(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】低粘度光硬化性接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20230206BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20230206BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20230206BHJP
C09J 175/14 20060101ALI20230206BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230206BHJP
C08F 220/10 20060101ALI20230206BHJP
C08F 220/60 20060101ALI20230206BHJP
C08F 220/36 20060101ALI20230206BHJP
C08F 2/48 20060101ALI20230206BHJP
A61L 31/04 20060101ALI20230206BHJP
A61L 31/12 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
C08F290/06
C09J5/00
C09J4/02
C09J175/14
C09J11/06
C08F220/10
C08F220/60
C08F220/36
C08F2/48
A61L31/04 110
A61L31/12
(21)【出願番号】P 2019564958
(86)(22)【出願日】2018-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2018062175
(87)【国際公開番号】W WO2018215217
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-05-07
(32)【優先日】2017-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】ハベルリン、 ガビン
(72)【発明者】
【氏名】フィッツパトリック、 ダラー
(72)【発明者】
【氏名】ケネディ、 リサ
(72)【発明者】
【氏名】スミス、 マーティン
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-241508(JP,A)
【文献】特開平08-167172(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0028137(KR,A)
【文献】特開2016-210951(JP,A)
【文献】特開平04-159317(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0009001(US,A1)
【文献】特開昭61-113468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/06
C09J 5/00
C09J 4/02
C09J 175/14
C09J 11/06
C08F 220/10
C08F 220/60
C08F 220/36
C08F 2/48
A61L 31/04
A61L 31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)
組成物の総重量に基づいて5重量%~30重量%の量のテトラヒドロフルフリルアクリレート;
(ii)
組成物の総重量に基づいて18重量%~45重量%の量のウレタンアクリレート樹脂;
(iii)
組成物の総重量に基づいて15重量%~32重量%の量のイソボルニルアクリレート;
(iv)
組成物の総重量に基づいて18重量%~30重量%の量のN,N-ジメチルアクリルアミド;および
(v)光開始剤成分
を含
み、25℃で550mPa・s未満の粘度を有する、光硬化性(メタ)アクリレート組成物。
【請求項2】
光硬化した
ときに、光硬化性(メタ)アクリレート組成物が、130%
超の破断伸び値を有する
、請求
項1に記載の光硬化性(メタ)アクリレート組成物。
【請求項3】
光硬化性(メタ)アクリレート組成物が
、365nmから405nmの化学線を、500mW
/cm
2
以下の強
度で使用して
、60秒未
満の固定時間を有する
、請求項
1または2に記載の光硬化性(メタ)アクリレート組成物。
【請求項4】
光硬化性(メタ)アクリレート組成物が
、365nmから405nmの化学線を、500mW
/cm
2
以下の強
度で使用して、40秒から0.05秒間光硬化した場合に、40秒未
満でタックフリー表面硬化を達成する
、請求項
1~3のいずれか1項に記載の光硬化性(メタ)アクリレート組成物。
【請求項5】
光硬化性(メタ)アクリレート組成物が、光硬化した場合
に、4N/mm
2
超のISO 4587により測定されるせん断強度を有する
、請求項
1~4のいずれか1項に記載の光硬化性(メタ)アクリレート組成物。
【請求項6】
テトラヒドロフルフリルアクリレートが、組成物の総重量に基づいて
、7重量%
~18重量
%の量で存在する
、請求項
1~5のいずれか1項に記載の光硬化性(メタ)アクリレート組成物。
【請求項7】
ウレタンアクリレート樹脂が
、500
~100000の数平均分子量および/また
は21000の質量平均モル質量(Mw)を有するオリゴマーを含む
、請求項
1~6のいずれか1項に記載の光硬化性(メタ)アクリレート組成物。
【請求項8】
ウレタンアクリレート樹脂が、組成物の総重量に基づいて
、20重量%
~40重量
%の量で存在する
、請求項
1~7のいずれか1項に記載の光硬化性(メタ)アクリレート組成物。
【請求項9】
イソボルニルアクリレートが、組成物の総重量に基づいて
、20重量%
~30重量
%の量で存在する
、請求項
1~8のいずれか1項に記載の光硬化性(メタ)アクリレート組成物。
【請求項10】
N,N-ジメチルアクリルアミドが、組成物の総重量に基づいて
、20重量%
~25重量
%の量で存在する
、請求項
1~9のいずれか1項に記載の光硬化性(メタ)アクリレート組成物。
【請求項11】
組成物がエポキシド含有オルガノシランをさらに含み、エポキシド含有オルガノシランは、組成物の総重量に基づいて
、0.2重量%
~2重量
%の量で存在する
、請求項
1~10のいずれか1項に記載の光硬化性(メタ)アクリレート組成物。
