(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-26
(45)【発行日】2023-02-03
(54)【発明の名称】分析装置及び分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 31/12 20060101AFI20230127BHJP
【FI】
G01N31/12 A
(21)【出願番号】P 2020559705
(86)(22)【出願日】2019-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2019030902
(87)【国際公開番号】W WO2020115946
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2018227541
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】山田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】米重 英成
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-137906(JP,A)
【文献】特公平04-044696(JP,B2)
【文献】特開2016-200590(JP,A)
【文献】特開2008-157799(JP,A)
【文献】特開平11-051925(JP,A)
【文献】特開2003-302316(JP,A)
【文献】特開2010-008245(JP,A)
【文献】特開2000-241404(JP,A)
【文献】特公昭53-005556(JP,B2)
【文献】特開2003-065958(JP,A)
【文献】特開平01-124765(JP,A)
【文献】特開2019-020376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を収容した容器が導入される電気炉と、
前記電気炉内で加熱されて燃焼した前記試料から生じるガスを分析するガス分析計と、
前記試料の燃焼を促進させる支燃ガスに希釈ガスを混合してなる混合ガスを前記電気炉に供給する混合ガス供給路と、
前記混合ガス中の前記支燃ガスの濃度を変更するための濃度変更機構とを具備
し、
前記電気炉が、側壁に形成された開口部を介して前記容器が導入されるものであり、
前記開口部を開閉する開閉蓋の駆動用ガスが、前記希釈ガスとして兼用されている、分析装置。
【請求項2】
前記支燃ガスが、濃度
90%以上の酸素ガスである、請求項1記載の分析装置。
【請求項3】
前記電気炉内が、前記試料が加熱される際に加圧されている、請求項1記載の分析装置。
【請求項4】
前記電気炉の動作を制御する炉制御部をさらに具備し、
前記炉制御部が、前記電気炉に前記試料を収容した前記容器が導入される前に、当該電気炉を加熱するように構成されている、請求項1記載の分析装置。
【請求項5】
前記ガス分析計から出力された光強度信号に基づいて前記試料に含まれる成分の質量濃度を算出する演算部と、
前記混合ガス中の前記支燃ガスの濃度として予め設定された目標支燃ガス濃度と補正係数とを関連付ける補正データを格納する補正データ格納部とを具備し、
前記演算部が、前記目標支燃ガス濃度及び前記補正データから得られる補正係数を用いて、算出した質量濃度を補正する、請求項1記載の分析装置。
【請求項6】
前記ガス分析計から出力された光強度信号、又は、該光強度信号に基づいて算出された前記試料に含まれる成分の濃度に基づいて、前記濃度変更機構を制御する濃度制御部をさらに具備する、請求項1記載の分析装置。
【請求項7】
試料を収容した容器が導入される電気炉と、前記電気炉内で加熱されて燃焼した前記試料から生じるガスを分析するガス分析計と、前記試料の燃焼を促進させる支燃ガスに希釈ガスを混合してなる混合ガスを前記電気炉に供給する混合ガス供給路とを具備する分析装置を用いた分析方法であって、
前記混合ガス中の前記支燃ガスの濃度を変更して、前記混合ガス供給路から前記電気炉に供給する
分析方法であり、
前記電気炉が、側壁に形成された開口部を介して前記容器が導入されるものであり、
