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特許7218710レーザー表面検査装置の座標位置特定精度校正方法および半導体ウェーハの評価方法
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  • 特許-レーザー表面検査装置の座標位置特定精度校正方法および半導体ウェーハの評価方法 図1
  • 特許-レーザー表面検査装置の座標位置特定精度校正方法および半導体ウェーハの評価方法 図2
  • 特許-レーザー表面検査装置の座標位置特定精度校正方法および半導体ウェーハの評価方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-30
(45)【発行日】2023-02-07
(54)【発明の名称】レーザー表面検査装置の座標位置特定精度校正方法および半導体ウェーハの評価方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20230131BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20230131BHJP
   G01N 21/93 20060101ALI20230131BHJP
   G01B 11/30 20060101ALI20230131BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20230131BHJP
   G02B 21/00 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G01N21/956 A
G01N21/93
G01B11/30 A
G02B21/06
G02B21/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019202182
(22)【出願日】2019-11-07
(65)【公開番号】P2021077732
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】森 敬一朗
(72)【発明者】
【氏名】長澤 崇裕
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-222575(JP,A)
【文献】特開平08-220005(JP,A)
【文献】特開2015-069678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01N 21/956
G01N 21/93
G01B 11/30
G02B 21/06
G02B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェーハを回転させながらウェーハ表面にレーザー光を入射させて走査することによって前記表面のLPDを検出するレーザー表面検査装置の座標位置特定精度校正方法であって、
リファレンスウェーハの表面のCOPを、校正対象のレーザー表面検査装置と、前記COPのX座標位置およびY座標位置を二次元直交座標系により求める校正用装置と、によりそれぞれ検出すること、
リファレンスウェーハの表面における校正対象のレーザー表面検査装置によって求められた検出位置と校正用装置によって求められた検出位置との位置の違いが閾値範囲内であることを、各装置によって検出されたCOPが同一COPであると判定する判定基準として、校正対象のレーザー表面検査装置と校正用装置とによって同一COPとして検出されたCOPを決定すること、ならびに、
同一COPと決定されたCOPのX座標位置およびY座標位置として、校正用装置により求められたX座標位置およびY座標位置を真値として採用し、校正対象のレーザー表面検査装置の座標位置特定精度を校正すること、
を含み、
前記座標位置特定精度の校正は、
校正対象のレーザー表面検査装置によって求められたX座標位置およびY座標位置の補正値を決定することを含み、
校正用装置によって求められたX座標位置X およびY座標位置Y 、校正対象のレーザー表面検査装置によって求められたX座標位置X およびY座標位置Y から、座標位置ズレ距離を、下記式:
X座標位置ズレ距離=(X -X
Y座標位置ズレ距離=(Y -Y
により算出することを、同一COPと決定された複数のCOPについて行い、
前記複数のCOPについて求められたX座標位置ズレ距離の代表値およびY座標位置ズレ距離の代表値を、前記補正値として採用する、
レーザー表面検査装置の座標位置特定精度校正方法。
【請求項2】
