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特許7219870ガス流量検証のためのマルチチャンバ変化率システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】ガス流量検証のためのマルチチャンバ変化率システム
(51)【国際特許分類】
   G01F 25/10 20220101AFI20230202BHJP
   G05D 7/06 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
G01F25/10 Z
G05D7/06 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020555537
(86)(22)【出願日】2019-05-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 JP2019019638
(87)【国際公開番号】W WO2019225496
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】62/675,529
(32)【優先日】2018-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】スミルノフ,アレクセイ ヴィ.
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-531999(JP,A)
【文献】特表2012-509528(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0343875(US,A1)
【文献】実開平02-065124(JP,U)
【文献】特表2011-510404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 25/00
G01F 1/34
G05D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N個のチャンバの集まりと、
前記N個のチャンバの集まりにガスを引き込むか、又は、前記N個のチャンバの集まりからガスを引き出す手段と、
それぞれが前記N個のチャンバの対応する1個に連結しているN個の圧力センサと、
前記N個のチャンバ間でガスを再分配する手段と、
前記圧力センサに連結しており、ガスの再分配による前記N個のチャンバそれぞれの圧力の変化率を取得し、前記N個のチャンバそれぞれの圧力の変化率に基づいて前記N個のチャンバの集まりに流入するか又は前記N個のチャンバの集まりから流出するガスの流量を算出する測定モジュールと
を備える、マルチチャンバ変化率流量計システム。
【請求項2】
前記N個のチャンバの集まりにガスを引き込むか、又は、前記N個のチャンバの集まりからガスを引き出す手段は、
上流弁と、
下流弁と、
真空ポンプと
を含んでおり、
前記測定モジュールは、
前記上流弁を閉じ、前記下流弁を開いて、前記真空ポンプにて前記N個のチャンバを空にし、及び、
前記下流弁を閉じ、前記上流弁を開いて、前記N個のチャンバの集まりにガスを引き込む
ように構成されている、請求項1に記載のマルチチャンバ変化率流量計システム。
【請求項3】
前記N個のチャンバの集まりの入口と前記N個のチャンバの集まりの出口との間に迂回弁を介して連結されている迂回管を更に備えており、
前記測定モジュールは、
前記上流弁が閉じられて、前記下流弁が閉じられる前に、ガスが前記迂回管を通って流れて非零流量を生成する間に、前記迂回弁を開き、及び、
前記N個のチャンバの集まりにガスを引き込むために、前記上流弁の開放に関連して前記迂回弁を閉じる
ように構成されている、請求項2に記載のマルチチャンバ変化率流量計システム。
【請求項4】
前記迂回弁及び前記上流弁は三方弁として一体化されている、請求項3に記載のマルチチャンバ変化率流量計システム。
【請求項5】
前記N個のチャンバの集まりにガスを引き込むか、又は、前記N個のチャンバの集まりからガスを引き出す手段は、
上流弁と、
下流弁と、
真空ポンプと
を含んでおり、
前記測定モジュールは、
前記上流弁を開いて前記N個のチャンバの集まりにガスを第1の流量にて引き込み、前記下流弁を開いて前記第1の流量を超える第2の流量にて前記N個のチャンバの集まりからガスを引き出して前記真空ポンプにて前記N個のチャンバを空にし、及び、
前記下流弁を閉じて前記N個のチャンバの集まりにガスを引き込む
ように構成されている、請求項1に記載のマルチチャンバ変化率流量計システム。
【請求項6】
それぞれが前記N個のチャンバの対応する1個に連結しているN個の温度センサを備えており、
前記測定モジュールは、前記温度センサに連結しており、前記N個のチャンバそれぞれの温度を取得し、前記N個のチャンバそれぞれの圧力の変化率及び前記N個のチャンバそれぞれの温度に基づいて前記N個のチャンバの集まりに流入するか又は前記N個のチャンバの集まりから流出するガスの流量を算出する、請求項1に記載のマルチチャンバ変化率流量計システム。
【請求項7】
前記N個のチャンバ間でガスを再分配する手段は、各チャンバと別のチャンバとの間の導管を含む、請求項1に記載のマルチチャンバ変化率流量計システム。
【請求項8】
前記導管は1又は複数の流量絞りを有する、請求項7に記載のマルチチャンバ変化率流量計システム。
【請求項9】
前記N個のチャンバの集まりにガスを引き込むか、又は、前記N個のチャンバの集まりからガスを引き出す手段は、
上流弁と、
下流弁と、
ガス加圧器と
を含んでおり、
