(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】ベンゾオキサジノフェノキサジン化合物、有機電界発光素子用材料および有機電界発光素子用正孔輸送材料
(51)【国際特許分類】
C07D 498/06 20060101AFI20230202BHJP
C07D 519/00 20060101ALI20230202BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20230202BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20230202BHJP
【FI】
C07D498/06 CSP
C07D519/00
H05B33/14 B
H05B33/22 D
(21)【出願番号】P 2019003205
(22)【出願日】2019-01-11
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】小野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】太田 恵理子
(72)【発明者】
【氏名】若宮 淳志
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-076584(JP,A)
【文献】国際公開第2018/155275(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/197447(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/166934(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 498/
C07D 519/
H01L 51/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)または(2)で示されるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物:
【化1】
式(1)および(2)中、
Rは、各々独立に、
水素原子、重水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、もしくは、
隣接するRと、a環、b環、c環、d環、e環またはf環と、共に形成されている、置換基を有していてもよいナフタレン環の一部、または、
式(3)で示される置換基Zを表し;
【化2】
式(3)中、
L’は、置換基を有していてもよい、フェニレン基、ビフェニリレン基、テルフェニリレン基、ナフタレニレン基、フルオレニレン基、スピロビフルオレニレン基、ジベンゾチエニレン基、ジベンゾフラニレン基、およびカルバゾリレン基からなる群から選択される2価の基、または単結合を表し、
M’は、置換基を有していてもよい、炭素数6~25のアリール基、または炭素数3~20のヘテロアリール基を表し;
Lは、置換基を有していてもよい、フェニレン基、ビフェニリレン基、テルフェニリレン基、ナフタレニレン基、フルオレニレン基、スピロビフルオレニレン基、ジベンゾチエニレン基、ジベンゾフラニレン基
、およびシリル基からなる群から選択される2価の基、または単結合を表し;
Mは、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、もしくはナフチル基で置換されていてもよい、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、トリフェニレニル基、フルオレン基、スピロビフルオレン基、フェナントリル基、ジベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、チエニル基、またはフラニル基であり、
互いに隣接するRと、a環、b環、c環、d環、e環またはf環と、が形成しているナフタレン環が有していてもよい置換基は、重水素原子、フッ素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基であり、
Lで表される2価の基が有していてもよい置換基は、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、またはフェニル基であり、
L’で表される2価の基が有していてもよい置換基は、重水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、またはフェニル基であり、
M’で表されるアリール基もしくはヘテロアリール基が有していてもよい置換基は、重水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、またはナフチル基である。
【請求項2】
Lが、フェニレン基、ビフェニリレン基、テルフェニリレン基、ナフタレニレン基、フルオレニレン基、スピロビフルオレニレン基、ジベンゾチエニレン基、
およびジベンゾフラニレン
基からなる群から選択される2価の基、または単結合である請求項
1に記載のベンゾオキサジノフェノキサジン化合物。
【請求項3】
Rが、各々独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基である請求項1
または2に記載のベンゾオキサジノフェノキサジン化合物。
【請求項4】
Lが、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレニレン基、または単結合である請求項1~
3のいずれか1項に記載のベンゾオキサジノフェノキサジン化合物。
【請求項5】
Lが、1,4-フェニレン基、4,4’-ビフェニレン基、2,6-ナフタレニレン基、または単結合である請求項1~
4のいずれか1項に記載のベンゾオキサジノフェノキサジン化合物。
【請求項6】
Mが、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-ビフェニリル基、3-ビフェニリル基、4-ビフェニリル基、m-テルフェニル-5’-イル基、1-トリフェニレニル基、2-トリフェニレニル基、9,9-ジメチルフルオレン-1-イル基、9,9-ジメチルフルオレン-2-イル基、9,9-ジメチルフルオレン-3-イル基、9,9-ジメチルフルオレン-4-イル基、9,9-ジフェニルフルオレン-1-イル基、9,9-ジフェニルフルオレン-2-イル基、9,9-ジフェニルフルオレン-3-イル基、9,9-ジフェニルフルオレン-4-イル基、9,9’-スピロビフルオレン-1-イル基、9,9’-スピロビフルオレン-2-イル基、9,9’-スピロビフルオレン-3-イル基、9,9’-スピロビフルオレン-4-イル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基、9-フェナントリル基、1-ジベンゾチエニル基、2-ジベンゾチエニル基、3-ジベンゾチエニル基、4-ジベンゾチエニル基、1-ジベンゾフラニル基、2-ジベンゾフラニル基、3-ジベンゾフラニル基、4-ジベンゾフラニル基
、1-ベンゾチエニル基
、1-チエニル基、2-チエニル基、1-フラニル基、または2-フラニル基である請求項1~
5のいずれか1項に記載のベンゾオキサジノフェノキサジン化合物。
【請求項7】
Mが、1-ナフチル基、2-ジベンゾチエニル基、または9,9-ジフェニルフルオレン-2-イル基である請求項1~
6のいずれか1項に記載のベンゾオキサジノフェノキサジン化合物。
【請求項8】
以下の構造式(1-2)、(1-28)、(1-69)、(1-95)、(2-1)または(2-8)で表される化合物である請求項1に記載のベンゾオキサジノフェノキサジン化合物。
【化3】
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の一般式(1)または(2)で示されるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物を含む有機電界発光素子用材料。
【請求項10】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の一般式(1)または(2)で示されるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物を含む有機電界発光素子用正孔輸送材料。
