(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】塗料、カバーガラス、太陽光発電モジュールおよび建築用外壁材
(51)【国際特許分類】
C03C 17/32 20060101AFI20230202BHJP
H01L 31/048 20140101ALI20230202BHJP
【FI】
C03C17/32 A
H01L31/04 560
(21)【出願番号】P 2019559521
(86)(22)【出願日】2018-11-22
(86)【国際出願番号】 JP2018043278
(87)【国際公開番号】W WO2019116858
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2017236991
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018045508
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018045416
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】小野崎 祐
(72)【発明者】
【氏名】酒井 智弘
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊
(72)【発明者】
【氏名】▲萱▼▲場▼ 徳克
(72)【発明者】
【氏名】井上 愛知
(72)【発明者】
【氏名】入江 哲司
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0369433(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0181446(US,A1)
【文献】特開2011-102219(JP,A)
【文献】国際公開第2011/105515(WO,A1)
【文献】特開2017-168782(JP,A)
【文献】特表2009-541196(JP,A)
【文献】国際公開第2016/140331(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107384072(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0015836(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0033250(US,A1)
【文献】米国特許第02774704(US,A)
【文献】特開平09-234375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 17/32
H01L 31/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板と、前記ガラス板上の少なくとも一方の面に積層された、フルオロオレフィンに基づく単位を含む含フッ素重合体
および無機粒子を含む膜と、を有するカバーガラスであって、
前記無機粒子が無機顔料であり、前記無機顔料が金属酸化物又はその水和物であり、
前記金属酸化物を構成する金属元素が、Al、Fe、Co、Zr、V、In、Sn、Li、Ni、Sb、および、Crからなる群から選択される1種以上であり、
波長380~780nmの可視光領域において、5nm刻みの反射率の算術平均値を可視光平均反射率としたときに、前記カバーガラスの可視光平均反射率が10~100%であり、
波長780~1,500nmの近赤外光領域において、5nm刻みの透過率の算術平均値を近赤外光平均透過率としたときに、前記カバーガラスの近赤外光平均透過率が20~100%であることを特徴とする、カバーガラス。
【請求項2】
波長380~780nmの可視光領域において、5nm刻みの透過率の算術平均値を可視光平均透過率としたときの、可視光平均透過率が70%未満である、請求項1に記載のカバーガラス。
【請求項3】
波長380~780nmの可視光領域において、5nm刻みの各波長における反射率のうち、最大反射率が20~100%である、請求項1または2に記載のカバーガラス。
【請求項4】
前記ガラス板がFe
2O
3を含まないか、または、前記ガラス板がFe
2O
3を含む場合のFe
2O
3の含有量(前記ガラス板に含まれる全鉄の含有量をFe
2O
3に換算した値)が、前記ガラス板の全質量に対して0.3質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のカバーガラス。
【請求項5】
前記膜における前記無機粒子の含有量が、前記含フッ素重合体の100質量部に対して10~1,000質量部である、請求項1~4のいずれか1項に記載のカバーガラス。
【請求項6】
前記無機粒子が、波長780~1,500nmの近赤外光領域における近赤外光最大反射率が50%以上であり、平均粒子径が5.0~280.0nmであり、比表面積が5.0~1,000m
2/gである無機顔料の粒子である、請求項
1~5
のいずれか1項に記載のカバーガラス。
【請求項7】
前記無機顔料が、L
*a
*b
*表色系におけるL
*値が5~100であり、a
*値が-60~60であり、b
*値が-60~60である、請求項
1~6
のいずれか1項に記載のカバーガラス。
【請求項8】
前記含フッ素重合体のフッ素原子含有量が、15~30質量%である、請求項1~7のいずれか1項に記載のカバーガラス。
【請求項9】
前記含フッ素重合体が、フルオロオレフィンに基づく単位および架橋性基を有する単位を含む共重合体と、前記架橋性基を架橋しうる硬化剤とが反応することによって形成された架橋構造を有する含フッ素重合体であり、
前記硬化剤が、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、エポキシ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、β-ヒドロキシアルキルアミド基、加水分解性シリル基およびシラノール基からなる群より選択される少なくとも1種の基を1分子中に2以上有する化合物である、請求項1~8のいずれか1項に記載のカバーガラス。
【請求項10】
太陽光発電モジュール用カバーガラスである、請求項1~9のいずれか1項に記載のカバーガラス。
【請求項11】
太陽電池セルと、前記太陽電池セルの受光面側のカバーガラスである、請求項1~10のいずれか1項に記載の前記カバーガラスと、を有する、太陽光発電モジュール。
【請求項12】
請求項11に記載の太陽光発電モジュールを有する、建築用外壁材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、カバーガラス、太陽光発電モジュールおよび建築用外壁材に関する。
【背景技術】
【0002】
屋上または屋根に太陽電池アレイが設置されたビルが増えている。特に、ゼロエミッションビルディングは、発電量の確保が重要である。ここで、ビルが高層化するに従って、消費エネルギーが増える一方で、ビルの屋上または屋根の面積が変わらないため、ビルの壁面または窓に太陽電池アレイの設置が検討されている。
特許文献1には、太陽光の反射を防止するために、含フッ素重合体およびシリカ等を含む防眩膜を有する太陽光発電モジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らが、特許文献1に記載の含フッ素重合体およびシリカ等を含む膜を有する太陽光発電モジュールを評価したところ、耐候性および発電効率には優れるものの、太陽光発電モジュールを膜側から見た場合に、太陽電池セルが視認される問題があるのを知見した。具体的には、ビルの壁面または窓等に太陽光発電モジュールを設置した場合、太陽電池セルの視認によって、ビル等の外観デザインに影響し、意匠性が劣るという問題がある。
一方で、太陽光発電モジュールの意匠性を向上するために、着色したカバーガラス等によって太陽電池セルを隠蔽した場合、カバーガラスの種類によっては、発電に必要な波長の光が太陽電池セルに到達できず、太陽光発電モジュールの発電効率が劣るという問題がある。
このように、太陽光発電モジュールにおいて、発電効率と意匠性との両立は、トレードオフの関係にあった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて、耐候性、発電効率および意匠性に優れた太陽光発電モジュールを形成できる塗料、カバーガラス、ならびに、これを有する太陽光発電モジュールおよび建築用外壁材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、可視光平均反射率および近赤外光平均透過率が所定範囲内にあるカバーガラスを太陽光発電モジュールに適用すれば、所望の効果が得られるのを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できるのを見出した。
[1] ガラス板と、前記ガラス板上の少なくとも一方の面に積層された、フルオロオレフィンに基づく単位を含む含フッ素重合体を含む膜と、を有するカバーガラスであって、
波長380~780nmの可視光領域において、5nm刻みの反射率の算術平均値を可視光平均反射率としたときに、前記カバーガラスの可視光平均反射率が10~100%であり、
波長780~1,500nmの近赤外光領域において、5nm刻みの透過率の算術平均値を近赤外光平均透過率としたときに、前記カバーガラスの近赤外光平均透過率が20~100%であることを特徴とする、カバーガラス。
[2] 波長380~780nmの可視光領域において、5nm刻みの透過率の算術平均値を可視光平均透過率としたときの、可視光平均透過率が70%未満である、[1]のカバーガラス。
[3] 波長380~780nmの可視光領域において、5nm刻みの各波長における反射率のうち、最大反射率が20~100%である、[1]または[2]のカバーガラス。
【0007】
[4] 前記ガラス板がFe2O3を含まないか、または、前記ガラス板がFe2O3を含む場合のFe2O3の含有量(前記ガラス板に含まれる全鉄の含有量をFe2O3に換算した値)が、前記ガラス板の全質量に対して0.3質量%以下である、[1]~[3]のいずれかのカバーガラス。
[5] 前記膜が無機粒子をさらに含み、
前記膜における前記無機粒子の含有量が、前記含フッ素重合体の100質量部に対して10~1,000質量部である、[1]~[4]のいずれかのカバーガラス。
さらに、上記無機粒子が、体積基準の累積50%径が2~2,000μmの粒子である、[5]のカバーガラス、が好ましい。
【0008】
[6] 前記無機粒子が、波長780~1,500nmの近赤外光領域における近赤外光最大反射率が50%以上であり、平均粒子径が5.0~280.0nmであり、比表面積が5.0~1,000m2/gである無機顔料の粒子である、[5]のカバーガラス。
[7] 前記無機顔料が、L*a*b*表色系におけるL*値が5~100であり、a*値が-60~60であり、b*値が-60~60である、[6]のカバーガラス。
さらに、上記膜が、波長780~1,500nmの近赤外光領域における近赤外光最大反射率が50%以上であり、平均粒子径が5.0~280.0nmであり、比表面積が5.0~1,000m2/gである有機顔料を含む膜である、[1]~[4]のいずれかのカバーガラス、が好ましい。
【0009】
[8] 前記含フッ素重合体のフッ素原子含有量が、15~30質量%である、[1]~[7]のいずれかのカバーガラス。
さらに、上記含フッ素重合体が、架橋構造を有する、[1]~[8]のいずれかのカバーガラス、が好ましい。
【0010】
[9] 前記含フッ素重合体が、フルオロオレフィンに基づく単位および架橋性基を有する単位を含む共重合体と、前記架橋性基を架橋しうる硬化剤とが反応することによって形成された架橋構造を有する含フッ素重合体であり、