前記開口部を開閉する開閉蓋の駆動用ガスを、前記希釈ガスとして兼用する、分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に含まれる炭素(C)、硫黄(S)等の元素を分析する分析装置及び分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の分析装置としては、特許文献1に示すように、試料を収容した容器(ボート)を電気炉内に導入して、当該電気炉内で加熱されて燃焼した試料から生じるガスを分析するものがある。
【0003】
かかる分析装置において、鉄鋼や非鉄金属など燃え難い試料(以下、難燃性試料ともいう)を分析するタイプのものは、例えば濃度100%に近い高濃度の酸素ガスを支燃ガスとして電気炉内に供給して、試料の燃焼を促進させるように構成されている。
【0004】
ところが、このような分析装置において、燃焼し易い試料(以下、爆燃性試料ともいう)を分析すると、当該試料の急激な燃焼により生じるガス量が多く、ガス分析計により検出される信号のピークが急峻となって、検出器の分解能が高くなければ精度良く分析することができないという問題が生じる。しかも、急激な燃焼により爆燃性試料が飛び散ってしまうと、これによっても分析精度の低下を招来し、さらに電気炉内の清掃等のメンテナンスが必要となる。
【0005】
また、以下に述べるような問題もある。
すなわち、上述した分析装置を用いて、低温域で燃焼する成分と高温域で燃焼する成分とを含む混合試料を分析する場合、例えば電気炉に昇温機能を備えさせて分析中に電気炉の温度を上昇させることで、当該混合試料に含まれる低温域で燃焼する成分と高温域で燃焼する成分とを分離して分析することができる。
【0006】
しかしながら、上述したように高濃度の酸素ガスを電気炉内に供給する構成であると、低温域で燃焼する成分の燃焼量が大きくなり、その燃焼によって生じる酸化熱により高温域で燃焼するはずの成分が低温域で燃焼してしまい、分離分析の分析精度の低下が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、上述した問題を一挙に解決すべくなされたものであり、試料の種類に応じて燃焼量を柔軟に変更できるようにして、燃焼の促進や急激な燃焼の抑制を図り、種々の試料の分析を可能にすることを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係る分析装置は、試料を収容した容器が導入される電気炉と、前記電気炉内で加熱されて燃焼した前記試料から生じるガスを分析するガス分析計と、前記試料の燃焼を促進させる支燃ガスに希釈ガスを混合してなる混合ガスを前記電気炉に供給する混合ガス供給路と、前記混合ガス中の前記支燃ガスの濃度を変更するための濃度変更機構とを具備することを特徴とするものである。
【0010】
このように構成された分析装置によれば、濃度変更機構により混合ガス中の支燃ガスの濃度を変更させることができるので、支燃ガス濃度を高くすることで試料の燃焼を促進させることができ、支燃ガス濃度を低くすることで試料の急激な燃焼を抑えることができる。これにより、例えば燃焼し難い難燃性試料、燃焼し易い爆燃性試料、低温域で燃焼する成分と高温域で燃焼する成分とを含む混合試料等といった試料の種類に応じて、燃焼量を柔軟に変更することで燃焼の促進や急激な燃焼の抑制が可能となり、種々の試料の分析することができる。
【0011】
例えば鉄鋼や非鉄金属セラミックス等の難燃性試料の燃焼を促進させるためには、前記支燃ガスが、高濃度の酸素ガスであることが好ましい。
【0012】
前記電気炉内が、前記試料が加熱される際に加圧されていることが好ましい。
このような構成であれば、電気炉内を加圧するとともに支燃ガス濃度を高くすることで、難燃性試料の燃焼を促進させることができ、電気炉内を加圧しつつ支燃ガス濃度を低くすることで、爆燃性試料の急激な燃焼を抑制することができ、同じ分析装置で難燃性試料及び爆燃性試料の両方を分析することが可能となる。
【0013】