前記測定モジュールは、
前記上流弁を開き、前記下流弁を閉じて、前記ガス加圧器にて前記N個のチャンバの集まりを加圧し、及び、
前記下流弁を開き、前記上流弁を閉じて、前記N個のチャンバの集まりからガスを引き出す
ように構成されている、請求項1に記載のマルチチャンバ変化率流量計システム。
【請求項10】
マルチチャンバ変化率流量計システムにてガスの流量を測定する方法において、
N個のチャンバの集まりにガスを引き込むか、又は、前記N個のチャンバの集まりからガスを引き出すこと、
それぞれが前記N個のチャンバの対応する1個に連結しているN個の圧力センサから示度を取得すること、
前記N個のチャンバ間でガスを再分配すること、及び、
前記N個のチャンバそれぞれの圧力の変化率に基づいて前記N個のチャンバの集まりに流入するか又は前記N個のチャンバの集まりから流出するガスの流量を算出すること
を有する、方法。
【請求項11】
前記N個のチャンバの集まりにガスを引き込むか、又は、前記N個のチャンバの集まりからガスを引き出すことは、
前記N個のチャンバを空にすること、及び、
上流弁を開いて、前記N個のチャンバの集まりにガスを引き込むこと
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記N個のチャンバの集まりの周りにガスを迂回させて、前記N個のチャンバの集まりにガスを引き込むか又は前記N個のチャンバの集まりからガスを引き出す前に、非零流量を生成することを更に有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記N個のチャンバの集まりにガスを引き込むか、又は、前記N個のチャンバの集まりからガスを引き出すことは、
前記N個のチャンバの集まりにガスを第1の流量にて引き込み、前記第1の流量を超える第2の流量にて前記N個のチャンバの集まりからガスを引き出して前記N個のチャンバ外よりも前記N個のチャンバ内で低い圧力を生成すること、及び、
前記低い圧力が閾値に到達したときに前記N個のチャンバの集まりからガスを引き出すことを止めること
を含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスフローコントローラを評価するためのシステム及び方法に関する。特に、限定はされないが、本発明は、マスフローコントローラの動作態様を評価するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的なマスフローコントローラ(MFC)は、ガスの流量を設定し、測定し、制御する装置である。MFCの重要な部分は、装置を通って流れるガスの質量流量を測定するセンサである。MFCは、センサの出力と所定のセットポイントとを比較し、ガスの質量流量をこの所定のセットポイントに維持するように制御弁を調節する。
【0003】
MFCの開発段階にあって、MFCの故障修理時又はMFCの動作検査時に、MFCが想定通りに作動しているかを判断するためにMFCは評価される。一つの評価手法は、MFCをガス供給源に接続した後、特定の質量流量に対応する特定のセットポイントにMFCを設定することを含む。ガスの測定質量流量を得るために別個のマスフローメータ(MFM)が用いられて、その測定質量流量が(MFCが提供するべき)特定の質量流量と同じであるかを判断する。測定質量流量が(セットポイントが提供するべき)その特定の質量流量と異なっている場合には、MFCがどうして想定通りに又は希望通りに作動していないかを判断すべく、MFCは更に分析される。
【0004】
MFMは多くの条件下にあって有意義な流量情報を提供することができるが、測定質量流量の1又は複数の属性(例えば、雑音及び/精度)に不利に影響を及ぼす多くの流量条件が存在する。よって、MFMから出力される測定質量流量信号を改善するための新しい方法が望まれている。典型的なマスフローコントローラ(MFC)は、さまざまな工業プロセスの中でも、熱エッチング、ドライエッチングなどの工業プロセスにおけるガスの流量を設定し、測定し、制御する装置である。MFCの重要な部分は、装置を通って流れるガスの質量流量を測定する熱式流量センサである。
【発明の概要】
【0005】
一態様は、N個のチャンバの集まりと、このN個のチャンバの集まりへガスを引き込むか又はこのN個のチャンバの集まりからガスを引き出す手段と、対応するチャンバに連結したN個の圧力センサと、N個のチャンバ間でガスを再分配する手段とを含むマルチチャンバ変化率流量計システムとして特徴付けられる。測定モジュールは、圧力センサに連結しており、ガスの再分配によるチャンバそれぞれにおける圧力の変化率を取得し、各チャンバにおける圧力の変化率に基づいて、N個のチャンバの集まりに流入するか又はN個のチャンバの集まりから流出するガスの流量を算出する。
【0006】
別の態様は、マルチチャンバ変化率流量計システムにてガスの流量を測定する方法として特徴付けられる。この方法は、N個のチャンバの集まりへガスを引き込むか又はこのN個のチャンバの集まりからガスを引き出すことと、それぞれが対応するN個のチャンバそれぞれに連結しているN個の圧力センサから示度を取得することと、N個のチャンバ間でガスを再分配することとを含む。各チャンバにおける圧力の変化率に基づいて、N個のチャンバの集まりに流入するか又はN個のチャンバの集まりから流出するガスの流量が算出される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】マルチチャンバ変化率流量計の実施の形態が実装されているマスフローコントローラ(MFC)試験システムを示すブロック図である。