前記硬化剤が、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、エポキシ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、β-ヒドロキシアルキルアミド基、加水分解性シリル基およびシラノール基からなる群より選択される少なくとも1種の基を1分子中に2以上有する化合物である、[1]~[8]のいずれかのカバーガラス。
さらに、前記膜の平均膜厚が、1~3,000μmである、[1]~[9]のいずれかのカバーガラス、が好ましい。
また、上記ガラス板の平均板厚が、1~30mmである、[1]~[9]のいずれかのカバーガラス、が好ましい。
【0011】
[10] 太陽光発電モジュール用カバーガラスである、[1]~[9]のいずれかのカバーガラス。
[11] 太陽電池セルと、前記太陽電池セルの受光面側のカバーガラスである、[1]~[10]のいずれかの前記カバーガラスと、を有する、太陽光発電モジュール。
[12] 前記[11]の太陽光発電モジュールを有する、建築用外壁材。
[13] フルオロオレフィンに基づく単位を含む含フッ素重合体と、有機顔料および無機顔料から選択される少なくとも一種の顔料と、を含む塗料であって、
前記顔料が、波長780~1,500nmの近赤外光領域における近赤外光最大反射率が50%以上であり、平均粒子径が5.0~280.0nmであり、比表面積が5.0~1,000m2/gであることを特徴とする塗料。
さらに、有機溶剤を含み、上記含フッ素重合体が有機溶剤に溶解している、[13]の塗料、が好ましい。
また、さらに分散剤を含む、[13]の塗料、が好ましい。
【0012】
[14] 前記含フッ素重合体のフッ素原子含有量が、15~30質量%である、[13]の塗料。
[15] 波長380~780nmの可視光領域において、5nm刻みの反射率の算術平均値を可視光平均反射率としたときに、前記カバーガラスの可視光平均反射率が10~100%であり、波長780~1,500nmの近赤外光領域において、5nm刻みの透過率の算術平均値を近赤外光平均透過率としたときに、前記カバーガラスの近赤外光平均透過率が20~100%である太陽光発電モジュール用カバーガラスを構成する膜を形成するために用いられる、[13]または[14]の塗料。
[16] フルオロオレフィンに基づく単位を含む含フッ素重合体と、波長780~1,500nmの近赤外光領域における近赤外光最大反射率が50%以上であり、平均粒子径が5.0~280.0nmであり、比表面積が5.0~1,000m2/gである有色の無機顔料を含む塗料をガラス板上に塗装して膜を形成して、ガラス板と、前記ガラス板上の少なくとも一方の面に積層された、フルオロオレフィンに基づく単位を含む含フッ素重合体を含む膜と、を有するカバーガラスを製造する方法であって、前記カバーガラスは、波長380~780nmの可視光領域において、5nm刻みの反射率の算術平均値を可視光平均反射率としたときに、前記カバーガラスの可視光平均反射率が10~100%であり、波長780~1,500nmの近赤外光領域において、5nm刻みの透過率の算術平均値を近赤外光平均透過率としたときに、前記カバーガラスの近赤外光平均透過率が20~100%である、カバーガラスの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐候性、発電効率および意匠性に優れた太陽光発電モジュールを形成できる塗料、カバーガラス、ならびに、これを有する太陽光発電モジュールおよび建築用外壁材を提供できる。特に、赤外光に対する分光感度が高い太陽電池セルを有する太陽光発電モジュールに本発明のカバーガラスを適用すれば、意匠性と発電効率とを具備した優れた太陽光発電モジュールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のカバーガラスの一例を示す概略断面図である。
【
図2】本発明のカバーガラスを有する太陽光発電モジュールの一例を示す概略断面図である。
【
図3】地上での太陽光スペクトルと単結晶シリコンの太陽電池の分光感度曲線を示すグラフである。
【
図4】本発明の太陽光発電モジュールによって構成された太陽電池アレイの一例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明における用語の意味は以下の通りである。
単位とは、単量体が重合して直接形成された、上記単量体1分子に基づく原子団と、上記原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。なお、重合体が含む全単位に対する、それぞれの単位の含有量(モル%)は、重合体を核磁気共鳴スペクトル(NMR)法により分析して求められる。
(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの総称であり、(メタ)アクリルとは、アクリルおよびメタクリルの総称である。
加水分解性シリル基とは、加水分解によってシラノール基となる基である。
含フッ素重合体のフッ素原子含有量とは、含フッ素重合体を構成する全原子に対するフッ素原子の割合(質量%)を意味する。フッ素原子含有量は、含フッ素重合体を核磁気共鳴スペクトル(NMR)法により分析して求められる。
【0016】
膜中のフッ素原子含有量とは、膜を構成する全原子に対するフッ素原子の含有量(質量%)を意味する。膜中のフッ素原子含有量は、自動試料燃焼装置-イオンクロマト法(AQF-IC法)によって、膜を下記条件にて測定して得られる。
<分析条件>
・自動試料燃焼装置
装置:三菱ケミカルアナリテック社製、自動試料燃焼装置AQF-100
燃焼条件:固体試料用モード
試料量:2~20mg
・イオンクロマトグラフ
装置:Thermo Fisher SCIENTIFIC社製
カラム:IonpacAG11HC+IonpacAS11HC
溶離液:KOH10mN(0-9min)、10-16mN(9-11min)、16mN(11-15min)、16-61mN(15-20min)、60mN(20-25min)
流速:1.0mL/分
サプレッサ:ASRS
検出器:電導度検出器
注入量:5μL
【0017】
酸価および水酸基価は、それぞれ、JIS K 0070-3(1992)の方法に準じて測定される値である。
塗料の固形分の質量とは、塗料が溶剤を含む場合に、塗料から溶剤を除去した質量である。なお、組成物の固形分の質量は、組成物を130℃で20分加熱した後に残存する質量として求められる。
膜の膜厚は、膜厚計を用いて適宜測定され、実施例においては、渦電流式膜厚計(商品名「EDY-5000」、サンコウ電子社製)を用いて測定された値である。
【0018】
可視光平均反射率、可視光最大反射率、可視光平均透過率、可視光最大透過率および近赤外光平均透過率は、含フッ素重合体を含む膜の表面の法線方向から光が入射するようにカバーガラスを設置した分光光度計を用いて測定される反射率または透過率に基づいて、算出される値である。
【0019】
本発明のカバーガラスを用いれば、耐候性、発電効率および意匠性に優れた太陽光発電モジュールを形成できる。これは、以下の理由によると推測される。
可視光平均反射率が10%以上であるカバーガラスを用いれば、カバーガラスに入射した光の反射光が人の目に感知されやすくなる。つまり、カバーガラスに付された色や模様が視認される一方で、太陽電池セルが視認されにくい。これにより、意匠性に優れた太陽光発電モジュールが得られると推測される。
また、近赤外光平均透過率が20%以上のカバーガラスを用いれば、近赤外光が太陽電池セルの受光面に届きやすくなるので、発電効率に優れた太陽光発電モジュールが得られると推測される。特に、近赤外光領域の光に対する分光感度が高い太陽電池セルを用いる場合には、本発明のカバーガラスの使用が好適である。
また、カバーガラスを構成するガラス板の少なくとも一方の面に積層された膜が含フッ素重合体を含むため、耐候性に優れた太陽光発電モジュールが得られると推測される。
【0020】
以下、図面を用いて、本発明のカバーガラスおよび本発明のカバーガラスを用いた太陽光発電モジュールの一例について説明する。なお、本発明のカバーガラスを、本カバーガラスともいい、本発明のカバーガラスを有する太陽光発電モジュールを、本太陽光発電モジュールともいう。
【0021】
図1は、本カバーガラスの一例を示す概略断面図である。
図1に示すように、カバーガラス14は、ガラス板114と、ガラス板114上に積層された、フルオロオレフィンに基づく単位を含む含フッ素重合体を含む膜214と、を有する。
【0022】
本発明におけるガラス板としては、ソーダライムシリケートガラス、石英ガラス、クリスタルガラス、無アルカリガラス、アルミノシリケートガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等が挙げられ、透明性が高い点から、ソーダライムシリケートガラスが好ましい。
ソーダライムシリケートガラスの具体例としては、酸化物換算で、60~75質量%のSiO2、0~3質量%のAl2O3、0超15質量%以下のCaO、0~12質量%のMgO、および、5~20質量%のNa2Oの組成を持つガラスが挙げられる。ここで、SiO2は、ソーダライムシリケートガラスの主成分である。
ソーダライムシリケートガラスは、上記材料の他に、K2O、TiO2、ZrO2およびLiO2からなる群より選択される少なくとも1種の材料をさらに含んでいてもよい。
また、ソーダライムシリケートガラスは、清澄剤(例えば、SO3、SnO2、Sb2O3)をさらに含んでいてもよい。
【0023】
ガラス板は、強化処理が施された強化ガラス板であってもよい。強化ガラス板は、強化処理が施されていないガラス板と比較して割れ難くなるので好ましい。強化ガラス板には、例えば、残留圧縮応力を有する表面層と、残留圧縮応力を有する裏面層と、表面層と裏面層との間に形成され残留引張応力を有する中間層と、を有するガラス板が用いられる。
強化処理の具体例としては、公知のイオン交換法等によって行われる化学強化処理、および、公知の風冷強化法等によって行われる物理強化処理が挙げられる。化学強化処理したガラス板は、板厚が薄い場合であっても、表面層または裏面層の残留圧縮応力の値を大きくできるので、十分な強度をもつ。
【0024】
ガラス板は、膜との密着性の点から、表面処理されていてもよい。表面処理方法は、公知の方法を使用でき、活性化処理(プラズマ法、蒸着法、酸処理、塩基処理等)、化成処理、材料表面の研磨、サンダー処理、封孔処理、ブラスト処理、プライマー処理等が挙げられ、プライマー処理(特に、プライマー剤の塗布)が好ましい。
プライマー剤としては、シランカップリング剤(特に、アルコキシシラン等)、チタンカップリング剤、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。被表面処理材料がガラス板であるので、プライマー剤としては、シランカップリング剤およびチタンカップリング剤が好ましく、シランカップリング剤が特に好ましい。シランカップリング剤またはチタンカップリング剤で表面処理したガラス板を用いると、ガラス板の少なくとも一方の面上に後述する塗料を塗布して膜を形成する場合でも、ガラス板と膜との密着性に優れる。
シランカップリング剤としては、ガラス板と膜の密着性及び耐久性の観点から、加水分解性基としてアルコキシ基またはイソシアネート基の3~4個と非加水分解性基の0~1個とがケイ素原子に結合した化合物が好ましい。非加水分解性基としては官能性基を有していてもよいアルキル基が好ましく、官能性基としては、アミノ基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、エポキシ基等が挙げられる。
シランカップリング剤の具体例としては、3-イソシアネートプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、メチルトリイソシアネートシラン、テトライソシアネートシランが挙げられ、市販品としては、マツモトファインケミカル社製のオルガチックスSI-310、SI-400等が使用できる。
