IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】洗浄液、洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230203BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20230203BHJP
   C11D 7/36 20060101ALI20230203BHJP
   C11D 1/02 20060101ALI20230203BHJP
   C11D 3/33 20060101ALI20230203BHJP
   C11D 3/30 20060101ALI20230203BHJP
   C11D 3/28 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
C11D7/32
C11D7/36
C11D1/02
C11D3/33
C11D3/30
C11D3/28
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021567080
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(86)【国際出願番号】 JP2020043458
(87)【国際公開番号】W WO2021131452
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2019236312
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】上村 哲也
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-165561(JP,A)
【文献】特開2015-165562(JP,A)
【文献】特表2016-519423(JP,A)
【文献】特開2016-86094(JP,A)
【文献】特開2006-41494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C11D 7/32
C11D 7/36
C11D 1/02
C11D 3/33
C11D 3/30
C11D 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学機械研磨処理が施された半導体基板用の洗浄液であって、
カルボキシル基を1つ有するアミノ酸である成分Aと、
アミノポリカルボン酸及びポリホスホン酸からなる群より選択される少なくとも1種である成分Bと、
脂肪族アミンである成分C(ただし、前記成分A、前記アミノポリカルボン酸、及び、第4級アンモニウム化合物は除く)とを含み、
前記成分Aの含有量に対する前記成分Bの含有量の質量比が0.2~10であり、
前記成分Aの含有量と前記成分Bの含有量との和に対する前記成分Cの含有量の質量比が5~100である、
洗浄液。
【請求項2】
前記成分Aが、グリシン、ヒスチジン、システイン、アルギニン、メチオニン、サルコシン及びアラニンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の洗浄液。
【請求項3】
前記成分Bが、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン四酢酸、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン四酢酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)及びエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の洗浄液。
【請求項4】
前記成分Cが、アミノアルコールを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の洗浄液。
【請求項5】
含窒素へテロ芳香族化合物、還元剤、アニオン性界面活性剤、並びに、キレート剤(ただし、前記成分A、前記成分B及び前記成分Cに含まれる化合物は除く)からなる群より選択される少なくとも1種である成分Dを更に含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の洗浄液。
【請求項6】
前記成分Aの含有量と前記成分Bの含有量との和に対する前記成分Dの含有量の質量比が0.1~20である、請求項5に記載の洗浄液。
【請求項7】
第4級アンモニウムカチオンを有する化合物又はその塩である第4級アンモニウム化合物を更に含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の洗浄液。
【請求項8】
前記第4級アンモニウム化合物が有する前記第4級アンモニウムカチオンが非対称構造を有する、請求項7に記載の洗浄液。
【請求項9】
2種以上の前記第4級アンモニウム化合物を含む、請求項7又は8に記載の洗浄液。
【請求項10】
2種以上の還元剤を更に含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の洗浄液。
【請求項11】
前記洗浄液のpHが、25℃において8.0~12.0である、請求項1~10のいずれか1項に記載の洗浄液。
【請求項12】
前記半導体基板が、銅及びコバルトからなる群より選択される少なくとも1種を含む金属膜を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の洗浄液。
【請求項13】
前記半導体基板が、タングステンを含む金属膜を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の洗浄液。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の洗浄液を、化学機械研磨処理が施された半導体基板に適用して洗浄する工程を含む、半導体基板の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板用の洗浄液、及び半導体基板の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CCD(Charge-Coupled Device)、メモリ等の半導体素子は、フォトリソグラフィー技術を用いて、基板上に微細な電子回路パターンを形成して製造される。具体的には、基板上に、配線材料となる金属膜、エッチング停止層、及び層間絶縁層を有する積層体上にレジスト膜を形成し、フォトリソグラフィー工程及びドライエッチング工程(例えば、プラズマエッチング処理)を実施することにより、半導体素子が製造される。
ドライエッチング工程を経た基板には、ドライエッチング残渣物(例えば、メタルハードマスクに由来するチタン系金属等の金属成分、又はフォトレジスト膜に由来する有機成分)が残存することがある。
【0003】
半導体素子の製造において、金属配線膜、バリアメタル、及び絶縁膜等を有する基板表面を、研磨微粒子(例えば、シリカ、アルミナ等)を含む研磨スラリーを用いて平坦化する化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)処理を行うことがある。CMP処理では、CMP処理で使用する研磨微粒子、研磨された配線金属膜、及び/又は、バリアメタル等に由来する金属成分が、研磨後の半導体基板表面に残存しやすい。
これらの残渣物は、配線間を短絡し、半導体の電気的な特性に影響を及ぼし得ることから、半導体基板の表面からこれらの残渣物を除去する洗浄工程が行われることが多い。
【0004】
例えば、特許文献1には、銅の化学的機械的平坦化後のための水性清浄化組成物であって、有機塩基、銅エッチング剤、有機リガンド、ヒドラジド化合物である腐食防止剤、及び水を含み、有機塩基、銅エッチング剤、有機リガンド及び腐食防止剤がそれぞれ特定の濃度である組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2016-519423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、特許文献1等を参考にして、CMPが施された半導体基板用の洗浄液について検討したところ、半導体基板の表面に銅を含む残渣とコバルトを含む残渣とが残存する場合、洗浄液に含まれる成分のこれらの残渣に対する反応速度が大きく異なることを見出し、CMPが施された半導体基板に対する洗浄液の洗浄性能及び腐食防止性能について、更に改善する余地があることを知見した。
【0007】
本発明は、CMPが施された半導体基板用の洗浄液であって、銅を含む金属膜及びコバルトを含む金属膜に対する洗浄性能及び腐食防止性能に優れた洗浄液を提供することを課題とする。また、CMPが施された半導体基板の洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
〔1〕
化学機械研磨処理が施された半導体基板用の洗浄液であって、カルボキシル基を1つ有するアミノ酸である成分Aと、アミノポリカルボン酸及びポリホスホン酸からなる群より選択される少なくとも1種である成分Bと、脂肪族アミンである成分C(ただし、上記成分A、上記アミノポリカルボン酸、及び、第4級アンモニウム化合物は除く)とを含み、上記成分Aの含有量に対する上記成分Bの含有量の質量比が0.2~10であり、上記成分Aの含有量と上記成分Bの含有量との和に対する上記成分Cの含有量の質量比が5~100である、洗浄液。
〔2〕
上記成分Aが、グリシン、ヒスチジン、システイン、アルギニン、メチオニン、サルコシン及びアラニンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、〔1〕に記載の洗浄液。
〔3〕
上記成分Bが、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン四酢酸、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン四酢酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)及びエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)からなる群より選択される少なくとも1種を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の洗浄液。
〔4〕
上記成分Cが、アミノアルコールを含む、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の洗浄液。
〔5〕
含窒素へテロ芳香族化合物、還元剤、アニオン性界面活性剤、並びに、キレート剤(ただし、上記成分A、上記成分B及び上記成分Cに含まれる化合物は除く)からなる群より選択される少なくとも1種である成分Dを更に含む、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の洗浄液。
〔6〕
上記成分Aの含有量と上記成分Bの含有量との和に対する上記成分Dの含有量の質量比が0.1~20である、〔5〕に記載の洗浄液。
〔7〕
第4級アンモニウムカチオンを有する化合物又はその塩である第4級アンモニウム化合物を更に含む、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の洗浄液。
〔8〕
上記第4級アンモニウム化合物が有する上記第4級アンモニウムカチオンが非対称構造を有する、〔7〕に記載の洗浄液。
〔9〕
2種以上の上記第4級アンモニウム化合物を含む、〔7〕又は〔8〕に記載の洗浄液。
〔10〕
2種以上の還元剤を更に含む、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の洗浄液。
〔11〕
上記洗浄液のpHが、25℃において8.0~12.0である、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の洗浄液。
〔12〕
上記半導体基板が、銅及びコバルトからなる群より選択される少なくとも1種を含む金属膜を有する、〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の洗浄液。
〔13〕
上記半導体基板が、タングステンを含む金属膜を有する、〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の洗浄液。
〔14〕
〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の洗浄液を、化学機械研磨処理が施された半導体基板に適用して洗浄する工程を含む、半導体基板の洗浄方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、CMPが施された半導体基板用の洗浄液であって、銅を含む金属膜及びコバルトを含む金属膜に対する洗浄性能及び腐食防止性能に優れた洗浄液を提供できる。また、本発明によれば、CMPが施された半導体基板の洗浄方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態の一例を説明する。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
本明細書において、ある成分が2種以上存在する場合、その成分の「含有量」は、それら2種以上の成分の合計含有量を意味する。
本明細書において、「ppm」は「parts-per-million(10-6)」を意味し、「ppb」は「parts-per-billion(10-9)」を意味する。
本明細書に記載の化合物において、特に限定が無い場合は、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)、光学異性体、及び同位体が含まれていてもよい。また、異性体及び同位体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
【0013】
本明細書においてpsiとは、pound-force per square inch;重量ポンド毎平方インチを意図し、1psi=6894.76Paを意図する。
【0014】
本発明の洗浄液(以下、単に「洗浄液」とも記載する。)は、化学機械研磨処理(CMP)が施された半導体基板用の洗浄液であって、カルボキシル基を1つ有するアミノ酸である成分Aと、アミノポリカルボン酸及びポリホスホン酸からなる群より選択される少なくとも1種である成分Bと、脂肪族アミンである成分C(ただし、成分A、アミノポリカルボン酸、及び、第4級アンモニウム化合物は除く)とを含む。また、成分Aの含有量に対する成分Bの含有量の質量比が0.05~20である。更に、成分Aの含有量と成分Bの含有量との和に対する成分Cの含有量の質量比が5~100である。
【0015】
本発明者は、洗浄液が、成分A、成分B及び成分Cを含み、且つ、成分A、成分B及び成分Cの含有量の比率が特定されていることにより、CMPが施された半導体基板の洗浄工程における、銅を含む金属膜及びコバルトを含む金属膜に対する洗浄性能及び腐食防止性能(以下「本発明の効果」とも記載する)が向上することを知見している。
なお、洗浄液の洗浄対象及び本発明の効果に関して、「半導体基板が銅を含む金属膜及びコバルトを含む金属膜を有する」との記載は、銅を含む金属膜とコバルトを含む金属膜が同一の金属膜である場合(即ち、単一の金属膜が銅とコバルトの両者を含む場合)と、両者が異なる金属膜である場合のいずれも意味する。
【0016】
このような洗浄液により本発明の効果が得られる詳細なメカニズムは不明であるが、以下のように推測される。本発明者は、半導体基板用の洗浄液に含まれる多くの成分では、コバルトに対する反応速度が銅に対する反応速度に比較して10~10程度遅いことを知見している。そのため、半導体基板の表面に銅を含む残渣(以下「Cu残渣」とも記載する)とコバルトを含む残渣(以下「Co残渣」とも記載する)とが残存する場合、洗浄液に含まれる洗浄成分のCo残渣への反応性が低く、高い洗浄性能が得られにくい場合があることがわかった。それに対して、本発明の洗浄液は、コバルトに対する反応速度と銅に対する反応速度が比較的近い成分Aを特定の含有量で使用することにより、銅を含む金属膜及びコバルトを含む金属膜に対する半導体基板に対して、腐食防止性能及びCu残渣の洗浄性能に優れるとともに、Co残渣の洗浄性能を向上させることができたと本発明者は推測している。
【0017】
[洗浄液]
以下、洗浄液に含まれる各成分について、説明する。
【0018】
〔成分A〕
洗浄液は、カルボキシル基を1つ有するアミノ酸である成分Aを含む。
成分Aは、分子内に1つのカルボキシル基と1つ以上のアミノ基とを有する化合物であれば特に制限されない。
成分Aとしては、例えば、グリシン、セリン、α-アラニン(2-アミノプロピオン酸)、β-アラニン(3-アミノプロピオン酸)、リジン、ロイシン、イソロイシン、システイン、メチオニン、エチオニン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、ヒスチジン、ヒスチジン誘導体、アスパラギン、グルタミン、アルギニン、プロリン、フェニルアラニン、特開2016-086094号公報の段落[0021]~[0023]に記載の化合物、及びこれらの塩が挙げられる。なお、ヒスチジン誘導体としては、特開2015-165561号公報、及び、特開2015-165562号公報等に記載の化合物が援用でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、塩としては、ナトリウム塩、及びカリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、炭酸塩、並びに酢酸塩が挙げられる。
