(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20230206BHJP
H01L 21/285 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/285 C
(21)【出願番号】P 2021543892
(86)(22)【出願日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 JP2019034992
(87)【国際公開番号】W WO2021044581
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】野内 英博
(72)【発明者】
【氏名】手塚 重倫
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-065068(JP,A)
【文献】特表2015-502654(JP,A)
【文献】特開2016-105462(JP,A)
【文献】特開平10-284575(JP,A)
【文献】国際公開第2010/103958(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 21/285
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する複数の処理室と、
前記基板を保持する複数の待機室と、
前記
複数の待機室と前記
複数の処理室とに
、それぞれ隣接して配置される
複数の搬送室と、
前記
複数の搬送室
のそれぞれに設けられ、
前記複数の搬送室のうち1つの搬送室に隣接する前記処理室と
前記1つの搬送室に隣接する前記待機室との間、
および前記
複数の搬送室のうち1つの搬送室を挟んで隣り合う前記待機室同士の間で基板の搬送を
、基板が経る搬送経路に応じて経由する前記待機室の数が異なるように行う
複数の搬送ロボットと、
前記複数の待機室それぞれに設けられ、前記待機室の温度を調節する
複数の温度調節機構と、
前記
複数の待機室が保持する基板が経る搬送経路に応じて、前記
複数の待機室の
それぞれの温度調節の態様を変えるように前記温度調節機構を制御する制御部と、
を備える基板処理装置。
【請求項2】
前記温度調節機構は、前記
複数の待機室
のそれぞれに設けられ、前記基板を加熱する加熱機構を備える、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記温度調節機構は、前記
複数の待機室
のそれぞれに設けられ、前記基板を冷却する冷却機構を備える、
請求項1または請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記処理室で処理される未処理基板を前記複数の処理室へそれぞれ同時に、かつ同じ温度で搬入させるように、前記
複数の温度調節機構を制御する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記複数の処理室から搬出され、前記複数の待機室のうちの一の待機室へ搬入された複数の処理済み基板を、それぞれ同じ温度で前記一の待機室から搬出させるように、前記
複数の温度調節機構を制御する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記複数の搬送室と前記複数の待機室は、交互に隣接して配置される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項7】
基板を処理する複数の処理室と、前記基板を保持する複数の待機室と、前記
複数の待機室と前記
複数の処理室とに
、それぞれ隣接して配置される
複数の搬送室と、前記
複数の搬送室
のそれぞれに設けられ、基板の搬送を行う
複数の搬送ロボットと、
前記複数の待機室それぞれに設けられ、前記待機室の温度を調節する
複数の温度調節機構と、を備える基板処理装置を用いて、
前記搬送ロボットにより、
前記複数の搬送室のうち1つの搬送室に隣接する前記処理室と
前記1つの搬送室に隣接する前記待機室との間、
および前記
複数の搬送室のうち1つの搬送室を挟んで隣り合う前記待機室同士の間で基板の搬送を
、基板が経る搬送経路に応じて経由する前記待機室の数が異なるように行う工程と、
前記
複数の待機室が保持する基板が経る搬送経路に応じて、前記
複数の待機
室のそれぞれの温度調節の態様を変える処理を行う工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記温度調節機構は、前記
複数の待機室
のそれぞれに設けられ、前記基板を加熱する
複数の加熱機構を備え、
前記処理を行う工程では、前記
複数の待機室
それぞれに搬送された基板を加熱する処理を行う、
請求項
7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記温度調節機構は、前記
複数の待機室
のそれぞれに設けられ、前記基板を冷却する
複数の冷却機構を備え、
前記処理を行う工程では、前記
複数の待機室
それぞれに搬送された基板を冷却する処理を行う、
請求項
7または請求項
8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記複数の処理室で前記基板の処理を行う前に、前記処理室で処理される未処理基板を前記複数の処理室にそれぞれが同時に、かつ同じ温度で搬入する工程を有する、
請求項
7から請求項
9のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記複数の処理室で前記基板の処理を行った後に、前記複数の処理室から搬出され、前記複数の待機室のうちの一の待機室へ搬入された複数の処理済み基板を、それぞれ同じ温度で前記一の待機室から搬出する工程を有する、
請求項
7から請求項
10のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
基板を処理する複数の処理室と、前記基板を保持する複数の待機室と、前記
複数の待機室と前記
複数の処理室とに
、それぞれ隣接して配置される
複数の搬送室と、前記
複数の搬送室に
それぞれ設けられ、基板の搬送を行う
複数の搬送ロボットと、
前記複数の待機室それぞれに設けられ、前記待機室の温度を調節する
複数の温度調節機構と、を備える基板処理装置に、
前記搬送ロボットにより、
前記複数の搬送室のうち1つの搬送室に隣接する前記処理室と
前記1つの搬送室に隣接する前記待機室との間、
および前記
複数の搬送室のうち1つの搬送室を挟んで隣り合う前記待機室同士の間で基板の搬送を
、基板が経る搬送経路に応じて経由する前記待機室の数が異なるように行う手順と、
前記
複数の待機室が保持する基板が経る搬送経路に応じて、前記
複数の待機
室のそれぞれの温度調節の態様を変える処理を行う手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項13】
前記温度調節機構は、前記
複数の待機室
のそれぞれに設けられ、前記基板を
加熱する
加熱機構であって、
前記処理を行う手順では、前記
複数の待機室
それぞれに搬送された基板を加熱する処理を行う、
請求項
12に記載のプログラム。
【請求項14】
前記温度調節機構は、前記
複数の待機室
のそれぞれに設けられ、前記基板を冷却する
複数の冷却機構であって、
前記処理を行う工程では、前記
複数の待機室
それぞれに搬送された基板を冷却する処理を行う、
請求項
12または請求項
13記載のプログラム。
【請求項15】
前記処理を行う手順の前に、前記処理室で処理される未処理基板を前記複数の処理室にそれぞれが同時に、かつ同じ温度で搬入する手順を有する、
請求項
12から請求項
14のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項16】
前記処理を行う手順の後に、前記複数の処理室から搬出され、前記複数の待機室のうちの一の待機室へ搬入された複数の処理済み基板を、それぞれ同じ温度で前記一の待機室から搬出する工程を有する、
請求項
12から請求項
15のいずれか一項に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、半導体装置の製造方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程で用いられる基板処理装置において基板の処理工程を行う際に、複数の処理室へ基板の搬入を同時に行う等、作業効率を向上させる処理が行われる場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板の処理工程において、作業効率をさらに向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様によれば、
