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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】解剖学的に成形された補強材
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/28 20060101AFI20230203BHJP
   A61B 17/72 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
A61F2/28
A61B17/72
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021083833
(22)【出願日】2021-05-18
(62)【分割の表示】P 2017559031の分割
【原出願日】2016-05-13
(65)【公開番号】P2021183126
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2021-06-16
(31)【優先権主張番号】62/161,018
(32)【優先日】2015-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502032219
【氏名又は名称】スミス アンド ネフュー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー・ライアン・ディーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・エヌ・イェーガー
(72)【発明者】
【氏名】アンジェラ・マインズ
(72)【発明者】
【氏名】ポール・チャールズ・クラブツリー
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-518238(JP,A)
【文献】特開2014-061385(JP,A)
【文献】特開2014-008411(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0277528(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0049286(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0073562(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/28
A61B 17/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
整形外科用インプラント装置と共に骨に植え込むための大腿骨補強材であって、
外側部分及び内側部分を有し、前記内側部分が当該補強材の内側領域を画定し、前記内側領域が前記整形外科用インプラント装置のステムの設置を受け入れるようにサイズ決めされ、前記内側領域が中心軸に沿って延在し、前記外側部分が近位端部、遠位端部、前側面、後側面、内側面及び外側面を有する、補強壁を備え、
前記近位端部が、第1サイズ及び第1形状を有し、前記遠位端部が、前記第1サイズとは異なる第2サイズ及び前記第1形状とは異なる第2形状を有し、
前記内側面及び前記外側面のうちの一方が、前記中心軸に対して第1斜角で延在し、前記前側面が、前記中心軸に対して第2斜角で延在し、前記第1斜角が前記第2斜角とは異なり、
前記第1形状及び前記第2形状の少なくとも一方が、卵型状であることを特徴とする大腿骨補強材。
【請求項2】
前記補強壁のうち前記骨を向く側に、逃げ面が位置し
前記逃げ面が、前記卵型状を遮断することを特徴とする請求項1に記載の大腿骨補強材。
【請求項3】
前記第1形状が、卵型状とされており、
前記第2形状が、卵型状とされており、サイズ及び形状において前記第1形状とは異なることを特徴とする請求項1に記載の大腿骨補強材。
【請求項4】
前記第1斜角が、第1鋭角であり、
前記第2斜角が、前記第1鋭角よりも小さい第2鋭角であることを特徴とする請求項1に記載の大腿骨補強材。
【請求項5】
前記遠位端部の前記後側面が、当該遠位端部の前記前側面よりも厚さが小さいことを特徴とする請求項1に記載の大腿骨補強材。
【請求項6】
前記外側部分が、1組の段状外観を有し、
1組の前記段状外観それぞれが、横断面が異なる髄内管に対応することを特徴とする請求項1に記載の大腿骨補強材。
【請求項7】
前記後側面が、第1側壁及び第2側壁を備える逃げ面を画定することを特徴とする請求項1に記載の大腿骨補強材。
【請求項8】
前記逃げ面が、前記外側部分の前記近位端部の少なくとも一部を備えることを特徴とする請求項7に記載の大腿骨補強材。
【請求項9】
前記第1側壁及び前記第2側壁が、前記外側部分の前記近位端部から遠位側へ基部壁まで延在することを特徴とする請求項7に記載の大腿骨補強材。
【請求項10】
記第1側壁の側縁である端部と前記第2側壁の側縁である端部との間の距離が、遠位側に向かうにしたがって小さくなることを特徴とする請求項9に記載の大腿骨補強材。
【請求項11】
前記第1側壁と前記第2側壁とが、角度をつけられていることを特徴とする請求項7に記載の大腿骨補強材。
【請求項12】
前記第1側壁と前記第2側壁とが、前記第1側壁及び前記第2側壁と前記中心軸との距離が遠位側に向かうにしたがって大きくなるように傾斜していることを特徴とする請求項7に記載の大腿骨補強材。
【請求項13】
記第1側壁及び前記第2側壁の近位端部の近位側には、基部壁の一部が延在することを特徴とする請求項7に記載の大腿骨補強材。
【請求項14】
大腿骨の髄内管内に挿入するように構成されたステムと、
補強材と、
を備え、
前記補強材が、外側部分及び内側部分を有し、前記内側部分が当該補強材の内側領域を画定し、前記内側領域が前記ステムの設置を受け入れるようにサイズ決めされ、前記内側領域が中心軸に沿って延在し、前記外側部分が近位端部、遠位端部、前側面、後側面、内側面及び外側面を有する、補強壁を備え、
前記近位端部が、第1サイズ及び第1形状を有し、前記遠位端部が、前記第1サイズとは異なる第2サイズ及び前記第1形状とは異なる第2形状を有し、前記第1形状及び前記第2形状の少なくとも一方が卵型状であり、
前記内側面及び前記外側面のうちの一方が、前記中心軸に対して第1斜角で延在し、前記前側面が、前記中心軸に対して第2斜角で延在し、前記第1斜角が前記第2斜角とは異なることを特徴とする大腿骨インプラントシステム。
【請求項15】
関節コンポーネントと、前記ステムを前記関節コンポーネントに連結する角度付カプラと、を備えることを特徴とする請求項14に記載の大腿骨インプラントシステム。
【請求項16】
前記内側部分が、前記角度付カプラを囲むことを特徴とする請求項15に記載の大腿骨インプラントシステム。
【請求項17】
前記前側面が、第1側壁及び第2側壁を備える逃げ面を画定することを特徴とする請求項14に記載の大腿骨インプラントシステム。
【請求項18】
前記逃げ面が、整形外科用インプラント装置のコンポーネントに対する前記補強材の回転変位に適応するように構成されていることを特徴とする請求項17に記載の大腿骨インプラントシステム。
