと線対称に配置されてもよい。
【0029】
このような蒸着源によれば、複数の蒸発容器から直線を挟んで対向する2つの蒸発容器を選択した場合、一方の蒸発容器に設けられた複数の噴出ノズルが他方の蒸発容器に設けられた複数の噴出ノズルと線対称に配置されているので、蒸着材料の使用効率が大きく向上する。
【0030】
上記蒸着源においては、上記複数の噴出ノズルから、2つの上記噴出ノズルを選択した場合、上記収容容器の中心により近く配置された噴出ノズルのほうが口径が小さく構成されてもよい。
【0031】
このような蒸着源によれば、複数の噴出ノズルから、2つの上記噴出ノズルを選択した場合、収容容器の中心により近く配置された噴出ノズルのほうが口径が小さく構成されているので、基板に均一な厚みの膜が形成され、蒸着材料の使用効率が大きく向上する。
【0032】
上記蒸着源においては、上記複数の蒸発容器のいずれかにおいて、上記基板ホルダが回転する方向において、少なくとも2つの上記噴出ノズルが並設されてもよい。
【0033】
このような蒸着源によれば、複数の蒸発容器のいずれかにおいて、基板ホルダが回転する方向において、少なくとも2つの噴出ノズルが並設されているので、基板に均一な厚みの膜が形成され、蒸着材料の使用効率が大きく向上する。
【0034】
上記蒸着源においては、上記複数の噴出ノズルのいずれかが上記中心軸に向けて傾いて配置されてもよい。
【0035】
このような蒸着源によれば、複数の噴出ノズルのいずれかが中心軸に向けて傾いて配置されているので、蒸着材料の使用効率が大きく向上する。
【0036】
上記蒸着源においては、上記複数の蒸発容器は、上記収容容器から脱着可能に構成されてもよい。
【0037】
このような蒸着源によれば、作業効率が大きく向上する。
【0038】
上記蒸着源においては、上記収容容器及び上記複数の蒸発容器は、誘導加熱方式により加熱されてもよい。
【0039】
このような蒸着源によれば、収容容器及び複数の蒸発容器は、誘導加熱方式により加熱されるので、蒸着材料への熱伝導の応答性が向上して、蒸着材料の使用効率が大きく向上する。
【0040】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る成膜装置は、基板ホルダと、上記蒸着源と、真空容器とを具備する。上記基板ホルダは、基板を支持し、上記基板の中心を中心軸として回転する。上記真空容器は、上記基板ホルダ及び蒸着源を収容する。
【0041】
このような蒸着源によれば、蒸着源において、複数の蒸発容器のそれぞれに、蒸着材料を噴出する複数の噴出ノズルが設けられ、複数の蒸発容器のそれぞれにおいて、複数の噴出ノズルが配置された配置域の最大長が基板の直径よりも短く構成されているので、蒸着材料の使用効率が大きく向上する。
【0042】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る蒸着方法では、基板ホルダに基板を支持し、上記基板の中心を中心軸として上記基板ホルダを回転する。上記基板ホルダに蒸着源を対向させる。そして、上記蒸着源から上記蒸着材料を蒸発させて、上記基板に膜を形成する。
【0043】
このような蒸着方法によれば、蒸着源において、複数の蒸発容器のそれぞれに、蒸着材料を噴出する複数の噴出ノズルが設けられ、複数の蒸発容器のそれぞれにおいて、複数の噴出ノズルが配置された配置域の最大長が基板の直径よりも短く構成されているので、蒸着材料の使用効率が大きく向上する。
【発明の効果】
【0044】
以上述べたように、本発明によれば、蒸着材料の使用効率を向上させた蒸着源、成膜装置、及び蒸着方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本実施形態に係る成膜装置の模式的断面図である。
図2】図(a)は、本実施形態に係る蒸着源の模式的上面図である。図(b)は、本実施形態に係る蒸着源の模式的断面図である。
図3】蒸発容器が収容容器から取り外される様子を説明する模式的断面図である。
図4】本実施形態に係る蒸着源の変形例の模式的上面図である。
図5】本実施形態に係る蒸着源の別の変形例の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付す場合があり、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。また、実施形態は、一例であり、以下に示す例には限られない。
