(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】液体をインキュベートおよびウイルスを不活化するための方法
(51)【国際特許分類】
C12N 7/04 20060101AFI20230130BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230130BHJP
C12N 7/06 20060101ALI20230130BHJP
【FI】
C12N7/04
C12M1/00 Z
C12N7/06
(21)【出願番号】P 2020501321
(86)(22)【出願日】2018-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2018068628
(87)【国際公開番号】W WO2019011900
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-06-07
(32)【優先日】2017-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2018-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ハンマーシュミット, ニコラウス
(72)【発明者】
【氏名】センカル, ユレ
(72)【発明者】
【氏名】ユングバウアー, アロイス
(72)【発明者】
【氏名】マルティンス, ドゥアルテ リマ
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-034556(JP,A)
【文献】特表2015-525213(JP,A)
【文献】特表2015-522019(JP,A)
【文献】特表2007-515392(JP,A)
【文献】特表2017-509338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 7/00
C12M 1/00-3/00
A61L 2/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの液体の混合物をインキュベートするための方法であって、
i)混合物を得るために、前記少なくとも2つの液体を混合すること;および
ii)
ウイルス不活化のために、不活性な非多孔質ビーズの充填床に前記混合物を通過させ、これにより前記混合物をインキュベートすること
を含み、前記方法がウイルス不活化のためであり、前記少なくとも2つの液体の第一が、ウイルスを潜在的に含有する液体であり、前記少なくとも2つの液体の第二の液体が、ウイルス不活化剤を含む、方法。
【請求項2】
前記方法が連続流法であ
り、
前記混合および通過が連続的に実施さ
れ、ならび
に
前記
不活性な非多孔質ビーズが
、ガラスビーズまたはセラミックビーズまた
はプラスチックビーズまたは鋼ビーズである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プラスチックビーズがPMMAビーズである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記
不活性な非多孔質ビーズの平均粒子径が、0.05~1mmの範
囲にある、ならびに/あるいは
前記
不活性な非多孔質ビーズの95%が、50%を超え
て前記平均粒子径から逸脱しない、請求項
1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記
不活性な非多孔質ビーズの充填床が、少なくとも5c
mの長さを有する、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、以下:
(A)前記
不活性な非多孔質ビーズの充填床が、前記
不活性な非多孔質ビーズを振動処理に供することを含む方法によって取得可能である、
(B)前記
不活性な非多孔質ビーズの充填床に関して、総体積に対する空隙の体積の割合が0.2~0.45の範
囲にある、
(C)前記
不活性な非多孔質ビーズの充填床が、カラムおよび/または反応器中に含有さ
れる、ならびに/あるいは
(D)前記
不活性な非多孔質ビーズの充填床の空隙体積が、少なくとも10m
Lである、
のうちの少なくとも1つにより特徴付けられる、請求項
1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記不活性な非多孔質ビーズの充填床が、カラムおよび/または反応器中に含有され、前記カラムが5mmを超える直径を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第一の液体が生物医薬品を含
み、
前記方法が、エンベロープウイルスのウイルス不活化のためであ
り、
前記ウイルスが、レトロウイルスおよび/またはフラビウイルス科のウイルスで
ある、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ウイルスがX-MuLVである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ウイルスがBVDVである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ウイルス不活化剤が、溶媒/界面活性剤ウイルス不活化処理に適した溶媒/界面活性剤混合物であるか、または低pHウイルス不活化処理に適した酸性溶液である
、
前記ウイルス不活化剤が、溶媒-界面活性剤処理のための溶媒/界面活性剤混合物である、ならび
に
前記方法が、少なくとも1つのウイルスに対して、少なくとも1Log10減少値(LRV
)を達成
する、請求項
8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのウイルスが、レトロウイルスおよび/またはフラビウイルス科のウイルスである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記レトロウイルスがX-MuLVである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記フラビウイルス科のウイルスがBVDVである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記
不活性な非多孔質ビーズの充填床を通じた前記混合物の空塔線速度が、600cm/時間に等しいもしくはそれより低
い、
前記
不活性な非多孔質ビーズの充填床を通過するときの前記混合物のボーデンシュタイン数が、50に等しいもしくはそれより高
い、
請求項1~
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
生物医薬品を調製するための方法であって、請求項
8~
15のいずれか一項に記載の方法を実施することおよび前記生物医薬品を回収することを含み、前記第一の液体が生物医薬品を含む方法。
【請求項17】
連続的ウイルス不活化のためのデバイスの使用であって、前記デバイスは、生物医薬品の調製のための
、連続的ウイルス不活化に適した連続流反応器であるデバイスであ
り、前記デバイスは、
不活性な非多孔質ビーズの充填床を備
える、
使用。
【請求項18】
前記デバイスは、以下:
(a)前記不活性な非多孔質ビーズが、ガラスビーズまたはセラミックビーズまたはプラスチックビーズまたは鋼ビーズである、
(b)前記不活性な非多孔質ビーズの平均粒子径が、0.05~1mmの範囲にある、
(c)前記不活性な非多孔質ビーズが、50%を超えて前記平均粒子径から逸脱しない、
(d)前記不活性な非多孔質ビーズの充填床が、少なくとも5cmの長さを有する、
(e)前記不活性な非多孔質ビーズの充填床が、振動処理によって充填される、
(f)前記不活性な非多孔質ビーズの充填床に関して、総体積に対する空隙の体積の割合が0.2~0.45の範囲にある、
(g)前記不活性な非多孔質ビーズの充填床が、カラムおよび/または反応器中に含有される、
(h)前記不活性な非多孔質ビーズの充填床の空隙体積が、少なくとも10mLである、
(i)前記デバイスが、前記不活性な非多孔質ビーズの充填床に接続されている1つまたは複数のミキサーをさらに備える、ならびに
(j)前記デバイスがフィルターをさらに備える、
のうちの少なくとも1つにより特徴付けられる、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記プラスチックビーズがPMMAビーズである、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記不活性な非多孔質ビーズの充填床が、カラムおよび/または反応器中に含有される、請求項18に記載の使用。
【請求項21】
前記カラムが5mmを超える直径を有する、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記デバイスが、前記不活性な非多孔質ビーズの充填床に接続されている1つまたは複数のミキサーをさらに備える、請求項18に記載の使用。
【請求項23】
前記ミキサーが静的ミキサーである、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記静的ミキサーがT字型接合部ミキサーである、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記ミキサーが動的ミキサーである、請求項22に記載の使用。
【請求項26】
前記動的ミキサーが動的撹拌機である、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記デバイスがフィルターをさらに備え、前記フィルターが、前記不活性な非多孔質ビーズの充填床と静的ミキサーとの間に配置されている、請求項18に記載の使用。
【請求項28】
前記静的ミキサーがT字型接合部ミキサーである、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記フィルターが0.2μmの孔径を有する、請求項27または28に記載の使用。
【請求項30】
連続流ウイルス不活化プロセスの改変のための方法であって、前記改変が、連続流ウイルス不活化のための
不活性な非多孔質ビーズの充填床を使用すること、および
、ウイルス不活化のために、少なくとも2つの液体の混合物を前記
不活性な非多孔質ビーズの充填床に通過させ、これによ
り前記混合物をインキュベートすることを含み、
前記ウイルス不活化プロセスがウイルス不活化のためのウイルス不活化剤を使用し、前記少なくとも2つの液体の第一がウイルスを潜在的に含有する液体であり、前記少なくとも2つの液体の第二の液体がウイルス不活化剤を含
む、方法。
【請求項31】
前記連続流ウイルス不活化プロセスが、生物医薬品の調製のためのプロセスである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ウイルス不活化プロセスがエンベロープウイルスのウイルス不活化のためである、ならび
に
前記ウイルス不活化プロセスにおいて使用される前記ウイルス不活化剤が、溶媒/界面活性剤ウイルス不活化処理に適した溶媒/界面活性剤混合物であるか、または低pHウイルス不活化処理に適した酸性溶液で
ある、請求項
30または31に記載の方法。
【請求項33】
前記ウイルス不活化プロセスにおいて使用される前記ウイルス不活化剤が、溶媒-界面活性剤処理のための溶媒/界面活性剤混合物である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記方法が、以下;
(1)前記改変が、少なくとも1つのウイルスに対して、少なくとも1Log10減少値(LRV
)を達成するために前記ウイルス不活化プロセスを改変することを含む、
(2)前記
不活性な非多孔質ビーズの充填床を通過する前記混合物のボーデンシュタイン数が、50に等しいもしくはそれより高
いように、前記改変が前記ウイルス不活化プロセスを改変することを含む、
(3)前記
不活性な非多孔質ビーズの充填床を通じた前記混合物の空塔線速度が、600cm/時間に等しいもしくはそれより低
いように、前記改変が前記ウイルス不活化プロセスを改変することを含む、ならび
に
(4)前記改変が、請求項2~
7のいずれか一項に定義された、
不活性な非多孔質ビーズの充填床を使用することを含む、
のうちの少なくとも1つにより特徴付けられる、請求項
30~
33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記改変が、前記Log10減少値(LRV)を達成するために前記
不活性な非多孔質ビーズの充填床中での前記混合物の通過時間を調整することを含み、および前記通過時間が、前記混合物の空塔線速度および/または前記
不活性な非多孔質ビーズの充填床の空隙体積を調整することによって調整される、請求項
34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、液体をインキュベートするための方法、生物医薬品を調製するための方法、および生物医薬品の調製のためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
多くの連続的に稼働するプロセスでは、液体が混合され、次いで、管またはカラムなどの処理装置に液体を通過させることによって液体がインキュベートされる。しかしながら、プロセス中で使用される構造を通過すると、構造の表面により近い液体の部分は、構造の表面からより遠い液体の部分より低い速度で流れる傾向がある。例えば、液体混合物が中空の管を通じて流れる場合、管の中央にある液体の部分は、周辺にある液体の部分より高い速度で流れる傾向がある。その結果、液体の全ての部分が同時に構造に入る場合でさえ、液体の異なる部分は異なる滞留時間を有する。換言すれば、液体の異なる部分は、滞留時間の分布を示す。液体の異なる部分間に通過時間の大きな差が存在する場合には、滞留時間分布は広い;液体の異なる部分間に通過時間の小さな差が存在する場合には、滞留時間分布は狭い。
【0003】
所定の期間、液体混合物がインキュベートされるべき場合には、狭い滞留時間分布が有利である。例えば、連続的な生物医薬製造プロセスでは、連続的ウイルス不活化は、生物医薬含有液体をウイルス不活化剤と混合すること、および所定の期間、前記プロセスにおいて使用される構造に混合物を通過させることによって混合物をインキュベートすることによって達成することができる。狭い滞留時間分布は、混合物の液体の全ての部分が、同様の、すなわち所望の期間、ウイルス不活化剤とともにインキュベートされることを可能にする。そのように、液体の幾つかの部分がウイルス不活化剤にあまりにも長く曝され、生物医薬品を損傷し得るのに対して、液体の他の部分は十分に長くウイルス不活化剤に曝されず、不完全なウイルス不活化をもたらし得ることを回避することができるであろう。
【0004】
流動する液体をインキュベートするための現在既知の方法は、狭い滞留時間分布を与えないか、または他の著しい欠点を抱える。例えば、連続的な製造プロセス中で液体混合物をインキュベートするための最も単純なアプローチは、所望の最小滞留時間を与えるために十分に長い中空の管に液体混合物を通過させることであろう。しかしながら、中空の管における滞留時間分布は極めて広く、再現性がない。半径方向の混合を促進するために、管の中に静的ミキサーを添加することができる(参考文献1)。しかしながら、このような設定では、規模の拡大および管の長い伸長中への静的ミキサーの取付けも問題であり得る。
【0005】
または、いわゆるコイルドフローインバータ(CFI)は、さらなる90°の屈曲を有するコイル状管に液体混合物を通過させることによって機能する(参考文献2)。この設定は、軸方向の混合を最小化しながら半径方向の混合を増大させ、これにより滞留分布を狭くすることが想定されている。連続的ウイルス不活化において使用するために、最近、この系が記載され(参考文献3、4)、不純物沈殿工程における滞留時間分布を狭くするために、最近、同じ設定が使用されている(参考文献5)。しかしながら、CFIは、2~3mmの管径を用いた場合のみ機能することが判明しており、系内での流体力学が管の寸法とともに変化するので、規模拡大は依然として困難である。また、CFIは、各所与の設計に対して単一の流量に限定される。
【0006】
最近、狭い滞留時間分布を有する連続的ウイルス不活化のために、非混和性の分離媒体を導入することによってマイクロリアクタ中の生成物の流れを分割することが示唆された(参考文献6)。しかしながら、このような方法はマイクロリアクタの使用に限定され、これは規模拡大を極めて困難とする。
【0007】
流れている液体を狭い滞留時間分布でインキュベートするための適切な方法が上述のように欠如しているために、現在、時間的制約のあるインキュベーションは、多くの場合、連続モードよりむしろバッチモードで実施される。バッチモードでは、液体混合物は容器中でインキュベートされるが、インキュベーションの時間のため、流れが中断される。その結果、バッチモードでの生産性(例えば、期間当たりのインキュベートされる液体の量に関して、または期間当たりに生成される生物医薬品の量に関して)は、一般的に、連続的モードにおける生産性より低い。
【0008】
上記に照らして、高い生産性を与えながら、規定の期間にわたって液体をインキュベートすることを可能にする改善された方法に対して大きな需要が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の説明
本発明は、上記の要望を満たし、以下に記載された実施形態を提供することによって、当技術分野における上記課題を解決する。
【0010】
特に、本発明者らは、驚くべきことに、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造に液体を通過させることが、従前に知られた方法より狭い滞留時間分布を与えることを見出した。このため、本発明によれば、少なくとも2つの液体の混合物は、前記少なくとも2つの液体を混合すること、および複数の相互接続されたチャンネルを有する構造に混合物を通過させることによってインキュベートすることができ、混合および通過は連続的に実施される。
【0011】
本発明者らは、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造は非多孔質ビーズの充填床とすることができることも見出した。この実施形態において、相互接続されたチャンネルは、非多孔質ビーズ間の空間によって形成される。次いで、本発明者らは、いずれの特性が滞留時間分布に影響を及ぼすかを明らかにするために数多くの実験を行った。本発明者らは、驚くべきことに、充填床を形成するビーズの平均粒子径および粒度分布が検査された範囲において滞留時間分布に対して最も大きな影響を有することを見出した。具体的には、本発明者らは、ビーズが0.05mm~1mmの範囲にある平均粒子径を有する場合に、および粒度分布が狭い場合に、非多孔質ビーズの前記充填床は特に狭い滞留時間分布を与えることを見出した。さらに、本発明者らは、非多孔質ビーズの充填床のより大きな体積はより狭い滞留時間分布をもたらすことを見出した。さらに、本発明によれば、(例えば、カラムの形態の)ビーズのより長い床も、より狭い滞留時間分布をもたらす。
【0012】
多くの現在使用されている方法とは対照的に、本発明の方法は、容易に規模を拡大することができる。これは、本発明の方法が流量および空塔線速度の変化の影響をあまり受けないから、ならびにより大きな体積を有するおよびより長い非多孔質ビーズの充填床を用いると滞留時間分布がより狭くなるからである。このため、本発明の方法は、商業的な製造プロセスの中に容易に組み込むことができる。
【0013】
総合すると、本発明者らは、以下に記載された好ましい実施形態を提供することによって液体をインキュベートするための改善された手段を提供する:
項目1。少なくとも2つの液体の混合物をインキュベートするための方法であって、
i)混合物を得るために、前記少なくとも2つの液体を混合すること;および
ii)複数の相互接続されたチャンネルを有する構造に前記混合物を通過させ、これにより前記混合物をインキュベートすること
を含む、方法。
項目2。前記方法が連続流法である、項目1に記載の方法。
項目3。前記混合および通過が連続的に実施される、項目1または2に記載の方法。