【請求項12】
エポキシド含有オルガノシランが3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランである、請求項
11に記載の光硬化性(メタ)アクリレート組成物。
【請求項13】
光開始剤成分が、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド、オキシ-フェニル-酢酸2-[2オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル、オキシ-フェニル-酢酸2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウム-ヘキサフルオロホスフェート(1-)、またはそれらの組み合わせから選択される
、請求項
1~12のいずれか1項に記載の光硬化性(メタ)アクリレート組成物。
【請求項14】
光開始剤成分が、組成物の総重量に基づいて
、0.01重量%
~6重量
%の量で存在する
、請求項
1~13のいずれか1項に記載の光硬化性(メタ)アクリレート組成物。
【請求項15】
組成物が蛍光剤をさらに含み、蛍光剤が、組成物の総重量に基づいて
、0.005重量%
~0.5重量
%の量で存在する
、請求項
1~14のいずれか1項に記載の光硬化性(メタ)アクリレート組成物。
【請求項16】
蛍光剤が2,5-チオフェンジイルビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾオキサゾールである、請求項
15に記載の光硬化性(メタ)アクリレート組成物。
【請求項17】
蛍光剤が
、615nm
~640nmの蛍光発光範囲を有する合成有機分子である、請求項
15に記載の光硬化性(メタ)アクリレート組成物。
【請求項18】
(i)組成物の総重量に基づいて9重量%
~15重量%の量のテトラヒドロフルフリルアクリレート;
(ii)組成物の総重量に基づい
て34重量%~
40重量%のウレタンアクリレート樹脂;
(iii)組成物の総重量に基づい
て23重量%
~28重量%のイソボルニルアクリレート;
(iv)組成物の総重量に基づい
て24重量%
~24.5重量%のN,N-ジメチルアクリルアミド;
(v)光開始剤成分を含み;
ただし、該組成物は、任意に
(vi)組成物の総重量に基づい
て0.9重量%
~1.1重量%の量のエポキシド含有オルガノシラン;または
(vii)組成物の総重量に基づい
て0.08重量%
~0.12重量%の量の蛍光剤のうちの少なくとも1種をさらに含む
、光硬化性(メタ)アクリレート組成物。
【請求項19】
(i
)請求項
1~18のいずれか1項に記載の組成物を第1の基材に塗布する工程;および
(ii)組成物を硬化させるために、組成物を、LEDもしくは他の光源、または他の化学線源、電子ビーム、または水銀アークからの光にばく露する工程
を含む
、請求項
1~18のいずれか1項に記載の光硬化性(メタ)アクリレート組成物を硬化させる方法。
【請求項20】
少なくとも1つの基材が可撓性UV透過性部品である、請求項
19に記載の光硬化性(メタ)アクリレート組成物を硬化させる方法。
【請求項21】
光源が、200~600n
mの範囲の波長を有する光を発する、請求項
19または
20に記載の方法。
【請求項22】
光源または他の化学線源からの光への組成物のばく露が
、50秒未
満の時間起こり、組成物のタックフリー硬化をもたらす、請求項
19~
21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
組成物が第1の基材を第2の基材に接合するために使用され、光源または他の化学線源からの光への組成物のばく露により
、10秒未
満の時間で、組成物の硬化による第1の基材の第2の基材への固定がもたらされる、請求項
19~
22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
LEDが最大で500mWのLEDである、請求項
19~
23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
第1の基材を第2の基材に接合すること(ただし、第1の基材および第2の基材はそれぞれ医療デバイスおよび機器の部品である。)、および、任意に、第1の基材を第2の基材に接合することによって生成した接合アセンブリをその後滅菌することを含む、請求項
19~
24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
第1の基材および第2の基材のうちの少なくとも一方がチューブである、請求項
23または25に記載の方法。
【請求項27】
チューブが、
(i)
医療用流体およ
びガスの移
動用のチューブ;
(ii)体内に挿入される形態のチューブ
、また
は路内への挿入用の
チューブ;
(iii)埋め込み型デバイスの一部;
(iv)対象への挿入用のカニューレに接続するためのチュー
ブ;
(v
)医療デバイス
または血液透析装置に接続するためのチューブ;
または
(vi
)シースとして使用するためのチューブ
である、請求項
26に記載の方法。
【請求項28】
第1の基材および第2の基材のうちの少なくとも一方がプラスチック材料でできており、基材の少なくとも一方がUVまたは可視光透過性である、請求項
23、25または26に記載の方法。
【請求項29】
プラスチック材料が、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリエチレンテレフタレート、および熱可塑性エラストマー、ならびにそれらの組み合わせから選択される、請求項
28に記載の方法。
【請求項30】
アセンブリであって、それぞれ医療機器の部品であり、かつ請求項1~
18のいずれか1項に記載の組成物を利用して接合されている第1の基材および第2の基材を含み、任意に該アセンブリが無菌である、アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低粘度の未硬化形態で、例えばコーティングとして、物品に塗布することができるタイプの光硬化性アクリル接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の簡単な説明
良好なタックフリー硬化時間、良好な固定時間、および良好な引張強度を有する低粘度光硬化性アクリル接着剤が知られている。しかしながら、これらの特性を示し、さらに硬化生成物において良好な可撓性を示す接着剤組成物が依然として非常に望ましい。