【請求項11】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の一般式(1)または(2)で示されるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物を含む有機電界発光素子の発光効率改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ベンゾオキサジノフェノキサジン化合物、有機電界発光素子用材料および有機電界発光素子用正孔輸送材料に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子は、小型のディスプレイだけでなく大型テレビや照明等の用途へ用いられており、その開発が精力的に行われている。
例えば特許文献1および2は、有機電界発光素子用材料として、ベンゾオキサジノフェノキサジン化合物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許5591996号公報
【文献】特開2016-076584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の有機電界発光素子に対する市場からの要求は益々高くなり、発光効率特性、駆動電圧特性、長寿命特性のいずれにおいても優れた材料が求められている。
しかしながら、特許文献1および2で開示されたベンゾオキサジノフェノキサジン化合物を用いた有機電界発光素子は、これらの特性を十分に実現するものとは言い難く、さらなる改善が求められている。
本発明の一態様は、有機電界発光素子に用いる場合に電流効率を高めることができるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物、有機電界発光素子用材料および有機電界発光素子用正孔輸送材料を提供することに向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様にかかるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物は、式(1)または(2)で示されるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物である:
【0006】
【化1】
式(1)および(2)中、
Rは、各々独立に、
水素原子、重水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、もしくは、
隣接するRと、a環、b環、c環、d環、e環またはf環と、共に形成されている、置換基を有していてもよいナフタレン環の一部、または、
式(3)で示される置換基Zを表し;
【0007】
【0008】
式(3)中、
L’は、置換基を有していてもよい、フェニレン基、ビフェニリレン基、テルフェニリレン基、ナフタレニレン基、フルオレニレン基、スピロビフルオレニレン基、ジベンゾチエニレン基、ジベンゾフラニレン基、カルバゾリレン基からなる群から選択される2価の基、または単結合を表し、
M’は、置換基を有していてもよい、炭素数6~25のアリール基、または炭素数3~20のヘテロアリール基を表し;
Lは、置換基を有していてもよい、フェニレン基、ビフェニリレン基、テルフェニリレン基、ナフタレニレン基、フルオレニレン基、スピロビフルオレニレン基、ジベンゾチエニレン基、ジベンゾフラニレン基、カルバゾリレン基、およびシリル基からなる群から選択される2価の基、または単結合を表し;
Mは、
置換基を有していてもよい、炭素数6~25のアリール基、もしくは炭素数3~20のヘテロアリール基を表す。
【0009】
本発明の他の態様にかかる有機電界発光素子用材料は、上記式(1)または(2)で示されるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物を含む。
本発明のさらにその他の態様にかかる有機電界発光素子用正孔輸送材料は、上記式(1)または(2)で示されるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、有機電界発光素子に用いる場合に電流効率を高めることができるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物、有機電界発光素子用材料および有機電界発光素子用正孔輸送材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一態様にかかるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物を含む有機電界発光素子の積層構成の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の一態様にかかるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物を含む有機電界発光素子の積層構成の一例(素子実施例-1)を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一態様にかかるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物について詳細に説明する。
【0013】
<ベンゾオキサジノフェノキサジン化合物>
本発明の一態様にかかるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物は、式(1)または(2)で示される:
【0014】
【0015】
式(1)および(2)中、
Rは、各々独立に、
水素原子、重水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、もしくは、
隣接するRと、a環、b環、c環、d環、e環またはf環と、共に形成されている、置換基を有していてもよいナフタレン環の一部、または、
式(3)で示される置換基Zを表し;
【0016】
【0017】
式(3)中、
L’は、置換基を有していてもよい、フェニレン基、ビフェニリレン基、テルフェニリレン基、ナフタレニレン基、フルオレニレン基、スピロビフルオレニレン基、ジベンゾチエニレン基、ジベンゾフラニレン基、カルバゾリレン基からなる群から選択される2価の基、または単結合を表し、
M’は、置換基を有していてもよい、炭素数6~25のアリール基、または炭素数3~20のヘテロアリール基を表し;
【0018】
Lは、置換基を有していてもよい、フェニレン基、ビフェニリレン基、テルフェニリレン基、ナフタレニレン基、フルオレニレン基、スピロビフルオレニレン基、ジベンゾチエニレン基、ジベンゾフラニレン基、カルバゾリレン基、シリル基からなる群から選択される2価の基、または単結合を表し;
Mは、
置換基を有していてもよい、炭素数6~25のアリール基、もしくは炭素数3~20のヘテロアリール基を表す。
【0019】
以下、式(1)または(2)で示されるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物を、ベンゾオキサジノフェノキサジン化合物(1)または(2)と称することもある。ベンゾオキサジノフェノキサジン化合物(1)または(2)における置換基の定義、およびその好ましい具体例は、それぞれ以下のとおりである。
【0020】
[Rについて]
式(1)または(2)中、Rは、各々独立に、
水素原子、重水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、もしくは、
隣接するRと、a環、b環、c環、d環、e環またはf環と、共に形成されている、置換基を有していてもよいナフタレン環の一部、または、
式(3)で示される置換基Zを表す。
ここで、ベンゾオキサジノフェノキサジン化合物(1)または(2)を有機電界発光素子に用いる場合に電流効率をより高めることができるため(以下、単に、電流効率をより高めることができるため、ともいう)、互いに隣接するRと、a環、b環、c環、d環、e環またはf環と、が形成しているナフタレン環が有していてもよい置換基は、重水素原子、フッ素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基であることが好ましい。
【0021】
【0022】
式(3)中、L’は、
置換基を有していてもよい、フェニレン基、ビフェニリレン基、テルフェニリレン基、ナフタレニレン基、フルオレニレン基、スピロビフルオレニレン基、ジベンゾチエニレン基、ジベンゾフラニレン基、カルバゾリレン基からなる群から選択される2価の基、または、単結合を表す。
電流効率をより高めることができるため、L’で表される2価の基が有していてもよい置換基は、重水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、またはフェニル基であることが好ましい。
L’は、これらの基のうち、原料の入手が容易な点で、各々独立に、置換基を有しない、フェニレン基、ナフチレン基、または単結合であることがより好ましい。
【0023】