前記電気炉の動作を制御する炉制御部をさらに具備し、前記炉制御部が、前記電気炉に前記試料を収容した前記容器が導入される前に、当該電気炉を加熱するように構成されていることが好ましい。
このような構成であれば、電気炉に試料を収容した容器を導入した後に電気炉を加熱する構成に比べて、容器を導入してから試料が燃焼するまでの時間を短くすることができ、分析時間の短縮化や分析の高効率化を図れる。
【0014】
前記電気炉が、側壁に形成された開口部を介して前記容器が導入されるものであり、前記開口部を開閉する開閉蓋の駆動用ガスが、前記希釈ガスとして兼用されていることが好ましい。
このような構成であれば、支燃ガスを希釈するための専用の希釈ガスを準備する必要がない。
【0015】
支燃ガスと希釈ガスとでは粘性が異なることから、混合ガス中の支燃ガスの濃度に応じて混合ガスの粘性が変わり、この粘性の変化が分析精度に影響し得る。
そこで、分析精度を担保するためには、前記ガス分析計から出力された光強度信号に基づいて前記試料に含まれる成分の質量濃度を算出する演算部と、前記混合ガス中の前記支燃ガスの濃度として予め設定された目標支燃ガス濃度と補正係数とを関連付ける補正データを格納する補正データ格納部とを具備し、前記演算部が、前記目標支燃ガス濃度及び前記補正データから得られる補正係数を用いて、算出した質量濃度を補正することが好ましい。
【0016】
試料の燃焼量が多過ぎる場合に、その燃焼を抑えられるようにするためには、前記ガス分析計から出力された光強度信号、又は、該光強度信号に基づいて算出された前記試料に含まれる成分の濃度に基づいて、前記濃度変更機構を制御する濃度制御部をさらに具備することが好ましい。
【0017】
希釈ガスを用いることによる分析精度への影響を抑えるためには、前記ガス分析計が非分散型赤外線検出器を有するものであり、前記支燃ガス及び前記希釈ガスの赤外線の吸収率が等しいことが好ましい。
【0018】
また、本発明に係る分析方法は、試料を収容した容器が導入される電気炉と、前記電気炉内で加熱されて燃焼した前記試料から生じるガスを分析するガス分析計と、前記試料の燃焼を促進させる支燃ガスに希釈ガスを混合してなる混合ガスを前記電気炉に供給する混合ガス供給路とを具備する分析装置を用いた分析方法であって、前記混合ガス中の前記支燃ガスの濃度を変更して、前記混合ガス供給路から前記電気炉に供給することを特徴とする方法であり、このような分析方法によっても、上述した分析装置と同様の作用効果を奏し得る。
【発明の効果】
【0019】
以上に述べた本発明によれば、例えば難燃性試料、爆燃性試料、混合試料等といった試料の種類に応じて燃焼量を柔軟に変更することができ、燃焼の促進や急激な燃焼の抑制を可能とし、種々の試料の分析に資する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る分析装置の電気炉の構成を示す模式図。
【
図2】同実施形態の分析装置の全体構成を示す模式図。
【
図3】同実施形態の制御装置の機能を示す機能ブロック図。
【
図4】その他の実施形態における分析装置の全体構成を示す模式図。
【
図5】その他の実施形態における制御装置の機能を示す機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
本実施形態に係る分析装置100は、粉末状やバルク状の固体試料を加熱して燃焼させ、それによって生じたガスから当該試料に含まれる炭素(C)、硫黄(S)等の元素を分析するものである。試料としては、例えば、鉄鋼や非鉄金属などの無機材料を含むもの、石炭などの有機材料を含むもの、無機材料及び有機材料の両方を含むものなどを挙げることができる。
【0023】
具体的にこの分析装置100は、
図1に示すように、試料Wが収容された容器2が配置される電気炉3と、電気炉3で加熱されて燃焼した試料Wから生じるガスを分析するガス分析計4とを具備する。
【0024】
容器2は、内部に例えば粉末状の試料Wが収容されるものである。本実施形態の容器2は、上部に開口を有する長尺状をなすものであり、具体的には磁気燃焼ボートである。なお、容器2の形状はこれに限られず、種々の形状とすることができる。
【0025】
