(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】治具、摩耗試験装置および摩耗試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/56 20060101AFI20230202BHJP
G01N 3/04 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
G01N3/56 M
G01N3/04 P
(21)【出願番号】P 2021056506
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2022-11-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】寺本 真ノ将
(72)【発明者】
【氏名】小関 秀峰
(72)【発明者】
【氏名】川畑 雄士
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/016517(WO,A1)
【文献】特表2007-513354(JP,A)
【文献】特開平09-250613(JP,A)
【文献】特開2016-159388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸中心に回転する治具であって、
凹部を有する基材部と、
一部が前記基材部の外周面から突出した状態で前記基材部の凹部に固定された接触部材とを有し、
前記接触部材の、治具回転方向の一端側は、前記基材部との段差によって前記基材部に係止され、
前記接触部材の、治具回転方向の他端側は、楔によって固定されていることを特徴とする治具。
【請求項2】
ワークの摩耗状態を測定する摩耗試験装置であって、
前記ワークを保持するワーク保持機構と、
前記ワークに対して接触及び非接触を繰り返す、請求項1に記載の接触治具と、
前記接触治具を回転自在に保持する回転機構と、
前記接触治具の端部を間欠的に加熱する加熱機構と、を備える
ことを特徴とする摩耗試験装置。
【請求項3】
ワークの摩耗状態を測定する摩耗試験方法であって、
請求項1に記載の接触治具の外周部を、前記ワークに接触および非接触させて、前記ワークに掛かる垂直抗力N及び摩擦力Fを測定する
ことを特徴とする摩耗試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩耗試験装置に関し、例えば、加熱した金属の成形加工に用いる金型の繰り返しの使用に伴う摩耗状態を測定するための摩耗試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱した金属材料のプレス加工や鍛造加工では、加工される金属材料を上下に配置された金型の間に挟み込んで大きな加圧力を負荷することにより、金属材料を塑性変形させて加工を行う。このような加工においては、金型が直接金属材料に接触するとともに大きな加圧力によって、金型と金属材料との間には繰り返しのすべり変形が生じる。このとき、金型と加熱された金属材料との間には摩耗が生じるため、当該摩耗による金型の損傷が大きいと、金型の割れ等が発生して金型の寿命が短くなってしまう。そのため、金属材料の摩耗特性を評価することが重要となる。
【0003】
特許文献1には、ワークの摩耗状態を測定する摩耗試験装置について、前記ワークを保持するワーク保持機構と、前記ワークに対して接触及び非接触を繰り返す接触ワークと、前記接触ワークを回転自在に保持する回転機構と、前記接触ワークの端部を間欠的に加熱する加熱機構とを備えた摩耗試験装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような接触ワーク(治具)では、着脱性が乏しく、試験効率向上の妨げになっていた。
【0006】
そこで本発明の目的は、脱着しやすい治具、治具を用いた摩耗試験装置および摩耗試験方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、軸中心に回転する治具であって、凹部を有する基材部と、一部が前記基材部の外周面から突出した状態で前記基材部の凹部に固定された接触部材とを有し、前記接触部材の、治具回転方向の一端側は、前記基材部との段差によって前記基材部に係止され、前記接触部材の、治具回転方向の他端側は、楔によって固定されていることを特徴とする治具である。
【0008】