項目4。前記複数の相互接続されたチャンネルを有する構造が、非多孔質ビーズの充填床である、先行する項目のいずれか一項に記載の方法。
項目5。前記非多孔質ビーズが不活性な非多孔質ビーズである、項目4に記載の方法。
項目6。前記非多孔質ビーズが、ガラスビーズまたはセラミックビーズまたはPMMAビーズなどのプラスチックビーズまたは鋼ビーズである、項目4または項目5に記載の方法。
項目7。前記非多孔質ビーズの平均粒子径が、0.05~1mmの範囲、好ましくは0.05~0.6mmの範囲、より好ましくは0.05~0.5mm、および最も好ましくは0.05~0.3mmの範囲にある、項目4~6のいずれか一項に記載の方法。
項目8。前記非多孔質ビーズの95%が、50%を超えて、好ましくは35%以下、最も好ましくは20%以下で前記平均粒子径から逸脱しない、項目4~7のいずれか一項に記載の方法。
項目9。前記複数の相互接続されたチャンネルを有する構造が、少なくとも5cm、または少なくとも10cm、または少なくとも20cm、または少なくとも30cm、または少なくとも50cm、または少なくとも70cm、または少なくとも100cmの長さを有する、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
項目10。前記複数の相互接続されたチャンネルを有する構造が、少なくとも20cmの長さを有する、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
項目11。前記非多孔質ビーズの充填床が、前記非多孔質ビーズを振動処理に供することを含む方法によって取得可能である、項目4~10のいずれか一項に記載の方法。
項目12。前記非多孔質ビーズの充填床に関して、総体積に対する空隙の体積の割合が0.2~0.45の範囲にある、項目4~11のいずれか一項に記載の方法。
項目13。前記非多孔質ビーズの充填床に関して、総体積に対する空隙の体積の割合が0.37~0.42の範囲にある、項目4~12のいずれか一項に記載の方法。
項目14。前記非多孔質ビーズの充填床が、カラムおよび/または反応器中に含有される、項目4~13のいずれか一項に記載の方法。
項目15。前記カラムが、5mmを超える直径、好ましくは少なくとも10mmの直径を有する、項目14に記載の方法。
項目16。前記非多孔質ビーズの充填床の空隙体積が、少なくとも10mL、好ましくは少なくとも40mL、さらに好ましくは少なくとも150mL、さらにより好ましくは少なくとも470mL、およびさらにより好ましくは少なくとも700mLである、項目4~15のいずれか一項に記載の方法。
項目17。前記複数の相互接続されたチャンネルを有する構造が、モノリスまたは3D印刷された形状などのプレキャストされた構造である、項目1、9および10のいずれか一項に記載の方法。
項目18。前記複数の相互接続されたチャンネルを有する構造がモノリスであり、および前記モノリスに関して、総体積に対する空隙の体積の割合が0.5~0.75の範囲にある、項目17に記載の方法。
項目19。前記方法がウイルス不活化のためであり、前記少なくとも2つの液体の第一がウイルスを潜在的に含有する液体であり、および前記少なくとも2つの液体の第二の液体がウイルス不活化剤を含む、項目1~18のいずれか一項に記載の方法。
項目20。前記第一の液体が生物医薬品を含む、項目19に記載の方法。
項目21。前記方法が、エンベロープウイルスのウイルス不活化のためである、項目19または20に記載の方法。
項目22。前記ウイルスが、レトロウイルスおよび/またはフラビウイルス科のウイルスである、項目19~21のいずれか一項に記載の方法。
項目23。前記ウイルスが、レトロウイルス、好ましくはX-MuLVである、項目22に記載の方法。
項目24。前記ウイルスが、フラビウイルス科のウイルス、好ましくはBVDVである、項目22に記載の方法。
項目25。前記ウイルス不活化剤が、溶媒/界面活性剤ウイルス不活化処理に適した溶媒/界面活性剤混合物であるか、または低pHウイルス不活化処理に適した酸性溶液である、項目19~24のいずれか一項に記載の方法。
項目26。前記ウイルス不活化剤が、溶媒-界面活性剤処理のための溶媒/界面活性剤混合物である、項目19~25のいずれか一項に記載の方法。
項目27。前記方法が、少なくとも1つのウイルスに対して、少なくとも1Log10減少値(LRV)、少なくとも2LRV、少なくとも4LRVまたは少なくとも6LRVを達成する、項目19~26のいずれか一項に記載の方法。
項目28。前記少なくとも1つのウイルスが、項目22~24のいずれか一項に記載のウイルスである、項目27に記載の方法。
項目29。前記構造を通じた前記混合物の空塔線速度が、600cm/時間に等しいもしくはそれより低い、または300cm/時間に等しいもしくはそれより低い、または200cm/時間に等しいもしくはそれより低い、または100cm/時間に等しいもしくはそれより低い、または50cm/時間に等しいもしくはそれより低い、または20cm/時間に等しいもしくはそれより低い、項目1~28のいずれか一項に記載の方法。
項目30。前記複数の相互接続されたチャンネルを有する構造を通過するときの前記混合物のボーデンシュタイン数が、50に等しいまたはそれより高い、好ましくは300に等しいまたはそれより高い、より好ましくは400に等しいまたはそれより高い、さらにより好ましくは500に等しいまたはそれより高い、さらにより好ましくは600に等しいまたはそれより高い、最も好ましくは800に等しいまたはそれより高い、項目1~29のいずれか一項に記載の方法。
項目31。生物医薬品を調製するための方法であって、項目20~31のいずれか一項に記載の方法を実施することおよび前記生物医薬品を回収することを含む方法。
項目32。生物医薬品の調製のためのデバイスであって、非多孔質ビーズの充填床を備えるデバイス。
項目33。前記非多孔質ビーズが不活性な非多孔質ビーズである、項目32に記載のデバイス。
項目34。前記非多孔質ビーズが、ガラスビーズまたはセラミックビーズまたはPMMAビーズなどのプラスチックビーズまたは鋼ビーズである、項目32または項目33に記載のデバイス。
項目35。前記非多孔質ビーズの平均粒子径が、0.05~1mmの範囲、好ましくは0.05~0.6mmの範囲、より好ましくは0.05~0.5mmの範囲、最も好ましくは0.05~0.3mmの範囲にある、項目32~34のいずれか一項に記載のデバイス。
項目36。前記非多孔質ビーズが、50%を超えて、好ましくは35%以下、最も好ましくは20%以下で前記平均粒子径から逸脱しない、項目32~35のいずれか一項に記載のデバイス。
項目37。前記非多孔質ビーズの充填床が、少なくとも5cm、または少なくとも10cm、または少なくとも20cm、または少なくとも30cm、または少なくとも50cm、または少なくとも70cm、または少なくとも100cmの長さを有する、項目32~36のいずれか一項に記載のデバイス。
項目38。前記非多孔質ビーズの充填床が少なくとも20cmの長さを有する、項目32~37のいずれか一項に記載のデバイス。
項目39。前記非多孔質ビーズの充填床が、前記非多孔質ビーズを振動処理に供することを含む方法によって取得可能である、項目32~38のいずれか一項に記載のデバイス。
項目40。前記非多孔質ビーズの充填床に関して、総体積に対する空隙の体積の割合が0.2~0.45の範囲にある、項目32~39のいずれか一項に記載のデバイス。
項目41。前記非多孔質ビーズの充填床に関して、総体積に対する空隙の体積の割合が0.37~0.42の範囲にある、項目32~39のいずれか一項に記載のデバイス。
項目42。前記非多孔質ビーズの充填床が、カラムおよび/または反応器中に含有される、項目32~41のいずれか一項に記載のデバイス。
項目43。前記カラムが、5mmを超える直径、好ましくは少なくとも10mmの直径を有する、項目42に記載のデバイス。
項目44。前記非多孔質ビーズの充填床の空隙体積が、少なくとも10mL、好ましくは少なくとも40mL、より好ましくは少なくとも150mL、さらにより好ましくは少なくとも470mL、およびさらにより好ましくは少なくとも700mLである、項目32~43のいずれか一項に記載のデバイス。
項目45。前記デバイスが、前記非多孔質ビーズの充填床に接続されている1つまたは複数のミキサーをさらに備える、項目32~44のいずれか一項に記載のデバイス。
項目46。前記ミキサーがT字型接合部ミキサーなどの静的ミキサーであるか、または前記ミキサーが動的撹拌機などの動的ミキサーである、項目45に記載のデバイス。
項目47。前記デバイスがフィルターをさらに備え、および前記フィルターが、好ましくは、前記非多孔質ビーズの充填床と項目45または46に記載の静的ミキサーとの間に配置されている、項目32~46のいずれか一項に記載のデバイス。
項目48。前記フィルターが0.2μmの孔径を有する、項目47に記載のデバイス。
項目49。前記デバイスが連続流反応器である、項目32~48のいずれか一項に記載のデバイス。
項目50。連続流ウイルス不活化プロセスの改変のための方法であって、前記改変が、連続流ウイルス不活化のための複数の相互接続されたチャンネルを有する構造を使用すること、および少なくとも2つの液体の混合物を前記構造に通過させ、これによりウイルス不活化のために前記混合物をインキュベートすることを含む、方法。
項目51。前記連続流ウイルス不活化プロセスが生物医薬品の調製のためのプロセスである、項目50に記載の方法。
項目52。前記ウイルス不活化プロセスがウイルス不活化のためのウイルス不活化剤を使用し、前記少なくとも2つの液体の第一がウイルスを潜在的に含有する液体であり、および前記少なくとも2つの液体の第二の液体がウイルス不活化剤を含む、項目50~51のいずれか一項に記載の方法。
項目53。前記ウイルス不活化プロセスがエンベロープウイルスのウイルス不活化のためである、項目50~52のいずれか一項に記載の方法。
項目54。前記ウイルス不活化プロセスにおいて使用される前記ウイルス不活化剤が、溶媒/界面活性剤ウイルス不活化処理に適した溶媒/界面活性剤混合物であるか、または低pHウイルス不活化処理に適した酸性溶液である、項目52または53に記載の方法。
項目55。前記ウイルス不活化プロセスにおいて使用される前記ウイルス不活化剤が、溶媒-界面活性剤処理のための溶媒/界面活性剤混合物である、項目54に記載の方法。
項目56。前記改変が、少なくとも1つのウイルスに対して、少なくとも1Log10減少値(LRV)、少なくとも2LRV、少なくとも4LRVまたは少なくとも6LRVを達成するためにウイルス不活化プロセスを改変することを含む、項目50~55のいずれか一項に記載の方法。
項目57。前記複数の相互接続されたチャンネルを有する構造を通過する前記混合物のボーデンシュタイン数が、50に等しいまたはそれより高い、好ましくは300に等しいまたはそれより高い、より好ましくは400に等しいまたはそれより高い、さらにより好ましくは500に等しいまたはそれより高い、さらにより好ましくは600に等しいまたはそれより高い、最も好ましくは800に等しいまたはそれより高いように、前記改変がウイルス不活化プロセスを改変することを含む、項目50~56のいずれか一項に記載の方法。
項目58。前記構造を通じた前記混合物の空塔線速度が、600cm/時間に等しいもしくはそれより低い、または300cm/時間に等しいもしくはそれより低い、または200cm/時間に等しいもしくはそれより低い、または100cm/時間に等しいもしくはそれより低い、または50cm/時間に等しいもしくはそれより低い、または20cm/時間に等しいもしくはそれより低いように、前記改変がウイルス不活化プロセスを改変することを含む、項目50~57のいずれか一項に記載の方法。
項目59。前記改変が、項目4~18のいずれか一項に定義された、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造を使用することを含む、項目50~58のいずれか一項に記載の方法。
項目60。前記改変が、前記Log10減少値(LRV)を達成するために前記構造中での前記混合物の通過時間を調整することを含み、および前記通過時間が、前記混合物の空塔線速度および/または前記構造の空隙体積を調整することによって調整される、項目56~59のいずれか一項に記載の方法。
【0014】
上記の好ましい実施形態は「少なくとも2つの液体の混合物をインキュベートすること」および「混合物を得るために前記少なくとも2つの液体を混合すること」を明記しているが、本発明は少なくとも2つの液体の使用に限定されないことが理解される。例えば、本発明の方法は、少なくとも1つの液体と少なくとも1つの固体の混合物をインキュベートするための方法であって、i)混合物を得るために、前記少なくとも1つの液体と前記少なくとも1つの固体を混合すること;およびii)複数の相互接続されたチャンネルを有する構造に前記混合物を通過させ、これにより前記混合物をインキュベートすることを含む方法でもあることができる。例えば、本発明によるウイルス不活化のための方法において、ウイルス不活化剤は少なくとも1つの固体の形態で添加され得る。好ましくは、固体は粉末の形態であることができる。上記好ましい実施形態の全ては少なくとも1つの液体と少なくとも1つの固体を使用するこの方法にも当てはまることも理解される。
【0015】
さらに、上の好ましい実施形態は「少なくとも2つの液体の混合物をインキュベートすること」および「混合物を得るために前記少なくとも2つの液体を混合すること」を明記しているが、本発明はこれらの方法工程(method steps)に限定されず、混合の工程が省略された方法として実施されてもよいことも理解される。例えば、本発明は、1つの液体をインキュベートするためのまたは少なくとも2つの液体の混合物をインキュベートするための方法であって、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造に前記液体または前記混合物を通過させ、これにより前記液体または前記混合物をインキュベートすることを含む方法にも関する。上記好ましい実施形態の全てはこの方法にも当てはまることも理解される。本発明は、少なくとも1つの液体と少なくとも1つの固体の混合物をインキュベートするための方法であって、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造に前記混合物を通過させ、これにより前記混合物をインキュベートすることを含む方法にも関する。同じく、上記好ましい実施形態の全てはこの方法にも当てはまることが理解される。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
少なくとも2つの液体の混合物をインキュベートするための方法であって、
i)混合物を得るために、前記少なくとも2つの液体を混合すること;および
ii)複数の相互接続されたチャンネルを有する構造に前記混合物を通過させ、これにより前記混合物をインキュベートすること
を含む、方法。
(項目2)
前記方法が連続流法である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記混合および通過が連続的に実施される、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記複数の相互接続されたチャンネルを有する構造が、非多孔質ビーズの充填床である、先行する項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記非多孔質ビーズが不活性な非多孔質ビーズである、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記非多孔質ビーズが、ガラスビーズまたはセラミックビーズまたはPMMAビーズなどのプラスチックビーズまたは鋼ビーズである、項目4または項目5に記載の方法。
(項目7)
前記非多孔質ビーズの平均粒子径が、0.05~1mmの範囲、好ましくは0.05~0.6mmの範囲、より好ましくは0.05~0.5mm、および最も好ましくは0.05~0.3mmの範囲にある、項目4~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記非多孔質ビーズの95%が、50%を超えて、好ましくは35%以下、最も好ましくは20%以下で前記平均粒子径から逸脱しない、項目4~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記複数の相互接続されたチャンネルを有する構造が、少なくとも5cm、または少なくとも10cm、または少なくとも20cm、または少なくとも30cm、または少なくとも50cm、または少なくとも70cm、または少なくとも100cmの長さを有する、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記複数の相互接続されたチャンネルを有する構造が、少なくとも20cmの長さを有する、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記非多孔質ビーズの充填床が、前記非多孔質ビーズを振動処理に供することを含む方法によって取得可能である、項目4~10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記非多孔質ビーズの充填床に関して、総体積に対する空隙の体積の割合が0.2~0.45の範囲にある、項目4~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記非多孔質ビーズの充填床に関して、総体積に対する空隙の体積の割合が0.37~0.42の範囲にある、項目4~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記非多孔質ビーズの充填床が、カラムおよび/または反応器中に含有される、項目4~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記カラムが、5mmを超える直径、好ましくは少なくとも10mmの直径を有する、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記非多孔質ビーズの充填床の空隙体積が、少なくとも10mL、好ましくは少なくとも40mL、さらに好ましくは少なくとも150mL、さらにより好ましくは少なくとも470mL、およびさらにより好ましくは少なくとも700mLである、項目4~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記複数の相互接続されたチャンネルを有する構造が、モノリスまたは3D印刷された形状などのプレキャストされた構造である、項目1、9および10のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記複数の相互接続されたチャンネルを有する構造がモノリスであり、および前記モノリスに関して、総体積に対する空隙の体積の割合が0.5~0.75の範囲にある、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記方法がウイルス不活化のためであり、前記少なくとも2つの液体の第一がウイルスを潜在的に含有する液体であり、および前記少なくとも2つの液体の第二の液体がウイルス不活化剤を含む、項目1~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記第一の液体が生物医薬品を含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記方法が、エンベロープウイルスのウイルス不活化のためである、項目19または20に記載の方法。
(項目22)