電気炉3は、その内部で、試料Wが収容されていない容器2を空焼きしたり、試料Wが収容された容器2を加熱し、試料Wを加熱してガスを発生させるものである。
【0026】
具体的に電気炉3は、
図1に示すように、側壁に形成された開口部3Hから水平方向に延びる空間3Sを有し、当該空間3Sに開口部3Hを介して容器2が配置されるものであり、容器2が出し入れされる炉本体31と、炉本体31の周囲に設けられて炉本体31を加熱する電気抵抗体(不図示)と、電気抵抗体に電力を供給して通電発熱させる電源回路(不図示)とを備えている。
【0027】
炉本体31は、例えば円筒状のセラミック成形体であり、内部に容器2を収容可能な空間3Sを有するものである。炉本体31の一方の端部には開口部3Hが形成されている。また、炉本体31の他方の端部には、試料Wから発生したガスをガス分析計4に導出するためのガス導出口3Pが形成されている。なお、炉本体31の加熱方式としては、電気抵抗炉に電流を流して抵抗加熱(ジュール発熱)させるものであっても良く、この場合に炉本体31は導電性を有する金属から形成される。
【0028】
炉本体31の開口部3Hには開閉蓋32が設けられている。この開閉蓋32は、開口部3Hを閉塞する閉塞位置と、開口部3Hを開放する開放位置との間で移動するものであり、例えばエアシリンダ等のアクチュエータ33により駆動する。
【0029】
本実施形態の分析装置100は、
図2に示すように、開閉蓋32を駆動するための駆動用ガスが流れる駆動用ガス流路L1を備えている。この駆動用ガス流路L1は、一端開口から駆動用ガスが導入されるとともに、他端開口がアクチュエータ33に接続されている。駆動用ガスは、ここでは例えば窒素ガス又は空気が用いられている。
【0030】
ガス分析計4は、電気炉3で生じたガスを分析して、試料Wに含まれる対象成分の含有値を求めるものであり、例えば非分散型赤外線吸収法(NDIR法)を用いて分析するものである。具体的にガス分析計4は、図示しない非分散型赤外線検出器を有しており、電気炉3から導出されたガスに含まれるCO2、CO、SO2等を検出することで、試料Wに含まれる炭素(C)や硫黄(S)等の含有値を求めるものである。なお、分析装置100としては、複数のガス分析計4を備えたものであっても良い。
【0031】
ガス分析計4は、
図2に示すように、一端開口が上述した電気炉3のガス導出口3Pに連通する分析用流路L2上に設けられており、この分析用流路L2におけるガス分析計4の上流側には第1開閉弁SV1やフィルタFが設けられている。
【0032】
また、本実施形態の分析装置100には、分析用流路L2における第1開閉弁SV1の上流側から分岐した大気開放用流路L3が設けられている。この大気開放用流路L3には第2開閉弁SV2が設けられている。
【0033】
然して、本実施形態の分析装置100は、
図2に示すように、試料の燃焼を促進させる支燃ガスが流れる支燃ガス流路L4と、支燃ガスを希釈する希釈ガスが流れる希釈ガス流路L5と、支燃ガスに希釈ガスを混合して混合ガスを生成するガス混合部5と、混合ガスを電気炉3に供給する混合ガス供給路L6と、分析装置100の各種動作を制御する制御装置6とをさらに備えてなる。
【0034】
支燃ガス流路L4は、
図2に示すように、一端開口から支燃ガスが導入されるとともに、他端開口がガス混合部5に接続されている。支燃ガスは、例えば濃度100%或いは濃度100%に近い高濃度(例えば濃度90%以上)の酸素ガスである。この支燃ガス流路L4には、レギュレータR1が設けられており、支燃ガスを所定の圧力(例えば150kPa)に調圧している。ここでは、支燃ガス流路L4におけるレギュレータR1の上流側から分岐して、上述した分析用流路L2における第1開閉弁SV1とガス分析計4との間に接続されたパージ用流路L7が設けられており、ここでは支燃ガスをパージガスとして兼用している。このパージ用流路L7には、第3開閉弁SV3が設けられている。
【0035】
希釈ガス流路L5は、
図2に示すように、一端開口から希釈ガスが導入されるとともに、他端開口がガス混合部5に接続されている。希釈ガスは、支燃ガスや試料の燃焼により生じたガスに対して不活性なガスであり例えば窒素ガスやアルゴンガスである。
