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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-31
(45)【発行日】2023-02-08
(54)【発明の名称】組成物及び絶縁部の形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/312 20060101AFI20230201BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20230201BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20230201BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230201BHJP
   H01B 3/44 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
H01L21/312 A
G03F7/038 501
G03F7/027
G03F7/20 521
H01B3/44 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019064574
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020167218
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 和明
(72)【発明者】
【氏名】鵜野 和英
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 有希
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-174374(JP,A)
【文献】特開2017-048285(JP,A)
【文献】特開平06-148884(JP,A)
【文献】特開2017-194677(JP,A)
【文献】特開2009-161725(JP,A)
【文献】国際公開第2018/212116(WO,A1)
【文献】特開2018-163207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/312
G03F 7/038
G03F 7/027
G03F 7/20
H01B 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属配線を有する電気・電子デバイスにおいて、前記金属配線を絶縁する絶縁部を形成するために用いられる組成物であって、
前記組成物が、下記式(a1)で表される基を有する樹脂(A)、ラジカル開始剤(C)及びラジカル重合性化合物(B)を含有し、
前記式(a1)で表される基が、前記樹脂(A)の主鎖及び/又は側鎖における、脂肪族炭化水素基中又は芳香族基中の炭素原子であって前記樹脂(A)の主鎖末端以外に位置する炭素原子に結合しており、
前記式(a1)で表される基が、下記式:
【化1】
(式(a1)中、Ra01及びRa02は、それぞれ水素原子である。)
で表される基である、組成物。
【請求項2】
前記主鎖が、(メタ)アクリル樹脂、又はポリスチレン系樹脂に由来する主鎖である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ラジカル開始剤(C)が、光ラジカル開始剤である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ラジカル重合性化合物(B)が、前記式(a1)で表される基を有するラジカル重合性化合物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
金属配線を有する電気・電子デバイス用の基板上の、少なくとも絶縁部が形成される位置に、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物を塗布又は充填することと、
塗布又は充填された組成物を露光することと、を含む絶縁部の形成方法。
【請求項6】
前記露光が位置選択的に行われ、
位置選択的に露光された組成物を現像液により現像することを含む、請求項に記載の絶縁部の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属配線を有する電気・電子デバイスにおいて、金属配線を絶縁する絶縁部を形成するために用いられる組成物及び絶縁部の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の通信機器では、高周波数化が進んでいる。そのため、通信機器が有する金属配線を絶縁する絶縁部にも高周波数化への対応が求められる。
ここで、周波数が高いほど伝送損失が増加し、伝送損失が増加すると電気信号が減衰する。したがって、高周波数化への対応として、伝送損失を低減することが求められる。
【0003】
伝送損失を低減するために、誘電率及び誘電正接が低い材料を用いて絶縁層を形成する技術が開示されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-87639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、特定構造の樹脂組成物、具体的には特許文献1に記載された式(1)で表される架橋成分を含有する樹脂組成物を用いた技術であり、その他の組成物を用いる技術が求められている。
なお、高周波数化への対応は、サーバー等のネットワーク関連の電子機器や、コンピュータ等の電子機器等、通信機器以外の電気・電子デバイスにおいても、同様に求められている。
【0006】
また、電気・電子デバイスの製造においては、組成物から絶縁部を形成した後に、加熱されてさらに配線等の部材を形成されることが多いため、絶縁部には耐熱性も求められている。
そして、組成物から絶縁部を形成する際に、塗布法によれば容易に絶縁部を形成できるため、組成物は、塗布法に適用できる、すなわち塗布法での成膜性に優れていることが望ましい。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、金属配線を有する電気・電子デバイスにおいて、該金属配線を絶縁する絶縁部を形成するために用いられる組成物であって、誘電率及び誘電正接が低く耐熱性に優れた絶縁部を形成することができ且つ成膜性に優れた組成物、及び、絶縁部の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、金属配線を有する電気・電子デバイスにおいて、金属配線を絶縁する絶縁部を形成する際に、下記式(a1)で表される基を特定の位置に有する樹脂(A)を含む組成物が、誘電率及び誘電正接が低く耐熱性に優れた絶縁部を形成することができ、且つ、成膜性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の第1の態様は、金属配線を有する電気・電子デバイスにおいて、金属配線を絶縁する絶縁部を形成するために用いられる組成物であって、
組成物が、下記式(a1)で表される基を有する樹脂(A)を含有し、
式(a1)で表される基が、樹脂(A)の主鎖及び/又は側鎖における、脂肪族炭化水素基中又は芳香族基中の炭素原子であって樹脂(A)の主鎖末端以外に位置する炭素原子に結合しており、
式(a1)で表される基が、下記式:
【化1】
(式(a1)中、Ra01及びRa02は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル基または炭素原子数6以上12以下のアリール基である。)
で表される基である、組成物である。
【0010】
本発明の第2の態様は、金属配線を有する電気・電子デバイス用の基板上の、少なくとも絶縁部が形成される位置に、第1の態様にかかる組成物を塗布又は充填することと、
塗布又は充填された組成物を露光することと、を含む絶縁部の形成方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、金属配線を有する電気・電子デバイスにおいて、該金属配線を絶縁する絶縁部を形成するために用いられる組成物であって、誘電率及び誘電正接が低く耐熱性に優れた絶縁部を形成することができ且つ成膜性に優れた組成物、及び、絶縁部の形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】保護体1の13C NMR測定結果を示す図である。
図2】樹脂P1の13C NMR測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
≪組成物≫
組成物は、金属配線を有する電気・電子デバイスにおいて、金属配線を絶縁する絶縁部を形成するために用いられる。