【0047】
(成膜装置)
【0048】
図1は、本実施形態に係る成膜装置の模式的断面図である。
【0049】
成膜装置1は、真空容器10と、基板ホルダ20と、回転機構25と、蒸着源30Aと、シャッタ60と、排気機構70とを具備する。成膜装置1は、蒸着材料を基板90に形成する蒸着装置である。
【0050】
真空容器10は、減圧状態を維持できる容器である。例えば、真空容器10は、排気機構70によって、その内部の気体が排気される。真空容器10を蒸着源30Aから基板ホルダ20に向かう方向(以下、Z軸方向)に上面視したときの平面形状は、例えば、矩形状である。平面形状は、矩形状に限ることなく、例えば、円形であってもよい。
【0051】
真空容器10は、基板ホルダ20、回転機構25の一部、蒸着源30A、シャッタ60等を収容する。真空容器10には、ガスを供給することが可能なガス供給機構が設けられてもよい。また、真空容器10には、その内部の圧力を計測する圧力計が設けられてもよい。また、真空容器10には、基板90に形成された膜の蒸着速度等を間接的に計測する膜厚計が設けられてもよい。また、成膜装置1には、加熱機構33により加熱される蒸着材料30mの温度を計測する温度センサが設けられてもよい。
【0052】
基板ホルダ20は、真空容器10の上部に位置する。基板ホルダ20は、Z軸方向において蒸着源30Aに対向する。基板ホルダ20は、基板90を支持する。基板ホルダ20のX-Y軸平面における平面形状は、基板90の平面形状に適合され設計される。基板ホルダ20の平面形状は、例えば、円形である。基板ホルダ20に支持される基板90は、例えば、円形状の半導体ウェーハである。基板90は、例えば、矩形状のガラス基板であってもよい。本実施形態では、基板90の直径をRsと表記している。Rsは、例えば、300mmである。
【0053】
基板ホルダ20の中心部は、回転機構25に連結されている。回転機構25は、軸部251と、駆動ユニット252とを有する。軸部251は、真空容器10内に設けられ、Z軸方向に延伸する。軸部251は、真空容器10外に設けられた駆動ユニット252に連結される。駆動ユニット252によって軸部251が回転制御されることにより、基板ホルダ20が基板90の中心を中心軸20cとして回転する。なお、基板ホルダ20の中心軸20cは、軸部251の中心軸でもある。
【0054】
蒸着源30Aは、真空容器10の下部に位置する。蒸着源30Aは、Z軸方向において基板ホルダ20に対向する。蒸着源30Aは、例えば、図示しない支持台に固定されている。蒸着源30Aは、収容容器31Aと、複数の蒸発容器32A(坩堝)と、加熱機構33とを具備する。収容容器31Aは、複数の蒸発容器32Aと、加熱機構33とを収容する。
【0055】
また、複数の蒸発容器32Aのそれぞれの上面部には、蒸発容器32Aに充填された蒸着材料30mを噴出する複数の噴出ノズル320が設けられている。蒸発容器32Aが収容容器31Aに収容されたとき、噴出ノズル320は、基板ホルダ20に対向する。複数の蒸発容器32Aのそれぞれにおいて、複数の噴出ノズル320が配置された配置域320aの最大長L(Lは変数)は、基板90の直径Rsよりも短く構成されている。ここで、基板90の直径とは、基板90の平面形状が円形の場合には、円形の直径で定義され、基板90の平面形状が矩形の場合は、対向する角部間の距離で定義される。なお、基板ホルダ20の中心軸20cの直下には、噴出ノズル320が配置されていない。
【0056】
成膜装置1において、複数の噴出ノズル320から蒸着材料30mが噴出し、基板90に蒸着材料30mの成膜が行われている際には、基板ホルダ20の中心に対する収容容器31Aの中心31cの相対位置が固定されている。すなわち、成膜中、X軸方向またはY軸方向における、基板90と蒸着源30Aとの相対距離は不変である。
【0057】
加熱機構33は、蒸発容器32Aの外側に配置されている。加熱機構33は、蒸発容器32Aの底部及び側部を囲む。加熱機構33は、誘導加熱方式または抵抗加熱方式の加熱機構である。蒸発容器32Aに収容された蒸着材料30mは、加熱機構33によって加熱されて、複数の噴出ノズル320から基板90に向けて蒸発する。蒸着材料30mは、例えば、有機物である。
【0058】
また、蒸発容器32Aの直上には、基板ホルダ20に向かって飛遊する蒸着材料30mを遮断するシャッタ60が設けられている。
【0059】
(蒸着源)
【0060】