また本発明は、ワークの摩耗状態を測定する摩耗試験装置であって、前記ワークを保持するワーク保持機構と、前記ワークに対して接触及び非接触を繰り返す、上述の接触治具と、前記接触治具を回転自在に保持する回転機構と、前記接触治具の端部を間欠的に加熱する加熱機構と、を備えることを特徴とする摩耗試験装置である。
【0009】
また本発明は、ワークの摩耗状態を測定する摩耗試験方法であって、上述の接触治具の外周部を、前記ワークに接触および非接触させて、前記ワークに掛かる垂直抗力N及び摩擦力Fを測定することを特徴とする摩耗試験方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、脱着しやすい治具、治具を用いた摩耗試験装置および摩耗試験方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図5】実施形態の接触治具を保持機構に取り付けたときの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、軸中心に回転する治具であって、凹部を有する基材部と、一部が前記基材部の外周面から突出した状態で前記基材部の凹部に固定された接触部材とを有し、前記接触部材の、治具回転方向の一端側は、前記基材部との段差によって前記基材部に係止され、前記接触部材の、治具回転方向の他端側は、楔によって固定されていることを特徴の一つとする治具である。
【0013】
以下、本発明に係る治具(接触治具)、かかる治具(接触治具)を備えた摩耗試験装置の実施形態について説明する。まず、
図1を用いて摩耗試験装置の概要を説明し、次に
図2~
図7を用いて、治具および治具を用いた摩耗試験装置の実施形態について説明する。なお、本明細書でいう摩耗試験とは、例えば、摩擦係数を測定する摩擦試験を含んだ試験としてもよく、摩擦・摩耗試験と換言することもできる。
【0014】
<摩耗試験装置>
ワークの摩耗状態を測定する摩耗試験装置の実施形態としては、前記ワークを保持するワーク保持機構と、前記ワークに対して接触及び非接触を繰り返す接触治具と、前記接触治具を回転自在に保持する回転機構と、前記接触治具の端部を間欠的に加熱する加熱機構と、を備え、前記接触治具として後述の構成を有することを特徴の一つとする摩耗試験装置である。
【0015】
図1に、摩耗試験装置の概要の斜視図を示す。
図1に示すように摩耗試験装置100は、ワークWを取り付けて保持するワーク保持機構110と、上記ワークWに対して接触及び非接触を繰り返す接触治具120と、接触治具120を回転自在に保持する回転機構130と、上記ワーク保持機構110に接続線142を介して接続されたデータ解析機構140と、接触治具120を加熱する加熱機構150と、を備えている。
【0016】
ワークWは、摩耗性能を評価する材料(試料)のことを指す。ワークWは、ワーク保持機構110の一側面側に露出するように取り付けられ、ワークWと対向する位置に、ワークWと接触する接触治具120が配置される。
図1中に図示しないが、回転駆動部を内蔵した回転機構130に回転自在に保持されており、接触治具は回転機構130によって回転力を付与されることにより、ワークWとの接触動作が行われる。回転機構130は、例えば旋盤等の工作機械の回転機構にそのまま適用することが可能であり、その場合、接触治具120の一端を支持する芯押し部132を流用することができる。
【0017】
ワークWは、例えば、(材種列挙)、適宜評価したい材料を選定すればよい。
【0018】
<摩耗試験方法>
上記の摩耗試験装置を用いた試験方法の一例を説明する。まず、接触治具120を回転させ、接触治具120の外周から突出した部分をワークWに接触する状態と非接触となる状態とを繰り返す。このとき、センサー等を用いてワークWにかかる垂直抗力N及び摩擦力Fを測定する。測定されたこれらのデータは、
図1に示す接続線を介してデータ解析機構140に送られて時系列データとして蓄積される。
【0019】
また、上記した垂直抗力N及び摩擦力Fに加えて、例えば試験前後におけるワークWの表面変位をレーザー計測器などで測定することで、ワークWと接触治具120との接触回数に対するワークWの摩耗量の相関を評価することも可能となる。以上のような構成及び動作により、ワークWの摩耗特性を評価(試験)することができる。また、ワークWに対して接触治具を回動させて接触させることにより、ワークWに対する垂直抗力Nだけでなく摩擦力Fのリアルタイムの測定ができるため、ワークWの動摩擦係数を得ることも可能となる。