【請求項19】
前記逃げ面が、前記整形外科用インプラント装置の前方フランジに隣接して位置付けられていることを特徴とする請求項18に記載の大腿骨インプラントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の実施形態は、広くは整形外科用補強材に関する。より具体的には、限定するものではないが、本出願の実施形態は、不均衡な負荷状態を防ぐか、または最小限に抑え、かつ関連する骨管内部に設置される際の適応性を高めるように構成されている、解剖学的に成形された整形外科用補強材に関する。
【背景技術】
【0002】
骨幹端および/または骨幹補強材は、典型的には、例えば植え込まれた脛骨ベースプレートなどの関節インプラント/コンポーネントの緩みおよび/または沈下を防ぐ助けとなる。このような補強材は、関節コンポーネントを固定したままの状態で、骨を通じて関節インプラントに対して、または関節インプラントによって加えられた負荷を分散させるのに役立ち得、これにより、インプラントの寿命を延ばすことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特に脛骨における、整形外科用インプラントの早期破損の一因となる主要な力の1つは、ねじり応力である。さらに、ねじり応力は、(セメントで固められているか、またはセメントで固められていない)関節インプラントと骨との境界面を切り離す場合があり、これは、インプラントがあまりに早くまたは早期に破損するのを促しかねない。せん断力などの他の力も、関節インプラントと骨との境界面が同様にあまりに早くまたは早期に破損する一因となり得る。加えて、圧縮負荷、特に関節インプラントと骨との境界面の正中面に対する不均衡な負荷(すなわち、内側の負荷)も、関節インプラントの沈下および早期破損を引き起こし得る。
【0004】
加えて、補強材と皮質が接触しすぎると、過剰な量の負荷を受けた結果、骨境界面のホスト骨に応力遮蔽を引き起こし得る。このような状況は、骨吸収を生じ得、これは、インプラントの早期破損の一因となり得る。加えて、適合またはフィットしていないことによる不均衡な皮質接触により、骨の特定の領域に負荷がかかり、それにより、同様の領域における関節インプラントと骨との境界面を浮き上がらせ(relieve)得る。少なくとも特定の状況では、このような不均衡な負荷または接触を受けるエリアは、支点と同じような特徴を呈する場合があり、このことが、補強材および関節インプラント双方の骨境界面での破損を促進しかねない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願のある態様は、整形外科用インプラント装置を骨に植え込むための補強材であり、この補強材は、外側部分および内側部分を含む補強壁を有する。補強壁の内側部分は、整形外科用インプラント装置の1つまたは複数のコンポーネントの設置を受け入れるようにサイズ決めされた、補強材の内側領域を画定する。外側部分の遠位端部は、骨の管の骨幹端-骨幹移行部の形状に概ね適合するように構成された第1の形状を有する。加えて、外側部分の近位端部は、骨の管の骨幹端領域の形状に概ね適合するように構成された第2の形状を有する。さらに、第1の形状は、第2の形状とは異なる形状およびサイズを有する。
【0006】
本出願の別の態様は、整形外科用インプラント装置を骨に植え込むための補強材であり、この補強材は、後湾曲部分および前内側部分を含む補強壁を有する。補強材の第1の端
部における後湾曲部分は、骨の管の骨幹端-骨幹移行部において管の後湾曲壁に概ね適合するように成形され、補強材の第2の端部における後湾曲部分は、管の骨幹端領域において管の後湾曲壁に概ね適合するように成形されている。さらに、補強材の第1の端部における前内側部分は、骨幹端-骨幹移行部において管の前内側壁に概ね適合するように成形され、補強材の第2の端部における前内側部分は、管の骨幹端領域において前内側壁に概ね適合するように成形されている。加えて、骨幹端領域における後湾曲部分の形状は、骨幹端領域の前内側部分における形状とは異なる。
【0007】
本明細書の説明では添付図面を参照する。添付図面ではいくつかの図にわたって同様の参照符号は同様の部分を指している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本出願のある実施形態による、脛骨補強材を有する脛骨インプラント装置の前後方向図を示す。
図2図1に示す脛骨インプラント装置の内外方向図を示す。
図3図1に示す脛骨インプラント装置の等角図を示す。
図4】オフセットした/角度のついたカプラを有する脛骨インプラント装置の等角図を示す。
図5A】近位脛骨の前面図を示す。
図5B図5Aに示す近位脛骨の内外方向図を示す。
図5C】識別線5C-5Cに沿った近位脛骨の横方向スライス図を示す。
図5D】識別線5D-5Dに沿った近位脛骨の横方向スライス図を示す。
図5E】識別線5E-5Eに沿った近位脛骨の横方向スライス図を示す。
図5F】識別線5F-5Fに沿った近位脛骨の横方向スライス図を示す。
図5G】識別線5G-5Gに沿った近位脛骨の横方向スライス図を示す。
図5H】識別線5H-5Hに沿った近位脛骨の横方向スライス図を示す。
図5I】識別線5I-5Iに沿った近位脛骨の横方向スライス図を示す。
図5J】識別線5J-5Jに沿った近位脛骨の横方向スライス図を示す。
図6】本出願のある実施形態による対称的脛骨補強材の斜視図を示す。
図7図6に示す対称的脛骨補強材の前側面図を示す。
図8図6に示す対称的脛骨補強材の右側面図を示す。
図9図6に示す対称的脛骨補強材の上面図を示す。
図10図6に示す対称的脛骨補強材の底面図を示す。
図11A】本出願の例示的な対称的脛骨補強材が髄内管に植え込まれた、図5Aの近位脛骨の前面図を示す。
図11B】本出願の例示的な対称的脛骨補強材が髄内管に植え込まれた、図5Cのスライス図を示す。
図11C】本出願の例示的な対称的脛骨補強材が髄内管に植え込まれた、図5Dのスライス図を示す。
図11D】本出願の例示的な対称的脛骨補強材が髄内管に植え込まれた、図5Eのスライス図を示す。
図11E】本出願の例示的な対称的脛骨補強材が髄内管に植え込まれた、図5Fのスライス図を示す。
図11F】本出願の例示的な対称的脛骨補強材が髄内管に植え込まれた、図5Gのスライス図を示す。
図11G】本出願の例示的な対称的脛骨補強材が髄内管に植え込まれた、図5Hのスライス図を示す。
図11H】本出願の例示的な対称的脛骨補強材が髄内管に植え込まれた、図5Iのスライス図を示す。
図11I】本出願の例示的な対称的脛骨補強材が髄内管に植え込まれた、図5Jのスライス図を示す。
図12A】本出願の例示的な対称的脛骨補強材が髄内管に植え込まれた、近位脛骨の前面図を示す。
図12B図12Aに示す近位脛骨の内外方向図を示す。
図12C図12Aの線12C-12Cに沿った近位脛骨および例示的な対称的脛骨補強材のスライス図を示す。
図12D図12Aの線12D-12Dに沿った近位脛骨および例示的な対称的脛骨補強材のスライス図を示す。
図13】本出願の例示された一実施形態による非対称的脛骨補強材の上面図を示す。
図14図13に示す非対称的脛骨補強材の底面図を示す。