図2(a)は、本実施形態に係る蒸着源の模式的上面図である。図2(b)は、本実施形態に係る蒸着源の模式的断面図である。図2(a)では、天板部313が示されていない。図2(b)は、図2(a)のA-A'線に沿った断面が示されている。また、図2(a)には、蒸着源30Aの上方に位置する基板90の外周が示されている。
【0061】
収容容器31Aは、本体部310Aと、仕切部311と、リフレクタ部312と、天板部313とを有する。収容容器31Aは、導電性材料で構成され、例えば、高融点金属、SUS鋼、カーボン等のいずれかで構成されている。収容容器31AのX-Y軸平面における外形は、例えば、円形である。
【0062】
本体部310Aは、下部が閉塞され上部が開放された円筒状の容器である。本体部310Aは、仕切部311と、リフレクタ部312とを収容する。仕切部311は、中心31cから3股に分岐し、本体部310Aの内壁に接続されている。例えば、周方向において隣り合う仕切部311がなす角度は、120°である。ここで、周方向とは、中心軸20cの軸周りに基板ホルダが回転する方向である。また、本体部310A、仕切部311、及び天板部313のそれぞれの内部には、冷媒体が流通する流路が設けられてもよい。
【0063】
リフレクタ部312は、収容容器31Aの周方向において隣り合う仕切部311の間に設けられる。例えば、図2(a)の例では、周方向において隣り合う仕切部311の間に、2個のリフレクタ部312が配置される。
【0064】
これにより、収容容器31Aの内部は、仕切部311と、複数のリフレクタ部312とにより、収容容器31Aの中心31cから収容容器31Aの外周端31eに向かって放射状に区分けされる。
【0065】
例えば、仕切部311によって、収容容器31Aの内部が3つに区分けされる。さらに、仕切部311によって区分けされた収容容器31Aの内部がリフレクタ部312により、さらに3つに区分けされる。リフレクタ部312は、中心31cから外周端31eに向かって延在する。すなわち、この放射状の区分により、収容容器31Aは、複数の空間314(第1空間)を有する。例えば、図2(a)には、9個の空間314が示されている。複数の空間314のそれぞれの容積は、実質的に同じである。空間314の平面形状は、例えば、扇状である。
【0066】
また、複数の空間314のいずれかには、複数の蒸発容器32Aのいずれかが配置されている。蒸発容器32Aは、複数の空間314の少なくとも1つに配置すればよく、複数の空間314の全てに配置してもよく、空間314の1つに配置してもよい。なお、蒸発容器32Aは、空間314の下部に設けられた、例えば、台座315上に載置される。台座315の材料は、導電性材料でもよく、絶縁性材料でもよい。
【0067】
また、複数の噴出ノズル320は、収容容器31Aの中心31cから収容容器31Aの外周端31eに向かって並設されている。従って、蒸発容器32Aにおいて、複数の噴出ノズル320が配置された配置域320aの最大長Lは、中心31cから外周端31eに向かう方向における配置域320aの長さとなる。また、収容容器31Aにおいて、最大長Lは、基板90の直径Rsよりも短く構成されている。
【0068】
配置域320aは、収容容器31Aの中心31cを中心に複数配置されている。蒸着源30AをZ軸方向に上面視したとき、複数の配置域320aのそれぞれの少なくとも一部は、基板90と重複している。換言すれば、蒸着源30AをZ軸方向に上面視したとき、複数の噴出ノズル320の少なくとも一部は、基板90と重複している。
【0069】
また、蒸着源30Aにおいて、複数の蒸発容器32Aから、いずれか2つの蒸発容器32Aを選択し、一方の蒸発容器32Aを中心31cを中心として他方の蒸発容器32Aの位置まで公転させた場合、一方の蒸発容器32Aに設けられた複数の噴出ノズル320が他方の蒸発容器32Aに設けられた複数の噴出ノズル320と重複する。
【0070】
例えば、複数の蒸発容器32Aのそれぞれの形状は、自己の中心線32cに対して線対称に構成され、実質的に同じである。複数の蒸発容器32Aのそれぞれの平面形状は、例えば、扇形状である。そして、蒸発容器32Aにおいて、複数の噴出ノズル320は、中心線32cに対して線対称に構成されている。従って、全ての空間314に同じ構成の蒸発容器32Aが配置された場合には、蒸着源30Aにおける全ての噴出ノズル320で構成されるノズルの配置パターンが回転対称(360°/3対称)を構成する。
【0071】