【0019】
成分Aが有するアミノ基の個数は、1~4が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
成分Aは、低分子量であることが好ましい。具体的には、成分Aの分子量は、600以下が好ましく、450以下がより好ましく、300以下が更に好ましい。下限は特に制限されず、70以上が好ましい。
また、成分Aの炭素数は、15以下が好ましく、12以下がより好ましく、8以下が更に好ましい。下限は特に制限されず、1以上が好ましい。
【0020】
成分Aとしては、洗浄性能(特にCoを含む金属膜に対する洗浄性能)がより優れる点で、グリシン、ヒスチジン、システイン、アルギニン、メチオニン、サルコシン又はアラニンが好ましく、洗浄性能が更に優れる点で、グリシン、ヒスチジン、システイン又はアラニンがより好ましく、グリシン、ヒスチジン、又はアラニンが更に好ましい。
【0021】
成分Aとしては、Coを含む金属膜に対する洗浄性能がより優れる点で、Co2+に対する反応速度(溶媒交換速度)が、10~10であることが好ましく、10~10であることがより好ましい。上記の具体的な成分Aのうち、反応速度が10~10である化合物としては、グリシン、ヒスチジン、システイン、メチオニン又はアラニンが挙げられる。
化合物のCo2+に対する反応速度(溶媒交換速度)は、クライオスタッドにて冷却し、分光測定器の連続測定によりピーク吸収の増減を追跡することにより実施できる。例えば、液体窒素温度下(77K)で、波長400~700nmに現れる分光ピークを追跡することによって、測定できる。なお、ここでの反応速度は23℃での反応速度であるため、測定温度から室温温度への換算を行う。
【0022】
成分Aは、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
洗浄液における成分Aの含有量は、洗浄性能(特にCoを含む金属膜に対する洗浄性能)がより優れる点で、洗浄液の全質量に対して、0.003質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、腐食防止性能(特にCu又はCoを含む金属膜に対する洗浄性能)により優れる点で、洗浄液の全質量に対して2.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.8質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。
また、成分Aの含有量は、洗浄液中の溶剤を除いた成分の合計質量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、洗浄液中の溶剤を除いた成分の合計質量に対して、15.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以下がより好ましく、8.0質量%以下が更に好ましい。
なお、本明細書において、「洗浄液中の溶剤を除いた成分の合計質量」とは、溶剤以外の洗浄液に含まれる全ての成分の含有量の合計を意味する。また、単なる「溶剤」との用語は、水及び有機溶剤の両者を含む。
【0023】
〔成分B〕
洗浄液は、アミノポリカルボン酸及びポリホスホン酸からなる群より選択される少なくとも1種である成分Bを含む。
アミノポリカルボン酸は、分子内に1つ以上のアミノ基と2つ以上のカルボキシル基とを有する化合物である。ポリホスホン酸は、分子内に2つ以上のホスホン酸基を有する化合物である。
【0024】
<アミノポリカルボン酸>
アミノポリカルボン酸は、分子内に配位基として1つ以上のアミノ基と2つ以上のカルボキシ基を有する化合物である。
アミノポリカルボン酸としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、ブチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン-N,N,N’,N’-四酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン四酢酸(CyDTA)、エチレンジアミン二酢酸、エチレンジアミンジプロピオン酸、1,6-ヘキサメチレン-ジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸、トリエチレンテトラミン-N,N,N’,N”,N’”,N”’-六酢酸(TTHA)、N,N-ビス(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N-二酢酸、ジアミノプロパン四酢酸、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-四酢酸、ジアミノプロパノール四酢酸、(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸、及びイミノジ酢酸(IDA)が挙げられる。
【0025】
アミノポリカルボン酸が有するアミノ基の個数は、1~5が好ましく、2~4がより好ましく、3又は4が更に好ましい。アミノポリカルボン酸が有するカルボキシル基の個数は、2~5が好ましく、3~5がより好ましく、4又は5が更に好ましい。
また、アミノポリカルボン酸の炭素数は、15以下が好ましく、12以下がより好ましい。下限は特に制限されず、4以上が好ましく、6以上がより好ましい。
アミノポリカルボン酸としては、洗浄性能(特にCuを含む金属膜に対する洗浄性能)がより優れる点で、DTPA、EDTA又はCyDTAが好ましく、DTPA又はEDTAがより好ましい。
【0026】
<ポリホスホン酸>
ポリホスホン酸は、分子内に2つ以上のホスホン酸基を有する化合物である。
ポリホスホン酸としては、例えば、下記式(P1)、式(P2)及び式(P3)で表される化合物が挙げられる。
【0027】
【化1】
【0028】
式中、Xは、水素原子又はヒドロキシ基を表し、Rは、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表す。
【0029】
式(P1)におけるRで表される炭素数1~10のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよい。
式(P1)におけるRとしては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、又はイソプロピル基がより好ましい。
なお、本明細書に記載するアルキル基の具体例において、n-はnormal-体を表す。
式(P1)におけるXとしては、ヒドロキシ基が好ましい。
【0030】
式(P1)で表されるポリホスホン酸としては、エチリデンジホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1’-ジホスホン酸(HEDPO)、1-ヒドロキシプロピリデン-1,1’-ジホスホン酸、又は1-ヒドロキシブチリデン-1,1’-ジホスホン酸が好ましい。
【0031】
【化2】
【0032】
式中、Qは、水素原子又はR-POを表し、R及びRは、それぞれ独立して、アルキレン基を表し、Yは、水素原子、-R-PO、又は下記式(P4)で表される基を表す。
【0033】
【化3】
【0034】
式中、Q及びRは、式(P2)におけるQ及びRと同じである。
【0035】
式(P2)においてRで表されるアルキレン基としては、例えば、炭素数1~12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。
で表されるアルキレン基としては、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基がより好ましく、エチレン基が更に好ましい。
式(P2)及び(P4)においてRで表されるアルキレン基としては、炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基が挙げられ、炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基又はエチレン基がより好ましく、メチレン基が更に好ましい。
式(P2)及び(P4)におけるQとしては、-R-POが好ましい。
式(P2)におけるYとしては、-R-PO又は式(P4)で表される基が好ましく、式(P4)で表される基がより好ましい。
【0036】
式(P2)で表されるポリホスホン酸としては、エチルアミノビス(メチレンホスホン酸)、ドデシルアミノビス(メチレンホスホン酸)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(NTPO)、エチレンジアミンビス(メチレンホスホン酸)(EDDPO)、1,3-プロピレンジアミンビス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTPO)、エチレンジアミンテトラ(エチレンホスホン酸)、1,3-プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(PDTMP)、1,2-ジアミノプロパンテトラ(メチレンホスホン酸)、又は1,6-ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)が好ましい。
【0037】
【化4】
【0038】
式中、R及びRはそれぞれ独立して、炭素数1~4のアルキレン基を表し、nは1~4の整数を表し、Z~Z及びn個のZのうち少なくとも4つは、ホスホン酸基を有するアルキル基を表し、残りはアルキル基を表す。
【0039】
式(P3)においてR及びRで表される炭素数1~4のアルキレン基は、直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよい。R及びRで表される炭素数1~4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、エチルメチレン基、テトラメチレン基、2-メチルプロピレン基、2-メチルトリメチレン基、及びエチルエチレン基が挙げられ、エチレン基が好ましい。
式(P3)におけるnとしては、1又は2が好ましい。
【0040】
式(P3)におけるZ~Zで表されるアルキル基及びホスホン酸基を有するアルキル基におけるアルキル基としては、例えば、炭素数1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、メチル基が好ましい。
~Zで表されるホスホン酸基を有するアルキル基におけるホスホン酸基の数としては、1つ又は2つが好ましく、1つがより好ましい。
~Zで表されるホスホン酸基を有するアルキル基としては、例えば、炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状であって、ホスホン酸基を1つ又は2つ有するアルキル基が挙げられ、(モノ)ホスホノメチル基、又は(モノ)ホスホノエチル基が好ましく、(モノ)ホスホノメチル基がより好ましい。
式(P3)におけるZ~Zとしては、Z~Z及びn個のZのすべてが、上記のホスホン酸基を有するアルキル基であることが好ましい。
【0041】
式(P3)で表されるポリホスホン酸としては、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DEPPO)、ジエチレントリアミンペンタ(エチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、又はトリエチレンテトラミンヘキサ(エチレンホスホン酸)が好ましい。
【0042】
洗浄液に使用するポリホスホン酸としては、上記の式(P1)、(P2)及び(P3)で表されるポリホスホン酸だけでなく、国際公開第2018/020878号明細書の段落[0026]~[0036]に記載の化合物、及び、国際公開第2018/030006号明細書の段落[0031]~[0046]に記載の化合物((共)重合体)が援用でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0043】
ポリホスホン酸が有するホスホン酸基の個数は、2~5が好ましく、2~4がより好ましく、3又は4が更に好ましい。
また、ポリホスホン酸の炭素数は、15以下が好ましく、12以下がより好ましく、8以下が更に好ましい。下限は特に制限されず、3以上が好ましい。
ポリホスホン酸としては、上記の式(P1)、(P2)及び(P3)で表されるポリホスホン酸のそれぞれにおいて好適な具体例として挙げた化合物が好ましく、洗浄性能(特にCuを含む金属膜に対する洗浄性能)がより優れる点で、NTPO又はEDTPOがより好ましく、EDTPOが更に好ましい。
【0044】
成分Bは、低分子量であることが好ましい。具体的には、成分Bの分子量は、600以下が好ましく、450以下がより好ましい。下限は特に制限されず、100以上が好ましい。
成分Bとしては、洗浄性能(特にCuを含む金属膜に対する洗浄性能)がより優れる点で、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン四酢酸(CyDTA)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(NTPO)、又はエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTPO)が好ましく、DTPA、EDTA、CyDTA又はEDTPOがより好ましく、DTPA、EDTA又はEDTPOが更に好ましい。
【0045】
成分Bとしては、Coを含む金属膜に対する洗浄性能がより優れる点で、Co2+に対する第1錯生成定数Km1が、10~30であることが好ましく、15~30であることがより好ましい。上記の具体的な成分Bのうち、第1錯生成定数Km1が10~30である化合物としては、DTPA、EDTA、CyDTA及びTTHAが挙げられる。
化合物の第1錯生成定数Km1は、下記の公知の方法によって求められる。即ち、金属と配位子とのキレート生成反応における結合定数(錯生成定数)は、下記式(1)で求められる。
【0046】
【数1】
【0047】
上記式(1)中、Mは金属であり、Lは配位子であり、KMLは結合定数である。この計算に必要な各成分の濃度に関する変数は、各濃度と一次の対応関係を有するものであれば特に制限されず、例えば、紫外可視分光測定、蛍光強度測定及びNMR測定等の公知の方法で測定された濃度及び吸光度等の変数が適用できる。
【0048】
成分Bは、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
洗浄液における成分Bの含有量は、特に制限されないが、Cuを含む金属膜に対する洗浄性能により優れる点で、洗浄液の全質量に対して、0.005質量%以上が好ましく、0.008質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、腐食防止性能(特にCuを含む金属膜に対する腐食防止性能)により優れる点で、洗浄液の全質量に対して2.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましく、1.2質量%以下が更に好ましい。
また、成分Bの含有量は、洗浄液中の溶剤を除いた成分の合計質量に対して、0.02質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、洗浄液中の溶剤を除いた成分の合計質量に対して、20.0質量%以下が好ましく、15.0質量%以下がより好ましく、10.0質量%以下が更に好ましい。
【0049】
本発明の洗浄液においては、成分Aの含有量に対する成分Bの含有量(成分Bの含有量/成分Aの含有量)の質量比が0.2~10である。成分Aの含有量に対する成分Bの含有量の質量比が上記範囲にあることで、Cuを含む金属膜に対する洗浄性能とCoを含む金属膜に対する洗浄性能とをバランス良く向上させることができる。成分Aの含有量に対する成分Bの含有量の質量比は、0.2~5が好ましく、0.5~3がより好ましい。
【0050】
〔成分C〕
洗浄液は、成分Cとして脂肪族アミンを含む。ただし、成分Cとしての脂肪族アミンには、成分A、成分Bとしてのアミノポリカルボン酸、及び第4級アンモニウム化合物は含まれない。
【0051】
脂肪族アミンとしては、例えば、分子内に第1級アミノ基(-NH)を有する第1級アミン、分子内に第2級アミノ基(>NH)を有する第2級アミン、分子内に第3級アミノ基(>N-)を有する第3級アミン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種であって、芳香環を有さず、尚且つ、上記成分A、アミノポリカルボン酸及び第4級アンモニウム化合物に含まれない化合物であれば、特に制限されない。
第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンからなる群より選択される少なくとも1種(以下「第1級~第3級アミン」ともいう。)の塩としては、例えば、Cl、S、N及びPからなる群より選択される少なくとも1種の非金属が水素と結合してなる無機酸の塩が挙げられ、塩酸塩、硫酸塩、又は硝酸塩が好ましい。
成分Cとしては、例えば、アミノアルコール、脂環式アミン、並びに、アミノアルコール及び脂環式アミン以外の脂肪族モノアミン化合物及び脂肪族ポリアミン化合物が挙げられる。