式(3)中、M’は、置換基を有していてもよい、炭素数6~25のアリール基、または炭素数3~20のヘテロアリール基を表す。
電流効率をより高めることができるため、M’で表されるアリール基もしくはヘテロアリール基が有していてもよい置換基は、重水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、またはナフチル基であることが好ましい。
【0024】
M’における炭素数6~25のアリール基の具体例としては、特に限定されるものではないが、電流効率をより高めることができるため、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-ビフェニリル基、3-ビフェニリル基、4-ビフェニリル基、m-テルフェニル-5’-イル基、1-トリフェニレニル基、2-トリフェニレニル基、9,9-ジメチルフルオレン-1-イル基、9,9-ジメチルフルオレン-2-イル基、9,9-ジメチルフルオレン-3-イル基、9,9-ジメチルフルオレン-4-イル基、9,9-ジフェニルフルオレン-1-イル基、9,9-ジフェニルフルオレン-2-イル基、9,9-ジフェニルフルオレン-3-イル基、9,9-ジフェニルフルオレン-4-イル基、9,9’-スピロビフルオレン-1-イル基、9,9’-スピロビフルオレン-2-イル基、9,9’-スピロビフルオレン-3-イル基、9,9’-スピロビフルオレン-4-イル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基、または9-フェナントリル基等が好ましい例として挙げられる。
【0025】
M’における炭素数3~20のヘテロアリール基の具体例としては、特に限定されるものではないが、電流効率をより高めることができるため、1-ジベンゾチエニル基、2-ジベンゾチエニル基、3-ジベンゾチエニル基、4-ジベンゾチエニル基、1-ジベンゾフラニル基、2-ジベンゾフラニル基、3-ジベンゾフラニル基、4-ジベンゾフラニル基、1-カルバゾリル基、2-カルバゾリル基、3-カルバゾリル基、4-カルバゾリル基、9-カルバゾリル基、1-ベンゾチエニル基、2-ジベンゾチエニル基、1-ジベンゾフラニル基、2-ジベンゾフラニル基、1-インドリル基、2-インドリル基、1-チエニル基、2-チエニル基、1-フラニル基、2-フラニル基等が好ましい例として挙げられる。
【0026】
電流効率をより高めることができるため、Rは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基であることが好ましい。
【0027】
[Lについて]
式(1)または(2)中、Lは、
置換基を有していてもよい、フェニレン基、ビフェニリレン基、テルフェニリレン基、ナフタレニレン基、フルオレニレン基、スピロビフルオレニレン基、ジベンゾチエニレン基、ジベンゾフラニレン基、カルバゾリレン基、シリル基からなる群から選択される2価の基、または、
単結合を表す。
Lで表される2価の基が置換基を有する場合には、該置換基としては、例えば、重水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、およびフェニル基が挙げられる。これらの中でも、電流効率をより高めることができるため、該置換基は、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、またはフェニル基であることが好ましい。
Lは、これらの基のうち、過剰に分子量が高くならず、かつ、より電流効率が高められるため、各々独立に、置換基を有しない、フェニレン基、ビフェニリレン基、テルフェニリレン基、ナフタレニレン基、フルオレニレン基、スピロビフルオレニレン基、ジベンゾチエニレン基、ジベンゾフラニレン基、およびカルバゾリレン基からなる群から選択される2価の基、または単結合であることが好ましい。
また、原料の入手が容易な点で、Lが、各々独立に、置換基を有しない、フェニレン基、ナフタレニレン基、ビフェニレン基、または単結合であることが好ましく、1,4-フェニレン基、2,6-ナフタレニレン基、4,4’-ビフェニレン基、または単結合であることがより好ましい。
【0028】
[Mについて]
式(1)中、Mは、
置換基を有していてもよい、炭素数6~25のアリール基、もしくは炭素数3~20のヘテロアリール基を表す。
ここで、Mで表されるアリール基もしくはヘテロアリール基が有していてもよい置換基としては、重水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、またはナフチル基が挙げられる。
電流効率をより高めることができるため、Mが、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、もしくはナフチル基で置換されていてもよい炭素数6~25のアリール基、または、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、もしくはナフチル基で置換されていてもよい炭素数3~20のヘテロアリール基であることが好ましく、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、もしくはナフチル基で置換されていてもよい、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、トリフェニレニル基、フルオレン基、スピロビフルオレン基、フェナントリル基、ジベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基、カルバゾリル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、チエニル基、またはフラニル基であることがより好ましい。
【0029】
電流効率をより高めることができるためさらにより好ましい、Mにおける置換基を有してもよい炭素数6~25のアリール基の具体例としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-ビフェニリル基、3-ビフェニリル基、4-ビフェニリル基、m-テルフェニル-5’-イル基、1-トリフェニレニル基、2-トリフェニレニル基、9,9-ジメチルフルオレン-1-イル基、9,9-ジメチルフルオレン-2-イル基、9,9-ジメチルフルオレン-3-イル基、9,9-ジメチルフルオレン-4-イル基、9,9-ジフェニルフルオレン-1-イル基、9,9-ジフェニルフルオレン-2-イル基、9,9-ジフェニルフルオレン-3-イル基、9,9-ジフェニルフルオレン-4-イル基、9,9’-スピロビフルオレン-1-イル基、9,9’-スピロビフルオレン-2-イル基、9,9’-スピロビフルオレン-3-イル基、9,9’-スピロビフルオレン-4-イル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基、または9-フェナントリル基等が挙げられる。
【0030】
電流効率をより高めることができるためさらにより好ましい、Mにおける置換基を有してもよい炭素数3~20のヘテロアリール基の具体例としては、1-ジベンゾチエニル基、2-ジベンゾチエニル基、3-ジベンゾチエニル基、4-ジベンゾチエニル基、1-ジベンゾフラニル基、2-ジベンゾフラニル基、3-ジベンゾフラニル基、4-ジベンゾフラニル基、1-カルバゾリル基、2-カルバゾリル基、3-カルバゾリル基、4-カルバゾリル基、9-カルバゾリル基、1-ベンゾチエニル基、1-インドリル基、2-インドリル基、1-チエニル基、2-チエニル基、1-フラニル基、2-フラニル基等が挙げられる。
これらアリール基またはヘテロアリール基のうち、電流効率をさらに高めることができるため、Mが、1-ナフチル基、2-ジベンゾチエニル基、または9,9-ジフェニルフルオレン-2-イル基であることがさらにより一層好ましい。
【0031】
ベンゾオキサジノフェノキサジン化合物(1)または(2)は有機電界発光素子(OLED;Organic Light Emitting Diode)の構成成分の一部として用いると、高発光効率化、長寿命化等の効果が得られる。特に、ベンゾオキサジノフェノキサジン化合物(1)または(2)を正孔輸送層として用いた場合にこれらの効果がより一層発現する。
一般式(1)または(2)で示される化合物のうち、特に好ましい化合物の具体例としては、次の(1-1)から(1-120)、および(2-1)から(2-15)を例示できるが、本発明の一態様にかかるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物(1)または(2)はこれらに限定されるものではない。一方で、電流効率をより高めることができるため、(1-2)、(1-28)、(1-69)、(1-95)、(2-1)および(2-8)の化合物が最も好適な化合物として挙げられる。
