(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】ストリップブレード及びケーブルストリップ装置
(51)【国際特許分類】
H02G 1/12 20060101AFI20230202BHJP
B26D 3/00 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
H02G1/12 053
H02G1/12 009
B26D3/00 603Z
(21)【出願番号】P 2019160157
(22)【出願日】2019-09-03
【審査請求日】2021-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 弘志
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-048318(JP,U)
【文献】実開平03-117323(JP,U)
【文献】特開2001-025125(JP,A)
【文献】特開平08-251748(JP,A)
【文献】特開平09-191525(JP,A)
【文献】特開2016-214062(JP,A)
【文献】米国特許第06439084(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/12
B26D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半円形状のR刃部と前記R刃部の両側の直線状の平刃部とが形成された刃部をそれぞれ有すると共に、前記刃部同士を対向させて配置され、前記刃部を突き合わせることでケーブルの絶縁体に切れ込みを形成可能な板状の第1ブレード及び第2ブレードと、
前記第1ブレードにおける前記ケーブルの先端側の面に設けられ、前記両ブレードよりも先端側の前記ケーブルをガイドする第1ガイド溝を有する第1ガイド板と、
前記第2ブレードにおける前記ケーブルの基端側の面に設けられ、前記両ブレードよりも基端側の前記ケーブルをガイドする第2ガイド溝を有する第2ガイド板と、を備え、
前記両ブレードの前記刃部は、前記両ブレードの対向方向に対して平行な平面と、前記平面に対して傾斜した傾斜面と、を有し、前記ケーブルの先端側が前記平面となるように設けられて
おり、
前記第1ガイド板は、前記第1ブレードに直接固定されており、前記第1ガイド溝が前記第1ブレードと近接しており、
前記第2ガイド板は、前記第2ブレードに直接固定されており、前記第2ガイド溝が前記第2ブレードと近接しており、
前記ケーブルの長手方向における前記第1ブレードと前記第1ガイド溝との間隔は、前記ケーブルの外径の1/2以下であり、
前記ケーブルの長手方向における前記第2ブレードと前記第2ガイド溝との間隔は、前記ケーブルの外径の1/2以下である、
ストリップブレード。
【請求項2】
前記ガイド溝は、前記刃部を突き合わせた際に前記ケーブルを保持する保持溝と、前記保持溝に連通されると共に前記両ブレードの対向方向へと開口し、前記保持溝から離れるほど開口幅が大きくなるテーパ状のケーブル誘い込み溝と、を有する、
請求項
1に記載のストリップブレード。
【請求項3】
前記両ガイド板における前記ガイド溝の開口側の端部は、前記刃部を突き合わせた状態で前記ケーブルの長手方向に見た場合に、互いに重なるように設けられている、
請求項
2に記載のストリップブレード。
【請求項4】
半円形状のR刃部と前記R刃部の両側の直線状の平刃部とが形成された刃部をそれぞれ有すると共に、前記刃部同士を対向させて配置され、前記刃部を突き合わせることでケーブルの絶縁体に切れ込みを形成可能な板状の第1ブレード及び第2ブレードと、
前記第1ブレードにおける前記ケーブルの先端側の面に設けられ、前記両ブレードよりも先端側の前記ケーブルをガイドする第1ガイド溝を有する第1ガイド板と、
前記第2ブレードにおける前記ケーブルの基端側の面に設けられ、前記両ブレードよりも基端側の前記ケーブルをガイドする第2ガイド溝を有する第2ガイド板と、を備え、
前記両ブレードの前記刃部は、前記両ブレードの対向方向に対して平行な平面と、前記平面に対して傾斜した傾斜面と、を有し、前記ケーブルの先端側が前記平面となるように設けられており、
前記ガイド溝は、前記刃部を突き合わせた際に前記ケーブルを保持する保持溝と、前記保持溝に連通されると共に前記両ブレードの対向方向へと開口し、前記保持溝から離れるほど開口幅が大きくなるテーパ状のケーブル誘い込み溝と、を有し、