【0020】
<治具(接触治具)>
次に、上記で説明した治具の一実施形態について説明する。
図2に示すように、本発明に係る治具200は、凹部を有する基材部210と、一部が基材部210の外周面から突出した状態で基材部210の凹部に固定された接触部材220とを有し、接触部材220の、治具回転方向の一端側は、基材部210との段差によって基材部210に係止され、接触部材220の、治具回転方向の他端側は、楔230によって固定されていることを特徴の一つとする治具である。
【0021】
上記のような構成を有することで、本実施形態の接触治具200が回転する際に、接触部材220が脱落しないように固定(拘束)することができ、かつ着脱しやすい治具を提供できる。また、摩耗試験や摩耗試験装置に用いることが好ましい。
【0022】
[基材]
基材210は凹部を有しており、凹部に接触部材220を固定する。また、接触部材220を係止するための段差を有している。
図2に示した実施形態では、基材210の凹部の一方側の側面は、へこみが形成されており、オーバーハング状の形態を有する。材質は特に限定されず、SUS303などを用いることができ、また加熱温度に応じた耐熱性を備える材質を選定すればよい。
【0023】
[接触部材]
接触部材220は、摩耗試験にてワーク保持機構で保持されたワークWと接触する部材である。後述するが、接触部材220の、治具回転方向の一端側は、基材部210との段差(凹凸)によって基材部210に係止され、接触部材220の、治具回転方向の他端側は、楔230によって固定されることで、摩耗試験中、接触部材220が、高速回転の遠心力やワークWの押し付け力を受けても脱落することを防ぐことができる。接触部材220の材質は特に限定されず、摩耗試験の内容に応じて選定すればよい。例えば、S45Cなどの炭素鋼に加えて、超硬合金、耐熱材料などの材質を用いることができる。接触部材220の形状としては、例えば、円弧状とすることができる。
【0024】
[楔]
楔230は、治具の回転軸中心側を先端側、外周側を末端側と称したとき、末端側は、接触部材220よりも突出しない長さとし、接触治具200が回転したときにワークWに楔230が接触しないにする。材質は特に限定されず、例えばSUS303などを用いることができ、また接触部材220を加熱する場合には、その加熱温度に応じた耐熱性を備える材質を選定すればよい。
【0025】
また、
図2に示すように、接触部材220と楔230とが接する面を延長した仮想面250と、基材210と接触部材220との段差(凹凸)のうち、接触治具200の周方向に延びた基材210と接触部材220との接触面を延長させた仮想面251とが、平行であることが好ましいが、角度を有していても良い。
【0026】
[間隙空間(切り欠き部)]
また、接触治具200は、治具回転軸中心付近に空隙空間(切り欠き部)240を設けることが好ましい。この空隙空間240を設けることで、ワークWとの接触や熱膨張による接触部材220の変形を逃がすことができる。具体的には、接触治具200の総表面積S1に対する間隙空間240の表面積S2の比(S2/S1)が、0.5~0.20程度の空隙空間240を設けることが好ましく、例えば、軸方向から見た接触部材220の形状と楔230の先端部の形状を適宜変更して、間隙空間240が形成されるようにすればよい。
【0027】
[作用]
接触治具200が回転する際には、接触部材220が遠心力(周方向に飛び出そうとする力)とワークWの押し付け力の2つの力を受けても脱落しないようにする必要がある。そこで、本実施形態の接触治具200では、回転方向の他端側で基材210と接触部材220との間に形成された間隙空間240に楔230を挿入することで、基材210と接触部材220とに押圧力が付与されるため、接触部材220が周方向に飛び出しにくいようにできる、すなわち、接触部材220を固定することができる。
【0028】
またさらに、接触部材220は、
図3に示すように、治具回転方向の一端側を基材部210との段差によって基材部210に係止され、かつ治具回転方向の他端側を楔230によって固定されている。すなわち、
図3のA部拡大図に示すように、基材210と接触する面に、基材に設けられた凸部と略同一の凹部とを有しており、それら凹凸により、接触部材220が周方向に飛び出す力を受けることができるため、接触部材220が周方向に飛び出しにくいようにすることができる。
【0029】
また、
図4にワークWを接触治具200に押し付けたときに生じる力の方向を示す。