基板を処理する複数の処理室と、
前記基板を保持する複数の待機室と、
前記待機室と前記処理室とに隣接して配置される搬送室と、
前記搬送室に設けられ、前記処理室と前記待機室との間、または前記搬送室を挟んで隣り合う前記待機室同士の間で基板の搬送を行う搬送ロボットと、
前記待機室の温度を調節する温度調節機構と、
前記待機室が保持する基板が経る搬送経路に応じて、前記待機室の温度調節の態様を変えるように前記温度調節機構を制御する制御部と、
を備える技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板の処理工程において、作業効率をさらに向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一態様に係る基板処理装置の概略構成図である。
【
図2】本開示の一態様に係る基板処理装置が有する処理室の概略構成例を模式的に示す側断面図である。
【
図3】本開示の一態様に係る基板処理装置が有するコントローラの構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図4】本開示の一態様に係る基板処理装置で行われる成膜工程の手順を示すフロー図である。
【
図5】本開示の一態様に係る基板処理装置において、未処理基板を待機室から処理室へ搬送する搬送例を示した図である。
【
図6】本開示の一態様に係る基板処理装置において、処理済み基板を処理室から搬出し、未処理基板を処理室へ搬入する搬送例を示した図である。
【
図7】本開示の一態様に係る基板処理装置において、処理済み基板を処理室から待機室へ搬送する搬送例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について、図面を参照しながら説明する。
【0009】
(1)基板処理装置の構成例
本開示の基板処理装置100の概略構成例について
図1を用いて説明する。
【0010】
(全体構成)
本開示の基板処理装置100は、基板を処理する第1~第4処理室PM11~PM42と、基板を搬送する第1~第4搬送ロボットTH1~TH4を備える第1~第4搬送室TM1~TM4と、隣り合う第1~第4搬送室TM1~TM4の間を連結する第1~第4待機室WM1~WM4と、第1~第4待機室WM1~WM4が備える第1~第4温度調節機構AC1~AC4と、第1待機室WM1に隣接する大気搬送室LHと、大気搬送室LHに隣接するロードポートLP1,LP2と、を主に備える。
【0011】
第1~第4搬送室TM1~TM4と第1~第4待機室WM1~WM4とは交互に隣接するように配置されている。具体的には、第1搬送室TM1は、第1待機室WM1を介して大気搬送室LHに隣接している。第2搬送室TM2は、第2待機室WM2を介して第1搬送室TM1に隣接している。第3搬送室TM3は、第3待機室WM3を介して第2搬送室TM2に接続している。第4搬送室TM4は、第4待機室WM4を介して第3搬送室TM3に隣接している。
【0012】
第1~第4搬送室TM1~TM4の両側面(
図1の左右側)には、第1~第4処理室PM11~PM42が配置されている。具体的には、第1待機室WM1から第1搬送室TM1を見たときの第1搬送室TM1の両側面には、第1処理室PM11,PM12が配置されている。同様に、第2搬送室TM2の両側面には、第2処理室PM21,PM22が配置されている。第3搬送室TM3の両側面には、第3処理室PM31,PM32が配置されている。第4搬送室TM4の両側面には、第4処理室PM41,PM42が配置されている。
【0013】
以下、第1~第4処理室PM11~PM42を総称して、単に「処理室PM」という場合がある。同様に、第1~第4待機室WM1~WM4を総称して、単に「待機室WM」という場合がある。第1~第4搬送ロボットTH1~TH4を総称して、単に「搬送ロボットTH」という場合がある。第1~第4搬送室TM1~TM4を総称して、単に「搬送室TM」という場合がある。
【0014】
以下、基板処理装置100の各構成要素ついてさらに詳しく説明する。
【0015】
(ロードポート)
ロードポート(I/Oステージ)LP1,LP2は、ウエハキャリアとして使用されるポッドPD1,PD2の搬入搬出部として用いられる。ポッドPD1,PD2の内部は、処理室PMで処理される未処理のウエハ(以下、「未処理ウエハ」と称する場合がある。)や、処理室PMで処理された処理済みのウエハ(以下、「処理済ウエハ」と称する場合がある。)が水平姿勢で格納されるように構成されている。ポッドPD1,PD2の前面蓋を開けることにより、ポッドPD1,PD2内と大気搬送室LH内とが連通するようになっている。
【0016】
(大気搬送室)
ロードポートLP1,LP2の一側面には、大気搬送室LHが設けられている。大気搬送室LH内には、ポッドPD1,PD2と第1待機室WM1との間でウエハの搬送を行う、不図示の大気搬送ロボットが設けられている。大気搬送ロボットは、ポッドPD1,PD2内に収納されている複数枚(例えば、25枚)の未処理ウエハのうちの5枚のウエハを第1待機室WM1に搬送する。また、大気搬送ロボットは、5枚の処理済ウエハを第1待機室WM1からポッドPD1,PD2内に搬送する(
図7参照)。大気搬送室LH内は、不活性ガス等のクリーンガスが供給され、大気圧に保持されている。
【0017】
(待機室)
図1に示すように、大気搬送室LHの側面であって、ロードポートLP1,LP2が設けられた反対側には、第1待機室WM1が設けられている。第1待機室WM1の内部には、ポッドPD1,PD2から搬送された5枚の未処理ウエハを水平姿勢で保持する保持領域が設けられており、この保持領域の下方には、5枚の処理済ウエハを保持する空き領域が設けられている。大気搬送室LHと第1待機室WM1との間には不図示のゲートバルブが設けられており、このゲートバルブを開けることにより、大気搬送室LH内と第1待機室WM1内とが連通可能となる。
第2~第4待機室WM2~WM4の内部も、第1待機室WM1の内部と同様に構成されている。
【0018】
(温度調節機構)
第1待機室WM1には、第1待機室WM1内の温度を調節する第1温度調節機構AC1が設けられている。第1温度調節機構AC1は、加熱機構と冷却機構とを有している。加熱機構により、第1待機室WM1に保持された未処理ウエハが加熱され、また、冷却機構により、処理済ウエハが冷却される。加熱機構と冷却機構については、公知技術を利用することができる。
第2~第4待機室WM2~WM4にも、第1温度調節機構AC1と同様の構成および機能を有する第2~第4温度調節機構AC2~AC4が設けられている。
【0019】
(搬送室)
第1待機室WM1の側面であって、大気搬送室LHが設けられた反対側には、第1搬送室TM1が設けられている。第1搬送室TM1の内部には、ウエハの搬送および保持を行う第1搬送ロボットTH1が設けられている。第1待機室WM1と第1搬送室TM1との間には不図示のゲートバルブが設けられ、このゲートバルブを開けることにより、第1待機室WM1内と第1搬送室TM1内とが連通可能となる。同様に、第1搬送室TM1と第1処理室PM11との間、および第1搬送室TM1と第1処理室PM12との間にも不図示のゲートバルブが設けられている。
第2~第4搬送室TM2~TM4の内部も、第1搬送室TM1の内部と同様に構成されている。
【0020】
(搬送ロボット)
第1搬送ロボットTH1は、ウエハを一時的に保持して搬送する一対のアームAR11,AR12を備えている。第1搬送ロボットTH1は、第1待機室WM1内に保持される未処理ウエハを第2待機室WM2に搬送し、また、第2待機室WM2内に保持される処理済ウエハを第1待機室WM1に搬送する。また、第1搬送ロボットTH1は、例えばアームAR11に未処理ウエハを載せて、第1処理室PM11に搬入するとともに、処理済ウエハをアームAR12に載せて第1処理室PM11から搬出するスワップ(交換)搬送ができるよう構成されている。
第2~第4搬送室TM2~TM4の内部にも、第1搬送ロボットTH1と同様の構成および機能を有する第2~第4搬送ロボットTH2~TH4が設けられている。
【0021】
(処理室)
第1待機室WM1から第1搬送室TM1を見たときの第1搬送室TM1の両側面(
図1の左右側)には、ウエハに成膜等の処理を施す第1処理室PM11,PM12が設けられている。また、
図1には示していないが、処理室PM11,PM12の内部にはウエハに成膜処理を施す縦型処理炉1(