図15図13に示す非対称的脛骨補強材の正面図を示す。
図16図13に示す非対称的脛骨補強材の右側面図を示す。
図17A】本出願の例示的な非対称的脛骨補強材が髄内管に植え込まれた、近位脛骨の前面図を示す。
図17B図17Aに示す近位脛骨の内外方向図を示す。
図17C】本出願の例示的な非対称的脛骨補強材が髄内管に植え込まれた、近位脛骨の関連スライス図を示す。
図17D】本出願の例示的な非対称的脛骨補強材が髄内管に植え込まれた、近位脛骨の関連スライス図を示す。
図17E】本出願の例示的な非対称的脛骨補強材が髄内管に植え込まれた、近位脛骨の関連スライス図を示す。
図17F】本出願の例示的な非対称的脛骨補強材が髄内管に植え込まれた、近位脛骨の関連スライス図を示す。
図17G】本出願の例示的な非対称的脛骨補強材が髄内管に植え込まれた、近位脛骨の関連スライス図を示す。
図17H】本出願の例示的な非対称的脛骨補強材が髄内管に植え込まれた、近位脛骨の関連スライス図を示す。
図17I】本出願の例示的な非対称的脛骨補強材が髄内管に植え込まれた、近位脛骨の関連スライス図を示す。
図17J】本出願の例示的な非対称的脛骨補強材が髄内管に植え込まれた、近位脛骨の関連スライス図を示す。
図18】本出願の例示された一実施形態による、大腿骨関節コンポーネントと、髄内ステムと、大腿骨補強材と、を有する大腿骨インプラント装置の後前方向図を示す。
図19図18に示す大腿骨インプラント装置の内外方向図を示し、これは遠位補強材および後方補強材をさらに含むものとして描かれたものである。
図20図18に示す大腿骨インプラント装置の等角図を示す。
図21】オフセットした/角度のついたカプラを有する大腿骨インプラント装置の等角図を示す。
図22】本出願の例示された一実施形態による、完全に封じ込められた大腿骨補強材の遠位端面図を示す。
図23】本出願の例示された一実施形態による、完全に封じ込められた大腿骨補強材の近位端面図を示す。
図24図22および図23に示す完全に封じ込められた大腿骨補強材の後側面図を示す。
図25図22および図23に示す完全に封じ込められた大腿骨補強材の内側面図を示す。
図26図22および図23に示す完全に封じ込められた大腿骨補強材の前側面図を示す。
図27】本出願の例示された一実施形態による、部分的封じ込めに適応するように構成された大腿骨補強材の遠位端面図を示す。
図28】本出願の例示された一実施形態による、部分的封じ込めに適応するように構成された大腿骨補強材の近位端面図を示す。
図29図27および図28に示す大腿骨補強材の後側面図を示す。
図30図27および図28に示す大腿骨補強材の内側面図を示す。
図31図27および図28に示す大腿骨補強材の前側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
前述の概要、および本出願の特定の実施形態に関する以下の詳細な説明は、添付図面と併せて読めば、より良く理解されるであろう。添付図面では、同様の参照符号は、同様の特徴、コンポーネント、および方法工程を示している。本発明を例示する目的で、図面に特定の実施形態を示す。しかしながら、本発明は、添付図面に示す構成および手段に制限されるものではないことを理解されたい。
【0010】
特定の用語法を前述の説明で便宜上使用しており、これは、限定することを意図するものではない。「上方」、「下方」、「上部」、「底部」、「第1」、「第2」などの単語は、参照を行う図面における方向を示している。この用語法は、特に前述した単語、その派生語、および同様の趣旨の単語を含む。加えて、「ある」および「1つの」という単語は、特に指定のない限り、参照したアイテムのうちの1つまたは複数を含むものとして定義される。「のうちの少なくとも1つ」という語句の後に「A、B、またはC」など、2つ以上のアイテムのリストが続く場合、A、B、またはCのうちのいずれか個々の1つ、およびこれらの任意の組合せを意味している。
【0011】
図1図4は、例示的な脛骨インプラント装置100の前後方向図、内外方向図、および等角図をそれぞれ示す。描かれた実施形態では、脛骨インプラント装置100は、脛骨(関節)ベースプレート102と、脛骨補強材104と、ステム106と、を含む脛骨関節組立体である。ステム中心軸108に沿って延び得るステム106は、例えばトレイステム110に連結されるなど、脛骨ベースプレート102に直接的または間接的に連結され得る。図4に例示するように、特定の実施形態によると、脛骨インプラント装置100は、少なくともステム中心軸108をトレイステム110のトレイステム中心軸114に対してオフセットさせ得る、オフセットした/角度のついたカプラ112を含み得る。脛骨インプラント装置100は、脛骨インプラント装置100に対して組み付けることのできる例えば他の髄内ステムおよび他の補強材など、他のコンポーネントも含むことができる。
【0012】
描かれている脛骨インプラント装置100は、脛骨補強材104内に、かつ脛骨補強材104を通って、また準備済みの患者の近位脛骨上に、セメントで固められるように構成されている。さらに、図1図4は、脛骨インプラント装置100の上または周りに、非植え込み状態で位置付けられた脛骨補強材104を示しているが、この脛骨補強材104は、脛骨インプラント装置100の残りの部分を植え込む前に患者の骨に植え込まれ得る。したがって、脛骨補強材104の内側領域144は、脛骨インプラント装置100を患者に植え込む間に、脛骨インプラント装置100のステム106ならびに/または例えばオフセットした/角度のついたカプラ112および/もしくはトレイステム110を含む他のコンポーネントの少なくとも一部の通過および/または設置を受け入れるようにサイズ決めされてよい。
【0013】
図5Aおよび図5Bは、近位脛骨116の前面図および内外方向図をそれぞれ示している。図5Aは、識別線5C-5Cから識別線5J-5J(図5C図5J)に沿った、近位脛骨116の横方向スライス図も含んでいる。近位脛骨116は、図5Aでは、連続した横方向スライス図それぞれで骨116が概ね内側に向かって小さくなり、それにより髄内管118のサイズも小さくなるような向きである。さらに、図5Aのスライス5E-5
Eからスライス5J-5J(図5E図5J)それぞれに描かれているように、髄内管118の皮質形状は、近位脛骨116の内壁120によって概ね画定されていてよく、内壁120は、少なくとも一部分において、前内側壁122と、後湾曲壁124と、前外側壁126と、を含み、前外側壁126および後湾曲壁124は、前内側壁122によって少なくとも一部分において互いから離されている。
【0014】