【0052】
<アミノアルコール>
アミノアルコールは、第1級~第3級アミンのうち、分子内に少なくとも1つのヒドロキシルアルキル基を更に有する化合物である。アミノアルコールは、第1級~第3級アミノ基のいずれを有していてもよいが、第1級アミノ基を有することが好ましい。
【0053】
アミノアルコールとしては、例えば、モノエタノールアミン(MEA)、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、ジエチレングリコールアミン(DEGA)、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)、2-(メチルアミノ)-2-メチル-1-プロパノール(N-MAMP)及び2-(2-アミノエチルアミノ)エタノールが挙げられる。
なかでも、AMP、N-MAMP、MEA、DEA、Tris又はDEGAが好ましく、AMPがより好ましい。
【0054】
<脂環式アミン化合物>
脂環式アミン化合物は、環を構成する原子の少なくとも1つが窒素原子である非芳香性の複素環を有する化合物であれば、特に制限されない。
脂環式アミン化合物としては、例えば、ピペラジン化合物、及び環状アミジン化合物が挙げられる。
【0055】
ピペラジン化合物は、シクロヘキサン環の対向する-CH-基が窒素原子に置き換わったヘテロ6員環(ピペラジン環)を有する化合物である。
ピペラジン化合物は、ピペラジン環上に置換基を有してもよい。そのような置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、ヒドロキシ基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基、及び炭素数6~10のアリール基が挙げられる。
【0056】
ピペラジン化合物としては、例えば、ピペラジン、1-メチルピペラジン、1-エチルピペラジン、1-プロピルピペラジン、1-ブチルピペラジン、2-メチルピペラジン、1,4-ジメチルピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、2,6-ジメチルピペラジン、1-フェニルピペラジン、2-ヒドロキシピペラジン、2-ヒドロキシメチルピペラジン、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン(HEP)、N-(2-アミノエチル)ピペラジン(AEP)、1,4-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン(BHEP)、1,4―ビス(2-アミノエチル)ピペラジン(BAEP)、及び1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン(BAPP)が挙げられ、ピペラジン、1-メチルピペラジン、2-メチルピペラジン、HEP、AEP、BHEP、BAEP又はBAPPが好ましく、ピペラジンがより好ましい。
【0057】
環状アミジン化合物は、環内にアミジン構造(>N-C=N-)を含むヘテロ環を有する化合物である。
環状アミジン化合物が有する上記のヘテロ環の環員数は、特に制限されないが、5又は6個が好ましく、6個がより好ましい。
環状アミジン化合物としては、例えば、ジアザビシクロウンデセン(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン:DBU)、ジアザビシクロノネン(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン:DBN)、3,4,6,7,8,9,10,11-オクタヒドロ-2H-ピリミド[1.2-a]アゾシン、3,4,6,7,8,9-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[1.2-a]ピリミジン、2,5,6,7-テトラヒドロ-3H-ピロロ[1.2-a]イミダゾール、3-エチル-2,3,4,6,7,8,9,10-オクタヒドロピリミド[1.2-a]アゼピン、及びクレアチニンが挙げられる。
【0058】
脂環式アミン化合物としては、上記以外に、例えば、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、及びイミダゾリジンチオン等の芳香族性を有さないヘテロ5員環を有する化合物、並びに窒素原子を含む7員環を有する化合物が挙げられる。
【0059】
<脂肪族モノアミン化合物>
アミノアルコール及び脂環式アミン以外の脂肪族モノアミン化合物としては、例えば、下記式(a)で表される化合物(以下「化合物(a)」とも記載する)が挙げられる。
NH(3-x) (a)
式中、Rは炭素数1~3のアルキル基を表し、xは0~2の整数を表す。
炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、及びイソプロピル基が挙げられ、エチル基又はn-プロピル基が好ましい。
【0060】
化合物(a)としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、及びトリエチルアミンが挙げられ、エチルアミン、プロピルアミン、ジエチルアミン又はトリエチルアミンが好ましい。
【0061】
化合物(a)以外の脂肪族モノアミン化合物としては、例えば、n-ブチルアミン、3-メトキシプロピルアミン、tert-ブチルアミン、n-ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、及び4-(2-アミノエチル)モルホリン(AEM)が挙げられる。
【0062】
<脂肪族ポリアミン化合物>
アミノアルコール及び脂環式アミン以外の脂肪族ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン(EDA)、1,3-プロパンジアミン(PDA)、1,2-プロパンジアミン、1,3-ブタンジアミン、及び1,4-ブタンジアミン等のアルキレンジアミン、並びに、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、ビス(アミノプロピル)エチレンジアミン(BAPEDA)及びテトラエチレンペンタミン等のポリアルキルポリアミンが挙げられる。
【0063】
また、成分Cとしては、国際公開第2013/162020号明細書の段落[0034]~[0056]に記載の化合物が援用でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0064】
成分Cは、1つの第1級~第3級アミノ基に加えて、1つ以上の親水性基を更に有することが好ましい。親水性基としては、例えば、第1級~第3級アミノ基及びヒドロキシ基が挙げられる。
このようなアミン化合物としては、1つ以上の第1級~第3級アミノ基と1つ以上のヒドロキシ基を有するアミノアルコール、2つ以上の第1級~第3級アミノ基を有する脂肪族ポリアミン化合物、及び脂環式アミン化合物のうち2つ以上の親水性基を有する化合物が挙げられる。
成分Cが有する親水性基の総数の上限は特に制限されないが、5以下が好ましく、4以下がより好ましい。
【0065】
成分Cとしては、アミノアルコール又は脂環式アミン化合物が好ましく、モノエタノールアミン(MEA)、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、2-(メチルアミノ)-2-メチル-1-プロパノール(N-MAMP)、ジエタノールアミン(DEA)、ジエチレングリコールアミン(DEGA)、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)、ピペラジン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン(AEP)、1,4-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン(BHEP)、1,4―ビス(2-アミノエチル)ピペラジン(BAEP)、又は、1,4―ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン(BAPP)がより好ましく、AMP、MEA又はTrisが更に好ましい。
【0066】
成分Cは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
洗浄液における成分Cの含有量は、特に制限されないが、洗浄液の全質量に対して、0.03~30質量%が好ましく、0.05~15質量%がより好ましく、0.5~12質量%が更に好ましい。
また、成分Cの含有量は、洗浄液中の溶剤を除いた成分の合計質量に対して、3.0~99.0質量%が好ましく、5.0~98.0質量%がより好ましく、20.0~95.0質量%が更に好ましい。
【0067】
本発明の洗浄液においては、成分Aの含有量と成分Bの含有量との和に対する成分Cの含有量(成分Cの含有量/(成分Aの含有量+成分Bの含有量))の質量比が5~100である。上記質量比が5以上であると、腐食防止性能(特にCu及び/又はCoを含む金属膜に対する腐食防止性能)に優れ、上記質量比が100以下であると洗浄性能(特にCuを含む金属膜に対する洗浄性能)に優れる。成分Aの含有量と成分Bの含有量との和に対する成分Cの含有量の質量比は、5~80が好ましく、10~70がより好ましい。
【0068】
〔水〕
洗浄液は、溶剤として水を含むことが好ましい。
洗浄液に使用される水の種類は、半導体基板に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限されず、蒸留水、脱イオン水、及び純水(超純水)が使用できる。不純物をほとんど含まず、半導体基板の製造工程における半導体基板への影響がより少ない点で、純水が好ましい。
洗浄液における水の含有量は、成分A、成分B、成分C、及び、後述する任意成分の残部であればよい。水の含有量は、例えば、洗浄液の全質量に対して、1質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、85質量%以上が特に好ましい。上限値は特に制限されないが、洗浄液の全質量に対して、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましい。
【0069】
〔任意成分〕
洗浄液は、上述した成分以外に、他の任意成分を含んでいてもよい。以下、任意成分について説明する。
【0070】
<成分D>
洗浄液は、含窒素ヘテロ芳香族化合物、還元剤、アニオン性界面活性剤、並びにキレート剤(ただし、成分A、成分B及び成分Cに含まれる化合物は除く)からなる群より選択される少なくとも1種である成分Dを含んでいてもよい。
【0071】
(含窒素ヘテロ芳香族化合物)
含窒素へテロ芳香族化合物は、環を構成する原子の少なくとも1つが窒素原子であるヘテロ芳香環(含窒素ヘテロ芳香環)を有する化合物であれば、特に制限されない。含窒素へテロ芳香族化合物は、洗浄液の腐食防止性能を向上させる防食剤として機能する。そのため、洗浄液は含窒素へテロ芳香族化合物を含むことが好ましい。
含窒素へテロ芳香族化合物としては、特に制限されないが、例えば、アゾール化合物、ピリジン化合物、ピラジン化合物、及び、ピリミジン化合物が挙げられる。
【0072】
アゾール化合物は、窒素原子を少なくとも1つ含み、芳香族性を有するヘテロ5員環を有する化合物である。アゾール化合物が有するヘテロ5員環に含まれる窒素原子の個数は、特に制限されず、2~4個が好ましく、3又は4個がより好ましい。
また、アゾール化合物は、ヘテロ5員環上に置換基を有してもよい。そのような置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミノ基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基、及び2-イミダゾリル基が挙げられる。
アゾール化合物としては、例えば、イミダゾール化合物、ピラゾール化合物、チアゾール化合物、トリアゾール化合物、及びテトラゾール化合物が挙げられる。
【0073】
イミダゾール化合物としては、例えば、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、5-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-メルカプトイミダゾール、4,5-ジメチル-2-メルカプトイミダゾール、4-ヒドロキシイミダゾール、2,2’-ビイミダゾール、4-イミダゾールカルボン酸、ヒスタミン、ベンゾイミダゾール、2-アミノベンゾイミダゾール、及びアデニンが挙げられる。
【0074】
ピラゾール化合物としては、例えば、ピラゾール、4-ピラゾールカルボン酸、1-メチルピラゾール、3-メチルピラゾール、3-アミノ-5-ヒドロキシピラゾール、3-アミノ-5-メチルピラゾール、3-アミノピラゾール、及び4-アミノピラゾールが挙げられる。
【0075】
チアゾール化合物としては、例えば、2,4-ジメチルチアゾール、ベンゾチアゾール、及び2-メルカプトベンゾチアゾールが挙げられる。
【0076】
トリアゾール化合物としては、例えば、1,2,4-トリアゾ-ル、3-メチル-1,2,4-トリアゾ-ル、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、1,2,3-トリアゾ-ル、1-メチル-1,2,3-トリアゾ-ル、ベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、1-ジヒドロキシプロピルベンゾトリアゾール、2,3-ジカルボキシプロピルベンゾトリアゾール、4-ヒドロキシベンゾトリアゾール、4-カルボキシベンゾトリアゾール、及び5-メチルベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0077】
テトラゾール化合物としては、例えば、1H-テトラゾール(1,2,3,4-テトラゾ-ル)、5-メチル-1,2,3,4-テトラゾ-ル、5-アミノ-1,2,3,4-テトラゾ-ル、1,5-ペンタメチレンテトラゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、及び1-(2-ジメチルアミノエチル)-5-メルカプトテトラゾールが挙げられる。
【0078】
アゾール化合物としては、イミダゾール化合物、又はピラゾール化合物が好ましく、2-アミノベンゾイミダゾール、アデニン、ピラゾール又は3-アミノ-5-メチルピラゾールがより好ましい。
【0079】
ピリジン化合物は、窒素原子を1つ含み、芳香族性を有するヘテロ6員環(ピリジン環)を有する化合物である。
ピリジン化合物としては、具体的には、ピリジン、3-アミノピリジン、4-アミノピリジン、3-ヒドロキシピリジン、4-ヒドロキシピリジン、2-アセトアミドピリジン、2-シアノピリジン、2-カルボキシピリジン、及び4-カルボキシピリジンが挙げられる。
【0080】
ピラジン化合物は、芳香族性を有し、パラ位に位置する窒素原子を2つ含むヘテロ6員環(ピラジン環)を有する化合物であり、ピリミジン化合物は、芳香族性を有し、メタ位に位置する窒素原子を2つ含むヘテロ6員環(ピリミジン環)を有する化合物である。
ピラジン化合物としては、例えば、ピラジン、2-メチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,3,5-トリメチルピラジン、2,3,5,6-テトラメチルピラジン、2-エチル-3-メチルピラジン、及び2-アミノ-5-メチルピラジンが挙げられる。
ピリミジン化合物としては、例えば、ピリミジン、2-メチルピリミジン、2-アミノピリミジン、及び4,6-ジメチルピリミジンが挙げられ、2-アミノピリミジンが好ましい。
【0081】
含窒素へテロ芳香族化合物としては、アゾール化合物又はピラジン化合物が好ましく、アゾール化合物がより好ましい。
【0082】
含窒素へテロ芳香族化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
洗浄液が含窒素へテロ芳香族化合物を含む場合、洗浄液における含窒素へテロ芳香族化合物の含有量は、特に制限されないが、洗浄液の全質量に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.05~5質量%がより好ましい。
また、洗浄液が含窒素へテロ芳香族化合物を含む場合、含窒素へテロ芳香族化合物の含有量は、洗浄液中の溶剤を除いた成分の合計質量に対して、0.1~50質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましい。
【0083】
(還元剤)
還元剤は、酸化作用を有し、洗浄液に含まれるOHイオン又は溶存酸素を酸化する機能を有する化合物であり、脱酸素剤とも称される。還元剤は、洗浄液の腐食防止性能を向上させる防食剤として機能する。そのため、洗浄液は還元剤を含むことが好ましい。
洗浄液に用いられる還元剤としては、特に制限されないが、例えば、アスコルビン酸化合物、カテコール化合物、ヒドロキシルアミン化合物、ヒドラジド化合物、及び還元性硫黄化合物が挙げられる。
【0084】
-アスコルビン酸化合物-
アスコルビン酸化合物は、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を意味する。
アスコルビン酸誘導体としては、例えば、アスコルビン酸リン酸エステル、及びアスコルビン酸硫酸エステルが挙げられる。