電気・電子デバイスは、特に限定されず、携帯電話等の通信機器、サーバー等のネットワーク関連の電子機器や、コンピュータ等の電子機器等、特にはこれらの機器が有する半導体部品、具体的には、ウェハレベルパッケージと称される半導体パッケージが挙げられる。
これらの電気・電子デバイスは、銅等の金属や合金からなる金属配線を、電気・電子デバイス用の基板上に有する。金属配線を有する電気・電子デバイス用の基板としては、シリコン基板や、シリコン基板上に種々の層や部材が設けられたものが挙げられる。
この金属配線と他の金属配線や導電部材とを、本発明の組成物により形成される絶縁部で絶縁する。
後述する成分を含む組成物を用いることにより、誘電率及び誘電正接(tanδ)が低い絶縁部を形成できる。このため、後述する成分を含む組成物は、高周波数の信号を用いる電気・電子デバイスの金属配線を絶縁する絶縁部に好適である。なお、本明細書において、「高周波数」とは、3GHz以上の周波数を意味する。
また、上記の組成物は、耐熱性に優れた絶縁部を形成できるため、例えば、組成物により絶縁部を形成した後に加熱により他部材を形成する電気・電子デバイスに用いることができる。
また、本発明の組成物は、塗布法での成膜性に優れている、すなわち、塗布法で成膜したときに、クラック及び結晶の発生がなく、タック(べたつき)がなく、成分の相溶性もよいため、容易な方法である塗布法で絶縁部を形成することができる。
以下、本発明の組成物について、詳細に説明する。
【0014】
<樹脂(A)>
組成物は、下記式(a1)で表される基を有する樹脂(A)を含有する。そして、下記式(a1)で表される基は、樹脂(A)の主鎖及び/又は側鎖における、脂肪族炭化水素基中又は芳香族基中の炭素原子であって樹脂(A)の主鎖末端以外に位置する炭素原子に結合している。
【化2】
(式(a1)中、Ra01及びRa02は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル基または炭素原子数6以上12以下のアリール基である。)
【0015】
式(a1)中のRa01及びRa02としての炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基が挙げられる。
式(a1)中のRa01及びRa02としての炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
式(a1)中のRa01及びRa02としての炭素原子数6以上12以下のアリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、1-ナフチル基及び2-ナフチル基が挙げられる。
式(a1)中のRa01及びRa02は、いずれも水素原子であることが好ましい。Ra01及びRa02がいずれも水素原子であると、重合性に優れるため、硬化性に優れた組成物とすることができる。Ra01及びRa02がいずれも水素原子の場合は、式(a1)で表される基は、無置換のマレイミド基となる。
【0016】
組成物が含有する樹脂(A)において、上記式(a1)で表される基が、樹脂(A)の主鎖及び/又は側鎖における、脂肪族炭化水素基中又は芳香族基中の炭素原子であって、樹脂(A)の主鎖末端以外に位置する炭素原子に、結合している。すなわち、樹脂(A)は、樹脂の、主鎖及び/又は側鎖における、脂肪族炭化水素基中又は芳香族基中の炭素原子であって、樹脂(A)の主鎖末端以外に位置する炭素原子に結合する水素原子が、式(a1)で表される基で置換された構造である。
この樹脂としては、不飽和二重結合を有する単量体の重合体が挙げられる。かかる樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂や、ポリスチレン系樹脂が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の両者を意味する。
「(メタ)アクリル樹脂」とは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、及びN置換体であってもよい(メタ)アクリルアミドからなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む樹脂である。(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル及びN置換体であってもよい(メタ)アクリルアミド以外の単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
「ポリスチレン系樹脂」とは、スチレン及び/又はスチレン誘導体に由来する構成単位を含む樹脂である。
本出願の明細書では、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、及びN置換体であってもよい(メタ)アクリルアミドからなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位と、スチレン及び/又はスチレン誘導体に由来する構成単位とを含む樹脂について、便宜的に、(メタ)アクリル樹脂として扱う。
なお、本明細書において、「側鎖」とは主鎖から枝分かれしている分子鎖を意味する。例えば、樹脂が(メタ)アクリル樹脂の場合は、(メタ)アクリル樹脂の単量体のα炭素に結合している、カルボキシ基、エステル基、N置換されていてもよいアミド基や、メチル基は、側鎖である。樹脂がスチレン系樹脂の場合は、スチレン系樹脂の単量体の炭素-炭素二重結合に由来する炭素原子に結合するフェニル基や、その誘導体は、側鎖である。
【0017】
樹脂(A)において、上記式(a1)で表される基が、樹脂(A)の主鎖及び/又は側鎖における、脂肪族炭化水素基中又は芳香族基中の炭素原子であって、樹脂(A)の主鎖末端以外に位置する炭素原子に、結合しているため、式(a1)で表される基は、樹脂(A1)の側鎖の少なくとも一部である。
例えば、樹脂(A)の主鎖における、脂肪族炭化水素基中又は芳香族基中の炭素原子であって、樹脂(A)の主鎖末端以外に位置する炭素原子に、上記式(a1)で表される基が結合している場合は、樹脂(A)は主鎖中に脂肪族炭化水素基又は芳香族基を有する構造であり、この主鎖中の脂肪族炭化水素基又は芳香族基中の炭素原子に式(a1)で表される基が結合しているため、式(a1)で表される基は、樹脂(A1)の側鎖になる。
また、樹脂(A)の側鎖における、脂肪族炭化水素基中又は芳香族基中の炭素原子に、上記式(a1)で表される基が結合している場合は、樹脂(A)は側鎖中に脂肪族炭化水素基又は芳香族基を有する構造であり、この側鎖中の脂肪族炭化水素基又は芳香族基中の炭素原子に式(a1)で表される基が結合しているため、式(a1)で表される基は、樹脂(A1)の側鎖の一部になる。
【0018】
なお、樹脂(A)において、樹脂(A)の主鎖及び/又は側鎖における、脂肪族炭化水素基中又は芳香族基中の炭素原子であって、樹脂(A)の主鎖末端以外に位置する炭素原子に、上記式(a1)で表される基が結合していればよい。さらに、樹脂(A)の主鎖末端に位置する炭素原子に上記式(a1)で表される基が結合していてもよい。なお、樹脂(A)の主鎖末端に位置する炭素原子にのみ上記式(a1)で表される基が結合していても、後述する比較例に示すように形成される絶縁部の耐熱性が悪く、金属配線を有する電気・電子デバイスにおいて金属配線を絶縁する絶縁部として用い難い。
また、式(a1)で表される基は、樹脂の構成単位中に含まれていることが好ましい。
【0019】
樹脂(A)の主鎖は、(メタ)アクリル樹脂に由来する主鎖、又は、ポリスチレン系樹脂に由来する主鎖であることが好ましい。(メタ)アクリル樹脂やポリスチレン系樹脂は、誘電率や誘電正接が低いため、主鎖が、(メタ)アクリル樹脂に由来する主鎖、又は、ポリスチレン系樹脂に由来する主鎖であると、形成される絶縁部の誘電率や誘電正接をより低減することができる。
【0020】
樹脂(A)の分子量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、質量平均分子量(Mw)が4000以上であることが好ましく、5000以上であることがより好ましく、1万以上であることがさらに好ましい。樹脂(A)の分子量は、質量平均分子量(Mw)として、10万以下であることが好ましく、8万以下がより好ましい。
本明細書において質量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)のポリスチレン換算による測定値である。
【0021】
このように、式(a1)で表される基を特定の位置に有する上記樹脂(A)は、脂肪族炭化水素基又は芳香族基中の炭素原子に結合し且つ樹脂の側鎖に位置するマレイミド基等の式(a1)で表される基を有し、式(a1)で表される基がラジカル重合性基となるため、露光や加熱して重合することにより、低誘電率で、低誘電正接であり、且つ耐熱性に優れた絶縁部を形成することができる。例えば、形成される絶縁部の誘電率を、3.00未満にすることができる。また、形成される絶縁部の誘電正接を、0.01未満とすることができる。また、形成される絶縁部のガラス転移温度(Tg)を150℃以上とすることができる。