前記両ガイド板における前記ガイド溝の開口側の端部は、前記ケーブルの長手方向において前記ブレードと離間して設けられている、
ストリップブレード。
【請求項5】
前記両ブレードは、鉛直方向上下に対向するように設けられており、
前記第1ブレード及び前記第1ガイド板が鉛直方向における上方に設けられ、前記第2ブレード及び前記第2ガイド板が鉛直方向における下方に設けられている、
請求項1乃至
4の何れか1項に記載のストリップブレード。
【請求項6】
前記両ブレードは、鉛直方向上下に対向するように設けられており、
前記第1ブレード及び前記第1ガイド板が鉛直方向における下方に設けられ、前記第2ブレード及び前記第2ガイド板が鉛直方向における上方に設けられている、
請求項1乃至
5の何れか1項に記載のストリップブレード。
【請求項7】
前記第2ガイド板は、前記ケーブルに外嵌されたワイヤシールを
前記第2ガイド板の前記保持溝にて保持することにより保持するように構成されている、
請求項
4に記載のストリップブレード。
【請求項8】
請求項1乃至
7の何れか1項に記載のストリップブレードと、
前記両ブレードをその対向方向に進退駆動する駆動部と、を備えた、
ケーブルストリップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストリップブレード及びケーブルストリップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブルの端末部における絶縁体(外皮)を除去するケーブルストリップ装置が知られている。ケーブルストリップ装置では、一対のストリップブレードでケーブルを両側から挟み込むことで、ストリップブレードの刃部により絶縁体に切り込みを入れ、例えばストリップブレードをケーブル先端側へと移動させることで絶縁体を除去する。
【0003】
ストリップブレードとしては、V字状の刃部を有するV刃、V刃の底部に丸みをもたせたVR刃、半円形状の刃部を有するR刃等が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
V刃やVR刃を用いたケーブルストリップ装置では、絶縁体の周方向の一部に切れ込みが入らず、ストリップ後に絶縁体の一部がひげ状に残る場合があった。これに対して、R刃を用いることで、絶縁体の周方向に均等に切れ込みを入れることが可能になり、絶縁体の一部がひげ状に残ることを抑制可能である。
【0006】
しかしながら、R刃を用いた場合であっても、ケーブルの位置ずれやケーブルの曲がり癖等の影響により、絶縁体を除去する際に導体が刃部に干渉し、導体に傷がついてしまう場合があった。
【0007】
そこで、本発明は、ストリップ後に絶縁体の一部が残ってしまうことを抑制でき、かつ、導体に傷がつきにくいストリップブレード及びケーブルストリップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、半円形状のR刃部と前記R刃部の両側の直線状の平刃部とが形成された刃部をそれぞれ有すると共に、前記刃部同士を対向させて配置され、前記刃部を突き合わせることでケーブルの絶縁体に切れ込みを形成可能な板状の第1ブレード及び第2ブレードと、前記第1ブレードにおける前記ケーブルの先端側の面に設けられ、前記両ブレードよりも先端側の前記ケーブルをガイドする第1ガイド溝を有する第1ガイド板と、前記第2ブレードにおける前記ケーブルの基端側の面に設けられ、前記両ブレードよりも基端側の前記ケーブルをガイドする第2ガイド溝を有する第2ガイド板と、を備え、前記両ブレードの前記刃部は、前記両ブレードの対向方向に対して平行な平面と、前記平面に対して傾斜した傾斜面と、を有し、前記ケーブルの先端側が前記平面となるように設けられている、ストリップブレードを提供する。
【0009】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、前記ストリップブレードと、前記両ブレードをその対向方向に進退駆動する駆動部と、を備えた、ケーブルストリップ装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ストリップ後に絶縁体の一部が残ってしまうことを抑制でき、かつ、導体に傷がつきにくいストリップブレード及びケーブルストリップ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態に係るストリップブレードを示す図であり、(a)は開いた状態での断面図、(b)は閉じた状態での断面図である。