図4に示すワークWの押し付け力方向に対して、接触部材220は、治具回転方向の一端側を基材部210との段差(凹凸)によって基材部210に係止され、かつ治具回転方向の他端側を楔230によって固定されていることにより、ワークWの押し付け力を受け止めることができる。
【0030】
[接触治具の固定方法]
接触治具の固定方法について説明する。
図5に、保持機構として旋盤加工機のチャックを用いて取り付る方法の一例を示す。接触治具は、摩耗試験装置の保持機構に取り付けることができる。
図5に示すように、旋盤のチャック300に把持させる固定土台310と、チャック側固定治具320と、テールストック側固定治具340とを用いて、接触治具330(基材:331、接触部材332、楔333)を固定すればよい。
【0031】
固定土台310に、チャック側固定治具320、接触治具330、テールストック側固定治具340の順で固定すればよい。このとき、チャック側固定治具320、接触治具330、テールストック側固定治具340とは、取り外し可能な締結部材、例えば、ボルトなどの締結手段を用いて固定することが好ましい。また、固定土台310に固定する際、少なくとも接触治具330の基材が締結部材で締結されていれば良く、接触部材332も締結部材で締結されているとより好ましい。
【0032】
上記固定方法により、接触治具330は、旋盤の回転動力により回転することができるようになる。なお、旋盤加工機のチャックを用いる場合の固定方法を例示したが、回転土台を把持または固定する機能を有する装置を用いればよく、旋盤加工機に限定されない。
【0033】
さらに、接触部材を強固に固定(拘束)をする方法についても説明する。
接触部材をより強固に固定(拘束)するために、接触部材に生じる遠心力以上の力で回転中心方向に押し付ける力が作用する構造を追加されれば良い。
【0034】
例えば、楔の中央に穴を設け、その穴に棒材を通す。そして、この棒材と、チャック側固定治具の周方向側面またはテールストック側固定治具の周方向側面、またはそのどちらか一方とを、締結部材で固定したり、張力付与機構で両者を引き合うようにして固定すればよい。締結部材としてはボルトを用いることができる。張力付与機構としては、例えば、チャック側固定治具の周方向側面またはテールストック側固定治具の周方向側面、またはそのどちらか一方にフック付きのばねのフック機構を配し、そのフックを棒材に掛けることで接触治具の中心への張力を生じれされればよい。
【0035】
以上、締結部材や張力付与機構を追加することで、楔を接触治具の回転中心方向に押し付ける力を増強することができ、接触部材をより強固に固定できるようになり、接触部材に掛かる外力による接触部材の脱落をより一層抑制することができる。
【0036】
また、
図6に従来の接触治具を固定した状態を例示する。
図6に示すように、従来の接触治具は円形の接触治具であった。本発明に係る接触治具であれば、従来の接触治具に比べて、取り替え頻度が高い接触部材の面積を小さくすることができ、接触部材の製造コスト、および搬送性を高める効果も期待できる。接触部材の面積低減効果としては、例えば、約1/3程度の面積で構成することが可能となる。
【0037】
また、
図6に示すように、接触部材の取り替える際、従来の接触治具は接触部材と接触治具とが一体物であった。そのため、テールストック側固定治具の締結部材を全て取り外して接触治具を取り替える必要があり、作業工程が多かった。また、摩耗試験の試験条件の一つには、加熱した接触治具を用いて試験を行う場合があるため、加熱によって締結部材などが変形する恐れがあり、接触治具を取り出すまでに時間を要することも課題となっていた。
【0038】
これに対して、本実施形態の接触治具であれば、接触部材を固定している締結部材を取り外し、張力付与機構を備えている場合には、張力付与機構の張力を緩めることで、接触部材のみを取り外すことが可能となる。すなわち、固定治具の取り外しも必要なくなり、取り替え、すなわち脱着を容易に行うことができる。
【0039】
以上、本発明に係る接触治具の一実施形態について説明してきたが、上記のような接触治具であれば、締結せず、または少数の締結部材を用いるだけで接触部材を固定するためことができることから、接触部材の取り替えを容易に行うことができる。また仮に、締結部材を用いる場合であっても、従来の接触治具よりも少ない締結箇所で良いことから、やはり接触部材の取り替えを容易に行うことができる。
【0040】