図6図10は、本出願の例示された一実施形態による対称的脛骨補強材104の例を示している。例えば、いくつかある補強材の中でも特に円錐型補強材またはスリーブ補強材を含め、さまざまな異なる補強材を脛骨補強材104に使用することができる。さらに、脛骨補強材104、さらに具体的には補強壁128は、さまざまな形状およびサイズを有してよく、対称的構成または非対称的構成を有してよい。例えば、少なくとも図9および図10により示すように、特定の実施形態によると、脛骨補強材104の補強壁128は、脛骨補強材104の長さ方向中心軸136にほぼ垂直な中心線134に関してほぼ対称であってよい。したがって、図9に示すように、例示された実施形態によると、中心線134は、概して、脛骨補強材104を、ほぼ対称の第1の側138aおよび第2の側138bに分割し得る。補強壁128は、脛骨インプラント装置100のコンポーネントの設置に適応するように構成された、少なくとも1つの開口部140a、140bをさらに含み得る。例えば、図6図10に示した実施形態によると、脛骨補強材104は、2つの開口部140a、140bを含んでよく、開口部140a、140bは、開口部140a、140bの周りに、または開口部140a、140bを通って、脛骨ベースプレート102のキール142a、142bの少なくとも一部の少なくとも通過および/または設置に適応するようなサイズ決めされる。さらに、例示された実施形態では、脛骨補強材104の第1の側138aおよび第2の側138bにおける補強壁128が開口部140a、140bを有するものとして描かれているが、他の実施形態は、第1の側138aおよび第2の側138bのうちの一方の補強壁128が開口部140a、140bを含んでよく、そのような開口部140a、140bが第1の側138aおよび第2の側138bのもう一方には存在しないことを除き、ほぼ対称であってよい。
【0015】
補強壁128は、内側部分130および外側部分132を含む。補強壁128の内側部分130は、概して、脛骨補強材104の内側領域144を画定し得る。内側領域144の少なくとも一部は、脛骨補強材104の遠位端部146と近位端部148との間に延びていてよい。加えて、前述したように、内側領域144は、例えば、いくつかあるコンポーネントの中でも特に、ステム106、オフセットした/角度のついたカプラ112、および/または脛骨ベースプレート102のトレイステム110など、脛骨補強材104の少なくとも1つまたは複数のコンポーネントの設置を受け入れるようにサイズ決めされてよい。加えて、例示された実施形態の補強壁128の外側部分132の表面は、段の外観または構成を有するが、さまざまな他の表面または表面形状を用いることもできる。
【0016】
補強壁128の外側部分132は、近位脛骨の皮質形状に、より具体的には脛骨の髄内管の一部に概ねフィットするように成形されている。特定の実施形態によると、脛骨補強材104の補強壁128の外側部分132は、脛骨補強材104の少なくとも遠位端部146、すなわち骨幹側端部が脛骨116の骨幹端-骨幹移行部の全体形状に適合し、かつ脛骨補強材104の少なくとも近位端部148が脛骨116の骨幹端領域の全体形状または外形に適合するように、構成され得る。他の実施形態によると、遠位端部146および/または近位端部148は、脛骨補強材104が脛骨116の髄内管118の少なくとも一部のサイズおよび/または形状に適合する能力を促進する、他の断面形状を与えるように成形されてもよい。このような適合は、補強材104の外側部分132の各セクションの物理的形状が髄内管118の内壁120の隣接部分の形状に合うか、または一致することに制限されなくてもよいが、代わりに、脛骨補強材104の長さ方向中心軸136が、例えばいくつかある基準軸の中でも特に、髄内管118の長さ方向軸、ステム中心軸10
8、および/またはトレイステム中心軸114を含む基準軸と整列するか、またはこれから離れた選択位置にある間に、髄内管118の内壁120の隣接部分に動作可能に接触するように成形されていることを含み得る。加えて、特定の実施形態によると、骨幹端領域の形状または外形に概ね適合またはフィットするように成形された脛骨補強材104の部分は、骨幹端-骨幹移行部の全体形状または外形に適合する脛骨補強材104の部分から、骨幹端方向に距離を置いて位置していてよく、この距離は、脛骨116の骨幹端領域と骨幹端-骨幹移行部との間の距離とほぼ同じである。
【0017】
脛骨116の髄内管118の形状の変化および/または移り変わりに概ね適合または適応するように脛骨補強材104を成形することにより、脛骨補強材104が不均衡な負荷状態にさらされる範囲を妨げるか、または最小限に抑えることができる。さらに、脛骨補強材104、および本明細書中の他の補強材の種々の部分またはエリアを、関連する骨管または骨空洞の少なくとも隣接する内壁の形状に概ね適合するか、または別様に適応するように成形することにより、脛骨補強材104、104’および以下で論じる大腿骨補強材206、206’を含め、本明細書で論じる概ね解剖学的に成形された補強材は、対応する関節インプラントと骨との境界面に対する衝撃力または負荷を比較的より大きな表面積にわたって分散させることによって、このような衝撃力を低減することができる。さらに具体的には、例えば補強材104、104’、206、206’の構成をこうして適合させると、このような力を周方向に均等に分散させることにより、ねじり応力に対する抵抗を向上させることができる。
【0018】
さらに、脛骨補強材104の少なくとも補強壁128の中での、かつ/またはこれに沿ったこのような変化は、脛骨補強材104の設置の際の適応性を改善することができ、ひいては、脛骨補強材104が関連する関節コンポーネントを関節線に対して位置付ける能力を妨げるのを軽減するか、または最小限に抑えるとともに、関節のバランス(屈曲と伸展とのバランス)および膝蓋骨大腿骨関節に対する各コンポーネントの回転を妨げることがない。
【0019】
例えば脛骨116の骨幹端-骨幹移行部および骨幹端領域の双方における形状、ならびにこの移行部と骨幹端領域との間の形状を含む、脛骨116の髄内管118の皮質形状に概ね適応するために、補強壁128の外側部分132の別々のエリアまたは側面は、異なる形状を有し得る。加えて、補強壁128の外側部分132のこのような別々のエリアまたは側面に沿った形状もまた、脛骨補強材104の遠位端部146と近位端部148との間で変化し得る。脛骨補強材104の側面またはエリアの中での、かつ/またはこれに沿った、このような移り変わりまたは不一致により、脛骨補強材104の補強壁128が概ね均一な円筒形状または円錐形状を有するのが妨げられる。
【0020】
図9図10を参照すると、特定の実施形態によると、脛骨補強材104の補強壁128は、第1の部分または後湾曲部分150と、第2の部分または前内側部分152を含んでよく、これらの部分は、中心線134に対して少なくとも垂直である少なくとも横断軸154によって、互いから離されている。加えて、例示された実施形態では、後湾曲部分150の少なくとも一部は、前内側部分152の対応部分とは異なる形状を有する。例えば図9で脛骨補強材104の近位端部148の上面図により図示されるように、後湾曲部分150は、丸い端部セクション156b、156cへと移行する概ね平坦なセクション156aを含み得るが、前内側部分152は、概ね平坦なセクション158b、158cへと移行する丸いセクション158aを含み得る。このような形状の差、その結果として生じる異なる外形が、少なくとも図8および図10によって、少なくとも脛骨補強材104の近位端部148周辺の領域において描かれている。少なくとも図11Aのスライス11D-11Dおよびスライス11E-11Eにより示すように、脛骨補強材104の後湾曲部分150および前内側部分152の、このような形状の差により、脛骨補強材104