【
図2】第1ブレードを示す図であり、(a)は平面図、(b)はそのA-A線断面図である。
【
図3】第1ガイド板を示す図であり、(a)は平面図、(b)はそのB-B線断面図である。
【
図4】第1ブレードと第1ガイド板を示す図であり、(a)は平面図、(b)はそのC-C線断面図、(c)は(b)の要部拡大図である。
【
図5】第2ブレードを示す図であり、(a)は平面図、(b)はそのD-D線断面図である。
【
図6】第2ガイド板を示す図であり、(a)は平面図、(b)はそのE-E線断面図である。
【
図7】第1ブレードと第1ガイド板を示す図であり、(a)は平面図、(b)はF-F線断面図、(c)は(b)の要部拡大図である。
【
図8】(a),(b)は、ブレード前面が傾斜している場合に導体に傷が付くことを説明する図である。
【
図9】(a)~(c)は、ケーブルストリップ装置の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態に係るストリップブレードを示す図であり、(a)は開いた状態での断面図、(b)は閉じた状態での断面図である。
図1に示すように、ストリップブレード1は、第1ブレード2、第2ブレード3、第1ガイド板4、及び第2ガイド板5を備えて構成されている。
【0014】
ストリップブレード1と、両ブレード2,3をその対向方向に進退駆動する駆動部(不図示)とを備えたものが、本実施の形態に係るケーブルストリップ装置10である。ケーブルストリップ装置10は、ケーブル6の端部への端子の接続等に先立ち、ケーブル6の端部から絶縁体を除去し、導体を露出させる作業(ストリップ)を行うためのものである。
【0015】
第1ブレード2及び第2ブレード3は、板状に形成されており、半円形状のR刃部211,311が形成された刃部21,31をそれぞれ有すると共に、刃部21,31同士を対向させて配置され、刃部21,31を突き合わせることでケーブル6の絶縁体に切れ込みを形成可能に構成されている。ブレード2,3は、所謂突き合わせタイプのR刃である。ブレード2,3としてR刃を用いることで、ケーブル6の絶縁体の全周に切れ込みを入れることができ、ストリップ後に絶縁体の一部が残ってしまうことを抑制できる。本実施の形態では、第1ブレード2及び第2ブレード3は、鉛直方向上下に対向するように設けられている。第1ブレード2及び第1ガイド板4は鉛直方向における上方に設けられ、第2ブレード3及び第2ガイド板5は鉛直方向における下方に設けられている。
【0016】
図2(a),(b)に示すように、第1ブレード2は、平面視で長方形の板状に形成されており、その長辺方向における一端部(下端部)に、刃部21が形成されている。刃部21は、短辺方向における中央部に形成された半円形状の凹部を有するR刃部211と、平面視におけるR刃部211の両側にそれぞれ形成され第1ブレード2の一方(下方)の短辺に沿って直線状に形成されている平刃部212と、を有している。また、第1ブレード2には、第1ブレード2及び第1ガイド板4を駆動する駆動部(不図示)に固定するボルトを通すためのボルト穴22が形成されている。ボルト穴22は、第1ブレード2を厚さ方向に貫通するように形成されている。
【0017】
第1ブレード2には、第1ガイド板4が一体に設けられている。
図3(a),(b)及び
図4(a)~(c)に示すように、第1ガイド板4は、第1ブレード2におけるケーブル6の先端側の面に一体に設けられている。以下、ケーブル6の先端側、すなわち絶縁体をストリップする側を前方といい、ケーブル6の基端側、すなわち絶縁体を残す側を後方という。
【0018】
第1ガイド板4は、第1ブレード2と平行な板状に形成されており、第1ブレード2の前方側の面に溶接等により一体に設けられている。第1ガイド板4には、両ブレード2,3よりも前方(先端側、ストリップされる側)のケーブル6をガイドする第1ガイド溝41が形成されている。すなわち、第1ガイド板4は、ブレード2,3よりも前方のケーブル6のブレード2,3に対する位置決めを行うためのものである。
【0019】
第1ガイド溝41は、両ブレード2,3の刃部21,31を突き合わせた際にケーブル6を保持する保持溝411と、保持溝411に連通されると共に両ブレード2,3の対向方向(ここでは下方)へと開口し、保持溝411から離れるほど開口幅が大きくなるテーパ状のケーブル誘い込み溝412と、を有している。