図2A図1のマルチチャンバ変化率流量計の典型的な実施の形態を示す図である。
図2B図1のマルチチャンバ変化率流量計の別の典型的な実施の形態を示す図である。
図3図2A及び図2Bにおけるマルチチャンバ変化率流量計の実施の形態の動作を示す3つのグラフである。
図4図1のマルチチャンバ変化率流量計の更に別の典型的な実施の形態を示す図である。
図5図4におけるマルチチャンバ変化率流量計の実施の形態の動作を示す3つのグラフである。
図6図1のマルチチャンバ変化率流量計の追加の典型的な実施の形態を示す図である。
図7図6におけるマルチチャンバ変化率流量計の実施の形態の動作を示す3つのグラフである。
図8】開示された実施の形態に関連して実行される方法を示すフローチャートである。
図9】典型的なコンピューティングシステムのブロック図である。
図10】従来のマスフローメータを示す図である。
図11図10のマスフローメータにおける入口流量及び圧力のグラフである。
図12図10のマスフローメータにて生成される圧力及び算出流量のグラフである。
図13】別の従来のマスフローメータを示す図である。
図14図13に示される形態から生成される圧力及び算出流量を示すグラフである。
図15図13に示される形態から生成される圧力及び算出流量を示す別のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1を参照すると、試験中のMFC102がマルチチャンバ変化率流量計104に連結されているMFC試験システム100が示されている。MFC102及び分析モジュール106に提供されるセットポイント信号も示されている。図示するように、マルチチャンバ変化率流量計104は、MFC102及びマルチチャンバ変化率流量計104を通って流れるガスの質量流量を示す測定流量信号108を出力する。
【0009】
マルチチャンバ変化率流量計104は、1)MFC102を移動するガスの流量が一時的に変化したときのMFC102の動作特性を測定すること、2)MFC102にて制御される流量の安定性を測定すること、及び、3)MFC102の精度を測定することを含むMFC102の動作態様を評価するために役立つ。MFC試験システム100は、MFC102の開発(例えば、アルゴリズム及び構造的な設計開発)中とMFC102の故障修理/動作検査とについて役立つ。試験を実行する際に、MFC102は自身の制御ループに従って作動され、ガスの実際の流量を測定しているマルチチャンバ変化率流量計104と同じガス流路にMFC102は配置される。MFC102に入るガスは、(加圧ガス収納容器を含む)種々のガス供給源から由来する。
【0010】
図1に示されるMFC試験システム100は、マルチチャンバ変化率流量計104にガスが流れ込むような上昇率(RoR)型の試験システムとして動作するように構成されており、測定流量信号108を生成するために(ここで更により詳細に述べられる)ガスの圧力の上昇率が用いられる。マルチチャンバ変化率流量計104がMFC102の上流側に配置されて、マルチチャンバ変化率流量計104からガスが流れ出すような下降率(RoD)型の試験システムとして、マルチチャンバ変化率流量計104が動作するようにしても良いことを、当業者であれば、この開示を参照することにより理解する。RoD型のシステムが実装された場合には、測定流量信号108を生成するためにガス圧力の低下する割合が用いられる。一貫性及び明瞭化のために、ここで記載するマルチチャンバ変化率流量計104の実施の形態は、RoR型の流量計とするが、これらの実施の形態は典型的な一例であって、本開示を参照すればRoD型の実施の形態も容易に理解されることは、認識されるべきである。
【0011】
MFC試験システム100は、また、マスフローコントローラ102をマスフローメータに置き換えることにより、そのマスフローメータを試験するように適応されており、マスフローメータの流量センサ信号が、測定流量信号108と比較するために、分析モジュール106へ提供される。この適応では、マスフローメータに入るガスがマスフローコントローラから提供され得る。ここで更に論じるように、マルチチャンバ変化率流量計104は、シングルチャンバ変化率流量計の多くの側面を改善する。マルチチャンバ変化率流量計104の利点の評価を提供するために、図10図15を参照してシングルチャンバによる取り組みがまず論じられる。
【0012】
図10に示される試験MFMは、チャンバ、圧力センサ、温度センサ、入口弁、及び出口弁から構成される圧力上昇率(RoR)型システムである。出口弁はチャンバを真空ポンプに接続し、所望の真空度が達成した後に、出口弁は閉まり、入口弁は開いて、測定される流れがチャンバに入る。実際の(入口の)流量及びチャンバの圧力は、図11に示す入口流量及び圧力のようになる。
【0013】
圧力センサ及び温度センサは、ガスパラメータを測定するために用いられ、算出ガス流量はこれらのパラメータから由来する。理想気体の法則であるPV=nRTによれば、ガス流量は、流量=dn/dt=(V/R)×d(P/T)/dtとして算出され得る。急速な流量偏差を検出するために、温度は一定であると考えられ、流量は圧力の導関数の関数として、流量=V/(RT)×dP/dtとなる。流量が圧力の導関数を用いて表されるので、高周波の圧力センサノイズが増幅され、図12に示すように、算出流量信号において相当量のノイズを生成する。
【0014】