また、蒸着源30Aにおいて、複数の噴出ノズル320から、2つの噴出ノズル320を選択した場合、収容容器31Aの中心31cにより近く配置された噴出ノズル320のほうがノズル口径が小さく構成されてもよい。例えば、複数の噴出ノズル320の口径は、中心31cから外周端31eに向かうほど、大きく構成されてもよく、複数の噴出ノズル320を組み分けした組ごとに大きく構成されてもよい。
【0072】
また、複数の蒸発容器32Aのいずれかにおいては、周方向に少なくとも2つの噴出ノズル320が並設されてもよい。また、複数の噴出ノズル320は、中心31cから外周端31eに向かって一列に並んだ構成でもよい。例えば、図2(a)の例では、外周端31e付近において、周方向に2個または3個の噴出ノズル320が並設されている。
【0073】
リフレクタ部312は、周方向において隣り合う蒸発容器32Aの間に配置される。リフレクタ部312は、熱反射板であり、蒸発容器32Aから放出される熱を蒸発容器32Aに反射する。これにより、蒸発容器32Aは、加熱機構33により効率よく加熱される。
【0074】
また、天板部313は、本体部310A、仕切部311、及びリフレクタ部312を覆う。天板部313には、噴出ノズル320が貫通する貫通孔313hが設けられている。これにより、噴出ノズル320が天板部313を貫通して、収容容器31Aから基板90に向かって突出する。
【0075】
図3(a)、(b)は、蒸発容器が収容容器から取り外される様子を説明する模式的断面図である。
【0076】
複数の蒸発容器32Aのそれぞれは、収容容器31Aから脱着可能に構成されている。また、一例として、蒸発容器32Aにおいて、噴出ノズル320が設けられた上面部321(蓋部)は本体部322から取り外すことができる。上面部321を本体部322から取り外すことより、蒸発容器32Aに蒸着材料30mを仕込むことができる。また、本体部322を複数の蒸発容器32Aにおいて共通の構成とすることで、複数の噴出ノズル320の配置パターン、孔径を変化させた様々な上面部321を本体部322に取り付けることができる。
【0077】
例えば、図3(a)に示すように、天板部313は、収容容器31Aから取り外される。この後、図3(b)に示すように、蒸発容器32Aは、収容容器31Aから取り外される。また、この逆の動作を行えば、蒸発容器32Aを収容容器31Aに取り付けることができる。
【0078】
このような蒸着源30Aを用いて、基板ホルダ20に基板90を支持し、基板90の中心を中心軸として基板ホルダ20を回転する。このとき、基板ホルダ20には、蒸着源30Aが対向している。次に、蒸着源30Aから蒸着材料30mを蒸発させて、基板90に膜を形成する。ここで、シャッタ60により、複数の蒸発容器32Aからいずれかの蒸発容器32Aが選択されて、選択された蒸発容器32Aに充填された蒸着材料30mが蒸発して、基板90に膜が形成される。
【0079】
このように、蒸着源30Aでは、それぞれの蒸発容器32Aに設けられた複数の噴出ノズル320の配置域320aの最大長Lが基板90の直径Rsよりも小さく、複数の噴出ノズル320が基板90が回転する方向に対して直交する方向に並設されている。ここで、最大長Lとは、Z軸方向に直交する方向における配置域320aの幅の最大長とする。従って、蒸着源30Aを用いれば、基板90には、均一な厚みの膜が形成される。
【0080】
ここで、複数の噴出ノズル320のそれぞれの口径、ピッチ、及び周方向の並設する噴出ノズル320の数を蒸着材料30mの特性、蒸着速度等に適合させて適宜設計することにより、基板90により確実に均一な厚みの膜が形成される。
【0081】
例えば、基板90の回転数(角速度)は一定であっても、噴出ノズル320の上方を通過する基板90の通過速度は、基板90の中心から遠ざかるほど速くなる。蒸着源30Aでは、収容容器31Aの中心31cからより遠ざかった噴出ノズル320の口径が中心31cにより近づいた噴出ノズル320の口径よりも大きく構成されたり、外周端31e付近において、周方向に少なくとも2つの噴出ノズル320が並設されたりしている。このため、基板90が回転しても、基板全域に付着する蒸着材料30mの付着量が均衡して、基板90に均一が厚みの膜が形成される。
【0082】
また、基板ホルダ20の中心軸20cの直下には、噴出ノズル320が設けられていない。このため、蒸着源30Aの中心部での噴出ノズル320の集中配置が抑えられ、基板90の中心部における膜厚上昇が抑えられる。