また、上記樹脂(A)を含む組成物は、塗布法での成膜性に優れている、すなわち、塗布法で成膜したときに、クラック及び結晶の発生がなく、タック(べたつき)がなく、成分の相溶性もよい。したがって、容易な方法である塗布法で絶縁部を形成することができる。
【0022】
そして、上記樹脂(A)は溶剤溶解性に優れている。したがって、樹脂(A)を含む組成物は、ネガ型組成物として、該溶剤による現像プロセスに適用可能である。
特に、上記樹脂(A)は、その構造にも依るが、アルカリ性水溶液に可溶である場合がある。例えば、樹脂(A)がカルボキシ基やフェノール性水酸基等のアルカリ可溶性基を有する場合である。このようなアルカリ可溶性の樹脂(A)を含む組成物は、ネガ型組成物として、アルカリ現像プロセスに適用可能である。
また、上記樹脂(A)を含む組成物は、露光が位置選択的に行われる選択的な露光により、所望のパターン形状の絶縁部を形成することができる。
【0023】
組成物中の樹脂(A)の含有量は特に限定されないが、樹脂(A)の含有量は、組成物の全固形分量に対して5質量%以上100質量%以下とすることが好ましい。
【0024】
上記樹脂(A)を製造する方法は特に限定されない。具体的には、上記樹脂(A)は、第一級アミノ基を有する樹脂(原料化合物)における第一級アミノ基と、下記式(a2):
【化3】
(式(a2)中、Ra01およびRa02は、式(a1)中のRa01およびRa02と同様であり、
a1~Ra6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基であり、Ra1とRa5とは、互いに結合して-O-、-S-、-CH-、又は-CRa7a8-を形成してもよく、Ra3とRa4とは、互いに結合して炭素数6以上12以下の環を構成してもよく、
a7及びRa8は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基又は炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基である。)
で表されるジカルボン酸無水物とを縮合させて、下記式(a3):
【化4】
(式(a3)中、Ra01およびRa02は、式(a1)中のRa01およびRa02と同様であり、Ra1~Ra6は、式(a2)中のRa1~Ra6と同様である。)
で示される基を生成させる第1工程と、
第1工程で生成した、式(a3)で表される基を有する化合物を加熱して、式(a3)で表される基を式(a1)で表される基に変換する第2工程と、を含む製造方法により製造することができる。
【0025】
式(a2)中のRa1~Ra6としてのハロゲン原子の具体例としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
式(a2)中のRa1~Ra6としての炭素原子数1以上4以下のアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
式(a2)中のRa1~Ra6としての炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基は、直鎖でも分岐鎖状でもよく、具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、及びn-ブトキシ基が挙げられる。
a7及びRa8としての炭素数1以上4以下のアルキル基及び炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基は、Ra1~Ra6としての炭素数1以上4以下のアルキル基及び炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基と同様である。
【0026】
第1工程では、第一級アミノ基を有する樹脂(原料化合物)における第一級アミノ基と、上記式(a2)で表されるジカルボン酸無水物とを縮合させて、上記式(a3)で示される基を生成させる。これにより、式(a3)で表される基を有する樹脂が得られる。
【0027】
第一級アミノ基を有する樹脂(原料化合物)としては、不飽和二重結合を有する単量体の重合体が挙げられる。かかる樹脂としては、例えば、第一級アミノ基を有する(メタ)アクリル樹脂や、第一級アミノ基を有するポリスチレン系樹脂が挙げられる。より具体的な例としては、側鎖末端に第一級アミノ基を有する(メタ)アクリル樹脂や、側鎖末端に第一級アミノ基を有するポリスチレン系樹脂が挙げられる。
「第一級アミノ基を有する(メタ)アクリル樹脂」とは、第一級アミノ基を有する構成単位を含む(メタ)アクリル樹脂である。第一級アミノ基を有する構成単位は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位であってもよく、(メタ)アクリルアミドのN置換体に由来する構成単位であってもよく、これらの構成単位以外の構成単位であってもよい。第一級アミノ基を有する構成単位は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位、及び/又は(メタ)アクリルアミドのN置換体に由来する構成単位であるのが好ましい。
「第一級アミノ基を有するポリスチレン系樹脂」とは、第一級アミノ基を有する構成単位を含むポリスチレン系樹脂である。第一級アミノ基を有する構成単位は、p-アミノスチレン、m-アミノスチレン、及びo-アミノスチレン等のアミノスチレンに由来する構成単位であってもよく、p-アミノメチルスチレン、m-アミノメチルスチレン、及びo-アミノメチルスチレン等のアミノ基を有するスチレン誘導体に由来する構成単位であってもよく、これらの構成単位以外の構成単位であってもよい。第一級アミノ基を有する構成単位は、アミノスチレンに由来する構成単位、及び/又はアミノ基を有するスチレン誘導体に由来する構成単位であるのが好ましい。
第一級アミノ基を有する(メタ)アクリル樹脂や、第一級アミノ基を有するポリスチレン系樹脂等の第一級アミノ基を有する樹脂は、側鎖末端に第一級アミノ基を有するのが好ましい。
側鎖末端に第一級アミノ基を有する(メタ)アクリル樹脂や、側鎖末端に第一級アミノ基を有するポリスチレン系樹脂において、側鎖が分岐鎖の場合の第一級アミノ基が結合する側鎖末端は、該分岐鎖が有する2以上の枝鎖のいずれの末端でもよい。また、側鎖の末端の構造が環構造である場合は、該環構造を構成する環の任意の位置が、第一級アミノ基が結合する側鎖末端である。
例えば、側鎖がα-ナフチル基やβ-ナフチル基からなる場合、ナフタレン環上の任意の位置が側鎖末端である。また、側鎖を構成する基が、分岐鎖状である1-フェニルエチル基である場合、2つの枝鎖の末端に相当するメチル基と、フェニル基上の任意の位置とが側鎖末端である。
【0028】
上記樹脂(A)の製造方法において、第一級アミノ基を有する樹脂(原料化合物)は、第一級アミノ基を有するモノマーを単独重合することにより樹脂である原料化合物を製造すること、または、第一級アミノ基を有するモノマーと、コモノマーとを共重合して、樹脂である原料化合物を製造することを含むのが好ましい。
第一級アミノ基を有するモノマーとしては、アミノメチル(メタ)アクリレート、2-アミノエチル(メタ)アクリレート、3-アミノプロピル(メタ)アクリレート、4-アミノフェニル(メタ)アクリレート、3-アミノフェニル(メタ)アクリレート、2-アミノフェニル(メタ)アクリレート、4-アミノフェニルメチル(メタ)アクリレート、3-アミノフェニルメチル(メタ)アクリレート、及び2-アミノフェニルメチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;N-2-アミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-3-アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-4-アミノフェニル(メタ)アクリルアミド、N-3-アミノフェニル(メタ)アクリルアミド、及びN-2-アミノフェニル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;p-アミノスチレン、m-アミノスチレン、及びo-アミノスチレン等のアミノスチレン;p-アミノメチルスチレン、m-アミノメチルスチレン、及びo-アミノメチルスチレン等のアミノアルキルスチレン等が挙げられる。
【0029】
コモノマーは、第一級アミノ基を有するモノマー以外のモノマーである。コモノマーとしては、例えば、下記式(a-I)で表される化合物が挙げられる。
CH=CRa11-CO-O-Ra10・・・(a-I)