図2参照)が配置されている。縦型処理炉1の構成については後述する。
第2~第4処理室PM21~PM42の内部にも、縦型処理炉1と同様の構成および機能を有する縦型処理炉が設けられている。
【0022】
(2)処理室の構成例
本開示の基板処理装置100が有する処理室PMは、処理対象となるウエハを5枚ずつ纏めて処理する縦型基板処理室として構成されている。以下では、第1処理室PM11が備える縦型処理炉1を例に説明する。
また、ウエハに対して処理室PMが行う処理としては、例えば、酸化処理、拡散処理、イオン打ち込み後のキャリア活性化や平坦化のためのリフローやアニール、成膜処理がある。本開示では、特に成膜処理を行う場合を例に挙げる。
【0023】
以下、処理室PMの構成を、図面を参照しながら具体的に説明する。
図2は、本開示の基板処理装置100が有する第1処理室PM11の内部の概略構成例を模式的に示す側断面図である。
【0024】
(全体構成)
縦型処理炉1は、後述する反応管20を均一に加熱するために、加熱部としてのヒータ10を備える。ヒータ10は、円筒形状であり、保持板としての不図示のヒータベースに支持されることにより基板処理装置の設置床に対して垂直に据え付けられている。
ヒータ10の内側には、ヒータ10と同心円状に、反応容器を構成する反応管20が配設されている。
反応管20の下方には、基板移載用のロードロック室を構成する下部チャンバ(ロードロックチャンバ)30が配設されている。
そして、反応管20および下部チャンバ30によって形成される空間内には、処理対象となるウエハを支持するための基板支持部40が、当該空間内を上下方向に移動可能に配されている。
【0025】
(反応管)
反応管20は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、内管21と外管22とを有する二重管構造の円筒形状に形成されている。
【0026】
内管21の内側(すなわち、中空筒の内部)には、ウエハを処理する処理部23が形成されている。処理部23は、後述する基板支持部40のボート41によって支持されるウエハを、水平姿勢で鉛直方向に多段に配列した状態で、収容可能に構成されている。
処理部23内には、処理部23の下部領域から上部領域まで延在するノズル24が設けられている。ノズル24には、ボート41に支持されるウエハと対向する位置に、ノズル24の延伸方向に沿って並ぶ複数のガス供給孔24aが設けられている。これにより、ノズル24のガス供給孔24aからは、ウエハに対してガスが供給されることになる。
【0027】
内管21の外側で、かつ、外管22の内側には、ガスが流れる排気流路25が形成されている。排気流路25は、外管22の上端と内管21の上端との隙間を通じて処理部23からガスが流れ込み、流れ込んだガスが内管21の外側と外管22の内側との間の空間を下方に向けて流れるように構成されている。
【0028】
外管22の下部には、その外管22の周りを取り囲むように、ガスの滞留空間である排気バッファとしてのポンピング部26が形成されている。
【0029】
内管21の下部には、ポンピング部26と対向する位置に開口27が設けられている。開口27は、内管21の下部のポンピング部26が配置される位置の周りの複数個所に設けられ、内管21の内側からポンピング部26にガスを排出し得るように構成されている。
【0030】
(ガス供給部)
内管21の内側に配されたノズル24には、ガス供給ラインとしてのガス供給管51が、内管21および外管22を貫通するように接続されている。ガス供給管51には、少なくとも2本のガス供給管52,54が接続されており、処理部23内へ複数種類のガスを供給することができるように構成されている。
【0031】
ガス供給管52の流路上には、上流方向から順に、流量制御器であるマスフローコントローラ(MFC)52aおよび開閉弁であるバルブ52bが設けられている。バルブ52bよりも下流側では、不活性ガスを供給するガス供給管53がガス供給管52に接続されている。ガス供給管53には、上流方向から順に、MFC53aおよびバルブ53bが設けられている。主に、ガス供給管52,MFC52a,バルブ52bにより、第1の処理ガス供給系である第1処理ガス供給部が構成される。
【0032】
また、ガス供給管54の流路上には、上流方向から順に、MFC54aおよびバルブ54bが設けられている。バルブ54bよりも下流側では、不活性ガスを供給するガス供給管55がガス供給管54に接続されている。ガス供給管55には、上流方向から順に、MFC55aおよびバルブ55bが設けられている。主に、ガス供給管54,MFC54a,バルブ54bにより、第2の処理ガス供給系である第2処理ガス供給部が構成される。
【0033】
ガス供給管52からは、第1の処理ガスとして、第1の金属元素を含む原料ガス(第1の金属含有ガス、第1の原料ガス)が、MFC52a,バルブ52b,ガス供給管51,ノズル24を介して処理部23内に供給される。
【0034】
ガス供給管54からは、第2の処理ガスとして、反応ガスが、MFC54a,バルブ54b,ガス供給管51,ノズル24を介して処理部23内に供給される。反応ガスとしては、例えば窒素(N)を含むN含有ガスとしての例えばアンモニア(NH3)ガスを用いることができる。NH3ガスは、窒化・還元剤(窒化・還元ガス)として作用する。
【0035】
ガス供給管53,55からは、不活性ガスとして、例えば窒素(N2)ガスが、それぞれMFC53a,55a,バルブ53b,55b,ガス供給管51,ノズル24を介して処理部23内に供給される。
【0036】
(ガス排気部)
ポンピング部26には、そのポンピング部26に滞留するガスを排気する排気管61が接続されている。排気管61には、上流側から順に、処理部23内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ62,APC(Auto Pressure Controller)バルブ63,真空排気装置としての真空ポンプ64が接続されている。
【0037】
(下部チャンバ)
下部チャンバ30は、その上端に反応管20を支持するフランジ部31を有している。フランジ部31が反応管20を支持することで、下部チャンバ30は、反応管20の下方に配されることになる。
【0038】
下部チャンバ30の上端近傍には、基板搬入搬出口32が設けられている。基板搬入搬出口32は、第1搬送ロボットTH1(
図1参照)により、下部チャンバ30の内外でのウエハの出し入れを可能とするように構成されている。
【0039】
また、下部チャンバ30の下方部には、不活性ガス供給管56が接続されている。不活性ガス供給管56の流路上には、上流方向から順に、MFC56aおよびバルブ56bが設けられている。主に、不活性ガス供給管56,MFC56a,バルブ56bにより、第2の不活性ガス供給系である不活性ガス供給部が構成される。
不活性ガス供給管56からは、不活性ガスとして、例えばN2ガスが下部チャンバ30内に供給される。
【0040】
(基板支持部)
基板支持部40は、反応管20および下部チャンバ30によって形成される空間内、すなわち内管21内の処理部23および下部チャンバ30内の移載室33を移動可能に配されるもので、ウエハを支持する基板支持具としてのボート41と、その下方に配された断熱部42と、を有している。
【0041】
基板支持具としてのボート41は、プレート41aが5段に設けられており、そのプレート41aによって、5枚のウエハを、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で、鉛直方向に整列させて多段に支持するように構成されている。
【0042】
また、断熱部42の下面には、その断熱部42を下方から支持する支持ロッド43が配設されている。支持ロッド43は、移載室33の機密状態を維持しつつ、その下部チャンバ30の底部を貫通するように配されており、下部チャンバ30の外方において昇降機構部(ボートエレベータ)44に連結されている。
【0043】
昇降機構部44は、ボート41,断熱部42および支持ロッド43を昇降させるように動作するものである。昇降機構部44の動作によって、基板支持部40は、内管21内の処理部23および下部チャンバ30内の移載室33を上下方向に移動することが可能となる。
具体的には、例えば、昇降機構部44が上昇動作を行うと、
図2に示すように、少なくともボート41が処理部23に位置し、これによりボート41に支持されたウエハに対して処理部23での処理を行うことが可能になる。