【0003】
例えば、硬化生成物において破断点伸びにより測定されるような望ましい特性を有する組成物を提供することが望ましい。
【0004】
米国特許第6,080,450号は、高濃度の蛍光剤の組み込みにもかかわらず重合性アクリレート配合物の効果的な硬化を可能にし、それにより、その蛍光応答を利用した硬化堆積物の評価の効率を促進し、向上させるホスフィンオキシド光開始剤の使用を開示している。米国特許第6,080,450号における配合物の蛍光の増強は、例えば非破壊検査用のスキャナービームに対する応答レベルの上昇を示すコーティングおよびインクにおける使用に向けられている。
【0005】
この組成物および他の既知の組成物にもかかわらず、未硬化組成物と硬化組成物の両方で望ましい特性を示す代替組成物を提供することが依然として望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本発明は、本明細書に記載され、また特許請求の範囲にも記載されているように、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ウレタンアクリレート樹脂、イソボルニルアクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、および光開始剤成分を含む光硬化性(メタ)アクリレート組成物を提供する。
【0007】
したがって、本発明は、(未硬化状態において)低粘度を示し、かつ一旦硬化すると高い可撓性および高い破断点伸び特性を示す光硬化性アクリル接着剤組成物を提供する。本発明の組成物はまた、タックフリー(tack-free)表面特性を示す。硬化速度特性は良好である。また接合強度も良好である。
【0008】
別の態様において、本発明は、前記光硬化性(メタ)アクリレート組成物を硬化する方法を提供し、該方法は、(i)特許請求される組成物を少なくとも第1の基材に塗布するステップ、および(ii)本発明の組成物を硬化させるために、発光ダイオード(LED)、または他の放射線源、または他の化学線源、電子ビーム(eビーム)、または水銀アークからの放射線に組成物をばく露するステップを含む。化学線は、例えば、紫外(UV)放射線、例えばUV-A放射線、例えば365nmのUV-A放射線を含むことができる。
【0009】
例として、そのような組成物の少なくとも一つの用途は、静脈内療法に使用されるもののような、プラスチック製医療用チューブのプラスチック製医療用バッグへの接合、またはインスリンポンプに使用されるようなチューブの他のプラスチック基材への接合である。したがって、解決すべき問題は、高い可撓性を有し(すなわち一旦硬化したら高い破断点伸びを有し)、その一方で、良好なタックフリー時間、良好な固定時間、および硬化したら良好な強度をも有する低粘度光硬化性アクリル接着剤を可能にする組成物の特定である。
【0010】
驚くべきことに、既に良好な固定時間と良好なタックフリー性を備えているウレタンアクリレート樹脂、イソボルニルアクリレート、およびN,N-ジメチルアクリルアミドのブレンドを含む配合物に組成物の総重量に基づいて9重量%~15重量%の範囲のテトラヒドロフルフリルアクリレートを添加することにより、得られた組成物に、硬化した時に所望の高い可撓性および高い破断点伸び特性をも達成する能力が付与されることが見出された。したがって、そのような組成物は、さらなる望ましい特性を提供する。
【0011】
本発明は、25℃で約550mPa・s未満、例えば約500mPa・s未満など、典型的には約450mPa・s未満、例えば400mPa・s未満、好適には約350mPa・s未満、任意に約300mPa・s未満、例えば約250mPa・s未満、望ましくは約200mPa・s未満の粘度を有する光硬化性(メタ)アクリレート組成物を提供する。
【0012】
本発明は、光硬化性(メタ)アクリレート組成物を提供し、ここで光硬化(メタ)アクリレート組成物は、130%超、例えば135%超など、例えば140%超、例えば145%超、好適には150%以上の破断伸び値を有する。
【0013】
本発明は、光硬化性(メタ)アクリレート組成物を提供し、ここで(メタ)アクリレート組成物は、光硬化した時に、約4N/mm2超、例えば約5N/mm2超、例えば約10N/mm2超、望ましくは約15N/mm2超のISO 4587により測定されるせん断強度を有する。
【0014】
テトラヒドロフルフリルアクリレート、ウレタンアクリレート樹脂、イソボルニルアクリレート、およびN,N-ジメチルアクリルアミドの組み合わせは、低化学線強度においてタックフリー硬化性を付与する。ウレタンアクリレート樹脂、イソボルニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、およびN,N-ジメチルアクリルアミドの未硬化組成物は、最初は低粘度であるものの依然として許容可能な時間内に硬化し、良好な硬化速度、良好なタックフリー硬化性、高い接合強度および高い可撓性を有する。
【0015】
硬化した材料の柔軟性により、接合界面の移動が容易になる。例えば医療デバイス用途において装置の屈曲などの動きが発生する場合にこの特性の恩恵が得られる。そのような用途としては、少なくとも、チューブなどの医療グレードプラスチックの他の基材への接合を上げることができる。
【0016】
特許請求される組成物の成分-少なくともテトラヒドロフルフリルアクリレート、ウレタンアクリレート樹脂、イソボルニルアクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、および光開始剤成分を含む-は合わせて混合される。この組成物は、所望により、化学線で硬化させてもよい。したがって、本発明の組成物は光硬化させることができる。本発明の組成物は、任意の好適な化学線により硬化させることができる。
【0017】
以下の市販の光硬化性接着剤組成物を、本明細書に開示される新しく発明された組成物との比較試験で使用した:Loctite 3341(以下、「3341」)、Loctite 3933(以下、「3933」)、Dymax 1405-M-UR-SC(以下、「1405-M-UR-SC」)、Dymax 1191-M(以下、「1191-M」)。「Locitite」および「Dymax」は登録商標である。
【0018】
低化学線強度でのLEDタックフリー硬化:
本明細書で使用される場合、「タックフリー」という用語は、硬化した組成物の特性を指す。タックフリー組成物とは、一旦硬化したら、触れたときに粘着性(sticky/tacky)でない表面を有する組成物である。したがって、タックフリー組成物は、該組成物が典型的に接触することとなる表面(例えば包装、例えば作業者の手など)に対して粘着性とならず、そのような表面に物質を移行させることのない組成物であり、したがって、そのような組成物は非粘着性(non-tacky)であり、タックフリーと称される。硬化組成物の粘着性は、硬化サンプル上にタルク粉末を置き、タルクを除去して透明な表面を得るのに必要とされる組成物の硬化時間(秒単位)を調べることにより評価した。タルクを容易に除去できなかったサンプルを粘着性であるとみなし、「タックフリー」とはみなさなかった。タルクを容易に除去して透明な表面を得ることができたサンプルは、タックフリーであるとみなした。接着剤表面の外観を変えたり表面のくすみを引き起こしたりすることなくタルク粉末を除去できた場合、硬化組成物がタックフリー表面を有するとみなした。
【0019】
本発明の組成物について、タックフリー表面硬化は、40秒未満、例えば35秒未満など、典型的には30秒以下で、最大10Wの単色放射照度に達する能力を有するLED光源を使用して例えば0.5W未満の強度で達成される。そのような単色光は、例えば365nm~405nmの波長を含むことができる。
【0020】
低粘度:
本発明に関連して使用される場合、低粘度は、25℃で未硬化組成物について測定した場合、約550mPa・s未満の粘度値を指す。未硬化組成物の低粘度材料特性は、硬化した材料の高い破断点伸び性能と組み合わせた場合、望ましい特性の組み合わせであり、これらの特性は本発明の組成物により達成される。
【0021】
硬化速度:
1秒未満の固定時間(顕微鏡用スライドガラスを使用して測定される)が得られる。このような迅速な固定時間は、例えば405nmまたは365nmのLED光で10mWの低光強度の露光でも達成され得る。
【0022】
高強度接合性能:
幅広い用途固有ポリマーにわたって接合強度の向上が得られている。本発明の組成物を使用した熱可塑性ポリウレタンおよびポリカーボネート接合で高い接合強度が見られ、先行技術に対する顕著な改善を実証している。本発明の組成物を使用すると、ポリ塩化ビニルに対する高い接合強度も見られる。
【0023】
高可撓性:
アクリルポリマーの高い破断点伸び(130%超、150%超など)は、典型的には、長鎖ポリウレタンまたはエラストマー成分の使用により実現される。本発明の組成物は、一旦硬化すると、可撓性であり、130%超、典型的には150%超の破断前伸びを達成する。このことは低粘度の組成物を硬化させることにより実現される。
【0024】
テトラヒドロフルフリルアクリレートは広く知られている接合促進剤であるが、特許請求される本発明は、特に、テトラヒドロフルフリルアクリレートをウレタンアクリレート樹脂、イソボルニルアクリレート、およびN,N-ジメチルアクリルアミドと組み合わせて使用した場合に達成される、破断時伸びが高められかつ/または可撓性が高められた光硬化性組成物を対象とする。得られた組成物の硬化前の低粘度は用途に重大な関連があり、例えば、例えば医療デバイスへのチューブ取り付けなどの、ギャップが小さく/緊密な(tight-fitting)用途が容易になる。
【0025】
本発明の組成物は、別の基材に接合された少なくとも1つの基材を通過する化学線により硬化させることができる。このような場合、基材は入射化学線に対して十分な透過性を有する。両方の基材が入射化学線に対して十分な透過性を有することが望ましい。このようにして、本発明の組成物を所定の位置に配置して基材の組み立てを行うことができ、組み立て後に、化学線により光硬化を行うことができる。かなりの割合の照射が基材に入射される場合であっても、該照射は依然として本発明の組成物まで透過して硬化をもたらす。このことは、接合のために所定の位置に配置された組成物が基材間で遮蔽されている場合でも、化学線が基材を透過することにより効果的な硬化が起き得ることを意味する。言い換えれば、組成物が全く、またはそのほんの一部しか化学線に直接ばく露できず、残りが基材で遮蔽されている場合でも、基材を透過した化学線による間接的なばく露により依然として硬化を行うことができる。
【0026】
そのような特性は、例えば、多くの場合別の基材の管腔中に適合するチューブがある場合に望ましい。そのようなチューブは多くの場合流体運搬用であり、液密または漏れのない接合部を有することが望ましく、このため、一方を他方に接合する際、しばしば締り嵌め(例えば、干渉嵌め)とする。本発明の組成物は、2つの基材を合わせて接合する、例えばチューブを管腔内に固定するのに利用することができる。該組成物は、粘度が低いため、2つの基材間の狭いスペースに容易に配置できる。そして組成物は、化学線を一方または両方の基材を透過させることにより、光硬化させることができる。一旦硬化すると、典型的な移動力にさらされた場合でも、接合強度を維持できる可撓性の接合が形成される。さらに、接合強度自体も非常に良好である。
【0027】
本発明の組成物は、低粘度であるために、緊密に適合した基材間に容易に配置しかつ/または流動させることが可能となることが理解されよう。硬化するとタックフリー特性となり、このことは組み立てられた基材の取り扱いが可能であることを意味する。硬化すると、非常に良好な接合強度となる。さらに、接合は、硬く/脆くはなく、また、十分な可撓性を有しており、亀裂が入るまたは崩壊することなく動かすことが可能となる。したがって、形成された接合は脆弱でなく柔軟である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の実施形態を、添付の図面を参照して単に例として説明する。
【0029】
【
図1】25℃での未硬化の試験組成物の粘度を示す棒グラフである。これらには、本発明によって特許請求される組成物(LID6975、LID6976、LID6977、LID6978)および従来技術の組成物(3341、3933、1405-M-UR-SC、1191-M)が含まれる。本発明の組成物はすべて、550mPa・s未満の粘度を示す。
【
図2】試験した硬化組成物の破断点伸び値(%)を示す棒グラフである。試験した本発明の組成物はすべて、例えば150%超の高い破断点伸び値を示す。比較組成物3933も150%超の破断点伸びを有するが、25℃での粘度が2000mPa・sを超えている(
図1を参照)。
【
図3】試験した組成物の405nmにおける固定速度(時間を秒、s単位で示す)を示す棒グラフである。本発明で特許請求される組成物すべてについて、10mWにおいてスライドガラス上で1秒未満の良好な固定時間が見られる。