式(a-I)中、Ra10は、1価の有機基であり、Ra11は、水素原子又はメチル基である。この有機基は、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0030】
a10の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されず、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシ基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ヒドロキシイミノ基、アルキルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、N-モノ置換アミノ基、及びN,N-ジ置換アミノ基等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素原子は、炭化水素基によって置換されていてもよい。また、上記置換基に含まれる炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。
【0031】
a10としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、又は複素環基が好ましい。これらの基は、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、又は複素環基で置換されていてもよい。また、これらの基がアルキレン部分を含む場合、アルキレン部分は、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよい。
【0032】
アルキル基が、直鎖状又は分岐鎖状のものである場合、その炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上15以下がより好ましく、1以上10以下が特に好ましい。好適なアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、イソデシル基等が挙げられる。
【0033】
アルキル基が、脂環式基、又は脂環式基を含む基である場合、アルキル基に含まれる好適な脂環式基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等単環の脂環式基や、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、及びテトラシクロドデシル基等の多環の脂環式基が挙げられる。
【0034】
コモノマーの他の好ましい例としては、(メタ)アクリルアミド類、不飽和カルボン酸類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類等が挙げられる。これらのコモノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0035】
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド;N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、及びN-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-α-ナフチル(メタ)アクリルアミド、及びN-β-ナフチル(メタ)アクリルアミド等のN-アリール(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、及びN,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジフェニル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアリール(メタ)アクリルアミド;N-メチル-N-フェニル(メタ)アクリルアミド、及びN-ヒドロキシエチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド等のその他のN,Nジ置換(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0036】
不飽和カルボン酸類としては、クロトン酸等のモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等のジカルボン酸;これらジカルボン酸の無水物;等が挙げられる。
【0037】
アリル化合物としては、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル等のアリルエステル類;アリルオキシエタノール;等が挙げられる。
【0038】
ビニルエーテル類としては、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、1-メチル-2,2-ジメチルプロピルビニルエーテル、2-エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロロフェニルエーテル、ビニル-2,4-ジクロロフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテル等のビニルアリールエーテル;等が挙げられる。
【0039】
ビニルエステル類としては、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルジクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル-β-フェニルブチレート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ安息香酸ビニル、テトラクロロ安息香酸ビニル、ナフトエ酸ビニル等が挙げられる。
【0040】
スチレン類としては、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン等のアルキルスチレン;メトキシスチレン、4-メトキシ-3-メチルスチレン、ジメトキシスチレン等のアルコキシスチレン;クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ペンタクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、トリフルオロスチレン、2-ブロモ-4-トリフルオロメチルスチレン、4-フルオロ-3-トリフルオロメチルスチレン等のハロスチレン;等が挙げられる。
【0041】
第一級アミノ基を有するモノマーと、コモノマーとを共重合する場合の第一級アミノ基を有するモノマーとコモノマーとの割合は特に限定されないが、例えば、モル基準で、第一級アミノ基を有するモノマー:コモノマー=5~50:50~95である。
【0042】
式(a2)で表される化合物としては、下記式(a2-1):
【化5】
(式(a2-1)中、Ra01、Ra02、Ra2、Ra3、Ra4およびRa6は、式(a2)中のRa01、Ra02、Ra2、Ra3、Ra4およびRa6と同様である。)
で表される化合物が挙げられる。
【0043】
式(a2)で表される化合物は、例えば、下記式で表される化合物と、式(a2)で表される化合物の構造に対応する共役ジエン化合物とのディールスアルダー反応により得ることができる。
このディールスアルダー反応の条件は、用いる原料の種類などに応じて適宜設定すればよく、また、有機溶剤中での反応を行ってもよい。
【化6】
【0044】
当該ディールスアルダー反応に用いられる有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテートなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、マロン酸ジエチル等のエステル類;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジエチルエーテル、エチルシクロペンチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカヒドロナフタレンなどの脂肪族炭化水素類、メチレンクロリド、エチレンクロリドなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミドなどが挙げられる。用いる有機溶剤は、1種類の溶剤を使用してもよいし、2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
採用できる反応温度としては、たとえば-10℃~200℃の範囲であり、好ましくは0℃~150℃の範囲であり、より好ましくは5℃~120℃の範囲である。
採用できる反応時間としては、たとえば5分以上12時間以下であり、10分以上10時間以下であり、30分以上8時間以下である。
【0045】