チタンカップリング剤としては、ガラス板と膜との密着性及び耐久性の観点から、アルコキシチタニウムエステル、チタニウムキレートおよびチタニウムアシレートが好ましく、チタンオリゴマーを含むアルコキシチタニウムエステル誘導体がより好ましい。チタンカップリング剤としては、(RO)x(TiO)y/2で表される化合物(XおよびYはそれぞれ独立に正の整数である。)が特に好ましい。市販品としては、マツモトファインケミカル社製のオルガチックスPC-620、PC-601等が使用できる。
【0025】
ガラス板は、Fe2O3を含まないか、または、ガラス板がFe2O3を含む場合のFe2O3の含有量は、ガラス板の全質量に対して0.3質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.03質量%以下が特に好ましい。Fe2O3の含有量が0.3質量%以下であれば、Fe2O3による近赤外光の吸収を抑制できるため、発電効率が向上する。したがって、Fe2O3の含有量が0.3質量%以下のガラス板を有するカバーガラスは、近赤外光に対する分光感度が高い太陽電池セルを有する太陽光発電モジュールに好適である。
ここで、本明細書におけるFe2O3の含有量は、ガラス板に含まれる全鉄の含有量をFe2O3に換算した場合の含有量を意味し、蛍光X線測定法によって求められる。
【0026】
ガラス板の平均板厚は、建造物の設計風圧等から任意に設定できる。ガラス板の平均板厚は、1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましく、3mm以上が特に好ましい。ガラス板の平均板厚は、30mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましく、15mm以下が特に好ましい。したがって、ガラス板の平均板厚は、1~30mmが好ましく、3~20mmがより好ましく、3~15mmが特に好ましい。平均板厚が1mm以上であれば、耐久性が高く、本カバーガラスが割れにくくなる。平均板厚が30mm以下であれば、本カバーガラスが軽量になるため、本太陽光発電モジュールがビルの壁面や窓により好適に用いられる。
ガラス板の平均板厚は、厚み計を用いて測定される板厚の算術平均値である。
【0027】
本発明における膜は、フルオロオレフィンに基づく単位(以下、単位Fともいう。)を含む含フッ素重合体またはその硬化物を含む膜である。
膜は、例えば、含フッ素重合体を含む塗料を用いて形成できる。
【0028】
フルオロオレフィンは、水素原子の1個以上がフッ素原子で置換されたオレフィンである。フルオロオレフィンは、フッ素原子で置換されていない水素原子の1個以上が塩素原子で置換されていてもよい。
フルオロオレフィンの具体例としては、CF2=CF2、CF2=CFCl、CF2=CHF、CH2=CF2、CF2=CFCF3、CF2=CHCF3、CF3CH=CHF、CF3CF=CH2、CH2=CXf1(CF2)n1Yf1(式中、Xf1およびYf1は、独立に水素原子またはフッ素原子であり、n1は2~10の整数である。)で表される単量体が挙げられる。フルオロオレフィンとしては、本太陽光発電モジュールの耐候性に優れる点から、CF2=CF2、CH2=CF2、CF2=CFCl、CF3CH=CHF、CF3CF=CH2が好ましく、CF2=CFClが特に好ましい。フルオロオレフィンは、2種以上を併用してもよい。
【0029】
含フッ素重合体は、単位Fのみを含んでもよく、単位Fとフルオロオレフィン以外のフッ素原子を含む単量体に基づく単位とを含んでもよく、単位Fとフッ素原子を含まない単量体に基づく単位とを含んでもよい。
【0030】
単位Fのみを含む含フッ素重合体としては、フルオロオレフィンの単独重合体、フルオロオレフィンの二種以上の共重合体等が挙げられ、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリビニリデンフルオリドが挙げられる。
【0031】
単位Fと、フルオロオレフィン以外のフッ素原子を含む単量体に基づく単位とを含む含フッ素重合体としては、フルオロオレフィン-ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体が挙げられ、具体的には、テトラフルオロエチレン-ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体等が挙げられる。
【0032】
単位Fの含有量は、含フッ素重合体が含む全単位に対して、本太陽光発電モジュールの耐候性の点から、20~100モル%が好ましく、30~80モル%がより好ましく、40~60モル%が特に好ましい。
【0033】
含フッ素重合体は、本カバーガラスの意匠性、および各波長における各光線の透過率や反射率を調節しやすい点から、フルオロオレフィンに基づく単位と、フッ素原子を含まない単量体に基づく単位とを含むのが好ましい。フッ素原子を含まない単量体に基づく単位としては、架橋性基を有する単位、架橋性基を有さない単位が挙げられる。
単位Fと、フッ素原子を含まない単量体に基づく単位とを含む含フッ素重合体としては、クロロトリフルオロエチレン-ビニルエーテル共重合体、クロロトリフルオロエチレン-ビニルエーテル-ビニルエステル共重合体、クロロトリフルオロエチレン-ビニルエステル-アリルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-ビニルエステル共重合体、テトラフルオロエチレン-ビニルエステル-アリルエーテル共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等が挙げられ、本太陽光発電モジュールの意匠性に優れる点から、クロロトリフルオロエチレン-ビニルエーテル共重合体が好ましい。
【0034】
含フッ素重合体は、膜の耐久性の点から、フッ素原子を含まない単量体に基づく単位として、架橋性基を有する単位(以下、単位(1)ともいう。)を含むのが好ましい。単位(1)は、架橋性基を有する単量体(以下、単量体(1)ともいう。)に基づく単位であってもよく、単位(1)を含む含フッ素重合体の架橋性基を、異なる架橋性基に変換させて得られる単位であってもよい。このような単位としては、ヒドロキシ基を有する単位を含む含フッ素重合体に、ポリカルボン酸やその酸無水物等を反応させて、ヒドロキシ基の一部または全部をカルボキシ基に変換させて得られる単位が挙げられる。上記架橋性基の具体例としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基、加水分解性シリル基が挙げられ、膜の強度がより向上する点から、ヒドロキシ基およびカルボキシ基が好ましい。
単位(1)が有する架橋性基は、膜中では後述する硬化剤によって架橋していてもよく、架橋せず残存していてもよい。膜中の含フッ素重合体は、硬化剤と反応して架橋しているのが好ましい。単位(1)が有する架橋性基が硬化剤によって架橋していると、膜の耐久性がより優れる。単位(1)が有する架橋性基が、架橋せず残存していると、膜中における無機顔料の分散性がより優れる。
【0035】
カルボキシ基を有する単量体(1)としては、不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸、上記ヒドロキシ基を有する単量体のヒドロキシ基にカルボン酸無水物を反応させて得られる単量体等が挙げられる。カルボキシ基を有する単量体1としては、X11-Y11で表される単量体(以下、単量体(11)ともいう。)が好ましい。
式中の記号は、以下の意味を示す。
X11は、CH2=CH-、CH(CH3)=CH-またはCH2=C(CH3)-であり、CH2=CH-またはCH(CH3)=CH-が好ましい。
Y11は、カルボキシ基またはカルボキシ基を有する炭素数1~12の1価の飽和炭化水素基であり、カルボキシ基または炭素数1~10のカルボキシアルキル基が好ましい。
【0036】
ヒドロキシ基を有する単量体(1)としては、ヒドロキシ基を有する、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル、アリルエステル、(メタ)アクリル酸エステル、アリルアルコール等が挙げられる。ヒドロキシ基を有する単量体(1)としては、X12-Y12で表される単量体(以下、単量体(12)ともいう。)またはアリルアルコールが好ましい。
X12は、CH2=CHO-、CH2=CHCH2O-、CH2=CHCOO-またはCH2=C(CH3)COO-である。
Y12は、ヒドロキシ基を有する炭素数2~12の1価の飽和炭化水素基である。1価の飽和炭化水素基は、直鎖状であってもよく分岐状であってもよい。また、1価の飽和炭化水素基は、環構造からなっていてもよく、環構造を含んでいてもよい。
1価の飽和炭化水素基は、炭素数2~6のアルキル基または炭素数6~8のシクロアルキレン基を含むアルキル基が好ましい。
【0037】
単量体(11)の具体例としては、CH2=CHCOOH、CH(CH3)=CHCOOH、CH2=C(CH3)COOH、CH2=CH(CH2)n2COOHで表される化合物(ただし、n2は1~10の整数を示す。)が挙げられる。
単量体(12)の具体例としては、CH2=CHO-CH2-cycloC6H10-CH2OH、CH2=CHCH2O-CH2-cycloC6H10-CH2OH、CH2=CHOCH2CH2OH、CH2=CHCH2OCH2CH2OH、CH2=CHOCH2CH2CH2CH2OH、CH2=CHCH2OCH2CH2CH2CH2OH、CH2=CHCOOCH2CH2OH、CH2=C(CH3)COOCH2CH2OHが挙げられる。なお、「-cycloC6H10-」はシクロへキシレン基を表し、「-cycloC6H10-」の結合部位は、通常1,4-である。
【0038】
単量体(1)は、2種以上を併用してもよい。また、単量体(1)は、2種以上の架橋性基を有していてもよい。
単位(1)の含有量は、含フッ素重合体が含む全単位に対して、0.5~35モル%が好ましく、3~25モル%がより好ましく、5~25モル%がさらに好ましく、5~20モル%が特に好ましい。
【0039】
含フッ素重合体は、膜の強度が向上する点から、架橋構造を有するのが好ましい。具体的には、含フッ素重合体が単位(1)を含む場合、単位(1)の架橋性基が、後述の硬化剤等によって架橋して架橋構造を形成しているのが好ましい。
つまり、本明細書における含フッ素重合体は、架橋性基が残存している状態と、架橋性基が硬化剤等によって架橋している状態とのいずれをも含んでよい。
【0040】
含フッ素重合体は、さらに、フッ素原子を含まない単量体に基づく単位として、架橋性基を有さない単量体に基づく単位を含むのが好ましい。架橋性基を有さない単量体に基づく単位としては、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル、アリルエステル、および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される1種以上の単量体(以下、単量体(2)ともいう。)に基づく単位(以下、単位(2)ともいう。)が好ましい。
【0041】
単位(2)は、X2-Y2で表される単量体に基づく単位が好ましい。
X2は、CH2=CHC(O)O-、CH2=C(CH3)C(O)O-、CH2=CHOC(O)-、CH2=CHCH2OC(O)-、CH2=CHO-またはCH2=CHCH2O-であり、本太陽光発電モジュールの耐候性に優れる点から、CH2=CHOC(O)-、CH2=CHCH2OC(O)-、CH2=CHO-またはCH2=CHCH2O-が好ましい。
【0042】
Y2は炭素数1~24の1価の炭化水素基である。1価の炭化水素基は、直鎖状であってもよく分岐鎖状であってもよい。また、1価の炭化水素基は、環構造からなっていてもよく、環構造を含んでいてもよい。また、1価の炭化水素基は、1価の飽和炭化水素基であってもよく1価の不飽和炭化水素基であってもよい。