前記位置の違いが閾値範囲内であることは、下記式1:
【数1】
により求められる位置ズレ量が閾値以下であることであり、式1中、XおよびYは、校正用装置によって求められたX座標位置およびY座標位置であり、XおよびYは、校正対象のレーザー表面検査装置によって求められたX座標位置およびY座標位置である、請求項1に記載のレーザー表面検査装置の座標位置特定精度校正方法。
【請求項3】
前記校正用装置は、共焦点レーザー顕微鏡を搭載した表面欠陥検査装置である、請求項1または2に記載のレーザー表面検査装置の座標位置特定精度校正方法。
【請求項4】
半導体ウェーハの評価方法であって、
半導体ウェーハを回転させながらウェーハ表面にレーザー光を入射させて走査することによって前記表面のLPDを検出するレーザー表面検査装置の座標位置特定精度を、請求項1~のいずれか1項に記載のレーザー表面検査装置の座標位置特定精度校正方法によって校正すること、
前記校正後のレーザー表面検査装置において、評価対象の半導体ウェーハを回転させながらウェーハ表面にレーザー光を入射させて走査することによって評価対象の半導体ウェーハの表面のLPDを検出すること、
前記検出されたLPDについて、顕微鏡による形態観察を行うこと、
を含み、
前記形態観察の観察位置決めにおいて、前記校正後のレーザー表面検査装置によって決定されたX座標位置およびY座標位置を採用する、半導体ウェーハの評価方法。
【請求項5】
前記顕微鏡は、原子間力顕微鏡または走査電子顕微鏡である、請求項に記載の半導体ウェーハの評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー表面検査装置の座標位置特定精度校正方法および半導体ウェーハの評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハの欠陥や表面に付着した異物の評価方法として、レーザー表面検査装置で検出される輝点(LPD;Light Point Defect)に基づく方法が広く用いられている(例えば特許文献1、2参照)。この評価方法は、評価対象の半導体ウェーハの表面に光を入射させ、この表面からの放射光(散乱光および反射光)を検出することにより、半導体ウェーハの欠陥・異物の有無やサイズを評価する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-39374号公報
【文献】特開2018-6658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体ウェーハの欠陥や表面に付着した異物は、半導体ウェーハを基板として作製されるデバイスの特性に影響を及ぼす。したがって、優れた特性を有するデバイスを提供するためには、レーザー表面検査装置によってLPDとして検出された欠陥や表面に付着した異物を、顕微鏡を備えた装置を用いて形態観察し、この観察結果に基づき発生原因を特定することが望ましい。しかしながら、顕微鏡の観察視野は、通常、数百nm~数十μmであるため、レーザー表面検査装置によるLPDの検出精度が低いと、観察対象のLPDが顕微鏡の視野から外れてしまったり、または観察対象とは別のLPDを顕微鏡により観察してしまうことにより、観察すべきLPDの形態観察が困難となってしまう。
【0005】
以上に鑑み、本発明の一態様は、レーザー表面検査装置によるLPDの検出精度を高めるための新たな手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
半導体ウェーハを回転させながらウェーハ表面にレーザー光を入射させて走査することによって上記表面のLPDを検出するレーザー表面検査装置の座標位置特定精度校正方法であって、
リファレンスウェーハの表面のCOP(Crystal Originated Particle)を、校正対象のレーザー表面検査装置と、上記COPのX座標位置およびY座標位置を二次元直交座標系により求める校正用装置と、によりそれぞれ検出すること、
リファレンスウェーハの表面における校正対象のレーザー表面検査装置によって求められた検出位置と校正用装置によって求められた検出位置との位置の違いが閾値範囲内であることを、各装置によって検出されたCOPが同一COPであると判定する判定基準として、校正対象のレーザー表面検査装置と校正用装置とによって同一COPとして検出されたCOPを決定すること、ならびに、
同一COPと決定されたCOPのX座標位置およびY座標位置として、校正用装置により求められたX座標位置およびY座標位置を真値として採用し、校正対象のレーザー表面検査装置の座標位置特定精度を校正すること、