前記ウイルスが、レトロウイルスおよび/またはフラビウイルス科のウイルスである、項目19~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記ウイルスが、レトロウイルス、好ましくはX-MuLVである、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記ウイルスが、フラビウイルス科のウイルス、好ましくはBVDVである、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記ウイルス不活化剤が、溶媒/界面活性剤ウイルス不活化処理に適した溶媒/界面活性剤混合物であるか、または低pHウイルス不活化処理に適した酸性溶液である、項目19~24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記ウイルス不活化剤が、溶媒-界面活性剤処理のための溶媒/界面活性剤混合物である、項目19~25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記方法が、少なくとも1つのウイルスに対して、少なくとも1Log10減少値(LRV)、少なくとも2LRV、少なくとも4LRVまたは少なくとも6LRVを達成する、項目19~26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記少なくとも1つのウイルスが、項目22~24のいずれか一項に記載のウイルスである、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記構造を通じた前記混合物の空塔線速度が、600cm/時間に等しいもしくはそれより低い、または300cm/時間に等しいもしくはそれより低い、または200cm/時間に等しいもしくはそれより低い、または100cm/時間に等しいもしくはそれより低い、または50cm/時間に等しいもしくはそれより低い、または20cm/時間に等しいもしくはそれより低い、項目1~28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記複数の相互接続されたチャンネルを有する構造を通過するときの前記混合物のボーデンシュタイン数が、50に等しいまたはそれより高い、好ましくは300に等しいまたはそれより高い、より好ましくは400に等しいまたはそれより高い、さらにより好ましくは500に等しいまたはそれより高い、さらにより好ましくは600に等しいまたはそれより高い、最も好ましくは800に等しいまたはそれより高い、項目1~29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
生物医薬品を調製するための方法であって、項目20~31のいずれか一項に記載の方法を実施することおよび前記生物医薬品を回収することを含む方法。
(項目32)
生物医薬品の調製のためのデバイスであって、非多孔質ビーズの充填床を備えるデバイス。
(項目33)
前記非多孔質ビーズが不活性な非多孔質ビーズである、項目32に記載のデバイス。
(項目34)
前記非多孔質ビーズが、ガラスビーズまたはセラミックビーズまたはPMMAビーズなどのプラスチックビーズまたは鋼ビーズである、項目32または項目33に記載のデバイス。
(項目35)
前記非多孔質ビーズの平均粒子径が、0.05~1mmの範囲、好ましくは0.05~0.6mmの範囲、より好ましくは0.05~0.5mmの範囲、最も好ましくは0.05~0.3mmの範囲にある、項目32~34のいずれか一項に記載のデバイス。
(項目36)
前記非多孔質ビーズが、50%を超えて、好ましくは35%以下、最も好ましくは20%以下で前記平均粒子径から逸脱しない、項目32~35のいずれか一項に記載のデバイス。
(項目37)
前記非多孔質ビーズの充填床が、少なくとも5cm、または少なくとも10cm、または少なくとも20cm、または少なくとも30cm、または少なくとも50cm、または少なくとも70cm、または少なくとも100cmの長さを有する、項目32~36のいずれか一項に記載のデバイス。
(項目38)
前記非多孔質ビーズの充填床が少なくとも20cmの長さを有する、項目32~37のいずれか一項に記載のデバイス。
(項目39)
前記非多孔質ビーズの充填床が、前記非多孔質ビーズを振動処理に供することを含む方法によって取得可能である、項目32~38のいずれか一項に記載のデバイス。
(項目40)
前記非多孔質ビーズの充填床に関して、総体積に対する空隙の体積の割合が0.2~0.45の範囲にある、項目32~39のいずれか一項に記載のデバイス。
(項目41)
前記非多孔質ビーズの充填床に関して、総体積に対する空隙の体積の割合が0.37~0.42の範囲にある、項目32~39のいずれか一項に記載のデバイス。
(項目42)
前記非多孔質ビーズの充填床が、カラムおよび/または反応器中に含有される、項目32~41のいずれか一項に記載のデバイス。
(項目43)
前記カラムが、5mmを超える直径、好ましくは少なくとも10mmの直径を有する、項目42に記載のデバイス。
(項目44)
前記非多孔質ビーズの充填床の空隙体積が、少なくとも10mL、好ましくは少なくとも40mL、より好ましくは少なくとも150mL、さらにより好ましくは少なくとも470mL、およびさらにより好ましくは少なくとも700mLである、項目32~43のいずれか一項に記載のデバイス。
(項目45)
前記デバイスが、前記非多孔質ビーズの充填床に接続されている1つまたは複数のミキサーをさらに備える、項目32~44のいずれか一項に記載のデバイス。
(項目46)
前記ミキサーがT字型接合部ミキサーなどの静的ミキサーであるか、または前記ミキサ
ーが動的撹拌機などの動的ミキサーである、項目45に記載のデバイス。
(項目47)
前記デバイスがフィルターをさらに備え、および前記フィルターが、好ましくは、前記非多孔質ビーズの充填床と項目45または46に記載の静的ミキサーとの間に配置されている、項目32~46のいずれか一項に記載のデバイス。
(項目48)
前記フィルターが0.2μmの孔径を有する、項目47に記載のデバイス。
(項目49)
前記デバイスが連続流反応器である、項目32~48のいずれか一項に記載のデバイス。
(項目50)
連続流ウイルス不活化プロセスの改変のための方法であって、前記改変が、連続流ウイルス不活化のための複数の相互接続されたチャンネルを有する構造を使用すること、および少なくとも2つの液体の混合物を前記構造に通過させ、これによりウイルス不活化のために前記混合物をインキュベートすることを含む、方法。
(項目51)
前記連続流ウイルス不活化プロセスが生物医薬品の調製のためのプロセスである、項目50に記載の方法。
(項目52)
前記ウイルス不活化プロセスがウイルス不活化のためのウイルス不活化剤を使用し、前記少なくとも2つの液体の第一がウイルスを潜在的に含有する液体であり、および前記少なくとも2つの液体の第二の液体がウイルス不活化剤を含む、項目50~51のいずれか一項に記載の方法。
(項目53)
前記ウイルス不活化プロセスがエンベロープウイルスのウイルス不活化のためである、項目50~52のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
前記ウイルス不活化プロセスにおいて使用される前記ウイルス不活化剤が、溶媒/界面活性剤ウイルス不活化処理に適した溶媒/界面活性剤混合物であるか、または低pHウイルス不活化処理に適した酸性溶液である、項目52または53に記載の方法。
(項目55)
前記ウイルス不活化プロセスにおいて使用される前記ウイルス不活化剤が、溶媒-界面活性剤処理のための溶媒/界面活性剤混合物である、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記改変が、少なくとも1つのウイルスに対して、少なくとも1Log10減少値(LRV)、少なくとも2LRV、少なくとも4LRVまたは少なくとも6LRVを達成するためにウイルス不活化プロセスを改変することを含む、項目50~55のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
前記複数の相互接続されたチャンネルを有する構造を通過する前記混合物のボーデンシュタイン数が、50に等しいまたはそれより高い、好ましくは300に等しいまたはそれより高い、より好ましくは400に等しいまたはそれより高い、さらにより好ましくは500に等しいまたはそれより高い、さらにより好ましくは600に等しいまたはそれより高い、最も好ましくは800に等しいまたはそれより高いように、前記改変がウイルス不活化プロセスを改変することを含む、項目50~56のいずれか一項に記載の方法。
(項目58)
前記構造を通じた前記混合物の空塔線速度が、600cm/時間に等しいもしくはそれより低い、または300cm/時間に等しいもしくはそれより低い、または200cm/時間に等しいもしくはそれより低い、または100cm/時間に等しいもしくはそれより低い、または50cm/時間に等しいもしくはそれより低い、または20cm/時間に等しいもしくはそれより低いように、前記改変がウイルス不活化プロセスを改変することを含む、項目50~57のいずれか一項に記載の方法。
(項目59)
前記改変が、項目4~18のいずれか一項に定義された、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造を使用することを含む、項目50~58のいずれか一項に記載の方法。
(項目60)
前記改変が、前記Log10減少値(LRV)を達成するために前記構造中での前記混合物の通過時間を調整することを含み、および前記通過時間が、前記混合物の空塔線速度および/または前記構造の空隙体積を調整することによって調整される、項目56~59のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】
図1:A)ブレークスルー実験のUVプロファイルの例。5%および50%シグナルでの溶出体積(EV)が、垂直の破線によって示されている。B)対応するEV/EV数およびボーデンシュタイン数を有する様々なブレークスループロファイル。(ウイルス不活化にとって重大である)プロファイルの開始は、ボーデンシュタイン数においてより、EV/EV数においてよりよく反映される。
【
図1B】
図1:A)ブレークスルー実験のUVプロファイルの例。5%および50%シグナルでの溶出体積(EV)が、垂直の破線によって示されている。B)対応するEV/EV数およびボーデンシュタイン数を有する様々なブレークスループロファイル。(ウイルス不活化にとって重大である)プロファイルの開始は、ボーデンシュタイン数においてより、EV/EV数においてよりよく反映される。
【
図2】
図2:アセトン緩衝液および溶媒/界面活性剤含有緩衝液を用いたブレークスルー実験間の比較。異なる緩衝液系を用いた実験の対が実施されたカラムと空塔線速度とが列記されている。ブレークスルー曲線のパラメータ(すなわち、EV
5%/EV
50%およびボーデンシュタイン数)を、各緩衝液系に対して計算した。SD=プロセス流体緩衝液と溶媒/界面活性剤化学物質を加えたプロセス流体緩衝液との組み合わせ。
【
図3】
図3:アセトン緩衝液および溶媒/界面活性剤含有緩衝液を用いたブレークスルー実験間の比較。各データ点は、同一のセッティングおよび異なる緩衝液系を有する実験の対を表す。水と2%アセトン(アセトン)、溶媒/界面活性剤化学物質を加えたプロセス流体緩衝液(SD)。ブレークスルー曲線の算出されたパラメータである、EV
5%/EV
50%およびボーデンシュタイン数は、緩衝液系間で極めてよく相関している。
【
図4】
図4:ボーデンシュタイン数およびEV
1%/EV
50%に対するカラムパラメータおよび空塔線速度の影響。
【
図5】
図5:RTDの良好さの指標としてのボーデンシュタイン数およびEV
1%/EV
50%に対するカラム長の影響。カラムに同じバッチのビーズを充填した。本図面を通じて使用されたカラムの命名法は、以下の原理に従う。例えば、「JS_10_セラミック_HR_26/19.5_0.125_0.25mm」と名付けられたカラムの場合、「10」はカラムに与えられた固有の整数であり、「セラミック」は非多孔質ビーズの材料を表し、「26」はカラムの直径[mm]であり、「19.5」は充填床の高さ[cm]であり、「0.125_0.25mm」はビーズ製造業者から得られるデータによって示された粒度範囲である。
【
図6】
図6:EV
1%/EV
50%に対する空塔線速度の影響。
【
図7】
図7:RTDの良好性パラメータに対する部分最小二乗(PLS)予測モデル。予測は、カラム長、カラム体積、空塔線速度、平均ビーズ直径およびビーズ直径範囲に基づいている。
【
図8】
図8:RTDの良好性パラメータに対するPLS予測モデル。予測は、カラム長、カラム体積、平均ビーズ直径およびビーズ直径範囲に基づいている。
【
図9】
図9:RTDに対する充填品質の影響。カラムJS_07は、多くの気泡を入れて手で充填した(すなわち、充填品質は悪かった)。低い空塔線速度においては、不適切に充填されたカラムは、より大きなビーズを有する適切に充填されたカラムと同じように機能した。しかしながら、より高い空塔線速度では、不適切に充填されたカラムは機能が低下した。
【
図10】
図10:検出の限界(LOD)を低下させること。10%アセトンを用いて、ブレークスルー実験を行った。EV
0.03%/EV
50%(θ
0.03%)とEV
1%/EV
50%(θ
1%)間の相関は、とりわけ適切に充填されたカラムについて良好であった。
【
図11】
図11:ボーデンシュタイン数に関する、本発明による非多孔質ビーズが充填されたカラムと既知のコイルドフローインバータ(CFI)の比較。非多孔性ガラスビーズは、充填床中で使用された。
【
図12】
図12:ボーデンシュタイン数に関する、本発明による非多孔質ビーズが充填されたカラムと既知のコイルドフローインバータ(CFI)の比較。非多孔性セラミックビーズは、充填床中で使用された。
【
図13】
図13:ボーデンシュタイン数に関する、本発明による非多孔質ビーズが充填されたカラムと既知のコイルドフローインバータ(CFI)の比較。非多孔性ガラスビーズ、PMMAプラスチックビーズまたはセラミックビーズは、充填床中で使用された。
【
図14】
図14:ウイルス不活化のために使用することができる生物医薬品の調製のためのデバイスの例示的実施形態。
【
図15】
図15:パルス注入応答は、実験的ブレークスルー曲線の平滑化された導関数(smoothened derivatives)である。灰色の太線は、LOD点を両次元に固定し続けているときの最悪事例の溶出プロファイルを表す。黒い太線は、実験データを表す。冒頭のシグナルの低下は、試料をカラムに再誘導する前に、バイパス上の管を洗い流すことの結果である。
【
図16A】
図16:A、B:検出の限界(LOD)に応じた検出可能なブレークスルー曲線の開始の所要滞留時間(LOD時間)および同じLRVを仮定した所要ウイルス低下比率は、60分のバッチインキュベーションモードおよび対数的ウイルス低下速度論において達成される。
【
図16B】
図16:A、B:検出の限界(LOD)に応じた検出可能なブレークスルー曲線の開始の所要滞留時間(LOD時間)および同じLRVを仮定した所要ウイルス低下比率は、60分のバッチインキュベーションモードおよび対数的ウイルス低下速度論において達成される。
【
図17】
図17:連続的ウイルス不活化反応器(CVI)に入る前の液体の混合。A:2つの液体の混合。B:3つの液体の混合。C:任意の数の液体の混合。
【
図18】
図18:ウイルス不活化反応器(CVI)に入る前の液体の混合の順序。A:2つの液体の混合。B:第三の液体が得られる混合物と混合されるより前に2つの液体が混合される、3つの液体の混合。C:さらなる液体の混合前に任意の数の液体の混合が可能である。
【
図19】
図19:ウイルス不活化(CVI)の上流における例示的なプロセス工程(および対応する反応器のユニット)。A:ウイルス不活化の前に、変動調整タンクが組み込まれている。(左)CVIの上流にあるバッチクロマトグラフィー。(中央)CVIの上流にある向流負荷クロマトグラフィー。(右)CVIの上流にある疑似移動床クロマトグラフィー。B:変動調整タンクがない円滑なストレートスルー・プロセッシング。(左)バッチクロマトグラフィー。(中央)向流負荷クロマトグラフィー。(右)疑似移動床クロマトグラフィー。
【
図20】
図20:ウイルス不活化の下流における例示的プロセス工程(および対応する反応器のユニット)。A:向流モードでの溶媒-界面活性剤抽出。B:並流モードでの溶媒-界面活性剤抽出。C:バッチクロマトグラフィー。D:向流負荷クロマトグラフィー。E:疑似移動床クロマトグラフィー
【
図21A】
図21:A:大きな1.75Lのカラムは、あらゆる(より小さな)研究室規模のカラムよりずっと大きなボーデンシュタイン数(ずっとより狭い滞留時間分布を有するが、研究室規模のカラムのいくつかは、ボーデンシュタイン数に関して、コイルドフローインバータ反応器を既に完全に凌いでいる。B:尺度が対数形式であることを除き、
図Aと同じ。C:大きな1.75Lのカラムは極めて良好に機能する。比較として、0.88~0.92の範囲のEV
1%/EV
50%スコアおよび800~1800の範囲のボーデンシュタイン数を達成した、同じバッチのビーズが充填されたより小さなカラム(d=26mm、l=19.5cm)。
【
図21B】
図21:A:大きな1.75Lのカラムは、あらゆる(より小さな)研究室規模のカラムよりずっと大きなボーデンシュタイン数(ずっとより狭い滞留時間分布を有するが、研究室規模のカラムのいくつかは、ボーデンシュタイン数に関して、コイルドフローインバータ反応器を既に完全に凌いでいる。B:尺度が対数形式であることを除き、
図Aと同じ。C:大きな1.75Lのカラムは極めて良好に機能する。比較として、0.88~0.92の範囲のEV
1%/EV
50%スコアおよび800~1800の範囲のボーデンシュタイン数を達成した、同じバッチのビーズが充填されたより小さなカラム(d=26mm、l=19.5cm)。
【
図21C】
図21:A:大きな1.75Lのカラムは、あらゆる(より小さな)研究室規模のカラムよりずっと大きなボーデンシュタイン数(ずっとより狭い滞留時間分布を有するが、研究室規模のカラムのいくつかは、ボーデンシュタイン数に関して、コイルドフローインバータ反応器を既に完全に凌いでいる。B:尺度が対数形式であることを除き、
図Aと同じ。C:大きな1.75Lのカラムは極めて良好に機能する。比較として、0.88~0.92の範囲のEV
1%/EV
50%スコアおよび800~1800の範囲のボーデンシュタイン数を達成した、同じバッチのビーズが充填されたより小さなカラム(d=26mm、l=19.5cm)。
【
図22】
図22:カラム充填のために使用される振動性デバイスの実例の写真。1.振動モーター、2.鉄骨の骨組み、3.カラム、4.運動センサー、5.データ記録装置、6.電力制御
【
図23】
図23:空塔線速度[cm/時間]の例示的説明:空塔線速度は、構造(例えば、非多孔質ビーズの充填床)が空である、例えば、ビーズが充填されていないと仮定したときに、流体が移動する線速度である。例示的な構造(相互接続されたチャンネルが充填された(B)または空の(A)円筒)の形態で例示されている)が図に示されている。
【
図24】
図24:CVI設定の模式図。装置は、2つのポンプ、ミキサーおよびCVIからなる。
【
図25】
図25:CVIプロセスのための出口での濃度プロファイル。プロットは、入口での濃度(C
0)に対して標準化された出口濃度(C)を示している。プロセスは、始動(または潜時)相と定常状態相という2つの相に分けられる。始動相は、曲線の初期0%濃度部分および0から100%への濃度のその後の移行によって表される。始動相は、出口での濃度が入口での濃度と合致するまで、CVIR内の液相を予め置き換え、洗い流すことを表す。定常状態相は、曲線の100%濃度部分によって表される。この例では、定常状態は2V
Rより前に開始する。
【
図26】
図26:30分および60分のインキュベーション時間での(それぞれ、左および右のプロット)CVIプロセスに対するウイルス力価の結果。0V
Rでの印は、S/D成分と混合する前における、添加された試験項目のX-MuLV力価を表す。1、2、3、4および5VRでの印は、それぞれ、1、2、3、4および5反応器体積での稼働後におけるCVIRの出口でのX-MuLV力価を表す。黒い印はウイルス力価を示し、白い印はLODを下回る力価を有する試料を表す。
【
図27】
図27:30分および60分のインキュベーション時間(それぞれ、上および下)を有する連続的ウイルス不活化プロセスの間に集められた様々な試料に対するLRV。示された試料は、1、2、3、4および5V
Rの稼働後に採取され、ホールドコントロール(HC)も含む。HC試料は、CVIが完了した後に(5V