【0020】
保持溝411は、正面視でその外縁がU字状となるように形成されており、当該保持溝411の底部にケーブル6を保持したとき、ケーブル6の中心軸がR刃部211の中心位置と重なるように形成されている。
【0021】
ケーブル誘い込み溝412は、ケーブル6を保持溝411へと誘い込むためのものである。第1ガイド板4の下端部、すなわちケーブル誘い込み溝412が形成されている部分は、第1ブレード2の下端部(刃部21)よりも下方へと突出している。
【0022】
また、第1ガイド板4には、第1ブレード2及び第1ガイド板4を駆動する駆動部(不図示)に固定するボルトを通すためのボルト穴42が形成されている。ボルト穴42は、第1ガイド板4を厚さ方向に貫通するように設けられている。
【0023】
また、第1ガイド板4における第1ガイド溝41の開口側の端部(下端部)は、ケーブル6の長手方向(第1ガイド板4の厚さ方向)において第1ブレード2と離間して設けられている。本実施の形態では、第1ガイド板4の下端部を、第1ガイド板4の他部よりも薄く形成し、第1ブレード2側に段差43を設け、第1ガイド板4の下端部と第1ブレード2間に隙間44を形成することで、第1ガイド板4の下端部を第1ブレード2から離間させた。これにより、両ブレード2,3を対向方向に進出させ突き合わせた際に、第2ブレード3と第1ガイド板4とが干渉してしまうことを抑制できる(
図1(a),(b)参照)。
【0024】
図5(a),(b)に示すように、第2ブレード3は、第1ブレード2と同じ形状に形成されている。すなわち、第2ブレード3は、平面視で長方形の板状に形成されており、その長辺方向における一端部(上端部)に、刃部31が形成されている。刃部31は、短辺方向における中央部に形成された半円形状の凹部を有するR刃部311と、平面視におけるR刃部311の両側にそれぞれ形成され第2ブレード3の一方の短辺に沿って直線状に形成されている平刃部312と、を有している。また、第2ブレード3には、第2ブレード3及び第2ガイド板5を駆動する駆動部(不図示)に固定するボルトを通すためのボルト穴32が形成されている。ボルト穴32は、第2ブレード3を厚さ方向に貫通するように形成されている。
【0025】
第2ブレード3には、第2ガイド板5が一体に設けられている。
図6(a),(b)及び
図7(a)~(c)に示すように、第2ガイド板5は、第2ブレード3における後方側の面に一体に設けられている。
【0026】
第2ガイド板5は、第2ブレード3と平行な板状に形成されており、第2ブレード3の後方側の面に溶接等により一体に設けられている。第2ガイド板5には、両ブレード2,3よりも後方(ケーブル6の基端側、絶縁体を残す側)のケーブル6をガイドする第2ガイド溝51が形成されている。すなわち、第2ガイド板5は、ブレード2,3よりも後方のケーブル6のブレード2,3に対する位置決めを行うためのものである。
【0027】
第2ガイド溝51は、両ブレード2,3の刃部21,31を突き合わせた際にケーブル6を保持する保持溝511と、保持溝511に連通されると共に両ブレード2,3の対向方向へと開口し、保持溝511から離れるほど開口幅が大きくなるテーパ状のケーブル誘い込み溝512と、を有している。
【0028】
保持溝511は、正面視でその外縁がU字状となるように形成されており、保持溝511の底部にケーブル6を保持したときに、ケーブル6の中心軸がR刃部311の中心位置と重なるように形成されている。本実施の形態では、第2ガイド板5は、ケーブル6に外嵌されたワイヤシール63(
図9(a)~(c)参照)を保持するように構成されている。そのため、保持溝511は、第1ガイド板4における保持溝411よりもサイズが大きい。これにより、予めケーブル6にワイヤシール63を外嵌した状態でストリップ作業を行うことが可能になる。ストリップ作業後にワイヤシール63を嵌め込もうとすると、ケーブル6の導体を構成する素線がワイヤシール63に刺さってしまい、ワイヤシール63の防水性が低下してしまうおそれがある。本実施の形態によれば、予めワイヤシール63をケーブル6に嵌め込んだ状態でストリップを行うことができるため、ワイヤシール63の防水性が低下するおそれがない。
【0029】