ここでは、上述した開閉蓋32を駆動する駆動用ガスを希釈ガスとして兼用している。つまり、希釈ガス流路L5と駆動用ガス流路L1とは上流側において共通しており、希釈ガス流路L5は、途中の分岐点で分岐してガス混合部5に接続され、駆動用ガス流路L1は同分岐点から分岐してアクチュエータ33に接続されている。
【0036】
希釈ガス流路L5における分岐点よりも下流側にはレギュレータR2が設けられており、ガス混合部5から導出される混合ガスを所定の圧力(例えば70kPa)に調圧している。
【0037】
ガス混合部5は、支燃ガス流路L4及び希釈ガス流路L5が接続されるものであり、具体的には、支燃ガス流路L4の他端開口が接続されて支燃ガスが導入される第1導入ポート(不図示)と、希釈ガス流路L5の他端開口が接続されて希釈ガスが導入される第2導入ポート(不図示)と、混合ガス供給路L6の一端開口が接続されて混合ガスを導出する導出ポート(不図示)を有している。
本実施形態のガス混合部5は、
図2に示すように、混合ガス中の支燃ガスの濃度を変更させる濃度変更機構7としての機能を備えている。
【0038】
濃度変更機構7は、混合ガスに含まれる支燃ガスの濃度を変更可能に構成されたものであり、具体的には例えば毛細管式流量比混合法の原理を用いて支燃ガスと希釈ガスとの混合比を変更するものである。ここでは、オペレータが濃度変更機構7に設けられたつまみ等の濃度切替部71を操作することで、混合ガスに含まれる支燃ガスの濃度を段階的に変更できるように構成されている。
【0039】
混合ガス供給路L6は、
図2に示すように、一端開口がガス混合部5の導出ポート(不図示)に接続されるとともに、他端開口が電気炉3内に連通しており、ガス混合部5が導出した混合ガスを電気炉3内に供給するものである。
【0040】
この混合ガス供給路L6には、混合ガスの所定容量を貯留可能なバッファ部BFが設けられている。また、混合ガス供給路L6におけるバッファ部BFよりも下流側には第4開閉弁SV4、圧力センサPS等が設けられている。なお、バッファ部BFは必ずしも必要ではない。
【0041】
制御装置6は、CPU、メモリ、ディスプレイD、入力手段などを有するものであり、前記メモリに格納された分析プログラムに基づいて、
図3に示すように、炉制御部61、演算部62、補正データ格納部63等としての機能を発揮するように構成されている。
【0042】
以下、各部61~63の説明を兼ねて、本実施形態の分析装置100の動作を説明する。
【0043】
まず、炉制御部61が電気炉3の電源回路(不図示)を制御して電気抵抗体(不図示)に電力を供給し、炉本体31を加熱する。ここでは、試料Wが収容されていない容器2を電気炉3内に入れて空焼きし、容器2の付着物等を取り除く。なお、空焼きには、電気炉3に並列配置された別の電気炉や装置外の別の電気炉を用いても良い。このとき、第1開閉弁SV1、第3開閉弁SV3、及び第4開閉弁SV4は閉じられており、第2開閉弁SV2は開いている。
【0044】
その後、電気炉3内から取り出した容器2に秤量した試料Wを収容させる。なお、試料Wの秤量結果は、例えばオペレータによって制御装置6に入力される。
【0045】
次いで、炉制御部61は、試料Wを収容した容器2を電気炉3内に入れる前に、電気炉3を所定の設定温度に加熱する。なお、ここでの設定温度は室温から1500℃までの間で選択できる。
【0046】
そして本実施形態では、試料Wを収容した容器2を電気炉3内に入れる前に、例えば試料Wに含まれる成分等に鑑みて、混合ガスに含まれる支燃ガスの濃度(以下、目標支燃ガス濃度という)を設定する。
【0047】
ここでは、上述したようにオペレータが濃度変更機構7によって目標支燃ガス濃度を設定・変更できるようにしてあり、例えば燃焼し難い難燃性試料を分析する場合は、目標支燃ガス濃度が高く設定されるように(例えば濃度100%)濃度変更機構7を操作する。
【0048】
また、燃焼し易い爆燃性試料や、低温域で燃焼する成分と高温域で燃焼する成分とを含む混合試料を分析する場合は、目標支燃ガス濃度が低く設定されるように濃度変更機構7を操作する。
【0049】