R後に)、添加された試験時間を含有する同一のシリンジから取り出された。黒塗りの棒はLRVデータを示し、対角線模様で塗られた棒は、試料がLODより下にあるために、最小のLRVを表す。
【
図28】
図28:伝統的なバッチウイルス不活化プロセスの間に収集された様々な試料に対するLRV。示された試料は、60分のインキュベーション後に採取され、ホールドコントロール(HC)も含む。HC試料は、S/D含有不活化操作と同じ条件下における、S/D化学物質なしでの添加された試験項目のインキュベーションによって得られた。黒塗りの棒はLRVデータを示し、対角線模様で塗られた棒は、試料がLODより下にあるために、最小のLRVを表す。
【
図29】
図29:30分および60分のインキュベーション時間での(それぞれ、左および右のプロット)CVIプロセスに対するウイルス力価の結果。0VRでの印は、S/D成分と混合する前における、添加された試験項目のBVDV力価を表す。1、2、3、4および5VRでの印は、それぞれ、1、2、3、4および5反応器体積での稼働後におけるCVIRの出口でのBVDV力価を表す。黒い印はウイルス力価を示し、白い印はLODを下回った力価を有する試料を表す。
【
図30】
図30:30分および60分のインキュベーション時間(それぞれ、上および下)を有する連続的ウイルス不活化プロセスの間に集められた様々な試料に対するLRV。示された試料は、1、2、3、4および5V
Rの稼働後に採取され、ホールドコントロール(HC)も含む。HC試料は、CVIが完了した後に(5V
R後に)、添加された試験時間を含有する同一のシリンジから取り出された。黒塗りの棒はLRVデータを示し、対角線模様で塗られた棒は、試料がLODより下にあるために、最小のLRVを表す。
【
図31】
図31:伝統的なバッチウイルス不活化プロセスの間に収集された様々な試料に対するLRV。示された試料は、60分のインキュベーション後に採取され、ホールドコントロール(HC)も含む。HC試料は、S/D含有不活化操作と同じ条件下における、S/D化学物質なしでの添加された試験項目のインキュベーションによって得られた。黒塗りの棒はLRVデータを示し、対角線模様で塗られた棒は、試料がLODより下にあるために、最小のLRVを表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
定義
以下で別段の定義が与えられていなければ、本発明において使用される用語は、当業者に知られたその通常の意味に従って理解されなければならない。
【0018】
本明細書中に引用されている全ての刊行物、特許および特許出願は、あらゆる目的のために、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0019】
本明細書において使用される「滞留時間」という用語は、液体の一部が処理装置の一部に入ったときから液体の同一の一部が処理装置の一部を出るまでに経過する時間の量を一般的に指す。液体の一部の平均線速度が高ければ、滞留時間は短い。液体の一部の平均線速度が低ければ、滞留時間は長い。本発明の一つの好ましい実施形態において、「滞留時間」という用語は、液体の一部が複数の相互接続されたチャンネルを有する構造に入ったときから液体の同一の一部が複数の相互接続されたチャンネルを有する構造を出るまでに経過する時間の量を指す。または、より好ましくは、この用語は、液体の一部が複数の相互接続されたチャンネルを有する構造に入ったときから液体の同一の一部が複数の相互接続されたチャンネルを有する構造を出るまでに通過するカラム体積の数を指す。滞留時間と溶出体積は、以下の式によって関係づけられる。
【0020】
溶出体積(カラム体積で測定される)=滞留時間・カラム断面積・空塔線速度
【0021】
液体の異なる部分が異なる滞留時間を有する場合には、たとえ、液体の全ての部分が処理装置(例えば、本発明による複数の相互接続されたチャンネルを有する構造)の一部に、同時に入っても、液体の一部はその滞留時間に関して分布される。換言すれば、液体の異なる部分は、滞留時間の分布を示し、これは、「滞留時間分布」または「RTD」とも称される。液体の異なる部分間の流速の間に大きな差が存在する場合、滞留時間分布は広くなり;液体の異なる部分間の流速に小さな差が存在する場合、滞留時間分布は狭い。本発明による複数の相互接続されたチャンネルを有する構造の利点の一つは、狭い滞留時間分布を得ることを可能にすることである。
【0022】
「少なくとも1つの液体と少なくとも1つの固体の混合物」という用語は、前記少なくとも1つの液体と少なくとも1つの固体が混合された時点で、固体が固体状態で存在したことを定義することが理解されるべきである。これは、例えば、本発明によるさらなる方法工程が実施される間に、少なくとも1つの液体と少なくとも1つの固体の前記混合物中において、固体が溶解できるという可能性を排除しない。
【0023】
本発明の全ての他の実施形態に従って、2つの液体の混合物または少なくとも1つの液体と少なくとも1つの固体の混合物は水溶液であり得る。
【0024】
本明細書において使用される「相互接続されたチャンネル」という用語は、構造の外からの流体が到達可能な、構造中のチャンネルを指す。チャンネルの少なくともいくつかは、互いに相互接続されている。そのように、構造が液体に曝されると、液体は、互いに相互接続されたチャンネルを通じて構造を通過することができる。本発明に関連して言及される複数の相互接続されたチャンネルを有する構造は、本発明に従って少なくとも2つの液体の混合物を構造に通過させるのに適しているようなものであることが理解される。
【0025】
本発明の方法もしくはプロセスとまたはこれらの工程と関連して本明細書において使用される「連続的」または「連続的に」または「連続流」という用語は、当技術分野において一般的に知られている意味を有する。「連続的」または「連続的に」または「連続流」という用語は、中断なしに起こる方法もしくはプロセスまたはこれらの工程を記載する。「連続的」または「連続的に」または「連続流」という用語が、特定の方法工程またはプロセス工程に(例えば、本発明による混合および通過の工程に)従って本明細書で使用される場合、この工程が中断なしに起こることを意味する。「連続的」または「連続的に」または「連続流」という用語が、本発明の方法またはプロセスに従って本明細書で使用される場合、前記方法またはプロセスが中断なしに起こることを意味する。好ましくは、方法またはプロセスが連続的に実施される場合には、全ての方法工程またはプロセス方法工程が連続的に実施される。または、方法またはプロセスの一部(例えば、特定の方法工程またはプロセス工程)は不連続的にまたは半連続的に実施されるのに対して、方法またはプロセスの出力のみが連続的であることも可能である。例えば、一連のバッチプロセスは時間と共に連続的な出力を供給することができるが、各プロセスは不連続的に稼働される。
【0026】
本明細書において使用される「非多孔質ビーズ」という用語は、本発明に従って非多孔質ビーズの充填床のために使用することができるあらゆる適切な非多孔質ビーズを指す。「非多孔質ビーズ」は、球形または不規則的な形状であり得る。本発明の全ての他の実施形態に従う好ましい実施形態において、非多孔質ビーズは好ましくは球形である。「非多孔質ビーズ」は、例えば、生物医薬の処理と適合し得る任意の固体微粒子状材料、例えば、プラスチック、ガラスまたは金属から作られることができる。
【0027】
非多孔質ビーズは当技術分野において既知であり、市販されている。
【0028】
ガラスビーズは当技術分野において既知であり、例えば、石英ガラスから作ることができる。例えば、ガラスビーズは、Cospheric LLCから購入することができる。
【0029】
プラスチックビーズも既知であり、例えば、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)またはポリスチレン(PS)から作ることができる。例えば、プラスチックビーズは、Cospheric LLC、Altuglas ArkemaおよびKisker Biotechから購入することができる。
【0030】
鋼ビーズも当技術分野において既知であり、例えば、ステンレス鋼から作ることができる。例えば、鋼ビーズは、Cospheric LLCから購入することができる。
【0031】
本明細書において使用される「セラミックビーズ」という用語は、本発明に従って「非多孔質ビーズの充填床」を形成するのに適しているあらゆるセラミックビーズを指す。例えば、セラミックビーズは、Kuhmichel Abrasiv GmbHから購入することができる。
【0032】
本発明による非多孔質ビーズの充填床は特に限定されず、例えば、カラムまたは反応器などの様々な形状の容器中に含有され得る。容器の大きさは特に限定されず、所望される処理量およびインキュベーション時間に基づいて選択することができる。
【0033】
本発明の非多孔質ビーズに関する「不活性な」という用語は、当技術分野において知られている本用語の意味を有する。好ましい実施形態において、不活性な非多孔質ビーズは全く官能化されていない。本発明の非多孔質ビーズのための不活性な材料は、当業者によって選択されることができる。例えば、本発明の方法またはプロセスにおいて、ビーズの床を通過する液体または液体の混合物と反応しないまたは実質的に反応しない(例えば測定可能でない)ような適切な既知の不活性な材料を選択することが可能であろう。例えば、本発明の不活性な非多孔質ビーズは、好ましくは、本発明の液体混合物と化学的に反応しないまたは実質的に化学的に反応しないビーズである。本発明の不活性な非多孔質ビーズは、好ましくは、液体混合物に成分を加えないビーズである。本発明の不活性な非多孔質ビーズは、好ましくは、液体混合物からの成分を吸収または吸着しない。
【0034】
本明細書において使用される、所与の百分率で「平均粒子径から逸脱する」という用語は、平均粒子径に依存する逸脱を指す。例えば、0.2mmの平均粒子径を有するビーズが50%を超えて平均粒子径から逸脱しない場合、ビーズの95%は0.3mm以下および0.1mm以上の粒子径を有する。同様に、0.2mmの平均粒子径を有するビーズが20%を超えて平均粒子径から逸脱しない場合、ビーズの95%は0.24mm以下および0.16mm以上の粒子径を有する。本発明に従って使用されるべき球形でない粒子については、直径は、粒子の最も長い軸を指す。
【0035】
本発明において使用される「振動処理」という用語は、振動を伴い、非多孔質ビーズの充填床の充填密度を増加させるのに適しているあらゆる処理を指す。例えば、非多孔質ビーズの充填床を振動処理に供するために振動性デバイスを使用することができる。
【0036】
好ましい振動性デバイスは、カラムが固定化されている棚(rack)を含有する。振動性デバイスを用いた振動処理の例では、空のカラムが固定化され、振動の間にビーズが加えられる。次いで、振動モーターを使用して、棚が振動される。前記モーターは、例えば、電気的にまたは空気圧で駆動することができる。非多孔質ビーズの充填床は、40kHz未満の、好ましくは1~10kHzの振動周波数、10g未満、好ましくは0~5gの加速および5mm未満、好ましくは最大2mmの振動振幅を用いて充填することができる。カラム充填のために使用される振動性デバイスの実例が、
図22に示されている。
【0037】
本明細書において使用される「反応器」という用語は、流体を含有するのに適しているあらゆる容器またはその他の構造を指す。反応器は、流体を化学的に反応させるために使用することができる。しかしながら、本発明において、「反応器」という用語は、その中において化学反応が起こらない反応器も指す。反応器は意図される用途に基づいて調整することができることが理解される。例えば、ウイルス不活化のために使用される反応器はウイルス不活化に適しているであろうことが理解される。同様に、反応器が生物医薬品の調製のために使用される場合、反応器はその薬品の調製に適しているであろう。
【0038】
本明細書において使用される「3D印刷された形状(3D-printed geometry)」という用語は、3Dプリンタを用いて印刷されているあらゆるプレキャストされた多孔性構造を指す。
【0039】
本明細書において使用される「エンベロープウイルス(enveloped virus)」という用語は、当業者に知られた意味を有する。例えば、エンベロープウイルスは、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus)、水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus)、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus)もしくはエプスタイン・バーウイルス(Epstein‐Barr virus)などのヘルペスウイルス科(Herpesviridae);B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus)などのヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae);風疹ウイルス(rubella virus)もしくはアルファウイルス(alphavirus)などのトガウイルス科(Togaviridae);リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(lymphocytic choriomeningitis virus)などのアレナウイルス科(Arenaviridae);デングウイルス(dengue virus)もしくはウシウイルス性下痢症ウイルス(bovine viral diarrhea virus)(BVDV)、C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus)もしくは黄熱病ウイルス(yellow fever virus)などのフラビウイルス科(Flaviviridae);インフルエンザA型ウイルス(influenza virus A)、インフルエンザB型ウイルス(influenza virus B)、インフルエンザC型ウイルス(influenza virus C)、イサウイルス(isavirus)もしくはソゴトウイルス(thogotovirus)などのオルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae);麻疹ウイルス(measles virus)、流行性耳下腺炎ウイルス(mumps virus)、呼吸器多核体ウイルス(respiratory syncytial virus)、牛疫ウイルス(Rinderpest virus)もしくはイヌジステンパーウイルス(canine distemper virus)などのパラミクソウイルス科(Paramyxoviridae);カリフォルニア脳炎ウイルス(California encephalitis virus)もしくはハンタウイルス(hantavirus)などのブニヤウイルス科(Bunyaviridae);狂犬病ウイルス(rabies virus)などのラブドウイルス科(Rhabdoviridae);エボラウイルス(Ebola virus)もしくはマールブルグウイルス(Marburg virus)などのフィロウイルス科(Filoviridae);コロナウイルス(corona virus)などのコロナウイルス科(Coronaviridae);ボルナ病ウイルス(Borna disease virus)などのボルナウイルス科(Bornaviridae);またはアルテリウイルス(arterivirus)もしくはウマ動脈炎ウイルス(equine arteritis virus)などのアルテリウイルス科(Arteriviridae);ヒト免疫不全症ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)(HIV)もしくは異種指向性マウス白血病ウイルス(Xenotropic murine leukemia virus)(X-MuLV)、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型(Human T-lymphotropic virus 1)(HTLV-1)などのレトロウイルス科;オルソポックスウイルス天然痘(variolae)(痘瘡ウイルス(Variolavirus))などのポックスウイルス科(Poxviridae)であり得る。
【0040】
本明細書において使用される「溶媒/界面活性剤混合物(solvent/detergent mixture)」という用語は、当業者に知られた意味を有する。「溶媒/界面活性剤混合物」という用語は、溶媒のみまたは界面活性剤のみを含有する混合物にも関する。好ましい実施形態において、本発明に従って使用される溶媒/界面活性剤混合物は、水以外の少なくとも1つの溶媒と少なくとも1つの界面活性剤とを含有する。混合物中に含有される異なる溶媒および/または界面活性剤の数は特に限定されない。例えば、溶媒/界面活性剤混合物は、リン酸トリ-n-ブチル、ポリソルベート80およびTriton X-100から構成されることができる。
【0041】
本明細書において使用される「溶媒-界面活性剤ウイルス不活化処理」という用語は、当業者に知られた意味を有する。好ましい実施形態において、溶媒-界面活性剤処理は、例えば、エンベロープウイルスの脂質膜を除去することによって、エンベロープウイルスに対抗して使用することができる。しかしながら、本発明の「溶媒-界面活性剤ウイルス不活化処理」は、これに限定されない。例えば、本発明の溶媒-界面活性剤ウイルス不活化処理」には、例えば、非エンベロープウイルスなどのウイルスの表面上のタンパク質を変性させることによって作用する非エンベロープウイルスの処理も含まれることができる。
【0042】
本明細書において使用される「Log10減少値」または「LRV」という用語は、流体中の感染性ウイルス粒子の低下の指標であり、ウイルス不活化前の感染性ウイルス粒子濃度の、ウイルス不活化後の感染性ウイルス粒子濃度に対する比の対数(底10)として定義される。LRV値は、ウイルスの所与の種類に対して特異的である。生物医薬製造方法およびプロセスなどの方法およびプロセスの安全性を改善させるために、ゼロを上回るいかなるLog10減少値(LRV)も有益であることが当業者にとって自明である。本発明に従って、LRVは、当技術分野において知られたあらゆる適切な方法によって測定することができる。好ましくは、本明細書において言及されるLRVは、プラークアッセイによって測定されたまたはTCID50アッセイによって測定された、より好ましくはTCID50アッセイによって測定されたLRVである。これらのアッセイは、当業者に既知である。好ましくは、本発明に従って言及されるLRVは、エンベロープウイルスのLRVである。例えば、本明細書において使用される「TCID50アッセイ」は、組織培養感染量アッセイを指す。TCID50アッセイは、エンドポイント希釈試験であり、TCID50値は接種された細胞培養物の50%に細胞死または病理学的変化を誘導するのに必要なウイルスの濃度を表す。
【0043】
本発明に従って使用される「流量」および「体積流量」という用語は互換的に使用され、時間の量当たりに、本発明に従って複数の相互接続されたチャンネルを有する構造を通過する混合物の体積を指す。体積流量(または流量)は、好ましくは、mL/分で測定される。管類の直径に関わらず、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造(例えば、カラム)の直径に関わらず、およびポンプのピストンに関わらず、体積流量(または流量)は一定である。体積流量(または流量)は、典型的には、所望の流量へポンプ速度を変化させることによって設定される。例えば、1つまたはそれを超えるポンプが複数の相互接続されたチャンネルを有する構造の上流で使用される場合には、体積流量(または流量)は、時間の量当たりに前記ポンプによって置き換えられる総体積である。例えば、ピストンポンプは、例えば、ピストンのストロークごとに、所定の体積の流体を送る。シリンジポンプは、リニアモーターによって駆動される。シリンジ直径とモーターによってシリンジピストンが押される距離を使用して、時間の量当たりに置き換えられる体積を計算することができる。または、流量は、当技術分野において既知である流量計によって測定することもできる。
【0044】