【
図4】試験した組成物の365nmにおける固定速度(時間を秒、s単位で示す)を示す棒グラフである。本発明の組成物すべてについて、10mWにおいてスライドガラス上で1秒未満の良好な固定時間が見られる。
【
図5】低強度400mW UV-A、フラッド405nm(30秒以下)におけるスライドガラス上での深さ1mmにおけるタックフリー硬化を示す棒グラフである。3933、1405-M-UR-SC、または11191-Mでは10分までタックフリー硬化は観察されなかった。
【
図6】低強度400mW UV-A、365nm(5秒未満)におけるスライドガラス上での深さ1mmにおけるタックフリー硬化を示す棒グラフである。
【
図7】ポリカーボネート対ポリカーボネート(PC-PC)の重ねせん断試験における、試験した硬化組成物のせん断強度を示す棒グラフである。
【
図8】ポリ塩化ビニル対ポリ塩化ビニル(PVC-PVC)の重ねせん断試験における、試験した硬化組成物のせん断強度を示す棒グラフである。
【
図9】ポリエチレンテレフタレート対ポリエチレンテレフタレート(PET-PET)の重ねせん断試験における、試験した硬化組成物のせん断強度を示す棒グラフである。
【
図10】ポリカーボネート対熱可塑性ポリウレタン(PC-TPU)の重ねせん断試験における、試験した硬化組成物のせん断強度を示す棒グラフである。
【
図11】ポリ塩化ビニル対熱可塑性ポリウレタン(PVC-TPU)の重ねせん断試験における、試験した硬化組成物のせん断強度を示す棒グラフである。
【
図12】ポリカーボネート対熱可塑性ポリウレタン(PC-TPU)の試験した硬化組成物の重ねせん断試験における重ねせん断基材破損の発生率を示す棒グラフである。従来技術の組成物はすべて、熱可塑性ポリウレタンからの剥離が関与する破損モードを示した。したがって、これらの従来技術の組成物は、基材破損の事例を生じなかった(すなわち、0%)ため、これらの従来技術の組成物については、グラフ上にバーは見えない。対照的に、これらの試験では、基材の破損が本発明の組成物の典型的な破損モードであり、すなわち、重ねせん断片の基材が破損した一方で、接着接合は無傷のままであった。この性能は、本発明の組成物による強力な接合強度の指標である。
【0030】
図において、灰色のバーは目標とする組成物の性能(表1に記載のとおり)を満たすかまたはより改善された性能の指標であり、黒いバーは目標とする性能を満たせなかった組成物を示す。
【0031】
特定の比較組成物はいくつかの望ましい特性を示し得るが、本発明を区別するのは、本発明の組成物によって示される一連の特性の組み合わせである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
本発明は、一態様において、テトラヒドロフルフリルアクリレートが、組成物の総重量に基づいて、約5重量%~約30重量%、例えば約7重量%~約18重量%、例えば約9重量%~約15重量%の量で存在する、光硬化性(メタ)アクリレート組成物を提供する。驚くべきことに、そのような少ない割合でテトラヒドロフルフリルアクリレートを含めることで、得られる組成物に所望の特性(すなわち、光硬化前の低粘度、および硬化後の高い可撓性と強度の組み合わせの一方で、また、適切な化学線源へのばく露により迅速に固定され、硬化するとタックフリー表面を生成する。)を付与するのに十分であることが見出された。
【0033】
本発明の主題である光硬化性(メタ)アクリレート組成物の成分であるウレタンアクリレート樹脂は、約500~約100000の数平均分子量を有し、かつ/または約21000の質量平均モル質量(Mw)を有するオリゴマーを含む。ウレタンアクリレート樹脂の数平均分子量およびMwは、例えばゲル浸透クロマトグラフィーにより測定できる。一態様では、本発明によって提供される光硬化性(メタ)アクリレート組成物は、組成物の総重量に基づいて、約18重量%~約45重量%、例えば約20重量%~約40重量%など、例えば約26重量%~約38重量%の量で存在するウレタンアクリレート樹脂を有する。
【0034】
一態様では、本発明により提供される光硬化性(メタ)アクリレート組成物は、組成物の総重量に基づいて、約15重量%~約32重量%、例えば約20重量%~約30重量%など、例えば約23重量%~約28重量%の量で存在するイソボルニルアクリレートを有する。配合の目的で、イソボルニルアクリレートとウレタンアクリレート樹脂を配合プロセス中に任意に組み合わせて添加することができる。
【0035】
一態様では、本発明により提供される光硬化性(メタ)アクリレート組成物は、組成物の総重量に基づいて、約18重量%~約30重量%、例えば約20重量%~約25重量%など、例えば約24重量%~約24.5重量%の量で存在するN,N-ジメチルアクリルアミドを有する。
【0036】
本発明により提供される光硬化性(メタ)アクリレート組成物は、エポキシド含有オルガノシランをさらに含むことができ、ここで、エポキシド含有オルガノシランは、組成物の総重量に基づいて、約0.2重量%~約2重量%、例えば約0.5重量%~約1.5重量%など、例えば、約0.9重量%~約1.1重量%の量で存在する。非限定的な例として、そのようなエポキシド含有オルガノシランは、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランであり得る。
【0037】
光開始剤成分は、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド、オキシ-フェニル-酢酸2-[2オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル、オキシ-フェニル-酢酸2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(phosphine oxide phenyl bis(2,4,6-trimethylbenzoyl))、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウム-ヘキサフルオロホスフェート(1-)(iodonium (4-methylphenyl)[4-(2-methylpropyl) phenyl]-hexafluorophosphate(1-))、またはそれらの組み合わせの少なくとも1種から選択してよい。
【0038】