を含む、レーザー表面検査装置の座標位置特定精度校正方法(以下、単に「校正方法」とも記載する。)、
に関する。
【0007】
先に示した特開2016-39374号公報(特許文献1)、特開2018-6658号公報(特許文献2)には、レーザー表面検査装置によって特定されるLPDの座標位置を校正すべきことは何ら記載されていない。
これに対し、本発明者は検討を重ねる中で、レーザー表面検査装置には、半導体ウェーハを回転させながらウェーハ表面にレーザー光を入射させて走査することによって、ウェーハ表面のLPDを迅速に検出できるという利点があるものの、レーザー表面検査装置により求められるLPDの検出位置についてはウェーハ回転方向(円周方向)のズレが大きい、即ちLPDの位置を特定する精度が低い、と考えるに至った。本発明者は、このことがレーザー表面検査装置のLPDの検出精度が低い原因と考え、更に鋭意検討を重ねた結果、レーザー表面検査装置によって特定されるLPDの座標位置を、二次元直交座標系を採用する測定装置を校正用装置として校正することを含む上記校正方法を新たに見出した。
【0008】
一形態では、上記の位置の違いが閾値範囲内であることは、下記式1:
【数1】
により求められる位置ズレ量が閾値以下であることをいうことができる。式1中、XおよびYは、校正用装置によって検出された検出位置のX座標位置およびY座標位置であり、XおよびYは、校正対象のレーザー表面検査装置によって検出された検出位置のX座標位置およびY座標位置である。
【0009】
一形態では、上記校正用装置は、共焦点レーザー顕微鏡を搭載した表面欠陥検査装置であることができる。
【0010】
一形態では、上記の座標位置特定精度の校正は、校正対象のレーザー表面検査装置によって検出された検出位置のX座標位置およびY座標位置の補正値を決定することを含むことができる。
【0011】
また、本発明の一態様は、
半導体ウェーハの評価方法であって、
半導体ウェーハを回転させながらウェーハ表面にレーザー光を入射させて走査することによって上記表面のLPDを検出するレーザー表面検査装置の座標位置特定精度を、上記校正方法によって校正すること、
上記校正後のレーザー表面検査装置において、評価対象の半導体ウェーハを回転させながらウェーハ表面にレーザー光を入射させて走査することによって評価対象の半導体ウェーハの表面のLPDを検出すること、
上記検出されたLPDについて、顕微鏡による形態観察を行うこと、
を含み、
上記形態観察の観察位置決めにおいて、上記校正後のレーザー表面検査装置によって決定されたX座標位置およびY座標位置を採用する、半導体ウェーハの評価方法(以下、単に「評価方法」とも記載する。)、
に関する。
【0012】
一形態では、上記顕微鏡は、原子間力顕微鏡または走査電子顕微鏡であることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、レーザー表面検査装置によるLPDの座標位置特定精度を高めることができる。更に、これによりLPDとして検出された欠陥や異物の顕微鏡による形態観察を容易にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例においてKLA TENCOR社製SurfscanシリーズSP5とレーザーテック社製MAGICS(M5640)とにより同一COPと決定されたCOPの面内分布を示す。
図2】実施例においてKLA TENCOR社製SurfscanシリーズSP5とレーザーテック社製MAGICS(M5640)とにより同一COPと決定されたCOPについて、SP5測定によるサイズ分布を示す。
図3】実施例において得られた、同一COPと決定されたCOPについて真値として決定された座標位置とKLA TENCOR社製SurfscanシリーズSP2により検出された座標位置との座標位置ズレ距離のヒストグラムである。
図4】実施例における顕微鏡観察結果を示す。
図5】比較例における顕微鏡観察結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[レーザー表面検査装置の座標位置特定精度校正方法]