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
以下、ベンゾオキサジノフェノキサジン化合物(1)または(2)の用途について説明する。
【0038】
<有機電界発光素子用材料、有機電界発光素子用正孔輸送材料>
ベンゾオキサジノフェノキサジン化合物(1)または(2)は、特に限定されるものではないが、例えば、電子写真感光体、光電変換素子、太陽電池、イメージセンサー等の有機光導電材料への分野に用いることができるほか、有機電界発光素子用材料として用いることができる。また、ベンゾオキサジノフェノキサジン化合物(1)または(2)は、例えば、有機電界発光素子用正孔輸送材料として用いることができる。
すなわち、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子用材料は、ベンゾオキサジノフェノキサジン化合物(1)または(2)を含む。また、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子用正孔輸送材料は、ベンゾオキサジノフェノキサジン化合物(1)または(2)を含む。ベンゾオキサジノフェノキサジン化合物(1)または(2)を含む有機電界発光素子用材料および有機電界発光素子用正孔輸送材料は、耐久性および電流効率に優れた有機電界発光素子の作製に資するものである。
【0039】
<有機電界発光素子>
本発明の一態様にかかる有機電界発光素子は、ベンゾオキサジノフェノキサジン化合物(1)または(2)を含む。
有機電界発光素子の構成については特に限定されるものではないが、例えば、以下に示す(i)~(vi)の構成が挙げられる。
【0040】
(i):陽極/発光層/陰極
(ii):陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(iii):陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(iv):陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(v):陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(vi):陽極/正孔注入層/電荷発生層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極。
【0041】
以下、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子を、上記(vi)の構成を例に挙げて、
図1を参照しながらより詳細に説明する。なお、
図1に示す有機電界発光素子は、いわゆるボトムエミッション型の素子構成を有したものであるが、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子はボトムエミッション型の素子構成に限定されるものではない。すなわち、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子は、トップエミッション型の素子構成であってもよく、その他の公知の素子構成であってもよい。
【0042】
図1は、本発明の一態様にかかるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物(1)または(2)を含む有機電界発光素子の積層構成の一例を示す概略断面図である。
【0043】
有機電界発光素子100は、基板1、陽極2、正孔注入層3、電荷発生層4、正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、および陰極8をこの順で備える積層体である。ただし、これらの層のうちの一部の層が省略されていてもよく、また逆に他の層が追加されていてもよい。例えば、電子輸送層7と陰極8との間に電子注入層が設けられていてもよく、電荷発生層4が省略され、正孔注入層3上に正孔輸送層5が直接設けられていてもよい。また、例えば電子注入層の機能と電子輸送層の機能とを単一の層で併せ持つ電子注入・輸送層のような、複数の層が有する機能を併せ持った単一の層を、当該複数の層の代わりに備えた構成であってもよい。さらに、例えば単層の正孔輸送層5、単層の電子輸送層7が、それぞれ複数層からなっていてもよい。
【0044】
[一般式(1)または(2)で表されるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物を含む層]
有機電界発光素子は、発光層、および、該発光層と陰極との間の層からなる群より選ばれる1層以上に上記一般式(1)または(2)で示されるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物を含む。したがって、
図1に示される構成例において有機電界発光素子100は、発光層6および電子輸送層7からなる群より選ばれる少なくとも1層にベンゾオキサジノフェノキサジン化合物(1)または(2)を含む。特に、より電流効率を高めることができるため、正孔注入層3または正孔輸送層5が、ベンゾオキサジノフェノキサジン化合物(1)または(2)を含むことが好ましい。
【0045】
なお、以下においては、正孔輸送層5がベンゾオキサジノフェノキサジン化合物(1)または(2)を含む有機電界発光素子100について説明する。
【0046】
[基板1]
基板としては特に限定はなく、例えばガラス板、石英板、プラスチック板などが挙げられる。また、基板1側から発光が取り出される構成の場合、基板1は光の波長に対して透明である。
【0047】
光の波長に対して透明である(光透過性を有する)基板は、例えばプラスチックフィルムとすることができる。光透過性を有するプラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。
【0048】
[陽極2]
基板1上(正孔注入層3側)には陽極2が設けられている。
発光が陽極を通過して取り出される構成の有機電界発光素子の場合、陽極は当該発光を通すかまたは実質的に通す材料(透明材料)で形成される。
【0049】
陽極に用いられる透明材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、インジウム-錫酸化物(ITO;Indium Tin Oxide)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO;Indium Zinc Oxide)、酸化錫、アルミニウム・ドープ型酸化錫、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物、その他の金属酸化物、窒化ガリウム等の金属窒化物、セレン化亜鉛等の金属セレン化物、および硫化亜鉛等の金属硫化物などが挙げられる。
なお、陰極側のみから光を取り出す構成の有機電界発光素子の場合、陽極の透過特性は重要ではない。したがって、この場合の陽極に用いられる材料の一例としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金等が挙げられる。
【0050】
陽極上には、バッファー層(電極界面層)を設けてもよい。
【0051】
[正孔注入層3、正孔輸送層5]
陽極2と後述する発光層6との間には、陽極2側から、正孔注入層3、後述する電荷発生層4、正孔輸送層5がこの順で設けられている。
【0052】
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有し、この正孔注入層、正孔輸送層を陽極と発光層との間に介在させることによって、より低い電界で多くの正孔が発光層に注入される。
【0053】
また、正孔注入層、正孔輸送層は、電子障壁性の層としても機能する。すなわち、陰極から注入され、電子注入層および/または電子輸送層から発光層に輸送された電子は、発光層と正孔注入層および/または正孔輸送層との界面に存在する電子の障壁により、正孔注入層および/または正孔輸送層に漏れることが抑制される。その結果、該電子が発光層内の界面に累積され、発光効率が向上する等の効果をもたらし、発光性能の優れた有機電界発光素子が得られる。
【0054】
正孔注入層、正孔輸送層の材料としては、正孔注入性、正孔輸送性、電子障壁性の少なくともいずれかを有するものである。正孔注入層、正孔輸送層の材料は、有機物、無機物のいずれであってもよい。
【0055】
このうち、正孔注入層または正孔輸送層の少なくとも1層は、前述したとおり電流効率および耐久性向上の観点から、上記一般式(1)または(2)で表されるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物を含むことが好ましい。