正確な測定のために、長期間にわたってノイズが除かれ得る。しかし、この除去は、例えば、MFC102への流入における圧力障害、又はMFC102制御ループの異常動作によって引き起こされる小さくて速い流量偏差の検出を行えなくする。図13に示すように異なる圧力測定領域を有する複数の圧力センサを用いることによって、より良好な結果を得ることができる。まず、最も高感度の圧力センサP1からのデータが使用され、次に、チャンバの圧力が上昇すると、データ取得がより感度の低い圧力センサP2に切り換えられる。より感度の高い圧力センサのノイズの絶対値は典型的には小さいので、引き出される流量のノイズも処理の初期にはより低くなり、図14に示すように、より感度の低い圧力センサP2,P3が使用されていくにつれて、ノイズは増加していく。
【0015】
このような手法は、最も高感度の圧力センサが使用される試験過程の初期においてのみ小さな流量偏差の検出を可能とする。その後しばらくして感度の低い圧力センサが使用されると、引き出される流量のノイズが非常に大きくなって、図15に示すように、小さな流量偏差の検出は行えなくなる。
【0016】
図13に示されるシステムを作動するこの方法は、また、一の圧力センサから別の圧力センサへの切り換え点における算出流量の不連続性を避けるために、圧力センサの態様の非常に正確な特性(例えば、感度及び非線形度)を必要とする。
【0017】
再び図1を参照して、マルチチャンバ変化率流量計104に設けられる多くの追加のチャンバを採用することにより、更なる変更例が可能であることを、出願人は知見した。一般的に、マルチチャンバ変化率流量計104はN(Nは2以上)個のチャンバを含んでいる。
【0018】
例えば、図2Aを参照すると、4個のチャンバ、即ち、主チャンバ及び3個の追加チャンバ(チャンバ1、チャンバ2、及びチャンバ3)を含んでおり、各追加チャンバは3個の流量絞り220の対応するそれぞれを介して主チャンバに連結している、マルチチャンバ変化率流量計104の実施の形態200Aが示されている。主チャンバは圧力センサPに連結し、各追加チャンバは3個の圧力センサP1,P2及びP3の対応するそれぞれに連結している。主チャンバの上流側に上流弁112があり、主チャンバの下流側に下流弁114があって、真空ポンプ222が下流弁114に連結している。
【0019】
また、圧力センサP,P1,P2,P3それぞれに信号線(図示せず)介して連結し、主チャンバ、チャンバ1、チャンバ2、チャンバ3それぞれから圧力信号PS,PS1,PS2,PS3を受け取る測定モジュール210も示されている。測定モジュール210は、また、上流弁112、下流弁114、及び真空ポンプ222に信号線(図示せず)を介して連結しており、上流弁信号USVS、下流弁信号DSVS、及び真空ポンプ信号VPSそれぞれを提供する。多くの実装にあって、上流弁信号USVS、下流弁信号DSVS、及び真空ポンプ信号VPSのそれぞれは電気的制御信号(例えば、直流電圧)であって良い。
【0020】
例えば、上流弁112及び下流弁114が高電圧で閉じられて低電圧(例えば、0電圧)で開けられように構成されても良く、また、真空ポンプ222が高電圧でオンとされて低電圧でオフとされるように構成されても良いことを、当業者であれば理解する。別の実装では、上流弁112、下流弁114、及び真空ポンプ222の1又は複数が電圧範囲にわたって比例対応にて作動するように構成されても良いことが考えられる。これらの別の実装では、上流弁信号USVS、下流弁信号DSVS、及び真空ポンプ信号VPSの1又は複数が、上流弁112、下流弁114、及び/又は真空ポンプ222の所望の設定に応じて電圧範囲にわたって変動しても良い。また、電気的制御信号に代えて空気圧制御信号を利用しても良いことが考えられる。
【0021】
必要とされなくてもよいが、上流弁112はMFC102からの流れを受け取るように配置された三方弁(図2Aに示すように)として実装されても良く、上流弁112は主チャンバに連結された1つの出力と、迂回管116を介して真空ポンプ222に連結された別の出力とを有する。上流弁112は、1)ガスが主チャンバに流入せず迂回管116も通らないように完全に閉鎖すること、2)主チャンバへの流路は閉じた状態で迂回管116には開放すること、3)迂回管116への流路は閉じた状態で主チャンバへの流路は開けることを行う動作が可能である。代替的に、別の迂回弁が迂回管116への流路を連結させても良く、この実装では、上流弁112が閉じられている間にこの迂回弁は開いている。このような弁構成は、以下に述べる少なくとも3つの試験モードを可能にする。
【0022】
更に、各チャンバは、対応するチャンバに流れ込むガスの温度を取得するために設けられた温度センサ(図示せず)を含んでいても良い。各温度センサからの温度信号は、明瞭化のために図面に示されていない接続により、測定モジュール210へ提供される。測定モジュール210につながる圧力センサからの信号線もまた示されていない。測定モジュール210と上流弁112、下流弁114、及び真空ポンプ222との間の接続もまた、明瞭化のために示されていない。
【0023】
多くの実装にあっては、チャンバそれぞれが異なる体積を有しているが、いくつかの実装にあっては、主チャンバがチャンバ1、チャンバ2、又はチャンバ3の1つと同じ体積を有している。チャンバ1、チャンバ2、及びチャンバ3の1又は複数と同じ体積を有するチャンバ1、チャンバ2、又はチャンバ3の1つを持った図2Aの実施の形態200Aを実装することも可能である。圧力センサP1,P2,P3のそれぞれは、同じ圧力範囲を有して実装されても良く、又は異なる圧力範囲を有して実装されても良い。流量絞り220は、種々の型の絞りで実装されて良い。流量絞り220の機能は応答を平滑化するか又は弱めることであり、チャンバ1、チャンバ2、又はチャンバ3への流量が主チャンバの圧力変動にあまり応答しない。より詳細には、主チャンバから他のチャンバへの流量が流量絞り220によって制限され、結果として、平滑化するか又は弱まることになる。よって、チャンバ1、チャンバ2、及びチャンバ3の圧力は、流量の変化によっても、主チャンバの圧力ほどゆらぎが大きくない。