ケーブル誘い込み溝512は、ケーブル6を保持溝511へと誘い込むためのものである。第2ガイド板4の上端部、すなわちケーブル誘い込み溝412が形成されている部分は、第2ブレード3の上端部(刃部31)よりも上方へと突出している。
【0030】
また、第2ガイド板5には、第2ブレード3及び第2ガイド板5を駆動する駆動部(不図示)に固定するボルトを通すためのボルト穴52が形成されている。ボルト穴52は、第2ガイド板5を厚さ方向に貫通するように設けられている。
【0031】
また、第2ガイド板5における第2ガイド溝51の開口側の端部(上端部)は、ケーブル6の長手方向(第2ガイド板5の厚さ方向)において第2ブレード3と離間して設けられている。本実施の形態では、第2ガイド板5の上端部を、第2ガイド板5の他部よりも薄く形成し、第2ブレード3側に段差53を設け、第2ガイド板5の上端部と第2ブレード3間に隙間54を形成することで、第2ガイド板5の上端部を第2ブレード3から離間させた。これにより、両ブレード2,3を対向方向に進出させ突き合わせた際に、第1ブレード3と第2ガイド板5とが干渉してしまうことを抑制できる(
図1参照)。
【0032】
両ガイド板4,5の段差43,53の高さ(段差43,53の上下での厚さの差、すなわち隙間44,54の幅)は、例えば0.2mm程度である。段差43,53を設け適度な幅の隙間44,54を設けることで、例えばブレード2,3やガイド板4,5に反りが生じた場合であっても、ガイド板4,5とブレード2,3とが干渉してしまうことを抑制できる。
【0033】
(両ブレード2,3の刃形状)
両ブレード2,3の刃部21,31は、両ブレード2,3の対向方向に対して平行な平面21a,31aと、平面21a,31aに対して傾斜した傾斜面21b,31bと、を有している。両ブレード2,3は、前方(ケーブル6の先端側、ストリップされる側)が平面21a,31aとなるように設けられている。
【0034】
例えば、
図8(a),(b)に示すように、ブレード81の前面がケーブル6の長手方向に対して傾斜していると、ブレード81を前方に移動させる(あるいはケーブル6を後方に移動させる)際に、ストリップされる絶縁体62が傾き、それに追従して導体61が長手方向に対して傾くように変形し、導体61がブレード81の刃部に干渉して導体61に傷がついてしまうおそれが生じる。本実施の形態のように、両ブレード2,3の前面を平面21a,31aとすることで、ブレード2,3を前方に移動させる(あるいはケーブル6を後方に移動させる)際において、絶縁体62や導体61の傾きを抑制し、導体61に傷がつくことを抑制可能になる。
【0035】
(ガイド板4,5の配置について)
本実施の形態では、ブレード2,3の前方に第1ガイド板4を配置し、ブレード2,3の後方に第2ガイド板5を配置している。例えば、ブレード2,3の前方あるいは後方の一方のみ両ガイド板4,5を配置することも可能であるが、この場合、ケーブル6の曲がり癖によって、ガイド板4,5が無い側で曲がり(捩れ)が生じ、ストリップ時に導体61に傷がついてしまうおそれが生じる。また、ブレード2,3の前方あるいは後方の一方のみに両ガイド板4,5を配置した場合には、ケーブル誘い込み溝412,512を形成するスペースを確保することが困難となる。本実施の形態のように、ブレード2,3の前方に第1ガイド板4を配置し、ブレード2,3の後方に第2ガイド板5を配置することで、第1ガイド板4を第1ブレード2の下方へ突出させて配置すると共に、第2ガイド板5を第2ブレード3の上方へ突出させて配置することが可能となり、ケーブル誘い込み溝412,512を容易に形成することが可能になる。つまり、本実施の形態では、両ガイド板4,5におけるガイド溝41,51の開口側の端部(ケーブル誘い込み溝412,512を形成した部分)は、刃部21,31を突き合わせた状態でケーブル6の長手方向(両ガイド板4,5の厚さ方向)に見た場合に、互いに重なるように設けられている。
【0036】
第1ガイド板4は、第1ブレード2に溶接等により直接固定されており、第1ガイド溝41が第1ブレード2と近接している。第2ガイド板5は、第2ブレード3に溶接等により直接固定されており、第2ガイド溝51が第2ブレード3と近接している。両ガイド板4,5が両ブレード2,3と近接していることにより、両ガイド板4,5がケーブル6の上側または下側のみに設けられていても、ケーブル6の撚り癖の影響を低減することが可能である。なお、第1ガイド板部4がケーブル6の上側に設けられている場合は、第2ガイド板5はケーブル6の下側に設けられる。両ブレード2,3と両ガイド溝41,51(両ガイド板4,5)との間隔は、ケーブル6の外径の1/2以下が好ましく、ケーブル6の外径の1/4以下がより好ましい。本実施の形態では、ケーブル6の外径を3.0mmとして、両ブレード2,3と両ガイド溝41,51(両ガイド板4,5)との間隔をそれぞれ0.2mmとした。