【0056】
また、正孔注入層および正孔輸送層が設けられる場合において、ベンゾオキサジノフェノキサジン化合物(1)または(2)を含まない層は、例えば従来公知の正孔注入材料または正孔輸送材料単体或いは混合物からなる。
【0057】
従来公知の正孔注入材料または正孔輸送材料としては、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、導電性高分子オリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物などが挙げられる。これらの中でも、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物が好ましく、特に芳香族第三級アミン化合物が好ましい。
【0058】
芳香族第三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物の具体例としては、N,N,N’,N’-テトラフェニル-4,4’-ジアミノフェニル、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-〔1,1’-ビフェニル〕-4,4’-ジアミン(TPD)、2,2-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラ-p-トリル-4,4’-ジアミノビフェニル、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン、ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)フェニルメタン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(4-メトキシフェニル)-4,4’-ジアミノビフェニル、N,N,N’,N’-テトラフェニル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル、N,N,N-トリ(p-トリル)アミン、4-(ジ-p-トリルアミノ)-4’-〔4-(ジ-p-トリルアミノ)スチリル〕スチルベン、4-N,N-ジフェニルアミノ-(2-ジフェニルビニル)ベンゼン、3-メトキシ-4’-N,N-ジフェニルアミノスチルベンゼン、N-フェニルカルバゾール、4,4’-ビス〔N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、4,4’,4’’-トリス〔N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)などが挙げられる。
【0059】
また、p型-Si、p型-SiCなどの無機化合物も正孔注入層の材料、正孔輸送層の材料の一例として挙げることができる。
【0060】
正孔注入層、正孔輸送層は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0061】
[電荷発生層4]
正孔注入層3と正孔輸送層5との間には、電荷発生層4が設けられていてもよい。
電荷発生層の材料としては特に制限はないが、例えば、ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)が挙げられる。
【0062】
電荷発生層は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0063】
[発光層6]
正孔輸送層5と後述する電子輸送層7との間には、発光層6が設けられている。
発光層の材料としては、燐光発光材料、蛍光発光材料、熱活性化遅延蛍光発光材料が挙げられる。発光層では電子・正孔対が再結合し、その結果として発光が生じる。
発光層は、単一の低分子材料または単一のポリマー材料からなっていてもよいが、より一般的には、ゲスト化合物でドーピングされたホスト材料からなっている。発光は主としてドーパントから生じ、任意の色を有することができる。
【0064】
ホスト材料としては、例えば、ビフェニル基、フルオレニル基、トリフェニルシリル基、カルバゾール基、ピレニル基、またはアントリル基を有する化合物が挙げられる。より具体的には、DPVBi(4,4’-ビス(2,2-ジフェニルビニル)-1,1’-ビフェニル)、BCzVBi(4,4’-ビス(9-エチル-3-カルバゾビニレン)1,1’-ビフェニル)、TBADN(2-ターシャルブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン)、ADN(9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン)、CBP(4,4’-ビス(カルバゾール-9-イル)ビフェニル)、CDBP(4,4’-ビス(カルバゾール-9-イル)-2,2’-ジメチルビフェニル)、2-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-9-[4-(4-フェニルフェニルキナゾリン-2-イル)カルバゾール、9,10-ビス(ビフェニル)アントラセン等が挙げられる。
【0065】
蛍光ドーパントとしては、例えば、アントラセン、ピレン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドン、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム、チアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタン化合物、カルボスチリル化合物、等が挙げられる。蛍光ドーパントはこれらから選ばれる2種以上を組み合わせたものであってもよい。
【0066】
燐光ドーパントとしては、例えば、イリジウム、白金、パラジウム、オスミウム等の遷移金属の有機金属錯体が挙げられる。
【0067】
蛍光ドーパント、燐光ドーパントの具体例としては、Alq3(トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム)、DPAVBi(4,4’-ビス[4-(ジ-p-トリルアミノ)スチリル]ビフェニル)、ペリレン、ビス[2-(4-n-ヘキシルフェニル)キノリン](アセチルアセトナート)イリジウム(III)、Ir(PPy)3(トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III))、及びFIrPic(ビス(3,5-ジフルオロ-2-(2-ピリジル)フェニル-(2-カルボキシピリジル)イリジウム(III)))等が挙げられる。
【0068】
また、発光材料は発光層のみに含有されることに限定されるものではない。例えば、発光材料は、発光層に隣接した層(正孔輸送層5、または電子輸送層7)が含有していてもよい。これによってさらに有機電界発光素子の発光効率を高めることができる。
【0069】
発光層は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0070】
[電子輸送層7]
発光層6と後述する陰極8との間には、電子輸送層7が設けられている。
電子輸送層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有する。電子輸送層を陰極と発光層との間に介在させることによって、電子がより低い電界で発光層に注入される。
【0071】
また、電子輸送層は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
更に、電子輸送層は、正孔障壁性の層としても機能する。すなわち、陽極から注入され、正孔注入層および/または正孔輸送層から発光層に輸送された正孔は、発光層と電子輸送層との界面に存在する正孔の障壁により、電子輸送層に漏れることが抑制される。その結果、該正孔が発光層内の界面に累積され、発光効率が向上する等の効果をもたらし、発光性能の優れた有機電界発光素子が得られる。
【0072】
電子輸送層の材料としては、電子注入性、電子輸送性、正孔障壁性の少なくともいずれかを有するものである。
【0073】
従来公知の電子輸送材料としては、キノリノール系金属錯体、ベンゾイミダゾール誘導体、ピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体、ホウ素誘導体およびトリアジン誘導体等が挙げられる。
【0074】
[陰極8]
電子輸送層7上には陰極8が設けられている。
陽極を通過した発光のみが取り出される構成の有機電界発光素子の場合、陰極は任意の導電性材料から形成することができる。
【0075】