第1工程における縮合は、通常縮合剤を用いて行われる。脱水縮合剤としては、カルボニルジイミダソール、カルボジイミド系化合物等が挙げられる。
この縮合剤の添加は、前述したディールスアルダー反応を行った反応容器中に対して行ってもよいし、ディールスアルダー反応における生成物を別途単離したうえで、再度有機溶剤などに溶解して添加を行ってもよい。
この縮合の際に用いられる有機溶剤は、ディールスアルダー反応において用いられる有機溶剤と同様のものを採用できる。
採用できる反応温度としては、たとえば-10℃~200℃の範囲であり、好ましくは0℃~150℃の範囲であり、より好ましくは5℃~120℃の範囲である。
採用できる反応時間としては、たとえば5分以上12時間以下であり、10分以上10時間以下であり、30分以上8時間以下である。
【0046】
なお、第1工程を実施することで得られる上記式(a3)で表される基を有する化合物は、第1工程を実施した後に単離してもよい。
上記式(a3)で表される基を有する化合物が樹脂である場合、この単離はたとえば第1工程における縮合が終わったあとの反応液を貧溶媒に注ぐことで固体化させ、これをろ取することで行われる。
【0047】
第2工程では、第1工程で生成した、上記式(a3)で表される基を有する化合物を加熱して、上記式(a3)で表される基を上記式(a1)で表される基に変換する(逆ディールスアルダー反応)。これにより、上記式(a1)で表される基を有する樹脂(A)が得られる。
上記式(a1)で表される基は、式(a2)で表される化合物の使用量に応じて、原料化合物である第一級アミノ基を有するモノマー由来のアミノ基の全て又は一部に導入され得る。
【0048】
第2工程における逆ディールスアルダー反応は、たとえば有機溶剤中で行われる。用いられる有機溶剤は前述したディールスアルダー反応において用いられる有機溶剤と同様のものを採用できるが、加熱による反応を実施するため、沸点が60℃以上であることが好ましく、沸点が80℃以上であることがより好ましく、沸点が100以上であることがさらに好ましい。沸点の上限値は特に制限がないが、たとえば350℃以下である。
第2工程の加熱について、採用できる反応温度としては、たとえば60℃~280℃の範囲であり、好ましくは80℃~250℃の範囲であり、より好ましくは100℃~225℃の範囲である。
採用できる反応時間としては、たとえば5分以上12時間以下であり、好ましくは10分以上10時間以下であり、より好ましくは30分以上8時間以下である。
【0049】
また、第2工程を実施することで得られる上記式(a1)で表される基を有する化合物は、第2工程を実施した後に単離してもよい。
上記式(a1)で表される基を有する化合物が樹脂である場合、この単離はたとえば第2工程における縮合が終わったあとの反応液を貧溶媒(たとえばアルコール系溶剤)に注ぐことで固体化させ、これをろ取することで行われる。
【0050】
樹脂(A)の製造方法の一例として、第一級アミノ基を有する樹脂(原料化合物)として、第一級アミノ基を有するモノマーであるアミノスチレンと、コモノマーであるスチレンとを共重合したものを用いた場合の反応式を以下に示す。下記反応式において、第2工程は、トルエン中で還流した例を示している。また、下記反応式におけるm及びnは、それぞれ構成単位の繰り返し数である。
【化7】
【0051】
このような樹脂(A)の製造方法によれば、マレイミド化以外の副反応が抑制される。副反応が抑制される結果、式(a1)で表される基を有する樹脂(A)を固体状で得ることができる。したがって、例えば上記組成物に、固体状の樹脂として、式(a1)で表される基を有する樹脂(A)を配合することができる。例えば、側鎖末端に上記式(a1)で表される基を含む、不飽和二重結合を有する単量体の重合体は、ゲル化の問題があったため、従来、固体状の樹脂として得ることができなかった。具体的には、例えばアミノ基を有するスチレン樹脂にマレイン酸無水物を反応させて閉環する方法では、ゲル化が生じてしまい固体状の樹脂が得られなかった。これは、所望するマレイミド化以外の副反応が生じやすいことに起因すると考えられる。しかし、上記の製造方法によれば、式(a1)で表される基を含む、不飽和二重結合を有する単量体の重合体を固体状の樹脂として得られる。
なお、本出願の明細書において、式(a1)で表される置換又は無置換の環状イミド基を、便宜的に「マレイミド基」とも称する。
【0052】
また、上記の製造方法によれば、マレイミド基を導入したモノマーを重合するのではなく、あらかじめ重合したポリマーを原料化合物として用い、ポリマーの第一級アミノ基を反応させることにより式(a1)で表される基を導入するため、重合が、時間のかかるカチオン重合に制限されない。よって、上記製造方法は、簡便な方法である。
【0053】
また、第一級アミノ基と式(a2)で表されるジカルボン酸無水物とを縮合させ式(a3)で示される基を生成させた後に、加熱することにより式(a3)で表される基を式(a1)で表される基に変換するため、閉環反応による不具合が生じることなく、式(a1)で表される基を確実に導入することができる。
【0054】
<ラジカル重合性化合物(B)>
上記組成物は、さらに、ラジカル重合性化合物(B)を含んでいてもよい。勿論、上記組成物は、ラジカル重合性化合物(B)を含まなくてもよい。
ラジカル重合性化合物(B)は、上記樹脂(A)以外のラジカル重合性の化合物である。
ラジカル重合性化合物(B)は、スチレン、スチレン重合体、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の不飽和二重結合を有する化合物でもよいが、上記式(a1)で表される基を有するラジカル重合性化合物であること好ましい。
上記式(a1)で表される基を有するラジカル重合性化合物としては、式(a1)で表される基を2以上有する多官能マレイミド化合物が好ましく、芳香族ジアミンや脂肪族ジアミンの2個のアミノ基を、式(a1)で表される基に置換したビスマレイミド化合物が好ましい。
芳香族ジアミンの具体例としては、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、及び2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
脂肪族ジアミンの具体例としては、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、2,3,3-トリメチルペンタン-1,5-ジアミン等が挙げられる。
上記式(a1)で表される基を有するラジカル重合性化合物としては、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンや下記化合物(いずれも東京化成工業社製)や、BMI-689、BMI-1400、BMI-1500、BMI-1700、BMI-2700、BMI-3000(いずれもDesigner molecules社製)も挙げられる。
【化8】
【0055】
上記のマレイミド化合物以外のラジカル重合性化合物としては、従来よりラジカル重合性の組成物に配合されている種々のラジカル重合性化合物を特に制限なく用いることができる。マレイミド化合物以外のラジカル重合性化合物の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0056】
単官能のラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、tert-ブチルアクリルアミドスルホン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0057】
多官能のラジカル重合性化合物としては、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレン-プロピレン)グリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(すなわち、トリレンジイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネート等と2-ビドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、多価アルコールとN-メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物、トリアクリルホルマール、2,4,6-トリオキソヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン-1,3,5-トリスエタノールトリアクリレート、及び2,4,6-トリオキソヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン-1,3,5-トリスエタノールジアクリレート等が挙げられる。これらの多官能化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0058】