【0083】
例えば、基板90として、300mm径のSiウェーハに有機蒸着膜を形成したところ、膜厚分布=±((最大膜厚-最小膜厚)/(最大膜厚+最小膜厚))×100%の式で定義される膜厚分布として、±1%が得られている。
【0084】
また、蒸着源30Aを用いれば、基板90に対して蒸着源30Aを相対的に平行移動することなく、基板90を回転させながら基板90に膜が形成される。このため、蒸着工程におけるタクト効率が向上し、蒸着材料30mの材料使用効率が大きく向上する。
【0085】
また、蒸着源30Aを用いれば、蒸着源30Aは、常時、基板90の直下に固定されている。このため、蒸着材料30mは、基板90から逸れにくく、基板90に付着する付着効率が向上する。これにより、蒸着材料30mの材料使用効率が大きく向上する。
【0086】
また、蒸着源30Aを用いれば、真空容器10は、基板90に対して蒸着源30Aを相対的に平行移動する移動空間を要しない。これにより、真空容器10の小型化を図ることができる。
【0087】
また、蒸着源30Aでは、複数の噴出ノズル320が収容容器31Aの中心31cから外周端31eに向かって並設されている。このため、基板90と蒸着源30Aとの距離を短くしても、基板90に均一な厚み膜を形成することができる。この結果、蒸着材料30mが基板90に付着する付着効率がさらに向上し、蒸着材料30mの材料使用効率が大きく向上する。
【0088】
また、蒸着源30Aでは、複数の蒸発容器32Aが収容容器31Aに収容できることから、複数の蒸発容器32Aのそれぞれに異種の蒸着材料を充填、または、複数の蒸発容器32Aを組みに分けて組みごとに異種の蒸着材料を充填できる。これにより、基板90に多種材料の積層膜または多種材料の混合膜を形成できる。換言すれば、基板90に形成する膜の材料選択の自由度が向上する。
【0089】
また、加熱機構33として、誘電加熱方式を採用した場合には、加熱機構33から蒸着材料30mへの熱伝導の応答性が良好になる。このため、蒸着材料30mの温度を短時間(例えば、数分間)で急峻に上昇させることができる。これにより、成膜を開始する前の基板90の待機時間を短くすることができ、タクト効率がさらに向上する。
【0090】
また、蒸着源30Aにおいて、蒸発容器32Aが収容容器31Aから脱着可能に構成されている。このため、蒸発容器32Aのメンテナンスが容易になる。
【0091】
また、蒸着源30Aにおいて、複数の蒸発容器32Aのそれぞれの形状が同じ形状である場合には、それぞれの蒸発容器32Aを覆うシャッタ60として同じ形状のシャッタを使い回せる。これにより、シャッタ機構の構成が簡便になる。
【0092】
(変形例1)
【0093】
図4(a)、(b)は、本実施形態に係る蒸着源の変形例の模式的上面図である。
【0094】
図4(a)に示す蒸着源30Bにおいては、収容容器31BのX-Y軸平面における外形は、例えば、矩形になっている。
【0095】
例えば、収容容器31Bの本体部310Bは、下部が閉塞され上部が開放された直方体状の容器である。本体部310Bは、仕切部316と、リフレクタ部312とを収容する。本体部310B及び仕切部316のそれぞれの内部には、冷媒体が流通する流路が設けられてもよい。
【0096】
仕切部316は、収容容器31Bの中心31cを含む直線31Lに沿って延在する。仕切部316は、その両端が本体部310Bの内壁に接続されている。この仕切部316によって、収容容器31Bの内部が2つの空間に区分けされる。
【0097】
リフレクタ部312は、仕切部316によって区分けされたそれぞれの空間において、複数配置される(例えば、2個ずつ)。これら複数のリフレクタ部312のそれぞれは、例えば、直線31Lと直交する方向に延在する。
【0098】
直線31Lを対称とした、仕切部316と、複数のリフレクタ部312との区分けにより、収容容器31Bの内部は、格子状に区分けされる。
【0099】
例えば、収容容器31Bは、複数の空間317(第2空間)を有する。図4(a)の例では、例えば、6個の空間317が示されている。複数の空間317のそれぞれの容積は、実質的に同じである。空間317の平面形状は、例えば、矩形である。
【0100】