【0037】
また、本実施の形態では、ケーブル6にワイヤシール63を嵌め込んだ状態でストリップを行うため、ワイヤシール63を設けた部分が重くなり、下方にたわみやすくなる。そこで、本実施の形態では、下方に設けた第2ガイド板5によってワイヤシール63を下方から支える構成とすることで、ワイヤシール63を設けた部分が下方にたわむことを抑制している。
【0038】
(ケーブルストリップ装置10の動作)
図9(a)に示すように、第1ブレード2及び第1ガイド板4を上方に、第2ブレード3及び第2ガイド板5を下方に後退した状態で、ケーブル6を所定の位置にセットする。ケーブル6には、予めワイヤシール63を嵌め込んでおく。
【0039】
その後、
図9(b)に示すように、第1ブレード2及び第1ガイド板4を下方に、第2ブレード3及び第2ガイド板5を上方に進出させる。この際、ケーブル6は、両ガイド板4,5のケーブル誘い込み溝412、512によって保持溝411,511に誘い込まれ、ブレード2,3に対する位置決めが行われる。この状態で、両ブレード2,3の刃部21,31(R刃部211,311)が絶縁体62に差し込まれ、絶縁体62に全周にわたって切れ込みが入れられる。
【0040】
その後、
図9(c)に示すように、両ブレード2,3及び両ガイド板4,5を前方に移動させる(あるいはケーブル6を後方に移動させる)。これにより、切れ込みを入れた位置で絶縁体62が切断され、前方に除去される。
【0041】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るストリップブレード1では、半円形状のR刃部211,311が形成された刃部21,31をそれぞれ有すると共に、刃部21,31同士を対向させて配置され、刃部21,31を突き合わせることでケーブル6の絶縁体62に切れ込みを形成可能な板状の第1ブレード2及び第2ブレード3と、第1ブレード2におけるケーブル6の先端側の面に設けられ、両ブレード2,3よりも先端側(前方側)のケーブル6をガイドする第1ガイド溝41を有する第1ガイド板4と、第2ブレード3におけるケーブル6の基端側の面に設けられ、両ブレード2,3よりも基端側(後方側)のケーブル6をガイドする第2ガイド溝51を有する第2ガイド板5と、を備えている。
【0042】
ブレード2,3として突き合わせタイプのR刃を用いることで、ケーブル6の絶縁体62の全周に切れ込みを入れることができ、ストリップ後に絶縁体62の一部が残ってしまうことを抑制できる。さらに、ガイド板4,5を備えることによって、ブレード2,3の直近で、かつケーブル6を挟み込むようにケーブル6を保持することが可能となり、曲がり癖等の影響によりケーブル6が傾いたり捩れたりしてしまうことを抑制しつつ、ブレード2,3に対するケーブル6の位置ずれを抑制し、導体61に傷が付いてしまうことを抑制できる。すなわち、本実施の形態によれば、ストリップ後に絶縁体62の一部が残ってしまうことを抑制でき、かつ、導体61に傷がつきにくいストリップブレード1を実現できる。
【0043】
なお、例えば、ケーブル6を保持するために、ブレード2,3の後方側に、ケーブル6を保持するための円筒状のガイドを設けることが一般に行われているが、本実施の形態によれば、このような円筒状のガイドを設ける必要がなくなり、部品点数の削減を図れる。また、本実施の形態にように、ケーブル6に予めワイヤシール63を嵌め込んでおく場合には、円筒状のガイドを使用することは困難であるが、本実施の形態によれば、このような円筒状のガイドを省略しても、両ガイド板4,5によってケーブル6の曲がり癖等を矯正して直線状とし、導体61に傷が付くことを抑制できる。
【0044】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0045】