組成物中のラジカル重合性化合物(B)の含有量は特に限定されないが、上記樹脂(A)とラジカル重合性化合物(B)との合計量に対して、10質量%以上70質量%以下とすることが好ましい。
【0059】
<ラジカル開始剤(C)>
上記組成物は、ラジカル開始剤(C)を含んでいることが好ましい。ラジカル開始剤(C)は、光ラジカル開始剤(C1)でも熱ラジカル開始剤(C2)でもよく、光ラジカル開始剤(C1)及び熱ラジカル開始剤(C2)を併用してもよい。
【0060】
光ラジカル開始剤(C1)としては、Omnirad 651、Omnirad 184、Omnirad 1173、Omnirad 2959、Omnirad 127、Omnirad 907、Omnirad 369、Omnirad 369E、Omnirad 379EG(いずれもIGM Resins B.V.製)等のアルキルフェノン系開始剤、Omnirad TPO H、Omnirad 819(いずれもIGM Resins B.V.製)等のアシルフォスフィンオキサイド系開始剤や、Irgacure OXE01、Irgacure OXE02(いずれもBASF社製)等のオキシムエステル系光重合剤が挙げられる。
【0061】
光ラジカル開始剤(C1)の具体例としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)(Irgacure OXE01)、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾル-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)(Irgacure OXE02)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Omnirad TPO H)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド(Omnirad 819)、4-ベンゾイル-4’-メチルジメチルスルフィド、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4-ジメチルアミノ-2-エチルヘキシル安息香酸、4-ジメチルアミノ-2-イソアミル安息香酸、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール、ベンジルジメチルケタール、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、O-ベンゾイル安息香酸メチル、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、チオキサンテン、2-クロロチオキサンテン、2,4-ジエチルチオキサンテン、2-メチルチオキサンテン、2-イソプロピルチオキサンテン、2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、2-メルカプトベンゾイミダール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(O-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-tert-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルジクロロアセトフェノン、α,α-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、9-フェニルアクリジン、1,7-ビス-(9-アクリジニル)ヘプタン、1,5-ビス-(9-アクリジニル)ペンタン、1,3-ビス-(9-アクリジニル)プロパン、p-メトキシトリアジン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-n-ブトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、オキシム系の開始剤を用いることを感度の面で特に好ましい。
【0062】
熱ラジカル重合開始剤(C2)としては、ケトンパーオキシド(メチルエチルケトンパーオキシド及びシクロヘキサノンパーオキシド等)、パーオキシケタール(2,2-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ブタン及び1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等)、ヒドロパーオキシド(tert-ブチルヒドロパーオキシド及びクメンヒドロパーオキシド等)、ジアルキルパーオキシド(ジ-tert-ブチルパーオキシド(パーブチル(登録商標)D(日油株式会社製)、及びジ-tert-ヘキシルパーオキサイド(パーヘキシル(登録商標)D(日油株式会社製))等)、ジアシルパーオキシド(イソブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド及びベンゾイルパーオキシド等)、パーオキシジカーボネート(ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等)、パーオキシエステル(tert-ブチルパーオキシイソブチレート及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等)等}の有機過酸化物や、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)及びジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等}等のアゾ化合物が挙げられる。
【0063】
組成物中のラジカル開始剤(C)の含有量は特に限定されないが、上記樹脂(A)とラジカル重合性化合物(B)との合計質量100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下とすることが好ましい。
【0064】
<有機溶剤(S)>
上記組成物は、通常、有機溶剤(S)を含む。有機溶剤(S)の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来より感光性組成物に使用されている有機溶剤から適宜選択して使用することができる。
【0065】
有機溶剤(S)の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル、モノフェニルエーテル等の多価アルコール類及びその誘導体;ジオキサン等の環式エーテル類;蟻酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0066】
有機溶剤(S)の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。組成物の固形分濃度が30質量%以上70質量%以下となる範囲で、有機溶剤(S)を用いるのが好ましい。
【0067】
<その他の添加剤>
上記脂組成物は、塗布性、消泡性、レベリング性等を向上させるため、さらに界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が好ましく用いられる。
フッ素系界面活性剤の具体例としては、BM-1000、BM-1100(いずれもBMケミー社製)、メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173、メガファックF183(いずれも大日本インキ化学工業社製)、フロラードFC-135、フロラードFC-170C、フロラードFC-430、フロラードFC-431(いずれも住友スリーエム社製)、サーフロンS-112、サーフロンS-113、サーフロンS-131、サーフロンS-141、サーフロンS-145(いずれも旭硝子社製)、SH-28PA、SH-190、SH-193、SZ-6032、SF-8428(いずれも東レシリコーン社製)等の市販のフッ素系界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
シリコーン系界面活性剤としては、未変性シリコーン系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、ポリエステル変性シリコーン系界面活性剤、アルキル変性シリコーン系界面活性剤、アラルキル変性シリコーン系界面活性剤、及び反応性シリコーン系界面活性剤等を好ましく用いることができる。