が髄内管118の内壁120の少なくとも隣接する後湾曲壁126および前内側壁122それぞれの形状に概ね適合する能力が促進され得る。加えて、図11Aのスライス11D-11D(図11D)によって示すように、前内側部分152および/または後湾曲部分150の一部は、例えば外側壁166を含む、髄内管118の内壁120の他の部分に接触し得る。
【0021】
後湾曲部分150および前内側部分152の異なる形状は、補強壁128に沿って遠位端部146と近位端部148との間で変わるか、または変化することができ、補強材104の外側部分132は、図5Aのスライス図5C-5Cからスライス図5J-5Jおよび図11Aのスライス図11B-11Bからスライス図11I-11I(図11B図11I)のそれぞれに描かれているように、脛骨116の髄内管118の内壁120に沿った形状の変化に概ね適合する。少なくとも図6図11に示す、例示された実施形態によると、髄内管118の内壁120のこのような形状の変化、ならびに、補強壁128の少なくとも後湾曲部分150および前内側部分152に沿った、対応する形状の変化により、例えば図10および図11のスライスE-Eによって示すように、後湾曲部分150および前内側部分152が概して脛骨補強材104の遠位端部146において類似形状を有することができる。後湾曲部分150および前内側部分152の形状がこのように類似していることで、例えば、脛骨補強材104の遠位端部146に概ね円形、半円、またはわずかに楕円の形状を有する補強壁128をもたらすことができる。しかしながら、やはり、脛骨補強材104の遠位端部146における補強壁128の特定の形状は、脛骨116の骨幹端-骨幹移行部に概ね適合するように構成または選択され得る。
【0022】
図12A図12Dは、骨116の皮質形状の形状に、より具体的には、例示された実施形態では髄内管118の隣接形状に、適合するように成形された、対称的脛骨補強材104をさらに例示している。例えば図12Cに示すように、脛骨補強材104の近位端部148は、脛骨116の骨幹端領域の隣接部分の全体形状または外形に概ね適合するように成形されている。さらに、図12Cおよび図12Dに示すように、前外側壁126周辺の領域は、さらに脛骨結節160の領域において、近位脛骨116の横方向に切断した部分の前面によって、少なくとも部分的にしばしば覆われ得る。このように覆われると、脛骨補強材104が脛骨結節160の後ろに位置し得る海綿部位162に対し下方/上方に直接アクセスするのを妨げ得る。しかし、直接的なアクセスまたは特別な器具がなければ、本明細書に開示する解剖学的形状を持たない脛骨補強材を準備し、そのような場所へ設置することは、困難となり得る。
【0023】
図13図16を参照すると、少なくとも場合によっては、患者は、髄内管118の形状および/もしくはサイズに異常がある場合があり、かつ/または、脛骨補強材104’から強化されたサポートを必要とする場合がある。このような状況では、脛骨補強材104’は、少なくとも図13および図14に示すように、中心線134に関して非対称の構成を有し得る。このような非対称の構成により、補強壁128の内側部分130および外側部分132の少なくとも特定のセクション間における補強壁128の厚さが増大し得る。例えば、図11Aのスライス11D-11D、スライス11E-11E、およびスライス11F-11F(図11D図11F)と比較すると、図17Aの17E-17E、17F-17F、および17G-17Gのスライス図(図17E図17G)に示す非対称的脛骨補強材104’は、少なくとも髄内管118の内壁120の外側壁166の部分付近において、補強壁128の厚さが増大している。しかしながら、特定の実施形態によると、このような補強壁128の厚さの増大および/または特定の場所における補強壁128の増大は、脛骨結節160の後ろにある海綿部位162に関連する、前述した制約により、制限され得る。
【0024】
図18図20は、大腿骨インプラント装置200の後前方向図、内外方向図、および
等角図をそれぞれ示している。本出願の例示された一実施形態によると、大腿骨インプラント装置200は、大腿骨関節コンポーネント202と、髄内ステム204と、大腿骨補強材206と、を含む。加えて、図19に示すように、特定の実施形態によると、大腿骨インプラント装置200は、遠位補強材208および/または後方補強材210も含み得る。ステム中心軸212に沿って延び得るステム204は、例えば図21に示すように大腿骨関節コンポーネント202のコンポーネントステム220に連結されるなど、大腿骨関節コンポーネント202に直接的または間接的に連結され得る。図21に示すように、特定の実施形態によると、大腿骨インプラント装置200は、少なくともステム中心軸212をコンポーネントステム220のコンポーネントステム軸218に対してオフセットさせることができる、オフセットした/角度のついたカプラ216を含み得る。
【0025】
描かれた大腿骨インプラント装置200は、大腿骨補強材206内に、かつ大腿骨補強材206を通って、また準備済みの患者の遠位大腿骨上に、セメントで固められるように構成されている。さらに、図18図21は、大腿骨インプラント装置200の上または周りに、非植え込み状態で位置付けられた大腿骨補強材206を示しているが、この大腿骨補強材206は、大腿骨インプラント装置200の残りの部分を植え込む前に患者の骨に植え込まれ得る。したがって、大腿骨補強材206の内側領域は、大腿骨インプラント装置200を患者に植え込む間に、大腿骨インプラント装置200のステム204ならびに/または例えばオフセットした/角度のついたカプラ216および/もしくはコンポーネントステム220を含む他のコンポーネントの少なくとも一部の通過および/または設置を受け入れるようにサイズ決めされてよい。
【0026】
図23図26は、本出願の例示された一実施形態による、完全に封じ込められた大腿骨補強材206の例を示している。例えば、いくつかある補強材の中でも特に円錐型補強材またはスリーブ補強材を含め、さまざまな異なる補強材を大腿骨補強材206に使用することができる。さらに、大腿骨補強材206は、さまざまな形状およびサイズを有してよい。大腿骨補強材206は、大腿骨補強材206の中心軸224の周辺に延びる補強壁222を含み得る。補強壁222は、内側部分226および外側部分228を有する。補強壁222の内側部分226は、概して、大腿骨補強材206の内側領域230を画定し得る。内側領域230の少なくとも一部は、大腿骨補強材206の遠位端部232と近位端部234との間に延び得る。内側領域230は、例えば、いくつかあるコンポーネントの中でも特に、ステム204、オフセットした/角度のついたカプラ216、および/または大腿骨関節コンポーネント202のコンポーネントステム220など、大腿骨補強材206の少なくとも1つまたは複数のコンポーネントの設置を受け入れるようにサイズ決めされてよい。例えば、特定の実施形態によると、内側領域230は、少なくともステム204とコンポーネントステム220との間の移行部の設置を受け入れるようにサイズ決めされる。
【0027】