1価の炭化水素基は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基が好ましく、炭素数2~12のアルキル基、炭素数6~10のシクロアルキル基、炭素数6~10のアリール基または炭素数7~12のアラルキル基が特に好ましい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基が挙げられる。
シクロアルキル基の具体例としては、シクロヘキシル基が挙げられる。
アラルキル基の具体例としては、ベンジル基が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。
なお、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基の水素原子は、アルキル基で置換されていてもよい。この場合、置換基としてのアルキル基の炭素数は、シクロアルキル基またはアリール基の炭素数には含めない。
【0043】
単量体(2)は、2種以上を併用してもよい。
単量体(2)の具体例としては、エチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、酢酸ビニル、ピバル酸ビニルエステル、ネオノナン酸ビニルエステル(HEXION社製、商品名「ベオバ9」)、ネオデカン酸ビニルエステル(HEXION社製、商品名「ベオバ10」)、安息香酸ビニルエステル、tert-ブチル安息香酸ビニルエステル、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
単位(2)の含有量は、含フッ素重合体が含む全単位に対して、5~60モル%が好ましく、10~50モル%が特に好ましい。
【0044】
含フッ素重合体としては、市販品を用いてもよく、具体例としては、「ルミフロン」シリーズ(AGC社商品名)、「Kynar」シリーズ(アルケマ社商品名)、「ゼッフル」シリーズ(ダイキン工業社商品名)、「Eterflon」シリーズ(エターナル社商品名)、「Zendura」シリーズ(Honeywell社商品名)が挙げられる。
【0045】
含フッ素重合体のフッ素原子含有量は、ガラス板への膜の密着性の点から、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下が特に好ましく、28質量%以下がさらに好ましい。また、含フッ素重合体のフッ素原子含有量は、本太陽光発電モジュールの耐候性の点から、10質量%以上が好ましく、15質量%以上が特に好ましい。
特に、含フッ素重合体のフッ素原子含有量が、好ましくは15~30質量%、特に好ましくは15~28質量%であれば、本カバーガラスの耐候性およびガラス板への膜の密着性が良好であるとともに、本カバーガラスの各波長における各光線の透過率や反射率の調整にも寄与すると考えられる。
【0046】
膜中の含フッ素重合体の含有量は、本太陽光発電モジュールの耐候性の点から、膜の全質量に対して、5~95質量%が好ましく、10~90質量%が特に好ましい。
膜中のフッ素原子含有量は、ガラス板への膜の密着性の点から、65質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が特に好ましく、25質量%以下がさらに好ましく、20%以下が最も好ましい。また、膜中のフッ素原子含有量は、本太陽光発電モジュールの耐候性の点から、膜の全質量に対して、0.1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上が特に好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。
特に、膜中のフッ素原子含有量が、好ましくは0.1~25質量%、特に好ましくは5~20質量%であれば、本カバーガラスの耐候性およびガラス板への膜の密着性が良好であるとともに、本カバーガラスの各波長における各光線の透過率や反射率の調整にも寄与すると考えられる。
【0047】
膜は、単位Fおよび単位(1)を含む含フッ素重合体と、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、エポキシ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、β-ヒドロキシアルキルアミド基、加水分解性シリル基およびシラノール基からなる群より選択される少なくとも1種の基を1分子中に2以上有する化合物(以下、硬化剤ともいう。)と、の架橋構造を有していてもよい。この場合、膜は、含フッ素重合体の硬化物を含む。
膜が上記架橋構造を有する場合、具体的には、含フッ素重合体が含む単位(1)の架橋性基が硬化剤によって架橋していると、膜の硬度および耐久性に優れる。
【0048】
また、本カバーガラスは、膜に含まれる含フッ素重合体の架橋性基、膜に含まれる硬化剤、および、ガラス板(例えば、ガラス板の表面に存在するシラノール基等の反応性基)からなる群より選択される2つ以上が反応して形成される架橋構造を有していてよい。
例えば、加水分解性シリル基およびシラノール基から選択される1種以上を有する硬化剤を含む膜を、酸化ケイ素を含むガラス板上に形成する場合、硬化剤の加水分解性シリル基等(具体的には加水分解により生じたシラノール基)と、ガラス板の表面に存在するシラノール基と、が反応して架橋構造を形成する。そのため、ガラス板に対する膜の密着性がより優れる。
また、架橋性基として加水分解性シリル基を有する含フッ素重合体を含む膜を、酸化ケイ素を含むガラス板上に形成する場合、含フッ素重合体の加水分解性シリル基(具体的には加水分解により生じたシラノール基)と、ガラス板の表面に存在するシラノール基と、が反応して架橋構造を形成する。そのため、ガラス板に対する膜の密着性、膜の硬度、膜の耐久性がより優れる。
【0049】
含フッ素重合体がヒドロキシ基を有する場合の硬化剤は、イソシアネート基またはブロック化イソシアネート基を1分子中に2以上有する化合物が好ましい。
含フッ素重合体がカルボキシ基を有する場合の硬化剤は、エポキシ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基またはβ-ヒドロキシアルキルアミド基を、1分子中に2以上有する化合物が好ましい。
含フッ素重合体がヒドロキシ基およびカルボキシ基の両方を有する場合は、イソシアネート基またはブロック化イソシアネート基を1分子中に2以上有する化合物と、エポキシ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基またはβ-ヒドロキシアルキルアミド基を1分子中に2以上有する化合物と、の併用が好ましい。
また、本カバーガラスにおける膜とガラス板との密着性がより向上する点から、膜は加水分解性シリル基およびシラノール基から選択される1種以上を有する硬化剤を含むのが好ましい。
【0050】
イソシアネート基を1分子中に2以上有する化合物は、ポリイソシアネート単量体またはポリイソシアネート誘導体が好ましい。
ポリイソシアネート単量体は、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートまたは芳香族ポリイソシアネートが好ましい。ポリイソシアネート誘導体は、ポリイソシアネート単量体の多量体または変性体(ビウレット体、イソシアヌレート体またはアダクト体)が好ましい。
【0051】
脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、およびリジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、リジントリイソシアネート、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアナトエチル)2-イソシアナトグルタレートが挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0052】
ブロック化イソシアネート基を1分子中に2以上有する化合物は、上述したポリイソシアネート単量体またはポリイソシアネート誘導体が有する2以上のイソシアネート基が、ブロック化剤によってブロックされている化合物が好ましい。
ブロック化剤は、活性水素を有する化合物であり、具体例としては、アルコール、フェノール、活性メチレン、アミン、イミン、酸アミド、ラクタム、オキシム、ピラゾール、イミダゾール、イミダゾリン、ピリミジン、グアニジンが挙げられる。
【0053】
エポキシ基を1分子中に2以上有する化合物の具体例としては、ビスフェノール型エポキシ化合物(A型、F型、S型等)、ジフェニルエーテル型エポキシ化合物、ハイドロキノン型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ化合物、ポリプロピレングリコール型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、グリオキザール型エポキシ化合物、脂環型エポキシ化合物、脂環式多官能エポキシ化合物、複素環型エポキシ化合物(トリグリシジルイソシアヌレート等)が挙げられる。
【0054】
カルボジイミド基を1分子中に2以上有する化合物の具体例としては、脂環族カルボジイミド、脂肪族カルボジイミド、および芳香族カルボジイミド、ならびにこれらの多量体および変性体が挙げられる。
【0055】
オキサゾリン基を1分子中に2以上有する化合物の具体例としては、2-オキサゾリン基を有する付加重合性オキサゾリン、該付加重合性オキサゾリンの重合体が挙げられる。
【0056】
β-ヒドロキシアルキルアミド基を1分子中に2以上有する化合物の具体例としては、N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)-アジパミド(PrimidXL-552、EMS社製)、N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシプロピル)-アジパミド(Primid QM 1260、EMS社製)が挙げられる。
【0057】
加水分解性シリル基およびシラノール基から選択される少なくとも1種の基を有する硬化剤としては、SiZaR4-aで表される化合物およびその部分加水分解縮合物から選択される少なくとも1種が挙げられる。式中、Rは炭素数1~10の1価炭化水素基、Zは炭素数1~10のアルコキシ基またはヒドロキシ基、aは1~4の整数を示す。
【0058】
Rは、炭素数1~10の1価の炭化水素基である。1価の炭化水素基は、置換基(例えば、フッ素原子)を有していてもよい。すなわち、1価炭化水素基の水素原子の一部または全部が置換基で置換されていてもよい。Rとしては、メチル基、ヘキシル基、デシル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基等が好ましい。1分子中にRが複数存在する場合、複数のRは、互いに同じでもよく異なってもよく、互いに同じであるのが好ましい。
Zは、炭素数1~10のアルコキシ基またはヒドロキシ基であり、アルコキシ基が好ましい。Zがアルコキシ基である場合、メトキシ基またはエトキシ基が好ましい。1分子中にZが複数存在する場合、互いに同じもよく異なってもよく、互いに同じであるのが好ましい。 aは1~4の整数であり、2~4が好ましい。
【0059】
SiZaR4-aで表される化合物の具体例としては、4官能性アルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等)、3官能性アルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等)、2官能性アルコキシシラン(ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等)が挙げられ、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシランが好ましい。