アスコルビン酸化合物としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステル、又はアスコルビン酸硫酸エステルが好ましく、アスコルビン酸がより好ましい。
【0085】
-カテコール化合物-
カテコール化合物は、ピロカテコール(ベンゼン-1,2-ジオール)、及びカテコール誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を意味する。
カテコール誘導体とは、ピロカテコールに少なくとも1つの置換基が置換されてなる化合物を意味する。カテコール誘導体が有する置換基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルボン酸エステル基、スルホ基、スルホン酸エステル基、アルキル基(炭素数1~6が好ましく、炭素数1~4がより好ましい)、及びアリール基(フェニル基が好ましい)が挙げられる。カテコール誘導体が置換基として有するカルボキシ基、及びスルホ基は、カチオンの塩であってもよい。また、カテコール誘導体が置換基として有するアルキル基、及びアリール基は、更に置換基を有していてもよい。
カテコール化合物としては、例えば、ピロカテコール、4-tert-ブチルカテコール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸メチル、1,2,4-ベンゼントリオール、及びタイロンが挙げられる。
【0086】
-ヒドロキシルアミン化合物-
ヒドロキシルアミン化合物は、ヒドロキシルアミン(NHOH)、ヒドロキシルアミン誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を意味する。また、ヒドロキシルアミン誘導体とは、ヒドロキシルアミン(NHOH)に少なくとも1つの有機基が置換されてなる化合物を意味する。
ヒドロキシルアミン又はヒドロキシルアミン誘導体の塩は、ヒドロキシルアミン又はヒドロキシルアミン誘導体の無機酸塩又は有機酸塩であってもよい。ヒドロキシルアミン又はヒドロキシルアミン誘導体の塩としては、Cl、S、N及びPからなる群より選択される少なくとも1種の非金属が水素と結合してなる無機酸の塩が好ましく、塩酸塩、硫酸塩、又は硝酸塩がより好ましい。
【0087】
ヒドロキシルアミン化合物としては、例えば、下記式(1)で表される化合物又はその塩が挙げられる。
【0088】
【化5】
【0089】
式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は有機基を表す。
【0090】
及びRで表される有機基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。炭素数1~6のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよい。
また、R及びRの少なくとも一方が有機基(より好ましくは炭素数1~6のアルキル基)であることが好ましい。
炭素数1~6のアルキル基としては、エチル基又はn-プロピル基が好ましく、エチル基がより好ましい。
【0091】
ヒドロキシルアミン化合物としては、例えば、ヒドロキシルアミン、O-メチルヒドロキシルアミン、O-エチルヒドロキシルアミン、N-メチルヒドロキシルアミン、N,N-ジメチルヒドロキシルアミン、N,O-ジメチルヒドロキシルアミン、N-エチルヒドロキシルアミン、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、N,O-ジエチルヒドロキシルアミン、O,N,N-トリメチルヒドロキシルアミン、N,N-ジカルボキシエチルヒドロキシルアミン、及び、N,N-ジスルホエチルヒドロキシルアミンが挙げられる。
なかでも、N-エチルヒドロキシルアミン、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン(DEHA)又はN-n-プロピルヒドロキシルアミンが好ましく、DEHAがより好ましい。
【0092】
-ヒドラジド化合物-
ヒドラジド化合物は、酸のヒドロキシ基をヒドラジノ基(-NH-NH)で置換してなる化合物、及びその誘導体(ヒドラジノ基に少なくとも1つの置換基が置換されてなる化合物)を意味する。
ヒドラジド化合物は、2つ以上のヒドラジノ基を有していてもよい。
ヒドラジド化合物としては、例えば、カルボン酸ヒドラジド、及びスルホン酸ヒドラジドが挙げられ、カルボヒドラジド(CHZ)が好ましい。
【0093】
-還元性硫黄化合物-
還元性硫黄化合物としては、硫黄原子を含み、還元剤としての機能を有する化合物であれば特に制限されないが、例えば、メルカプトコハク酸、ジチオジグリセロール、ビス(2,3-ジヒドロキシプロピルチオ)エチレン、3-(2,3-ジヒドロキシプロピルチオ)-2-メチル-プロピルスルホン酸ナトリウム、1-チオグリセロール、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、2-メルカプトエタノール、チオグリコール酸、及び3-メルカプト-1-プロパノールが挙げられる。
なかでも、SH基を有する化合物(メルカプト化合物)が好ましく、1-チオグリセロール、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、2-メルカプトエタノール、3-メルカプト-1-プロパノール、又はチオグリコール酸がより好ましい。
【0094】
還元剤としては、アスコルビン酸化合物又はヒドロキシルアミン化合物が好ましく、アスコルビン酸化合物がより好ましい。
【0095】
還元剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。腐食防止性能(特にWを含む金属膜に対する腐食防止性能)により優れる点で、洗浄液は、2種以上の還元剤を含むことが好ましい。
洗浄液が還元剤を含む場合、還元剤の含有量は特に制限されないが、洗浄液の全質量に対して、0.01~20質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましい。
また、洗浄液が還元剤を含む場合、還元剤の含有量は、洗浄液中の溶剤を除いた成分の合計質量に対して、0.1~50質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましい。
なお、これらの還元剤は、市販のものを用いてもよいし、公知の方法に従って合成したものを用いてもよい。
【0096】
(アニオン性界面活性剤)
アニオン性界面活性剤は、分子内にアニオン性の親水基と疎水基(親油基)とを有する化合物である。
【0097】
洗浄液に含まれるアニオン性界面活性剤としては、例えば、それぞれが親水基(酸基)として、リン酸エステル基を有するリン酸エステル系界面活性剤、ホスホン酸基を有するホスホン酸系界面活性剤、スルホ基を有するスルホン酸系界面活性剤、カルボキシ基を有するカルボン酸系界面活性剤、及び硫酸エステル基を有する硫酸エステル系界面活性剤が挙げられる。
これらのアニオン性界面活性剤は、洗浄性能を向上させるのみならず、腐食防止性能(特にCo及び/又はCuを含む金属膜に対する腐食防止性能)を向上させる防食剤として機能する。そのため、洗浄液はアニオン性界面活性剤を含むことが好ましい。
【0098】
-リン酸エステル系界面活性剤-
リン酸エステル系界面活性剤としては、例えば、リン酸エステル(アルキルエーテルリン酸エステル)、及びポリオキシアルキレンエーテルリン酸エステル、並びにこれらの塩が挙げられる。リン酸エステル及びポリオキシアルキレンエーテルリン酸は、モノエステル及びジエステルの両者を含むことが多いが、モノエステル又はジエステルを単独で使用できる。
リン酸エステル系界面活性剤の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、及び有機アミン塩が挙げられる。
リン酸エステル及びポリオキシアルキレンエーテルリン酸エステルが有する1価のアルキル基としては、特に制限されないが、炭素数2~24のアルキル基が好ましく、炭素数6~18のアルキル基がより好ましく、炭素数12~18のアルキル基が更に好ましい。
ポリオキシアルキレンエーテルリン酸エステルが有する2価のアルキレン基としては、特に制限されないが、炭素数2~6のアルキレン基が好ましく、エチレン基、又は1,2-プロパンジイル基がより好ましい。また、ポリオキシアルキレンエーテルリン酸エステルにおけるオキシアルキレン基の繰返し数は、1~12が好ましく、3~10がより好ましい。
【0099】
リン酸エステル系界面活性剤としては、オクチルリン酸エステル、ラウリルリン酸エステル、トリデシルリン酸エステル、ミリスチルリン酸エステル、セチルリン酸エステル、ステアリルリン酸エステル、ポリオキシエチレンオクチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル、又はポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステルが好ましい。
【0100】
リン酸エステル系界面活性剤としては、特開2011-040502号公報の段落[0012]~[0019]に記載の化合物も援用でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0101】
-ホスホン酸系界面活性剤-
ホスホン酸系界面活性剤としては、例えば、アルキルホスホン酸、及びポリビニルホスホン酸や、例えば、特開2012-057108号公報等に記載のアミノメチルホスホン酸等が挙げられる。
【0102】
-スルホン酸系界面活性剤-
スルホン酸系界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、アルキルメチルタウリン、スルホコハク酸ジエステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルホン酸、及びこれらの塩が挙げられる。
【0103】
上記のスルホン酸系界面活性剤が有する1価のアルキル基としては、特に制限されないが、炭素数10以上のアルキル基が好ましく、炭素数12以上のアルキル基がより好ましい。上限は特に制限されないが、24以下が好ましい。
また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルホン酸が有する2価のアルキレン基としては、特に制限されないが、エチレン基、又は1,2-プロパンジイル基が好ましい。また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルホン酸におけるオキシアルキレン基の繰返し数は、1~12が好ましく、1~6がより好ましい。
【0104】
スルホン酸系界面活性剤の具体例としては、ヘキサンスルホン酸、オクタンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)、ジニトロベンゼンスルホン酸(DNBSA)、及びラウリルドデシルフェニルエーテルジスルホン酸(LDPEDSA)が挙げられる。
なかでも、炭素数10以上のアルキル基を有するスルホン酸系界面活性剤が好ましく、炭素数12以上のアルキル基を有するスルホン酸系界面活性剤がより好ましく、DBSAが更に好ましい。
【0105】
-カルボン酸系界面活性剤-
カルボン酸系界面活性剤としては、例えば、アルキルカルボン酸、アルキルベンゼンカルボン酸、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸、並びにこれらの塩が挙げられる。
上記のカルボン酸系界面活性剤が有する1価のアルキル基としては、特に制限されないが、炭素数7~25のアルキル基が好ましく、炭素数11~17のアルキル基がより好ましい。
また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸が有する2価のアルキレン基としては、特に制限されないが、エチレン基、又は1,2-プロパンジイル基が好ましい。また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸におけるオキシアルキレン基の繰返し数は、1~12が好ましく、1~6がより好ましい。
【0106】
カルボン酸系界面活性剤の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸、及びポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸が挙げられる。
【0107】
-硫酸エステル系界面活性剤-
硫酸エステル系界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル(アルキルエーテル硫酸エステル)、及びポリオキシアルキレンエーテル硫酸エステル、並びにこれらの塩が挙げられる。
硫酸エステル及びポリオキシアルキレンエーテル硫酸エステルが有する1価のアルキル基としては、特に制限されないが、炭素数2~24のアルキル基が好ましく、炭素数6~18のアルキル基がより好ましい。
ポリオキシアルキレンエーテル硫酸エステルが有する2価のアルキレン基としては、特に制限されないが、エチレン基、又は1,2-プロパンジイル基が好ましい。また、ポリオキシアルキレンエーテル硫酸エステルにおけるオキシアルキレン基の繰返し数は、1~12が好ましく、1~6がより好ましい。
硫酸エステル系界面活性剤の具体例としては、ラウリル硫酸エステル、ミリスチル硫酸エステル、及びポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルが挙げられる。
【0108】
アニオン性界面活性剤としては、リン酸エステル系界面活性剤、スルホン酸系界面活性剤(より好ましくは炭素数12以上のアルキル基を有するスルホン酸系界面活性剤)、ホスホン酸系界面活性剤、及びカルボン酸系界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、リン酸エステル系界面活性剤、炭素数12以上のアルキル基を有するスルホン酸系界面活性剤、又はホスホン酸系界面活性剤がより好ましい。
【0109】
アニオン性界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。腐食防止性能(特にCu及び/又はCoを含む金属膜に対する腐食防止性能)により優れる点で、洗浄液は、2種以上のアニオン性界面活性剤を含むことが好ましい。
【0110】
洗浄液がアニオン性界面活性剤を含む場合、その含有量は、洗浄液の全質量に対して、0.01~5.0質量%が好ましく、0.05~2.0質量%がより好ましい。
また、洗浄液がアニオン性界面活性剤を含む場合、その含有量は、洗浄液中の溶剤を除いた成分の合計質量に対して、0.05~50質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましい。
なお、これらのアニオン性界面活性剤としては、市販のものを用いればよい。
【0111】
(キレート剤)
洗浄液は、キレート剤を含んでいてもよい。
洗浄液に用いるキレート剤は、半導体基板の洗浄工程において、残渣物に含まれる金属とキレート化する機能を有する化合物である。なかでも、分子内に金属イオンと配位結合する官能基(配位基)を2つ以上有する化合物が好ましい。
なお、本明細書においては、上記の成分A、成分B及び成分Cに含まれる化合物は、キレート剤に含まれないものとする。
洗浄液は、洗浄性能及び腐食防止性能に優れる点で、キレート剤を含むことが好ましい。
【0112】
キレート剤としては、有機系キレート剤、及び無機系キレート剤が挙げられる。
有機系キレート剤は、有機化合物からなるキレート剤であり、例えば、ヒドロキシカルボン酸系キレート剤、脂肪族カルボン酸系キレート剤、並びに、少なくとも2つの窒素含有基(窒素原子を含む基)を有し、且つ、カルボキシル基を有さない化合物(以下「特定含窒素キレート剤」とも記載する)が挙げられる。
無機系キレート剤としては、縮合リン酸及びその塩が挙げられる。
キレート剤としては、有機系キレート剤が好ましく、ヒドロキシカルボン酸系キレート剤がより好ましい。
【0113】
ヒドロキシカルボン酸系キレート剤としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、グルコン酸、ヘプトン酸、酒石酸、及び乳酸が挙げられ、グルコン酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、又はクエン酸が好ましく、グルコン酸又はクエン酸がより好ましい。
【0114】
脂肪族カルボン酸系キレート剤としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、及びマレイン酸が挙げられ、アジピン酸が好ましい。特に、アジピン酸の使用により、他のキレート剤に比較して洗浄液の性能(洗浄性能及び腐食防止性)を大幅に向上できる。アジピン酸のこのような特異的な効果について詳細なメカニズムは不明であるが、アルキレン基の炭素鎖数が2つのカルボキシ基との関係において親水性及び疎水性に特に優れ、金属との錯形成時に安定な環構造を形成することに由来すると予想される。
【0115】
ヒドロキシカルボン酸系キレート剤及び脂肪族カルボン酸系キレート剤は、低分子量であることが好ましい。具体的には、これらのキレート剤の分子量は、600以下が好ましく、450以下がより好ましく、300以下が更に好ましい。下限は特に制限されないが、85以上が好ましい。