陰極の材料としては、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。
【0076】
陰極上(電子輸送層側)には、バッファー層(電極界面層)を設けてもよい。
【0077】
[各層の形成方法]
以上説明した電極(陽極、陰極)を除く各層は、それぞれの層の材料(必要に応じて結着樹脂などの材料、溶剤と共に)を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB(Langmuir-Blodgett method)法などの公知の方法によって薄膜化することにより、形成することができる。
【0078】
このようにして形成された各層の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、通常は5nm~5μmの範囲である。
【0079】
陽極および陰極は、電極材料を蒸着やスパッタリングなどの方法によって薄膜化することにより、形成することができる。蒸着やスパッタリングの際に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよく、蒸着やスパッタリングなどによって薄膜を形成した後、フォトリソグラフィーで所望の形状のパターンを形成してもよい。
【0080】
陽極および陰極の膜厚は、1μm以下であることが好ましく、10nm以上200nm以下であることがより好ましい。
【0081】
本発明の一態様にかかる有機電界発光素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。また、異なる発光色を有する本態様の有機電界発光素子を2種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。
【0082】
なお、本発明の一態様にかかるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物(1)または(2)は、既知の反応(例えば、ウルマン型カップリング、ブッフバルト・ハートウィッグ反応、および鈴木-宮浦クロスカップリング反応など)を適切に組み合わせることにより合成可能である。
【0083】
式(1)または式(2)で表されるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物は、例えば、下記のルートにより合成することができる。
【0084】
【0085】
式中、Akは、それぞれ独立して、炭素数1~18の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基を表す;Rは、各々独立に、式(1)または式(2)で表されるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物におけるRと同義である。Akは、原料が入手し易いという点で、メチル基またはエチル基が好ましい。
【0086】
工程(1) 3-クロロ-2,6-ジフロロアニリン誘導体に、2-ブロモアニソール誘導体または2-ヨードアニソール誘導体をパラジウム触媒や銅触媒を用いてカップリング反応させ、2級アミンを得る。
工程(2) 工程(1)で得られた2級アミンと、2-ブロモアニソール誘導体または2-ヨードアニソール誘導体と、を更に反応させ、中間体Aを得る。
【0087】
ここでは中間体Aを2段階で合成する方法について説明したが、上記工程(1)で用いる2-ブロモアニソール誘導体または2-ヨードアニソール誘導体と上記工程(2)で用いる2-ブロモアニソール誘導体または2-ヨードアニソール誘導体とが同一の化合物である場合、ワンポットで中間体Aを得ることもできる。
【0088】
【0089】
式中、L、Mは、式(1)または式(2)で表されるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物におけるL、Mとそれぞれ同義である。
工程(3) 中間体Aのアルコキシ基のアルキルを常法により切断した後、求核置換反応により中間体Bを得る。
工程(4) 中間体Bと、置換基L-Mのボロン酸化合物またはボロン酸エステル化合物と、の鈴木カップリング反応により、式(1)で表されるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物を得ることができる。
【0090】
ここでは置換基L-Mのボロン酸化合物またはボロン酸エステル化合物を使用した例を示したが、中間体Bを中間体Cのようなボロン酸エステル化合物として、置換基L-Mのハロゲン化物や置換基L-Mのトリフルオロメタンスルホン酸エステル化物と反応させてもよい。
また、L-Mを1つの置換基とみなして説明したが、ハロゲン等の反応性残基を有する置換基Mで置換した後、Lのボロン酸またはボロン酸エステルと反応させてもよい。
さらに、鈴木カップリング反応の代わりに根岸カップリング反応や熊田・玉尾カップリング反応を適宜用いることもできる。
【0091】
式(2)で表されるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物については、2等量の中間体Cとハロゲンやトリフルオロメタンスルホン酸エステルの反応性残基を2箇所に有するLを反応させることで、得ることができる。
【0092】
式(1)で表される化合物と同様に、式(2)で表される化合物も、ボロン酸、ボロン酸エステル、ハロゲン、トリフルオロメタンスルホン酸エステルといった反応性残基を、適宜置き換えても得ることができる。また、鈴木カップリング反応の代わりに根岸カップリング反応や熊田・玉尾カップリング反応を適宜用いることもできる。
【0093】
1-ブロモ-3-クロロ-2,4-ジフロロベンゼン誘導体を原料に用い、以下のような経路で中間体Eを合成し、中間体Eから式(1)または式(2)で表されるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物を合成することもできる。
【0094】
【0095】
式中、Akは、それぞれ独立して、炭素数1~18の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基を表す;R、L、Mは、各々独立に、式(1)または式(2)で表されるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物におけるR、L、Mとそれぞれ同義である。Akは、原料が入手し易いという点で、メチル基またはエチル基が好ましい。
この場合、中間体EとMのボロン酸またはボロン酸エステルを反応させることで、式(1)で表される化合物を得ることができる。また、中間体Eであるトリフルオロメタンスルホン酸エステルをボロン酸エステルに変換した後、Mのハロゲン化物またはトリフルオロメタンスルホン酸エステルと反応させても式(1)で表される化合物を得ることができる。更に、中間体Eと上記中間体Cとを反応させることで、式(2)で表される化合物を得ることができる。
【実施例】
【0096】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定して解釈されるものではない。
【0097】
1H-NMR測定は、Gemini200(バリアン社製)を用いて行った。
有機電界発光素子の発光特性は、室温下、作製した素子に直流電流を印加し、輝度計(製品名:BM-9、トプコンテクノハウス社製)を用いて評価した。
【0098】
合成実施例-1 化合物(2-1)の合成
【0099】
【0100】
窒素気流下、1Lの三口フラスコに、3-クロロ-2,6-ジフルオロアニリン 19.0g(116.2mmol)、2-ヨードアニソール 82.0g(348.5mmol)、銅粉 78.2g(348.5mmol)、炭酸カリウム 67.0g(697.0mmol)、18-クラウン-6 6.1g(23.2mmol)、及びo-ジクロロベンゼン 290mLを添加して180℃で20時間攪拌した。室温まで冷却後、吸引濾過にて無機塩を除去した後、ロータリーポンプを用いて溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルショートパスカラム(トルエン)に通過させ、溶媒を減圧留去して得られた油状成分にヘキサンを加えて再沈殿させた。吸引濾過にて沈殿を採取し、ヘキサンで洗浄することで、3-クロロ-2,6-ジフルオロ-N,N-ビス(2-メトキシフェニル)アニリンの白色固体を35.5g(99.2mmol)単離した。(収率81%)。
【0101】
【0102】