[1]半円形状のR刃部(211,311)と前記R刃部(211,311)の両側の直線状の平刃部(212,312)とが形成された刃部(21,31)をそれぞれ有すると共に、前記刃部(21,31)同士を対向させて配置され、前記刃部(21,31)を突き合わせることでケーブル(6)の絶縁体(62)に切れ込みを形成可能な板状の第1ブレード(2)及び第2ブレード(3)と、前記第1ブレード(2)における前記ケーブル(6)の先端側の面に設けられ、前記両ブレード(2,3)よりも先端側の前記ケーブル(6)をガイドする第1ガイド溝(41)を有する第1ガイド板(4)と、前記第2ブレード(3)における前記ケーブル(6)の基端側の面に設けられ、前記両ブレード(2,3)よりも基端側の前記ケーブル(6)をガイドする第2ガイド溝(51)を有する第2ガイド板(5)と、を備え、前記両ブレード(2,3)の前記刃部(21,31)は、前記両ブレード(2,3)の対向方向に対して平行な平面(21a,31a)と、前記平面(21a,31a)に対して傾斜した傾斜面(21b,31b)と、を有し、前記ケーブル(6)の先端側が前記平面(21a,31a)となるように設けられている、ストリップブレード(1)。
【0046】
[2]前記第1ガイド板(4)は、前記第1ブレード(2)に直接固定されており、前記第1ガイド溝(41)が前記第1ブレード(2)と近接しており、前記第2ガイド板(5)は、前記第2ブレード(3)に直接固定されており、前記第2ガイド溝(51)が前記第2ブレード(3)と近接している、[1]に記載のストリップブレード(1)。
【0047】
[3]前記第1ブレード(2)と前記第1ガイド溝(41)との間隔は、前記ケーブル(6)の外径の1/2以下であり、前記第2ブレード(3)と前記第2ガイド溝(51)との間隔は、前記ケーブル(6)の外径の1/2以下である、[2]に記載のストリップブレード(1)。
【0048】
[4]前記ガイド溝(41,51)は、前記刃部(21,31)を突き合わせた際に前記ケーブル(6)を保持する保持溝(411,511)と、前記保持溝(411,511)に連通されると共に前記両ブレード(2,3)の対向方向へと開口し、前記保持溝(411,511)から離れるほど開口幅が大きくなるテーパ状のケーブル誘い込み溝(412,512)と、を有する、[1]乃至[3]の何れか1項に記載のストリップブレード(1)。
【0049】
[5]前記両ガイド板(4,5)における前記ガイド溝(41,51)の開口側の端部は、前記刃部(21,31)を突き合わせた状態で前記ケーブル(6)の長手方向に見た場合に、互いに重なるように設けられている、[4]に記載のストリップブレード(1)。
【0050】
[6]前記両ガイド板(4,5)における前記ガイド溝(41,51)の開口側の端部は、前記ケーブル(6)の長手方向において前記ブレード(2,3)と離間して設けられている、[4]または[5]に記載のストリップブレード(1)。
【0051】
[7]前記両ブレード(2,3)は、鉛直方向上下に対向するように設けられており、前記第1ブレード(2)及び前記第1ガイド板(4)が鉛直方向における上方に設けられ、前記第2ブレード(3)及び前記第2ガイド板(5)が鉛直方向における下方に設けられている、[1]乃至[6]の何れか1項に記載のストリップブレード(1)。
【0052】
[8]前記両ブレード(2,3)は、鉛直方向上下に対向するように設けられており、前記第1ブレード(2)及び前記第1ガイド板(4)が鉛直方向における下方に設けられ、前記第2ブレード(3)及び前記第2ガイド板(5)が鉛直方向における上方に設けられている、[1]乃至[6]の何れか1項に記載のストリップブレード(1)。
【0053】
[9]前記第2ガイド板(5)は、前記ケーブル(6)に外嵌されたワイヤシール(63)を保持するように構成されている、[6]に記載のストリップブレード(1)。
【0054】
[10][1]乃至[9]の何れか1項に記載のストリップブレード(1)と、前記両ブレード(2,3)をその対向方向に進退駆動する駆動部と、を備えた、ケーブルストリップ装置(10)。
【0055】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…ストリップブレード
10…ケーブルストリップ装置
2…第1ブレード
21…刃部
21a…平面
21b…傾斜面
211…R刃部
3…第2ブレード
31…刃部
31a…平面
31b…傾斜面
311…R刃部
4…第1ガイド板
41…第1ガイド溝
411…保持溝
412…ケーブル誘い込み溝
5…第2ガイド板
51…第2ガイド溝
511…保持溝
512…ケーブル誘い込み溝
6…ケーブル
61…導体
62…絶縁体
63…ワイヤシール