一般に、「線速度」は、液体が通過している構造の断面積によって除された流量として定義される。
線速度=(体積流量)/(断面積)
【0045】
本発明の構造に関連して使用される「線速度」という用語は、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造の断面積によって除された体積流量を指す。断面は、典型的には、円形であり得、すなわち、断面は円である。
【0046】
非多孔質ビーズの充填床などの本発明の複数の相互接続されたチャンネルを有する構造では、2つの異なる線流体速度を区別することができる。
a)空塔線速度(好ましくは、[cm/時間]で示される):空塔線速度は、構造(例えば、非多孔質ビーズの充填床)が空である、例えば、ビーズが充填されていないと仮定したときに、流体が移動する線速度である。例示的な構造(相互接続されたチャンネルが充填された(B)または空の(A)円筒の形態で例示されている)が
図23に示されている。
b)間隙線速度(好ましくは、[cm/時間]で示される):間隙速度は、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造を通じた(例えば、非多孔質ビーズの充填床を通じた)実際の流体速度である。流体は(例えば、ビーズ周囲の)相互接続されたチャンネルを通じてのみ流れることができるので、間隙速度は、常に空塔速度より大きい。
【0047】
別段の記載がなければ、本明細書において使用される「線速度」という用語の全ての出現は、空塔線速度を指す。空塔線速度は、構造が空であると仮定して、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造の断面積によって流量(または体積流量)を除することによって計算することができる。
【0048】
本明細書において使用される「検出の限界」または「LOD」という用語は、物質の最小の検出可能な割合(share)、例えば、懸濁液中のビーズの最小の検出可能な割合を指す。本明細書において使用される「検出の限界時間」または「LOD時間」という用語は、物質から、例えば、懸濁液中のビーズなどのトレーサー物質から生じるシグナルが検出の限界(LOD)を超える時点を指す。
【0049】
本明細書において使用される「ボーデンシュタイン数」という用語は、当業者に知られた意味を有する。ボーデンシュタイン数は、例えば、参照により、あらゆる目的のためにその全体が組み込まれるLevenspiel,Chemical Reaction Engineering,3rd ed.,John Wiley&Sons,1999(参考文献8)に記載されている。ボーデンシュタイン数は無次元であり、系内の逆混合を特徴付ける。このため、ボーデンシュタイン数は、液体体積(liquid volumes)または複合物(compounds)が逆混合する程度を示すことができる。例えば、小さなボーデンシュタイン数は大きな程度の逆混合を示すのに対して、大きなボーデンシュタイン数は小さな程度の逆混合を示す。当業者に既知であるように、ボーデンシュタイン数は、滞留時間分布の指標として使用することができ、当技術分野において既知の方法によって測定することができる。本発明において、ボーデンシュタイン数は、好ましくは、(実施例において例示されているように;例えば、
図1A参照)関数Fをブレークスルー曲線にフィッティングすることによって計算することができ、式中、F(EV)はガウス分布のピーク(例えば、本発明に従って複数の相互接続されたチャンネルを有する構造を通過する混合物に添加されたトレーサー物質のUVシグナル)の積分を表し、Boはボーデンシュタイン数を表し、EVは所与の時点での溶出体積を表し、EV
50%は平均滞留時間での溶出体積を表す。
【数1】
【0050】
図1Bは、対応するEV/EV数およびボーデンシュタイン数とともに数個の異なるブレークスループロファイルを表している。図は、(ウイルス不活化にとって特に重要である)プロファイルの開始が、ボーデンシュタイン数におけるより、EV/EV数においてずっとよりよく反映されていることを示す。
【0051】
本発明に従って、「備える、含む(comprising)」という用語の各出現は、必要に応じて、「からなる(consisting of)」という用語と置き換えてもよい。
【0052】
以下では、本発明者らは、本発明の具体的な実施形態を記載するが、本発明はそれらに限定されない。さらに、以下の実施形態のいずれもが、本発明によるその他の以下の実施形態のいずれとも組み合わせることができる。
【0053】
本発明に従って使用されるべき複数の相互接続されたチャンネルを有する構造は、3D印刷された形状などのモノリスまたはプレキャストされた構造であり得るが、好ましくは、非多孔質ビーズの充填床である。このため、特に、非多孔質ビーズの充填床は、本発明のいずれの他の実施形態とも組み合わせることができる。
【0054】
本発明に従って使用されるべき非多孔質ビーズの充填床は、カラムおよび/または反応器などの様々な形状の容器中に含有されることができる。好ましくは、非多孔質ビーズの充填床は、容器を完全に満たす、すなわち、大きな隙間を一切残さない。好ましくは、容器は、容器の反対末端に位置する少なくとも入口と少なくとも出口を備える。そのように、流体は入口を通じて容器に入り、非多孔質ビーズの充填床を通過し、出口を通じて容器から出ることができる。好ましくは、容器はカラムである。
【0055】
本発明に従って使用されるべき非多孔質ビーズの充填床のための容器は、あらゆる形状を有することができ、例えば、円形の底部、角度のある底部または長方形の底部を有することができる。好ましくは、容器は円形の底部を有する。本発明の特に好ましい実施形態において、本発明に従って使用されるべき非多孔質ビーズの充填床は、円形の底部を有するカラム中に含有される。
【0056】
本発明に従って使用されるべき非多孔質ビーズの充填床の長さは特に限定されず、所望される処理量、所望される空塔線速度および所望される液体の平均滞留時間を考慮に入れて調整することができる。特に、非多孔質ビーズの充填床の長さは、所望される空塔線速度および所望される液体の平均滞留時間に基づいて選択することができる。例えば、所望される空塔線速度が20cm/時間であり、および非多孔質ビーズの充填床の空隙率が0.4に等しいと仮定し、および所望される平均滞留時間が少なくとも1時間である場合には、非多孔質ビーズの充填床の長さは、少なくとも50cmである必要がある。所望される空塔線速度が20cm/時間であり、および所望される平均滞留時間が少なくとも3時間である場合には、非多孔質ビーズの充填床の長さは、少なくとも150cmである必要がある。好ましい実施形態において、非多孔質ビーズの充填床が少なくとも50cmの長さを有する必要があるように、所望される空塔線速度は約20cm/時間であり、および所望される平均滞留時間は少なくとも1時間である。本発明者らは、本発明に従って使用されるべき非多孔質ビーズの充填床が長いほど、非多孔質ビーズの床を通過する液体の滞留時間分布がより狭くなることを見出した。このため、本発明に従って使用されるべき非多孔質ビーズの充填床がより長ければ(例えば、少なくとも5cm、または少なくとも10cm、または少なくとも20cm、または少なくとも30cm、または少なくとも50cm、または少なくとも70cm、または少なくとも100cmの長さを有すれば)、これは、狭い滞留時間分布のために有利である。
【0057】
本発明に従って使用されるべき非多孔質ビーズの充填床の幅または直径は特に限定されず、所望される処理量、所望される空塔線速度および所望される液体の平均滞留時間に基づいて選択することができる。非多孔質ビーズの充填床の幅または直径はビーズの大きさを考慮に入れることによって選択されることが当業者に自明である。換言すれば、非多孔質ビーズの充填床の幅または直径は、ビーズを収容するために十分であるように選択されるであろう。本発明の好ましい実施形態において、カラム直径は5mm、好ましくは少なくとも10mmである。
【0058】
本発明に従って使用されるべき非多孔質ビーズの充填床の体積は特に限定されず、所望される処理量、所望される空塔線速度および所望される液体の平均滞留時間を考慮に入れて選択することができる。しかしながら、本発明者らは、驚くべきことに、液体が非多孔質ビーズの充填床を通過するときには、非多孔質ビーズの充填床の大きな体積が小さな体積より狭い滞留時間分布を与えることを見出した。このため、非多孔質ビーズの充填床の大きな体積、例えば、少なくとも10mL、好ましくは少なくとも40mL、より好ましくは少なくとも150mL、さらにより好ましくは少なくとも470mL、およびさらにより好ましくは少なくとも700mLの空隙体積が好ましい。
【0059】
本発明に従って使用するための非多孔質ビーズの充填床を形成する非多孔質ビーズは、様々な平均粒子径を有することができる。ビーズ間の空間によって形成される相互接続されたチャンネルが、液体の(例えば、本発明に従って使用される混合物の)成分(例えば、生物医薬品)が非多孔質ビーズの充填床を通過するのに適するように、非多孔質ビーズの直径を容易に選択することができることが理解されるであろう。他方、本発明者らは、驚くべきことに、本発明に従って非多孔質ビーズの充填床を形成するビーズの平均粒子径が小さくなるほど、充填床を通過する液体の滞留時間分布がより狭くなることを見出した。このため、本発明に従って使用されるべきビーズは、好ましくは0.05mm~1mmの範囲、より好ましくは0.05mm~0.6mmの範囲、さらにより好ましくは0.05mm~0.5mmの範囲、最も好ましくは0.05mm~0.3mmの範囲にある。さらに、本発明者らは、驚くべきことに、本発明に従って使用されるべきビーズの平均粒子径がより均一であるほど、非多孔質ビーズの充填床を通過する液体の滞留時間分布がより狭くなることを見出した。このため、本発明に従って使用されるべきビーズは、好ましくは50%を超えて、より好ましくは35%以下、最も好ましくは20%以下で平均粒子径から逸脱しない。
【0060】
好ましくは、本発明に従って使用するための非多孔質ビーズの充填床を形成する非多孔質ビーズは不活性である。
【0061】
好ましくは、本発明に従って使用するための非多孔質ビーズの充填床を形成する非多孔質ビーズは球形である。
【0062】
非多孔質ビーズは、本発明に従って使用するための非多孔質ビーズの充填床を形成するための様々な手段によって充填することができる。本発明者らは、充填品質の差が非多孔質ビーズの充填床を通過する液体の流路に影響を与え、このため、滞留時間分布に影響を与えることを見出した。
【0063】
本発明に従って使用するための非多孔質ビーズを充填するための例示的な手段は、振動処理ありおよびなしの、乾燥充填(dry packing)または湿潤充填(wet packing)である。液体充填は、重力によってまたは流れの下で行うことができる。本発明に従って使用するための非多孔質ビーズを充填するための好ましい手段は、充填振動処理である。湿潤充填も好ましく、振動処理と組み合わせるのがより好ましい。例えば、非多孔質ビーズの充填床を通過する液体の滞留時間分布を測定することによって、充填品質を測定することができる。狭い滞留時間分布は良好な充填品質を示し、広い滞留時間分布は不良な充填品質を示す。
【0064】
本発明に従って少なくとも2つの液体の混合物をインキュベートするための方法は、混合物を得るための前記少なくとも2つの混合物を混合すること、および複数の相互接続されたチャンネルを有する構造に前記混合物を通過させ、これにより前記混合物をインキュベートすること、を含む。好ましくは、前記混合および通過は、連続的に実施される。驚くべきことに、本発明者らは、液体(例えば、本発明に従う少なくとも2つの液体の混合物)をインキュベートするために、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造に前記混合物などの液体を通過させると、インキュベーションが特に狭い滞留時間分布で起こることを見出した。インキュベーション時間をより正確に選択することを可能にするので、このような狭い滞留時間分布は、液体が混合されおよび規定の時間インキュベートされなければならない、あらゆる種類の連続的に稼働するプロセスにとって有利である。
【0065】
本発明に従ってインキュベートするための方法において、複数の相互接続された細孔を有する構造を通過する混合物の空塔線速度は特に限定されず、所望される処理量に基づいて選択することができる。本発明者らは、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造を通過する本発明の液体(例えば、本発明に従って使用される混合物)の空塔線速度が低いほど、より高い空塔線速度より狭い滞留時間分布を与えることを見出した。このため、本発明に従ってインキュベートするための方法における空塔線速度は、好ましくは、600cm/時間に等しいもしくはそれより低い、または300cm/時間に等しいもしくはそれより低い、または200cm/時間に等しいもしくはそれより低い、または100cm/時間に等しいもしくはそれより低い、または50cm/時間に等しいもしくはそれより低い、または20cm/時間に等しいもしくはそれより低い。最も好ましくは、空塔線速度は50cm/時間に等しいもしくはそれより低い。
【0066】
当業者に既知であるように、ボーデンシュタイン数は、滞留時間分布の指標として使用することができる。小さなボーデンシュタイン数は広い滞留時間分布を示し、大きなボーデンシュタイン数は狭い滞留時間分布を示す。上述されているように、本発明に従ってインキュベートするための方法では、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造を通過する混合物は狭い滞留時間分布を有することが極めて好ましい。したがって、本発明に従ってインキュベートするための方法において、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造を通過する混合物のボーデンシュタイン数は、50に等しいまたはそれより高い、より好ましくは300に等しいまたはそれより高い、さらにより好ましくは400に等しいまたはそれより高い、さらにより好ましくは500に等しいまたはそれより高い、さらにより好ましくは600に等しいまたはそれより高い、最も好ましくは800に等しいまたはそれより高いことが好ましい。
【0067】
複数の相互接続されたチャンネルを有する構造を通過しながら、液体(例えば、少なくとも2つの液体の混合物)が、規定の時間、インキュベートされるプロセスの一例は、連続的ウイルス不活化である。このため、本発明の好ましい実施形態において、本発明に従ってインキュベートするための方法は、連続的ウイルス不活化のためである。この好ましい実施形態において、前記少なくとも2つの液体の第一の液体はウイルスを潜在的に含有する液体であり、および前記少なくとも2つの液体の第二の液体はウイルス不活化剤を含む。ウイルスを潜在的に含有する液体とウイルス不活化剤を含む液体との混合物をインキュベートする場合、所与のウイルスに対して十分なLog10減少値(LRV)を達成するのに十分長いように、インキュベーション時間を選択することができる。他方、インキュベーション時間は、好ましくは、液体中に含有され得る他の成分(例えば、生物医薬)がウイルス不活化剤によって損傷されないことを確保するのに十分短いようにも選択される。液体(例えば、少なくとも2つの液体の混合物)の全ての(または少なくとも大半の)部分に関して、インキュベーション時間が類似していれば、短すぎず、且つ長すぎない適切なインキュベーション時間は、さらに容易に達成することができる。このため、本発明に従って得られる狭い滞留時間分布は、例えば、このような適切なインキュベーション時間を選択することを可能にする点で有利である。
【0068】
生物医薬製造プロセスでは、生物医薬品の薬学的組成物への処方後に薬学的組成物が患者に対して害を一切引き起こさないことを確保するために、生物医薬品を含有する混合物中のウイルスは、通例、不活化される。このため、本発明によるウイルス不活化のための方法またはプロセスは、生物医薬製造プロセスにおいて特に有用である。したがって、本発明によるウイルス不活化のための方法またはプロセスの好ましい実施形態において、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造を通過した少なくとも2つの液体の混合物の第一の液体は生物医薬品を含む。したがって、本発明は、生物医薬品を調製するための方法であって、本発明に従ってインキュベートするための方法を実施した後に前記生物医薬品が回収される方法にも関する。
【0069】
本発明に従ってインキュベートするための方法を実施した後に適切に使用することができる生物医薬品を回収するための方法は、当業者に周知である。例えば、様々なクロマトグラフィー法が、生物医薬品を回収するために使用することができる。このような方法は、生物医薬品の特性、生物医薬品の取得源(例えば、組換え的にまたはヒト血漿からなどの他の源から)および所望される生物医薬の用途(例えば、皮下または静脈内などに投与されるかどうか)を考慮に入れて、当業者によって選択されることができる。
【0070】
本発明に従う生物医薬品は、特に限定されない。本発明に従う生物医薬品には、組換え生物医薬品とヒト血漿から得られた生物医薬品などの他の源から得られる生物医薬品の両方が含まれる。本発明に従う生物医薬品には、血液因子、免疫グロブリン、補充酵素(replacement enzymes)、ワクチン、遺伝子治療ベクター、増殖因子およびその受容体が含まれるが、これらに限定されない。好ましい血液因子には、第I因子(フィブリノーゲン)、第II因子(プロトロンビン)、組織因子、第V因子、第VII因子および第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、フォンビルブランド因子(VWF)、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、フィブロネクチン、アンチトロンビンIII、ヘパリン補因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プラスミノーゲン、α2-抗プラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1(PAI1)およびプラスミノーゲン活性化因子阻害剤-2(PAI2)が含まれる。本発明に従って使用することができる血液因子は、機能的ポリペプチドバリアントおよび血液因子をコードするまたはこのような機能的バリアントポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むものとする。好ましい免疫グロブリンには、ヒト血漿から得られる免疫グロブリン、モノクローナル抗体および組換え抗体が含まれる。本発明に従う生物医薬品は、好ましくは、それぞれのヒトもしくは組換えヒトタンパク質またはこれらの機能的バリアントである。
【0071】
本発明に従って生物医薬品を調製するための方法によって得られた生物医薬品を回収した後に、生物医薬品は薬学的組成物に処方されることができる。このような薬学的組成物は、薬学的組成物の調製のための既知の基準に従って調製することができる。例えば、組成物は、例えば、担体、賦形剤または安定剤などの薬学的に許容され得る成分を使用することによって、適切に保存および投与することができるように調製することができる。このような薬学的に許容され得る成分は、患者に薬学的組成物を投与したときに使用される量において毒性でない。
【0072】
本発明によるウイルス不活化のための方法またはプロセスの全ての実施形態に関連して、前記方法またはプロセスは、好ましくは、連続的ウイルス不活化のための方法またはプロセスである。
【0073】