一態様では、本発明の光硬化性(メタ)アクリレート組成物は、組成物の総重量に基づいて、約0.01重量%~約6重量%、例えば約0.5重量%~約5重量%など、例えば約0.8重量%~約4.8重量%の量で存在する光開始剤成分を有する。
【0039】
別の態様では、本発明は、蛍光剤をさらに含む光硬化性(メタ)アクリレート組成物を提供し、ここで該蛍光剤は、組成物の総重量に基づいて、約0.005重量%~約0.5重量%、例えば約0.02重量%~約0.15重量%など、例えば約0.08重量%~約0.12重量%存在する。そのような蛍光剤は、組成物で処理された領域を特定するのに有用であり得る。有利には、少なくとも1種の蛍光剤を含む組成物は、例えば、組成物の存在を識別するのに役立ち得る。例えば、チューブセットおよびニードルアセンブリなどの医療機器の組み立てに有用な部品などの可撓性の部品は、本発明の接着剤組成物で処理されていれば、組み立てようとする部品上の接着剤組成物の存在を示す正の蛍光信号の恩恵を受けることができる。少なくとも1種の蛍光剤を含む組成物のさらなる利点は、例えば、蛍光剤の蛍光が品質管理目的、例えば組立ラインでの医療用部品の製造の際、例えば正しい量の接着剤が塗布されていること、および/または正しい量の接着剤が最終製品に含まれていることを判定するために使用することができる。当技術分野で周知のものなど、任意の適切な蛍光剤を使用してよい。例として、そのような有用な蛍光剤の1つは2,5-チオフェンジイルビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾオキサゾールである。もう1つは、Angstrom Technologies(Angstrom Technologies,Inc.,7880 Foundation Drive,Florence,Kentucky 41042、USA)から「Scanning Compound #25」(SC-25、以下ではNatmar Scanning 25と呼ぶ)の商品名で市販されている。「Scanning Compound #25」は登録商標である。Natmar Scanning 25は、約615ナノメートル(nm)~約640nmの蛍光発光範囲を有する蛍光剤を有する合成有機分子である。
【0040】
一態様において、本発明は、特許請求される組成物を硬化する方法を提供し、ここで該方法は、少なくとも第1の基材に特許請求される組成物を塗布し、組成物を硬化させるために組成物を放射線または他の化学線にばく露する工程を含む。例として、化学線源にはLED源を含めることができる。さらなる例として、化学線源には、LED、電子ビーム、または水銀アーク源を含めることができる。一実施形態では、少なくとも1つの基材には、可撓性のUV透過性部品を含めることができる。
【0041】
さらなる実施形態では、少なくとも1つの基材はプラスチック材料を含むことができ、ここでプラスチック材料基材の少なくとも1つは、UVまたは可視光透過性である。例として、本発明を限定する意図なしに、望ましくは化学線透過性であるプラスチック材料は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリエチレンテレフタレートおよび熱可塑性物質の少なくとも1つから選択することができる。
【0042】
本発明の組成物を使用して接合しようとする第1の基材および第2の基材のうちの少なくとも一方は、以下のチューブを含むことができる:
(i)電解液、例えば生理食塩水または血液などの液体、および酸素などのガスを含む医療用流体の移動(排出を含む)用のチューブ;
(ii)体内に挿入される形態のチューブ、例えば血管系内への挿入用または尿路などの路内への挿入用のカテーテルなど;
(iii)埋め込み型デバイスの一部であるチューブ;
(iv)対象への挿入用のカニューレに接続するためのチューブ、例えば静脈カテーテル);
(v)インスリンポンプまたは血液透析装置などのポンプなどの医療機器に接続するためのチューブ;
(vi)例えばワイヤ収容用、例えば医療機器からのワイヤの収容用のシースとして使用するためのチューブ。
【0043】
テトラヒドロフルフリルアクリレートを含む組成物と含まない組成物の比較:
組成物のテトラヒドロフルフリルアクリレート成分の存在は、所望の特性を達成する要因である。このことは、一部には、一方(TB8)はテトラヒドロフルフリルアクリレートを含み、他方(TB3)は含まないという点で異なる以下の2つの組成物を比較することによって確認された。
【0044】
組成物TB3(テトラヒドロフルフリルアクリレートを含まない):27.60%のウレタンアクリレート樹脂、43.38%のイソボルニルアクリレート、25%のジメチルアクリルアミド、4%のエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、0.02%の2,5-チオフェンジイルビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾオキサゾール;ここで、パーセンテージは組成物の総重量に基づく重量による。
【0045】
組成TB8(テトラヒドロフルフリルアクリレートを含む):15%のテトラヒドロフルフリルアクリレート、27.60%のウレタンアクリレート樹脂、28.38%のイソボルニルアクリレート、25%のジメチルアクリルアミド、4%のエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、0.02%の2,5-チオフェンジイルビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾオキサゾール;ここで、パーセンテージは組成物の総重量に基づく重量による。
【0046】
比較の結果:
テトラヒドロフルフリルアクリレートを含む組成物、TB8は、151.5%の破断点伸び値を示した。対照的に、テトラヒドロフルフリルアクリレートを欠いている組成物、TB3は、わずか5.6%の破断点伸び値を示した。TB8はまた、TB3よりも、ポリカーボネートおよびポリプロピレンなどのプラスチックへの接合力が強く、粘度が低かった。
【0047】
この結果は、テトラヒドロフルフリルアクリレートの非存在下では組成物TB3が望ましい特性を示さなかったため、本発明において特許請求される組成物に対するテトラヒドロフルフリルアクリレートの重要性を強調している。この比較は、テトラヒドロフルフリルアクリレートを含めることにより付与される伸び特性の著しい改善を特に強調している。
【実施例】
【0048】
LID6975