窒素気流下、500mLの三口フラスコに、3-クロロ-2,6-ジフルオロ-N,N-ビス(2-メトキシフェニル)アニリン 35.5g(94.5mmol)、ドデシルメチルスルフィド 102.2g(472.3mmol)、及びトルエン 190mLを添加して、氷浴で冷却撹拌した。この溶液に無水塩化アルミニウム 63.0g(472.3mmol)を加えた後、氷浴を外して室温で20時間攪拌した。再び氷浴で冷却し、水を加えて反応を停止させ、酢酸エチルで有機物を抽出した。抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に濃縮した後、ヘキサンを加えることで再沈殿させ、吸引濾過にて沈殿を採取した。得られた沈殿をヘキサン 200mlで洗浄することで、3-クロロ-2,6-ジフルオロ-N,N-ビス(2-ヒドロキシフェニル)アニリンの白色固体を27.2g(78.2mmol)単離した。(収率83%)。
【0103】
【0104】
窒素気流下、1Lの三口フラスコに、3-クロロ-2,6-ジフルオロ-N,N-ビス(2-ヒドロキシフェニル)アニリン 27.2g(78.2mmol)、炭酸カリウム 32.4g(234.7mmol)、及びN,N-ジメチルホルムアミド 380mLを添加して100℃で15.5時間攪拌した。80℃まで冷却し、純水 300mLを加えて再沈殿させた。析出した固体を吸引濾過にて採取し、水、次いでメタノールで洗浄することで6-クロロ-[1,4]ベンゾオキサジノ[2,3,4-kl]フェノキサジンの白色固体23.0g(74.7mmol)を単離した(収率95%)。
【0105】
【0106】
窒素気流下、6-クロロ-[1,4]ベンゾオキサジノ[2,3,4-kl]フェノキサジン(5.60g,18.2mmol)、1,3-ビス(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンゼン(2.50g,7.6mmol)、酢酸パラジウム(100.0mg,0.5mmol)、およびXphos(430.0mg,0.9mmol;2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',4',6'-トリイソプロピルビフェニル)をテトラヒドロフラン(120mL)に溶解させた。これに、2Mのリン酸三カリウム水溶液(11.3mL,22.8mmol)を加え、60℃で31時間半撹拌した。反応液に水(100ml)を加え、室温まで放冷した後、析出した固体を吸引濾過にて採取した。得られた固体を水(30mL)、メタノール(30mL)、ヘキサン(30mL)で洗浄した後、適当な量のトルエンに溶解し、シリカゲルカラムを通過させた。溶媒を減圧留去し、析出した個体を吸引濾過にて採取し、トルエンから再結晶させることで、目的の化合物(2-1)の白色固体(収量1.60g,収率34%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):6.68(d,2H),6.92(d,4H),6.93-7.06(m,10H),7.42(d,4H),7.52(m,1H),7.58(m,2H),7.75(m,1H)。
【0107】
合成実施例-2 化合物(1-2)の合成
【0108】
【0109】
窒素気流下、6-クロロ-[1,4]ベンゾオキサジノ[2,3,4-kl]フェノキサジン(2.0g,6.5mmol)、4-(1-ナフチル)フェニルボロン酸(2.10g,8.4mmol)、酢酸パラジウム(40.0mg,0.2mmol)、およびXphos(190.0mg,0.4mmol;2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2', 4',6'-トリイソプロピルビフェニル)をテトラヒドロフラン(30mL)に溶解させた。これに、2Mのリン酸三カリウム水溶液(6mL,12mmol)を加え、60℃で24時間撹拌した。反応液に水(60ml)を加え、室温まで放冷した後、析出した固体を吸引濾過にて採取した。得られた固体を水(30mL)、メタノール(30mL)で洗浄した後、適当な量のクロロベンゼンに溶解し、シリカゲルカラムを通過させた。溶媒を減圧留去し、析出した個体を吸引濾過にて採取し、クロロベンゼンから再結晶させることで、目的の化合物(1-2)の白色固体(収量2.40g,収率78%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):6.70(d,1H),6.93-7.09(m,7H),7.42-7.61(m,8H),7.74(d,2H),7.92(d,1H),7.97(d,1H),8.03(d,1H)。
【0110】
合成実施例-3 化合物(1-28)の合成
【0111】
【0112】
窒素気流下、6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)[1,4]ベンゾオキサジノ[2,3,4-kl]フェノキサジン(3.0g,7.5mmol)、2-(4-クロロフェニル)ジベンゾチオフェン(2.7g,9.0mmol)、酢酸パラジウム(80.0mg,0.4mmol)、およびXphos(360.0mg,0.8mmol;2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2', 4', 6'-トリイソプロピルビフェニル)をテトラヒドロフラン(28mL)に溶解させた。これに、4Mのリン酸三カリウム水溶液(2.8mL,11.3mmol)を加え、60℃で23時間撹拌した。反応液に水(50ml)を加え、室温まで放冷した後、析出した固体を吸引濾過にて採取した。得られた固体を水(30mL)、メタノール(30mL)で洗浄した後、80℃に加熱したクロロベンゼン(300ml)に溶解し、活性炭(200mg)を添加して、1時間加熱撹拌した。次いで、下段にシリカゲル、上段にセライトを敷いた桐山ロートを用いて、吸引濾過を行い、濾液を採取した。クロロベンゼンを減圧留去して得られた固体をクロロベンゼンから再結晶させることで、目的の化合物(1-28)の白色固体(収量1.4,収率35%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):6.69(d,1H),6.94-7.06(m,7H),7.45(m,2H),7.52(m,2H),7.72(d,2H),7.85-7.98(m,4H),8.02(d,1H),8.42(m,1H),8.65(m,1H)。
【0113】
合成実施例-4 化合物(1-69)の合成
【0114】
【0115】
窒素気流下、6-クロロ-[1,4]ベンゾオキサジノ[2,3,4-kl]フェノキサジン(2.0g,6.5mmol)、ジベンゾチオフェン-2-ボロン酸(2.4g,7.8mmol)、酢酸パラジウム(40.0mg,0.2mmol)、およびXphos(190.0mg,0.4mmol;2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',4',6'-トリイソプロピルビフェニル)をテトラヒドロフラン(60mL)に溶解させた。これに、2Mのリン酸三カリウム水溶液(5.9mL,11.7mmol)を加え、60℃で24時間撹拌した。反応液に水(50ml)を加え、室温まで放冷した後、トルエン100mlを加えて分液し、有機層の溶媒を減圧留去した。得られた固体を80℃に加熱したクロロベンゼン(300ml)に溶解し、活性炭(200mg)を添加して、1時間加熱撹拌した。次いで、下段にシリカゲル、上段にセライトを敷いた桐山ロートを用いて、吸引濾過を行い、濾液を採取した。クロロベンゼンを減圧留去して得られた固体をクロロベンゼンから3回再結晶させることで、目的の化合物(1-69)の黄白色固体(収量1.2,収率34%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):6.71(d,1H),6.90-7.10(m,7H),7.43(m,2H),7.51(m,2H),7.70(d,1H),7.96(m,1H),7.99(d,1H),8.33(m,1H),8.45(m,1H)。
【0116】
合成実施例-5 化合物(1-95)の合成
【0117】
【0118】