【0060】
膜は、無機粒子の少なくとも一種をさらに含むのが好ましい。これにより、膜の耐候性を維持しながら高い意匠性を付与できる。
無機粒子としては、無機顔料(金属の複合酸化物顔料、金属の複合酸化物以外の無機顔料等)、フィラー等が挙げられる。
金属の複合酸化物顔料の具体例としては、クロム、チタン、アンチモン、鉄、アルミニウム、ニッケル、バリウム、鉛、バナジウム、ビスマス、亜鉛、コバルト、マンガンからなる群より選択される2種以上の金属原子を含む複合酸化物顔料が挙げられる。より具体例には、クロム、チタンおよびアンチモンの複合酸化物(オレンジ色)、鉄、アルミニウムおよびチタンの複合酸化物(オレンジ色)、ニッケル、チタンおよびアンチモンの複合酸化物(黄色)、チタン、ニッケルおよびバリウムの複合酸化物、クロムおよび鉛の複合酸化物(黄色)、バナジウムおよびビスマスの複合酸化物(黄色)、ニッケル、コバルト、亜鉛およびチタンの複合酸化物(緑色)、コバルト、亜鉛およびチタンの複合酸化物(緑色)、亜鉛、ニッケルおよびチタンの複合酸化物(茶色)、マンガン、アンチモンおよびチタンの複合酸化物(茶色)、アルミニウムおよびコバルトの複合酸化物(青色)、コバルト、鉄およびクロムの複合酸化物(黒色)等が挙げられる。
金属の複合酸化物以外の無機顔料の具体例としては、酸化鉄(赤色)、リン酸コバルトリチウム(紫色)が挙げられる。
膜は、意匠性の点から、無機粒子の中でも、単独使用で膜が着色する特定の無機粒子を少なくとも含むことが好ましい。このような特定の無機粒子としては、波長380~400nmの可視光領域に吸収ピークを有する有色無機顔料または可視光領域に吸収ピークを有さない白色無機顔料が挙げられ、具体的には、上述した無機顔料において色を例示した組成の顔料である。なお、膜が着色するとは、膜の可視光平均透過率が90%以下となることを意味する。単体の酸化ケイ素(たとえば、シリカ粒子)は、単独使用で膜が着色しないため、特定の無機粒子からは除外される。
膜が無機粒子を含む場合、無機粒子の含有量は、本カバーガラスの各波長における各光線の透過率や反射率を調整しやすい点から、含フッ素重合体100質量部に対して、10~1,000質量部が好ましく、20~600質量部がより好ましい。
【0061】
膜は、特定の無機粒子として、波長780~1,500nmの近赤外光領域における近赤外光最大反射率が50%以上であり、平均粒子径が5.0~280.0nmであり、比表面積が5.0~1,000m2/gである無機顔料(以下、無機顔料Nともいう。)を含むのが好ましい。無機顔料Nは、さらに、波長380~400nmの可視光領域に吸収ピークを有する有色無機顔料Nまたは可視光領域に吸収ピークを有さない白色無機顔料Nであることが好ましく、有色無機顔料Nであることが特に好ましい。
【0062】
無機顔料Nの、波長780~1,500nmの近赤外光領域における近赤外光最大反射率は、本カバーガラスの近赤外光透過率の点から、50%以上であり、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上が特に好ましい。上記無機顔料Nの近赤外光最大反射率の上限は、通常100%である。
無機顔料Nの近赤外光最大反射率は、無機顔料Nの種類、組成および結晶構造から適宜調整できる。
無機顔料Nにおける、近赤外光最大反射率および可視光最小反射率は、拡散反射法により測定して得られる拡散反射スペクトルからそれぞれ算出される、波長780~1,500nmにおける最大反射率および波長400~780nmにおける最小反射率である。
【0063】
無機顔料Nの平均粒子径は、1.0nm以上であり、5.0nm以上が好ましく、50.0nm以上がより好ましく、100.0nm以上が特に好ましい。無機顔料Nの平均粒子径は、280.0nm以下であり、200.0nm以下が好ましく、180.0nm以下がより好ましく、160.0nm以下がさらに好ましく、140.0nm以下が特に好ましい。
無機顔料Nの平均粒子径が280.0nm以下であると、本カバーガラスの近赤外光透過率が高くなり、本太陽光発電モジュールの発電効率に優れる。無機顔料Nの平均粒子径が1.0nm以上であると、本太陽光発電モジュールの隠蔽性に優れる。
無機顔料Nの平均粒子径は、無機顔料Nに超音波処理を行ったのち、粒度分布測定装置(Nanotrac Wave II-EX150、マイクロトラック・ベル社製)を用いて測定して得られる、体積基準の累積50%径(D50)であり、詳細な測定条件は、実施例に記載の通りである。
【0064】
無機顔料Nの比表面積は、5.0m2/g以上であり、10.0m2/g以上が好ましく、15.0m2/g以上がより好ましく、40.0m2/g以上が特に好ましい。無機顔料Nの比表面積は、1,000m2/g以下であり、500m2/g以下が好ましい。
無機顔料Nの比表面積が5.0~1,000m2/gであると、無機顔料Nによる近赤外光の散乱が好適となり、本太陽光発電モジュールの発電効率に優れる。
無機顔料Nの比表面積は、比表面積測定装置(マウンテック社製、HM model-1208)を用い、200℃で20分の脱気条件下での窒素吸着BET法により得られる値である。
【0065】
無機顔料Nを構成する粒子の粒子形状は特に限定されず、球状、楕円状、針状、板状、棒状、円すい状、円柱状、立方体状、長方体状、ダイヤモンド状、星状、鱗片状、不定形状等のいずれの形状の粒子であってもよい。また、無機顔料Nを構成する粒子は、中空粒子であってもよく、中実粒子であってもよい。また、無機顔料Nを構成する粒子は、多孔質粒子であってもよい。
無機顔料Nを構成する粒子の形状は、分散性の点から、球状であるのが好ましい。
【0066】
無機顔料Nは、本カバーガラスの意匠性および耐候性の点から、金属酸化物およびその水和物が好ましく、金属元素の二種以上を含む金属複合酸化物が特に好ましい。
金属元素としては、Li、Na、Mg、K、Ca、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Sn、Sb、Ba、Ta、W、Pb、Bi、La、Ce等が挙げられる。金属元素は、無機顔料Nの近赤外光反射率、ならびに、本カバーガラスの色調および発電効率の点から、Al、Fe、Co、Zn、Zr、Mn、Cr、Ce、Bi、Ni、Cu、Cdが好ましく、Al、Fe、Co、Zr、Ce、Mn、Bi、Cuがより好ましく、Al、Fe、Co、Zn、Zrがさらに好ましく、Al、Fe、Coが特に好ましい。
光触媒作用による劣化を抑制する点から、無機顔料Nは、金属酸化物およびその水和物の一部または全部が、さらに同種または別種の金属酸化物およびその水和物等(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)によって表面処理されていてもよい。
無機顔料Nは、金属酸化物のみからなっていてもよく、他の成分を含んでいてもよい。金属酸化物以外の他の成分としては、有機化合物等が挙げられる。無機顔料Nは、本カバーガラスの耐候性の点から、上記他の成分を含まないか、含む場合には、無機顔料Nの全質量に対して50質量%以下であるのが好ましい。
上記他の成分を含む無機顔料Nとしては、金属酸化物の粒子の一部または全部が有機化合物等で表面処理された無機顔料が挙げられる。
【0067】
有色無機顔料Nの具体例としては、Co-Ni-Ti-Znの複合酸化物、Co-Liの複合酸化物、Co-Alの複合酸化物、Ti-Sb-Niの複合酸化物、Co-Zn-Siの複合酸化物、Co-Al-Crの複合酸化物、Co-Al-Cr-Znの複合酸化物、Co-Cr-Zn-Tiの複合酸化物、Ti-Fe-Znの複合酸化物、Fe-Znの複合酸化物、Fe-Crの複合酸化物、Mn-Biの複合酸化物、Cu-Biの複合酸化物、Cu-Fe-Mnの複合酸化物、各種の酸化鉄、各種の酸化鉄の水和物が挙げられる。有色無機顔料Nは、無機顔料Nの分散性、近赤外光反射率、ならびに、本カバーガラスの隠蔽性および近赤外光透過率の点から、Co-Liの複合酸化物、Co-Alの複合酸化物、Co-Al-Crの複合酸化物、Fe-Crの複合酸化物、Mn-Biの複合酸化物、Cu-Biの複合酸化物、Cu-Fe-Mnの複合酸化物、各種の酸化鉄、各種の酸化鉄の水和物が好ましく、Co-Alの複合酸化物、酸化鉄、酸化ジルコニウムがより好ましく、Co-Alの複合酸化物、酸化鉄が特に好ましい。
有色無機顔料Nは、市販品を用いてもよく、「Daipyroxide TM」シリーズ(大日精化社製)、「Cappoxyt」シリーズ(Cappelle社製)、「Sicotrans」シリーズ(BASF社製)、「Blue CR4」(アサヒ化成工業社製)等が挙げられる。
【0068】
白色機顔料Nの具体例としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化バナジウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、酸化アルミニウム等が挙げられ、本光学層の隠蔽性および本太陽光発電モジュールの発電効率の点から、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛が好ましく、酸化ジルコニウムが特に好ましい。
光触媒作用による劣化を抑制する点から、白色無機顔料Nは、金属酸化物の一部または全部が、さらに同種または別種の金属酸化物(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)によって表面処理されていてもよい。
白色無機顔料Nとしては、本光学層の耐候性をより向上させたい場合には、光触媒作用による劣化を防ぐために酸化チタンを含まないか、含む場合は1質量%未満であることが好ましい。
白色無機顔料Nとしては、市販品を用いてもよく、「TTO」シリーズ(石原産業社製)、「MT」シリーズ(テイカ社製)、「FINEX」シリーズ(堺化学社製)、XZ-Fシリーズ(堺化学社製)、「ジルコスター」シリーズ(日本触媒社製)等が挙げられる。
無機顔料Nの組成は、蛍光X線分析、ICP発光分光分析、原子吸光分析等により適宜分析して求められる。
【0069】
無機顔料Nは、本カバーガラスの意匠性の点から、L*a*b*表色系におけるL*値が5~100であり、a*値が-60~60であり、b*値が-60~60であるのが好ましい。
無機顔料Nとしては、L*値、a*値、およびb*値が、以下の組み合わせである無機顔料が好ましく、L*値が15~80であり、a*値が0.0~30であり、b*値が-60~60である無機顔料がより好ましい。
・L*値、a*値、およびb*値が、この順に、30~70、0.0~30、および-60~-20である無機顔料。
・L*値、a*値、およびb*値が、この順に、20~70、0.0~40、および-20~30である無機顔料。
・L*値、a*値、およびb*値が、この順に、30~80、-20~20、および0~60である無機顔料。
・L*値、a*値、およびb*値が、この順に、80~100、-10~10、および-10~10である無機顔料。
・L*値、a*値、およびb*値が、この順に、5~50、-10~10、および-10~10である無機顔料。
無機顔料NのL*値、a*値、およびb*値は、上述した無機顔料Nの組成等によって調整できる。
無機顔料NのL*値、a*値、およびb*値は、JIS Z 8781-4:2013の記載に従い、拡散反射法により測定して得られる拡散反射スペクトルから算出される値であり、詳細な測定方法は、実施例に記載の通りである。
【0070】
有色無機顔料Nの密度は、無機顔料Nの分散性の点から、2.0~10.0g/cm3であるのが好ましく、3.0~5.0g/cm3であるのが特に好ましい。
白色無機顔料Nの密度は、無機顔料Nの分散性の点から、0.10~10.0g/cm3であるのが好ましく、5.0~7.0g/cm3であるのが特に好ましい。
有色無機顔料Nの屈折率は、膜が近赤外光をより選択的に透過しやすい点から、4.00以下であるのが好ましく、1.50以上3.00以下であるのがより好ましく、1.90以上2.60以下であるのがさらに好ましく、2.10以上2.40以下であるのが特に好ましい。