シリコーン系界面活性剤としては、市販のシリコーン系界面活性剤を用いることができる。市販のシリコーン系界面活性剤の具体例としては、ペインタッドM(東レ・ダウコーニング社製)、トピカK1000、トピカK2000、トピカK5000(いずれも高千穂産業社製)、XL-121(ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、クラリアント社製)、BYK-310(ポリエステル変性シリコーン系界面活性剤、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0068】
また上記組成物は、酸化防止剤を含有していてもよい。酸化防止剤としては、特に限定されず、従来公知の酸化防止剤を用いることができ、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
【0069】
また上記組成物は、反応中の重合を適宜防止するために、重合防止剤を含有していてもよい。重合防止剤としては、特に限定されず、従来公知の重合防止剤を用いることができ、例えば、メトキノン、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、p-メトキシフェノール、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、フェノチアジン等が挙げられる。
【0070】
また上記組成物は、金属配線や、金属配線を有する電気・電子デバイス用の基板との密着性を向上させるために、密着性向上剤を含有していてもよい。密着性向上剤としては、特に限定されず、従来公知の密着性向上剤を用いることができ、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0071】
<組成物の調製方法>
上記脂組成物は、上記の各成分を通常の方法で混合、撹拌して調製される。上記の各成分を、混合、撹拌する際に使用できる装置としては、ディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等が挙げられる。上記の各成分を均一に混合した後に、得られた混合物を、さらにメッシュ、メンブランフィルタ等を用いて濾過してもよい。
【0072】
≪絶縁部の形成方法≫
上記組成物を用いて、金属配線を有する電気・電子デバイスにおける金属配線を絶縁する絶縁部を形成することができる。すなわち、本発明の絶縁部の形成方法は、金属配線を有する電気・電子デバイス用の基板上の、少なくとも絶縁部が形成される位置に、上記組成物を塗布又は充填することと、塗布又は充填された組成物を露光することとを含む。
【0073】
絶縁部の形成方法において、まず、金属配線を有する電気・電子デバイス用の基板上の、少なくとも絶縁部が形成される位置に、上記組成物を塗布又は充填する。
基板上への組成物の塗布方法としては、スピンコート法、スリットコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、アプリケーター法等の方法を採用することができる。
塗布又は充填により形成された組成物層の厚さは特に限定されないが、0.5μm以上が好ましく、0.5μm以上300μm以下がより好ましく、1μm以上150μm以下が特に好ましく、3μm以上50μm以下が最も好ましい。
【0074】
次いで、塗布又は充填された組成物層を、必要に応じて、乾燥や、プレベークを行うのが好ましい。プレベーク条件は、組成物層中の各成分の種類、配合割合、塗布膜厚等によって異なるが、通常は70℃以上200℃以下で、好ましくは80℃以上150℃以下で、2分以上120分以下程度である。
【0075】
必要に応じて、乾燥やプレベークされた組成物層に対して、活性光線又は放射線、例えば波長が300nm以上500nm以下の紫外線又は可視光線を照射(露光)する。組成物層の全面に露光してもよく、また、所定のパターンのマスクを介して活性光線又は放射線を露光する等、露光が位置選択的に行われる選択的な露光(パターン露光)でもよい。
露光により、重合成分である樹脂(A)やラジカル重合性化合物(B)が重合し絶縁部が形成される。これにより、金属配線を有する電気・電子デバイス用の基板上に絶縁部が形成される。
【0076】
放射線の線源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、アルゴンガスレーザー等を用いることができる。また、放射線には、マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、γ線、電子線、陽子線、中性子線、イオン線等が含まれる。放射線照射量は、組成物の組成や組成物層の膜厚等によっても異なるが、例えば超高圧水銀灯使用の場合、100mJ/cm以上10000mJ/cm以下である。また、放射線には、ラジカルを発生させるために、ラジカル開始剤(C)を活性化させる光線が含まれていてもよい。
【0077】
選択的な露光の場合は、露光された組成物層を、従来知られる方法に従って現像し、不要な部分を溶解、除去することにより、所定の形状の絶縁部が形成される。この際、現像液としては、上記有機溶剤(S)や、アルカリ性水溶液が使用できる。例えば、前述の樹脂(A)がカルボキシ基やフェノール性水酸基のようなアルカリ可溶性基を有する場合、アルカリ性水溶液による現像が可能である。
【0078】
現像液として用いるアルカリ性水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(水酸化テトラメチルアンモニウム)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5-ノナン等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。また、上記アルカリ類の水溶液にメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。
【0079】
現像時間は、上記組成物の組成や組成物層の膜厚等によっても異なるが、通常1分以上30分以下の間である。現像方法は、液盛り法、ディッピング法、パドル法、スプレー現像法等のいずれでもよい。
【0080】
現像後は、例えば、流水洗浄を30秒以上90秒以下の間行い、エアーガンや、オーブン等を用いて乾燥させる。
【0081】
このようにして、金属配線を有する電気・電子デバイス用の基板上に、所望する形状にパターン化された絶縁部が形成される。
【0082】
なお、上記では露光により、重合成分である樹脂(A)やラジカル重合性化合物(B)が重合させて絶縁部を形成する例を示したが、加熱により重合成分である樹脂(A)やラジカル重合性化合物(B)を重合させて絶縁部を形成してもよい。
【0083】
形成された絶縁部は、誘電率が低く、誘電正接が低いため、高周波数用途の金属配線を有する電気・電子デバイスの絶縁部に適している。例えば、3GHz以上30GHz以下の5G通信帯候補の周波数や、30GHz以上300GHz以下のミリ波帯の周波数の用途の金属配線を有する電気・電子デバイスの絶縁部とすることができる。また、形成された絶縁部は耐熱性に優れているため、絶縁部を形成した後に加熱されてさらに配線等の部材を形成される用途に適している。
【実施例
【0084】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例21は参考例と読み替えるものとする。
【0085】
<第一級アミノ基を有する樹脂(原料化合物)の調製>
[P1前駆体の調製]
三口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)(242g)を加え、窒素雰囲気下で80℃に加熱した。スチレン(85g)、4-アミノスチレン(97g)と、アゾ重合開始剤(製品名:V-601、富士フィルム和光純薬社製)(29g)を、PGMEA(242g)に溶解し、これを三口フラスコに4時間かけて滴下した。滴下完了後、2時間で80℃撹拌し、得られた重合液をメタノール-水混合液(メタノール/水=4/1(質量基準))(2.5kg)に滴下し、再沈殿することで、スチレンと4-アミノスチレンとの共重合体(P1前駆体)を72.8g得た。得られたP1前駆体の共重合比は、スチレン/4-アミノスチレン=70/30(モル基準)であった。
【0086】
[P2前駆体の調製]
モノマーの配合割合を変更した以外は、[P1前駆体の調製]と同様にして、共重合比がスチレン/4-アミノスチレン=80/20(モル基準)のP2前駆体を得た。
【0087】
[P3前駆体の調製]
モノマーの配合割合を変更した以外は、[P1前駆体の調製]と同様にして、共重合比がスチレン/4-アミノスチレン=90/10(モル基準)のP3前駆体を得た。
【0088】
モノマーとしてノルマルブチルスチレンも用いた以外は、[P1前駆体の調製]と同様にして、共重合比がスチレン/4-アミノスチレン/ノルマルブチルスチレン=60/30/10(モル基準)のP4前駆体を得た。
【0089】
[P5前駆体の調製]
アミノスチレンの代わりに4-(アミノメチル)スチレンを用いた以外は、[P1前駆体の調製]と同様にして、共重合比がスチレン/4-(アミノメチル)スチレン=70/30(モル基準)のP5前駆体を得た。