本発明の一態様は、半導体ウェーハを回転させながらウェーハ表面にレーザー光を入射させて走査することによって上記表面のLPDを検出するレーザー表面検査装置の座標位置特定精度校正方法であって、リファレンスウェーハの表面のCOPを、校正対象のレーザー表面検査装置と、上記COPのX座標位置およびY座標位置を二次元直交座標系により求める校正用装置と、によりそれぞれ検出すること(以下、「COP検出工程」とも記載する。)、リファレンスウェーハの表面における校正対象のレーザー表面検査装置によって求められた検出位置と校正用装置によって求められた検出位置との位置の違いが閾値範囲内であることを、各装置によって検出されたCOPが同一COPであると判定する判定基準として、校正対象のレーザー表面検査装置と校正用装置とによって同一COPとして検出されたCOPを決定すること(以下、「同一COP決定工程」とも記載する。)、ならびに、同一COPと決定されたCOPのX座標位置およびY座標位置として、校正用装置により求められたX座標位置およびY座標位置を真値として採用し、校正対象のレーザー表面検査装置の座標位置特定精度を校正すること(以下、「校正工程」とも記載する。)、を含む、レーザー表面検査装置の座標位置特定精度校正方法に関する。
以下、上記校正方法について、更に詳細に説明する。
【0016】
<校正対象のレーザー表面検査装置>
上記校正方法により座標位置特定精度の校正が行われる校正対象装置は、半導体ウェーハを回転させながらウェーハ表面にレーザー光を入射させて走査することによってウェーハ表面のLPDを検出するレーザー表面検査装置である。かかるレーザー表面検査装置は、光散乱式表面検査装置、面検機、パーティクルカウンター等とも呼ばれる公知の構成のレーザー表面検査装置であることができる。レーザー表面検査装置は、通常、評価対象の半導体ウェーハの表面をレーザー光によって走査し、放射光(散乱光または反射光)によってウェーハ表面の欠陥・異物をLPDとして検出する。また、LPDからの放射光を測定することにより、欠陥・異物のサイズや位置を認識することができる。レーザー光としては、紫外光、可視光等を用いることができ、その波長は特に限定されるものではない。紫外光とは、400nm未満の波長域の光をいい、可視光とは、400~600nmの波長域の光をいうものとする。レーザー表面検査装置の解析部は、通常、標準粒子のサイズと標準粒子によりもたらされるLPDのサイズとの相関式に基づき、レーザー表面検査装置により検出されたLPDのサイズを欠陥・異物のサイズに変換する。このような変換を行う解析部は、通常、変換ソフトを搭載したPC(Personal Computer)を含み、解析部の構成は公知である。市販されているレーザー表面検査装置の具体例としては、KLA TENCOR社製SurfscanシリーズSP1、SP2、SP3、SP5等を挙げることができる。ただしこれら装置は例示であって、その他のレーザー表面検査装置も使用可能である。レーザー表面検査装置では、LPDとして検出される欠陥・異物の位置を決定するための座標系として、通常、極座標系を採用し、極座標系で決定された位置を二次元直交座標系へ変換してLPDのX座標位置およびY座標位置を求めている。
【0017】
<校正用装置>
上記レーザー表面検査装置は、半導体ウェーハを回転させながら得られた情報に基づきLPDを特定するため、先に記載したように、検出されるLPDの座標位置について、特にウェーハ回転方向、つまり円周方向のズレが大きくなると考えられる。これに対し、上記校正方法では、検出される欠陥・異物の位置、即ちX座標位置およびY座標位置を二次元直交座標系により求める装置を校正用装置として使用する。本発明および本明細書において、「X座標位置およびY座標位置を二次元直交座標系により求める装置」および「二次元直交座標系を採用する装置」とは、他の座標系からの変換を経ることなく、X座標位置およびY座標位置を二次元直交座標系により求める装置をいうものとする。このように二次元直交座標系を採用する校正用装置を使用して校正対象のレーザー表面検査装置の座標位置特定精度を校正することによって、レーザー表面検査装置によるLPDの検出精度、詳しくは位置の特定精度、を向上させることができる。
【0018】
上記校正用装置としては、二次元直交座標系を採用する各種装置を使用することができる。具体例としては、共焦点レーザー顕微鏡を搭載した表面欠陥検査装置、AFM(原子間力顕微鏡)、SEM(走査電子顕微鏡)等を挙げることができる。校正対象であるレーザー表面検査装置と同等の面積を走査できるという観点から、校正用装置としては、共焦点レーザー顕微鏡を搭載した表面欠陥検査装置が好ましい。共焦点レーザー顕微鏡を搭載した表面欠陥検査装置の具体的な装置としては、例えば、レーザーテック社製ウェーハ欠陥検査/レビュー装置MAGICSを挙げることができる。
【0019】
<リファレンスウェーハ>