白色無機顔料Nの屈折率は、膜が近赤外光をより選択的に透過しやすい点から、4.00以下であるのが好ましく、1.50~3.00であるのがより好ましく、1.90~2.60であるのがさらに好ましく、2.10~2.40であるのが特に好ましい。
なお、各無機顔料の屈折率とは、無機顔料を構成する材料(例えば材料を粉砕等によって無機顔料を得る場合には、粉砕前の材料)の屈折率を意味し、通常は上記材料の文献値である。
各無機顔料の可視光最小反射率および屈折率は、無機顔料の組成、結晶構造、平均粒子径、および比表面積から適宜調整できる。
無機顔料Nの密度は、ピクノメーター(ULTRAPYC 1200e、カンタクローム社製)により測定して得られる値である。
【0071】
膜の全質量に対する無機顔料Nの含有量は、本カバーガラスの意匠性の点から、5質量%以上であるのが好ましく、10質量%以上であるのがより好ましく、20質量%以上であるのが特に好ましい。膜の全質量に対する無機顔料Nの含有量は、本カバーガラスの近赤外光透過率の点から、80質量%以下であるのが好ましく、60質量%以下であるのがより好ましく、50質量%以下であるのが特に好ましい。
膜が含む無機粒子の全質量に対する無機顔料Nの割合は、意匠性および発電効率の点から、80質量%以上が好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
膜は、無機顔料Nの二種以上を含んでいてもよい。有色無機顔料Nと白色無機顔料Nとを併用する場合、それら無機顔料Nの合計に対する白色無機顔料Nの割合は、5~200質量%であるのが好ましく、20~150質量%であるのがより好ましく、20~40質量%であるのが特に好ましい。膜が白色無機顔料Nよりも有色無機顔料Nを多く含めば、本光学層の隠蔽性と、本太陽光発電モジュールの意匠性とがよりバランスする。
特に、白色無機顔料Nは、波長400~780nmの可視光領域における可視光最小反射率が40%以上である光散乱性の無機顔料でもある。したがって、有色無機顔料Nと、白色無機顔料Nとを混合することで、本太陽光発電モジュールの隠蔽性がより優れる。
白色無機顔料Nは、膜が可視光をより選択的に散乱しやすい点から、波長400~780nmの可視光領域における可視光最小反射率が40%以上であり、80%以上であるのが好ましく、90%以上であるのがより好ましく、95%以上であるのが特に好ましい。可視光最小反射率の上限は、通常100%である。
【0072】
無機顔料Nは、波長780~1,500nmの近赤外光領域における近赤外光最大反射率が50%以上であり、平均粒子径が5.0~280.0nmであり、比表面積が5.0~1,000m2/gであるため、太陽光に含まれる近赤外光が無機顔料Nに散乱されにくいとともに、含フッ素重合体中に好適に分散しやすい。かつ、無機顔料Nとして、可視光域に十分な吸収を有する有色無機顔料Nを用いれば、意匠性も高くできる。したがって、無機顔料Nを含む膜を有する場合、本カバーガラスは、隠蔽性が高く、耐候性に優れるとともに、太陽光発電モジュールに適用した場合の意匠性および発電効率にも特に優れると考えられる。
【0073】
無機顔料N以外の特定の無機粒子としては、無機顔料Nに該当しない光散乱性粒子が挙げられる。このような光散乱性粒子としては、構造色を有する薄片状の無機顔料(パール顔料)が好ましい。
パール顔料とは、薄片状の粒子(例えば、最長径が2~100μm、厚さが0.01~10μmである粒子)の表面が金属またはその酸化物によって被覆されている顔料である。薄片状の粒子としては、雲母、セリサイト、タルク、カオリン、スメクタイト属粘土鉱物、マイカ、セリサイト、板状二酸化チタン、板状シリカ、板状酸化アルミニウム、窒化硼素、硫酸バリウム、板状チタニア・シリカ複合酸化物、ガラス等が挙げられる。薄片状の粒子表面を被覆する金属またはその酸化物としては、上述した無機粒子で挙げた金属またはその酸化物が挙げられる。パール顔料としては、薄片状のマイカ、ガラス、酸化アルミニウム等の粒子表面が、二酸化チタン、酸化鉄、銀等によって被覆されている粒子が好ましい。
膜が、光散乱性粒子としてパール顔料を含む場合、より鮮やかで光輝感のある色調を発現でき、本太陽光発電モジュールの意匠性により優れる。
【0074】
パール顔料としては、メタシャイン チタニアコートシリーズ(日本板硝子社製)、TWINCLEPEARL シルバータイプ(日本光研工業社製)等が挙げられる。
【0075】
膜は、無機粒子として、上記特定の無機粒子以外の、体積基準の累積50%径が2~2,000μmである粒子Mをさらに含んでいてもよい。
粒子Mを構成する材料の屈折率は、1.20以上が好ましく、1.30以上がより好ましく、1.35以上がより好ましい。粒子Mを構成する材料の屈折率は、1.70以下が好ましく、1.60以下がより好ましく、1.55以下が特に好ましい。
粒子Mの屈折率が上記範囲内であると、フルオロオレフィンに基づく単位を含む含フッ素重合体との屈折率差が小さくなり、光が透過しやすくなる。
粒子Mとしては、ガラスビーズ、珪砂、海砂、シリカ粒子等が挙げられる。
【0076】
膜は、非フッ素樹脂を含んでもよい。非フッ素樹脂の具体例としては、アルキッド樹脂、アミノアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、エポキシポリエステル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、変性ポリエステル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。なお、これら具体例のうち非フッ素樹脂が硬化性の樹脂の場合は、膜に含まれる非フッ素樹脂は、通常、硬化した樹脂である。
【0077】
膜は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて上記以外の成分(以下、「成分X」ともいう。)を含んでもよい。成分Xとしては、例えば、硬化触媒、有機フィラー、有機顔料、銅フタロシアニン(青色、緑色)、ペリレン(赤色)等)、有機系光安定剤、有機系紫外線吸収剤、無機系紫外線吸収剤、つや消し剤、レベリング剤、表面調整剤、脱ガス剤、充填剤、熱安定剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、防錆剤、シランカップリング剤、防汚剤、低汚染化処理剤が挙げられる。
ただし、成分Xのうち膜形成時に変化する成分は、通常、それ自体は膜に含まれる成分ではない。たとえば、前記硬化剤それ自体は、通常、膜中に存在する成分ではないと同様に、上記成分Xのうちシランカップリング剤等においては、それ自体は膜中には存在しないことが少なくない。なお、後述の溶剤を含む塗料の場合における溶剤のように、膜形成時に消失する成分は成分Xではない。
【0078】
膜は、本カバーガラスに表面凹凸による意匠性を付与する点から、成分Xとして、特に有機フィラーを含んでもよい。有機フィラーは、体積基準の累積50%径が2μm以上2,000μm以下の粒子である。
有機フィラーを構成する材料の屈折率およびその好適範囲は、上述した粒子Mと同様である。
有機フィラーとしては、樹脂ビーズ等が挙げられる。
なお、本明細書において、粒子Mと、上記有機フィラーと、を併せて「フィラー」ともいう。膜は、フィラーとして、粒子Mと、有機フィラーと、の両方を含んでよい。
【0079】
膜は、成分Xとして、有機顔料を含んでもよい。有機顔料として好ましい物性(平均粒子径、比表面積、近赤外光最大反射率、形状、密度、L*値、a*値、およびb*値)およびその好適範囲は、上述した無機顔料Nと同様である。
なお、膜のL*値、a*値、およびb*値は、JIS Z 8781-4:2013の記載に従い、膜の表面の法線方向から光が入射するように膜を設置した分光光度計を用いて、波長200~1,500nmにおける反射光を5nm刻みで測定して得られる反射スペクトルから算出される値である。
有機顔料としては、カーボンブラック(黒色)等が挙げられる。
なお、本明細書において、無機顔料Nと、有機顔料と、を併せて「顔料」ともいう。膜は、顔料として、無機顔料Nと、有機顔料と、の両方を含んでよい。ただし、本カバーガラスの耐候性をさらに向上させたい場合には、有機顔料は含まないか、含む場合は1質量%未満であることが好ましい。
【0080】
膜の平均膜厚は、各波長における各透過率および各反射率を好適に制御する点から、1~3,000μmが好ましく、5~2,000μmが特に好ましい。
膜の平均膜厚が上記範囲内であり、かつガラス板の平均膜厚が1~30mmであると、各波長における各透過率および各反射率をより好適に制御できる。
膜の平均膜厚は、上記渦電流式膜厚計を用いて測定される膜厚の算術平均値である。
膜の製造方法の具体例としては、含フッ素重合体を含む液状塗料(水や有機溶媒等の液状媒体を含む塗料)をガラス板上に塗布し、乾燥して形成する方法が挙げられる。粉末塗料等の液状媒体を含まない塗料の場合は、液状媒体を除去するための乾燥は不要である。
塗布方法の具体例としては、スプレー、アプリケーター、ダイコーター、バーコーター、ロールコーター、コンマコーター、ローラブラシ、はけ、へらを用いた方法が挙げられる。
含フッ素重合体を含む塗料を塗布した後、塗料中の溶剤を除去するために、加温乾燥してもよい。また、前記硬化剤のような反応性の成分を含む塗料の場合は、通常、塗料から形成された塗膜を加熱して反応性の成分を反応させ、膜とする。
また、膜を予め形成しておき、これをガラス板にラミネートして積層してもよい。
【0081】
膜は、含フッ素重合体を含む塗料を用いて形成されるのが好ましい。塗料としては、液状塗料が好ましい。
本太陽後発電モジュールを製造する場合、好ましくはガラス板上に上記塗料を塗装して膜を形成し、得られたカバーガラスを後述する封止材と圧着する。したがって、カバーガラスにおける膜が塗料を塗装して形成される膜であれば、膜がフィルムである場合と比較して、封止材との圧着時に端面において膜がはみ出さない点でも好ましい。
塗料は、含フッ素重合体のほかに、上述した膜が含んでよい無機粒子、非フッ素樹脂、成分X等を含んでいてよい。無機粒子、非フッ素樹脂、および成分Xは、上述と同様であるので、詳細な説明を省略する。塗料が液状の塗料の場合は、さらに、水や有機溶剤等の液状媒体を含む。
塗料の固形分濃度は、上記液状媒体によって、塗料の全質量に対して好ましくは10~90質量%、より好ましくは40~70質量%に調整されていることが好ましい。
【0082】
塗料中の含フッ素重合体がカルボキシ基を含む含フッ素重合体である場合、塗料中の含フッ素重合体の酸価は、膜の強度の点から、1~200mgKOH/gが好ましく、1~150mgKOH/gがより好ましく、3~100mgKOH/gがさらに好ましく、5~50mgKOH/gが特に好ましい。
塗料中の含フッ素重合体がヒドロキシ基を含む含フッ素重合体である場合、塗料中の含フッ素重合体の水酸基価は、膜の強度の点から、1~200mgKOH/gが好ましく、1~150mgKOH/gがより好ましく、3~100mgKOH/gがさらに好ましく、10~60mgKOH/gが特に好ましい。
塗料中の含フッ素重合体は、酸価または水酸基価のどちらか一方のみを有してもよく、両方を有してもよい。
塗料中の含フッ素重合体の含有量は、本太陽光発電モジュールの耐候性の点から、塗料が含む固形分の全質量に対して、5~90質量%が好ましく、10~80質量%が特に好ましい。
塗料の固形分中の含フッ素重合体の含有量は、塗料の全固形分質量に対して、10~90質量%が好ましく、40~70質量%が特に好ましい。
塗料中の含フッ素重合体に関するその他の説明は、上述した含フッ素重合体と同様であるので省略する。
【0083】
塗料は、上述した膜において架橋構造を形成する硬化剤を含んでいてもよい。
塗料中の含フッ素重合体が架橋性基を含む場合、塗料中の含フッ素重合体の架橋性基と、硬化剤とを反応させ、含フッ素重合体を架橋させることで、膜を硬化させることができる。この場合、含フッ素重合体と硬化剤との架橋構造を有する膜が形成される。