補強壁222の外側部分228は、遠位大腿骨、より具体的には、大腿骨の髄内管の一部の皮質形状に概ねフィットするように成形され得る。したがって、特定の実施形態によると、大腿骨補強材206の骨幹側端部すなわち遠位端部232は、骨幹端-骨幹移行部の全体形状に概ね適合するように成形され得る。大腿骨補強材206の反対側の近位端部234は、大腿骨の骨幹端領域の全体形状または外形に適合するように構成され得る。他の実施形態によると、遠位端部232および/または近位端部234は、大腿骨補強材206が大腿骨の髄内管の少なくとも一部のサイズおよび/または形状に適合する能力を促進する、他の断面形状をもたらすように成形されてもよい。このような適合は、補強材の外側部分228の各セクションの物理的形状が大腿骨の髄内管の内壁の隣接部分の形状に合うか、または一致することに制限されなくてもよいが、代わりに、大腿骨補強材206の中心軸224が、例えばいくつかある基準軸の中でも特に、大腿骨の髄内管の長さ方向軸、ステム中心軸212、および/またはコンポーネントステム軸218を含む基準軸と
整列するか、またはこれから離れた選択位置にある間に、髄内管の内壁の隣接部分に動作可能に接触するように成形されていることを含み得る。加えて、骨幹端領域の形状または外形に概ね適合するように成形された大腿骨補強材206の部分は、骨幹端-骨幹移行部の全体形状または外形に適合する大腿骨補強材206の部分から、概ね遠位方向に距離を置いて位置していてよく、この距離は、脛骨の骨幹端領域と骨幹端-骨幹移行部との間の距離とほぼ同じである。
【0028】
脛骨補強材104、104’と同様に、大腿骨の髄内管の形状の変化および/または移り変わりに概ね適合または適応するように大腿骨補強材206を成形することにより、大腿骨補強材206が不均衡な負荷状態にさらされる範囲を妨げるか、または最小限に抑えることができる。さらに、ここでも、大腿骨補強材206、および本明細書中の他の補強材の種々の部分またはエリアを、関連する骨管または骨空洞の少なくとも隣接する内壁の形状に概ね適合するか、または別様に適応するように成形することにより、本明細書で論じる、概ね解剖学的に成形された補強材104、104’、206、206’は、対応する関節インプラントと骨との境界面に対する衝撃力または負荷を比較的より大きな表面積にわたって分散させることによって、このような衝撃力を低減することができる。さらに具体的には、例えば補強材104、104’、206、206’の構成をこうして適合させると、このような力を周方向に均等に分散させることにより、ねじり応力に対する抵抗を向上させることができる。
【0029】
例えば大腿骨の骨幹端-骨幹移行部および骨幹端領域の双方における形状、ならびにこの移行部と骨幹端領域との間の形状を含む、大腿骨の髄管の皮質形状に概ね適応するために、補強壁222の外側部分228の別々のエリアまたは側面は、異なる形状を有し得る。加えて、補強壁222の外側部分228のこのような別々のエリアまたは側面に沿った形状もまた、大腿骨補強材206の遠位端部232と近位端部234との間で変化し得る。大腿骨補強材206の側面またはエリアの中での、かつ/またはこれに沿った、このような移り変わりまたは不一致により、大腿骨補強材206の補強壁222が概ね均一な円筒形状または円錐形状を有するのが妨げられ得る。
【0030】
図22図26を参照すると、特定の実施形態によると、補強壁222の外側部分228は、凹部または逃げ面236を含み得る。少なくとも図26により示されるように、例示された実施形態によると、逃げ面236は、例えば近位端部234から、大腿骨補強材206の遠位端部232に概ね隣接する領域まで延びるなど、補強壁222の一部に沿って延びていてよい。しかしながら、他の実施形態によると、逃げ面236は、大腿骨補強材206の近位端部234と遠位端部232との間に、かつ近位端部234および/または遠位端部232を通って延びていてよい。例示された実施形態では、逃げ面236は、1つまたは複数の側壁238と、基部壁240と、を有し得る。例えば図23に示すように、1つまたは複数の側壁238は、第1の側壁238aおよび第2の側壁238bを含み得る。第1の側壁238aおよび第2の側壁238bは、第1の側壁238aおよび第2の側壁238bがほぼ反対の方向および/または角度から互いに向かって合流するように、角度をつけられていてよい。例えば、例示された実施形態では、第1の側壁238aおよび第2の側壁238bはそれぞれ、対向する第1の端部242a、242bから延び、第1の側壁238aおよび第2の側壁238bの第2の端部244a、244bで互いに交差するか、または概ね近接するように、互いに向かって合流することができる。さらに、例示された実施形態では、第2の端部244a、244bは、第1の側壁238aおよび第2の側壁238bから離れて突出する補強フランジ246に隣接するか、または補強フランジ246を概ね形成することができる。
【0031】
図25により示されるように、特定の実施形態によると、第1の側壁238aおよび第2の側壁238bは、角度をつけられるか、または先細になっていてもよく、そのため、
大腿骨補強材206の長さ方向中心軸224に対して平行でない。例えば図26に描いた実施形態で示すように、補強壁222の近位端部234における第1の側壁238aおよび第2の側壁238bの部分は、第1の側壁238aおよび第2の側壁238bと基部壁240との交点付近と中心軸224との間の距離より短い距離だけ、大腿骨補強材206の中心軸224から離れていてよい。しかしながら、他の実施形態によると、第1の側壁238aおよび第2の側壁238bは、大腿骨補強材206の中心軸224に概ね平行であってよい。
【0032】
少なくとも図19および図20により示すように、例示された実施形態によると、逃げ面236は、大腿骨補強材206が大腿骨インプラント装置200上に動作可能に位置付けられたときに、逃げ面236が大腿骨インプラント装置200の前方フランジ248の骨に面する側に概ね平行になるように、成形され得る。このような形状は、大腿骨補強材206を大腿骨インプラント装置200に対して調節可能に回転変位させる、より具体的には、前方フランジ248(図19)を大腿骨補強材206に対して調節可能に回転変位させる上で、少なくとも助けとなり得る。このような回転調節は、補強壁222の第1の側壁238aおよび/または第2の側壁238bの角度方向によって容易になり得る。例えば図23および図28に示す例示的な大腿骨補強材206、206’によって示されるように、第1の側壁238aは、大腿骨インプラント装置200の他のコンポーネントに対する、例えば前方フランジ248に対するような、大腿骨補強材206の角度位置を、いくつかの回転自由度の中でも特に約20°だけ、調節する能力を促進するように向けられていてよい。よって、例えばこのような回転変位により、大腿骨インプラント装置200が患者に植え込まれたときに第1の側壁238aの第1の端部242aと前方フランジ248との間の距離を選択的に調節することが可能となる。
【0033】