【0024】
実施の形態200Aの動作態様は採用される試験モードに応じて(後に詳述するように)変わるが、実施の形態200Aで実行されるすべての試験モードにおいて、下流弁114は開けられて、すべてのチャンバからガスを引き出すために真空ポンプ222が接続されている。チャンバからガスを引き出す際に、チャンバの圧力を閾値圧力より低く落とさずにチャンバが閾値圧力に到達するまでチャンバからガスを引き出すことは有益であることが分かった。特に、いくつかの例にあって、チャンバの圧力が閾値圧力より高く維持されているときに、流量絞り220はより精度よく作動する。例えば、閾値圧力は、100Torr(約13.3kPa)又は10Torr(約1.3kPa)であって良いが、これらの閾値圧力は典型的な例に過ぎず、使用される流量絞り220の特有の型に応じて別の閾値圧力が用いられても良い。
【0025】
実施の形態200Aの変形例では、追加チャンバ(チャンバ1、チャンバ2、及びチャンバ3)のそれぞれが、対応する下流弁114を介して真空ポンプ222に連結している引き出しポートを含んでいても良い。試験モードの間に、(図2Aに示して前述した)単一の下流弁114を開閉する代わりに、すべての下流弁114が同時に開閉される。この構成は、すべてチャンバ、特に大きな体積のチャンバからのガスの速い引き出しを提供する。なぜなら、追加チャンバ(チャンバ1、チャンバ2、及びチャンバ3)を空にするために、ガスは流量絞り220を通って引き出される必要がないからである。
【0026】
更に、実施の形態200Aで実行されるすべての試験モードにおいて、ガスがチャンバから引き出された後に、下流弁114は閉じられ、ガスが主チャンバのみに入って迂回管116に入らないように上流弁112が位置決めされる。ガスが流れ始めると、ガスは主チャンバに入り、主チャンバの圧力が上昇する。このとき、圧力の上昇率は主に主チャンバの体積で定義される。主チャンバの圧力が上昇していく間に、流量絞り220を通ってガスが追加チャンバに流入し始める。主チャンバの圧力変化の割合はゆっくりであるので、他のすべてのチャンバのガス圧力は、それらの体積及び流量絞り220の絞り特性に応じて上昇する。ガスがチャンバに流入していく間に、各チャンバの圧力及び温度は異なっていても良い。ガスの流れが停止した場合(例えば、MFC102が閉じるか又は入口弁が閉じられた場合)には、しばらくした後に圧力及び温度は均一化する。
【0027】
第1の試験モードでは、下流弁114が開いてチャンバからガスを引き出している間に、初めは上流弁112が完全に閉じられているのでガスが主チャンバへも迂回管116へも流入しない。上流弁112が完全に閉じられている間、MFC102内部の弁を閉じるようにMFC102は零流量セットポイントに設定される。その後、下流弁114が閉じられ、上述したようにガスが主チャンバにだけ流入できる(迂回管116には流入せず)ように上流弁112が位置決めされる。その後、MFC102のセットポイントが零流量セットポイントから非零セットポイントに変わり、ガスがMFC102を通って主チャンバに流入する。
【0028】
第2の試験モードでは、下流弁114が開いてチャンバからガスを引き出している間に、ガスが迂回管116を通って流れるが主チャンバには流入しないように上流弁112が位置決めされる。その後、MFC102は非零セットポイントに設定されて、ガスはMFC102を通って迂回管116に流入する。その後、下流弁114が閉じられ、ガスがMFC102を通り続けるが主チャンバにだけ流入できる(迂回管116には流入せず)ように上流弁112が位置決めされる。よって、この第2の試験モードは、MFC102が安定化した流量を既に提供している場合にMFC102の試験が可能である。この第2の試験モードでは、ガスがMFC102を通って主チャンバに流入している間に、MFC102はセットポイントが別のセットポイントに変更されて一の非零セットポイントから別のセットポイントへのMFC102の動作を試験する。
【0029】
第3の試験モードでは、下流弁114が開いてチャンバからガスを引き出している間に、
MFC102は非零セットポイントを与えられ、ガスが第1の流量でN個のチャンバの集まりに流入するように上流弁112が位置決めされ、下流弁114が開いていることにより、第1の流量を超える第2の流量でN個のチャンバの集まりからガスが引き出され、N個のチャンバの外側での圧力よりも低い圧力がN個のチャンバ内で生成される。
【0030】
閾値圧力に到達したときに、下流弁114は閉じられ(よって、N個のチャンバの集まりからのガスの引き出しを終わらせ)、ガスがMFC102を通り、上流弁112を通って主チャンバに流入し続けるように上流弁112が位置決めされる。第2の試験モードと同様に、この第3の試験モードは、MFC102が安定化した流量を既に提供している場合にMFC102の試験が可能である。ガスがMFC102を通って主チャンバに流入している間に、MFC102はセットポイントが別のセットポイントに変更されて一の非零セットポイントから別のセットポイントへのMFC102の動作を試験する。
【0031】
しかし、第3の試験モードはMFC102を通る流量が十分に少ない場合にのみ精度よく作動するので、ガスがMFC102を通ってチャンバに流入する間に真空ポンプ222はチャンバ内で閾値圧力を達成できる。MFC102を通る流量が多すぎる(チャンバ内で閾値圧力に達しない)場合には、所定時間のインターバルが代わりに使用される。所定時間が経過すると、下流弁114が閉じられ、チャンバの圧力が閾値圧力よりまだ高くても、他の試験モードと同様にその試験処理が続く。勿論、チャンバの圧力は、適正なシステム動作、性能、及び正確性の要求を満たすべきである。