上記校正方法では、校正対象のレーザー表面検査装置の座標位置特定精度の校正のために、リファレンスウェーハとして、表面にCOPを有するウェーハを使用する。COPは、通常サイズが10nm程度~数百nm程度(例えば10nm程度~500nm程度)であり、レーザー表面検査装置によって1つのLPDとして検出できる。また、共焦点レーザー顕微鏡を搭載した表面欠陥検査装置等の校正用装置として使用可能な各種装置によっても1つのLPDとして検出することができる。更に、COPは、空洞欠陥であるため、パーティクルのように発塵して装置内を汚染する懸念がない点でも好ましい。リファレンスウェーハは、例えばシリコンウェーハ等の半導体ウェーハであることができ、その作製方法としては公知の方法を採用できる。作製方法については、例えば、特開2018-6658号公報(特許文献2)の段落0031~~0049、図1および図2を参照できる。
【0020】
次に、上記校正方法に含まれる「COP検出工程」、「同一COP決定工程」および「校正工程」について説明する。
【0021】
<COP検出工程>
COP検出工程では、同一のリファレンスウェーハ表面について、校正対象のレーザー表面検査装置および校正用装置によって、それぞれCOPの検出を行う。COPの検出は、各装置について欠陥・異物の検出のために通常採用される測定条件を採用して実施することができる。
【0022】
<同一COP決定工程>
先に記載したように、レーザー表面検査装置によって求められる座標位置はズレが大きいと考えられ、ある1つの同一のCOPについて、レーザー表面検査装置により求められる座標位置と、二次元直交座標系を採用する校正用装置により求められる座標位置とは、通常相違する。上記校正方法では、校正用装置により求められた座標位置を真値として採用するために、校正対象のレーザー表面検査装置によって検出されたCOPの中から、校正用装置によって検出されたCOPと同一COPと判定されるCOPを決定すること(同一COP決定工程)が行われる。
【0023】
同一COP決定工程では、リファレンスウェーハの表面における校正対象のレーザー表面検査装置によって求められた検出位置と校正用装置によって求められた検出位置との位置の違いが閾値範囲内であることを、各装置によって検出されたCOPが同一COPであると判定する判定基準として、校正対象のレーザー表面検査装置と校正用装置とによって同一COPとして検出されたCOPを決定することができる。
【0024】
上記の位置の違いについては、一形態では、下記式1:
【数2】
により求められる位置ズレ量を指標とすることができる。詳しくは、式1により求められる位置ズレ量が閾値以下であることをもって、上記の各装置によって検出されたCOPが同一COPであると判定することができる。式1中、XおよびYは、校正用装置によって求められたX座標位置およびY座標位置であり、XおよびYは、校正対象のレーザー表面検査装置によって求められたX座標位置およびY座標位置である。これらの点は、後述のX、Y、X、Yについても同様である。上記位置ズレ量の閾値は、例えば10μm~300μm程度の範囲に設定できる。ただし、上記位置ズレ量の閾値は、使用する装置の座標位置特定精度等を考慮して決定すればよく、上記で例示した範囲に限定されるものではない。位置ズレ量の閾値に基づく同一COPの決定は、例えば、公知の解析ソフトを使用して行うことができる。
また、他の一形態では、下記式2:
【数3】
により求められる位置ズレ量を指標とすることができる。詳しくは、式2により求められる位置ズレ量が閾値以下であることをもって、上記の各装置によって検出されたCOPが同一COPであると判定することができる。
また、更に他の一形態では、X座標位置について各装置により求められた検出位置の座標位置ズレ距離(例えば「X-X」もしくは「X-X」)のみ、Y座標位置について各装置により求められた検出位置の座標位置ズレ距離(例えば「Y-Y」もしくは「Y-Y」)のみ、またはX座標位置について各装置により求められた検出位置の座標位置ズレ距離およびY座標位置について各装置により求められた検出位置の座標位置ズレ距離を指標として、それらの座標位置ズレ距離の閾値を設定し、閾値以下であることをもって、校正対象のレーザー表面検査装置と校正用装置とによって同一COPとして検出されたCOPを決定することができる。
【0025】
以上により、リファレンスウェーハの表面のCOPについて、校正対象のレーザー表面検査装置および校正用装置の両装置により同一COPとして検出されたCOPを複数決定することができる。
【0026】
<校正工程>