また、ヒドロキシカルボン酸系キレート剤及び脂肪族カルボン酸系キレート剤の炭素数は、15以下が好ましく、12以下がより好ましく、8以下が更に好ましい。下限は特に制限されないが、2以上が好ましい。
【0116】
特定含窒素キレート剤としては、ビグアニド基を有する化合物及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種のビグアニド化合物が挙げられる。
ビグアニド化合物が有するビグアニド基の数は特に制限されず、複数のビグアニド基を有していてもよい。
ビグアニド化合物としては、特表2017-504190号公報の段落[0034]~[0055]に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0117】
ビグアニド基を有する化合物としては、エチレンジビグアニド、プロピレンジビグアニド、テトラメチレンジビグアニド、ペンタメチレンジビグアニド、ヘキサメチレンジビグアニド、ヘプタメチレンジビグアニド、オクタメチレンジビグアニド、1,1’-ヘキサメチレンビス(5-(p-クロロフェニル)ビグアニド)(クロルヘキシジン)、2-(ベンジルオキシメチル)ペンタン-1,5-ビス(5-ヘキシルビグアニド)、2-(フェニルチオメチル)ペンタン-1,5-ビス(5-フェネチルビグアニド)、3-(フェニルチオ)ヘキサン-1,6-ビス(5-ヘキシルビグアニド)、3-(フェニルチオ)ヘキサン-1,6-ビス(5-シクロヘキシルビグアニド)、3-(ベンジルチオ)ヘキサン-1,6-ビス(5-ヘキシルビグアニド)又は3-(ベンジルチオ)ヘキサン-1,6-ビス(5-シクロヘキシルビグアニド)が好ましく、クロルヘキシジンがより好ましい。
ビグアニド基を有する化合物の塩としては、塩酸塩、酢酸塩又はグルコン酸塩が好ましい。
【0118】
無機系キレート剤である縮合リン酸及びその塩としては、例えば、ピロリン酸及びその塩、メタリン酸及びその塩、トリポリリン酸及びその塩、並びにヘキサメタリン酸及びその塩が挙げられる。
【0119】
キレート剤としては、ヒドロキシカルボン酸系キレート剤、脂肪族カルボン酸系キレート剤又はビグアニド化合物が好ましく、グルコン酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アジピン酸又はクロルヘキシジンもしくはその塩がより好ましく、グルコン酸、クエン酸、アジピン酸又はクロルヘキシジンもしくはその塩が更に好ましい。
【0120】
キレート剤は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
洗浄液がキレート剤を含む場合、洗浄液におけるキレート剤の含有量は、特に制限されないが、腐食防止性能(特にCu及び/又はCoを含む金属膜に対する腐食防止性能)に優れる点で、洗浄液の全質量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、洗浄液の全質量に対して、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
また、洗浄液がキレート剤を含む場合、キレート剤の含有量は、洗浄液中の溶剤を除いた成分の合計質量に対して、0.1~30質量%が好ましく、0.5~20質量%がより好ましい。
【0121】
成分Dは、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
洗浄液が成分Dを含む場合、成分Dの含有量は特に制限されないが、洗浄液の全質量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましい。成分Dの含有量の上限値は特に制限されないが、洗浄液の全質量に対して、10.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下が更に好ましい。
また、洗浄液が成分Dを含む場合、成分Dの含有量は、洗浄液中の溶剤を除いた成分の合計質量に対して、0.05質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、洗浄液中の溶剤を除いた成分の合計質量に対して、80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
【0122】
洗浄液が成分Dを含む場合、成分Aの含有量と成分Bの含有量との和に対する成分Dの含有量(成分Dの含有量/(成分Aの含有量+成分Bの含有量))の質量比は、洗浄性能(特にCu及び/又はCoを含む金属膜に対する洗浄性能)に優れる点で、200以下が好ましく、100以下がより好ましく、20以下が更に好ましい。上記質量比の下限値は特に制限されないが、腐食防止性能(特にCu及び/又はCoを含む金属膜に対する腐食防止性能)に優れる点で、0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましい。
【0123】
<第4級アンモニウム化合物>
洗浄液は、第4級アンモニウム化合物を含んでいてもよい。
第4級アンモニウム化合物は、窒素原子に4つの炭化水素基(好ましくはアルキル基)が置換してなる第4級アンモニウムカチオンを有する化合物又はその塩であれば、特に制限されない。第4級アンモニウム化合物としては、例えば、第4級アンモニウム水酸化物、第4級アンモニウムフッ化物、第4級アンモニウム臭化物、第4級アンモニウムヨウ化物、第4級アンモニウムの酢酸塩、及び第4級アンモニウムの炭酸塩が挙げられる。
洗浄液は、腐食防止性能(特にCu及び/又はCoを含む金属膜に対する腐食防止性能)により優れる点で、第4級アンモニウム化合物を含むことが好ましい。
【0124】
第4級アンモニウム化合物としては、下記式(2)で表される第4級アンモニウム水酸化物が好ましい。
(ROH (2)
式中、Rは、置換基としてヒドロキシ基又はフェニル基を有していてもよいアルキル基を表す。4つのRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0125】
で表されるアルキル基としては、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基、又はエチル基がより好ましい。
で表されるヒドロキシ基又はフェニル基を有していてもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2-ヒドロキシエチル基、又はベンジル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、又は2-ヒドロキシエチル基がより好ましく、メチル基、エチル基、又は2-ヒドロキシエチル基が更に好ましい。
【0126】
第4級アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド(TMEAH)、ジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド(DEDMAH)、メチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド(MTEAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(コリン)、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウムヒドロキシド、トリ(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(BTMAH)、及びセチルトリメチルアンモニウムヒドロキシドが挙げられる。
上記の具体例以外の第4級アンモニウム化合物としては、例えば、特開2018-107353号公報の段落[0021]に記載の化合物が援用でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0127】
洗浄液に使用する第4級アンモニウム化合物としては、TMAH、TMEAH、DEDMAH、MTEAH、TEAH、TPAH、TBAH、コリン、又はビス(2-ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウムヒドロキシドが好ましく、MTEAHがより好ましい。
【0128】
また、腐食防止性能(特にCu及び/又はCoを含む金属膜に対する腐食防止性能)に優れる点から、洗浄液は、非対称構造を有する第4級アンモニウム化合物を含むことが好ましい。第4級アンモニウム化合物が「非対称構造を有する」とは、窒素原子に置換する4つの炭化水素基がいずれも同一ではないことを意味する。
非対称構造を有する第4級アンモニウム化合物としては、例えば、TMEAH、DEDMAH、MTEAH、コリン、及びビス(2-ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウムヒドロキシドが挙げられ、MTEAHが好ましい。
【0129】
第4級アンモニウム化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。洗浄性能(特にCu及び/又はCoを含む金属膜に対する洗浄性能)により優れる点で、洗浄液は、2種以上の第4級アンモニウム化合物を含むことが好ましい。
洗浄液が第4級アンモニウム化合物を含む場合、その含有量は、洗浄性能により優れる点で、洗浄液の全質量に対して、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上が更に好ましい。第4級アンモニウム化合物の含有量の上限は特に制限されないが、洗浄工程における残渣物粒子の凝集及び/又は残渣物の再吸着による洗浄性能の低下を抑制する点で、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。
また、洗浄液が第4級アンモニウム化合物を含む場合、その含有量は、洗浄液中の溶剤を除いた成分の合計質量に対して、0.2~30質量%が好ましく、0.5~15質量%がより好ましい。
【0130】
<他の界面活性剤>
洗浄液は、アニオン性界面活性剤以外の他の界面活性剤を含んでいてもよい。
他の界面活性剤としては、分子内に親水基と疎水基(親油基)とを有するアニオン性界面活性剤以外の化合物であれば特に制限されず、例えば、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤が挙げられる。
【0131】
界面活性剤は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びそれらの組合せから選択される疎水基を有する場合が多い。界面活性剤が有する疎水基としては、特に制限されないが、疎水基が芳香族炭化水素基を含む場合、炭素数が6以上であることが好ましく、炭素数10以上であることがより好ましい。疎水基が芳香族炭化水素基を含まず、脂肪族炭化水素基のみから構成される場合、炭素数が10以上であることが好ましく、炭素数が12以上であることがより好ましく、炭素数が16以上であることが更に好ましい。疎水基の炭素数の上限は特に制限されないが、20以下が好ましく、18以下がより好ましい。
【0132】
(カチオン性界面活性剤)
カチオン性界面活性剤としては、例えば、第1級~第3級のアルキルアミン塩(例えば、モノステアリルアンモニウムクロライド、ジステアリルアンモニウムクロライド、及びトリステアリルアンモニウムクロライド等)、並びに変性脂肪族ポリアミン(例えば、ポリエチレンポリアミン等)が挙げられる。
【0133】
(ノニオン性界面活性剤)
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等)、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等)、ポリオキシアルキレングリコール(例えば、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコール等)、ポリオキシアルキレンモノアルキレート(モノアルキル脂肪酸エステルポリオキシアルキレン)(例えば、ポリオキシエチレンモノステアレート、及びポリオキシエチレンモノオレート等のポリオキシエチレンモノアルキレート)、ポリオキシアルキレンジアルキレート(ジアルキル脂肪酸エステルポリオキシアルキレン)(例えば、ポリオキシエチレンジステアレート、及びポリオキシエチレンジオレート等のポリオキシエチレンジアルキレート)、ビスポリオキシアルキレンアルキルアミド(例えば、ビスポリオキシエチレンステアリルアミド等)、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、アセチレングリコール系界面活性剤、及びアセチレン系ポリオキシエチレンオキシドが挙げられる。
【0134】
(両性界面活性剤)
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン(例えば、アルキル-N,N-ジメチルアミノ酢酸ベタイン及びアルキル-N,N-ジヒドロキシエチルアミノ酢酸ベタイン等)、スルホベタイン(例えば、アルキル-N,N-ジメチルスルホエチレンアンモニウムベタイン等)、並びに、イミダゾリニウムベタイン(例えば、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダソリニウムベタイン等)が挙げられる。
【0135】
界面活性剤としては、特開2015-158662号公報の段落[0092]~[0096]、特開2012-151273号公報の段落[0045]~[0046]、及び特開2009-147389号公報の段落[0014]~[0020]に記載の化合物も援用でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0136】
<添加剤>
洗浄液は、必要に応じて、上記成分以外の添加剤を含んでいてもよい。そのような添加剤としては、pH調整剤、防食剤(成分Dに含まれる成分を除く)、重合体、フッ素化合物、及び有機溶剤が挙げられる。
【0137】
(pH調整剤)
洗浄液は、洗浄液のpHを調整及び維持するためにpH調整剤を含んでいてもよい。pH調整剤としては、上記成分以外の塩基性化合物及び酸性化合物が挙げられる。
【0138】
塩基性化合物としては、塩基性有機化合物及び塩基性無機化合物が挙げられる。
塩基性有機化合物は、上記成分とは異なる塩基性の有機化合物である。塩基性有機化合物としては、例えば、アミンオキシド、ニトロ、ニトロソ、オキシム、ケトオキシム、アルドオキシム、ラクタム、イソシアニド化合物、及び尿素が挙げられる。
塩基性無機化合物としては、例えば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、及びアンモニアが挙げられる。
アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化セシウムが挙げられる。アルカリ土類金属水酸化物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、及び水酸化バリウムが挙げられる。
【0139】
また、上記の成分A、成分B、成分C及び/又は成分Dとして含まれる化合物が、洗浄液のpHを上昇させるための塩基性化合物としての役割を兼ねていてもよい。
これらの塩基性化合物は、市販のものを用いてもよいし、公知の方法によって適宜合成したものを用いてもよい。
【0140】
酸性化合物としては、例えば、無機酸及び有機酸が挙げられる。
無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、ホウ酸、及び六フッ化リン酸が挙げられる。また、無機酸の塩を使用してもよく、例えば、無機酸のアンモニウム塩が挙げられ、より具体的には、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、ホウ酸アンモニウム、及び六フッ化リン酸アンモニウムが挙げられる。
無機酸としては、リン酸、又はリン酸塩が好ましく、リン酸がより好ましい。
【0141】
有機酸は、酸性の官能基を有し、水溶液中で酸性(pHが7.0未満)を示す有機化合物であって、上記のキレート剤、及び上記のアニオン性界面活性剤のいずれにも含まれない化合物である。有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸等の低級(炭素数1~4)脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。
【0142】
酸性化合物としては、水溶液中で酸又は酸イオン(アニオン)となるものであれば、酸性化合物の塩を用いてもよい。
また、洗浄液に含まれるキレート剤、及び/又はアニオン性界面活性剤が、洗浄液のpHを低下させるための酸性化合物としての役割を兼ねていてもよい。
酸性化合物は、市販のものを用いてもよいし、公知の方法によって適宜合成したものを用いてもよい。
【0143】
pH調整剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
洗浄液がpH調整剤を含む場合、その含有量は、他の成分の種類及び量、並びに目的とする洗浄液のpHに応じて選択されるが、洗浄液の全質量に対して、0.01~3質量%が好ましく、0.05~1質量%がより好ましい。
また、洗浄液がpH調整剤を含む場合、その含有量は、他の成分の種類及び量、並びに目的とする洗浄液のpHに応じて選択されるが、洗浄液中の溶剤を除いた成分の合計質量に対して、0.05~10質量%が好ましく、0.2~5質量%がより好ましい。
【0144】