特に、本発明によるウイルス不活化のための方法またはプロセスにおいて、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造中での液体の滞留時間およびその滞留時間分布をモニターすることが有利であり得る。このようなモニタリングは、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造を通過する混合物の液体のいずれかの所与の部分が複数の相互接続されたチャンネルを有する構造中で十分な時間を費やしていないかどうかを認識することを可能にするであろう。本発明による連続的ウイルス不活化のための方法では、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造を通過する混合物の液体のいずれかの所与の部分が複数の相互接続されたチャンネルを有する構造中で十分な時間を費やしていないかどうかを認識することが有利であり得、このような場合には、(例えば、生物医薬品を含む)第一の液体が、所与のウイルスに対して所望のLog10減少値を達成するのに十分長く、ウイルス不活化剤に曝露され得ないからである。このような場合には、当業者は、例えば、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造の長さを増加させることによって、および/または空塔線速度を低下させることによって、本発明に従うウイルス不活化のための方法またはプロセスを改変することができる。
【0074】
本発明によるウイルス不活化のための方法またはプロセスでは、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造中での液体の滞留時間およびその滞留時間分布をモニターするために、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造の上流中に、トレーサー試料を定期的に添加することができる。例えば、トレーサー試料は第一の液体中に定期的に添加することができ、これは、続いて、第二の液体と混合され、必要に応じてさらなる液体と混合される。または、トレーサー試料は、少なくとも2つの液体の混合物中に定期的に添加し、前記混合物と混合することができる。続いて、トレーサーを含む混合物が本発明に従って複数の相互接続されたチャンネルを有する構造を通過するときに、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造の上流および下流で、混合物中のトレーサーの濃度をモニターすることができる。このモニタリングは、任意の適切な方法によって実施することができる。適切な分析法は、当業者に既知である。このような方法は、例えば、蛍光検出、吸光度検出または核磁気共鳴(NMR)を基礎とすることができる。したがって、好ましい実施形態において、本発明によるウイルス不活化のための方法またはプロセスは、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造中での液体(例えば、本発明に従って使用される少なくとも2つの液体の混合物)の滞留時間および滞留時間分布をモニタリングする工程を含み、前記工程は、前記液体中への(例えば、本発明に従って使用される少なくとも2つの液体の前記混合物中への)トレーサー試料の定期的な添加と、および複数の相互接続されたチャンネルを有する構造の上流および下流での前記液体中(例えば、本発明に従って使用される少なくとも2つの液体の前記混合物中)の前記トレーサーの濃度のモニタリングを含む。例えば、構造の潜在的な目詰まりまたはその他の妨害を検出するために、連続的製造プロセスの間に、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造の品質をモニターすることを可能にする点で、この工程は有利である。さらに、所望のLRV、例えば、4のLRVを与えるために、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造の滞留時間分布が十分に狭い状態を保っているかどうかをモニターすることを可能にする点でも、この工程は有利である。
【0075】
本発明によるウイルス不活化のための方法またはプロセスにおいて、ウイルス不活化剤は、溶媒/界面活性剤ウイルス不活化処理に適した溶媒/界面活性剤混合物であることが好ましい。本発明による溶媒/界面活性剤混合物は、特に限定されない。例えば、溶媒/界面活性剤混合物は、単一の有機溶媒と複数の界面活性物質、複数の有機溶媒と単一の界面活性物質または複数の有機溶媒と複数の界面活性物質を含むことができる。界面活性剤および/または溶媒の種類ならびにそれらのそれぞれの濃度は、例えば、液体中に存在する潜在的なウイルス、所望されるLRV、生物医薬品の特性および生物医薬品の製造プロセスの特徴(例えば、不活化が何度の温度で実施されるか)を考慮に入れることによって、当業者によって適切に選択することができることが理解される。典型的には、本発明に従うインキュベーションの際の有機溶媒と単一の界面活性物質の最終濃度は、約0.1%(v/v)~約5%(v/v)の有機溶媒および約0.1%(v/v)~約10%(v/v)の界面活性物質である。複数の界面活性物質が使用される場合、有機溶媒の最終濃度は、約0.1%(v/v)~約5%(v/v)であり、1つの界面活性物質の最終濃度は、約0.1%(v/v)~約10%(v/v)、約0.5%(v/v)~約5%(v/v)または約0.5%(v/v)~約1.0%(v/v)であり、残りの界面活性物質の最終濃度は、約0.1%(v/v)~約5%(v/v)、約0.1%(v/v)~約1.0%(v/v)または約0.2%(v/v)~約4%(v/v)である。
【0076】
本発明の一実施形態において、溶媒/界面活性剤混合物は、リン酸トリ(n-ブチル)およびポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(例えば、TRITON(登録商標)X-100としても知られる)を含む。別の実施形態において、溶媒/界面活性剤混合物は、リン酸トリ(n-ブチル)およびポリオキシエチレン(80)ソルビタンモノオレエート(例えば、ポリソルベート80またはTWEEN(登録商標)80としても知られる)を含む。
【0077】
本発明の別の実施形態において、溶媒/界面活性剤混合物は、リン酸トリ(n-ブチル)、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(TRITON(登録商標)X-100およびポリオキシエチレン(80)ソルビタンモノオレエート(例えば、ポリソルベート80またはTWEEN(登録商標)80としても知られる)を含む。
【0078】
本発明によるウイルス不活化のための方法またはプロセスの好ましい実施形態において、生物医薬品を含む第一の液体と溶媒/界面活性剤ウイルス不活化処理に適した溶媒/界面活性剤混合物を含む第二の液体とは混合され、その後、混合物は複数の相互接続されたチャンネルを有する構造を通過する。当業者に自明であるように、溶媒/界面活性剤ウイルス不活化処理のための混合物の1つまたはそれを超える成分の濃度は、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造を通過する混合物中で、例えば、複数の相互接続された細孔を有する構造の上流でまたは複数の相互接続された細孔を有する構造の下流でモニターすることができる。例えば、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造を通過する混合物の1つまたはそれを超える成分は、紫外可視分光法およびフーリエ変換赤外(FTIR)分光法を用いて追跡することができ、これらは当業者に周知である。
【0079】
または、本発明による連続的ウイルス不活化のための方法において、ウイルス不活化剤は、低pHウイルス不活化処理に適した酸性溶液であり得る。低pHウイルス不活化処理に適した酸性溶液は、低pHウイルス不活化処理に適した任意の無機酸または有機酸を含むことができる。
【0080】
本発明によるウイルス不活化のための方法またはプロセスにおいて、この方法は、少なくとも1つのウイルスに対して少なくとも1Log10減少値(LRV)、または少なくとも1つのウイルスに対して少なくとも2Log10減少値(LRV)、または少なくとも1つのウイルスに対して少なくとも3Log10減少値(LRV)、または少なくとも1つのウイルスに対して少なくとも4Log10減少値(LRV)、または少なくとも1つのウイルスに対して少なくとも5Log10減少値(LRV)、または少なくとも1つのウイルスに対して少なくとも6Log10減少値(LRV)、または少なくとも1つのウイルスに対して少なくとも7Log10減少値(LRV)、または少なくとも1つのウイルスに対して少なくとも8Log10減少値(LRV)、最も好ましくは少なくとも1つのウイルスに対して少なくとも4Log10減少値(LRV)を達成することが好ましい。もちろん、例えば生物医薬製造プロセスの安全性を改善するので、少なくとも1つのウイルスに対してあらゆるLog10減少値(LRV)が有益であることが当業者にとって明らかである。本発明に従って言及されるLRVは、好ましくは、エンベロープウイルスのLRVである。
【0081】
本発明による連続的ウイルス不活化のための方法によって達成されるLog10減少値(LRV)は、当業者に知られているように測定される。例えば、本発明による連続的ウイルス不活化のための方法に液体を供する前および後に、液体中の感染性ウイルス粒子濃度を測定することによって、LRVを測定することができる。より具体的には、第一の液体中の感染性ウイルス粒子濃度を測定すること、本発明による連続的ウイルス不活化のための方法に第一の液体を供するために、第一の液体を、ウイルス不活化剤を含む第二の液体と混合すること、ならびに本発明による連続的ウイルス不活化のための方法を実施した後に、第一の液体と第二の液体の混合物中の感染性ウイルス粒子濃度を測定することによって、LRVを測定することができる。ウイルス不活化前および後の感染性ウイルス粒子濃度の測定に引き続き、ウイルス不活化後の感染性ウイルス粒子(=例えば、第一および第二の液体の混合物中のウイルス不活化後の感染性ウイルス粒子濃度*(ウイルス不活化後の体積、例えば、第一の液体の体積+第二の液体の体積))に対する、ウイルス不活化前の感染性ウイルス粒子(=ウイルス不活化前の感染性ウイルス粒子濃度*ウイルス不活化前の体積、例えば、第一の液体の体積)の比の対数(底10)を計算することによって、いずれかの所与のウイルスに対するLRVを決定することができる。
【0082】
当業者は、液体中の感染性ウイルス粒子濃度を測定するための多数の方法を知悉している。例えば、限定されることなく、液体中の感染性ウイルス粒子濃度は、好ましくは、プラークアッセイによってまたはTCID50アッセイによって、より好ましくは、TCID50アッセイによって測定することができる。
【0083】
当業者に既知であるように、溶媒/界面活性剤ウイルス不活化処理に適した溶媒/界面活性剤混合物と液体を混合することによるウイルス不活化および低pHウイルス不活化処理に適した酸性溶液と液体を混合することによるウイルス不活化は、エンベロープウイルスを不活化するのに特に有効である。このため、好ましい実施形態において、本発明によるウイルス不活化のための方法またはプロセスは、エンベロープウイルスの連続的ウイルス不活化のためである。
【0084】
本発明は、本発明の方法に従う生物医薬品の調製のためのデバイスも開示する。前記デバイスは、非多孔質ビーズの充填床を備える。非多孔質ビーズの充填床を含むデバイスは、本発明による方法において好ましく使用されるので、デバイス中に含まれるビーズの充填床は、好ましくは、上述されたような本発明に従って使用するための非多孔質ビーズの充填床と同一の実施形態を有する。
【0085】
本発明に従って生物医薬品を調製するための方法において、生物医薬品を含む第一の液体とウイルス不活化剤を含む第二の液体は混合され、その後、この混合物は複数の相互接続されたチャンネルを有する構造を通過する。本発明の任意的実施形態では、複数の相互接続されたチャンネルを有する構造に混合物を通過させる前に少なくとも2つの液体を混合するために、静的ミキサーを使用することができる。このため、本発明の一実施形態において、本発明による生物医薬品の調製のためのデバイスは、静的ミキサーを備える。この実施形態の好ましい態様において、前記静的ミキサーは、非多孔質ビーズの充填床の上流に位置する。この実施形態のさらなる好ましい態様において、前記静的混合物はT字型接合部ミキサー(T-junction mixer)である。
【0086】
本発明による生物医薬品を調製するための方法において、少なくとも2つの液体の混合物は、破片(debris)、例えば、細胞破片、または上流の生物医薬製造プロセス由来のその他の不溶性成分を含有し得る。このため、例えば、濾過によって、混合物から前記不溶性成分を除去することが所望され得る。したがって、本発明の一実施形態において、本発明による生物医薬品の調製のためのデバイスはフィルターを備える。この実施形態の好ましい態様において、前記フィルターは、非多孔質ビーズの充填床の上流に位置する。この実施形態のさらに好ましい態様において、フィルターは、非多孔質ビーズの充填床の上流に、およびT字型接合部ミキサーまたは動的ミキサーなどのミキサーの下流に位置する。フィルターの孔径は特に限定されず、例えば、フィルターを通過する必要がある生物医薬品の大きさおよび生物医薬製造プロセスから除去されるべき成分(例えば、細胞破片または上流の生物医薬製造プロセス由来のその他の不溶性成分)の大きさを考慮に入れることによって、当業者によって選択されるであろう。好ましい実施形態において、フィルターは0.2μmの孔径を有する。
【0087】
上記実施形態に従う別の実施形態において、本発明による生物医薬品の調製のためのデバイスは、非多孔質ビーズの充填床を備える連続流反応器である。当業者に自明であるように、本発明に従う反応器は、本発明による生物医薬品の調製のためのデバイスの全ての他の実施形態と組み合わせることができる。例えば、反応器は、非多孔質ビーズの充填床の上流にT字型接合部ミキサーなどのミキサーを備えることができる。または、反応器は、非多孔質ビーズの充填床の上流にフィルター、例えば、0.2μmの孔径を有するフィルターを備えることができる。別の代替手段として、反応器は、非多孔質ビーズの充填床の上流にフィルター、例えば、0.2μmの孔径を有するフィルターを、およびフィルターの上流にT字型接合部ミキサーなどのミキサーを備えることができる。この実施形態の好ましい態様において、反応器はカラムであり、これは、非多孔質ビーズの充填床の上流にフィルター、例えば、0.2μmの孔径を有するフィルターを、およびフィルターの上流にT字型接合部ミキサーなどの静的ミキサーを備える。
【0088】
本発明の全ての他の実施形態に従う実施形態において、連続流反応器は連続的ウイルス不活化に適している。本発明の連続的ウイルス不活化のための連続流反応器は、好ましくは、非多孔質ビーズの充填床に接続されている、2つの液体のための、3つの液体の、または4つもしくはそれを超える液体のミキサーを備える。非多孔質ビーズの充填床に入る前に液体が混合されることができるように、これらのミキサーは、非多孔質ビーズの充填床の上流に位置する。このような混合の配置の非限定的な例が
図17に示されている。混合の順序は、特に限定されない。例えば、生じた混合物と第三の液体が混合されるより前に、2つの液体が混合されるように3つの液体を混合することができ、またはさらなる液体の混合前に、あらゆる数の液体を混合することができる。このような混合の配置の非限定的な例が
図18に示されている。
【0089】
本発明の連続的ウイルス不活化のための連続流反応器は、好ましくは、非多孔質ビーズの充填床の上流にさらなるユニットを備え、これは、変動調整タンク(surge tank)を含むことができる。非限定的な実施形態において、変動調整タンクは、変動調整タンクの上流にあるバッチクロマトグラフィーユニットに、または変動調整タンクの上流にある向流負荷(counter-current loading)クロマトグラフィーのためのユニットに、または変動調整タンクの上流にある疑似移動床クロマトグラフィー(simulated moving bed chromatography)のためのユニットに接続することができる。非多孔質ビーズの充填床の上流にあるこのようなユニットの非限定的な例は、
図19Aに示されている。または、本発明の連続的ウイルス不活化のための連続流反応器は、好ましくは、非多孔質ビーズの充填床の上流にさらなるユニットを備え、これは、変動調整タンクを持たない円滑なストレートスルー・プロセッシング(straight-through processing)のためのユニットを含む。非限定的な実施形態において、円滑なストレートスルー・プロセッシングのためのユニットは、バッチクロマトグラフィーユニット、向流負荷クロマトグラフィーのためのユニットまたは疑似移動床クロマトグラフィーのためのユニットであり得る。非多孔質ビーズの充填床の上流にあるこのようなユニットの非限定的な例は、
図19Bに示されている。
【0090】
本発明の連続的ウイルス不活化のための連続流反応器は、好ましくは、非多孔質ビーズの充填床の下流に、向流モードでの溶媒-界面活性剤抽出のためのユニット、並流モードでの溶媒-界面活性剤抽出のためのユニット、バッチクロマトグラフィーユニット、向流負荷クロマトグラフィーのためのユニットおよび疑似移動床クロマトグラフィーのためのユニットなどを含むがこれらに限定されない、さらなるユニットを備える。非多孔質ビーズの充填床の下流にあるこのようなユニットの非限定的な例が、
図20に示されている。
【0091】
本発明の連続的ウイルス不活化のための反応器の上記ユニットも、本発明のプロセスおよび方法と関連して使用することができることが理解されるであろう。
【0092】
以下では、本発明は実施例によって例示されるが、本発明が実施例に限定されることはない。
【実施例】
【0093】
[実施例1]ブレークスルー実験の一般的な設定
非多孔質ビーズが充填されたカラム中での累積的滞留時間分布は、いわゆるブレークスルー実験によって取得することができる。本発明の実施例に関しては、ブレークスルー実験は、以下の3つの工程で行われた。
1.平衡化緩衝液でカラムを洗い流す
本発明の実験では、平衡化のために水を使用した。
2.被験物質であるアセトンを含有する緩衝液で追加カラム管類を洗い流す(バイパス上にカラムバルブを有する)
別段の記載がなければ、本発明の実施例では、2%アセトンを使用した。2%アセトンは、本発明による溶媒/界面活性剤ウイルス不活化処理に適した溶媒/界面活性剤混合物を含む混合物のための適切なモデル系であることが示された(実施例2参照)。溶媒/界面活性剤混合物を含む混合物に代えてアセトン系を使用することによって、より便利な研究室での作業が可能になった。記載されている場合には、より高い感受性のために、10%アセトンを用いて追加実験を行った。
3.カラムバルブを選択されたカラムに切り替えることによるブレークスルー測定の開始
UV検出器を用いて、非多孔質ビーズが充填されたカラムの下流で、UV応答を検出した。標準化されたUV応答が累積的滞留時間分布を表す(
図1A)。
【0094】
本発明の実施例では、本発明による溶媒/界面活性剤ウイルス不活化処理に適した溶媒/界面活性剤混合物を含む混合物が使用されなかった場合には、UV検出器は280nmの波長に設定した。最大UVシグナルを有する波長において(すなわち、280nmにおいて)、UV検出器は飽和したので、溶媒/界面活性剤混合物を含む混合物が使用された場合には、UV検出器は300nmの波長に設定した。2cm/時間~300cm/時間の範囲の異なる空塔線速度で、GE Healthcare製のクロマトグラフィーシステムAekta Avant上で、ブレークスルー実験を行った。本発明の実施例については、Matlab(登録商標)プログラミング環境中で、自社の処理スクリプトを用いて、UVスペクトルを処理した。UV応答は、0%~100%の範囲に標準化した。溶出体積(EV)は、カラム体積(CV)で表されている。異なる濃度のフロースルー溶液(水中アセトン)での溶出体積を算出した(例えば、5%での溶出体積および50%での溶出体積、
図1A参照)。
【0095】
充填されたカラムを使用する場合には、低強度ピークテーリングが低強度ピークフロンティングより長いことが予想される。しかしながら、本発明による連続的ウイルス不活化のための方法では、ウイルスの不活化が時間とともに増加するので、ピークテーリングはピークフロンティングほどには関連がない。このため、得られたUVプロファイルの狭さは、好ましくは、以下のパラメータによって記述することができる。
【数2】
【0096】