また、例えば、昇降機構部44が下降動作を行うと、ボート41が下部チャンバ30の移載室33内まで下がるようになっている。このようにすることで、第1搬送ロボットTH1により、基板搬入搬出口32を通じてボート41のプレート41a上に5枚のウエハを載置することが可能になる。
【0044】
(3)コントローラ
以下、コントローラ70の構成を、図面を参照しながら説明する。
図3は、本開示の基板処理装置100が有するコントローラの構成例を模式的に示すブロック図である。本開示の基板処理装置は、その基板処理装置における各部の動作を制御する制御部としてのコントローラ70を有している。
【0045】
制御部(制御手段)であるコントローラ70は、演算部としてのCPU(Central Processing Unit)71,一時記憶部としてのRAM(Random Access Memory)72,大容量記憶部としての記憶装置73,I/Oポート74を備えたコンピュータとして構成されている。RAM72,記憶装置73,I/Oポート74は、内部バス75を介して、CPU71とデータ交換可能なように構成されている。また、コントローラ70は、例えば、外部記憶装置81,タッチパネル等の入出力装置82が接続可能に構成されている。
【0046】
記憶装置73は、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置73内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラム、後述する半導体装置の製造方法の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する半導体装置の製造方法における各工程(各ステップ)をコントローラ70に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピ、制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、プロセスレシピおよび制御プログラムの組み合わせを含む場合がある。RAM72は、CPU71によって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0047】
I/Oポート74は、第1~第4温度調節機構AC1~AC4,第1~第4搬送ロボットTH1~TH4,MFC52a~56a,バルブ52b~56b,圧力センサ62,APCバルブ63,真空ポンプ64,ヒータ10,昇降機構部44等に接続されている。
【0048】
CPU71は、記憶装置73から制御プログラムを読み出して実行するとともに、入出力装置82からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置73からレシピ等を読み出すように構成されている。そして、CPU71は、読み出したレシピの内容に沿うように、I/Oポート74を介して、第1~第4温度調節機構AC1~AC4の温度調整動作、第1~第4搬送ロボットTH1~TH4の搬送動作、MFC52a~56aによる各種ガスの流量調整動作、バルブ52b~56bの開閉動作、APCバルブ63の開閉動作およびAPCバルブ63による圧力センサ62に基づく圧力調整動作、ヒータ10の温度調整動作、真空ポンプ64の起動および停止、昇降機構部44によるボート41の昇降動作、ボート41へのウエハの収容動作等を制御するように構成されている。
【0049】
以上のようなコントローラ70は、専用のコンピュータとして構成してもよいし、汎用のコンピュータとして構成してもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ(USB Flash Drive)やメモリカード等の半導体メモリ)81を用意し、外部記憶装置81を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすることにより、本開示のコントローラ70を構成することができる。また、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置81を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用いてもよいし、上位装置から受信部を介して情報を受信し、外部記憶装置81を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。
【0050】
コントローラ70における記憶装置73およびコントローラ70に接続可能な外部記憶装置81は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置73単体のみを含む場合、外部記憶装置81単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0051】
(4)処理室における基板処理工程(成膜工程)
次に、処理室PMにおける基板処理工程を、
図2および
図4を用いて説明する。ここでは、基板処理工程として、金属膜の一例である窒化チタン(TiN)層をウエハ上に形成する工程(成膜工程)を例に挙げる。なお、以下の説明において、処理室PMを構成する各部の動作はコントローラ70により制御される。
以下に、第1処理室PM11で行われる成膜工程を例に説明する。
【0052】
(ウエハチャージ:S110)
成膜処理に際しては、先ず、被処理物となるウエハをボート41に装填(ウエハチャージ)する。具体的には、移載室33内において、ボート41のプレート41aを基板搬入搬出口32の対向位置に配置し、その状態で、第1搬送ロボットTH1により、基板搬入搬出口32を通じて、プレート41a上にウエハを載置する。これを、昇降機構部44によってボート41の上下方向位置を移動させつつ、5段のプレート41aのそれぞれに対して行う。これにより、ボート41には、5枚のウエハが装填される。
【0053】
(ボートロード:S120)
ボート41にウエハを装填したら、続いて、ボート41を昇降機構部44によって上昇させる。これにより、ボート41に装填された5枚のウエハは、処理部23内に搬入(ボートロード)される。
【0054】
(圧力調整および温度調整:S130)
ウエハの処理部23内への搬入後は、処理部23内が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ64を作動させる。この際、処理部23内の圧力は、圧力センサ62で測定され、この測定された圧力情報に基づき、APCバルブ63がフィードバック制御される(圧力調整)。真空ポンプ64は、少なくともウエハに対する処理が完了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。また、処理部23内が所望の温度となるように、ヒータ10による加熱を行う。この際、処理部23内が所望の温度分布となるように、温度センサが検出した温度情報に基づき、ヒータ10への通電量がフィードバック制御される(温度調整)。ヒータ10による処理部23内の加熱は、少なくともウエハに対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。
【0055】
(TiN層形成工程:S140)
処理部23内の雰囲気が安定したら、次いで、成膜工程としてのTiN層形成工程(S140)に移る。TiN層形成工程(S140)では、TiCl4ガスを供給する工程(S141)、残留ガスを除去する工程(S142)、NH3ガスを供給する工程(S143)、および、残留ガスを除去する工程(S144)の各ステップを順に行う。
【0056】
(TiCl4ガス供給:S141)
具体的には、処理部23内の雰囲気が安定した後、バルブ52bを開き、ガス供給管52およびガス供給管51に原料ガスであるTiCl4ガスを流す。TiCl4ガスは、MFC52aにより流量調整され、ノズル24のガス供給孔24aから処理部23内に供給され、排気流路25およびポンピング部26を経て排気管61から排気される。これにより、ボート41に装填されたウエハに対してTiCl4ガスが供給されることとなる。また、TiCl4ガスの供給に合わせて、バルブ53bを開き、ガス供給管53内にN2ガス等の不活性ガスを流す。ガス供給管53内を流れたN2ガスは、MFC53aにより流量調整され、TiCl4ガスと一緒に処理部23内に供給され、排気管61から排気される。
【0057】