本実施形態では、少なくとも目標支燃ガス濃度が高く設定されている場合は、混合ガスが電気炉3内に供給されることで、電気炉3内が加圧状態となるようにしてある、ただし、必ずしも加圧状態にしなければならないわけではない。
一方、目標支燃ガス濃度が低く設定されている場合は、電気炉3内は必ずしも加圧されている必要はなく、例えば減圧されていても良い。
【0050】
このように目標支燃ガス濃度が設定されており、炉制御部61が電気炉3を所定の設定温度に温調している状態において、第3開閉弁SV3を開け、ガス分析計4をパージし、その後、第3開閉弁SV3を閉じる。そして、開閉蓋32を開けて、試料Wを収容させた容器2を電気炉3内に入れ、開閉蓋32を閉じる。次いで、第2開閉弁SV2を閉じ、第1開閉弁SV1及び第4開閉弁SV4を開ける。
【0051】
これにより、電気炉3内で試料Wが燃焼してガスが生じ、そのガスがガス分析計4に導かれる。そして、ガス分析計4は、ガスに含まれるCやS等の対象成分の含有値に応じた光強度信号を演算部62に出力し、演算部62がこの光検出信号と試料Wの秤量結果とを用いて対象成分の質量濃度を算出する。
【0052】
ここで、低温域で燃焼する成分及び高温域で燃焼する成分の両成分を含む試料Wを分析する場合は、例えば、該試料Wを収容した容器2を電気炉3内に入れてから所定時間が経過するまでは目標支燃ガス濃度を低く設定しておき、例えば所定時間経過後に、目標支燃ガス濃度が高くなるように設定を変更する。
このような支燃ガスの設定変更により、所定時間経過前は、低温域で燃焼する成分の質量濃度が算出され、所定時間経過後は、高温域で燃焼する成分の質量濃度が算出される。
【0053】
本実施形態では、前記メモリの所定領域に設定された補正データ格納部63に、目標支燃ガス濃度と補正係数とを関連付ける補正データが格納されている。そして、例えばオペレータが設定した目標支燃ガス濃度を制御装置6に入力しておくことで、演算部62は、入力された目標支燃ガス濃度及び補正データを用いて補正係数を取得して、その補正係数を用いて算出した質量濃度を補正し、その補正後の質量濃度をディスプレイ等に出力する。
このような補正データとしては、例えば目標支燃ガス濃度、支燃ガスの粘性、希釈ガスの粘性等をパラメータとして補正係数を算出する算出式や、目標支燃ガス濃度と補正係数とを紐付けたテーブルなどが挙げられる。
【0054】
このように構成された分析装置100によれば、濃度変更機構7により混合ガス中の支燃ガスの濃度を変更させることができるので、例えば金属やセラミック等の難燃性試料を分析する場合は、目標支燃ガス濃度を高くすることで燃焼を促進させることができ、例えば有機材料等の爆燃性試料を分析する場合は、目標支燃ガス濃度を低くすることで急激な燃焼を抑制することができる。これにより、難燃性試料及び爆燃性試料の両方を1台の同じ分析装置100を用いて分析することができる。
【0055】
さらに、爆燃性試料の分析に際しては、目標支燃ガス濃度を低くして急激な燃焼を抑制することで、試料の燃焼により生じるガス量を抑えることができる。これにより、ガス分析計により検出される信号のピークがなだらかになるので、検出される信号のピークが急峻な場合に比べて、検出器の同じ分解能が同じであれば、精度良く分析することができる。
【0056】
加えて、上述したように爆燃性試料の急激な燃焼を抑制することで、当該試料の飛び散りを防止することができ、このことも精度の良い定量分析につながり、しかも電気炉3内の汚れを低減することもできる。
【0057】
さらに加えて、低温域で燃焼する成分と高温域で燃焼する成分とを含む混合試料の分析に際しては、燃焼開始時には目標支燃ガス濃度を低く設定しておき、途中で目標支燃ガス濃度を高く変更することで、低温域で燃焼する成分と高温域で燃焼する成分とを分離して分析することができる。これにより、例えば無機材料及び有機材料を含む混合試料などを、精度良く分離分析することができる。
【0058】
さらに、支燃ガスとして例えば濃度100%の高濃度な酸素ガスを用いたり、目標支燃ガス濃度が高く設定されている場合に電気炉3内を加圧状態にしたりしているので、高温域で燃焼する試料Wなどを分析する場合に、該試料Wの燃焼をより促進させることができる。
【0059】