以上のようにリファレンスウェーハの表面のCOPを異なる装置により検出し、両装置によってそれぞれ得られたCOPの検出結果から、同一COPを決定する。校正工程では、同一COPと決定されたCOPのX座標位置およびY座標位置として、校正対象のレーザー表面検査装置により求められた座標位置ではなく、校正用装置により求められたX座標位置およびY座標位置を真値として採用する。そして、この真値を使用して、校正対象のレーザー表面検査装置の座標位置特定精度を校正する。座標位置特定精度の校正の具体的形態としては、例えば、校正対象のレーザー表面検査装置によって求められた検出位置のX座標位置およびY座標位置の補正値を決定することを挙げることができる。補正値は、同一COPについて校正対象のレーザー表面検査装置により求められた座標と校正用装置により求められた座標位置(真値)との座標位置ズレ距離に基づき決定することができる。例えば、同一COPと決定されたある1つのCOPについて、校正用装置により求められたX座標位置XおよびY座標位置をY、校正対象のレーザー表面検査装置により求められたX座標位置XおよびY座標位置Yから、座標位置ズレ距離を、下記式:
X座標位置ズレ距離=(X-X
Y座標位置ズレ距離=(Y-Y
により算出することができる。例えば、複数のCOPについてX座標位置ズレ距離およびY座標位置ズレ距離を求め、それらの代表値(例えば、平均値、最頻値、中央値等)を補正値として採用することができる。補正値決定方法の具体例については、後述の実施例を参照できる。
【0027】
以上説明した校正方法によれば、レーザー表面検査装置によるLPDの座標位置特定精度を高めることが可能となる。
【0028】
[半導体ウェーハの評価方法]
本発明の一態様は、半導体ウェーハの評価方法であって、半導体ウェーハを回転させながらウェーハ表面にレーザー光を入射させて走査することによって上記表面のLPDを検出するレーザー表面検査装置の座標位置特定精度を、上記校正方法によって校正すること、上記校正後のレーザー表面検査装置において、評価対象の半導体ウェーハを回転させながらウェーハ表面にレーザー光を入射させて走査することによって評価対象の半導体ウェーハの表面のLPDを検出すること、上記検出されたLPDについて、顕微鏡による形態観察を行うこと、を含み、上記形態観察の観察位置決めにおいて、上記校正後のレーザー表面検査装置によって決定されたX座標位置およびY座標位置を採用する、半導体ウェーハの評価方法に関する。
以下、上記評価方法について、更に詳細に説明する。
【0029】
上記評価方法では、レーザー表面検査装置の座標位置特定精度を、先に詳述した校正方法によって校正する。その結果、校正後のレーザー表面検査装置によって、顕微鏡により形態観察すべき欠陥や異物の座標位置を精度よく決定することができる。
【0030】
上記評価方法において使用されるレーザー表面検査装置およびその座標位置特定精度の校正については、先に記載した通りである。また、校正後のレーザー表面検査装置による評価対象の半導体ウェーハの表面のLPDの検出についても、先の記載を参照できる。こうして校正後のレーザー表面検査装置によって、欠陥・異物がLPDとして検出され、その座標位置も特定される。
【0031】
次いで、検出されたLPDについて、顕微鏡による形態観察が行われる。この形態観察の観察位置決めにおいて、上記校正後のレーザー表面検査装置によって決定されたX座標位置およびY座標位置を採用することにより、形態観察すべき欠陥・異物を顕微鏡によって確認し、形態観察することができる。顕微鏡としては、形態観察可能な各種顕微鏡を使用することができる。具体例としては、例えば、AFM(原子間力顕微鏡)、SEM(走査電子顕微鏡)等を挙げることができる。また、SEMとして、SEM-EDS(Scanning Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy(走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法))を使用することにより、形態観察に加えて元素分析を行うこともできる。
【0032】
上記半導体ウェーハの評価方法により評価される半導体ウェーハとしては、シリコンウェーハ等の各種半導体ウェーハを挙げることができる。シリコンウェーハは、例えば単結晶シリコンウェーハであることができる。より詳しくは、単結晶シリコンウェーハに研磨処理が施されたポリッシュドウェーハ、単結晶シリコンウェーハにアニール処理により改質層を形成したアニールウェーハ、エピタキシャル層を単結晶シリコンウェーハ上に有するエピタキシャルウェーハ、熱酸化膜を有する単結晶シリコンウェーハ等の各種シリコンウェーハ等を挙げることができる。
【実施例
【0033】
以下に、本発明を実施例に基づき更に説明する。ただし、本発明は実施例に示す実施態様に限定されるものではない。
【0034】