LID6975は、本明細書に記載の望ましい特性を示す本発明の組成物である。LID6975は、15%のテトラヒドロフルフリルアクリレート、26.75%のウレタンアクリレート樹脂、27.85%のイソボルニルアクリレート、24.5%のジメチルアクリルアミド、1%の3(グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、4%のエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、0.8%の1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、および0.1%の2,5-チオフェンジイルビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾオキサゾールを含み、ここで、パーセンテージは組成物の総重量に基づく重量による。
【0049】
LID6976
LID6976は、本明細書に記載の望ましい特性を示す本発明の組成物である。LID6976の組成は、2,5-チオフェンジイルビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾオキサゾールを同じ重量パーセントのNatmar Scanning 25に置き換えた他はLID6975の組成と一致している。
【0050】
LID6977
LID6977は、本明細書に記載の望ましい特性を示す本発明の組成物である。LID6977は、9%のテトラヒドロフルフリルアクリレート、37.69%のウレタンアクリレート樹脂、23.41%のイソボルニルアクリレート、24%のジメチルアクリルアミド、1%の3(グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、4%のエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、0.8%の1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、および0.1%の2,5-チオフェンジイルビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾオキサゾールを含み、ここで、パーセンテージは組成物の総重量に基づく重量による。
【0051】
LID6978
LID6978は、本明細書に記載の望ましい特性を示す本発明の組成物である。LID6978の組成は、2,5-チオフェンジイルビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾオキサゾールを同じ重量パーセントのNatmar Scanning 25に置き換えた他は、LID6977の組成と一致している。
【0052】
様々なプラスチック製医療用チューブのサンプルを、本発明において特許請求される組成物を使用して接合した。次いでこれらを引張力下に置いた。いずれの場合も、基材破損があり、これは非常に強い接合強度の指標である。
【0053】
粘度試験:
粘度は、Haake rotoviscometer PK100,M10/PK1 2°Cone and Plateシステムを使用して、せん断速度200秒
-1で25℃で測定した。結果を
図1に示す。
【0054】
可撓性試験;破断点伸びの測定:
可撓性の尺度である硬化した組成物の破断点伸び率を測定するために、未硬化の組成物を、ポリテトラフルオロエチレンプレート上でステンレス鋼製ドローダウンアプリケーター(BYK-Gardner)を使用しておよそ1mm(約0.039インチ)の厚さに引き伸ばすことによってフィルムサンプルを調製した。次いで、フィルムをUV-A放射(50mW/cm
2)により光硬化させ、ASTM D638、タイプIVに従ってフィルムからドッグボーン形状のサンプルを切り取った。サンプルを、Sintech 1-D Instron machine(MTS Sintech)で、グリップ間の初期距離を6.35cm(2.5インチ)に設定して、30.48cm/分(12インチ/分)で引っ張ることにより試験した。各硬化組成物サンプルフィルムの破断点伸び値を記録し、
図2に報告する。
【0055】
固定時間試験:
固定の速さは、顕微鏡用スライドガラスを使用して測定したが、ただし固定時間(秒)は、0.1N/mm
2を超えるせん断強度を発現するのに必要な化学線へのばく露時間として定義した。対照を含む試験した組成物で得られた結果を、10mW光源:405nmでのLEDフラッドアレイについて
図3に、365nmでのUV-A放射について
図4に報告する。
【0056】
タックフリー試験:
対照を含む各試験組成物の高さ1mmのサンプルをLoctite 405nmフラッドアレイ(化学線のLED光源)に置き、400mWの低光強度で硬化させた。硬化後、タルク粉末を軽く振りかけ硬化表面に粉付けした。Kimwipe(登録商標)または同等品などの清潔な吸収紙タオルで表面を軽くこすることにより、可能であればタルク粉末を除去した。接着剤の表面を変化させたり、表面をくすませたりすることなくタルク粉末を除去できた場合に、タックフリー硬化が達成されているとみなした。365nmの化学線(UV-A)のLED光源を使用して、強度400mWで同様の試験を実施した。これらの試験の結果を
図5および
図6に報告する。
【0057】
重ねせん断試験:
接着重ねせん断接合強度は、化学線による組成物の硬化後に、接合領域および試験片の長軸に平行な引張力を印加して剛直な試験被着体間の単一重複接合部にせん断応力を加えることにより決定した。試験はISO 4587に定められたとおりに実施した。重ねせん断片は約0.6cm(4分の1インチ)重ねた。試験した基材には、PC-PC(
図7)、PVC-PVC(
図8)、PET-PET(
図9)、PC-TPU(
図10)、およびPVC-TPU(
図11)が含まれる。基材破損という用語は、重ねせん断試験中の基材の断裂を指し、極めて強い接合を示す結果である。重ねせん断試験中の基材破損の発生率を、PC-TPU重ねせん断片を用いた試験組成物について、
図12に示す。
【0058】
試験した組成物の結果を表1に報告し、
図1~12に示す。
【0059】
試験した本発明の組成物(LID6975、LID6976、LID6977、LID6978)はすべて、本明細書および表1の標的性能欄に概説したような求める特性を示した。
【0060】
【0061】
求められている特性に対する先端技術の組成物の欠点