【0032】
図2Aに示される実施の形態200Aについて多くの潜在的な変形例が存在することは理解される。例えば、実施の形態200Aの簡易な変形例では、迂回路が省略されて、上流弁112が簡単な二方弁で実現される。この簡易な変形例を用いて、上述した第1及び第3の試験モードが行われても良い。但し、第2の試験モードはチャンバ周囲のガスの迂回を必要とするので、この簡易な変形例は第2の試験モードには適さない。
【0033】
試験中に下流弁114は閉じられているので、主チャンバの圧力がMFC102の試験がもはや効率的に行えない試験圧力閾値に到達することを、当業者であれば理解する。よって、主チャンバの圧力がこの試験圧力閾値に到達したときには試験を停止するように、測定モジュール210は構成されている。この試験圧力閾値の特定値は、圧力センサP,P1,P2,P3の作動範囲、ガスがもはや理想気体のようにふるまわないような圧力、及び、高い出口圧力で適正に動作するMFC102の能力を含むいくつかの要素に依存する。
【0034】
次に、図2Bを参照すると、実施の形態200Aの変形例である実施の形態200Bが示されている。図示するように、図2Bに示す実施の形態200Bは、主チャンバを追加チャンバに結合するために遮断弁230(例えば、電気的に制御可能な遮断弁)が流量絞り220に直列に利用されている点を除いて、実施の形態200Aと実質的に同様である。明瞭化のために図示されていないが、測定モジュール210は、信号線を介して各遮断弁230に結合して、遮断弁230に制御信号を提供する。この実施の形態200Bでは、システム構成を変えるために、1又は複数の遮断弁230が閉じられる。このことにより、試験されているMFC102の流量範囲に基づいて選択される構成を可能とする。よって、図2Bに示す実施の形態200Bは、図2Aに示す実施の形態200Aと比較して付加的な柔軟性を提供する。しかし、図2Aに示す実施の形態200Aは、特定の変動しない流量範囲にてMFC102を試験するには依然として実行可能な手法である。
【0035】
図2Bに示す実施の形態の変形例にあっては、流量絞り220が含まれておらず、開いた際に、遮断弁230は、内部での流路の抑制的特性によって流量制限を果たす。
【0036】
図3を参照すると、図2A及び図2Bに示す実施の形態200A及び200Bの動作を表す3つのグラフが示されている。図3には、(異なる時間軸に沿って)、1)流量、2)圧力センサP,P1,P2,P3からの圧力測定値、3)(圧力測定値から算出された)算出流量が示されている。図示するように、急速な流量偏差が起こると(ポイント1に示す)、主チャンバの圧力(圧力センサPからの圧力測定値)が最初に影響され(ポイント3に示す)、主チャンバのみが存在しているかのように圧力の上昇率に変化が生じる。主チャンバの体積はすべてのチャンバの合計体積よりも小さいので、主チャンバの圧力に対する急速な流量偏差の影響がより多く露呈され、単一チャンバ設計に比べてより精度良く流量の偏差が検出され得る。
【0037】
急速な流量偏差の評価される改善度は、主チャンバの体積に対するすべてのチャンバの合計体積の割合にほぼ等しい。そして、流量偏差が生じた時間にかかわらずこの改善が効果を奏することは有益である。図3に示すように、後半の流量偏差(ポイント2に示す)も、その第2の後半の流量偏差の間に、目に見えて圧力センサPで検知される(ポイント4に示す)。この実施の形態200A及び200Bは、図10に示されてその動作が図12に示される設計とは対照的である。
【0038】
追加のチャンバ(チャンバ1,チャンバ2,チャンバ3)ヘの流量は制限されているので、これらのチャンバでの圧力上昇には限られた割合が存在する。追加のチャンバそれぞれにおけるこの限られた圧力上昇により、圧力センサ信号は高周波ノイズを低減して適正にフィルタされ得るので、結果として算出流量信号は、よりノイズが少なくなる(図15とは対照的な図3に示されるポイント5及び6)。各時点におけるシステムでのガスの合計量は、すべての圧力センサ及び温度センサからの示度並びに各チャンバの既知の体積を用いて算出される。この結果、算出流量に不連続性は存在しない。
【0039】
次に図4を参照すると、複数のチャンバが直列に接続されているマルチチャンバ変化率流量計104の別の実施の形態400が示されている。図示するように、(試験中のMFC102に接続された上流弁112に最も近く配された最も小さいチャンバ(チャンバ1)から、下流で真空ポンプ222に最も近く配された最も大きいチャンバ(チャンバ3)に向かうにつれて、チャンバ体積が増加している。但し、いくつかの実装例にあっては、チャンバ1、チャンバ2、及びチャンバ3の何れか同士が同じ体積を有していても良い。
【0040】
動作時に、上流弁112は最初閉じられており、下流弁114は開いており、真空ポンプ222はすべてのチャンバからガスを引き出すために利用される。その後、下流弁114が閉じられて、上流弁112は開けられ、チャンバ1(最も小さいチャンバ)へのガスの流入を促進してチャンバ1の圧力の上昇を生み出す。このとき、圧力の上昇率はほとんどチャンバ1の体積で定義される。チャンバ1の圧力が上昇していく間に、流量絞り420を介してチャンバ2へガスが流入し始める。チャンバ1の圧力変化率が減少すると、チャンバ2のガス圧力は、チャンバ2の体積と、チャンバ1及びチャンバ2間の流量絞り420の絞り特性とに応じて上昇する。