洗浄液は、上述した各成分を除く他の防食剤を含んでいてもよい。
他の防食剤としては、例えば、フルクトース、グルコース及びリボース等の糖類、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びグリセリン等のポリオール化合物、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、及びこれらの共重合体等のポリカルボン酸化合物、ポリビニルピロリドン、シアヌル酸、バルビツール酸及びその誘導体、グルクロン酸、スクアリン酸、α-ケト酸、アデノシン及びその誘導体、プリン化合物及びその誘導体、フェナントロリン、レゾルシノール、ヒドロキノン、ニコチンアミド及びその誘導体、フラボノ-ル及びその誘導体、アントシアニン及びその誘導体、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0145】
重合体としては、特開2016-171294号公報の段落[0043]~[0047]に記載の水溶性重合体が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
フッ素化合物としては、特開2005-150236号公報の段落[0013]~[0015]に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
有機溶剤としては、公知の有機溶剤をいずれも使用できるが、アルコール、及びケトン等の親水性有機溶剤が好ましい。有機溶剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
重合体、フッ素化合物、及び有機溶剤の使用量は特に制限されず、本発明の効果を妨げない範囲で適宜設定すればよい。
【0146】
なお、上記の各成分の洗浄液における含有量は、ガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS:Gas Chromatography-Mass Spectrometry)法、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS:Liquid Chromatography-Mass Spectrometry)法、及びイオン交換クロマトグラフィー(IC:Ion-exchange Chromatography)法等の公知の方法によって測定できる。
【0147】
〔洗浄液の物性〕
<pH>
洗浄液は、アルカリ性を示すことが好ましい。即ち、洗浄液のpHは、25℃において、7.0超であることが好ましい。
洗浄液のpHは、25℃において、8.0以上がより好ましく、洗浄性能並びに腐食防止性能(特にCo及び/又はCuを含む金属膜に対する腐食防止性能)により優れる点で、8.5超が更に好ましく、9.0以上が特に好ましい。洗浄液のpHの上限は特に制限されないが、25℃において、12.0以下が好ましく、腐食防止性能(特にW及び/又はCuを含む金属膜に対する腐食防止性能)により優れる点で、11.5未満がより好ましく、11.0以下が更に好ましい。
洗浄液のpHは、上記のpH調整剤、並びに、上記の成分A、成分B、成分C、成分D、第4級アンモニウム化合物等のpH調整剤の機能を有する成分を使用することにより、調整すればよい。
なお、洗浄液のpHは、公知のpHメーターを用いて、JIS Z8802-1984に準拠した方法により測定できる。
【0148】
<金属含有量>
洗浄液は、液中に不純物として含まれる金属(Fe、Co、Na、K、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Zn、Sn及びAgの金属元素)の含有量(イオン濃度として測定される)がいずれも5質量ppm以下であることが好ましく、1質量ppm以下であることがより好ましい。最先端の半導体素子の製造においては、更に高純度の洗浄液が求められることが想定されることから、その金属含有量が1質量ppmよりも低い値、すなわち、質量ppbオーダー以下であることが更に好ましく、100質量ppb以下であることが特に好ましく、10質量ppb未満であることが最も好ましい。下限は特に制限されないが、0が好ましい。
【0149】
金属含有量の低減方法としては、例えば、洗浄液を製造する際に使用する原材料の段階、又は洗浄液の製造後の段階において、蒸留、及びイオン交換樹脂又はフィルタを用いたろ過等の精製処理を行うことが挙げられる。
他の金属含有量の低減方法としては、原材料又は製造された洗浄液を収容する容器として、後述する不純物の溶出が少ない容器を用いることが挙げられる。また、洗浄液の製造時に配管等の部材から金属成分が溶出しないように、配管内壁等の部材の接液部にフッ素系樹脂のライニングを施すことも挙げられる。
【0150】
<粗大粒子>
洗浄液は、粗大粒子を含んでいてもよいが、その含有量が低いことが好ましい。ここで、粗大粒子とは、粒子の形状を球体とみなした場合における直径(粒径)が0.4μm以上である粒子を意味する。
洗浄液における粗大粒子の含有量としては、粒径0.4μm以上の粒子の含有量が、洗浄液1mLあたり1000個以下であることが好ましく、500個以下であることがより好ましい。下限は特に制限されないが、0が挙げられる。また、上記の測定方法で測定された粒径0.4μm以上の粒子の含有量が検出限界以下であることが更に好ましい。
洗浄液に含まれる粗大粒子は、原料に不純物として含まれる塵、埃、有機固形物、及び無機固形物等の粒子、並びに洗浄液の調製中に汚染物として持ち込まれる塵、埃、有機固形物、及び無機固形物等の粒子であって、最終的に洗浄液中で溶解せずに粒子として存在するものが該当する。
洗浄液中に存在する粗大粒子の含有量は、レーザを光源とした光散乱式液中粒子測定方式における市販の測定装置を利用して液相で測定できる。
粗大粒子の除去方法としては、例えば、後述するフィルタリング等の精製処理が挙げられる。
【0151】
洗浄液は、その原料を複数に分割したキットとしてもよい。
洗浄液をキットとする方法としては、例えば、第1液として成分A及び成分Bを含む液組成物を調製し、第2液として成分C及び他の成分を含む液組成物を調製する態様が挙げられる。
【0152】
〔洗浄液の製造〕
洗浄液は、公知の方法により製造できる。以下、洗浄液の製造方法について詳述する。
【0153】
<調液工程>
洗浄液の調液方法は特に制限されず、例えば、上述した各成分を混合することにより洗浄液を製造できる。上述した各成分を混合する順序、及び/又はタイミングは特に制限されず、例えば、精製した純水を入れた容器に、成分A、成分B及び成分C、並びに、任意成分として成分D及び第4級アンモニウム化合物を順次添加した後、撹拌して混合するとともに、pH調整剤を添加して混合液のpHを調整することにより、調製する方法が挙げられる。また、水及び各成分を容器に添加する場合、一括して添加してもよいし、複数回にわたって分割して添加してもよい。
【0154】
洗浄液の調液に使用する攪拌装置及び攪拌方法は、特に制限されず、攪拌機又は分散機として公知の装置を使用すればよい。攪拌機としては、例えば、工業用ミキサー、可搬型攪拌器、メカニカルスターラー、及びマグネチックスターラーが挙げられる。分散機としては、例えば、工業用分散器、ホモジナイザー、超音波分散器、及びビーズミルが挙げられる。
【0155】
洗浄液の調液工程における各成分の混合、及び後述する精製処理、並びに製造された洗浄液の保管は、40℃以下で行うことが好ましく、30℃以下で行うことがより好ましい。また、5℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましい。上記の温度範囲で洗浄液の調液、処理及び/又は保管を行うことにより、長期間安定に性能を維持できる。
【0156】
(精製処理)
洗浄液を調製するための原料のいずれか1種以上に対して、事前に精製処理を行うことが好ましい。精製処理としては、特に制限されず、蒸留、イオン交換、及びろ過等の公知の方法が挙げられる。
精製の程度としては、特に制限されないが、原料の純度が99質量%以上となるまで精製することが好ましく、原料の純度が99.9質量%以上となるまで精製することがより好ましい。
【0157】
精製処理の具体的な方法としては、例えば、原料をイオン交換樹脂又はRO膜(Reverse Osmosis Membrane)に通液する方法、原料の蒸留、及び後述するフィルタリングが挙げられる。
精製処理として、上述した精製方法を複数組み合わせて実施してもよい。例えば、原料に対して、RO膜に通液する1次精製を行った後、カチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂、又は混床型イオン交換樹脂からなる精製装置に通液する2次精製を実施してもよい。 また、精製処理は、複数回実施してもよい。
【0158】
(フィルタリング)
フィルタリングに用いるフィルタとしては、従来からろ過用途に用いられているものであれば特に制限されない。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及びテトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、並びにポリエチレン及びポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度又は超高分子量を含む)からなるフィルタが挙げられる。これらの材料のなかでもポリエチレン、ポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)、フッ素樹脂(PTFE及びPFAを含む)、及びポリアミド系樹脂(ナイロンを含む)からなる群より選ばれる材料が好ましく、フッ素樹脂のフィルタがより好ましい。これらの材料により形成されたフィルタを使用して原料のろ過を行うことで、欠陥の原因となり易い極性の高い異物を効果的に除去できる。
【0159】
フィルタの臨界表面張力としては、70~95mN/mが好ましく、75~85mN/mがより好ましい。なお、フィルタの臨界表面張力の値は、製造メーカーの公称値である。臨界表面張力が上記範囲のフィルタを使用することで、欠陥の原因となり易い極性の高い異物を効果的に除去できる。
【0160】
フィルタの孔径は、2~20nmであることが好ましく、2~15nmであることがより好ましい。この範囲とすることにより、ろ過詰まりを抑えつつ、原料中に含まれる不純物及び凝集物等の微細な異物を確実に除去することが可能となる。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照できる。
【0161】
フィルタリングは1回のみであってもよいし、2回以上行ってもよい。フィルタリングを2回以上行う場合、用いるフィルタは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0162】
また、フィルタリングは室温(25℃)以下で行うことが好ましく、23℃以下がより好ましく、20℃以下が更に好ましい。また、0℃以上が好ましく、5℃以上がより好ましく、10℃以上が更に好ましい。上記の温度範囲でフィルタリングを行うことにより、原料中に溶解する粒子性の異物及び不純物の量を低減し、異物及び不純物を効率的に除去できる。
【0163】
(容器)
洗浄液(キット又は後述する希釈液の態様を含む)は、腐食性等の問題が生じない限り、任意の容器に充填して保管、運搬、及び使用できる。
【0164】
容器としては、半導体用途向けに、容器内のクリーン度が高く、容器の収容部の内壁から各液への不純物の溶出が抑制された容器が好ましい。そのような容器としては、半導体洗浄液用容器として市販されている各種容器が挙げられ、例えば、アイセロ化学(株)製の「クリーンボトル」シリーズ、及びコダマ樹脂工業製の「ピュアボトル」が挙げられるが、これらに制限されない。
また、洗浄液を収容する容器としては、その収容部の内壁等の各液との接液部が、フッ素系樹脂(パーフルオロ樹脂)、又は防錆及び金属溶出防止処理が施された金属で形成された容器が好ましい。
容器の内壁は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びポリエチレン-ポリプロピレン樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂、もしくは、これとは異なる樹脂、又は、ステンレス、ハステロイ、インコネル、及びモネル等、防錆及び金属溶出防止処理が施された金属から形成されることが好ましい。
【0165】
上記の異なる樹脂としては、フッ素系樹脂(パーフルオロ樹脂)が好ましい。このように、内壁がフッ素系樹脂である容器を用いることで、内壁が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、又はポリエチレン-ポリプロピレン樹脂である容器と比べて、エチレン又はプロピレンのオリゴマーの溶出という不具合の発生を抑制できる。
このような内壁がフッ素系樹脂である容器の具体例としては、例えば、Entegris社製 FluoroPurePFA複合ドラムが挙げられる。また、特表平3-502677号公報の第4頁、国際公開第2004/016526号明細書の第3頁、並びに国際公開第99/046309号明細書の第9頁及び16頁に記載の容器も使用できる。
【0166】
また、容器の内壁には、上述したフッ素系樹脂の他に、石英及び電解研磨された金属材料(すなわち、電解研磨済みの金属材料)も好ましく用いられる。
上記電解研磨された金属材料の製造に用いられる金属材料は、クロム及びニッケルからなる群より選択される少なくとも1種を含み、クロム及びニッケルの含有量の合計が金属材料全質量に対して25質量%超である金属材料であることが好ましい。そのような金属材料としては、例えば、ステンレス鋼、及びニッケル-クロム合金が挙げられる。
金属材料におけるクロム及びニッケルの含有量の合計は、金属材料全質量に対して30質量%以上がより好ましい。
なお、金属材料におけるクロム及びニッケルの含有量の合計の上限値としては特に制限されないが、90質量%以下が好ましい。
【0167】
金属材料を電解研磨する方法としては特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、特開2015-227501号公報の段落[0011]-[0014]、及び特開2008-264929号公報の段落[0036]-[0042]に記載された方法を使用できる。
【0168】
これらの容器は、洗浄液を充填する前にその内部が洗浄されることが好ましい。洗浄に使用される液体は、その液中における金属不純物量が低減されていることが好ましい。洗浄液は、製造後にガロン瓶又はコート瓶等の容器にボトリングし、輸送、保管されてもよい。
【0169】
保管における洗浄液中の成分の変化を防ぐ目的で、容器内を純度99.99995体積%以上の不活性ガス(窒素、又はアルゴン等)で置換しておいてもよい。特に、含水率が少ないガスが好ましい。また、輸送、及び保管に際しては、常温でもよいが、変質を防ぐため、-20℃から20℃の範囲に温度制御してもよい。
【0170】
(クリーンルーム)
洗浄液の製造、容器の開封及び洗浄、洗浄液の充填を含めた取り扱い、処理分析、並びに測定は、全てクリーンルームで行うことが好ましい。クリーンルームは、14644-1クリーンルーム基準を満たすことが好ましい。ISO(国際標準化機構)クラス1、ISOクラス2、ISOクラス3、及びISOクラス4のいずれかを満たすことが好ましく、ISOクラス1又はISOクラス2を満たすことがより好ましく、ISOクラス1を満たすことが更に好ましい。
【0171】
<希釈工程>
上述した洗浄液は、水等の希釈剤を用いて希釈する希釈工程を経た後、半導体基板の洗浄に供されることが好ましい。
【0172】
希釈工程における洗浄液の希釈率は、各成分の種類、及び含有量、並びに洗浄対象である半導体基板に応じて適宜調整すればよいが、希釈前の洗浄液に対する希釈洗浄液の比率は、体積比で10~10000倍が好ましく、20~3000倍がより好ましく、50~1000倍が更に好ましい。
また、欠陥抑制性能により優れる点で、洗浄液は水で希釈されることが好ましい。
【0173】
希釈前後におけるpHの変化(希釈前の洗浄液のpHと希釈洗浄液のpHとの差分)は、1.0以下が好ましく、0.8以下がより好ましく、0.5以下が更に好ましい。
また、希釈洗浄液のpHは、25℃において、7.0超が好ましく、7.5以上がより好ましく、8.0以上が更に好ましい。希釈洗浄液のpHの上限は、25℃において、13.0以下が好ましく、12.5以下がより好ましく、12.0以下が更に好ましい。
【0174】
希釈洗浄液における成分Aの含有量は、洗浄性能(特にCoを含む金属膜に対する洗浄性能)がより優れる点で、希釈洗浄液の全質量に対して、0.00003質量%以上が好ましく、0.00005質量%以上がより好ましく、0.0001質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、腐食防止性能(特にCu又はCoを含む金属膜に対する洗浄性能)により優れる点で、希釈洗浄液の全質量に対して0.02質量%以下が好ましく、0.01質量%以下がより好ましく、0.008質量%以下が更に好ましく、0.005質量%以下が特に好ましい。