逃げ面236の組み込み、およびこれに関連する、前方フランジ248に対する大腿骨補強材206の位置の調節によってもたらされる回転自由は、大腿骨補強材を大腿骨の髄内管の形状の回転変動に適応するように構成する上で役立ち得る。さらに、逃げ面236は、大腿骨補強材206が髄内管の特定の形状に適合するか、または別様に適応するとともに、大腿骨補強材206の位置が大腿骨インプラント装置200の他のコンポーネントの位置付けまたは動作を妨げることを最小限に抑えるか、または防ぐ能力をさらに高めるように、大腿骨補強材206が髄内管に植え込まれ得る向きに関する適応性を高める上で役立ち得る。例えば、少なくとも一部では逃げ面236を含むことによりもたらされる大腿骨補強材206の回転自由は、髄内管の形状の回転変動に適応するとともに、大腿骨関節コンポーネントなどの大腿骨インプラント装置200が特定の横方向回転場所に位置付けられるのを妨げないように大腿骨補強材206を位置付ける能力を高めることができる。
【0034】
図27図31は、大腿骨補強材206’を示し、これは、補強材206’の内側領域230’において、より大きなコンポーネント、またはコンポーネントの集合に適応するように構成されている。例えば、図27図31に描かれた大腿骨補強材206’は、いくつかのコンポーネントの中でも特にステム204、コンポーネントステム220、および/またはオフセットした/角度のついたカプラ216のうちの1つまたは複数を内側領域に受け入れるように構成され得る。このような一実施形態によると、逃げ面236または補強フランジ246がある場合、これらは、1つまたは複数の引き裂き線またはリリーフエリア250を含んでよく、引き裂き線またはリリーフエリア250は、補強壁222を開くか、突き破るか、もしくは引き裂くか、または、別様に補強材206’の少なくとも一部を解放するように構成されている。よって、場合によっては、引き裂き線またはリリーフエリア250のうちの1つまたは複数に沿って開口部を形成すると、大腿骨インプラント装置200のコンポーネントを大腿骨補強材206に対して位置付けるのを内側領域230’が制限したり妨げたりしないように、追加の空間へのアクセスを得ることがで
きる。したがって、図23図24に示す大腿骨補強材206の完全に封じ込められた内側領域230とは異なり、引き裂き線またはリリーフエリア250は、大腿骨補強材206’を完全に封じ込められた状態から部分的に封じ込められた状態へと移行させることができ、この移行は、例えば、引き裂き線またはリリーフエリア250に沿って開口部または裂け目が形成されたときに、起こり得る。
【0035】
加えて、少なくとも図23図31に示す大腿骨補強材206、206’の例示された実施形態では、大腿骨補強材206、206’の少なくともいくつかの側面が、異なる形状および/または構成を有し得る。さらに、前述した脛骨補強材104、104’と同様に、それらの側面の形状または構成も、大腿骨補強材206、206’の近位端部232と遠位端部234との間で、変化してよく、かつ別々に変化し得る。例えば、図23および図28の上面図を参照すると、大腿骨補強材206、206’の遠位端部232では、大腿骨補強材206、206’は、概ね卵型の形状を有してよく、これは、図24および図26図25と比較し、また同様に図29および図31図30と比較することによって分かるように、大腿骨補強材206、206’の補強壁222に沿って異なる形状およびサイズの外形を与えるのに役立ち得る。さらに、例示された実施形態の遠位端部234は、図22および図27に示すように、概ね卵型のものとして示されているが、大腿骨補強材206、206’の近位端部232は、概ね円形であってよい。よって、近位端部232と遠位端部234との間の移行、ならびにそれに伴う近位端部232および遠位端部234の形状は、大腿骨補強材206、206’が概ね均一な円筒形状または円錐形状を有するのを妨げ得る。代わりに、前述のとおり、大腿骨補強材206、206’の別々の部分に沿った、このような形状の変動は、大腿骨補強材206、206’が大腿骨の髄内管の隣接部分の形状に概ね適合する能力を高めるように構成され得る。
【0036】
本発明は、最も実際的かつ好適な実施形態と現在考えられるものと関連して説明してきたが、本発明は開示された実施形態に制限されず、むしろ、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内に含まれるさまざまな改変および等価な構成も含むことが意図されており、この範囲は、法の下許容されるすべての改変および等価な構成を含むよう、最も広い解釈を与えられるものであることを理解すべきである。さらに、「好適な」、「好ましくは」または「好ましい」という単語を前述の説明で使用することで、このように説明した特徴が、より望ましい可能性があることを示しているが、とはいえ、必須というわけではなく、その特徴のない任意の実施形態も、以下の特許請求の範囲で定められる発明の範囲内にあるものとして考えられ得ることを、理解されたい。特許請求の範囲を読む上では、「ある(a、an)」、「少なくとも1つの」、および「少なくとも一部」などの単語を使用する場合、請求項を1つのみのアイテムに制限することは、この請求項で逆のことを特に述べていない限り意図していないことが意図される。さらに、「少なくとも一部」および/または「一部」という語を使用した場合、そのアイテムは、逆のことが特に述べられていない限り、一部および/またはアイテム全体を含み得る。
【0037】
[付記項1]
整形外科用インプラント装置を骨に植え込むための補強材であって、前記補強材は、
外側部分および内側部分を有する補強壁を含み、前記内側部分は、前記補強材の内側領域を画定し、前記内側領域は、前記整形外科用インプラント装置の1つまたは複数のコンポーネントの設置を受け入れるようにサイズ決めされ、前記外側部分の遠位端部は、前記骨の管の骨幹端-骨幹移行部の形状に概ね適合するように構成された第1の形状を有し、前記外側部分の近位端部は、前記骨の管の骨幹端領域の形状に概ね適合するように構成された第2の形状を有し、前記第1の形状は、前記第2の形状とは異なる形状およびサイズを有する、補強材。
[付記項2]
外壁の前記遠位端部の前記第1の形状は、おおよそ前記骨の管の前記骨幹端-骨幹移行部と前記骨幹端領域との間の距離である距離だけ、前記近位端部の前記第2の形状から離れている、付記項1に記載の補強材。
[付記項3]
外壁の前記近位端部は、後湾曲部分および前内側部分を含み、前記後湾曲部分の少なくとも一部は、前記骨幹端領域において前記管の後湾曲壁に概ね適合するように成形され、前記前内側部分の少なくとも一部は、前記骨幹端領域において前記管の前内側壁に概ね適合するように成形され、前記近位端部における前記後湾曲部分の形状は、前記近位端部における前記前内側部分の形状とは異なる、付記項1または2に記載の補強材。
[付記項4]
前記外側部分の前記遠位端部は、略円形または楕円の形状を有する、付記項1から3のいずれか一項に記載の補強材。
[付記項5]
前記外側部分の前記近位端部は、略円形または楕円の形状を有する、付記項1から4のいずれか一項に記載の補強材。
[付記項6]
前記補強壁は、前記近位端部から前記補強壁の前記外側部分および前記内側部分を通って延びる、1つまたは複数の開口部を含み、前記1つまたは複数の開口部は、前記整形外科用インプラント装置のコンポーネントの一部の設置を受け入れるようにサイズ決めされる、付記項1から5のいずれか一項に記載の補強材。