また、塗料中の硬化剤が加水分解性シリル基およびシラノール基から選択される1種以上を有する場合、硬化剤と、酸化ケイ素を含むガラス板と、場合に応じて含フッ素重合体と、を反応させることで、硬化剤と、ガラス板と、場合に応じて含フッ素重合体と、の架橋構造を有する膜が形成される。
塗料が硬化剤を含む場合、硬化剤の含有量は、塗料中の含フッ素重合体100質量部に対して、5~200質量部が好ましく、10~150質量部が特に好ましい。
【0084】
塗料は、成分Xとして、分散剤を含んでいてもよい。特に、塗料が無機粒子として無機顔料Nを含む場合、分散剤を含むのが好ましい。塗料が分散剤を含む場合、顔料が凝集しにくくなり、期待する光学特性を得やすくなる。
分散剤としては、脂肪酸アミド、酸性ポリアミドのエステル塩、アクリル樹脂、酸化ポリオレフィン、その他無機顔料に親和性のある重合体等が挙げられる。分散剤は市販品を用いてもよく、市販品としては、「ディスパロン」シリーズ(楠本化成社商品名)、「DISPERBYK」シリーズ(ビックケミー社商品名)等が挙げられる。
【0085】
塗料は、液状媒体を含むのが好ましい。液状媒体としては、水や有機溶媒が挙げられ、有機溶剤が好ましい。塗料が有機溶剤を含む場合、塗料は、含フッ素重合体と有機溶剤を含み、含フッ素重合体が有機溶剤に溶解している溶剤型塗料であるのが好ましい。この場合、ガラス板と膜、もしくはガラス板に塗布された下地処理層と膜の密着性を高めやすい。
有機溶剤としては、石油系混合溶剤(トルエン、キシレン、エクソンモービル社製ソルベッソ100、エクソンモービル社製ソルベッソ150等)、芳香族炭化水素溶剤(ミネラルスピリット等)、エステル溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、ケトン溶剤(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、アルコール溶剤(エタノール、tert-ブチルアルコール、イソプロピルアルコール等)等が挙げられる。有機溶剤は、2種以上を併用してもよい。
【0086】
本カバーガラスの可視光平均反射率は、10~100%である。本カバーガラスの可視光平均反射率は、12%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、20%以上が特に好ましい。なお、可視光平均反射率は、100%以下である。可視光平均反射率が上記範囲内にあれば、本発明の太陽光発電モジュールの意匠性が優れる。
波長380~780nmの可視光領域において、5nm刻みの各波長における反射率のうち、本カバーガラスの最大反射率(以下、可視光最大反射率ともいう。)は、20%以上が好ましく、25%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましく、40%以上が特に好ましい。なお、可視光最大反射率は、100%以下である。可視光最大反射率が上記範囲内にあれば、本カバーガラスの色調がより鮮やかになるため、本発明の太陽光発電モジュールの意匠性がより優れる。
各反射率の測定方法は、上述の通りであり、詳細な測定条件は後述の実施例欄に記載の通りである。
【0087】
本カバーガラスの近赤外光平均透過率は、20%以上であり、30%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上が特に好ましい。なお、近赤外光平均透過率は、100%以下である。近赤外光平均透過率が20%以上であれば、本発明の太陽光発電モジュールの発電効率が優れる。
本カバーガラスの可視光平均透過率は、本太陽光発電モジュールの意匠性の点から、80%未満が好ましく、70%未満がより好ましく、65%以下が特に好ましく、60%以下がさらに好ましく、50%以下が最も好ましい。なお、可視光平均透過率は、0%以上である。可視光平均透過率が80%未満、好ましくは70%未満であれば、太陽光発電モジュールの受光面側から太陽電池セルが視認されにくくなり、本発明の太陽光発電モジュールの意匠性が優れる。
波長380~780nmの可視光領域において、5nm刻みの各波長における透過率のうち、本カバーガラスの最大透過率(以下、可視光最大透過率ともいう。)は、70%未満が好ましく、65%以下がより好ましく、60%以下がさらに好ましく、50%以下が特に好ましい。なお、可視光最大透過率は、0%以上である。可視光最大透過率が70%未満であれば、太陽光発電モジュールの受光面側から太陽電池セルが視認されにくくなり、本発明の太陽光発電モジュールの意匠性がより優れる。
各透過率の測定方法は、上述の通りであり、詳細な測定条件は後述の実施例欄に記載の通りである。
【0088】
図1では、本カバーガラスとして、ガラス板114上の一方の面に、膜214が直接積層された態様を示したが、ガラス板上の両方の面に膜が積層されていてもよく、ガラス板と膜との間に任意の層(接着層等)を有していてもよい。膜を上述した塗料で形成する場合は、接着層が不要となる利点がある。
【0089】
図2は、太陽光発電モジュール10の断面図である。
図2に示すように、太陽光発電モジュール10は、第1カバーガラス14Aと、複数の太陽電池セル16と、第2カバーガラス14Bと、封止材18と、を有する。以下の説明において、第1カバーガラス14Aおよび第2カバーガラス14Bを総称して、カバーガラス14という場合がある。
【0090】
太陽光発電モジュール10において、複数の太陽電池セル16はいずれも、封止材18中に封止されている。複数の太陽電池セル16は互いに直列や並列に接続される。
太陽電池セル16は、第1受光面16Aと、第1受光面16Aと対向する第2受光面16Bと、を有する。太陽電池セル16は、第1受光面16Aおよび第2受光面16Bで受光した光エネルギーを電気エネルギーに変換する機能を持つ。
【0091】
図2の例では、太陽電池セル16の両面にカバーガラスが積層された態様を示したが、本太陽光発電モジュールは、太陽電池セルの一方の受光面側に本カバーガラスを積層し、太陽電池セルの他方の面側にガラス板や樹脂フィルム等を積層した態様であってもよい。特に、太陽光発電モジュールがビルの壁面や窓に設置される場合、強度を確保する点から、太陽電池セルの一方の受光面側に本カバーガラスが積層され、かつ、太陽電池セルの他方の面側に本カバーガラスまたはガラス板が積層されるのが好ましい。
また、本太陽光発電モジュールは、本発明の効果を損なわない範囲内で、カバーガラスと、封止材との間に、任意の層(接着層等)を有していてよい。
【0092】
カバーガラス14は、太陽光発電モジュール用カバーガラスとして用いられ、太陽電池セル16を保護する他に、太陽光発電モジュール10に意匠性を付与できる。
第1カバーガラス14Aは、太陽電池セル16の第1受光面16A側であって、封止材18の一方の面に貼着されている。また、第2カバーガラス14Bは、太陽電池セル16の第2受光面16B側であって、封止材18の他方の面(第1カバーガラス14Aが貼着された面と対向する面)に貼着されている。
【0093】
第1カバーガラス14Aは、ガラス板114Aと、ガラス板114A上に積層された、フルオロオレフィンに基づく単位を含む含フッ素重合体を含む膜214Aと、を有する。
図2の第1カバーガラス14Aにおいて、ガラス板114Aは、膜214Aよりも受光面16A側に積層されているが、膜214Aが、ガラス板114Aよりも受光面16A側に積層されていてもよい。この場合、ガラス板が最外層となるため、ガラス板の外観を生かしつつ本太陽光発電モジュールに意匠性を付与できる点で好ましい。
【0094】
第2カバーガラス14Bは、ガラス板114Bと、ガラス板114B上に積層された、フルオロオレフィンに基づく単位を含む含フッ素重合体を含む膜214Bと、を有する。ガラス板114Bおよび膜214Bはそれぞれ、上述のガラス板114Aおよび膜214Aと同様であるので、その説明を省略する。
【0095】
本発明における太陽電池セルは、近赤外領域に分光感度を有する材料であることが好ましい。具体的には、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等により構成されるシリコン系太陽電池セル、GaAs、CIS、CIGS、CdTe、InP、Zn
3P
2またはCu
2S等により構成される化合物系太陽電池セルが挙げられる。太陽電池セルとしては、配線がないために本太陽光発電モジュールの意匠性により優れ、外壁材として好適に使用できる点、および近赤外光領域における発電により優れる点から、CIS系太陽電池セルおよびCIGS系太陽電池セルが特に好ましい。また、太陽電池セルが配線を有する場合、意匠性の点から、配線は黒色または黒色に塗装されていることが好ましい。
ここで、
図3は、地上での太陽光スペクトル(日射エネルギー)と単結晶シリコン系太陽電池の分光感度曲線を示すグラフである。
図3に示す通り、単結晶シリコン系太陽電池は波長780nmよりも長波長領域にも高い分光感度を有する。つまり、可視光透過率が低く高い意匠性を有しつつ、長波長領域で高い透過率を示す本カバーガラスをカバーガラスとして用いることで、意匠性と発電効率を具備できることを意味する。
【0096】
本発明における封止材は、透明であるのが好ましい。封止材が透明であると、例えば
図2の場合においては、第1カバーガラス14Aまたは第2カバーガラス14Bを透過した光が、太陽電池セル16の第1受光面16Aまたは第2受光面16Bに到達しやすくなる。特に、本カバーガラスは、各波長における各透過率および各反射率を好適に制御しているため、封止材が透明であれば、本カバーガラス体による効果により優れる。
封止材を構成する材料の具体例としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、オレフィン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アイオノマー樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。封止材は、太陽電池セルに対する密着性および保護効果が求められるため、典型的には、本発明における無機顔料等を含まないか、含む場合は1質量%未満である。
【0097】
図4は、本太陽光発電モジュールによって構成された太陽電池アレイの一例を示す概略平面図である。
図4に示すように、太陽電池アレイ12は、複数枚の矩形状の太陽光発電モジュール10を平面的に配列し、直並列に接続して構成される。
本発明における太陽電池アレイの設置場所の具体例としては、ビルの屋上、屋根、外壁(例えば、壁面、窓)が挙げられる。
本太陽光発電モジュールは、上述したように意匠性に優れるため、建築用外壁材(例えば、ビルの壁面、窓)に用いるのが好ましい。
【0098】
本発明の建築用外壁材は、上述した太陽光発電モジュールを有する。したがって、本発明の建築用外壁材は、耐候性、意匠性および発電効率に優れる。建築用外壁材の具体例としては、カーテンウォール、壁材、窓が挙げられる。
【実施例】
【0099】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。例1~5、10、11、13~17は実施例であり、例6~9、12は比較例である。
【0100】
<使用した重合体溶液>
重合体(1)溶液:クロロトリフルオロエチレン-ビニルエーテル共重合体のキシレン溶液(AGC社製「LF-200」、重合体濃度60質量%に調製、フッ素原子含有量27質量%、水酸基価52mgKOH/g)
重合体(2)溶液:フッ化ビニリデン単独重合体のN-メチル-2-ピロリドン溶液(重合体濃度60質量%に調製、フッ素原子含有量59質量%、水酸基価0mgKOH/g)
重合体(3)溶液:テトラフルオロエチレン-ビニルエステル-アリルエーテル共重合体の酢酸ブチル溶液(重合体濃度60質量%に調製、フッ素原子含有量18質量%、水酸基価35mgKOH/g)