窒素気流下、6-クロロ-[1,4]ベンゾオキサジノ[2,3,4-kl]フェノキサジン(1.5g,4.2mmol)、9,9-ジフェニルフルオレン-2-ボロン酸(2.0g,5.5mmol)、酢酸パラジウム(30.0mg,0.13mmol)、およびXphos(120.0mg,0.25mmol;2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',4',6'-トリイソプロピルビフェニル)をテトラヒドロフラン(30mL)に溶解させた。これに、2Mのリン酸三カリウム水溶液(3.0mL,6.0mmol)を加え、60℃で7時間撹拌した。反応液に水(30ml)を加え、室温まで放冷した後、トルエン60mlを加えて分液し、有機層の溶媒を減圧留去した。得られた固体を80℃に加熱したクロロベンゼン(50ml)に溶解し、活性炭(150mg)を添加して、1時間加熱撹拌した。次いで、下段にシリカゲル、上段にセライトを敷いた桐山ロートを用いて、吸引濾過を行い、濾液を採取した。クロロベンゼンを減圧留去して得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:トルエン=1:1)で精製した。溶媒を減圧留去し、得られた固体を酢酸エチルで洗浄後、トルエンから再結晶させることで、目的の化合物(1-95)の白色固体(収量1.3,収率52%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):6.50(d,1H),6.63(d,1H),6.92-7.08(m,6H),7.19(d,4H),7.23-7.38(m,9H),7.45(t,1H),7.52(t,2H),7.58(s,1H),7.99(d,1H),8.03(d,1H)。
【0119】
合成実施例-6 化合物(2-8)の合成
【0120】
【0121】
窒素気流下、6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)[1,4]ベンゾオキサジノ[2,3,4-kl]フェノキサジン(5.0g,7.5mmol)、2,7-ジブロモナフタレン(1.5g,5.2mmol)、酢酸パラジウム(120.0mg,0.5mmol)、およびXphos(500.0mg,1.0mmol;2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',4',6'-トリイソプロピルビフェニル)をテトラヒドロフラン(39mL)に溶解させた。これに、4Mのリン酸三カリウム水溶液(3.9mL,15.7mmol)を加え、60℃で22時間撹拌した。反応液に水(50ml)を加え、室温まで放冷した後、析出した固体を吸引濾過にて採取した。得られた固体を水(30mL)、メタノール(30mL)で洗浄した後、適当量のトルエンに溶解させた。トルエンを減圧留去することで析出した固体を吸引濾過にて採取した。得られた固体を110℃に加熱したクロロベンゼン(150ml)に溶解させ、活性炭(100mg)を添加して、1時間加熱撹拌した。次いで、下段にシリカゲル、上段にセライトを敷いた桐山ロートを用いて、吸引濾過を行い、濾液を採取した。クロロベンゼンを減圧留去して得られた固体をクロロベンゼンから再結晶させることで、目的の化合物(2-8)の白色固体(収量1.0,収率28%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):6.71(d,2H),6.93(d,4H),6.96-7.07(m,8H),7.10(d,2H),7.44(m,4H),7.72(d,2H),7.97(d,2H),8.12(s,2H)。
【0122】
次に素子評価について記載する。
素子評価に用いた化合物の構造式およびその略称を以下に示す。
【0123】
【0124】
素子実施例-1(
図2参照)
(基板1、陽極2の用意)
陽極をその表面に備えた基板として、2mm幅の酸化インジウム-スズ(ITO)膜(膜厚110nm)がストライプ状にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用意した。ついで、この基板をイソプロピルアルコールで洗浄した後、オゾン紫外線洗浄にて表面処理を行った。
【0125】
(真空蒸着の準備)
洗浄後の表面処理が施された基板上に、真空蒸着法で各層の真空蒸着を行い、各層を積層形成した。
まず、真空蒸着槽内に前記ガラス基板を導入し、1.0×10-4Paまで減圧した。そして、以下の順で、各層の成膜条件に従ってそれぞれ作製した。
【0126】
(正孔注入層3の作製)
昇華精製したHILを0.15nm/秒の速度で55nm成膜し、正孔注入層を作製した。
【0127】
(電荷発生層4の作製)
昇華精製したHATを0.05nm/秒の速度で5nm成膜し、電荷発生層を作製した。
【0128】
(第一正孔輸送層51の作製)
HTL-1を0.15nm/秒の速度で15nm成膜し、第一正孔輸送層を作製した。
【0129】
(第二正孔輸送層52の作製)
合成実施例-1で合成した化合物(2-1)を0.15nm/秒の速度で50nm成膜し、第二正孔輸送層を作製した。
【0130】
(発光層6の作製)
EML-1およびEML-2を95:5(質量比)の割合で35nm成膜し、発光層を作製した。成膜速度は0.18nm/秒であった。
【0131】
(電子輸送層7の作製)
ETLおよびLiqを50:50(質量比)の割合で30nm成膜し、電子輸送層7を作製した。成膜速度は0.15nm/秒であった。
【0132】
(陰極8の作製)
最後に、基板上のITOストライプと直交するようにメタルマスクを配し、陰極8を成膜した。陰極は、銀/マグネシウム(質量比1/10)と銀とを、この順番で、それぞれ80nmと20nmとで成膜し、2層構造とした。銀/マグネシウムの成膜速度は0.5nm/秒、銀の成膜速度は成膜速度0.2nm/秒であった。
【0133】
以上により、
図2に示すような発光面積4mm
2の有機電界発光素子100を作製した。なお、それぞれの膜厚は、触針式膜厚測定計(DEKTAK、Bruker社製)で測定した。
【0134】
さらに、この素子を酸素および水分濃度1ppm以下の窒素雰囲気グローブボックス内で封止した。封止は、ガラス製の封止キャップと成膜基板(素子)とを、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製)を用いて行った。
【0135】
上記のようにして作製した有機電界発光素子に直流電流を印加し、輝度計(製品名:BM-9、トプコンテクノハウス社製)を用いて発光特性を評価した。発光特性として、電流密度10mA/cm2を流した時の電流効率(cd/A)を測定した。なお、電流効率は、後述の素子参考例1における結果を基準値(100)とした相対値である。得られた測定結果を表1に示す。
【0136】
素子実施例-2~6
素子実施例-1において、化合物(2-1)の代わりに化合物(1-2)等の表1に示す化合物を用いた以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表1に示す。
【0137】
素子参考例-1
素子実施例-1において、化合物(2-1)の代わりに特許文献1に記載されている化合物201を用いた以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表1に示す。
【0138】
【0139】
本発明の一態様にかかるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物(1)または(2)は発光効率に優れる有機電界発光素子を提供することができる。
また、本発明の一態様にかかるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物(1)または(2)は、昇華精製時の熱安定性がよいために昇華精製の操作性に優れ、有機電界発光素子の素子劣化の原因となる不純物の少ない材料を提供することができる(そのため、本発明の一態様にかかるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物(1)または(2)によれば、有機電界発光素子の耐久性を高めることができる)。また、本発明の一態様にかかるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物は蒸着膜の安定性に優れる。
また、本発明の一態様にかかるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物(1)または(2)からなる薄膜は、正孔注入能、正孔輸送能、電子ブロック能、酸化還元耐性、耐水性、耐酸素性等に優れるため、有機電界発光素子の材料として有用であり、正孔注入材、正孔輸送材、発光ホスト材等として有用である。とりわけ正孔輸送材に用いた際に有用である。
また本発明の一態様にかかるベンゾオキサジノフェノキサジン化合物(1)または(2)はワイドバンドギャップであり、かつ高い三重項励起準位を有するため、従来の蛍光素子用途のみならず、燐光素子や熱活性化遅延蛍光(TADF)を利用した有機電界発光素子へ好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0140】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 電荷発生層
5 正孔輸送層
6 発光層
7 電子輸送層
8 陰極
51 第一正孔輸送層
52 第二正孔輸送層
71 第一電子輸送層
72 第二電子輸送層
100 有機電界発光素子