希釈洗浄液における成分Bの含有量は、特に制限されないが、Cuを含む金属膜に対する洗浄性能により優れる点で、希釈洗浄液の全質量に対して、0.00005質量%以上が好ましく、0.00008質量%以上がより好ましく、0.0001質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、腐食防止性能(特にCuを含む金属膜に対する腐食防止性能)により優れる点で、希釈洗浄液の全質量に対して0.02質量%以下が好ましく、0.015質量%以下がより好ましく、0.012質量%以下が更に好ましい。
希釈洗浄液における成分Cの含有量は、特に制限されないが、希釈洗浄液の全質量に対して、0.0003~0.3質量%が好ましく、0.0005~0.15質量%がより好ましく、0.005~0.12質量%が更に好ましい。
希釈洗浄液における水の含有量は、成分A、成分B、成分C、及び、上記任意成分の残部であればよい。水の含有量は、例えば、希釈洗浄液の全質量に対して、90質量%以上が好ましく、99.3質量%以上がより好ましく、99.6質量%以上が更に好ましく、99.85質量%以上が特に好ましい。上限値は特に制限されないが、希釈洗浄液の全質量に対して、99.99質量%以下が好ましく、99.95質量%以下がより好ましい。
【0175】
希釈洗浄液が成分Dを含む場合、成分Dの含有量は特に制限されないが、希釈洗浄液の全質量に対して、0.0001質量%以上が好ましく、0.0005質量%以上がより好ましく、0.001質量%以上が更に好ましい。成分Dの含有量の上限値は特に制限されないが、希釈洗浄液の全質量に対して、0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0.03質量%以下が更に好ましい。
希釈洗浄液が含窒素へテロ芳香族化合物を含む場合、希釈洗浄液における含窒素へテロ芳香族化合物の含有量は、特に制限されないが、希釈洗浄液の全質量に対して、0.0001~0.1質量%が好ましく、0.0005~0.05質量%がより好ましい。
希釈洗浄液が還元剤を含む場合、還元剤の含有量は特に制限されないが、希釈洗浄液の全質量に対して、0.0001~0.2質量%が好ましく、0.001~0.05質量%がより好ましい。
希釈洗浄液がアニオン性界面活性剤を含む場合、その含有量は、希釈洗浄液の全質量に対して、0.0001~0.05質量%が好ましく、0.0005~0.02質量%がより好ましい。
希釈洗浄液におけるキレート剤の含有量は、特に制限されないが、腐食防止性能(特にCu及び/又はCoを含む金属膜に対する腐食防止性能)に優れる点で、希釈洗浄液の全質量に対して、0.0001質量%以上が好ましく、0.0005質量%以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、希釈洗浄液の全質量に対して、0.03質量%以下が好ましく、0.02質量%以下がより好ましい。
希釈洗浄液が第4級アンモニウム化合物を含む場合、その含有量は、洗浄性能により優れる点で、希釈洗浄液の全質量に対して、0.0005質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましく、0.002質量%以上が更に好ましい。第4級アンモニウム化合物の含有量の上限は特に制限されないが、洗浄工程における残渣物粒子の凝集及び/又は残渣物の再吸着による洗浄性能の低下を抑制する点で、0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0.03質量%以下が更に好ましい。
希釈洗浄液がpH調整剤を含む場合、その含有量は、他の成分の種類及び量、並びに目的とする希釈洗浄液のpHに応じて選択されるが、希釈洗浄液の全質量に対して、0.0001~0.03質量%が好ましく、0.0005~0.01質量%がより好ましい。
【0176】
洗浄液を希釈する希釈工程の具体的方法は、特に制限されず、上記の洗浄液の調液工程に準じて行えばよい。希釈工程で使用する攪拌装置、及び攪拌方法もまた、特に制限されず、上記の洗浄液の調液工程において挙げた公知の攪拌装置を使用して行えばよい。
【0177】
希釈工程に用いる水に対しては、事前に精製処理を行うことが好ましい。また、希釈工程により得られた希釈洗浄液に対して、精製処理を行うことが好ましい。
精製処理としては、特に制限されず、上述した洗浄液に対する精製処理として記載した、イオン交換樹脂又はRO膜を用いたイオン成分低減処理、及びフィルタリングを用いた異物除去が挙げられ、これらのうちいずれかの処理を行うことが好ましい。
【0178】
[洗浄液の用途]
洗浄液は、化学機械研磨(CMP)処理が施された半導体基板を洗浄する洗浄工程に使用される。また、洗浄液は、半導体基板の製造プロセスにおける半導体基板の洗浄に使用でき、後述するバフ研磨処理用組成物としても使用できる。
上述のとおり、半導体基板の洗浄には、洗浄液を希釈して得られる希釈洗浄液を使用してもよい。
【0179】
〔洗浄対象物〕
洗浄液の洗浄対象物としては、例えば、金属含有物を有する半導体基板が挙げられる。
なお、本明細書における「半導体基板上」とは、例えば、半導体基板の表裏、側面、及び、溝内のいずれも含む。また、半導体基板上の金属含有物とは、半導体基板の表面上に直接金属含有物がある場合のみならず、半導体基板上に他の層を介して金属含有物がある場合も含む。
【0180】
金属含有物に含まれる金属は、例えば、Cu(銅)、Co(コバルト)、W(タングステン)、Ti(チタン)、Ta(タンタル)、Ru(ルテニウム)、Cr(クロム)、Hf(ハフニウム)、Os(オスミウム)、Pt(白金)、Ni(ニッケル)、Mn(マンガン)、Zr(ジルコニウム)、Mo(モリブデン)、La(ランタン)、及び、Ir(イリジウム)からなる群より選択される少なくとも1種の金属Mが挙げられる。
【0181】
金属含有物は、金属(金属原子)を含む物質でありさえすればよく、例えば、金属Mの単体、金属Mを含む合金、金属Mの酸化物、金属Mの窒化物、及び、金属Mの酸窒化物が挙げられる。
また、金属含有物は、これらの化合物のうちの2種以上を含む混合物でもよい。
なお、上記酸化物、窒化物、及び、酸窒化物は、金属を含む、複合酸化物、複合窒化物、及び、複合酸窒化物でもよい。
金属含有物中の金属原子の含有量は、金属含有物の全質量に対して、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。上限は、金属含有物が金属そのものであってもよいことから、100質量%である。
【0182】
半導体基板は、金属Mを含む金属M含有物を有することが好ましく、Cu、Co、W、Ti、Ta及びRuからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む金属含有物を有することがより好ましく、Cu、Co、Ti、Ta、Ru、及びWからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む金属含有物を有することが更に好ましい。
【0183】
洗浄液の洗浄対象物である半導体基板は、特に制限されず、例えば、半導体基板を構成するウエハの表面に、金属配線膜、バリアメタル、及び絶縁膜を有する基板が挙げられる。
【0184】
半導体基板を構成するウエハの具体例としては、シリコン(Si)ウエハ、シリコンカーバイド(SiC)ウエハ、シリコンを含む樹脂系ウエハ(ガラスエポキシウエハ)等のシリコン系材料からなるウエハ、ガリウムリン(GaP)ウエハ、ガリウムヒ素(GaAs)ウエハ、及びインジウムリン(InP)ウエハが挙げられる。
シリコンウエハとしては、シリコンウエハに5価の原子(例えば、リン(P)、ヒ素(As)、及びアンチモン(Sb)等)をドープしたn型シリコンウエハ、並びにシリコンウエハに3価の原子(例えば、ホウ素(B)、及びガリウム(Ga)等)をドープしたp型シリコンウエハであってもよい。シリコンウエハのシリコンとしては、例えば、アモルファスシリコン、単結晶シリコン、多結晶シリコン、及びポリシリコンのいずれであってもよい。
なかでも、洗浄液は、シリコンウエハ、シリコンカーバイドウエハ、及びシリコンを含む樹脂系ウエハ(ガラスエポキシウエハ)等のシリコン系材料からなるウエハに有用である。
【0185】
半導体基板は、上記したウエハに絶縁膜を有していてもよい。
絶縁膜の具体例としては、シリコン酸化膜(例えば、二酸化ケイ素(SiO)膜、及びオルトケイ酸テトラエチル(Si(OC)膜(TEOS膜)等)、シリコン窒化膜(例えば、窒化シリコン(Si)、及び窒化炭化シリコン(SiNC)等)、並びに、低誘電率(Low-k)膜(例えば、炭素ドープ酸化ケイ素(SiOC)膜、及びシリコンカーバイド(SiC)膜等)が挙げられる。
【0186】
半導体基板が有する金属膜としては、銅(Cu)、コバルト(Co)及びタングステン(W)からなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む金属膜、例えば、銅を主成分とする膜(銅含有膜)、コバルトを主成分とする膜(コバルト含有膜)、タングステンを主成分とする膜(タングステン含有膜)、並びにCu、Co及びWからなる群より選択される1種以上を含む合金で構成された金属膜が挙げられる。
半導体基板は、銅及びコバルトからなる群より選択される少なくとも1種を含む金属膜を有することが好ましい。また、半導体基板は、タングステンを含む金属膜を有することも好ましい。
【0187】
銅含有膜としては、例えば、金属銅のみからなる配線膜(銅配線膜)、及び金属銅と他の金属とからなる合金製の配線膜(銅合金配線膜)が挙げられる。
銅合金配線膜の具体例としては、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、タンタル(Ta)、及びタングステン(W)から選ばれる1種以上の金属と銅とからなる合金製の配線膜が挙げられる。より具体的には、銅-アルミニウム合金配線膜(CuAl合金配線膜)、銅-チタン合金配線膜(CuTi合金配線膜)、銅-クロム合金配線膜(CuCr合金配線膜)、銅-マンガン合金配線膜(CuMn合金配線膜)、銅-タンタル合金配線膜(CuTa合金配線膜)、及び銅-タングステン合金配線膜(CuW合金配線膜)が挙げられる。
【0188】
コバルト含有膜(コバルトを主成分とする金属膜)としては、例えば、金属コバルトのみからなる金属膜(コバルト金属膜)、及び金属コバルトと他の金属とからなる合金製の金属膜(コバルト合金金属膜)が挙げられる。
コバルト合金金属膜の具体例としては、チタン(Ti)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)、タンタル(Ta)、及びタングステン(W)から選ばれる1種以上の金属とコバルトとからなる合金製の金属膜が挙げられる。より具体的には、コバルト-チタン合金金属膜(CoTi合金金属膜)、コバルト-クロム合金金属膜(CoCr合金金属膜)、コバルト-鉄合金金属膜(CoFe合金金属膜)、コバルト-ニッケル合金金属膜(CoNi合金金属膜)、コバルト-モリブデン合金金属膜(CoMo合金金属膜)、コバルト-パラジウム合金金属膜(CoPd合金金属膜)、コバルト-タンタル合金金属膜(CoTa合金金属膜)、及びコバルト-タングステン合金金属膜(CoW合金金属膜)が挙げられる。
洗浄液は、コバルト含有膜を有する基板に有用である。コバルト含有膜のうち、コバルト金属膜は配線膜として使用されることが多く、コバルト合金金属膜はバリアメタルとして使用されることが多い。
【0189】
また、洗浄液を、半導体基板を構成するウエハの上部に、少なくとも銅含有配線膜と、金属コバルトのみから構成され、銅含有配線膜のバリアメタルである金属膜(コバルトバリアメタル)とを有し、銅含有配線膜とコバルトバリアメタルとが基板表面において接触している基板の洗浄に使用することが好ましい場合がある。
【0190】
タングステン含有膜(タングステンを主成分とする金属膜)としては、例えば、タングステンのみからなる金属膜(タングステン金属膜)、及びタングステンと他の金属とからなる合金製の金属膜(タングステン合金金属膜)が挙げられる。
タングステン合金金属膜の具体例としては、例えば、タングステン-チタン合金金属膜(WTi合金金属膜)、及びタングステン-コバルト合金金属膜(WCo合金金属膜)が挙げられる。
タングステン含有膜は、バリアメタルとして使用されることが多い。
【0191】
半導体基板を構成するウエハ上に、上記の絶縁膜、銅含有配線膜、コバルト含有膜、及びタングステン含有膜を形成する方法としては、この分野で行われる公知の方法であれば特に制限されない。
絶縁膜の形成方法としては、例えば、半導体基板を構成するウエハに対して、酸素ガス存在下で熱処理を行うことによりシリコン酸化膜を形成し、次いで、シラン及びアンモニアのガスを流入して、化学気相蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)法によりシリコン窒化膜を形成する方法が挙げられる。
銅含有配線膜、コバルト含有膜、及びタングステン含有膜の形成方法としては、例えば、上記の絶縁膜を有するウエハ上に、レジスト等の公知の方法で回路を形成し、次いで、めっき及びCVD法等の方法により、銅含有配線膜、コバルト含有膜、及びタングステン含有膜を形成する方法が挙げられる。
【0192】
<CMP処理>
CMP処理は、例えば、金属配線膜、バリアメタル、及び絶縁膜を有する基板の表面を、研磨微粒子(砥粒)を含む研磨スラリーを用いる化学作用と機械的研磨の複合作用で平坦化する処理である。
CMP処理が施された半導体基板の表面には、CMP処理で使用した砥粒(例えば、シリカ及びアルミナ等)、研磨された金属配線膜、及びバリアメタルに由来する金属不純物(金属残渣)等の不純物が残存することがある。これらの不純物は、例えば、配線間を短絡させ、半導体基板の電気的特性を劣化させるおそれがあるため、CMP処理が施された半導体基板は、これらの不純物を表面から除去するための洗浄処理に供される。
CMP処理が施された半導体基板の具体例としては、精密工学会誌 Vol.84、No.3、2018に記載のCMP処理が施された基板が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0193】
<バフ研磨処理>
洗浄液の洗浄対象物である半導体基板の表面は、CMP処理が施された後、バフ研磨処理が施されていてもよい。
バフ研磨処理は、研磨パッドを用いて半導体基板の表面における不純物を低減する処理である。具体的には、CMP処理が施された半導体基板の表面と研磨パッドとを接触させて、その接触部分にバフ研磨用組成物を供給しながら半導体基板と研磨パッドとを相対摺動させる。その結果、半導体基板の表面の不純物が、研磨パッドによる摩擦力及びバフ研磨用組成物による化学的作用によって除去される。
【0194】
バフ研磨用組成物としては、半導体基板の種類、並びに、除去対象とする不純物の種類及び量に応じて、公知のバフ研磨用組成物を適宜使用できる。バフ研磨用組成物に含まれる成分としては、特に制限されないが、例えば、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマー、分散媒としての水、及び、硝酸等の酸が挙げられる。
また、バフ研磨処理の一実施形態としては、バフ研磨用組成物として、上記の洗浄液を用いて半導体基板にバフ研磨処理を施すことが好ましい。
バフ研磨処理において使用する研磨装置及び研磨条件については、半導体基板の種類及び除去対象物に応じて、公知の装置及び条件から適宜選択できる。バフ研磨処理としては、例えば、国際公開2017/169539号の段落[0085]~[0088]に記載の処理が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0195】
〔半導体基板の洗浄方法〕
半導体基板の洗浄方法は、上記の洗浄液を用いて、CMP処理が施された半導体基板を洗浄する洗浄工程を含むものであれば特に制限されない。半導体基板の洗浄方法は、上記の希釈工程で得られる希釈洗浄液をCMP処理が施された半導体基板に適用して洗浄する工程を含むことが、好ましい。
【0196】
洗浄液を用いて半導体基板を洗浄する洗浄工程は、CMP処理された半導体基板に対して行われる公知の方法であれば特に制限されず、半導体基板に洗浄液を供給しながらブラシ等の洗浄部材を半導体基板の表面に物理的に接触させて残渣物等を除去するブラシスクラブ洗浄、洗浄液に半導体基板を浸漬する浸漬式、半導体基板を回転させながら洗浄液を滴下するスピン(滴下)式、及び洗浄液を噴霧する噴霧(スプレー)式等のこの分野で行われる公知の様式を適宜採用してもよい。浸漬式の洗浄では、半導体基板の表面に残存する不純物をより低減できる点で、半導体基板が浸漬している洗浄液に対して超音波処理を施すことが好ましい。
上記洗浄工程は、1回のみ実施してもよく、2回以上実施してもよい。2回以上洗浄する場合には同じ方法を繰り返してもよいし、異なる方法を組み合わせてもよい。
【0197】
半導体基板の洗浄方法としては、枚葉方式、及びバッチ方式のいずれを採用してもよい。枚葉方式とは、半導体基板を1枚ずつ処理する方式であり、バッチ方式とは、複数枚の半導体基板を同時に処理する方式である。
【0198】
半導体基板の洗浄に用いる洗浄液の温度は、この分野で行われる温度であれば特に制限されない。室温(25℃)で洗浄が行われることが多いが、洗浄性の向上及び/又は部材へのダメージを抑える為に、温度は任意に選択できる。洗浄液の温度としては、10~60℃が好ましく、15~50℃がより好ましい。
【0199】
半導体基板の洗浄における洗浄時間は、洗浄液に含まれる成分の種類及び含有量に依存するため一概に言えるものではないが、実用的には、10秒間~2分間が好ましく、20秒間~1分30秒間がより好ましく、30秒間~1分間が更に好ましい。
【0200】