EV50%は、滞留時間分布の平均であるのに対して、EVXは、典型的には、シグナルが信頼できる最低検出限界(「検出の限界」、LOD)に達したときの溶出体積を表す。本発明の実施例では、EV1%およびEV5%が一般に使用される。本実施例とは独立に、EV1%およびEV5%は、本発明の全ての実施形態に従って、一般的に使用することができる。これらの実施例の設定を用いると、10%アセトン溶液が使用されるときには、EV0.03%までの溶出体積を検出することができる。θXが1に近づくと、RTDは極めて狭い、すなわち、非多孔質ビーズが充填されたカラムを通過する液体の流れは理想的な栓流に近づく。対照的に、θXが0に近づくと、RTDは極めて広い、すなわち、RTDは著しいピークフロンティングを示す。一般的に言えば、θXが1に近づくと、RTD曲線はより急峻になる。
【0097】
さらに、それぞれのブレークスルー曲線について、関数Fを標準化されたUVシグナルにフィッティングすることによってボーデンシュタイン数を算出した、式中、F(EV)はガウス分布のピークの積分を表し、Boはボーデンシュタイン数を表し、EVは所与の時点における溶出体積を表し、EV
50%はRTDの平均における溶出体積を表す。
【数3】
【0098】
当業者に既知であるように、ボーデンシュタイン数も、滞留時間分布の指標として使用することができる。小さなボーデンシュタイン数は広いRTDを示すのに対して、大きなボーデンシュタイン数は狭いRTDを示す。
【0099】
[実施例2]アセトンと溶媒/界面活性剤を含む混合物との間の性能の比較
溶媒/界面活性剤混合物を用いて作業することは危険なことがあり、これは研究室での作業を不便にする。このため、より便利な研究室での作業を可能とするために、アセトン溶液が、本発明による溶媒/界面活性剤ウイルス不活化処理に適した溶媒/界面活性剤混合物を含む混合物に対する適切なモデル系であるかどうかを検査した。
【0100】
様々なカラムにガラスビーズを充填した。2%水中アセトン混合物、またはプロセス流体緩衝液と溶媒/界面活性剤化学物質を添加したプロセス流体緩衝液との組み合わせを用いて、上述のように(実施例1を参照)、ブレークスルー実験を実施した。各実験について、EV5%対EV50%の比(θ5%)とボーデンシュタイン数を算出した。
【0101】
図2および3中に見ることができるように、θ
5%およびボーデンシュタイン数は、2%水中アセトン混合物を使用したか、またはプロセス流体緩衝液と溶媒/界面活性剤化学物質を加えたプロセス流体緩衝液との組み合わせを使用したかどうかが異なった実験について極めて似ていた。このため、さらなる実験では、別段の記載がなければ、水と2%アセトンの組み合わせのみを使用した。
【0102】
[実施例3]滞留時間分布に対するカラムパラメータの影響
滞留時間分布に対する、非多孔質ビーズを充填されたカラムの様々なパラメータの影響を調べるために、カラム高、カラム直径、線速度、ビーズ直径およびビーズ直径範囲に関して、
図2に要約されたデータを分析した。一般的に、本発明に関連して、「高さ」および「長さ」は互換的に使用され、これらは、常に、構造物の高さ、例えば、充填床の高さを意味する。
【0103】
具体的には、入力パラメータ(カラム高、カラム体積、線速度、平均ビーズ直径、ビーズ直径分布)に関して、および2つの出力パラメータ(ボーデンシュタイン数およびθ
1%)に関して、
図2に要約されたデータに対して、部分最小二乗法(PLS)解析を行った。出力に対する個別の入力パラメータの影響を表すために、直交PLS(OPLS)回帰を使用した。
【0104】
本発明者らの事例では、OPLSは、より直感的な表示のために座標系が回転されたPLSと同一である(参考文献7)。より具体的には、出力に対する個別のパラメータの影響は、第一OPLS成分から観察することができる。正の値を有するパラメータが増加されると、正の値を有するパラメータは出力を増加させる。負の値を有するパラメータが減少されると、負の値を有するパラメータは出力を減少させる。あるパラメータの第一OPLC成分の絶対値が高い場合、パラメータは出力に対して高い影響を有する。(第二OPLS成分は、本事例では無関係である-簡略化された説明では、第二OPLS成分はパラメータのばらつきと関連するように解釈することができる。)
【0105】
最初の2つの主成分のプロッティングは、ビーズ粒子寸法の影響が、調べた範囲における最も重要なパラメータであることを明らかにした(
図4)。ビーズがより小さく、およびより均一になるほど、RTDはより狭くなる。別の重要な因子は、カラム長であった。より長いカラムは、より狭いRTDを与えた。最も影響が小さい因子は、カラム体積および線速度であった。後者は、規模を拡大するために、試験された範囲ではRTDに対してほとんど影響なしに減少する線速度を使用することにより、カラム直径を変更できること、および/または滞留時間を増加できることを意味する。しかしながら、より低い線速度およびより大きなカラム体積は何れも、幾分より良好なRTDをもたらすことが観察された。上記考察は、RTDを記述する両パラメータ、すなわち、ボーデンシュタイン数およびθ
1%に関して一貫していた。
【0106】
RTDに対するカラム長の影響を確認するために、別の実験を行った。異なるサイズのカラムに同一バッチのセラミックビーズを充填し、様々な線速度でブレークスルー実験を行った。この実験においても、より短いカラムはより低いθ
1%、すなわち、広いRTDを有することが見出された(
図5)。
【0107】
RTDに対する線流速の影響を確認するために、別の実験を行った。振動式カラム充填ステーション(vibrational column packing station)を用いて、
本発明による連続的ウイルス不活化の方法に適したカラム(”MP_7_PMMA_HS_16/13.2_0.2-0.4mm;材料:PMMAプラスチック;直径:16mm;高さ:13.2cm;ビーズサイズ:0.3μm±0.1μm)を充填した。異なる通過時間(flow through times)は、異なる流量をもたらすはずであり、このため、異なるRTDをもたらすはずである。このため、1分から30分までの素通り(flow though)時間の範囲全体にわたり、EV
1%/EV
50%(θ
1%)を用いてRTDを評価した。0.4±0.05の空隙率を仮定すると、空塔線流速は5cm/時間~180cm/時間の範囲内にあるであろう。このような範囲では、より高い速度に向かうと、RTDはより広くなる、すなわち、θ
1%はより低くなる(
図6)。検査された線速度の範囲、θ
1%の観点でのカラム性能は4%低下する。とりわけ、本実験で使用されたカラムは、生物医薬製造プロセスで使用されることが予想されるものと比べて短い。より長いカラムはより狭いRTDを与えるので(上記参照)、生物医薬製造プロセスでは、さらにより狭いRTDが予想される。
【0108】
[実施例4]RTDに対するカラムパラメータおよび線流速の影響を予測する
例えば、生物医薬製造プロセス中への統合のためにカラムの規模を拡大する場合には、RTDに対するカラムパラメータおよび線流速の影響を正確に予測できることが重要である。5つの入力パラメータの全て(カラム長、カラム体積、線流速、平均ビーズ直径およびビーズ直径範囲)に関して、および線速度を除く同じ入力パラメータに関して、RTD PLS予測を行った。それぞれ、
図5および
図6で明らかなように、RTDを評価するために、EV
1%対EV
50%(θ
1%)を使用したか、またはボーデンシュタイン数を使用したかどうかに関わらず、PLS予測モデルを用いてRTDに対する入力パラメータの影響を予測することは、観察された実験データと良好に相関した。ただし、θ
1%は、ボーデンシュタイン数より、より線形的に入力パラメータと相関した。
【0109】
[実施例5]RTDに対するカラム充填の影響
RTDに対するカラム充填の影響を評価するために、同一の直径(1cm)および類似の長さ(28.5cm~30.5cm)のカラムに、セラミックビーズを手で充填した。そのうち1つ(JS_07)は、故意に、不適切に充填した、すなわち、充填後にたくさんの気泡を含有していた。低い空塔線速度においては、不適切に充填されたカラムは、より大きなビーズサイズを有する適切に充填されたカラムと同じように機能した(
図7)。しかしながら、より高い空塔線速度においては、不適切に充填されたカラムは、ずっと劣って機能した、すなわち、θ
1%がずっと小さく、広いRTDを示した。これらの結果は、カラム充填の品質がRTDに影響を与えることを示している。とりわけ、高品質のカラム充填は、例えば、注文製の振動ステーションを用いて行うことができる。
【0110】
[実施例6]検出限界を低下させること
2%アセトンを用いると、ブレークスルー実験における検出の限界(LOD)は、溶出体積の1%(EV1%)の範囲にある。しかしながら、本発明による連続的ウイルス不活化のための方法は、好ましくは、少なくとも4のLog10減少値(LRV)を達成する。4のLRVは、100%の感染性ウイルス粒子から0.01%の感染性ウイルス粒子へと減少することに等しいであろう。これに関して、EV1%の検出の限界は相対的に大きい。
【0111】
より低いLODを達成するために、10%アセトンを使用した。この場合には、LODは、UV280nmで0.03%に設定することができた。10%アセトンおよびセラミックビーズを充填されたカラムを用いて、ブレークスルー実験を行った場合には、特に適切に充填されたカラムを使用すると、θ
0.03%(EV
0.03%/EV
50%)とθ
1%(EV
1%/EV
50%)は極めて良好に相関した(
図11参照)。このため、RTDに対する様々なパラメータの影響を評価するためのθ
1%の使用が正当化される。とりわけ、さらに低い検出の限界を得るために、蛍光実験を使用することができるであろう。
【0112】
[実施例7]既知の方法との比較
既知の方法においては、狭いRTDを達成するために、コイルドフローインバータ(CFI;coiled flow inverters)が使用されてきた。しかしながら、非多孔質ビーズの充填床については、より長い床を用いるとRTDはより狭くなり、床は流量の変化にあまり敏感でなくなるので、本発明による非多孔質ビーズの充填床の拡張性は、CFIの拡張性よりずっと優れている。これに対して、CFIは、2~3mmの管径とともに機能することが証明されているのみであり、非理想的な流体力学の故に、規模拡大能には疑問がある。さらに、CFIは、各所与の設計に対して単一の流量に限定される。
【0113】
CFIのRTDを本発明による非多孔質ビーズが充填されたカラムのRTDと比較するために、CFIを用いて得られたおよびKlutzら(参考文献2)に公表されたボーデンシュタイン数を、本発明の充填されたカラムによって達成されたボーデンシュタイン数と比較した。注目すべきことに、ガラスビーズ(
図11)、セラミックビーズ(
図12)またはPMMAプラスチックビーズ(
図13)が使用されたかどうかに関わらず、5mmを超える直径、10cmを超える長さ、および直径が600μmより小さいビーズを有するカラムのボーデンシュタイン数は、既知の方法において記載されたCFIのボーデンシュタイン数より高かった。
【0114】
[実施例8]異なるカラムサイズでの本発明のカラムおよび比較用カラムに対する滞留時間分布
次に、本発明者らは、滞留時間分布に対するカラムのサイズの影響を調べ、逆流インバータ(CFI;converted flow inverter)カラムと本発明のカラムの比較も行った。結果は、
図21に示されている。
図21Aでは、それぞれの丸が実験を表している。丸の大きさは、ボーデンシュタイン数に比例する。このため、丸が大きいほどボーデンシュタイン数が大きいことを意味し、これは、系が理想的な栓流により近づくことを意味する。x軸上には、平均滞留時間(または通過時間)が示されており、y軸上には、流量が示されている。白丸は、本発明による充填されたカラムを用いた実験を表し、黒丸は、比較用のコイルドフローインバータ(CFI)から得られるデータを表す。破線は、異なる流量で単一の反応器(または同一の空隙体積を有する複数の反応器)を使用したときに得られるであろう軌跡を表す。極めて異なる流量でまたは異なる規模で行われた2つの方法間でボーデンシュタイン数を比較することは不適切であり得るので、このプロットの目的は、使用された流量および反応器のサイズに関して比較を広い視野で把握することである。
【0115】
本発明者らは、本発明によるカラムはCFI設定より小さな空隙体積を有すること、およびカラムの規模を拡大するにつれて、滞留時間分布(RTD)がより狭くなることを既に実証していたが、本発明者らは、プロットの形式でさらなる直接的比較も行った。
図21Aのプロットでは、1つの大きな充填されたカラムから得られた結果も示されている。その他のカラムは、示されているCFI設定のほとんどより小さな空隙体積を有していたが、この大きなカラムは、CFI設定の全てより大きかった。大きなカラムは、全てのより小さな(研究室規模)カラムおよび全てのCFI設定より大幅に性能が優れている(大きな白丸は大きなカラムに属することに注目されたい。)。
【0116】
図21Bは、尺度が対数形式であることを除き、
図21Aと同じである。このため、同一の空隙体積(同一の反応器)を用いた実験は、直線上に存在する。
【0117】
大きなカラムに対して行われた実験が、
図21Cにより詳しく図示されている。特に、5cmの直径と89cmの長さを有するカラム(GE Healthcare XK50/100)に、125μm~250μmの直径を有するセラミックビーズを充填した。充填されたカラムの総体積は1.75Lであり、空隙体積は0.7Lであった。振動式カラム充填ステーションを用いて、カラムを充填した。目的は、カラムの規模を拡大するにつれて、滞留時間分布(RTD)がより狭くなるという傾向を確認すること、および比較用のコイルドフローインバータ(CFI)反応器より大きなカラムに対しても狭いRTDを実証することであった。
【0118】
実験は、5cm/時間、10cm/時間、15cm/時間、20cm/時間および30cm/時間の空塔線速度を用いて行った。体積流量の範囲は、CFI反応器中で使用された流量に対するより、上限および下限でさらに広かった。
【0119】
本発明に従って予想されたとおり、大きなカラムは極めて狭いRTDを生じた(
図21C)。比較すると、同じバッチのビーズが充填されたより小さなカラム(d=26mm、l=19.5cm)は、0.88~0.92の範囲のEV
1%/EV
50%スコアおよび800~1800の範囲のボーデンシュタイン数を達成した。
【0120】
[実施例9]生物医薬品の調製のためのデバイスの例示的実施形態
生物医薬品の調製のためのデバイスの例示的な実施形態が
図14に示されている。プロセス流体は、個別の溶媒/界面活性剤化学物質の原溶液と混合される。所望の最終濃度を達成するために全ての成分の正しい流量を確保するため、秤がフィードバック制御を与える。ライン内のミキサーが溶液を均質化する。微粒子を除去するためのアブソリュートフィルター(例えば、0.2μmフィルター)を通過した後、均質な溶液は不活化カラムに入る。
【0121】
[実施例10]ウイルス不活化を推定するための数学的アプローチ
Klutzら(参考文献3)によって、連続的設定に対して、ウイルスの不活化を求めるための2つのアプローチが提案された。第一のアプローチは、ピーク開始検出に基づいており(検出の限界はブレークスルーの0.5%に設定される)、ここで、ピーク開始溶出時間は、対応するバッチ反応器中でのウイルスの不活化時間と同じであるべきである。プロセス流体の99.5%は、バッチプロセスにおけるより長いインキュベーション時間を有すると思われ、このため、連続的設定の対数減少値(LRV)は、バッチ操作より高いと予想される。
【数4】
【0122】
第二のアプローチは、ウイルスの不活化の指数関数的性質(実験的バッチ不活性化速度論の結果によって確認される)を仮定することである。第二のアプローチに対する有効LRV(effective LRV)は、滞留時間分布(RTD)によって重み付けされた平均LRVとして定義される。目的はバッチ操作におけるのと同じLRVに到達することであるので、次いで、このアプローチは、反応器中でのより短い滞留時間を可能にする。しかしながら、これらの提案には、計算が伴っていなかった。
【0123】
ピークのまさに開始時に早く溶出するウイルスは相対的に短いインキュベーション時間を有するので、RTDピークの開始は極めて重要な部分である。ピークの開始の研究は、当技術分野における既知の方法では検討されていなかった。
【0124】
したがって、本発明者らは、充填されたカラムに基づく本発明の方法において、本発明者らがブレークスルー曲線のまさに開始を検出することができる前および後という2つの部分にブレークスループロファイルを分割することを提案する。シグナルがより低い検出の限界(LOD)を上回った時点で、これは起こる。検出前のプロファイルは不明である。ブレークスループロファイルは累積的滞留時間分布を表すのに対して、パルス注入プロファイルは通常の滞留時間分布を表すであろう。このため、ブレークスルー曲線がLODを上回って上昇する溶出時間(LOD時間、t
init)は、RTDピークのφ
init割合(share)が溶出する時間である。
【数5】
【0125】
検出の限界より前の最初の部分(φinit)中にウイルスの不活化が存在しないと仮定すると、必要とされるLRVを達成するためには、検出の限界は極めて低くなければならない。
【0126】
本発明者らのカラムでは、粒子中に結合および細孔が存在せず、このため、RTDは1つだけピークを有すると予測される。1つだけピークが存在する場合、平均滞留時間が最低となる最悪事例の理論的シナリオは、単一ピーク形状を仮定すると、検出可能な溶出ピークの溶出前における一定の試料濃度であろう(すなわち、極端なピークフロンティング)(
図15)。
【0127】
ウイルスの不活化の指数関数的性質および上述した最悪事例のピークフロンティングシナリオを仮定すると、φ
initに対するウイルス減少比は、以下のように計算することができる(RV
initによって表される)。
【数6】
【0128】
指数関数的ウイルス不活化減衰に対する係数(k)は、必要とされるバッチウイルス不活化インキュベーション時間(t
0)およびウイルス不活化に対する対応する下限(RV
min=減少値)から計算することができる。
【数7】
【0129】
LOD後に溶出された物質のインキュベーション時間がLOD時間に設定される。合わせた減少値(RV
total)は両方の寄与から計算され、RV
minに等しいはずである。
【数8】
【0130】
上の方程式から、所要RV
minに対するおよび所与のLODに対する所要LOD時間を計算することができる(
図16)
【0131】
段階的実施例:
1)10%アセトンとUV検出器の使用によって、0.03%未満のLODが達成可能であることが、上で示された。このため、本実施例では、本発明者らは、φ
init=0.03%、所要LRV4対数および1時間のバッチインキュベーション時間(t
0)を使用した。必要とされるLOD時間は、
図16中のプロットから推定することができる。正確な値は、最後の方程式を数的に解くことによって得ることができる。プロットから推定された値は1.05である。t
init=1.05;t
0=1.05
*60=63分。
2)本発明者らは、0.03%未満のLODについては、0.8を上回るLOD時間と平均滞留時間との比が達成可能である(EV
0.03%)/(EV
50%)=0.8)ことも上で示した。このため、平均滞留時間(t
平均)は次のとおりである:t
平均=t
LOD/0.8=79分
3)典型的な空隙率は、約0.4である。空隙率は、粒度分布に依存する。本実施例に関しては、本発明者らは、空隙率=0.4、所望される方法φ
処理量=1L/時間を採用することができる。この場合には、総カラム体積(CV)は、
【数9】
【0132】
[実施例11]ウイルス不活化
本発明による例示的なウイルス不活化は、以下のように実施することができる。以下の実施例では、全体の設定および全ての溶液は室温である。全体の不活化プロセスは連続的に稼働される。
【0133】