【0041】
このシステムでは同様な処理が他のN-1個のすべてのチャンバで繰り返される。流量絞り420によって生じるチャンバ間の制限により、次の下流側のチャンバにおける意味のある圧力上昇が後に始まる。安定状態の流量の急激な偏差がポイント1及び2で生じた場合、チャンバ1の圧力が最も影響され、まるでチャンバ1のみが存在しているかのように圧力上昇率の変化を生み出す(図5に示すポイント7及び8)。チャンバ1の体積はすべてのチャンバの合計体積よりも小さいので、チャンバ1の圧力に対する急速な流量偏差の影響が圧力センサP1の測定された圧力に、より多く露呈され、単一チャンバ設計に比べてより精度良く流量の変動が検出され得る(ポイント9及び10)。ガスの流れが停止したときに、すべてのチャンバは最初は異なる圧力及び温度を有しているが、これらはしばらくすると等しくなる。この実施の形態400は、図2Aを参照して上述した3つの試験モードに応じて作動する。
【0042】
各時点におけるシステムでのガスの合計量は、すべての圧力センサ及び温度センサからの示度並びに各チャンバの既知の体積を用いて算出される。この結果、算出流量に不連続性は存在しない。
【0043】
図2A図2B,及び図4の実施の形態に関連して、流量絞り220,420はすべての実施の形態の重要な部分である。流量絞り220,420の構成は、チャンバ間で圧力がどのように再分配されるのか、また、その結果として流量偏差がどのように正確に測定され得るのかを定義する。例えば限定はされないが、この流量絞り220,420は、層流素子(LFE)、単純なオリフィス型の制限素子、臨界ノズル、及び遮断弁などの制限素子にて実現される。
【0044】
流量絞り220,420は、固定であっても良いし、又は、調整可能であっても良い。調整可能である場合に、流量絞り220,420は、手動にて調整可能であっても良いし、又は、電気機械的に調整可能であっても良い。電気機械的に調整可能な絞りが実装される場合、流量絞り220,420は試験中に非変更位置に設置されるか、又は、流量絞り220,420は作動中に(例えば、測定されたシステムパラメータ及び特定されたアルゴリズムに基づいて)動的に調整される。
【0045】
次に図6を参照すると、上流側のチャンバ(ガス入口により近く配置されたチャンバ)の圧力に基づいてチャンバ間の制限を規制する典型的な制御メカニズムを有するマルチチャンバ変化率流量計104の実施の形態600が示されている。図示するように、この実施の形態600での測定モジュール210は、流量絞り620に流量絞り信号FR1,FR2を提供するように構成されている。
【0046】
図6を参照しつつ、典型的な流量、対応する圧力測定値、及び圧力測定値から算出された算出流量のグラフを示す図7も参照して説明する。図7に示すように、チャンバ1の圧力がポイント11付近で所定値700に近づきつつある間に、チャンバ1及びチャンバ2間の流量絞り620は更に開き、よって、より多くのガスがチャンバ1からチャンバ2へ移動し、チャンバ1の圧力が試験中にこの所定値700に到達してその近傍(例えば、少し上又は少し下)に留まる。これにより、大きい入口流量である場合に上流側のチャンバがあまりにも高い圧力を有することを防止する。図7に示すように、ガスがチャンバを通って流れる間に、1又は複数の他のチャンバ(例えば、チャンバ2)は対応する所定の圧力レベル(例えば、ポイント12付近のレベル702)に到達し、その後、すべてのガスは、より大きな体積を有する下流側のチャンバ(例えば、チャンバ3)内に蓄積する。
【0047】
図8を参照すると、ここに開示される実施の形態に関連して実行される方法を表すフローチャートが示されている。図示するように、ガスがN個のチャンバの集まりに引き込まれるか又はN個のチャンバの集まりから引き出される(ブロック802)。上述したように、ここに開示されるマルチチャンバ変化率流量計システムは、上昇率型システム又は下降率型システムとして動作する。下降率型システムの場合には、チャンバがガスにて加圧され、その後、ガスをチャンバから引き出すように下流弁114が開かれる。例えば、測定モジュール210は、上流弁112を開いて下流弁114を閉じ、ガス加圧器にてN個のチャンバの集まりを加圧する。その後、下流弁114が開けられて上流弁112が閉じられ、N個のチャンバの集まりからガスを引き出す。このガス加圧器は、上流弁112にガスを送達する加圧ガス収納容器であって良い。上昇率型システムの場合には、測定モジュール210は、上流弁112を閉じて下流弁114を開き、真空ポンプ222にてN個のチャンバの集まりを空にする、その後、下流弁114が閉じられて上流弁112が開けられ、N個のチャンバの集まりにガスを引き込む。
【0048】
図示するように、それぞれがN個のチャンバの対応する1個に連結しているN個の圧力センサから示度が取得され(ブロック804)、ガスがN個のチャンバ間で再分配される(ブロック806)。本開示は、N個のチャンバ間でガスを再分配するためのいくつかの手段を述べる。高いレベルにあっては、マルチチャンバ変化率流量計システムは、どのように圧力が再分配されるのか、つまり、どのようにガスがチャンバ間で再分配されるのかを定義する、接続されたチャンバ間の絞りを含んでいる。上述したように、この絞りは、流量絞り220,420、及び遮断弁230であって良い。更に、N個のチャンバの配列も、どのようにガスがチャンバ間で再分配されるのかを定義する。例えば、図2A及び図2Bを参照して説明した実施の形態は、図4及び図6を参照して説明した実施の形態とは、(どのようにガスがチャンバ間で再分配するのかに関して)異なる進歩をもたらす。よって、制限に関連したN個のチャンバの配列及び構成は、N個のチャンバ間でのガスの再分配を果たす(ブロック806)。