このとき、APCバルブ63を調整して、処理部23内の圧力を、例えば0.1~6650Paの範囲内の圧力とする。MFC52aで制御するTiCl4ガスの供給流量は、例えば0.1~2slmの範囲内の流量とする。MFC53aで制御するN2ガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1~30slmの範囲内の流量とする。TiCl4ガスをウエハに対して供給する時間は、例えば0.01~20秒の範囲内の時間とする。また、ヒータ10は、ウエハの温度が、例えば250~550℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。
【0058】
このように、処理部23内にTiCl4ガスおよびN2ガスを供給すると、ボート41に装填されたウエハ(表面の下地膜)上には、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さのTi含有層が形成される。
【0059】
また、このとき、移載室33内に対しても、N2ガス等の不活性ガスの供給を行う。具体的には、バルブ56bを開き、不活性ガス供給管51内にN2ガス等の不活性ガスを流す。不活性ガス供給管51内を流れたN2ガスは、MFC56aにより流量調整され、移載室33内に供給される。移載室33内へのN2ガスの供給は、処理部23内のガス圧力<移載室33内のガス圧力となるように行うものとする。また、処理部23内に供給されるガスの合計流量<移載室33内に供給されるガス流量となるように行うものとする。
【0060】
(残留ガス除去:S142)
ウエハ上にTi含有層を形成した後は、バルブ52bを閉じ、TiCl4ガスの供給を停止する。このとき、排気管61のAPCバルブ63は開いたままとして、真空ポンプ64により処理部23内を真空排気し、処理部23内に残留する未反応もしくはTi含有層形成に寄与した後のTiCl4ガスを処理部23内から排除する。また、バルブ53bは開いたままとして、N2ガスの処理部23内への供給を維持する。N2ガスはパージガスとして作用し、処理部23内に残留する未反応もしくはTi含有層形成に寄与した後のTiCl4ガスを処理部23内から排除する効果を高めることができる。
【0061】
(NH3ガス供給:S143)
処理部23内の残留ガスを除去した後は、バルブ54bを開き、ガス供給管54およびガス供給管51に反応ガスとしてN含有ガスであるNH3ガスを流す。NH3ガスは、MFC54aにより流量調整され、ノズル24のガス供給孔24aから処理部23内に供給され、排気流路25およびポンピング部26を経て排気管61から排気される。これにより、ボート41に装填されたウエハに対してNH3ガスが供給されることとなる。このとき、バルブ55bは閉じた状態として、N2ガスがNH3ガスと一緒に処理部23内に供給されないようにする。すなわち、NH3ガスは、N2ガスで希釈されることなく、処理部23内に供給され、排気管61から排気される。このように、反応ガス(NH3ガス)を、N2ガスで希釈することなく、処理部23内へ供給すれば、TiN層の成膜レートを向上させることが可能である。
【0062】
NH3ガスを流すときは、APCバルブ63を調整して、処理部23内の圧力を、例えば0.1~6650Paの範囲内の圧力とする。MFC54aで制御するNH3ガスの供給流量は、例えば0.1~20slmの範囲内の流量とする。NH3ガスをウエハに対して供給する時間は、例えば0.01~30秒の範囲内の時間とする。また、ヒータ10は、TiCl4ガス供給工程と同様の温度に設定する。
【0063】
このように、処理部23内にNH3ガスを供給すると、NH3ガスは、TiCl4ガス供給工程でウエハ上に形成されたTi含有層の少なくとも一部と置換反応する。この置換反応により、Ti含有層に含まれるTiとNH3ガスに含まれるNとが結合して、ボート41に装填されたウエハ上に、TiとNとを含むTiN層が形成されることになる。
【0064】
また、このときも、上述したTiCl4ガス供給工程(S141)の場合と同様に、移載室33内に対して、N2ガス等の不活性ガスの供給を行う。具体的な処理はTiCl4ガス供給工程(S141)の場合と同様なので、ここでの説明を省略する。
【0065】
(残留ガス除去:S144)
ウエハ上にTiN層を形成した後は、バルブ54bを閉じて、NH3ガスの供給を停止する。そして、上述した残留ガス除去工程の場合と同様の処理手順により、処理部23内に残留する未反応もしくはTiN層の形成に寄与した後のNH3ガスや反応副生成物を、処理部23内から排除する。
【0066】
(実施回数確認:S150)
以上に述べたTiN層形成工程(S140)における各工程(S141~S144)を順に行うサイクルが終了すると、その都度、そのサイクルを予め設定された回数(所定回数)実施したか否かを判断する。そして、所定回数実施するまで、そのサイクルを繰り返し実施する(S141~S144)。上述のサイクルを繰り返す回数は、例えば10~80回程が好ましく、より好ましくは10~15回程行う。そして、上述のサイクルを所定回数繰り返すことにより、ウエハ上には、所定の厚さ(例えば0.1~2nm)のTiN層が形成される。
【0067】
(アフターパージ:S160)
上述のサイクルを所定回数繰り返した後は、ガス供給管53,55のそれぞれからN2ガスを処理部23内へ供給し、排気管61から排気する。N2ガスはパージガスとして作用し、これにより処理部23内が不活性ガスでパージされ、処理部23内に残留するガスや副生成物が処理部23内から除去される。
【0068】
(大気圧復帰:S170)
処理部23内をパージした後は、処理部23内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理部23内の圧力が常圧に復帰される。
【0069】
(ボートアンロード:S180)
その後は、上述したボートロード工程(S120)とは逆の手順で、昇降機構部44によってボート41を下降させて、そのボート41に装填された各ウエハを処理部23内から搬出(ボートアンロード)する。
【0070】
(ウエハディスチャージ:S190)
そして、ボート41をアンロードしたら、上述したウエハチャージ工程(S110)とは逆の手順で、処理済ウエハを第1搬送ロボットTH1により、ボート41から取り出し、基板搬入搬出口32を通じて下部チャンバ30の外部に搬出する。
【0071】
このようにして、5枚のウエハに対して、TiN層を形成する成膜工程が完了する。
【0072】
他の処理室である第1~第4処理室PM12~PM42においても、同様の成膜工程が行われる。
【0073】
(5)基板処理装置における基板搬送工程
次に、上述の成膜工程の前後におけるウエハの搬送工程を、(i)未処理ウエハを第1待機室WM1から搬出し、処理室PMへ搬入する直前までのスワップ前工程、(ii)処理済ウエハと未処理ウエハとを交換するスワップ工程、(iii)処理室PMから搬出された処理済ウエハを第1待機室WM1へ搬入するスワップ後工程に分けて、
図1,
図5~
図7を用いて説明する。以下の説明では、第1待機室WM1から第1~第4処理室PM11,PM21,PM31,PM41へのウエハの搬送工程を例に説明する。
図5~
図7では、第1~第4処理室PM12,PM22,PM32,PM42と、第1~4搬送ロボットTH1~TH4と、大気搬送室LHとを省略している。
図5~
図7では、便宜上、第1~第4温度調節機構AC1~AC4を待機室WM外に示している。
図5~
図7に記載の白マルは、処理済みのウエハを示し、黒マルは、未処理のウエハを示している。なお、以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作はコントローラ70により制御される。
【0074】
(スワップ前工程)
スワップ前工程では、最初に、第1待機室WM1内で保持される5枚の未処理のウエハを第4待機室WM4へ搬送する工程(以下、「A工程」と称する場合がある。)が行われる。以下に、A工程について説明する。なお、以下に説明するウエハの搬送は、ウエハを搬送する搬送ロボットTHが有するアームの数(2本)に応じて行われ、5枚のウエハの搬送は、1~2枚ずつ数回に分けて行われる。
【0075】
(A工程)
第1待機室WM1内で保持されるウエハを、第1搬送ロボットTH1が保持し、第1搬送室TM1を経由して第2待機室WM2へ搬送する。続いて、このウエハを第2搬送ロボットTH2が保持し、第2搬送室TM2を経由して第3待機室WM3へ搬送する。続いて、このウエハを第3搬送ロボットTH3が保持し、第3搬送室TM3を経由して第4待機室WM4へ搬送する。
以上の動作を第1待機室WM1内で保持される5枚のウエハがすべて第4待機室WM4へ搬送されるまで繰り返し行う。最後に、第4搬送ロボットTH4が、第4待機室WM4に保持された5枚のウエハのうちの1枚を保持し、第4搬送室TM4へ搬送して、A工程を終了する。
【0076】