[付記項7]
前記1つまたは複数の開口部は、第1の開口部および第2の開口部を含み、前記第1および第2の開口部はそれぞれ、前記整形外科用インプラント装置のキールの挿入を受け入れるようにサイズ決めされる、付記項6に記載の補強材。
[付記項8]
前記外側部分の一部は、前記整形外科用インプラント装置のコンポーネントに対する前記補強材の回転変位に適応するように構成された逃げ面を含む、付記項1から7のいずれか一項に記載の補強材。
[付記項9]
前記逃げ面は、患者に植え込まれたときに前記逃げ面が前記整形外科用インプラント装置の前方フランジに隣接することができる場所において、前記外側部分に沿って位置付けられている、付記項8に記載の補強材。
[付記項10]
前記逃げ面は、少なくとも1つの側壁を含み、前記少なくとも1つの側壁は、前記近位端部から前記遠位端部に向かって延びるにつれて外側に向かって先細になっている、付記項8または9に記載の補強材。
[付記項11]
前記逃げ面は、合流する一対の側壁を含み、前記合流する一対の側壁のうちの各側壁は、反対の方向に延び、前記合流する一対の側壁のうちの各側壁の端部は、前記外側部分の
対向部分に隣接している、付記項8または9に記載の補強材。
[付記項12]
前記補強壁は、前記整形外科用インプラント装置の1つまたは複数のコンポーネントの周りに前記補強材の設置に適応するため前記補強壁の少なくとも一部を引き裂くように構成された、1つまたは複数の引き裂きエリアを含む、付記項1から11のいずれか一項に記載の補強材。
[付記項13]
整形外科用インプラント装置を骨に植え込むための補強材であって、前記補強材は、
後湾曲部分および前内側部分を有する補強壁を含み、前記補強材の第1の端部における前記後湾曲部分は、前記骨の管の骨幹端-骨幹移行部において前記管の後湾曲壁に概ね適合するように成形され、前記補強材の第2の端部における前記後湾曲部分は、前記管の骨幹端領域において前記管の後湾曲壁に概ね適合するように成形され、前記補強材の前記第1の端部における前記前内側部分は、前記骨幹端-骨幹移行部において前記管の前内側壁に概ね適合するように成形され、前記補強材の前記第2の端部における前記前内側部分は、前記管の前記骨幹端領域において前記前内側壁に概ね適合するように成形され、前記骨幹端領域における前記後湾曲部分の形状は、前記骨幹端領域における前記前内側部分の形状とは異なる、補強材。
[付記項14]
外壁の前記第1の端部における前記後湾曲部分の形状および前記前内側部分の形状は、おおよそ前記骨の管の前記骨幹端-骨幹移行部と前記骨幹端領域との間の距離である距離だけ、前記第2の端部における前記後湾曲部分の形状および前記前内側部分の形状から離れている、付記項13に記載の補強材。
[付記項15]
前記後湾曲部分および前記前内側部分は、前記補強材の前記第1の端部において略円形または楕円の形状を有する、付記項13または14に記載の補強材。
[付記項16]
前記補強壁は、前記第2の端部から前記補強壁を通って延びる1つまたは複数の開口部を含み、前記1つまたは複数の開口部は、前記整形外科用インプラント装置のコンポーネントの一部の設置を受け入れるようにサイズ決めされ、前記補強壁は、前記整形外科用インプラント装置の1つまたは複数のコンポーネントの挿入を受け入れるようにサイズ決めされた内側領域を概ね画定している、付記項13から15のいずれか一項に記載の補強材。
[付記項17]
前記1つまたは複数の開口部は、第1の開口部および第2の開口部を含み、前記第1および第2の開口部はそれぞれ、前記整形外科用インプラント装置のキールの挿入を受け入れるようにサイズ決めされる、付記項16に記載の補強材。
[付記項18]
前記補強壁の外側部分は、前記整形外科用インプラント装置のコンポーネントに対する前記補強材の回転変位に適応するように構成された、逃げ面を含む、付記項13から17のいずれか一項に記載の補強材。
[付記項19]
前記逃げ面は、患者に植え込まれたときに前記逃げ面が前記整形外科用インプラント装置の前方フランジに隣接することができる場所において、前記外側部分に沿って位置付けられている、付記項18に記載の補強材。
[付記項20]
前記逃げ面は、少なくとも1つの側壁を含み、前記少なくとも1つの側壁は、前記第2の端部から前記第1の端部に向かって延びるにつれて外側に向かって先細になっている、付記項18または19に記載の補強材。
[付記項21]
前記補強壁は、前記整形外科用インプラント装置の1つまたは複数のコンポーネントの
周りでの前記補強材の設置に適応するため前記補強材の少なくとも一部を解放するように構成された、1つまたは複数のリリーフエリアを含む、付記項13から20のいずれか一項に記載の補強材。
【符号の説明】
【0038】
100 脛骨インプラント装置
102 脛骨ベースプレート
104、104’ 脛骨補強材
106 ステム
108 ステム中心軸
110 トレイステム
112 オフセットした/角度のついたカプラ
114 トレイステム中心軸
116 近位脛骨
118 髄内管
120 内壁
122 前内側壁
124 後湾曲壁
126 前外側壁
128 補強壁
130 内側部分
132 外側部分
134 中心線
136 長さ方向中心軸
138a 第1の側
138b 第2の側
140a、140b 開口部
142a、142b キール
144 内側領域
146 遠位端部
148 近位端部
150 後湾曲部分
152 前内側部分
154 横断軸
156a 概ね平坦なセクション
156b、156c 丸い端部セクション
158a 丸いセクション
158b、158c 概ね平坦なセクション
160 脛骨結節
162 海綿部位
166 外側壁
200 大腿骨インプラント装置
202 大腿骨関節コンポーネント
204 髄内ステム
206、206’ 大腿骨補強材
208 遠位補強材
210 後方補強材
212 ステム中心軸
216 オフセットした/角度のついたカプラ
218 コンポーネントステム軸
220 コンポーネントステム
222 補強壁
224 中心軸
226 内側部分
228 外側部分
230 内側領域
232 遠位端部
234 近位端部
236 逃げ面
238 側壁
238a 第1の側壁
238b 第2の側壁
240 基部壁
242a、242b 第1の端部
244a、244b 第2の端部
246 補強フランジ
248 前方フランジ
250 リリーフエリア
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図5J
図6
図7
図8
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図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図11G
図11H
図11I
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図17D
図17E
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図17H
図17I
図17J
図18
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