重合体(4)溶液:アクリル酸エステル重合体の酢酸ブチル溶液(重合体濃度60質量%に調製、フッ素原子含有量0質量%、水酸基価47mgKOH/g)
【0101】
[例1]
<塗料の作製>
重合体(1)溶液16.7g、キシレン43.2g、および、リン酸コバルトリチウム40g(東罐マテリアル・テクノロジー社製)を加え、さらに直径1mmのガラスビーズ100gを加えて、ロッキングミル(セイワ技研RM-05S)で2時間撹拌した。撹拌後、濾過によりガラスビーズを取り除き、得られた溶液38.2g、重合体(1)溶液52.1g、キシレン7.2g、ジブチルスズジラウレートのキシレン溶液(10000倍希釈)2.4g、およびコロネートHX(東ソー社製、硬化剤:HDIイソシアヌレートタイプのポリイソシアネート、固形分100質量%、標準タイプ)6.4gを混合し、塗料を得た。
【0102】
<カバーガラスの作製>
平均板厚2.8mmのソーダライムシリケートガラス板(Fe2O3含有量0.1質量%)に、アプリケーターを用いて上記塗料を塗工した。その後、25℃の恒温室中で1週間乾燥および硬化させて、ガラス板と、ガラス板上に積層された膜(平均膜厚50μm)と、を有するカバーガラスを得た。
【0103】
[例2~3、6~9、14]
顔料の種類(例2~3および例6~8:東罐マテリアル・テクノロジー社商品、例9:AGCエスアイテック社商品、例14:アサヒ化成工業社商品)を表1に示すように変更した以外は例1と同様にして、カバーガラスを得た。
【0104】
[例4~5]
顔料の種類(例4~5:東罐マテリアル・テクノロジー社製)を表1に示すように変更し、かつ、ガラス板上に積層された膜の平均膜厚が10μmになるように、塗料の塗工量を調整した以外は、例1と同様にして、カバーガラスを得た。
【0105】
[例10~12]
重合体溶液の種類を表2に示すように変更し、塗料を調製する際に使用した硬化剤の添加量を変更した以外は例2と同様にして、カバーガラスを得た。なお、重合体2溶液、重合体3溶液、重合体4溶液を使用して塗料を調製する際の硬化剤の添加量は、それぞれ、0g、4.3g、5.8gとした。
【0106】
[例13]
表3に示すFe2O3含有量の平均板厚2.8mmのソーダライムシリケートガラス板(Fe2O3含有量0.3質量%)を用いた以外は例2と同様にして、カバーガラスを得た。
【0107】
[例15]
例14において、顔料として、コバルトアルミニウム酸化物の31gと、酸化ジルコニウムの9gを用いた以外は例2と同様にして、カバーガラスを得た。
【0108】
例1~9および13~15、例10、例11、例12の塗料から得られた各膜におけるフッ素原子含有量はそれぞれこの順に、15質量%、39質量%、10質量%、0質量%であった。
【0109】
[評価方法]
<無機粒子>
(無機顔料Nの平均粒子径)
測定対象試料を0.1質量%となるように蒸留水に投入し、さらに分散剤(Poiz532A、花王社製)を固形分に対して1質量%添加してスラリーを得た。得られたスラリーに、卓上型超音波洗浄機(1510J-MT、BRANSON社製)にて6時間の超音波処理を行い、超音波処理開始から10分後、30分後、その後は30分毎に、粒度分布測定装置(Nanotrac Wave II-EX150、マイクロトラック・ベル社製)にて体積基準の累積50%径(D50)を測定した。得られた13点の累積50%径(D50)のうち、最も小さい値を平均粒子径として採用した。
【0110】
(L*値、a*値、およびb*値)
無機粒子における、L*値、a*値、およびb*値は、JIS Z 8781-4:2013の記載に従い、拡散反射法により測定して得られる拡散反射スペクトルから算出した。
拡散反射スペクトルは、拡散反射法により、分光光度計(U-4100、日立ハイテクノロジー社製)を用い、無機粒子を深さ0.5mmのガラスホルダーに充填し、石英カバーで押さえ、波長200~1,500nmの範囲における拡散反射光を5nm刻みで測定して得た。リファレンスには、硫酸バリウム(試薬、関東化学社製))を用いた。
【0111】
(近赤外光最大透過率および可視光最小反射率)
無機粒子における、近赤外光最大透過率および可視光最小反射率は、上述した拡散反射スペクトルから、波長780~1,500nmにおける最大反射率および波長400~780nmにおける最小反射率をそれぞれ算出した。
【0112】
<膜>
(可視光平均透過率、可視光最大透過率、近赤外光平均透過率)
分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製 製品名:U-4100)を用いて、波長380~1500nmの範囲を5nm刻みで、1,200nm/minのスキャン速度でカバーガラスの全光透過率を測定した。
カバーガラスは積分球の受光部に接触させるように設置し、塗工面(すなわち、膜の表面)から光が入射するように設定した。
光源切り替えは自動、切り替え波長は340.0nm、スリットは固定8nm、サンプリング間隔は5nmとした。
また、検知器切り替え補正なし、検知器切り替え波長850.0nm、スキャンスピード750nm/min、スリットは自動制御、Pbs感度は2、光量制御モード固定とした。
【0113】
可視光平均透過率は、上記測定で得られる全光透過率のうち、波長380~780nmの可視光領域において、5nm刻みの透過率を算術平均して求めた。
近赤外光平均透過率は、上記測定で得られる全光透過率のうち、波長780~1,500nmの近赤外光領域において、5nm刻みの透過率を算術平均して求めた。
可視光最大透過率は、上記測定にて得られた5nm刻みの透過率のうち、波長380~780nmの可視光領域における透過率の最大値である。
【0114】
(可視光平均反射率、可視光最大反射率)
分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製 製品名:U-4100)を用いて、波長380~1,500nmの範囲を5nm刻みで、1200nm/minのスキャン速度でカバーガラスの全光反射率を測定した。
カバーガラスは積分球の受光部に接触させるように設置し、塗工面(すなわち、膜の表面)から光が入射するように設定した。
光源切り替えは自動、切り替え波長は340.0nm、スリットは固定8nm、サンプリング間隔は5nmとした。
また、検知器切り替え補正なし、検知器切り替え波長850.0nm、スキャンスピード750nm/min、スリットは自動制御、Pbs感度は2、光量制御モード固定とした。
【0115】
可視光平均反射率は、上記測定で得られる全光反射率のうち、波長380~780nmの可視光領域において、5nm刻みの反射率を算術平均して求めた。
可視光最大反射率は、上記測定にて得られた5nm刻みの反射率のうち、波長380~780nmの可視光領域における反射率の最大値である。
【0116】
(発電効率)
単結晶シリコンセルの可視光(380~780nm)と、近赤外光(780~1,500nm)との発電寄与度をそれぞれ30%、70%として、可視光平均透過率および近赤外光平均透過率を乗算したものを合計し、未塗工の平均板厚2.8mmのソーダライムシリケートガラス板(Fe2O3含有量0.1質量%)をカバーガラスとして用いた単結晶シリコンセルに対する発電効率を算出した。
【0117】
(裏面視認性)
得られたカバーガラスを、塗工面を上にして白地に2mmのフォントで文字を印刷した紙の上に乗せ、裏面視認性を目視で判定した。裏面視認性がCであると、本発明の意匠性を満たさない。
<判定基準>
A:文字の存在を全く視認できない。
B:文字の存在を視認できるが、読むことができない。
C:文字の存在を視認でき、かつ読むことができる。
【0118】
(カバーガラスの耐候性)
Accelerated Weather Tester(Q-PANEL LAB PRODUCT社製、モデルQUV/SE)を用い、促進耐候性試験を行った。試験直前のカバーガラスの可視光平均透過率および近赤外光平均透過率と、試験2,000時間後におけるカバーガラスの可視光平均透過率および近赤外光平均透過率を、分光光度計を用いて測定し、発電効率を上述の計算式に従い算出した。
試験直前の発電効率の値を100%としたときの、試験2,000時間後の発電効率の値の割合を発電効率保持率(単位:%)として算出し、下記基準で耐候性を判定した。
<判定基準>
A:発電効率保持率が95%以上であった。
B:発電効率保持率が80%以上95%未満であった。
C:発電効率保持率が70%以上80%未満であった。
D:発電効率保持率が70%未満であった、または、カバーガラスから膜の剥離が見られた。
【0119】
得られた結果を表1~3に示す。なお、例1~9のカバーガラスについて、目視で確認した膜の色と、ガラス板上に形成した膜の平均膜厚とを表1に示した。
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
表1に示すように、例1~5のカバーガラスは、近赤外光平均透過率が20~100%の範囲内にあるため、発電効率に優れた太陽光発電モジュールを形成できるのが確認された。また、可視光平均反射率が10~100%であるため、発色性に優れつつ裏面視認性が低く、意匠性に優れた太陽光発電モジュールを形成できるのが確認された。
一方、例6~8のカバーガラスは近赤外光平均透過率が20%未満のため、発電効率が不十分であった。また、例9のカバーガラスは可視光平均反射率が10%未満であるため、意匠性が低かった。
【0124】
例2、10、11のカバーガラスは含フッ素重合体を含む膜で構成されているため耐候性に優れていたが、例12のカバーガラスは含フッ素重合体を含む膜で構成されていないため耐候性が不十分であった。
【0125】
また、赤外光に対する分光感度が高い太陽電池セルを有する太陽光発電モジュールでは、全発電量に対する近赤外光での発電量の割合が高い。したがって、表3に示すように、Fe2O3の含有量の小さいガラスを用いれば(特に、0.3質量%以下)、Fe2O3による近赤外光の吸収を抑制できる結果、発電効率が向上するため、赤外光に対する分光感度が高い太陽電池セルを有する太陽光発電モジュールに好適である。
【0126】
例14および例15に示すように、無機粒子として、無機顔料Nに相当する無機粒子を用いたカバーガラスは、近赤外光平均透過率が向上する点で、太陽光発電モジュールに好適である。
【0127】
[例16]
例5において、ガラス板上に塗料を塗工する前に、アプリケーターを用いてシランカップリング剤(3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン)を塗装し、120℃で12時間乾燥させて、プライマー層を形成した。その後、プライマー層上に例5と同様にして塗料を塗工し、カバーガラスを得た。
【0128】
[例17]
例16において、シランカップリング剤をメチルトリイソシアネートシランに変更する以外は同様にして、カバーガラスを得た。
【0129】
(耐温水性)
例5、16、17で得られたカバーガラスを、80℃の温水に100時間浸漬した後に、基材層からの機能層の剥離の有無を目視で確認し、以下の基準に従って評価した。結果を表5に示す。
S:剥離なし。
A:剥離面積5%以下。
B:剥離面積5%以上。
【0130】
【表5】
表4に示すように、シランカップリング剤をプライマーとして用いることで、ガラス板に対する膜の密着性が向上した。
なお、2017年12月11日に出願された日本特許出願2017-236991号、2018年03月13日に出願された日本特許出願2018-045508号、および2018年03月13日に出願された日本特許出願2018-045416号の明細書、特許請求の範囲、要約書および図面の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0131】
10 太陽光発電モジュール
12 太陽電池アレイ
14 カバーガラス
14A 第1カバーガラス
14B 第2カバーガラス
16 太陽電池セル
16A 第1受光面
16B 第2受光面
18 封止材
114A、114B ガラス板
214A、214B 膜