A工程で、第1待機室WM1内で保持される5枚のウエハがすべて搬出されたら、新たな5枚の未処理のウエハを第3待機室WM3へ搬送する工程(以下、「B工程」と称する。)を開始する。B工程は、A工程と同様に行われる。
【0077】
B工程で、第1待機室WM1内で保持される5枚のウエハがすべて搬出されたら、新たな5枚の未処理のウエハを第2待機室WM2へ搬送する工程(以下、「C工程」と称する。)を開始する。C工程は、A工程と同様に行われる。
【0078】
C工程で、第1待機室WM1内で保持される5枚のウエハがすべて搬出されたら、新たな5枚の未処理のウエハのうちの1枚を、第1搬送ロボットTH1が保持し、第1搬送室TM1へ搬送する(
図5(a)~
図5(b)参照)。
【0079】
以上で、スワップ前工程が終了する。
【0080】
(スワップ工程)
スワップ工程では、最初に、第1~第4搬送ロボットTH1~TH4が有する一方のアームで、それぞれ第1~第4処理室PM11~PM41で処理された処理済ウエハを保持する。続いて、これらの処理済ウエハと、スワップ前工程で第1~第4搬送ロボットTH1~TH4の他方のアームで保持した未処理ウエハとを交換する。すなわち、処理済ウエハを第1~第4待機室WM1~WM4へ搬送し、未処理ウエハを第1~第4処理室PM11~PM41へ搬送する。このとき、第1~第4待機室WM1~WM4で保持された4枚のウエハは、それぞれ同時に第1~第4処理室PM11~PM41に搬送される。
なお、ここでいう「同時」とは、全く同じタイミングだけでなく、ほぼ同じタイミング、近似するタイミングも含んでいる。本明細書において、以降に用いられる「同時」の語句も同様の意味である。
以上の動作を待機室WM内で保持されるすべてのウエハと処理室PM内で処理されたすべてのウエハがスワップされるまで繰り返し行い、スワップ工程を終了する(
図6(a)~
図6(b)参照)。
【0081】
(スワップ後工程)
スワップ後工程では、スワップ前工程とは逆の手順で処理済ウエハを搬送ロボットTHにより、第1待機室WM1へ搬送する(
図7(a)~
図7(b)参照)。
【0082】
第1待機室WM1から第1~第4処理室PM12,PM22,PM32,PM42へのウエハの搬送工程も上述と同様に行われる。
【0083】
(6)温度調節機構の動作例
次に、基板搬送工程における温度調節機構ACの動作例について、
図5~
図7を用いて説明する。なお、温度調節機構ACの動作は、コントローラ70により制御される。
以下に、温度調節機構ACの動作例を温度調節機構ACの加熱機構による温度調節と冷却機構よる温度調節とにわけて説明する。
【0084】
(加熱機構による温度調節)
図5に示すように、スワップ前工程では、温度調節機構ACの加熱機構を作動させて、処理室PMに搬入される前の未処理ウエハを予め加熱する。このように、処理室PMまでのウエハの搬送経路に設けられた温度調節機構ACの加熱機構を作動させ、搬送中のウエハを予熱することにより、ウエハを処理室PMに搬入してから成膜処理が開始されるまでの時間を短縮することができる。結果として、作業効率を向上させることができる。
【0085】
さらに、スワップ前工程では、温度調節機構ACの加熱機構を動作させて、4つの処理室PMに搬入する際の4枚のウエハの温度を同温にする。上述のように、スワップ工程では、4つの搬送室TM内で保持される4枚のウエハを、同時に処理室PMに搬入するので(
図6参照)、搬入時の4枚のウエハを同温にすることで、4つの処理室PMの処理時間を揃えることができる。結果として、さらなる作業効率の向上を実現できる。
【0086】
図5に示すように、第1~第4処理室PM11~PM41で処理される4枚のウエハの第1待機室WM1から処理室PMまでの搬送経路は、それぞれ異なっている。また、搬送経路に応じてウエハの予熱(加熱)時間も異なっている。具体的には、処理室PMへ搬入される4枚のウエハのうち、第4処理室PM41で処理されるウエハに対するトータルの加熱時間が1番長く、第3処理室PM31で処理されるウエハ、第2処理室PM21で処理されるウエハ、第1処理室PM11で処理されるウエハの順にトータルの加熱時間が短くなる。
【0087】
処理室PMへ搬入される直前のウエハの温度は、加熱機構の加熱エネルギー量(加熱機構の加熱時間×加熱機構の加熱パワー)で決定される。
従って、4つの温度調節機構AC1~AC4の加熱時間や加熱パワーをそれぞれ同じに設定すると、例えば、4枚のウエハのうち、トータルの加熱時間が1番長い第4処理室PM41で処理されるウエハが最も高温となり、4枚のウエハは同温にはならない。
そこで、本開示の基板処理装置100は、ウエハの搬送経路に応じて温度調節機構ACの温度調節の態様を変化させ、処理室PMへ搬入される直前の各ウエハに対するトータルの加熱エネルギー量を等しくすることにより、これらのウエハが同温になるようにする。
具体的には、以下のいずれかの制御処理を行う。
【0088】
(i)第1の制御態様
第1の制御態様においては、4枚のウエハに対する各待機室WMでの加熱時間を一定にし、4つの加熱機構の加熱パワーをウエハによって変化させるように制御する。例えば、第1~第4温度調節機構AC1~AC4の加熱時間をT(定数)とし、第1~第4温度調節機構AC1~AC4の加熱パワーをそれぞれP1,P2,P3,P4(それぞれ変数)とした場合、第4処理室PM41で処理されるウエハに対する加熱エネルギー量は、T×(P1+P2+P3+P4)である。同様に、第3処理室PM31で処理されるウエハに対する加熱エネルギー量は、T×(P1+P2+P3)である。第2処理室PM21で処理されるウエハに対する加熱エネルギー量は、T×(P1+P2)である。第1処理室PM11で処理されるウエハに対する加熱エネルギー量は、T×P1である。
Tは定数なので、各ウエハに対する加熱エネルギー量を等しくするには、それぞれ第1~第4処理室PM11~PM41で処理されるウエハに対するトータルの加熱パワーである、P1と、P1+P2と、P1+P2+P3と、P1+P2+P3+P4とが等しくなるように、P1~P4の値を設定する。
なお、P1~P4は変数なので、同じ符号が付されていても異なる値が設定される場合がある。例えば、同じ第1温度調節機構AC1の加熱機構が発する加熱パワーP1であっても、第1処理室PM11で処理されるウエハに対する加熱パワーP1と、第2処理室PM21で処理されるウエハに対する加熱パワーP1とでは、異なる値が設定される。このように、処理対象となるウエハの搬送先(搬送経路)に応じて、同じ加熱機構の加熱パワーP1であっても、その値は異なるように設定される。
このように、各ウエハに対するトータルの加熱エネルギー量を等しくすることにより、これらのウエハを同温にすることができる。
【0089】
以下に、上述の制御について、第4処理室PM41で処理されるウエハを例に挙げて具体的に説明する。
(a)第4処理室PM41で処理されるウエハが第1待機室WM1に搬送されたら、コントローラ70は、第1温度調節機構AC1の加熱機構に対し、このウエハをP1の加熱パワーでT時間加熱するように指示する。P1の加熱パワーは、第4処理室PM41で処理されるウエハに対するトータルの加熱パワーであるP1+P2+P3+P4のうちのP1であり、第1温度調節機構AC1の加熱機構が発する加熱パワーとして設定されているものである。また、T時間は、ウエハが第1待機室WM1に搬入されてから搬出されるまでの時間として設定されている時間である。
(b)T時間経過したら、コントローラ70は、第1搬送ロボットTH1に対し、ウエハを第2待機室WM2に搬送するように指示する。
(c)第1搬送ロボットTH1が、ウエハを第2待機室WM2に搬送したら、コントローラ70は、第2温度調節機構AC2の加熱機構に対し、このウエハをP2の加熱パワーでT時間加熱するように指示する。P2の加熱パワーは、第4処理室PM41で処理されるウエハに対するトータルの加熱パワーであるP1+P2+P3+P4のうちのP2であり、第2温度調節機構AC2の加熱機構が発する加熱パワーとして設定されているものである。また、T時間は、ウエハが第2待機室WM2に搬入されてから搬出されるまでの時間として設定されている時間である。
(d)T時間経過したら、コントローラ70は、第2搬送ロボットTH2に対し、ウエハを第3待機室WM3に搬送するように指示する。
(e)第2搬送ロボットTH2が、ウエハを第3待機室WM3に搬送したら、コントローラ70は、第3温度調節機構AC3の加熱機構に対し、このウエハをP3の加熱パワーでT時間加熱するように指示する。P3の加熱パワーは、第4処理室PM41で処理されるウエハに対するトータルの加熱パワーであるP1+P2+P3+P4のうちのP3であり、第3温度調節機構AC3の加熱機構が発する加熱パワーとして設定されているものである。また、T時間は、ウエハが第3待機室WM3に搬入されてから搬出されるまでの時間として設定されている時間である。