タンパク質性生成物を含有する緩衝化された溶液(20mM MES、10mM CaCl2、0.1%ポリソルベート80、500mM NaCl、pH6.35)を、溶媒-界面活性剤化学物質:リン酸トリ-n-ブチル、Triton X-100およびポリソルベート80(原溶液中の3つの化学物質の質量百分率:17.47%:63.25%:19.28%)の原溶液と連続的に混合する。2つの溶液を混合するために、動的なライン内ミキサーを使用する。2つの流れの体積流量は、それぞれ、溶媒-界面活性剤原液について、および生成物含有流について、0.161mL/分および10.0mL/分である。得られた均一な混合物は、一切の微粒子を除去するために、ライン内フィルターを通過する。次いで、非多孔質ビーズが充填され、2134mLのカラム体積の不活化カラム中に、この溶液を直接供給される。カラム高は27.2cmであり、カラム直径は10cmである。カラムは、生成物溶液とSD化学物質原溶液の混合物中に存在するのと同じSD濃度を有する緩衝液(20mM MES、10mM CaCl2、0.1%ポリソルベート80、500mM NaCl、pH6.35)で平衡化されたカラムである。
【0134】
ウイルス不活化カラムの流出物をフィルターに通してろ過し、緩衝溶液(50mM Tris、5mM CaCl2、0.1%ポリソルベート80)を用いてライン内で1:4.5希釈し、広口径陰イオン交換カラム上に搭載する。
【0135】
[実施例12]ウイルス不活化(5%S/DでX-MuLV)
以下では、連続的ウイルス不活化(CVI)に対する実験的実施例が記載されており、溶媒/界面活性剤(S/D)プロセスが使用され、連続的ウイルス不活化を産業標準のS/Dバッチインキュベーションに対して比較した。
【0136】
実験は、ICH Q5A(R1)1999ガイドライン、ICH CPMP/BWP/268/95 1996ガイドラインおよびEMEA CHMP/BWP/398498/2005 2009ガイドラインなどの、但しこれらに限定されない、産業関連ガイドラインに従って行った。
【0137】
ウイルス力価は、50%組織培養感染量(TCID50)法によって決定した。TCID50に対して、検出の限界(LOD)および試料干渉の不存在が、当業者によって評価された。
【0138】
連続的稼働モードでのウイルスの不活化のために、連続的ウイルス不活化反応器(CVIR)を使用した。反応器体積(VR)はEV1%に等しく、滞留時間分析によって評価した。30分および60分のインキュベーション時間を付与するために、反応器を設計し、稼働した。前CVIR体積はCVIR体積と比べて小さく、滞留時間分布分析では考慮されなかった。
【0139】
連続的ウイルス不活化のために使用された設定が
図24に示されている。本実施例では、試験項目(プロセス中間物に対する代替物(surrogate))およびS/D試薬を送り出すために2つのポンプを使用し、2つの流れはライン内ミキサーで合流し、ここで均質化された。均質化されたら、単一の流れがさらにCVIRを通して送り出され、ここで、ウイルス不活化が連続的に起こった。
【0140】
CVIRは、200μm~400μmの範囲の直径を有し、300μmの平均直径を有するポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)球形非多孔質ビーズが充填された円筒形の管であった。反応器は、特注製の振動援用充填ステーションを用いて充填した。充填は、132mmの充填された高さと10.66±0.06mLの空隙体積を有する反応器をもたらした。10cm/時間でのボーデンシュタイン数は、875より大きかった。10cm/時間でのEV1/EV50は0.882であったので、CVIR体積は9.40±0.15mLであると計算された。
【0141】
CVIRの入口および出口における流量は、インキュベーション時間が30分および60分となるような流量であり、CVIR内部において、それぞれ、4.68および9.35cm/時間の線速度をもたらした。
【0142】
このプロセスは、2V
Rの稼働前に定常状態を達成し、2V
Rにおいて、この系は既に定常状態であった。
図25に示されているように、出口でのS/D成分の濃度が入口と同じ濃度に達したら、系は定常状態を達成した。CVIプロセスは、CVIR内部の液相の置き換えのために、潜時(latency phase)および定常状態の遅延した開始を示したが、これは、S/D成分のいずれをも含有せず、このため、ウイルス不活化が起こらず、または限定されたウイルス不活化が起こった。
【0143】
試験項目は、生物医薬品の例としてヒト血清アルブミンを有する産業上妥当な(industry-relevant)緩衝液からなった。本実施例における試験項目は、生物医薬品の製造のためのプロセスにおけるプロセス中間物の主要な特性(pH、伝導率、総タンパク質)を再現する。関連するガイドラインに従い、当業者によって、あらかじめ試験項目にX-MuLVを添加した。
【0144】
この非限定的実施例のS/D試薬は、溶媒とウイルス不活化効果を有する界面活性剤の混合物であった。本実施例では、Triton X-100(TX-100)、ポリソルベート80(PS80)およびリン酸トリ-n-ブチル(TnBP)を使用した。CVIインキュベーションの間に、0.0473%(w/w)TX-100、0.0144%(w/w)PS80および0.0131%(w/w)TnBPの目標濃度を達成するために、S/D試薬をミキサーにおいて希釈した。
【0145】
最初のウイルス力価を確立するために、CVI実験を開始する前に、添加された試験項目の試料を取り出した。1、2、3、4および5VRにおいて、CVIRの出口における流れを採取した。ウイルス不活化プロセスを停止させるために、出口試料を直ちに20倍希釈し、CVIプロセス後の力価を確立するために、ウイルス力価に関して直ちに滴定した。ホールドコントロール(HC)としての役割を果たすために、CVI実験完了後に、添加された試験項目の試料を取り出した。
【0146】
ウイルス不活化は、以下の式1におけるように、対数減少値(LRV)を計算することによって測定された。式1は、連続的稼働の具体的な性質と、および本実施例では、CVIRを通してポンプで押出されている2つの流れが存在し、1つのみがCVIRを出るという事実とを反映している。したがって、ウイルス不活化前における単位時間当たりのウイルス入力およびウイルス不活化後における単位時間当たりのウイルス出力は、流れのウイルス力価とその各体積流量に基づいて計算される。力価
出口は、ウイルス不活化を停止する希釈に関して補正した。
【数10】
【0147】
図26には、30分および60分インキュベーションのCVIプロセス後におけるX-MuLV力価プロファイルが図示されている。稼働が定常状態に達した時点で、30分のインキュベーション時間に関しては、X-MuLVが、CVIRの入口での6.3E+5TCID
50/mL以上からCVIRの出口での4.0E+2TCID
50/mL以下へ低下し、60分のインキュベーション時間に関しては、8.0E+1TCID
50/mL以下へ低下した。定常状態に達する前に、すなわち、1V
Rにおいて、2.5E+2TCID
50/mLのX-MuLV力価は、定常状態相において達成された力価より高かった。この差は、上述したように、1V
Rでの、目標濃度を下回るS/D成分の濃度によって説明することができる。
【0148】
定常状態(2V
R以降)になると、30分のインキュベーション時間に関しては、3.5以上のLRVが、60分のインキュベーション時間に関しては、3.9より大きいLRVが観察された(
図27)。30分および60分のインキュベーションに関して、ホールドコントロールは、1log
10を下回るウイルスの低下を示した-当業者によって有意と考えられ、産業関連ガイドラインにおいて許容される最小の差の値である。
【0149】
比較のために、産業関連ガイドラインに従って、当業者によってバッチ実験が行われた。(
図28に示されている)伝統的なバッチから得られたデータは、3.8以上のLRVを示したが、これは、連続的稼働モードでのCVIRで得られたものと同等である。この直接の比較は、CVIRを用いた連続的ウイルス不活化は伝統的なバッチ稼働と同程度に効果的であることを示した。
【0150】
本発明による連続的ウイルス不活化は、連続的に実施できるというさらなる利点を与えながら、バッチモードでのウイルスの不活化という理想的な不活化条件と同程度に効果的であるので(例えば、狭い滞留時間分布のために、混合物の全ての部分について本質的に滞留時間が等しく、混合物の全ての部分に効率的なウイルスの不活化をもたらす)、これは、本発明による連続的ウイルス不活化が極めて有利であることを示している。
【0151】
ウイルス不活化実施例において使用された条件は本発明の範囲を限定するものではないことが当業者によって理解されるであろう。例えば、200~400μmの範囲の直径を有し、300μmの平均直径を有するポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)球形非多孔質ビーズが例として使用されたが、複数の相互接続されたチャンネルを有するあらゆる構造、例えば、非多孔質ビーズが充填されたあらゆるカラムを本発明に従って使用することができる。同様に、特注製の振動援用充填ステーションを用いて充填された円筒形の管が132mmの充填された高さ、10.66±0.06mLの空隙体積および9.40±0.15mLのCVIR体積を有するCVIRとして使用されたが、本発明によって定義されたその他のあらゆるCVIRを使用することができる。
【0152】
[実施例13]ウイルス不活化(5%S/DでBVDV)
以下では、連続的ウイルス不活化(CVI)に対する実験的実施例が記載されており、溶媒/界面活性剤(S/D)プロセスが使用され、連続的ウイルス不活化を産業標準のS/Dバッチインキュベーションに対して比較した。
【0153】
実験は、ICH Q5A(R1)1999ガイドライン、ICH CPMP/BWP/268/95 1996ガイドラインおよびEMEA CHMP/BWP/398498/2005 2009ガイドラインなどの、但しこれらに限定されない、産業関連ガイドラインに従って行った。
【0154】
ウイルス力価は、50%組織培養感染量(TCID50)法によって決定した。TCID50に対して、検出の限界(LOD)および試料干渉の不存在が、当業者によって評価された。
【0155】
連続的稼働モードでのウイルスの不活化のために、連続的ウイルス不活化反応器(CVIR)を使用した。反応器体積(VR)はEV1%に等しく、滞留時間分析によって評価した。30分および60分のインキュベーション時間を付与するために、反応器を設計し、稼働した。前CVIR体積はCVIR体積と比べて小さく、滞留時間分布分析では考慮されなかった。
【0156】
連続的ウイルス不活化のために使用された装置が、前実施例の
図24に図示されている。本実施例では、試験項目(プロセス中間物に対する代替物(surrogate))およびS/D試薬を送り出すために2つのポンプを使用した。2つの流れはライン内ミキサーで合流し、ここで均質化される。均質化されたら、単一の流れがさらにCVIRを通して送り出され、ここで、ウイルス不活化が連続的に起こった。
【0157】
CVIRは、200μm~400μmの範囲の直径を有し、300μmの平均直径を有するポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)球形非多孔質ビーズが充填された円筒形の管であった。反応器は、特注製の振動援用充填ステーションを用いて充填した。充填は、132mmの充填された高さと10.66±0.06mLの空隙体積を有する反応器をもたらした。10cm/時間でのボーデンシュタイン数は、875より大きかった。10cm/時間でのEV1/EV50は0.882であったので、CVIR体積は9.40±0.15mLであると計算された。
【0158】
CVIRの入口および出口における流量は、インキュベーション時間が30分および60分となるような流量であり、CVIR内部において、それぞれ、4.68および9.35cm/時間の線速度をもたらした。
【0159】
このプロセスは、2反応器体積(V
R)の稼働前に定常状態を達成し、2V
Rにおいて、この系は既に定常状態であった。前実施例の
図25に示されているように、出口でのS/D成分の濃度が入口と同じ濃度に達したら、系は定常状態を達成した。CVIプロセスは、CVIR内部の液相の置き換えのために、潜時(latency phase)および定常状態の遅延した開始を示したが、これは、S/D成分のいずれをも含有せず、このため、ウイルス不活化が起こらず、または限定されたウイルス不活化が起こった。
【0160】
試験項目は、生物医薬品の例としてヒト血清アルブミンを有する産業上妥当な(industry-relevant)緩衝液からなった。本実施例における試験項目は、生物医薬品の製造のためのプロセスにおけるプロセス中間物の主要な特性(pH、伝導率、総タンパク質)を再現する。関連するガイドランに従い、当業者によって、添加された試験項目にあらかじめBVDVを添加した。
【0161】
S/D試薬は、溶媒とウイルス不活化効果を有する界面活性剤の混合物であった。本実施例では、Triton X-100(TX-100)、ポリソルベート80(PS80)およびリン酸トリ-n-ブチル(TnBP)を使用した。CVIインキュベーションの間に、0.0473%(w/w)TX-100、0.0144%(w/w)PS80および0.0131%(w/w)TnBPの目標濃度を達成するために、S/D試薬をミキサーにおいて希釈した。
【0162】
最初のウイルス力価を確立するために、CVI実験を開始する前に、添加された試験項目の試料を取り出した。1、2、3、4および5VRにおいて、CVIRの出口における流れを採取した。ウイルス不活化プロセスを停止させるために、出口試料を直ちに20倍希釈し、CVIプロセス後の力価を確立するために、ウイルス力価に関して直ちに滴定した。ホールドコントロール(HC)としての役割を果たすために、CVI実験完了後に、添加された試験項目の試料を取り出した。
【0163】
ウイルス不活化は、前実施例の式1におけるように、対数減少値(LRV)を計算することによって測定された。希釈係数は、S/D試薬の流れによる、添加された試験項目の流れの希釈を考慮する役割を果たす。力価出口は、ウイルス不活化を停止する希釈に関して補正した。
【0164】
図29には、30分および60分インキュベーションCVIプロセス後におけるBVDV力価プロファイルが図示されている。稼働が定常状態に達した時点で、インキュベーション時間に関わらず、BVDVは、CVIRの入口での7.9E+5TCID
50/mL以上からCVIRの出口での2.5E+2TCID
50/mL以下へ低下した。定常状態に達する前に、すなわち、1V
Rにおいて、5.0E+2TCID
50/mL以下のBVDV力価は、定常状態相において達成された力価より高かった。この差は、上述したように、1V
Rでの、目標濃度を下回るS/D成分の濃度によって説明することができる。
【0165】
定常状態(2V
R以降)になると、30分のインキュベーション時間に関しては、4.5以上のLRVが、60分のインキュベーション時間に関しては、4.9以上のLRVが観察された(
図30)。30分のインキュベーションに関して、ホールドコントロールは、1log
10を下回るウイルスの低下を示した-当業者によって有意と考えられ、産業関連ガイドラインにおいて許容される最小の差の値である。60分のインキュベーションについては、ホールドコントロールは1log
10を上回るウイルスを示したが、これは、実験の持続時間によって説明することができる。30分CVI実験については、添加された試験項目が調製されてから約150分(5×30分)後に、ホールドコントロールが回収されたのに対して、60分CVI実験については、添加された試験項目が調製されてから約300分(5×30分)後にホールドコントロールが回収された。したがって、ホールドコントロールの試料で観察されたウイルス低下は、添加された試験項目の生理化学的条件(pH、塩、緩衝液、温度、・・・)への延長された曝露によって説明することができる。60分の実験でHCにおいて観察されたウイルス低下に関わらず、ウイルス不活化は、2V
Rで観察されたように、30分CVI実験でのHC試料採取のために経過した時間である添加された試験項目の調製から150分後より前に起こったS/D成分との接触によるものであったことが明らかである。
【0166】
比較のために、産業関連ガイドラインに従って、当業者によってバッチ実験が行われた。(
図31に示されている)伝統的なバッチから得られたデータは、60分のインキュベーション時間での3.5~3.7のLRVを示しているが、これは、連続的稼働モードでのCVIRで得られたものと同等である。この直接の比較は、CVIRを用いた連続的ウイルス不活化は伝統的なバッチ稼働と同程度に効果的であることを示している。
【0167】
本発明による連続的ウイルス不活化は、連続的に実施できるというさらなる利点を与えながら、バッチモードでのウイルスの不活化という理想的な不活化条件と同程度に効果的であるので(例えば、狭い滞留時間分布のために、混合物の全ての部分について本質的に滞留時間が等しく、混合物の全ての部分に効率的なウイルスの不活化をもたらす)、これは、本発明による連続的ウイルス不活化が極めて有利であることを示している。
【0168】
ウイルス不活化実施例において使用された条件は本発明の範囲を限定するものではないことが当業者によって理解されるであろう。例えば、200~400μmの範囲の直径を有し、300μmの平均直径を有するポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)球形非多孔質ビーズが例として使用されたが、複数の相互接続されたチャンネルを有するあらゆる構造、例えば、非多孔質ビーズが充填されたあらゆるカラムを本発明に従って使用することができる。同様に、特注製の振動援用充填ステーションを用いて充填された円筒形の管が132mmの充填された高さ、10.66±0.06mLの空隙体積および9.40±0.15mLのCVIR体積を有するCVIRとして使用されたが、本発明によって定義されたその他のあらゆるCVIRを使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明の方法、プロセスおよび生成物は、産業的な製造プロセスにおける物質のインキュベーションのために有用である。例えば、本発明は、生物医薬の産業的製造のために使用することができる。このため、本発明は、産業的に利用可能である。
【0170】
参考文献
(1) WO 2015 158776 A1
(2) Klutz S, Kurt SK, Lobedann M, Kockmann N. Narrow residence time distribution in tubular reactor concept for Reynolds number range of 10-100. Chem Eng Res Des 2015; 95:22-33.
(3) Klutz S, Lobedann M, Bramsiepe C, Schembecker G. Continuous viral inactivation at low pH value in antibody manufacturing. Chemical Engineering and Processing: Process Intensification 2016; 102:88-101.
(4) WO 2015135844 A1
(5) Kateja N, Agarwal H, Saraswat A, Bhat M, Rathore AS. Continuous precipitation of process related impurities from clarified cell culture supernatant using a novel coiled flow inversion reactor (CFlR). Biotechnology Journal 2016.
(6) EP 3 088 006 A1
(7) Wold, S. Wold, S., Sjoestroem, M., Eriksson, L., PLS-regression: a basic tool of chemometrics. Chemometrics and Intelligent Laboratory Systems 2001, 58, 109-130.
(8) Levenspiel, Chemical Reaction Engineering, 3rd ed., John Wiley & Sons, 1999