3341:この組成物の粘度は602.5mPa・sであり、したがって、目標粘度値(500mPa・s未満)を達成していない。低強度(400mW)UV-A(365nm)で処理した場合の3341のタックフリー硬化時間は45秒であり、したがって、目標性能(5秒未満)を満たしていない。重ねせん断試験で測定した3341の強度は、所定のプラスチック(PC-PC、PC-TPU、PETPET、PVC-TPU)について、目標値よりも低い。PC-PCの場合、3341のせん断強度は10.4N/mm2であり、目標値(15N/mm2超)よりも低い。PC-TPUの場合、3341のせん断強度は2.8N/mm2であり、目標値(5N/mm2超)よりも低い。PET-PETの場合、3341のせん断強度は3.6N/mm2であり、目標値(5N/mm2超)よりも低い。PC-TPUに3341を使用した重ねせん断試験では、基材破損は見られず(発生率0%)、目標性能値は50%超である。
【0062】
3933:この組成物の粘度は2127mPa・sであり、したがって、目標粘度値(500mPa・s未満)を達成していない。405nmで10mWの化学線で処理した場合、3933の固定時間は8秒であり、したがって、目標性能(1秒以下)を満たしていない。365nmで10mWの化学線で処理した場合、3933の固定時間は7.25秒であり、したがって、目標性能(1秒以下)を満たしていない。405nmの低強度化学線(400mW LED光)で処理した場合、3933ではタックフリー硬化は10分までみられず、したがって、目標性能(40秒未満)を満たしていない。同様に、低強度(400mW)UV-A(365nm)で処理した場合の3933のタックフリー硬化時間は480秒であり、したがって、目標性能(5秒未満)を満たしていない。重ねせん断試験で測定した3933の接合強度は、所定のプラスチック(PC-PC、PC-TPU、PVC-PVC、PVC-TPU)について、目標値よりも低い。PC-PCの場合、3933のせん断強度は3.4N/mm2であり、目標値(15N/mm2超)よりも低い。PC-TPUの場合、3933のせん断強度は2.4N/mm2であり、目標値(5N/mm2超)よりも低い。PVC-PVCの場合、3933のせん断強度は8N/mm2であり、目標値(10N/mm2超)よりも低い。PVC-TPUの場合、3933のせん断強度は3.1N/mm2であり、目標値(4N/mm2超)よりも低い。PC-TPUに3933を使用した重ねせん断試験では、基材破損は見られず(発生率0%)、目標性能値は50%超である。
【0063】
1405-M-UR-SC:この組成物の粘度は685.9mPa・sであり、したがって、目標粘度値(500mPa・s未満)を達成していない。405nmの低強度化学線(400mW LED光)で処理した場合、1405-M-UR-SCではタックフリー硬化は10分までみられず、したがって、目標性能(40秒未満)を満たしていない。同様に、低強度(400mW)UV-A(365nm)で処理した場合の1405-M-UR-SCのタックフリー硬化時間は150秒であり、したがって、目標性能(5秒未満)を満たしていない。PC-TPUの重ねせん断試験で測定した1405-M-UR-SCの強度は2.6N/mm2であり、目標値(5N/mm2超)よりも低い。PC-TPUに1405-M-UR-SCを使用した重ねせん断試験では、基材破損はみられず(発生率0%)、目標性能値は50%超である。
【0064】
1191-M:この組成物の粘度は948.8mPa・sであり、したがって、目標粘度値(500mPa・s未満)を達成していない。1191-Mの破断点伸び値は115%であり、目標性能を満たしていない(130%超)。405nmの10mWの化学線で処理した場合、1191-Mの固定時間は1.7秒であり、したがって、目標性能(1秒以下)を満たしていない。405nmの低強度化学線(400mW LED光)で処理した場合、1191-Mではタックフリー硬化は10分までみられず、したがって、目標性能(40秒未満)を満たしていない。同様に、低強度(400mW)UV-A(365nm)で処理した場合の1191-Mのタックフリー硬化時間は150秒であり、したがって、目標性能(5秒未満)を満たしていない。重ねせん断試験で測定した1191-Mの強度は、所定のプラスチック(PC-PC、PC-TPU、PET-PET)について、目標値よりも低い。PC-PCの場合、1191-Mのせん断強度は11N/mm2であり、目標値(15N/mm2超)よりも低い。PC-TPUの場合、1191-Mのせん断強度は2.4N/mm2であり、目標値(5N/mm2超)よりも低い。PET-PETの場合、1191-Mのせん断強度は4.6N/mm2であり、目標値(5N/mm2超)よりも低い。PC-TPUに1191-Mを使用した重ねせん断試験では、基材破損は見られず(発生率0%)、目標性能値は50%超である。
【0065】
3341、3933、1405-M-UR-SC、および1191-Mはいずれも、粘度、400mWの強度の化学線にばく露した405nmまたは365nmでのタックフリー硬化時間、および重ねせん断試験で測定したPC-TPUにおけるせん断強度のすべての目標性能値を満たしていない。最も低い粘度値を有する試験した市販組成物、3341は、依然として目標粘度性能を約20.5%超えている。さらに、3341、3933、1405-M-UR-SC、および1191-Mのいずれも、PC-TPUでの重ねせん断試験中に基材の破損を示さない。対照的に、LID6975、LID6976、LID6977、およびLID6978は、試験したすべての性能について目標性能を満たしているか、または目標とされた値を上回る値を達成している(表1)。
【0066】
本発明に関して本明細書で使用される場合、「含む(comprises/comprising)」という用語および「有する/含む(having/including)」という用語は、述べられた特徴、整数、ステップまたは成分の存在を特定するために使用されるが、1または複数の他の特徴、整数、ステップ、成分、またはその群の存在または追加を排除するものではない。
【0067】
明確化のために別々の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴を、単一の実施形態で組み合わせて提供してもよいことが理解される。逆に、簡潔化のために単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴を、別々にまたは任意の好適なサブコンビネーションで提供してもよい。