また、複数の蒸発容器32Bのそれぞれの形状は、自己の中心線32cに対して線対称に構成され、実質的に同じである。複数の蒸発容器32Bのそれぞれの平面形状は、例えば、矩形状である。そして、複数の空間317のいずれかには、複数の蒸発容器32Bのいずれかが配置される。例えば、蒸発容器32Bは、複数の空間317の少なくとも1つに配置されればよく、複数の空間317の全てに配置されてもよく、1つの空間317に配置されてもよい。また、蒸発容器32Bは、収容容器31Bから脱着可能である。
【0101】
複数の噴出ノズル320は、蒸発容器32Bの長手方向に並設されている。例えば、複数の噴出ノズル320は、直線31Lと直交する方向に並設されている。また、複数の噴出ノズル320が配置された配置域320bの最大長Lは、基板90の直径Rsよりも短い。配置域320bは、直線31Lを挟んで左右に複数配置されている。また、蒸着源30BをZ軸方向に上面視したとき、複数の配置域320bのそれぞれの少なくとも一部は、基板90と重複している。なお、基板ホルダ20の中心軸20cの直下には、噴出ノズル320が設けられていない。
【0102】
特に、複数の噴出ノズル320の配置パターンがそれぞれの蒸発容器32Bで同じパターンで構成されている場合には、複数の蒸発容器32Bから中心31cを挟んで対向する2つの蒸発容器32Bを選択し、一方の蒸発容器32Bを中心31cを中心として他方の蒸発容器32Bの位置まで公転させた場合、一方の蒸発容器32Bに設けられた複数の噴出ノズル320が他方の蒸発容器32Bに設けられた複数の噴出ノズル320と重複する。
【0103】
また、噴出ノズル320の配置パターンは、図4(a)の配置パターンには限られない。例えば、図4(b)に示す蒸着源30Cのように、複数の蒸発容器32Bから直線31Lを挟んで対向する2つの蒸発容器32Bを選択した場合、一方の蒸発容器32Bに設けられた複数の噴出ノズル320が他方の蒸発容器に設けられた複数の噴出ノズル320と線対称に配置されてもよい。
【0104】
さらに、噴出ノズル320の配置パターンは、図4(a)に示すパターンと図4(b)に示すパターンとの混合パターンであってもよい。例えば、中心31cを挟んで配置された一対の蒸発容器32Bでは、図4(b)のパターンが選択され、これら以外の蒸発容器32Bでは、図4(a)のパターンが選択されてもよい。
【0105】
このような平面形状が蒸着源30Aと異なる蒸着源30B、30Cを用いても、複数の噴出ノズル320が配置された配置域320bの最大長Lが基板90の直径Rsよりも短く、複数の噴出ノズル320が蒸発容器32Bの長手方向に並設されていること等から、蒸着源30B、30Cは、蒸着源30Aと同様の効果を奏する。
【0106】
さらに、蒸着源30B、30Cにおいては、蒸発容器32Bが直線31Lと直交する方向において長く延在している。これにより、それぞれの蒸発容器32Bには、より多くの蒸着材料30mを充填することができ、蒸着時間の長期化を図ることができる。
【0107】
(変形例2)
【0108】
図5は、本実施形態に係る蒸着源の別の変形例の模式的断面図である。
【0109】
図5に示す蒸着源30Dにおいては、複数の噴出ノズル320のいずれかが基板ホルダ20の中心軸20cに向けて傾いて配置されている。噴出ノズル320の天板部313に対する法線からの傾斜角は、中心31cから外周端31eに向かうほど、大きく構成されてもよく、複数の噴出ノズル320を組み分けした組ごとに大きく構成されてもよい。このような噴出ノズル320の構成は、蒸着源30B、30Cにも適用してもよい。
【0110】
このような構成であれば、蒸発材料30mは、基板90からさらに逸れにくくなり、基板90に付着する付着効率が向上する。これにより、蒸着材料30mの材料使用効率が大きく向上する。
【0111】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
【符号の説明】
【0112】
1…成膜装置
10…真空容器
20…基板ホルダ
20c…中心軸
25…回転機構
251…軸部
252…駆動ユニット
30A、30B、30C、30D…蒸着源
30m…蒸着材料
31A、31B…収容容器
31c…中心
31e…外周端
31L…直線
310A、310B…本体部
311、316…仕切部
312…リフレクタ部
313…天板部
313h…貫通孔
314、317…空間
315…台座
32A、32B…蒸発容器
321…上面部
322…本体部
32c…中心線
320…噴出ノズル
320a、320b…配置域
33…加熱機構
60…シャッタ
70…排気機構
90…基板
図1
図2
図3
図4
図5