以下では、レーザー表面検査装置としてKLA TENCOR社製SurfscanシリーズSP5またはKLA TENCOR社製SurfscanシリーズSP2を使用した。SP5およびSP2は、半導体ウェーハを回転させながらウェーハ表面にレーザー光を入射させて走査することによってウェーハ表面のLPDを検出するレーザー表面検査装置である。以下では、上記2種のレーザー表面検査装置を使用して、それぞれ、リファレンスウェーハの一方の表面の全域に入射光を走査してLPDとしてCOPを検出し、かつLPDのサイズに基づき、上記レーザー表面検査装置に備えられた解析部においてサイズ変換を行い、COPのサイズ(検出サイズ)を算出した。検出サイズについて、SP5の検出下限値は19nmとし、SP2の検出下限値は35nmとした。SP5およびSP2は、LPDとして検出される欠陥・異物の位置を決定するための座標系として、極座標系を採用し、極座標系で決定された位置を二次元直交座標系へ変換してLPDのX座標位置およびY座標位置を求める装置である。
【0035】
校正用装置としては、レーザーテック社製MAGICS(M5640)を使用した。MAGICSは、共焦点レーザー顕微鏡を搭載した表面欠陥検査装置(二次元直交座標系を採用する装置)である。
【0036】
(1)SP5およびMAGICSによるCOP検出結果の対比
リファレンスウェーハとして、ウェーハ全面にCOPが存在する単結晶シリコンウェーハを準備した。このウェーハは、COPが結晶径方向のほぼ全域に高密度に存在する結晶部位からスライスしたウェーハである。
上記リファレンスウェーハを既知の方法で洗浄した後、SP5およびMAGICSによる測定を実施した。
次に、SP5の座標位置データとMAGICSの座標位置データとを対比し、それぞれの装置で求められたCOPのX座標位置およびY座標位置から、先に示した式1により位置ズレ量を求めた。こうして求められた位置ズレ量が20μm以下であれば、そのCOPは同一のCOPであると判定した。
【0037】
上記測定により、SP5では約1万点、MAGICSでは約6万点のCOPが検出された。その内、同一COPと決定されたCOPは、約9800個であった(表1参照)。
【0038】
【表1】
【0039】
図1に、上記両装置で同一COPと決定されたCOPの面内分布を示す。また、図2に、上記両装置で同一COPと決定されたCOPのSP5測定によるサイズ分布を示す。
図1からは、ウェーハ全面に存在するCOPについて、同一COPであることの決定が可能であったことが確認できる。図2からは、様々なサイズのCOPについて、同一COPであることの決定が可能であったことが確認できる。
【0040】
(2)SP2(校正対象装置)の座標位置特定精度の校正
上記(1)で用いたリファレンスウェーハをSP2で測定した。
次に、上記真値として決定された座標データとSP2による座標データとを対比し、それぞれの装置で求められたCOPのX座標位置およびY座標位置から、先に示した式1により位置ズレ量を求めた。こうして求められた位置ズレ量が150μm以内であれば、そのCOPは同一のCOPであると判定した。
こうして同一COPと決定されたCOPについて、真値として決定された座標位置(即ちMAGICSで検出された位置座標)を(X,Y)とし、SP2で検出された座標を(X,Y)とし、X座標位置ズレ距離=X-X、Y座標位置ズレ距離=Y-Y、として、同一COPと決定された複数のCOPについて、それぞれ座標位置ズレ距離を算出した。X座標位置ズレ距離およびY座標位置ズレ距離のヒストグラムを、図3に示す。図3に示すヒストグラムの最頻値を補正値として採用し、X座標位置の補正値を「+60μm」、Y座標位置の補正値を「-10μm」と決定した。
【0041】
(3)顕微鏡による形態観察
リファレンスウェーハ表面において、SP2によりLPDとして検出されたCOPの1つについて得られた上記校正後のX座標およびY座標の位置を、AFMにより観察したところ、図4に示すように視野内にCOPを捉えることができ、その形態観察を行うことができた(実施例)。
これに対し、上記COPについて、SP2で検出された校正前のX座標およびY座標の位置を、AFMにより観察したところ、図5に示すようにCOPを確認することはできなかった(比較例)。
以上の結果は、上記校正によって、レーザー表面検査装置によるLPDの座標位置特定精度を高めることができたこと、更に、これによりレーザー表面検査装置で検出されたLPDを顕微鏡により形態観察することが可能になったことを示している。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の一態様は、シリコンウェーハ等の各種半導体ウェーハの技術分野において有用である。
図1
図2
図3
図4
図5