(f)T時間経過したら、コントローラ70は、第3搬送ロボットTH3に対し、ウエハを第4待機室WM4に搬送するように指示する。
(g)第3搬送ロボットTH3が、ウエハを第4待機室WM4に搬送したら、コントローラ70は、第4温度調節機構AC4の加熱機構に対し、このウエハをP4の加熱パワーでT時間加熱するように指示する。P4の加熱パワーは、第4処理室PM41で処理されるウエハに対するトータルの加熱パワーであるP1+P2+P3+P4のうちのP4であり、第4温度調節機構AC4の加熱機構が発する加熱パワーとして設定されているものである。また、T時間は、ウエハが第4待機室WM4に搬入されてから搬出されるまでの時間として設定されている時間である。
(a)~(g)の手順で処理するので、第4処理室PM41で処理されるウエハに対するトータルの加熱パワーはP1+P2+P3+P4となる。P1~P4は、それぞれ同じ値に設定されてもいいし、P1~P4の順に大きくなるように設定されてもいいし、P1~P4の順に小さくなるように設定されてもいい。
同様に、第3処理室PM31で処理されるウエハには、(a)~(e)の手順で処理するので、第3処理室PM31で処理されるウエハに対するトータルの加熱パワーはP1+P2+P3となる。
第2処理室PM21で処理されるウエハには、(a)~(c)の手順で処理するので、第2処理室PM21で処理されるウエハに対するトータルの加熱パワーはP1+P2となる。
第1処理室PM11で処理されるウエハには、(a)の処理を行うので、第1処理室PM11で処理されるウエハに対するトータルの加熱パワーはP1となる。
【0090】
第1の制御態様において、以上のような加熱処理をすることにより、4つの処理室PMに搬入する際の4枚のウエハの温度を同温にすることができる。
【0091】
しかも、以上のような加熱処理をして、ウエハの各待機室WMでの加熱時間を一定にし、ウエハの搬送先に応じて各温度調節機構ACの加熱パワーを変化させることにより、加熱時間の調整が不要となるので、迅速に作業を行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0092】
(ii)第2の制御態様
第2の制御態様においては、4枚のウエハに対する各加熱機構の加熱パワーを一定にし、各待機室WMでの加熱時間をウエハによって変化させるように制御する。例えば、第1~第4温度調節機構AC1~AC4の加熱パワーをP(定数)とし、第1~第4温度調節機構AC1~AC4の加熱時間をそれぞれT1,T2,T3,T4(それぞれ変数)とした場合、第4処理室PM41で処理されるウエハに対する加熱エネルギー量は、(T1+T2+T3+T4)×Pである。同様に、第3処理室PM31で処理されるウエハに対する加熱エネルギー量は、(T1+T2+T3)×Pである。第2処理室PM21で処理されるウエハに対する加熱エネルギー量は、(T1+T2)×Pである。第1処理室PM11で処理されるウエハに対する加熱エネルギー量は、T1×Pである。
Pは定数なので、各ウエハに対するトータルの加熱エネルギー量を等しくするには、それぞれ第1~第4処理室PM11~PM41で処理されるウエハに対するトータルの加熱時間である、T1と、1+T2と、1+T2+T3と、1+T2+T3+T4とが等しくなるように、T1~T4の値を設定する。
なお、T1~T4は変数なので、同じ符号が付されていても異なる値が設定される場合がある。例えば、同じ第1温度調節機構AC1の加熱機構の加熱時間T1であっても、第1処理室PM11で処理されるウエハに対する加熱時間T1と、第2処理室PM21で処理されるウエハに対する加熱時間T1とでは、異なる値が設定される。このように、処理対象となるウエハの搬送先(搬送経路)に応じて、同じ加熱機構の同じ加熱時間T1であっても、その値は異なるように設定される。
なお、具体的な制御は、加熱パワーを定数、加熱時間を変数にして、上述の第1の制御態様と同様に行われる。このようにして、第2の制御態様において、4つの処理室PMに搬入する際の4枚のウエハの温度を同温にすることができる。
しかも、以上のような加熱処理をして、ウエハに対する各加熱機構の加熱パワーを一定にし、ウエハの搬送先に応じて各待機室WMでの加熱時間を変化させることにより、複雑な加熱機構が不要となり、加熱機構の構造を簡素化することができる。
【0093】
(iii)第3の制御態様
第3の制御態様においては、4枚のウエハに対する各待機室WMでの加熱時間と加熱機構の加熱パワーの両方をウエハによって変化させるように制御する。例えば、第1~第4温度調節機構AC1~AC4の加熱時間をそれぞれT1,T2,T3,T4(それぞれ変数)とし、第1~第4温度調節機構AC1~AC4の加熱パワーをそれぞれP1,P2,P3,P4(それぞれ変数)とした場合、第4処理室PM41で処理されるウエハに対する加熱エネルギー量は、(T1×P1)+(T2×P2)+(T3×P3)+(T4×P4)である。同様に、第3処理室PM31で処理されるウエハに対する加熱エネルギー量は、(T1×P1)+(T2×P2)+(T3×P3)である。第2処理室PM21で処理されるウエハに対する加熱エネルギー量は、(T1×P1)+(T2×P2)である。第1処理室PM11で処理されるウエハに対する加熱エネルギー量は、T1×P1である。
各ウエハに対するトータルの加熱エネルギー量を等しくするには、それぞれ第1~第4処理室PM11~PM41で処理されるウエハに対するトータルの加熱エネルギー量である、T1×P1と、(T1×P1)+(T2×P2)と、(T1×P1)+(T2×P2)+(T3×P3)と、(T1×P1)+(T2×P2)+(T3×P3)+(T4×P4)とが等しくなるように、T1~T4とP1~P4の値を設定する。
なお、T1~T4とP1~P4は変数なので、同じ符号が付されていても異なる値が設定される場合がある。例えば、同じ第1温度調節機構AC1の加熱機構が発する加熱パワーP1であっても、第1処理室PM11で処理されるウエハに対する加熱パワーP1と、第2処理室PM21で処理されるウエハに対する加熱パワーP1とでは、異なる値が設定される。このように、処理対象となるウエハの搬送先(搬送経路)に応じて、同じ加熱機構の加熱パワーP1であっても、その値は異なるように設定される。同様に、例えば、同じ第1温度調節機構AC1の加熱機構の加熱時間T1であっても、第1処理室PM11で処理されるウエハに対する加熱時間T1と、第2処理室PM21で処理されるウエハに対する加熱時間T1とでは、異なる値が設定される。このように、処理対象となるウエハの搬送先(搬送経路)に応じて、同じ加熱機構の同じ加熱時間T1であっても、その値は異なるように設定される。
なお、具体的な制御は、加熱パワーと加熱時間をともに変数にして、上述の第1の制御態様と同様に行われる。このようにして、第3の制御態様において、4つの処理室PMに搬入する際の4枚のウエハの温度を同温にすることができる。
しかも、以上のような加熱処理をして、4枚のウエハに対する各待機室WMでの加熱時間と加熱機構の加熱パワーの両方をウエハの搬送先に応じて変化させることにより、部品の組み合わせの自由度が増すので、汎用性の高い装置を利用することができる。
【0094】
(冷却機構による温度調節)
図7に示すように、スワップ後工程では、温度調節機構ACの冷却機構を作動させて、搬送経路における処理済ウエハを冷却する。このように、処理室PMから搬出されたウエハの搬送経路に設けられた温度調節機構ACの冷却機構を作動させ、搬送中のウエハを冷却することにより、次の処理に移行するまでの待機時間を短縮することができる。結果として、作業効率を向上させることができる。
【0095】
さらに、スワップ後工程では、温度調節機構ACの冷却機構を作動させて、第1待機室WM1から搬出する際の処理済ウエハの温度を同温にする。このようにすることで、第1待機室WM1から搬出された複数枚のウエハに対して同時に次の処理を行うことができる。結果として、その後の処理の作業効率を向上させることができる。
【0096】
図7に示すように、4つの処理室PMから搬出されたウエハの第1待機室WM1までの搬送経路は、それぞれ異なっている。また、搬送経路に応じてウエハの冷却時間も異なっている。具体的には、処理室PMから搬出され、第1待機室WM1に搬入された4枚のウエハのうち、第4処理室PM41から搬出されたウエハに対するトータルの冷却時間が1番長く、第3処理室PM31から搬出されたウエハ、第2処理室PM21から搬出されたウエハ、第1処理室PM11から搬出されたウエハの順にトータルの冷却時間が短くなる。