(別実施形態)
図7を用いて接触治具の別実施形態について説明する。
【0041】
図7(a)のように、接触治具700の別実施形態としては、基材711と接触部材712とに設ける段差(凹凸)を複数設けても良い。段差(凹凸)を複数設けることで、高速回転の遠心力やワークWの押し付け力に対して、より強力な固定が可能となる。
【0042】
また
図7(b)に示すように、基材721と接触部材722の接触部分を増加させても良い。接触治具720の周方向に延びる部分をX、接触治具720の径方向に延びる部分をYとしたき、Xの長さがYの長さに対して、好ましくは0.5~5倍であり、より好ましくは0.8~3倍であり、さらに好ましくは1~2倍である。または、基材721と接触部材722との接触面積を1.5~2倍程度に増加させることが好ましい。
【0043】
また、
図7(c)に示すように、基材731と接触部材732との接触部分の形状を斜めに変形しても良い。例えば、
図7(c)では、
図7(b)におけるXに相当する部分が周方向から傾けられている。接触部材732と楔733とが接する面を延長したものを仮想面735とし、基材731と接触部材732との段差(凹凸)のうち、前記Xに相当する傾けられた面(基材731と接触部材732との接触面であって、基材731の凹部の底部から外周側に立ち上がる面)が仮想面735となす角度をθとしたとき、例えば、θが90°未満であればよく、好ましくは60°以下であり、より好ましくは30°以下である。
図7(c)には一例として、角度がθが30°の場合を示している。 なお、
図7(b)に示す例のようにθが0°、すなわち、基材731と接触部材732との接触面と、仮想面735とが平行であることがよりこの好ましい。
【0044】
図7(d)は、楔743の外周面側に凸部を設け、その凸部を接触部材742の外周面の一部に接触させた状態を示している。凸部により接触部材742を接触治具740の回転軸方向に押し込む働きをすることで、遠心力により脱落するのを抑制することができる。
【実施例】
【0045】
摩耗試験(摩擦・摩耗試験)を実施すると接触部材の取替作業が必要になる。この接触部材の取付作業では、従来方法と本発明方法には下記の違いが生じる。また、摩耗試験では、常温で実施する試験や接触部材を加熱し行う実験があり、実施例では、2つの形態で取替作業(取付け取外し時間)の時間を計測した。
【0046】
常温(25℃)で実施した摩耗試験において、接触部材の取付け取外し時間を表1に記載する。従来治具に加え、本発明治具は簡便な取り付け機構を具備しているため、短時間で接触部材の交換ができた。特に600℃で加熱した状態の摩耗試験後は、接触部材に試験片を押し当てて加熱(600℃)で実施した摩耗試験において、接触部材の取付け取外し時間を表2に記載する。
【表1】
【表2】
【0047】
図8に室温(25℃)で実施した、摩擦・摩耗試験の実施例を示す。実試験条件は、押付け荷重を600N、周速30m/minとし、10回摺動させた。
図8(a)は、摩耗試験回数が10回目の基材からの垂直荷重と水平方向の荷重をグラフ化している。また、
図8(b)は、この時の摩擦係数(水平方向の荷重/垂直荷重)を示している。この実験での摩擦係数は、試験の立上りと試験の立下りの平均で0.49となることがわかった。
図8(a)に示すように本試験条件の押付け荷重600Nに対して、垂直荷重も同等の600Nであることから、押付け荷重が分散していないことがわかり、摩擦試験が正常に実施できたことを確認した。以上から、摩耗評価装置に実施例の接触治具を用いて摩擦・摩耗試験を実施しても、正常に摩擦・摩耗試験できることを確認した。
【符号の説明】
【0048】
100:摩耗試験装置
110:ワーク保持機構
112:本体部
114:アーム部
124:軸部
130:回転機構
140:データ解析機構
200:接触治具
210:基材
220:接触部材
230:楔
240:間隙空間
250:仮想面
251:仮想面
300:チャック
310:固定土台
320:チャック側固定治具
330:接触治具
331:基材
332:接触治具
333:楔
340:テールストック側固定治具
390:回転軸
600:接触治具
710:接触治具
711:基材
712:接触部材
713:楔
720:接触治具
721:基材
722:接触部材
723:楔
730:接触治具
731:基材
732:接触部材
733:楔
735:仮想面
736:仮想面
740:接触治具
741:基材
742:接触部材
743:楔