また、駆動用ガスが、希釈ガスとして兼用されているので、支燃ガスを希釈するための専用の希釈ガスを準備する必要がないし、既存の駆動用ガス流路L1から分岐させた流路を希釈ガス流路L5とすることができるので、流路構成の簡素化を図れる。
【0060】
加えて、演算部62が、算出した対象成分の質量濃度を補正係数を用いて補正するので、支燃ガスと希釈ガスとの粘性の違いによる分析精度への影響を低減することができる。
【0061】
なお、本発明は前記各実施形態に限られるものではない。
【0062】
例えば、前記実施形態では、オペレータが目標支燃ガス濃度を設定する場合について説明したが、例えば制御装置6やその他のコンピュータを利用して目標支燃ガス濃度を自動で制御するようにしても良い。
この場合、濃度変更機構7は、制御信号を受け付けて段階的又は無段階的に目標支燃ガス濃度を変更するように構成されていても良い。
【0063】
また、前記実施形態では、ガス混合部5が濃度変更機構7としての機能を備えている場合について説明したが、濃度変更機構7としては、
図4に示すように、ガス混合部5とは別に設けられた1又は複数の流量制御機器MFCを利用して構成されていても良い。
かかる濃度変更機構7の具体的な一例としては、
図4に示すように、支燃ガス流路L4に設けられたマスフローコントローラたる第1流量制御機器MFC1と、希釈ガス流路L5に設けられたマスフローコントローラたる第2流量制御機器MFC2とを有した構成を挙げることができる。
このような構成であれば、例えば制御装置6が第1流量制御機器MFC1及び第2流量制御機器MFC2を制御することで、目標支燃ガス濃度を制御することができ、目標支燃ガス濃度の制御の自動化を図れる。
【0064】
上述したように、目標支燃ガス濃度の制御の自動化を図る構成において、制御装置6としては、
図5に示すように、濃度変更機構7を制御する濃度制御部64としての機能をさらに備えている態様が挙げられる。
ここでの濃度制御部64は、演算部62により算出された試料に含まれる成分の濃度に基づいて、濃度変更機構7を制御するように構成されており、具体的には演算部62により算出された濃度が予め設定された上限値を上回った場合に、濃度変更機構7を制御して目標支燃ガス濃度を低くする。
このような構成であれば、試料Wの燃焼量が多く、演算部62により算出された濃度が上限値を上回った場合に、その試料Wの燃焼を抑えることができる。
【0065】
また、濃度制御部64は、演算部62により算出された濃度が予め設定された下限値を下回った場合に、ガス混合機構を制御して目標支燃ガス濃度を高くすることが好ましい。
このような構成であれば、試料Wの燃焼量が少なく、演算部62により算出された濃度が下限値を下回った場合に、その試料Wの燃焼を促進させることができる。
【0066】
なお、濃度制御部64としては、ガス分析計4から出力された光強度信号に基づいて濃度変更機構7を制御するように構成されていても良いし、この光強度信号や演算部62により算出された濃度を用いて目標支燃ガス濃度をフィードバック制御するように構成されていても良い。
【0067】
低温域で燃焼する成分と高温域で燃焼する成分との両成分を含む試料を分析する場合、前記実施形態では目標支燃ガス濃度を始めは低く設定しておき、途中で高く設定変更する方法を説明したが、このような目標支燃ガス濃度の設定変更に代えて、或いは、設定変更に加えて、電気炉の設定温度を途中で変更しても構わない。
【0068】
ガス分析計は、前記実施形態で述べたNDIR法を用いたものに限らず、FTIR法を用いたものやNDUV法を用いたものであっても構わない。
【0069】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0070】
100・・・分析装置
2 ・・・容器
3 ・・・電気炉
4 ・・・ガス分析計
5 ・・・ガス混合部
6 ・・・制御装置
7 ・・・濃度変更機構
L4 ・・・支燃ガス流路
L5 ・・・希釈ガス流路
L6 ・・・混合ガス供給路
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、高温域における試料の燃焼の促進を可能としつつも、低温域における試料の燃焼量を抑えることができる。