【0097】
第1待機室WM1から搬出される直前のウエハの温度は、冷却機構の冷却エネルギー量(冷却機構の冷却時間×冷却機構の冷却パワー)で決定される。
従って、4つの温度調節機構AC1~AC4の冷却時間や冷却パワーをそれぞれ同じに設定すると、例えば、4枚のウエハのうち、トータルの冷却時間が1番長い第4処理室PM41から搬出されたウエハが最も低温となり、4枚のウエハは同温にはならない。
そこで、本開示の基板処理装置100は、ウエハの搬送経路に応じて温度調節機構ACの温度調節の態様を変化させ、第1待機室WM1から搬出される直前の各ウエハに対するトータルの冷却エネルギー量を等しくすることにより、これらのウエハが同温になるようにする。
具体的な制御処理は、上述した加熱機構による温度調節の第1~第3制御態様と同様に行われるので、詳細な説明は省略する。
【0098】
なお、本明細書において、「同温」とは、全く同じ温度だけでなく、ほぼ同じ温度、近似する温度も含んでいる。
【0099】
(7)本開示の効果
本開示によれば、以下に示す一つまたは複数の効果を奏する。
【0100】
(a)本開示では、コントローラ70が、ウエハの搬送経路に応じて待機室WMの温度調節の態様を変えるように温度調節機構ACを制御しているので、例えば、異なる搬送経路を経るウエハの温度を所定のタイミングで揃えることができる。このように、ウエハの温度を自在に調整することができるので、結果として、作業効率を向上させることができる。
【0101】
(b)本開示では、処理室PMまでのウエハの搬送経路に設けられた温度調節機構ACの加熱機構により、搬送中の未処理ウエハを予め加熱するので、ウエハを処理室PMに搬入してから成膜処理が開始されるまでの時間を短縮することができる。結果として、作業効率を向上させることができる。
【0102】
(c)本開示では、処理室PMから搬出されたウエハの搬送経路に設けられた温度調節機構ACの冷却機構により、搬送中の処理済ウエハを冷却するので、次の処理に移行するまでの待機時間を短縮することができる。結果として、作業効率を向上させることができる。
【0103】
(d)本開示では、ウエハの搬送経路に応じて温度調節機構ACの加熱機構を制御して、4つの処理室PMに搬入する際の4枚のウエハの温度を同温にし、さらに、これらのウエハを同時に処理室PMに搬入する。このようにすることで、4つの処理室PMの処理時間を揃えることができ、さらなる作業効率の向上を実現できる。
【0104】
(e)本開示では、ウエハの搬送経路に応じて温度調節機構ACの冷却機構を制御して、第1待機室WM1から搬出する際の処理済ウエハの温度を同温にする。このようにすることで、第1待機室WM1から搬出された複数枚のウエハに対して同時に次の処理を行うことができるので、その後の処理の作業効率を向上させることができる。
【0105】
(f)また、本開示において、4つの処理室PMに搬入する際の4枚のウエハの温度を同温にするにあたり、未処理ウエハに対する各待機室WMでの加熱時間を一定にし、ウエハの搬送先に応じて各温度調節機構ACの加熱パワーを変化させた場合には、加熱時間の調整が不要となるので、迅速に作業を行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0106】
(g)また、本開示において、4つの処理室PMに搬入する際の4枚のウエハの温度を同温にするにあたり、未処理ウエハに対する各加熱機構の加熱パワーを一定にし、ウエハの搬送先に応じて各待機室WMでの加熱時間を変化させた場合には、複雑な加熱機構が不要となるので、加熱機構の構造を簡素化することができる。
【0107】
(h)また、本開示において、4つの処理室PMに搬入する際の4枚のウエハの温度を同温にするにあたり、未処理ウエハに対する各待機室WMでの加熱時間と加熱機構の加熱パワーの両方をウエハの搬送先に応じて変化させた場合には、部品の組み合わせの自由度が増すので、汎用性の高い装置を利用することができる。
【0108】
(i)また、本開示において、第1待機室WM1から搬出する際の処理済ウエハの温度を同温にするにあたり、処理済ウエハに対する各待機室WMでの冷却時間を一定にし、ウエハの搬送元に応じて各温度調節機構ACの冷却パワーを変化させた場合には、冷却時間の調整が不要となるので、迅速に作業を行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0109】
(j)また、本開示において、第1待機室WM1から搬出する際の処理済ウエハの温度を同温にするにあたり、処理済ウエハに対する各加熱機構の冷却パワーを一定にし、ウエハの搬送元に応じて各待機室WMでの冷却時間を変化させた場合には、複雑な加熱機構が不要となるので、冷却機構の構造を簡素化することができる。
【0110】
(k)また、本開示において、第1待機室WM1から搬出する際の処理済ウエハの温度を同温にするにあたり、処理済ウエハに対する各待機室WMでの冷却時間と冷却機構の冷却パワーの両方をウエハの搬送元に応じて変化させた場合には、部品の組み合わせの自由度が増すので、汎用性の高い装置を利用することができる。
【0111】
<他の態様>
以上に、本開示の一態様を具体的に説明した。しかしながら、本開示の態様は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0112】
上述の開示では、加熱機構と冷却機構の両方を備えた温度調節機構ACを例に挙げたが、本開示がこれに限定されることはなく、加熱機構と冷却機構のいずれか一方のみを備えた温度調節機構ACであってもよい。
【0113】
また、上述の開示では、搬送室TMと待機室WMをそれぞれ4つずつ備えた基板処理装置100を例に挙げたが、本開示がこれに限定されることはなく、搬送室TMと待機室WMをそれぞれ3つ以下、または5つ以上備えていてもよい。
【0114】
また、上述の開示では、搬送室TMの両側面に処理室PMが設けられた基板処理装置100を例に挙げたが、本開示がこれに限定されることはなく、搬送室TMの片側面にのみ処理室PMが設けられていてもよい。
【0115】
また、上述の開示では、スワップ前工程において、処理室PMへ搬入される未処理ウエハが搬送経路に備えられた全ての加熱機構により加熱されることを例に挙げて説明したが、本開示がこれに限定されることはなく、複数の加熱機構のうちのいくつかの加熱機構において加熱されない場合があってもよい。
【0116】
また、上述の開示では、スワップ後工程において、処理室PMから搬出された処理済ウエハが搬送経路に備えられた全ての冷却機構により冷却されることを例に挙げて説明したが、本開示がこれに限定されることはなく、複数の冷却機構のうちのいくつかの冷却機構において冷却されない場合があってもよい。
【0117】
また、上述の開示では、半導体装置の製造工程の一工程である基板処理工程において、第1の処理ガス(第1の金属含有ガス、原料ガス)としてTiCl4ガスを用い、第2の処理ガス(反応ガス)としてNH3ガスを用い、これらを交互に供給することによって、ウエハ上にTiN膜を形成する場合を例に挙げたが、本開示がこれに限定されることはない。すなわち、成膜処理に用いる処理ガスは、TiCl4ガスやNH3ガス等に限られることはなく、他の種類のガスを用いて他の種類の薄膜を形成しても構わない。さらには、3種類以上の処理ガスを用いる場合であっても、これらを交互に供給して成膜処理を行うのであれば、適用可能である。具体的には、第一元素としては、Tiではなく、例えばSi、Zr、Hf等、種々の元素であってもよい。また、第二元素としては、Nではなく、例えばO等であってもよい。
【0118】
また、上述の開示では、基板処理工程として、主に、ウエハ表面への金属膜形成を行う場合を例に挙げたが、本開示がこれに限定されることはない。すなわち、本開示は、上述の開示で例に挙げた薄膜形成の他に、上述の開示で例示した薄膜以外の成膜処理にも適用できる。また、基板処理の具体的内容は不問であり、成膜処理だけでなく、熱処理(アニール処理)、プラズマ処理、拡散処理、酸化処理、窒化処理、リソグラフィ処理等の他の基板処理を行う場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0119】
LH…大気搬送室、TM1~TM4…第1~第4搬送室、TH1~TH4…第1~第4搬送ロボット、WM1~WM4…第1~第4待機室、AC1~AC4…第1~第4温度調節機構、PM11~PM42…第1~第4処理室、70…コントローラ、100…基板処理装置