半導体基板の洗浄工程における洗浄液の供給量(供給速度)は特に制限されないが、50~5000mL/分が好ましく、500~2000mL/分がより好ましい。
【0201】
半導体基板の洗浄において、洗浄液の洗浄能力をより増進するために、機械的撹拌方法を用いてもよい。
機械的撹拌方法としては、例えば、半導体基板上で洗浄液を循環させる方法、半導体基板上で洗浄液を流過又は噴霧させる方法、及び超音波又はメガソニックにて洗浄液を撹拌する方法が挙げられる。
【0202】
上記の半導体基板の洗浄の後に、半導体基板を溶剤ですすいで清浄する工程(以下「リンス工程」と称する。)を行ってもよい。
リンス工程は、半導体基板の洗浄工程の後に連続して行われ、リンス溶剤(リンス液)を用いて5秒間~5分間にわたってすすぐ工程であることが好ましい。リンス工程は、上述の機械的撹拌方法を用いて行ってもよい。
【0203】
リンス溶剤としては、例えば、水(好ましくは脱イオン(DI:De Ionize)水)、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、N-メチルピロリジノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、乳酸エチル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。また、pHが8超である水性リンス液(希釈した水性の水酸化アンモニウム等)を利用してもよい。
リンス溶剤を半導体基板に接触させる方法としては、上述した洗浄液を半導体基板に接触させる方法を同様に適用できる。
【0204】
また、上記リンス工程の後に、半導体基板を乾燥させる乾燥工程を行ってもよい。
乾燥方法としては、特に制限されず、例えば、スピン乾燥法、半導体基板上に乾性ガスを流過させる方法、ホットプレートもしくは赤外線ランプのような加熱手段によって基板を加熱する方法、マランゴニ乾燥法、ロタゴニ乾燥法、IPA(イソプロピルアルコール)乾燥法、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【実施例
【0205】
以下に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、及び割合は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されない。
【0206】
以下の実施例において、洗浄液のpHは、pHメーター(株式会社堀場製作所製、型式「F-74」)を用いて、JIS Z8802-1984に準拠して25℃において測定した。
また、実施例及び比較例の洗浄液の製造にあたって、容器の取り扱い、洗浄液の調液、充填、保管及び分析測定は、全てISOクラス2以下を満たすレベルのクリーンルームで行った。測定精度向上のため、洗浄液の金属含有量の測定において、通常の測定で検出限界以下のものの測定を行う際には、洗浄液を体積換算で100分の1に濃縮して測定を行い、濃縮前の溶液の濃度に換算して含有量の算出を行った。
【0207】
[洗浄液の原料]
洗浄液を製造するために、以下の化合物を使用した。なお、実施例で使用した各種成分はいずれも、半導体グレードに分類されるもの、又は、それに準ずる高純度グレードに分類されるものを使用した。
【0208】
〔成分A〕
・ グリシン:富士フイルム和光純薬(株)製
・ ヒスチジン:富士フイルム和光純薬(株)製
・ システイン:富士フイルム和光純薬(株)製
・ アルギニン:富士フイルム和光純薬(株)製
・ メチオニン:富士フイルム和光純薬(株)製
・ サルコシン:富士フイルム和光純薬(株)製
・ β-アラニン:富士フイルム和光純薬(株)製
【0209】
〔成分B〕
・ ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA):富士フイルム和光純薬(株)製(アミノポリカルボン酸に該当する)
・ エチレンジアミン四酢酸(EDTA):キレスト社製(アミノポリカルボン酸に該当する)
・ トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン四酢酸(CyDTA):富士フイルム和光純薬(株)製(アミノポリカルボン酸に該当する)
・ ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(NTPO):富士フイルム和光純薬(株)製(ポリホスホン酸に該当する)
・ N,N,N’,N’-エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)(EDTPO):サーモフォス社製「Dequest 2066」(ポリホスホン酸に該当する)
【0210】
〔成分C〕
・ 2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP):富士フイルム和光純薬(株)製(アミノアルコールに該当する。)
【0211】
〔成分D〕
・ 2-アミノピリミジン:富士フイルム和光純薬(株)製(防食剤(含窒素へテロ芳香族化合物)に該当する)
・ アデニン:富士フイルム和光純薬(株)製(防食剤(含窒素へテロ芳香族化合物)に該当する)
・ ピラゾール:富士フイルム和光純薬(株)製(防食剤(含窒素へテロ芳香族化合物)に該当する)
・ 3-アミノ-5-メチルピラゾール:東京化成(株)製(防食剤(含窒素へテロ芳香族化合物)に該当する)
・ 2-アミノベンゾイミダゾール:富士フイルム和光純薬(株)製(防食剤(含窒素へテロ芳香族化合物)に該当する)
・ クロルヘキシジングルコン酸塩(CHG):富士フイルム和光純薬(株)製(キレート剤に該当する)
・ グルコン酸:富士フイルム和光純薬(株)製(キレート剤に該当する)
・ クエン酸:扶桑化学工業(株)製(キレート剤に該当する)
・ アスコルビン酸:富士フイルム和光純薬(株)製(防食剤(還元剤)に該当する)
・ ジエチルヒドロキシルアミン(DEHA):富士フイルム和光純薬(株)製(防食剤(還元剤)に該当する)
・ ラウリルリン酸エステル:日光ケミカルズ(株)製「ホステンHLP」(防食剤(アニオン性界面活性剤)に該当する)
・ ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA):富士フイルム和光純薬(株)製(防食剤(アニオン性界面活性剤)に該当する)
【0212】
〔第4級アンモニウム化合物〕
・ メチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド(MTEAH):富士フイルム和光純薬(株)製
・ テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH):富士フイルム和光純薬(株)製
【0213】
また、本実施例における洗浄液の製造工程では、pH調整剤として、水酸化カリウム(KOH)及び硫酸(HSO)のいずれか一方、並びに、市販の超純水(富士フイルム和光純薬(株)製)を用いた。
【0214】
[洗浄液の製造]
次に、洗浄液の製造方法について、実施例1を例に説明する。
超純水に、グリシン、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、AMP(2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール)、2-アミノピリミジン、及び、ホステンHLPを、後述の表1及び表2に記載の含有量となる量でそれぞれ添加した後、調製される洗浄液のpHが10.5となるようにpH調整剤を添加した。得られた混合液を撹拌機を用いて十分に攪拌することにより、実施例1の洗浄液を得た。
【0215】
実施例1の製造方法に準じて、表1及び表2に示す組成を有する実施例2~45及び比較例1~8の洗浄液を、それぞれ製造した。
【0216】
表中、「量(%)」欄は、各成分の、洗浄液の全質量に対する含有量(単位:質量%)を示す。「pH調整剤」の「量」欄の「*1」は、HSO及びKOHのいずれか一方を、調製される洗浄液のpHが「pH」欄の数値になる量で添加したことを意味する。
「比率1」欄の数値は、成分Aの含有量(複数使用した場合は合計含有量である。以下同じ。)に対する成分Bの含有量(成分Bの含有量/成分Aの含有量)の質量比を示す。
「比率2」欄の数値は、成分Aの含有量と成分Bの含有量との和に対する成分Cの含有量(成分Cの含有量/(成分Aの含有量+成分Bの含有量))の質量比を示す。
「比率3」欄の数値は、成分Aの含有量と成分Bの含有量との和に対する成分Dの含有量(成分Dの含有量/(成分Aの含有量+成分Bの含有量))の質量比を示す。
「pH」欄の数値は、上記のpHメーターにより測定した洗浄液の25℃におけるpHを示す。
【0217】
[金属含有量の測定]
各実施例及び各比較例で製造された洗浄液につき、金属含有量を測定した。
金属含有量の測定は、Agilent 8800 トリプル四重極ICP-MS(半導体分析用、オプション#200)を用いて、以下の測定条件で行った。
【0218】
(測定条件)
サンプル導入系としては石英のトーチ、同軸型PFAネブライザ(自吸用)及び白金インターフェースコーンを使用した。クールプラズマ条件の測定パラメータは以下のとおりである。
・ RF(Radio Frequency)出力(W):600
・ キャリアガス流量(L/分):0.7
・ メークアップガス流量(L/分):1
・ サンプリング深さ(mm):18
【0219】
金属含有量の測定では、金属粒子と金属イオンとを区別せず、それらを合計した。また、2種以上の金属を検出した場合は、2種以上の金属の合計含有量を求めた。
金属含有量の測定結果を、表1及び表2の「金属含有量(ppb)」欄に示す(単位:質量ppb)。表1及び表2における「<10」は、洗浄液における金属含有量が洗浄液の全質量に対して10質量ppb未満であったことを表す。
【0220】
[洗浄性能の評価]
上記の方法で製造した洗浄液を用いて、化学機械研磨を施した金属膜を洗浄した際の洗浄性能(残渣物除去性能)を評価した。
各実施例及び各比較例の洗浄液1mLを分取し、超純水により体積比で100倍に希釈して、希釈洗浄液のサンプルを調製した。
表面に銅、タングステン又はコバルトからなる金属膜を有するウエハ(直径8インチ)を、FREX300S-II(研磨装置、(株)荏原製作所製)を用いて研磨した。表面に銅からなる金属膜を有するウエハに対しては、研磨液としてCSL9044C及びBSL8176C(商品名、いずれも富士フイルムプラナーソリューションズ社製)をそれぞれ使用して研磨を行った。これにより、研磨液による洗浄性能評価のばらつきを抑えた。同様に、表面にコバルトからなる金属膜を有するウエハに対しては、研磨液としてCSL5340C及びCSL5250C(商品名、いずれも富士フイルムプラナーソリューションズ社製)をそれぞれ使用して研磨を行った。表面にタングステンからなる金属膜を有するウエハに対しては、W-2000(商品名、キャボット社製)のみを使用して研磨を行った。研磨圧力は2.0psiであり、研磨液の供給速度は0.28mL/(分・cm)であった。研磨時間は60秒間であった。
その後、室温(23℃)に調整した各希釈洗浄液のサンプルを用いて、研磨されたウエハを30秒間かけて洗浄し、次いで、乾燥処理した。
【0221】
欠陥検出装置(AMAT社製、ComPlus-II)を用いて、得られたウエハの研磨面において、長さが0.1μm以上である欠陥に対応する信号強度の検出数を計測し、下記の評価基準により洗浄液の洗浄性能を評価した。評価結果を表1及び表2に示す。ウエハの研磨面において検出された残渣物による欠陥数が少ないほど、洗浄性能に優れると評価できる。
「A」:ウエハあたりの欠陥数が200個未満
「B」:ウエハあたりの欠陥数が200個以上300個未満
「C」:ウエハあたりの欠陥数が300個以上500個未満
「D」:ウエハあたりの欠陥数が500個以上
【0222】
[腐食防止性能の評価]
各実施例及び各比較例の洗浄液0.02mLを分取し、超純水により体積比で100倍に希釈して、希釈洗浄液のサンプルを調製した。
表面に銅、タングステン又はコバルトからなる金属膜を有するウエハ(直径12インチ)をカットし、2cm□のウエハクーポンをそれぞれ準備した。各金属膜の厚さは200nmとした。上記の方法で製造した希釈洗浄液のサンプル(温度:23℃)中にウエハクーポンを浸漬し、攪拌回転数250rpmにて、3分間の浸漬処理を行った。各金属膜について、浸漬処理前後で、各希釈洗浄液中の銅、タングステン又はコバルトの含有量を測定した。得られた測定結果から単位時間当たりの腐食速度(単位:Å/分)を算出した。下記の評価基準により洗浄液の腐食防止性能を評価した。それらの結果を表1及び表2に示す。
なお、腐食速度が低いほど、洗浄液の腐食防止性能が優れる。
【0223】
「A」:腐食速度が0.5Å/分未満
「B」:腐食速度が0.5Å/分以上、1.0Å/分未満
「C」:腐食速度が1.0Å/分以上、3.0Å/分未満
「D」:腐食速度が3.0Å/分以上
【0224】
【表1】
【0225】
【表2】
【0226】
【表3】
【0227】
【表4】
【0228】
表1及び表2から明らかなように、本発明の洗浄液は、銅を含む金属膜及びコバルトを含む金属膜に対する洗浄性能及び腐食防止性能に優れることが確認された。
【0229】
成分Aがグリシン、ヒスチジン、システイン又はアラニンを含む場合、洗浄性能により優れることが確認された(実施例7及び10~15の比較)。
成分Aの含有量が洗浄液の全質量に対して0.003質量%以上である場合、Coを含む金属膜に対する洗浄性能により優れることが確認された(実施例22と実施例23との比較)。
成分Aの含有量が洗浄液の全質量に対して1.0質量%以下である場合、Coを含む金属膜に対する腐食防止性能により優れることが確認された(実施例25と実施例26との比較)。
【0230】
成分Bがグリシン、ヒスチジン、システイン又はアラニンを含む場合、洗浄性能により優れることが確認された(実施例7及び10~15の比較)。
成分Bの含有量が洗浄液の全質量に対して0.005質量%以上である場合、Cuを含む金属膜に対する洗浄性能により優れることが確認された(実施例22と実施例23との比較)。
成分Bの含有量が洗浄液の全質量に対して1.5質量%以下である場合、Cuを含む金属膜に対する腐食防止性能により優れることが確認された(実施例25と実施例26との比較)。
【0231】
洗浄液が、成分D(含窒素へテロ芳香族化合物)としてアゾール化合物又はピラジン化合物を含む場合、金属膜に対する腐食防止性能により優れることが確認された(実施例7と実施例31~33及び35との比較)。
【0232】
洗浄液が、成分Dとしてキレート剤を含む場合、金属膜に対する腐食防止性能により優れることが確認された(実施例36と実施例37~39との比較等)。
洗浄液が、成分Dとして還元剤を含む場合、Cuを含む金属膜に対する腐食防止性能により優れることが確認された(実施例36と実施例42との比較)。
洗浄液が、成分Dとして2種以上の還元剤を含む場合、Wを含む金属膜に対する腐食防止性能により優れることが確認された(実施例42と実施例43との比較)。
【0233】
洗浄液が、第4級アンモニウム化合物を含む場合、Cu又はCoを含む金属膜に対する腐食防止性能により優れることが確認された(実施例36と実施例44との比較)。
洗浄液が、2種以上の第4級アンモニウム化合物を含む場合、Cu又はCoを含む金属膜に対する洗浄性能により優れることが確認された(実施例44と実施例45との比較)。
【0234】
表1の実施例7に示す組成を有する洗浄液において、成分CとしてAMPに代えて以下の化合物群Cから選択される化合物を使用しても、実施例7と同様の洗浄性能及び腐食防止性能が得られる。また表2の実施例40に示す組成を有する洗浄液において、成分Dのうちキレート剤としてクエン酸に代えて以下の化合物群Dから選択される化合物を使用する場合、或いは、成分Dのうちアニオン性界面活性剤としてホステンHLPに代えてホスホン酸系界面活性剤を使用する場合しても、実施例40と同様の洗浄性能及び腐食防止性能が得られる。実施例7と同様の洗浄性能及び腐食防止性能が得られる。
化合物群C:モノエタノールアミン、2-(メチルアミノ)-2-メチル-1-プロパノール、ジエタノールアミン、ジエチレングリコールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ピペラジン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、1,4―ビス(2-アミノエチル)ピペラジン、及び、1,4―ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン。
化合物群D:グリコール酸、リンゴ酸、及び、酒石酸。
【0235】
上記の洗浄性能の評価試験において、表面に銅、コバルト又はタングステンからなる金属膜を有するウエハに対してCMP処理をそれぞれ行った後、研磨されたウエハの表面に対してバフ研磨処理を施した。バフ研磨処理では、バフ研磨用組成物として室温(23℃)に調整した各実施例の洗浄液のサンプルを使用した。また、上記CMP処理で使用した研磨装置を使用し、研磨圧力:2.0psi、バフ研磨用組成物の供給速度:0.28mL/(分・cm)、研磨時間:60秒間の条件で、バフ研磨処理を行った。
その後、室温(23℃)に調整した各実施例の洗浄液のサンプルを用いて、バフ研磨処理が施されたウエハを30秒間かけて洗浄し、次いで、乾燥処理した。
得られたウエハの研磨面に対して、上記の評価試験方法に従って洗浄液の洗浄性能及び腐食防止性能を評価したところ、上記の各実施例の洗浄液と同様の評価結果を有することが確認された。