【0090】
<樹脂(A)の調製>
[樹脂P1の調製]
(第1工程)
P1前駆体(72.8g)と下記式で表されるオキソノルボルネン酸無水物(41g)をテトラヒドロフラン(THF)(300g)に溶解し、窒素雰囲気下で4時間撹拌した。続いて、カルボニルジイミダゾール(61g)を加え、6時間撹拌した後に、ヘプタン(1.5kg)に滴下し、再沈殿することで、保護体1(式(3)で表される基を有する化合物)を得た。
得られた保護体の組成比を13C NMRから算出した。算出した組成比を下記構造式に示す。下記構造式における各構成単位中の括弧の右下の数字は、各保護体中の構成単位の含有量(モル%)を表す。
また、13C NMRから、下記構造であることを確認した。保護体1の13C NMR測定結果を図1に示す。なお、13C NMRの測定溶媒は、アセトン-d6とした。
【化9】
【化10】
【0091】
(第2工程)
得られた保護体1を、20質量%のトルエン溶液とし、リフラックスさせながら4時間撹拌し、その後、ヘプタンで再沈殿することで、固体状の樹脂P1(17.8g)を得た。
得られた樹脂の組成比を13C NMRから算出した。算出した組成比を下記構造式に示す。下記構造式における各構成単位中の括弧の右下の数字は、各樹脂中の構成単位の含有量(モル%)を表す。
また、13C NMRにおいて、カルボニルピーク及び二重結合のピークから、マレイミド構造を確認した。樹脂P1の13C NMR測定結果を図2に示す。なお、13C NMRの測定溶媒は、アセトン-d6とした。
また、得られた樹脂質量平均分子量(Mw)を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)のポリスチレン換算により求めた。樹脂P1の質量平均分子量(Mw)は、15000であった。
【化11】
【0092】
[樹脂P2~P5の調製]
P1前駆体の代わりに、それぞれ前駆体P2~P5を用いた以外は、[樹脂P1の調製]と同様にして、第1工程でそれぞれ保護体2~4を得て、第2工程でそれぞれ固体状の樹脂P2~P5を得た。
得られた樹脂P2~P5の質量平均分子量(Mw)は、それぞれ15000であった。
【0093】
<組成物の調製>
[実施例1~21、及び比較例1~7]
実施例1~21では、樹脂(A)として、上記樹脂P1~P5を用いた。
実施例1~21、及び比較例1~7では、ラジカル重合性化合物(B)として、下記B1~B5、及び、B6:SA9000(SABICイノベーティブプラスチックス社製、ポリフェニレンエーテルの末端水酸基をメタクリル基で変性した変性ポリフェニレンエーテル)を用いた。なお、B1はBMI-689、B2はBMI-3000(いずれもDesigner molecules社製)である。
【0094】
【化12】
【化13】
【0095】
実施例1~21、及び比較例1~7では、ラジカル開始剤(C)として、下記C1~C4を用いた。
C1:Irgacure OXE01(BASF製)
C2:Irgacure OXE02(BASF製)
C3:Omnirad 819(IGM Resins B.V.製)
C4:パーヘキシルD(日油社製)
実施例1~21、及び比較例1~7では、添加剤として、下記D1~D3、及び、界面活性剤(BYK310、ビックケミー社製)を用いた。
D1:Irganox 1010(BASF製)
D2:メトキノン
D3:ベンゾトリアゾール
【0096】
それぞれ表1~2に記載の種類及び量の、樹脂(A)及び/又はラジカル重合性化合物(B)と、ラジカル開始剤(C)と、添加剤と、界面活性剤(BYK310、ビックケミー社製)0.05質量部とを、固形分濃度が40質量%となるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させて、各実施例及び比較例の組成物を得た。
【0097】
<評価>
得られた組成物を用いて、以下の方法に従って、成膜性と、フォトリソ特性と、誘電率と、誘電正接と、耐熱性とを評価した。これらの評価結果を表1~2に記す。
[成膜性及びフォトリソ特性]
実施例、及び比較例の組成物を、直径200mmのSi基板上に塗布し、組成物層(組成物の塗膜)を形成した。次いで、組成物層を80℃で200秒間プリベーク(PAB)した。なお、プリベーク後の組成物層は膜厚11μmであった。プリベーク後、直径30μmの円形の開口を形成できるホールパターンのマスクと露光装置Prisma GHI5452(ウルトラテック社製)とを用い露光量100mJ/cm以上4400mJ/cm以下にて、ghi線でパターン露光した。なお、焦点は0μm(組成物層表面)とした。
次いで、基板をホットプレート上に載置して90℃で1.5分間の露光後加熱(PEB)を行った。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に、露光された組成物層を、60℃で60秒間浸漬した。その後、窒素ブローして、窒素雰囲気下で180℃1時間加熱して、パターン(絶縁部)を得た。
プリベーク前の組成物層の表面を走査型電子顕微鏡により観察して、成膜性を評価した。具体的には、パターン表面にクラック及び/又は結晶が観察されず、パターンにタック(べたつき)がなく、且つ含有成分が相溶しており透明であった場合を、○とした。また、パターン表面にクラックが観察された場合をa、パターン表面に結晶が観察された場合をb、パターン表面にタック(べたつき)があった場合をc、含有成分が相溶しておらず不透明であった場合をdとして評価した。
また、得られたパターン(絶縁部)の表面及び断面を走査型電子顕微鏡により観察して、フォトリソ特性を評価した。具体的には、上述の露光量範囲において、直径30μmの開口が形成される条件が存在していた場合は○、直径30μmの開口が形成される条件が存在しなかった場合を×として評価した。
なお、比較例1は、タックがあり、パターン(絶縁部)が形成できなかったため、誘電率、誘電正接、耐熱性については評価しなかった。
また、比較例3及び4は、プリベーク前の組成物層にクラックや結晶が発生していたため、フォトリソ特性、誘電率、誘電正接、耐熱性については評価しなかった。
【0098】
[誘電率及び誘電正接]
実施例、及び比較例の組成物を、直径200mmのSi基板上に塗布し、組成物層(組成物の塗膜)を形成した。次いで、組成物層を80℃で200秒間プリベーク(PAB)した。なお、プリベーク後の組成物層は膜厚11μmであった。プリベーク後、露光装置Prisma GHI5452(ウルトラテック社製)を用い露光量4400mJ/cmにて、ghi線で全面を露光した。なお、焦点は0μm(組成物層表面)とした。その後、組成物層表面を窒素ブローして、窒素雰囲気下で180℃1時間加熱して、サンプルを得た。
得られたサンプルの誘電率(ε)及び誘電正接(tanδ)を、電子情報通信学会の信学技報 vol. 118, no. 506, MW2018-158, pp. 13-18, 2019年3月 「感光性絶縁フィルムの円筒空洞共振器法によるミリ波複素誘電率評価に関する検討」(高萩耕平(宇都宮大学)、海老澤和明(東京応化工業株式会社)、古神義則(宇都宮大学)、清水隆志(宇都宮大学))に記載された方法で、測定した。ネットワークアナライザーHP8510C(キーサイト社製)を使用し、空洞共振器法で、室温25℃、湿度50%、周波数36GHz、サンプル厚さ10μmの条件で測定した。
誘電率値が3.00未満であった場合を○、3.00以上であった場合を×として、誘電率を評価した。
誘電正接値が、0.01未満であった場合を○、0.01以上であった場合を×として、誘電正接を評価した。
【0099】
[耐熱性]
[誘電率及び誘電正接]の項目と同様の手法で得られたサンプルについて、動的粘弾性測定装置Rheogel-E4000(UBM株式会社製)を使用して測定したtanδのピークトップ温度(℃)を、ガラス転移点(Tg)とした(DMA法)。測定条件は、測定モード:引張モード、周波数:10Hz、昇温速度:5℃/min、測定温度範囲:40~300℃、サンプル形状:長さ50mm、幅5mm、厚み10μmmとした。
Tgが150℃以上であった場合を○、150℃未満であった場合を×として、耐熱性を評価した。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
実施例1~21によれば、式(a1)で表される基を特定の位置に有する樹脂(A)を含む組成物は、誘電率及び誘電正接が低く耐熱性に優れた絶縁部を形成することができ、且つ、成膜性に優れることが分かる。また、実施例1~21の組成物では、樹脂(A)がPGMEAに溶解していた。また、実施例1~21によれば、フォトリソ特性にも優れることも分かる。
【0103】
他方、比較例1~7によれば、樹脂(A)を含有しない場合は、誘電率及び誘電正接が低く耐熱性に優れた絶縁部を形成することができ且つ成膜性に優れる組成物にはならないことが分かる。
図1
図2