【0049】
N個のチャンバの集まりに流入するか又はこの集まりから流出するガスの流量が、各チャンバの圧力の変化率に基づいて算出される(ブロック808)。理想気体の法則PV=nRTによれば、ガス流量は、流量=dn/dt=(V/R)×d(P/T)/dtとして算出され得る。高精度の正確性が要求されない場合、温度は一定であると見なせるため、(例えば、急速な流量偏差を検出するために)ガス流量が圧力導関数の関数として流量=(V/RT)×dP/dtで算出される。マルチチャンバ変化率流量計104へ流入するか又はここから流出する合計流量は、N個のチャンバへのガス流量の総計に等しい。ガスがチャンバ間で再分配されている間に、N個のチャンバの1又は複数への流量は負の値であることに注目すべきである。
【0050】
図9を参照すると、アルゴリズムを果たすために論理動作を実行するここに開示されたコンポーネント及びシステムの態様を実現するために利用される内部コンポーネントを表すコンピューティングシステム800のブロック図が示されている。例えば、分析モジュール106及び測定モジュール210は、プロセッサ実行可能な命令を伴ったコンピューティングシステム800により(少なくとも一部が)実現される。
【0051】
図示するように、ディスプレイ812及び不揮発性メモリ820は、ランダムアクセメモリ(RAM)824、(N個の処理コンポーネントを含む)処理部826、アナログ出力828の集まり、及びアナログ入力830の集まりが連結しているバス822に連結している。図9に示すコンポーネントは内部のコンポーネントを表しているが、表されるコンピューティングシステムが複製及び分散されても良いことは認識されるべきである。
【0052】
ディスプレイ812は概して作動してユーザに内容の表示を提供し、いくつかの実装では、ディスプレイ812はLCD又はOLEDで実現される。一般的に、不揮発性メモリ820は、デ-タとここに述べられた機能コンポーネントに関連する非一時的なプロセッサ実行可能なコードを含むプロセッサ実行可能なコードとを格納する(例えば、永続的に格納する)ように機能する。例えばいくつかの実施の形態にあっては、不揮発性メモリ820は、ブートローダコード、ソフトウェア、作動システムコード、ファイルシステムコード、及び、ここに述べられた方法を容易にするためのコードを含んでいる。
【0053】
多くの実装において、不揮発性メモリ820はフラッシュメモリ(例えば、NAND又はONENAND(登録商標)メモリ)で実現されるが、他のタイプのメモリが同様に利用され得ることは容易に予想される。不揮発性メモリ820からのコードを実行することは可能であるが、不揮発性メモリ820内の実行可能なコードが典型的にRAM824にロードされて処理部826内のN個の処理コンポーネントのうちの1又は複数にて実行される。
【0054】
RAM824に接続されたN個の処理コンポーネントは一般的に作動して、機能コンポーネント及びここで述べられた方法(例えば、図8を参照して述べられた方法)を果たすために不揮発性メモリ820に格納されている指示を実行する。例えば、分析モジュール106、測定モジュール210、並びに、マルチチャンバ変化率流量計104及びマスフローコントローラ102の他の論理的態様は、RAM824から得られる非一時的なプロセッサ読み取り可能なコードと関連してN個の処理コンポーネントのうちの1又は複数にて実現される。
【0055】
インターフェイス832は一般的に、ユーザがMFC試験システム100と相互に作用し合えるようにする1又は複数のコンポーネントを表現する。インターフェイス832は、例えば、キーパッド、タッチスクリーン、及び1又は複数のアナログ又はデジタルのコントローラを含んでおり、インターフェイス832がユーザからの入力を(アナログ出力828から出力される)セットポイント信号に翻訳するように使用されても良い。また、通信コンポーネント834は一般的に、MFC試験システム100が外部のネットワーク及び装置と通信できるようにする。当業者であれば、通信コンポーネント834が、様々な無線通信(例えば、WiFi)及び有線通信(例えば、イーサーネット)が可能である(例えば、集積された又は分散された)コンポーネントを含んでも良いことを認識する。
【0056】
開示した実施の形態について前述した説明は、当業者が本発明品を製造又は使用できるように提供される。これらの実施の形態に対する種々の変更は当業者にとって明らかであり、ここで定義される一般原則が、本発明の精神及び範囲を逸脱しないで他の実施の形態に適用されても良い。例えば、実施の形態は、直列、並列、及び直列・並列併用に配置された複数のチャンバの異なる変形例を含んでいても良い。よって、本発明は、ここに示された実施の形態に限定されることを意図してはおらず、ここで開示された原理及び新規な特徴に一致する最も広い範囲に符合する。
【0057】
要するに、本発明は、とりわけ、マスフローコントローラ及びマスフローメータを評価するためのシステム及び方法を提供する。ここに述べられた実施形態によって得られるのと実質的に同じ効果が得られるように、本発明、その使用、及びその構成において数多くの変異物及び代替物が作られることは、当業者であれば容易に理解できる。したがって、開示された典型的な形に本発明を限定する意図はない。多くの変異物、修正物、変更した構成は,ここに提示されたような開示発明の範囲及び精神の範囲内にある。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15